説明

ワクチン

本発明は、Plasmodium falciparumからのCSタンパク質またはその断片を含むタンパク質(例えば、配列番号1または配列番号3に示されているもの)をコードする複製欠損型サルアデノウイルスベクターC7に関する。本発明はまた、該ウイルスベクターの製造方法、およびマラリア感染の治療/予防における該ウイルスベクターの使用に関する。該ウイルスベクターを含む組成物、ワクチンおよびキットも記載する。1つの態様においては、本発明は合成C7ウイルスベクターを使用する。本発明のC7ウイルスベクターは、場合によってはアジュバント、例えば3D-MPLおよび/またはサポニン(例えばQS21)を含むアジュバントの存在下、マラリア抗原、例えばRTS,Sと共に共投与または共配合されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サル由来アデノウイルスベクター、特に、Plasmodium falciparumのサーカムスポロゾイト(circumsporozoite)タンパク質に由来する新規マラリア抗原をコードするサル由来アデノウイルスベクターに関する。本発明は更に、該ウイルスベクターの製造方法、およびマラリア感染の治療/予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは世界的に重大な健康問題の1つであり、毎年200万人〜400万人以上がこの疾患で死亡している。
【0003】
この疾患の最も急性な形態の1つは、マラリアに起因する死亡のほとんどの原因となる寄生原虫Plasmodium falciparum(P. falciparum)により引き起こされる。
【0004】
P. falciparumの生活環は複雑であり、完了のためにはヒトおよび蚊の2つの宿主を要する。ヒトへの感染は、感染蚊が刺すことにより血流中にスポロゾイトが接種されることにより開始される。スポロゾイトは肝臓へ移動し、そこで肝細胞に感染し、ここでスポロゾイトは赤血球外細胞内段階を経てメロゾイト段階へと分化し、これは赤血球(RBC)に感染して無性血液段階における循環的複製を開始する。この循環は、RBC内で多数のメロゾイトが有性段階配偶子細胞へ分化することにより完了し、有性段階配偶子細胞は蚊により摂取され、蚊の体内で該細胞は中腸内での一連の段階を経て発育してスポロゾイトとなり、これは唾液腺に移行する。
【0005】
P. falciparumのスポロゾイト段階はマラリアワクチンの潜在的標的と目されている。不活化(照射)スポロゾイトは実験的ヒトマラリアに対する保護を誘導することが示されている(Am. J, Trop. Med. Hyg 24: 297-402, 1975)。しかし、実際に且つ事業計画的に、照射スポロゾイトを使用するこの方法に基づいて一般集団におけるマラリアに対するワクチンを製造することは不可能である。
【0006】
スポロゾイトの主要表面タンパク質はサーカムスポロゾイトタンパク質(CSタンパク質)として公知である。それは蚊による接種の最初の部位から循環内(循環内でそれは肝臓へ移行する)へのスポロゾイトの移行中のスポロゾイトの運動性および侵襲性に関与していると考えられている。
【0007】
Plasmodia種のCSタンパク質は、非反復性アミノ(N末端)およびカルボキシ(C末端)断片に隣接した中央反復ドメイン(反復領域)により特徴づけられる。
【0008】
現在のところ、臨床において最も進んだマラリアワクチンは、RTS,Sと称されるリポタンパク質粒子(ウイルス様粒子としても公知である)に基づくものである。この粒子は、B型肝炎由来のS抗原のN末端に融合したP. falciparum(株NF54[3D7])のCSタンパク質のアミノ酸207-395に実質的に対応するP. falciparumのCSタンパク質の部分を含有する。該S抗原はプレS2の部分を含みうる。
【0009】
RTS,S粒子は、通常、強力なアジュバントと共に送達される。
【0010】
それにもかかわらず、組換えアデノウイルスベクターを利用するマラリアワクチンが提示されている。例えば、WO 2004/055187は、CSタンパク質をコードする特異的アデノ5(Ad5)およびアデノ35(Ad35)ベクター(共にヒトアデノウイルスに由来する)を含む或るウイルスベクターを記載している。
【0011】
病原性が異なる40を超える異なるヒトアデノウイルス血清型が存在する。例えば、Ad5は小児における軽度の呼吸器感染に関連しており、Ad4およびAd7は成人における呼吸器感染に関連していると考えられており、Ad40は乳児における下痢を引き起こすと考えられている。
【0012】
アデノウイルス感染に対する免疫は感染後生涯にわたると考えられている。特にAd5およびAd35に対する既存免疫は、ヒトアデノウイルスに基づく治療用アデノウイルスベクターの中和をもたらしうると考えられている。これは該ベクターの治療的有効性を軽減しうる。なぜなら、該ベクターが細胞に進入し関連抗原をin vivoで生成するのが妨げられるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2004/055187号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/046124号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Am. J, Trop. Med. Hyg 24: 297-402, 1975
【発明の概要】
【0015】
本発明は、P. falciparumからのCSタンパク質またはその断片、例えば配列番号1または配列番号3に示すものを含むタンパク質をコードする複製欠損型サル(シミアン)アデノウイルスベクターC7(Pan7またはCV-33とも称される)を含む、マラリアの予防および/または治療のためのワクチンを提供することにより、既存免疫の問題を軽減すると考えられる。
【0016】
配列の簡単な説明
配列番号1:P. falciparumのCSタンパク質に由来するタンパク質/抗原のアミノ酸配列(本明細書においてはAde2と称される)。
配列番号2:配列番号1のタンパク質をコードする核酸配列(本明細書においてはAde2遺伝子と称される)。
配列番号3:P. falciparumのCSタンパク質に由来するタンパク質/抗原の代替的アミノ酸配列(本明細書においてはAde1と称される)。
配列番号4:配列番号3のタンパク質をコードする核酸配列(本明細書においてはAde1遺伝子と称される)。
配列番号5:Chimp Adeno(チンプ・アデノ)7からのカプシドタンパク質配列(WO 03/046124の配列番号17)。
配列番号6:Chimp Adeno(チンプ・アデノ)7からのアミノ酸配列(WO 03/046124の配列番号20)。
配列番号7:P. falciparum CSタンパク質からのアミノ酸配列。
配列番号8:P. falciparum CSタンパク質からのアミノ酸配列。
配列番号9:P. falciparum CSタンパク質からのアミノ酸配列。
配列番号10:P. falciparum CSタンパク質からのアミノ酸配列。
配列番号11:CpG 1826のヌクレオチド配列。
配列番号12:CpG 1758のヌクレオチド配列。
配列番号13:CpGのヌクレオチド配列。
配列番号14:CpG 2006のヌクレオチド配列。
配列番号15:CpG 1668のヌクレオチド配列。
配列番号16:CpG 5456のヌクレオチド配列。
配列番号17:C7アデノウイルスベクター内にクローニングされた、Ade2発現カセットに代わる発現カセットのヌクレオチド配列を示す。
配列番号18:C7アデノウイルスベクター内にクローニングされた、Ade2発現カセットのヌクレオチド配列を示す。
配列番号19:合成組換えベクターC7-Ade2の完全ヌクレオチド配列を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】pCR2.1-Ade2のプラスミド地図を示す。
【図2】pShuttle6-Ade2のプラスミド地図を示す。
【図3】pC7000-CMV Ade2のプラスミド地図を示す。
【図4】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびC7 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図5】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびC7 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図6】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびC7 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図7】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびC7 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図8】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade2およびAd5 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図9】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade2およびAd5 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図10】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade2およびAd5 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図11】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade2およびAd5 Ade2により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図12】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびAd5 Ade1により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図13】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびAd5 Ade1により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図14】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびAd5 Ade1により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図15】C57Bl/6マウスにおいてC7 Ade1およびAd5 Ade1により誘導されたCS特異的T細胞応答の比較を示す。
