説明

ワックスの高せん断酸化

本開示においては、少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを有するせん断装置及び少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを有する混合容器を備え、せん断装置の入口が混合容器の出口に流体連通しているシステムが記載されている。ある実施形態においては、せん断装置及び混合容器は流体連通のためのループを形成している。また、酸化剤を基質と混合することによって基質−酸化剤混合物を形成すること、及び基質−酸化剤混合物にせん断を加えることで生成物を形成することを有する高せん断酸化の方法が本明細書において開示されている。生成物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テレフタル酸、フェノール、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水フタル酸、硝酸、カプロラクタム、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、酸化ポリエチレンコポリマー、及び酸化ポリプロピレンコポリマーを含む。好適な酸化剤は、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府に援助された研究又は開発に関する陳述
適用なし。
【0002】
本発明は、主にポリマー及びワックスの酸化処理に関連している。より具体的には、本発明はポリマー及びワックスの酸化における高せん断の利用に関する。
【背景技術】
【0003】
酸化は反応の最も一般的なカテゴリーの一つであり、産業、軍事、医療、工学、一般消費財などの広い分野で利用されている。例えば、アルケンは酸化されることによって、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを生成することができる。他の例として、テレフタル酸、フェノール、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水フタル酸、硝酸、及びカプロラクタムが含まれる。
【0004】
低分子の酸化に加えて、ポリマーも、市販の商品(例えば、酸化ポリエチレンワックス)又は、更なる処理のための様々な官能基を備える重要な中間産物を生成するために酸化される。例えば、酸化ポリエチレンは、ポリマー処理のための潤滑剤中の成分として及び織物、床保護製品、革処理、水分散性コーティング、フルーツコーティング、及びインク中の水性エマルジョンとして有用である。さらに、ポリマー及びワックスの酸化は、分子量分布、粘度、密度、滴点などのポリマー及びワックスの性質を変化させることができる。可能なメカニズムは、長いポリマー分子を切断することによって、より短いポリマー鎖を生成することである。
【0005】
したがって、効率的で経済的な新たな酸化方法の開発に対して継続的な関心がもたれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5530046号明細書
【発明の概要】
【0007】
本開示においてはシステムが説明されている。システムは、少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備えるせん断装置と、基質源に流体接続されている少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える基質パイプと、酸化剤源に流体接続されている少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える酸化剤パイプと、蒸気源に流体接続されている少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える蒸気パイプとを有しており、基質パイプの少なくとも一つの出口と、酸化剤パイプの少なくとも一つの出口と、蒸気パイプの少なくとも一つの出口とがせん断装置の入口に流体接続している。ある実施形態においては、システムは、せん断装置を通る流体の流速及び滞留時間を制御するための少なくとも一つのポンプを更に備えている。
【0008】
ある実施形態においては、システムは、せん断装置の出口に流体接続された気化システムを更に備える。別の実施形態においては、システムは基質の温度を制御するために少なくとも一つの熱交換器をさらに備えている。さらに別の実施形態においては、システムは、酸化剤パイプにおける酸化剤の流量を制御するために気体導入システムを更に備えている。別の実施形態においては、システムは、蒸気パイプにおける蒸気の流量を制御するために蒸気導入システムを更に備えている。
【0009】