【図16】C57Bl/6マウスにおいてELISAにより測定された抗CS抗体応答を示す。
【図17】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図18】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図19】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図20】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図21】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図22】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図23】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図24】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図25】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図26】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図27】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図28】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図29】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたHBs特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図30】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたHBs特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図31】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図32】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図33】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたHBs特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図34】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図35】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図36】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導されたHBs特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図37】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導された抗体応答を示す。
【図38】CB6F1マウスにおいてRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合においてC7-Ade2により誘導された抗体応答を示す。
【図39】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図40】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図41】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図42】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図43】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図44】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図45】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図46】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図47】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図48】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図49】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図50】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図51】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導された抗体応答を示す。
【図52】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2 + RTS,S/AS01Bの共配合により誘導された抗体応答を示す。
【図53】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図54】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図55】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図56】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図57】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図58】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図59】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図60】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図61】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図62】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図63】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図64】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導されたCS-およびHBs-特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図65】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導された抗体応答を示す。
【図66】CB6F1マウスにおいてC7-Ade2、RTS,SおよびAS01B応答により誘導された抗体応答を示す。
【図67】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図68】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答の速度論を示す。
【図69】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図70】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答の速度論を示す。
【図71】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図72】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図73】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【図74】CB6F1マウスにおいて合成C7-Ade2により誘導されたCS特異的CD4 T細胞応答のサイトカインプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
C7の配列および製造はWO 2003/046124に記載されている。WO 2003/046124の配列番号6(ペントン配列)、9(核酸配列)、10および11(ヘキソン配列)、ならびに12(ファイバータンパク質)を参照により本明細書に組み入れる。C7の寄託番号は[ATCC VR-593]である。
【0019】
ベクターは幾つかのファミリーに分類されることが可能であり、所定のファミリー内のアデノウイルスベクターは類似した特徴を有しうるという仮定が存在するものの、任意の所定のアデノウイルスベクターの特徴および特性は特有のものであることが多い。
【0020】
C7の使用は特に有利だと考えられる。なぜなら、それは、タンパク質コード化遺伝子が挿入された場合、同様にWO 2003/046124に記載されている例えばC6のような他の公知ベクターより見かけ上安定だからである。つまり、C7は、再構成される傾向がより低いと考えられる。もちろん、医薬品は、それらが販売されうる前に、十分に特徴づけられ安定かつ安全であると示される必要があるため、ワクチン中で使用されるいずれのアデノウイルスベクターも安定であることが非常に重要である。
【0021】
C7に対する既存免疫は非常に低いと考えられ、したがって、患者への最初の投与の後の該ウイルスベクターの中和の危険性は低い。
【0022】
さらに、ヒトへの投与および/またはin vivoでの好ましい免疫応答の生成にC7を特に適したものにしうる、C7の1以上の他の特性が存在すると考えられている。
【0023】
1つの態様においては、本発明は、ヒトへの投与に関する規制機関の承認を得るのに特に好適でありうる合成C7ウイルスベクターを使用する。
【0024】
1つの態様においては、CSタンパク質からのマラリア抗原成分の最後の12〜14アミノ酸が除去されている。
【0025】
1つの態様においては、該アデノウイルスベクターによりコードされるマラリア抗原は、潜在的グリコシル化部位を除去するよう改変されている。例えば、配列番号1の約379位に示すとおり、アミノ酸アラニンがセリンの代わりに使用されうる。
【0026】
本発明の1つの態様においては、使用されるタンパク質/抗原は以下のアミノ酸を含む:

(配列番号7)
(これは、場合によっては、アミノ酸約81-99に位置する)。
【0027】
1つの態様においては、コードされるタンパク質/抗原はアミノ酸:
AIGL(配列番号8)
を例えばC末端に含む。
【0028】
1つの態様においては、本発明は、以下のアミノ酸を含むタンパク質を使用する:

(配列番号9)。
【0029】
1つの態様においては、本発明は、以下のアミノ酸を含むタンパク質を使用する:

(配列番号10)。
【0030】
もう1つの態様においては、使用されるタンパク質/抗原は配列番号7および/または配列番号8および/または配列番号9の配列を含む。
【0031】
もう1つの態様においては、使用されるタンパク質/抗原は配列番号7および/または配列番号8および/または配列番号10の配列を含む。
【0032】
1つの態様においては、コードされるタンパク質/抗原は配列番号1または3である。
【0033】
配列番号1に示されるタンパク質配列は新規であり、本発明の1つの態様を構成する。
【0034】
配列番号1のタンパク質配列をコードするポリヌクレオチド、特に、配列番号2のポリヌクレオチド配列も、本発明の1つの態様を構成する。このポリヌクレオチド配列(配列番号2)はヒトにおける発現に関して既にコドン最適化されている。
【0035】
場合によっては、配列番号1のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列はコドン最適化されうる。
【0036】
本発明はまた、配列番号1の新規ハイブリッド融合タンパク質の製造において使用される又は本発明のウイルスベクターの製造において使用されるベクター/プラスミド/宿主にも及ぶ。
【0037】
タンパク質の製造および単離が必要な場合には、該タンパク質をコードする配列を合成のための適当な宿主内に挿入するために、適当なプラスミドを使用することができる。適当なプラスミドの一例は、適当な発現カセットを運搬するための2ミクロンに基づくベクターであるpRIT15546である。該プラスミドは、一般に、選択を補助するための組込まれたマーカー、例えば、抗生物質耐性またはLEU2もしくはHIS栄養要求性をコードする遺伝子を含有する。
【0038】
宿主細胞は原核生物または真核生物でありうるが、好ましくは、酵母、例えばSaccharomyces(例えば、Saccharomyces cerevisiae、例えば、名称RIT DC5 cir(o)、寄託者Smith Kline-RITであるATCCデータベース(受託番号20820)におけるDC5)および非Saccharomyces酵母である。これらには、Schizosaccharomyces(例えば、Schizosaccharomyces pombe)、Kluyveromyces(例えば、Kluyveromyces lactis)、Pichia(例えば、Pichia pastoris)、Hansenula(例えば、Hansenula polymorpha)、Yarrowia(例えば、Yarrowia lipolytica)およびSchwanniomyces(例えば、Schwanniomyces occidentalis)が含まれる。
【0039】
1つの態様においては、本発明は、マラリアの治療または予防のための、本発明のベクターまたは配列番号1のタンパク質の使用を提供する。
【0040】
1つの態様においては、本発明は、本発明のウイルスベクターと、賦形剤、例えば注射に適した等張性担体とを含む医薬製剤を提供する。適当な賦形剤は、後記において、より詳しく説明されている。
【0041】
1つの実施形態においては、製剤は、
・本発明のアデノウイルスベクター、
・マラリア抗原、例えばリポタンパク質粒子、特にRTS,S、および
・場合によっては、アジュバント、例えば、サポニンおよび/または3D-MPLを含むアジュバント
を含む。
【0042】
ベクターが配列番号1の配列をコードする場合、該ベクターは、RTS,Sとして公知のタンパク質を使用する治療計画における使用に特に適している。これは、アデノウイルスベクターによりコードされるタンパク質が、可能な限り厳密に、RTS,Sにおける「RT」成分に対応しているからである。RTS,Sを使用する計画における該ベクターの使用はRTS,Sの効力を効率的に増強しうると考えられる。
【0043】
本明細書に記載されているウイルスベクターは、マラリアワクチンの成分としての使用に適している。本発明のウイルスベクターは、感染に対する適度な保護をもたらすために他の抗原を含む他の成分と組合せて使用される必要がありうる。それでも、本発明のベクターは、少なくとも、ワクチンまたは治療計画の成分としての使用に適している。
【0044】
RTS,S
RTS,Sは、(例えば、P. falciparum NF54/3D7株から)WO 93/10152に記載されているとおりに製造されうる。RTS発現カセットおよび推定翻訳産物のヌクレオチド配列はWO 93/10152の図9(そこにおいては、RTS*と称されている)に記載されている。
【0045】
本明細書の文脈においては、賦形剤は、それ自体は治療効果を有さない、医薬製剤中の成分を意味する。希釈剤または担体は賦形剤の定義に含まれる。適当な担体には、PBS、塩類液(食塩水)などが含まれる。アジュバントも賦形剤の定義に含まれる。なぜなら、アジュバントはin vivoで生理的効果を示しうるが、この効果は全体的なものであり、治療成分の非存在下では特異的治療効果ではないからである。
【0046】
アジュバント
個々のアジュバントは、金属塩、水中油型エマルション、Toll様受容体アゴニスト(特にToll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニスト)、サポニンまたはそれらの組合せの群から選ばれるアジュバントである。
【0047】
1つの実施形態においては、該アジュバントはToll様受容体(TLR)4リガンド、例えばアゴニスト、例えばリピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドA、より詳しくは3-デアシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0048】
3-デアシル化モノホスホリルリピドAは米国特許第4,912,094号および英国特許出願第2,220,211号(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem, Montana, USAから入手可能である。
【0049】
3D-MPLはCorixa社により商標MPL(登録商標)で販売されており、主として、IFN-g(Th1)表現型を伴うCD4+ T細胞の応答を促進する。それは、GB 2 220 211 Aに開示されている方法に従い製造されうる。化学的には、それは、3、4、5または6本のアシル化鎖を有する3-デアシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。一般に、本発明の組成物においては、小粒子3D-MPLが使用される。小粒子3-MPLは、それが0.22μmフィルターで滅菌濾過されうるような粒径を有する。そのような調製物はWO 94/21292に記載されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、以下のものを含む(それらに限定されるものではない)TLR4アゴニストであると考えられている。
【0050】
OM174 (2-デオキシ-6-O-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスファート)(WO 95/14026)、
OM 294 DP (3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジヒドロゲノホスファート)(WO99/64301およびWO 00/0462)、
OM 197 MP-Ac DP (3S-,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジヒドロゲノホスファート 10-(6-アミノヘキサノアート)(WO 01/46127)。
【0051】
典型的には、3D-MPLが使用される場合、抗原および3D-MPLは水中油型エマルションまたは多重水中油型エマルションとして送達される。3D-MPLの取り込みは、それがエフェクターT細胞応答の刺激物質であることから、有利である。
【0052】
使用されうる他のTLR4リガンドとしては、アルキルグルコサミニドホスファート(AGP)、例えば、WO 9850399もしくはUS 6303347(AGPの製造方法も開示されている)に開示されているもの、またはUS 6764840に開示されているAGPの製薬上許容される塩が挙げられる。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、いくつかはTLR4アンタゴニストである。いずれもアジュバントとして有用であると考えられる。
【0053】
本発明において使用されるもう1つの免疫刺激物質はQuil(クイル)Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南米樹木Quilaja Saponaria Molinaから単離されたサポニン調製物であり、1974年にDalsgaardら(“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)により、アジュバント活性を有すると最初に記載された。Quil Aに伴う毒性を有することなくアジュバント活性を保有する、Quil Aの精製断片、例えばQS7およびQS21(QA7およびQA21としても公知である)が、HPLCにより単離されている。QS21は、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および優勢なIgG2a抗体応答を誘導する、Quillaja saponaria Molinaの樹皮に由来する天然サポニンである。
【0054】
ステロールを更に含むQS21の特定の製剤が記載されている(WO 96/33739)。QS21:ステロールの比は、典型的には、1:100〜1:1(重量対重量)のオーダーである。一般に、過剰なステロールが存在し、QS21:ステロールの比は少なくとも1:2 w/wである。典型的には、ヒトへの投与では、QS21およびステロールは、用量当たり約1μg〜約100μg、例えば約10μg〜約50μgの範囲で、ワクチン中に存在する。
【0055】
リポソーム製剤は、一般に、中性脂質、例えばホスファチジルコリン(これは通常、室温で非結晶性である)、例えば卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンまたはジラウリルホスファチジルコリンを含有する。該リポソームは、飽和脂質から構成されるリポソームの場合、リポソーム-QS21構造の安定性を増強する荷電脂質をも含有しうる。これらの場合、荷電脂質の量は、しばしば、1〜20% w/w、例えば5〜10%である。リン脂質に対するステロールの比率は1〜50%(mol/mol)、例えば20〜25%である。
【0056】
これらの組成物は、MPL(3D-MPLとしても公知である3-デアシル化モノ-ホスホリルリピドA)を含有しうる。3D-MPLは、4、5または6本のアシル化鎖を有する3種類のデ-O-アシル化モノホスホルリピドAの混合物としてGB 2 220 211(Ribi)にて公知であり、Ribi Immunochem, Montanaにより製造されている。
【0057】
サポニンはミセル、混合ミセル(限定的なものではないが一般には胆汁酸塩を伴う)の形態であることが可能であり、あるいはISCOMマトリックス(EP 0 109 942)、リポソームまたは関連コロイド構造、例えば虫状(らせん状)または環状多量体複合体または脂質/層化構造、およびラメラ(コレステロールおよび脂質と共に製剤化された場合)の形態、あるいは水中油型エマルション(例えば、WO 95/17210におけるもの)の形態であることが可能である。
【0058】
通常、該サポニンは、リポソーム製剤、ISCOMまたは水中油型エマルションの形態で提供される。
【0059】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドも使用されうる。本発明のアジュバントまたはワクチンにおいて使用されるオリゴヌクレオチドの具体例には、CpG含有オリゴヌクレオチド、一般には、少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも6つ以上のヌクレオチドにより隔てられた2以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。CpGモチーフはシトシンヌクレオチドおよびそれに続くグアニンヌクレオチドである。CpGオリゴヌクレオチドは典型的にはデオキシヌクレオチドである。1つの実施形態においては、該オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間には、ホスホロジチオアート、またはより好ましくはホスホロチオアート結合が存在するが、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内である。混合ヌクレオチド間連結を有するオリゴヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオアートの製造方法はUS 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0060】
オリゴヌクレオチドの具体例としては以下のものが挙げられる:

該配列はホスホロチオアート修飾ヌクレオチド間連結を含有しうる。
【0061】
他のCpGオリゴヌクレオチドは、重要でない欠失または付加を伴う前記の1以上の配列を含みうる。
【0062】
該CpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知のいずれかの方法(例えば、EP 468520を参照されたい)により合成されうる。簡便には、そのようなオリゴヌクレオチドは、自動合成装置を使用して合成されうる。
【0063】
TLR2アゴニストの具体例には、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が含まれる。
【0064】
ImiquimodおよびResiquimodのようなイミダゾキノリンは公知TLR7アゴニストである。一本鎖RNAも公知TLRアゴニスト(ヒトにおけるTLR8およびマウスにおけるTLR7)であり、二本鎖RNAおよびポリIC(ウイルスRNAの市販合成擬似体であるポリイノシン-ポリシチジル酸)はTLR3アゴニストの典型例である。3D-MPLはTLR4アゴニストの一例であり、CpGはTLR9アゴニストの一例である。
【0065】
免疫刺激物質が代替的または追加的に含まれうる。1つの実施形態においては、この免疫刺激物質は3-デアシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0066】
1つの態様においては、該アジュバントは3D-MPLを含む。
【0067】
1つの態様においては、該アジュバントはQS21を含む。
【0068】
1つの態様においては、該アジュバントはCpGを含む。
【0069】
1つの態様においては、該アジュバントは水中油型エマルションとして配合される。
【0070】
1つの態様においては、該アジュバントはリポソームとして配合される。
【0071】
アジュバントの組合せには、3D-MPLおよびQS21(EP 0 671 948 B1)水中油型エマルション、または他の担体と共に配合される3D-MPLおよびQS21もしくは3D-MPLを含むリポソーム製剤(EP 0 689 454 B1)が含まれる。他の好ましいアジュバント系は、US 6558670およびUS 6544518に記載されている3D-MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチドの組合せを含む。
【0072】
製剤
ワクチンの製造は、全般的には、New Trends and Developments in Vaccines, Vollerら編, University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A., 1978に記載されている。リポソーム内への封入は、例えばFullerton, 米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0073】
本発明の製剤は予防目的および治療目的の両方に使用されうる。したがって、本発明は、医薬における使用のための、例えば、マラリアの治療および/または予防のための、本明細書に記載のワクチン組成物を提供する。
【0074】
1つの態様においては、本発明は、本発明のC7アデノウイルスベクター、およびマラリア抗原、例えばRTS,Sまたは配列番号1の新規抗原またはそのウイルス様粒子、および賦形剤を、場合によってはアジュバントの存在下で含む組成物を提供する。
【0075】
本明細書の文脈における免疫原性は、免疫応答を惹起する能力を意味すると意図され、ここで、該応答は関連製剤中のマラリア成分に特異的である。この応答は適当なアジュバントおよび/または追加抗原刺激の存在を要しうる。例えば、適当な免疫原性応答を得るためには、元の用量と同様の又はそれ未満の用量を含む追加抗原刺激(ブースター)が要求されうる。
【0076】
本発明の組成物/医薬製剤は、1以上の他の抗原、例えばP. falcipariumおよび/またはP. vivaxに由来する抗原を、混合されて含むことが可能であり、ここで、該抗原は、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはその断片から選ばれる。
【0077】
P falciparumに由来する抗原の他の具体例には、PfEMP-1、Pfs 16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが含まれる。他のPlasmodium抗原には、P. falciparum EBA、GLURP、RAP1、RAP2、Sequestrin(セクエストリン)、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のPlasmodium属種におけるそれらの類似体(アナログ)が含まれる。
【0078】
本発明はまた、マラリア抗原をコードするための、例えば、特に、本明細書に記載されているとおり、マラリアの治療および/または予防のための、あるいはそれに対する医薬の製造のための、C7の使用に関する。
【0079】
本発明はまた、本発明の1以上の態様の治療的有効量を投与することを含む治療方法を含む。場合によっては、本発明のC7ウイルスベクターは、場合によっては例えば3D-MPLおよび/またはQS21のようなサポニンを含むアジュバントの存在下、マラリア抗原、例えばRTS,Sまたは配列番号1の抗原と共に共投与または共配合されうる。
【0080】
C7ベクターはまた、同じ又は異なる抗原をコードする異なる血清型および/または起源の別のアデノウイルスベクターと共に共投与または共配合されうる。
【0081】
本発明は、初回-追加抗原刺激法における、本明細書に記載のいずれかの態様の使用にも及び、例えば、この場合、時点ゼロにおいて初回抗原刺激量(そして例えば3ヶ月以内に後続の初回抗原刺激)が投与され、最終初回抗原投与の約4、5、6、7、8、9、10、11または12週後に追加抗原が投与され、場合によっては、最初の追加抗原投与の1年後までに、更なる追加抗原が投与される。
【0082】
有利には、前記の組合せワクチンを含む本発明の1以上の態様は、特異的体液性(すなわち、抗体応答)および/または細胞性免疫応答(例えば、CD8+および/またはCD4+)、例えば抗体応答ならびにCD8+および/またはCD4+応答、特にCD8+および抗体応答、すなわち、(適宜)CSタンパク質および/またはS抗原に特異的な応答を刺激する。
【0083】
このタイプのバランス化された免疫応答は、マラリア感染に対するいわゆる無菌(sterile)保護を得るために要求されうる。
【0084】
さらに、組合せの抗体応答は、アジュバント化タンパク質のみの方法に対する抗体応答と比較して増強されうる。
【0085】
1つの実施形態においては、本発明は、初回-追加抗原刺激法の補足的成分として、
・同じ又は異なるマラリア抗原をコードするC7アデノウイルスベクター、
・マラリア抗原、例えばP. falciparum由来のCSタンパク質をコードする別のウイルスベクター、例えばヒトアデノウイルスベクター、例えばAd5もしくはAd35、または異なる血清型(すなわち、C7以外)のサルアデノウイルスベクター、ならびに/または
・マラリア抗原、例えばRTS,S、ならびにアジュバント、例えばサポニンおよび/または3D-MPLを含むアジュバント
を使用する該初回-追加抗原刺激法における初回抗原または追加抗原としてのC7の使用を提供する。
【0086】
本発明はまた、マラリア感染の治療および/または予防のための医薬の製造のための、本明細書に記載されている態様のいずれかを提供する。
【0087】