別の実施形態においては、システムはせん断装置の出口に流体接続されている少なくとも一つの貯蔵容器を更に備えている。ある場合、システムは、貯蔵容器の温度及び圧力を調節するための温度圧力制御システムを備えている。別の実施形態においては、せん断装置の出口が基質源に流体接続されており、再循環ループを形成している。
【0010】
開示される別のシステムは、少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備えるせん断装置と、基質源に流体接続されている少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える基質パイプと、蒸気源に流体接続された少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える蒸気パイプとを有しており、基質パイプの少なくとも一つの出口及び蒸気パイプの少なくとも一つの出口がせん断装置の入口に流体接続されている。別のシステムは、基質源に流体接続されている少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える基質パイプと、基質パイプの出口に流体接続された少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備える溶解装置と、溶解装置の出口に流体接続されている少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を備えるせん断装置とを有する。
【0011】
本開示においては方法が示されている。方法は、基質を供給すること、ここで、基質はポリマー又はワックスを含んでおり、酸化剤を供給すること、蒸気を供給すること、混合物を形成するために基質、酸化剤及び蒸気を混合すること、生成物を形成するために混合物にせん断を加えることを含む。ある実施形態においては、そのような方法における基質、酸化剤及び蒸気の混合することとせん断を加えることとは、せん断装置で同時に行われる。別の実施形態においては、方法は追加のせん断を加えるために生成物の少なくとも一部を再循環することを含む。
【0012】
あるケースでは、基質は高粘度の原油、ポリエチレン又はポリエチレンワックスを含む。あるケースでは、酸化剤は、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスからなるグループから選択される。ある実施形態においては、せん断を受ける混合物の流速又は滞留時間は制御されている。ある実施形態においては、酸化剤の流速は制御されている。ある実施形態においては、蒸気の流速は制御されている。別の実施形態においては、酸化剤に対する基質の割合、蒸気に対する基質の割合、又はその両方が制御されている。別の実施形態においては、混合物に加えられるせん断速度は制御されている。
【0013】
ある実施形態においては、混合物にせん断を加えることは少なくとも一つの以下の効果を実現する:基質の粘度を低下させる、基質の密度を変化させる、基質の滴点を変化させる、基質の平均分子量を低下させる。別の実施形態においては、混合物にせん断を加えることは、温度及び圧力の制御と共に行われる。ある実施形態においては、混合物にせん断を加えることは継続的に、半継続的に、又はバッチ式に行われる。別の実施形態においては、方法は高い温度及び圧力で生成物を貯蔵することを含む。
【0014】
開示される別の方法は、基質を供給すること、ここで、基質はポリマー又はワックスを含んでおり、基質に熱を加えること、及び生成物を形成するために加熱された基質にせん断を加えることを含む。ある実施形態においては、基質に熱を加えることは基質に蒸気を導入することを含む。別の実施形態においては、基質に熱を加えることは基質を融解することを含む。
【0015】
さらに、本明細書に記載される実施形態は高せん断酸化のためのシステムを表しており、それは、少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口を備えるせん断装置と、少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口を備える混合容器とを備えており、せん断装置の入口は混合容器の出口と流体連通されている。ある実施形態においては、気体を混合容器中に分散させるためにスパージャーが利用されている。ある実施形態においては、せん断装置及び混合容器がシステムにおける流体連通のためにループを形成している。あるケースにおいては、せん断装置を通る流体の流速及び滞留時間を制御するためにポンプが含まれている。別のあるケースの場合、せん断装置の温度及び圧力を調節するために温度圧力制御ユニットが含まれている。別のあるケースでは、せん断装置に入る流体の温度及び圧力を調節するために温度圧力制御ユニットが含まれている。さらに別のケースでは、混合容器の温度及び圧力を調節するために温度圧力制御ユニットが含まれている。ある実施形態においては、高せん断酸化システムは、せん断装置及び混合容器と流体連通している貯蔵容器を更に有している。あるケースでは、貯蔵容器に入る又は貯蔵容器から出る流体の流速を制御するためにポンプが含まれている。別のケースでは、貯蔵容器の温度及び圧力を調節するために温度圧力制御ユニットが含まれている。