使用する3D-MPLの量は一般に少量であるが、ワクチン製剤に応じて、1〜1000μg/用量、例えば1〜500μg/用量の範囲、例えば1〜100μg/用量、例えば50または25μg/用量の範囲でありうる。
【0088】
本発明のアジュバントまたはワクチンにおけるCpGまたは免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は一般に少量であるが、ワクチン製剤に応じて、1〜1000μg/用量、例えば1〜500μg/用量の範囲、例えば1〜100μg/用量の範囲でありうる。
【0089】
本発明のアジュバントにおいて使用するサポニンの量は1〜1000μg/用量、例えば1〜500μg/用量、例えば1〜250μg/用量の範囲、特に1〜100μg/用量、例えば50または25μg/用量の範囲でありうる。
【0090】
タンパク質を投与する場合、その用量は、例えば1〜500μg、例えば10〜100μg、特に20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75または80μg/用量でありうる。
【0091】
アデノウイルスベクターを投与する場合、その用量は、例えば103〜1016 vpu、例えば106〜1010 vpuでありうる。
【0092】
組合せを用いる場合、該組合せの各成分に用いられる量は、その成分が単独で投与される量に対応しうる。
【0093】
本発明は、本発明の組合せにおいて使用される要素を含むキットにも及ぶ。
【0094】
本発明は更に、本発明のアデノウイルスベクターの製造方法およびそれを含む製剤に関する。
【0095】
本発明はまた、配列番号1のタンパク質の製造方法に関する。
【0096】
本明細書の文脈においては、含んでなる、とは、含む、と解釈されるべきである。
【0097】
本発明は、或る要素を含むと本明細書に記載されている実施形態に対応する、関連要素からなる又は関連要素から実質的になる実施形態に及ぶ。
【0098】
本明細書の背景の節における考察は、本発明をその技術的背景内に置くという目的で記載されている。それは、当技術分野において何が公知であるのかについての自認であると解釈されるべきではなく、特に、何が技術常識に相当するのかの自認ではない。
【0099】
(実施例)
以下の実施例を、本発明に用いることのできる方法論を例示するために示す。
【実施例1】
【0100】
Medigenomix社により合成遺伝子が製造された。該遺伝子をpCR2.1-TOPO-TAクローニングベクター(Invitrogen;図1を参照されたい)内にクローニングした。このベクターをNotIおよびBamHIで消化し、組換えシャトルプラスミドベクター(-Ade2)を作製した。該シャトルプラスミドの地図を図2に示す。
【0101】
ウイルスレスキューのための方法論および発現カセットの説明
発現カセットは、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターおよび第1エキソン、プラスミドpCI(Promegaから購入)由来のイントロン、Ade2をコードするDNA、およびウサギグロビンポリアデニル化シグナルを含有する。該完全カセットは、それぞれ制限酵素I-CeuIおよびPI-SceIに対する認識部位に隣接している。該発現カセットを、I-CeuIおよびPI-SceIを使用して該シャトルプラスミドから切り出し、SAdV-24のE1欠失ゲノム(すなわちC7)-pC7000pkGFP(Royら, Hum Gene Ther. (2004) 5:519-530に記載されている)のプラスミド分子クローン内に導入して、図3に示すプラスミドを得た。該プラスミド分子クローンDNAを制限酵素PacIでの消化により線状化し、HEK293細胞内にトランスフェクトして組換えアデノウイルスをレスキューした。標準的な技術を用いて、該アデノウイルスを増殖させ、増幅し、精製した。
【0102】
I-CeuIからPI-Sce認識部位までの(Ade2)の発現カセットの配列を配列番号18に示す。
【実施例2】
【0103】
C57Bl/6マウスにおけるC7-Ade1およびC7-Ade2の免疫原性
構築物Ade1またはAde2のいずれかを発現するC7チンプアデノウイルス(chimpadenovirus)の、10e10、10e9、10e8ウイルス粒子の用量範囲で、C57Bl/6マウスを筋肉内に1回、免疫化した。陽性対照として、構築物Ade1またはAde2のいずれかを発現するヒトアデノウイルス5(10e9および10e8の用量)で数匹のマウスを免疫化した。陰性対照として、空C7および空Ad5ウイルスベクターで数匹のマウスを免疫化した。
【0104】
免疫化後第14日、28日、34日および49日に末梢血を集め、プールし、対象の配列、すなわち、CSタンパク質のN末端領域(N末端)またはC末端領域(C末端)を包含する15マー(15量体)ペプチドのプールでの一晩のin vitro再刺激の後、IL-2および/またはIFN-ガンマを産生するAg特異的CD4およびCD8 T細胞応答をフローサイトメトリーにより測定した。また、陰性対照として、幾つかの細胞を培地内でin vitroで一晩培養した(未刺激)。該ペプチド刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答から、未刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答を差し引くことにより、該Ag特異的応答を計算した。
【0105】
結果は、前記の実験条件下、両方の構築物がCS特異的CD4およびCD8 T細胞応答を誘導したことを示している(図4〜15)。注目すべきことに、C末端特異的CD8 T細胞応答は、Ade2インサートを含有するアデノウイルスで免疫化されたマウスにおいてのみ検出された(図4および8)。特に、これらのC末端特異的CD8 T細胞応答は、10e10vp のC7 Ade2または10e9vp のAd5 Ade2で免疫化されたマウスにおいて類似していた(図8)。
【0106】
また、免疫化の48日後に集めた血清に関してELISAにより抗CS抗体応答を測定した。特に、測定したのは、R32LRポリペプチド(すなわち、P. falciparum CSPの中央部分を包含するもの)に対する全Ig応答であった(Mettensら, Vaccine 2008)。結果は、C7 Ade1またはC7 Ade2での1回の免疫化が低レベルのR32LR特異的抗体応答を誘導することを示している。この応答の強度は、免疫化に使用されるウイルス粒子の数と相関する(用量範囲効果)。
【実施例3】
【0107】
CB6F1マウスにおけるC7-Ade2の免疫原性
Ade2構築物を発現するC7チンプアデノウイルス(chimpadenovirus)の、10e10、10e9、10e8ウイルス粒子の用量範囲で、CB6F1マウスを筋肉内に1回、免疫化した(5プールのマウス/群)。免疫化後第21日、28日および35日に末梢血を集め、プールし、対象の配列、すなわち、CSタンパク質のN末端領域(N末端)またはC末端領域(C末端)を包含する15マーペプチドのプールでの一晩のin vitro再刺激の後、IL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCS C末端およびCS N末端特異的CD4およびCD8 T細胞応答をフローサイトメトリーにより測定した。また、陰性対照として、幾つかの細胞を培地内でin vitroで一晩培養した(未刺激)。該ペプチド刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答から、未刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答を差し引くことにより、該Ag特異的応答を計算した。
【0108】
結果は、このマウス系統においては、10e9vpまたは10e10vpのC7 Ade2での1回の免疫化がC末端およびN末端特異的CD4およびCD8 T細胞応答を誘導することを示している(図17〜20)。特に、平均観察応答の強度は、10e9vp用量を使用した場合には、より高くなかったとしても、少なくとも同等である。CS特異的CD8 T細胞応答は主としてN末端特異的であるが、CS特異的CD4 T細胞応答はCSタンパク質のN末端およびC末端領域を同等に標的化している。
【0109】
CS特異的CD4およびCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルも決定された。それは、試験された全ての時点にわたって類似していた。免疫化の28日後に示されたプロファイルが図21〜24に示されており、試験されたその他の時点を代表するものである。簡潔に説明すると、該CS特異的CD8 T細胞応答は、大部分は、IFNgのみを産生するCD8 T細胞によりもたらされる(図21および22)。また、該CS特異的CD4 T細胞応答はIFNg産生CD4 T細胞、そしてそれより低い度合ではあるが、IL-2のみ又はIL-2およびIFNgの両方を産生するCD4 T細胞によりもたらされる(図23および24)。
【実施例4】
【0110】
CB6F1マウスにおけるRTS,S/AS01Bを使用する初回/追加抗原刺激または共配合におけるC7-Ade2の免疫原性
本発明者らは、CB6F1マウスにおけるRTS,S/AS01Bを使用する初回-追加抗原刺激または共配合(コンボ)においてAde2構築物を発現するC7チンプアデノウイルス(chimpadenovirus)の免疫原性を試験した(4プールのマウス/群)。AS01Bは、リポソームで配合された3D-MPLおよびQS21を含有するアジュバント系である。以下のとおりに、第0日、14日および28日にマウスを筋肉内に免疫化した。
【表1】