【0016】
本明細書に記載される実施形態は、高せん断酸化の方法も示しており、それは、基質−酸化剤混合物を形成するために酸化剤を基質と混合すること、及び生成物を形成するために基質−酸化剤混合物にせん断を加えることを含む。生成物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テレフタル酸、フェノール、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水フタル酸、硝酸、カプロラクタム、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、酸化ポリエチレンコポリマー、及び酸化ポリプロピレンコポリマーを含む。好適な酸化剤は、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む。
【0017】
ある実施形態においては、気体の基質は、高せん断酸化用の酸化剤と混合される前に液状に凝縮される。あるケースにおいては、基質との酸化剤の混合は、せん断装置においてせん断ストレスを加える前に行われる。別のあるケースでは、基質と酸化剤を混合することと、せん断を加えることとは、せん断装置で同時に行われる。別の実施形態においては、基質及び酸化剤はバルクの(bulk)有機又は無機液体培地中で混合される。バルクの有機液体培地は脂肪族炭化水素を含む。バルクの無機液体培地は水を含む。あるケースでは、水は極度の高せん断条件下で解離されることで、基質を酸化するための酸化剤として機能する酸素を生じる。
【0018】
ある実施形態においては、形成された生成物は追加のせん断を加えるために再循環される。あるケースでは、酸化剤及び基質の混合は酸化剤を基質又は液体培地に分散させることを含む。例えば、気体の酸化剤は基質又は液体培地の連続相中に分散される。別のケースでは、攪拌又は超音波処理により更なる混合が行われる。制御されると共に協調されている処理のパラメータは、基質と酸化剤の割合、せん断を加えられる基質−酸化剤混合物の流速又は滞留時間、せん断速度、せん断を加える時間、温度及び圧力である。基質−酸化剤混合物にせん断を加えると、少なくとも一つの以下の効果が実現される:(a)ヒドロキシル、エステル、又は酸性基で基質を官能基化する、(b)基質の酸価を高める、(c)基質の粘度を下げる、(d)基質の平均分子量を減らす。ある場合、基質はポリエチレン及びポリエチレンワックスを含む。高せん断酸価処理によって軽度の酸化がおこり、それは高分子量ポリマーの切断及びその後の消滅によって低分子量のポリマーを形成し、それによって、ポリマーの粘度の低下を引き起こす。別のケースでは、基質は高粘度の原油を含む。酸化は制御されながら行われるため、低分子量組成物が高分子量組成物の開裂及びその後の消滅によって形成され、そして重質原油の粘度の低下を引き起こす。
【0019】
高せん断酸化は、室温から1000°Fの温度範囲で起こる。あるケースでは、作業温度は室温から600°Fの範囲である。別のケースでは、温度は室温から300°Fの範囲である。高せん断酸化のための稼動圧力は、14.7psiから1000psiである。別の実施形態においては、圧力は14.7psiから300psiである。基質−酸化剤混合物にせん断を加える稼動モードは、連続、半連続、又はバッチ式である。高せん断装置内、特にせん断隙間及び回転する高せん断装置の先端、における局所的な一時的な温度及び圧力は、システム内に存在する大部分の流体について記載される温度及び圧力よりも高くても良い。
【0020】
前述の記載は、以下の発明の詳細な説明がより良く理解できるように、発明の特徴及び技術的利点を広く概説している。発明の更なる特徴及び利点はこれ以降に記載されており、それは発明の請求の範囲の主題を形成する。開示される構想及び具体的な実施形態は同じ目的の発明を実施するための別の構造を改良するため又は設計するための基礎として容易に利用できることが当業者に理解されなければならない。また、同等の構造は添付される請求項に記載される発明の精神及び範囲から逸脱しないことが当業者に理解されなければならない。
【0021】
本発明の好適な実施形態のより詳細な説明のために、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】図1aは三段階せん断装置の縦方向の断面図である。
【図1b】図1bは一段階せん断装置の縦方向の断面図である。
【図2a】図2aは、発明のある実施形態に基づく酸化処理における高せん断装置の利用を模式的に表している。
【図2b】図2bは、発明のある実施形態に基づく酸化処理における高せん断装置の利用のための模式的な処理フロー図である。