【0111】
ここで、
A = 10e9 vpのC7 Ade2、
P = 5μg RTS,S/50μl AS01B、
C = 10e10 vpのC7 Ade2+ 5μg RTS,S/50μl AS01B。
【0112】
免疫化後第21日(7d pII)、35日(7d pIII)、49日(21d pIII)、63日(35d pIII)、77日(49d pIII)に末梢血を集め、プールし、対象の配列(CS N末端、CS C末端またはHBs)を包含する15マーペプチドのプールでの一晩のin vitro再刺激の後、IL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCS C末端、CS N末端およびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答をフローサイトメトリーにより測定した。また、陰性対照として、幾つかの細胞を培地内でin vitroで一晩培養した(未刺激)。該ペプチド刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答から、未刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答を差し引くことにより、該Ag特異的応答を計算した。
【0113】
結果は以下のことを示している。すなわち、
・APP、PPAおよびCCCは全て、N末端特異的CD8 T細胞応答を誘導する。7d pIIの時点で、N末端特異的CD8 T細胞応答がCCC群において観察され、ついでAPP群において観察される。試験したその後の時点(21d pIII、35d pIIIおよび49d pIII)では、これらの応答はAPP、PPAおよびCCC群において類似した強度であり、そのように維持されている(図25)。
・APP、PPAおよびCCCは、3回目の免疫化の49日後に尚も持続するC末端特異的CD8 T細胞応答を誘導する(図26)。
・N末端特異的CD4 T細胞応答は、主として、APPまたはCCCで免疫化されたマウスにおいて検出されており、APP群において、より高い強度のそのような応答が検出されている(図27)。
・全ての群がC末端特異的CD4 T細胞応答を示している。しかし、APPおよびCCCは、より高いレベルの類似したC末端特異的CD4 T細胞応答を誘導し、これらは、試験した全ての時点においてPPAおよびPPPにより誘導されたものより約2〜3倍高い(図28)。
・HBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答は、PPPで免疫化された動物においては、APP、PPAまたはCCCで免疫化された場合より高い(図29および30)。
・CCC治療計画は、CSおよびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答の同時誘導を伴う唯一ものである。
【0114】
CSおよびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルも測定され、試験された全ての時点にわたって類似していた。試験された全ての時点の代表例として、21d pIII時点からのものを以下に示す(図31〜36)。簡潔に説明すると、Ag特異的CD8 T細胞応答は、大部分は、IFNgを産生するCD8 T細胞によりもたらされる(図31〜33)。これとは対照的に、Ag特異的CD4 T細胞応答は、IFNg、IFNgおよびIL-2を産生するCD4 T細胞と、それより低い度合ではあるが、IL-2を産生するCD4 T細胞との混合物によりもたらされる(図34〜36)。
【0115】
また、3回目の免疫化の14日後および42日後に集めた血清に関してELISAによりAg特異的抗体応答を測定した。特に、R32LRポリペプチド(すなわち、P. falciparum CSPの中央部分を包含するもの)に対する及びHBsに対する全Ig応答を測定した(Mettensら, Vaccine 2008)。全ての免疫化法が、試験した最終時点(すなわち、3回目の免疫化の42日後)まで持続するR32LRおよびHBs特異的抗体応答を惹起した(図37および38)。
【実施例5】
【0116】
CB6F1マウスにおけるC7-Ade2+RTS,S/AS01Bの共配合の免疫原性
この実験においては、RTS,S/AS01Bと共配合(Combo)されたチンプアデノウイルス(chimpadenovirus)C7 Ade2の免疫原性を比較した。特に、CB6F1マウスにおけるコンボの1回、2回または3回の注射により惹起される免疫応答を比較した(4プールのマウス/群)。また、該コンボの2回の注射の間の異なる間隔(すなわち、14日および21日)を評価した。最後に、A-P-Pで免疫化されたマウスの群を該実験における対照として用いた。実験計画を以下にまとめる。
【表2】

【0117】
ここで、
A =10e9 vpのC7 Ade2、
P = 5μg RTS,S/50μl AS01B、
C = 10e10 vpのC7 Ade2+ 5μg RTS,S/50μl AS01B。
【0118】
第35日、42日、49日、63日および98日に末梢血を集め、プールし、対象の配列(すなわち、CSタンパク質のN末端領域(N末端)、C末端領域(C末端)またはHBs)を包含する15マーペプチドのプールでの一晩のin vitro再刺激の後、IL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCS C末端、CS N末端およびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答をフローサイトメトリーにより測定した。また、陰性対照として、幾つかの細胞を培地内でin vitroで一晩培養した(未刺激)。該ペプチド刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答から、未刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答を差し引くことにより、該Ag特異的応答を計算した。
【0119】
結果は、これらの実験条件下、CS C末端、CS N末端およびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答を同時に誘導するためにはコンボの2回の免疫化が必要であったことを示している。コンボの2回の免疫化の間の間隔は、検出されるAg特異的T細胞応答のレベルに有意な影響を及ぼさないようであった。コンボで3回免疫化されたマウスにおいては、より高いHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答の傾向が認められた。Ag特異的T細胞応答の速度論を図39〜44に示す。
【0120】
CSおよびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイルも測定し、試験された全ての時点にわたって類似していた。試験された全ての時点の代表例として、該研究の第42日からのものを以下に示す(図42〜47)。簡潔に説明すると、Ag特異的CD8 T細胞応答は、大部分は、IFNgを産生するCD8 T細胞によりもたらされる(図45〜47)。これとは対照的に、Ag特異的CD4 T細胞応答は、IFNg、IFNgおよびIL-2を産生するCD4 T細胞と、それより低い度合ではあるが、IL-2を産生するCD4 T細胞との混合物によりもたらされる(図48〜50)。
【0121】
また、該研究の第56日および第99日に集めた血清に関してELISAによりAg特異的抗体応答を測定した。特に、R32LRポリペプチド(すなわち、P. falciparum CSPの中央部分を包含するもの)に対する及びHBsに対する全Ig応答を測定した(Mettensら, Vaccine 2008)。全ての免疫化法が、試験した最終時点(すなわち、3回目の免疫化の42日後)まで持続するR32LRおよびHBs特異的抗体応答を惹起した。各群内で、これらの応答は、試験した両方の時点において同様の強度であった。また、コンボで免疫化した群を比較したところ、3用量のコンボで免疫化された群において、より高い応答の傾向が認められた(図51および52)。
【実施例6】
【0122】
CB6F1マウスにおいてCSおよびHBs T細胞およびAb応答を同時に惹起するための、コンボの各成分(すなわち、C7-Ade2、RTS,SおよびAS01B)の必要性の評価
この実験においては、CSおよびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答を同時に惹起するための、コンボの各成分(すなわち、C7-Ade2、RTS,SおよびAS01B)の必要性を評価した。この実験においては、以下に示すとおり、コンボまたはその成分でCB6F1マウス(6プールのマウス/群)を筋肉内に2回(第0日および第14日)免疫化した。
【表3】

【0123】
ここで、
A =10e9 vpのC7 Ade2、
P = 5μg RTS,S/50μl AS01B、
C =10e9 vpのC7 Ade2 + 5μg RTS,S/50μl AS01B、
C7空 =10e9 vpのC7空ベクター(インサート無し)、
RTS,S = 5μgのRTS,S、
AS01B = GSK所有権所有アジュバント系1B、
バッファー= AS01Bバッファー(免疫刺激物質無し)。
【0124】
第14日、28日、70日、91日および112日に末梢血を集め、プールし、対象の配列(すなわち、CSタンパク質のN末端領域(N末端)、C末端領域(C末端)またはHBs)を包含する15マーペプチドのプールでの一晩のin vitro再刺激の後、IL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCS C末端、CS N末端およびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答をフローサイトメトリーにより測定した。また、陰性対照として、幾つかの細胞を培地内でin vitroで一晩培養した(未刺激)。該ペプチド刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答から、未刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答を差し引くことにより、該Ag特異的応答を計算した。
【0125】
また、該研究の第42日および第84日に集めた血清に関してELISAによりAg特異的抗体応答を測定した。特に、R32LRポリペプチド(すなわち、P. falciparum CSPの中央部分を包含するもの)に対する及びHBsに対する全Ig応答を測定した(Mettensら, Vaccine 2008)。
【0126】
結果は、CS(N末端およびC末端)CD4およびCD8 T細胞応答(図53〜58)ならびにR32LRおよびHBs抗体応答(図65および66)を同時に惹起するためにはコンボの各成分が必要であることを示している。
【0127】
CSおよびHBs特異的CD4およびCD8 T細胞応答の平均サイトカインプロファイルをも該研究の各時点で測定した。これらを図59〜64に示す。簡潔に説明すると、Ag特異的CD8 T細胞応答は、大部分は、IFNgを産生するCD8 T細胞によりもたらされる(図59〜61)。これとは対照的に、Ag特異的CD4 T細胞応答は、IFNg、IFNgおよびIL-2を産生するCD4 T細胞と、それより低い度合ではあるが、IL-2を産生するCD4 T細胞との混合物によりもたらされる(図62〜64)。
【実施例7】
【0128】
CB6F1マウスにおける合成C7 Ade2の免疫原性
Ade2構築物を発現する合成C7チンプアデノウイルス(chimpadenovirus)を利用可能にし、マウスにおけるその免疫原性を元のC7 Ade2の場合と比較した。この実験においては、CB6F1マウス(6プールのマウス/群)を10e9 vpの元のC7 Ade2またはその合成対応体で免疫化した。免疫化の21日後、28日後および35日後に末梢血を集め、プールし、対象の配列(すなわち、CSタンパク質のN末端領域(N末端)、C末端領域(C末端))を包含する15マーペプチドのプールでの一晩のin vitro再刺激の後、IL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCS C末端およびCS N末端CD4およびCD8 T細胞応答をフローサイトメトリーにより測定した。また、陰性対照として、幾つかの細胞を培地内でin vitroで一晩培養した(未刺激)。該ペプチド刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答から、未刺激細胞によりもたらされた平均サイトカイン応答を差し引くことにより、該Ag特異的応答を計算した。
【0129】
結果は、両方のC7アデノウイルスが同レベルのN末端およびC末端特異的CD4およびCD8 T細胞応答を惹起したことを示している。特に、使用したウイルスベクター(元のまたは合成の)に無関係に、Ag特異的CD8 T細胞応答は主としてN末端特異的であった(図67および68)。N末端およびC末端特異的CD4 T細胞応答は、使用したウイルスベクターに無関係に、同様の強度であった(図69および70)。CS特異的CD4およびCD8 T細胞応答の平均サイトカインプロファイルをも測定し、これらを図71〜74に示す。簡潔に説明すると、Ag特異的CD8 T細胞応答は、大部分は、IFNgを産生するCD8 T細胞によりもたらされる(図71〜72)。これとは対照的に、Ag特異的CD4 T細胞応答は、IFNg、IFNgおよびIL-2を産生するCD4 T細胞と、それより低い度合ではあるが、IL-2を産生するCD4 T細胞との混合物によりもたらされる(図73〜74)。
【0130】
配列番号1
アミノ酸配列

配列番号2
ヌクレオチド配列

配列番号3

配列番号4

配列番号5
チンプアデノ 7(WO 03/046124の配列番号17)

配列番号6
チンプアデノ 7(WO 03/046124の配列番号20)


配列番号17
配列番号3のタンパク質の発現カセットの配列。タンパク質コード領域は下線で示されている。

配列番号18
Ade2発現カセットの配列を以下に示す。タンパク質コード領域は下線で示されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
P. falciparumからのCSタンパク質またはその断片を含むタンパク質をコードする複製欠損型サルアデノウイルスベクターC7。
【請求項2】
コードされるタンパク質が配列番号7の配列を含む、請求項1記載のウイルスベクター。
【請求項3】
コードされるタンパク質が配列番号8の配列を含む、請求項1または請求項2記載のウイルスベクター。
【請求項4】
コードされるタンパク質が配列番号1の配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項5】
コードされるタンパク質が配列番号3の配列を有する、請求項1または請求項2記載のウイルスベクター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクターと賦形剤とを含んでなる組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクターとアジュバントとを含んでなる、マラリアの治療または予防のためのワクチン組成物。
【請求項8】
タンパク質を更に含む、請求項7記載のワクチン。
【請求項9】
該タンパク質がRTS,Sである、請求項8記載のワクチン。
【請求項10】
(1)P. falciparumからのCSタンパク質またはその断片を含むタンパク質をコードする複製欠損型サルアデノウイルスベクターC7、(2)マラリア抗原、および(3)アジュバントを含んでなるワクチン組成物。
【請求項11】
(1)P. falciparumからのCSタンパク質またはその断片を含むタンパク質をコードする複製欠損型サルアデノウイルスベクターC7、(2)マラリア抗原、および(3)アジュバントを含んでなるキット。
【請求項12】
該アデノウイルスベクターC7によりコードされるタンパク質が配列番号1の配列を有する、請求項10または請求項11記載のワクチンまたはキット。
【請求項13】
該マラリア抗原がRTS,Sである、請求項7〜12のいずれか1項記載のワクチンまたはキット。
【請求項14】
該アジュバントが3D-MPLを含む、請求項7〜13のいずれか1項記載のワクチンまたはキット。
【請求項15】
該アジュバントがサポニンを含む、請求項7〜13のいずれか1項記載のワクチンまたはキット。
【請求項16】
該サポニンがQS21である、請求項15記載のワクチンまたはキット。
【請求項17】
該アジュバントが3D-MPLおよびQS21を含む、請求項7〜13のいずれか1項記載のワクチンまたはキット。
【請求項18】
該製剤が水中油型エマルションとして提供される、請求項7〜17のいずれか1項記載のワクチンまたはキット。
【請求項19】
該ワクチンがリポソーム製剤である、請求項7〜10または12〜17のいずれか1項記載のワクチン。
【請求項20】
(1)配列番号1の配列を有するP. falciparumからのCSタンパク質を含むタンパク質をコードする複製欠損型サルアデノウイルスベクターC7、(2)マラリア抗原RTS,S、ならびに(3)3D-MPLおよびQS21を含むアジュバントを含む、請求項10記載のワクチン組成物。
【請求項21】
請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクターの製造方法であって、
a.適当な細胞系上で該ベクターを増殖させ、
b.該ベクターを回収する工程を含んでなる、製造方法。
【請求項22】
請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクターを少なくとも1つの賦形剤/担体と混合する工程を含んでなる、請求項6記載の組成物または請求項7〜10もしくは12〜20のいずれか1項記載のワクチンの製造方法。
【請求項23】
マラリアの治療または予防のための、請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項24】
マラリアの治療または予防のための初回-追加抗原刺激法における初回抗原刺激または追加抗原刺激のための、請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項25】
マラリアの治療または予防のための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクターの使用。
【請求項26】
a.請求項1〜5のいずれか1項記載のウイルスベクター、
b.請求項6記載の組成物、または
c.請求項7〜10もしくは12〜20のいずれか1項記載のワクチン
の治療的有効量を投与することを含んでなる治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【公表番号】特表2011−505796(P2011−505796A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536451(P2010−536451)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066762
【国際公開番号】WO2009/071613
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】