【図3a】図3aは発明のある実施形態に基づく粘度低下のための高せん断酸化システムを模式的に表している。
【図3b】図3bは発明のある実施形態に基づく粘度低下用の高せん断酸化処理を模式的に表している。
【図4】図4は発明のある実施形態に基づくポリマーの粘度低下のための別の高せん断酸化処理を模式的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
表記及び命名
本明細書中で用いられる場合、用語“分散体”は、容易に混合及び一緒に溶解する又はしない少なくとも二つの区別可能な基質(又は“相”)を含む液状混合物を指す。本明細書中で用いられる場合、“分散体”は、内部に不連続な液滴、泡、及び/又は他の相又は基質の粒子を保持する“連続”相(又は“マトリックス”)を含む。したがって、用語“分散体”は、液体連続相に分散された気泡を含む泡、第1の液体の液滴が第1の液体と混和性又は非混和性である第2の液体を含む連続相中に分散しているエマルジョン、及び固体粒子が全体に分散している連続液体相を指すこともできる。本明細書中で用いられる場合、用語“分散体”は、気泡が全体に分散している連続液体相、固体粒子が全体に分散している連続液体相、連続相に可溶性又は不溶性である第2の液体の液滴が分散している第1の液体の連続相、及び固体粒子、混和性/非混和性の液滴、及び気泡の一つ又は組み合わせが分散している液相を含む。したがって、分散体は組み合わせに選択された材料の性質に応じて、ある場合には均質の混合物(例えば、液体/液体相)として、又は不均質の混合物(例えば、気体/液体、固体/液体、液体1/液体2、又は気体/固体/液体)として存在できる。最も厳密な意味では、均質相の性質(例えば、密度、粘度)は相全体にわたって連続している。液体/液体混合物は、他の相に分散する泡などの一つの相を有する不均質な混合物、例えば油と水、であっても良い。そのような混合物は、顕微鏡レベルでは不均質であっても、肉眼では均質である。したがって、本明細書における均質は、他に規定されない限り、肉眼としての意味で用いられる。
【0024】
本開示において、用語“粘度低下”又は“ビスブレーク(visbreaking)”は粘度の減少、粘度の低下を意味する。
【0025】
特定の用語が以下の説明及び請求項において特定のシステム構成材を指すために用いられている。この文書は、名前は異なるが機能は異ならない構成材を区別することを意図していない。
【0026】
以下の説明及び請求項において、用語“含む”及び“有する”はオープンエンドな態様で用いられているため、“〜を含むが〜に限定されない”という意味で理解されなければならない。
【0027】
せん断装置の概要
高せん断混合装置、または高せん断ミルなどの高せん断装置(HSD)は、一般に流体を混合するそれらの機能に応じて分類されている。混合は流体中の不均質な種又は粒子のサイズを小さくする処理である。混合の程度又は徹底に対する一つの基準は、流体粒子を分離するために混合装置が生じる単位体積あたりのエネルギー密度である。クラスは提供されるエネルギー密度に応じて区別される。0から50μmの範囲の粒子又は気泡サイズを有する混合物又はエマルジョンを連続して生成するのに十分なエネルギー密度を有する産業用混合装置には三つのクラスがある。
【0028】
均質化バルブシステムは、一般的に高エネルギー装置として分類される。処理される流体は、非常に高い圧力により、狭い隙間のバルブを通って低圧環境へとポンプで押し出される。バルブを介する圧力勾配と、結果的に得られる乱流及びキャビテーションが流体中の粒子を破砕するように作用する。これらのバルブシステムは、ミルクの均質化に最もよく用いられており、約0.01μmから約1μmの平均粒子範囲を実現できる。範囲の他端に位置するのが低エネルギー装置として分類される高せん断混合装置である。これらのシステムは、処理される流体の容器において高速で回転するパドル又は流体回転子を通常備えており、その一般的な用途の多くは食品である。処理された流体中において20μm未満の平均粒子、球又は泡のサイズが許容される場合に、これらのシステムは通常使用される。
【0029】
流体に伝えられる混合エネルギー密度に関して、低エネルギーの高せん断混合装置と均質化バルブシステムとの間に位置するのが、コロイドミルであり、それは中間エネルギー装置に分類される。一般的なコロイドミルの形態は円錐又は円盤状の回転子を含んでおり、それは、およそ0.025mmから10.0mmの間である精密に制御された回転子−固定子の隙間だけ相補的な液体−冷却固定子から離れている。回転子は、直接駆動又はベルト機構を介して電気モータによって通常は駆動される。適切な調節機構を備える多くのコロイドミルは、処理された流体中において約0.01μmから約25μmの平均粒子又は気泡サイズを実現可能である。このような性能は、化粧品、マヨネーズ、シリコン/銀アマルガム形成、又は屋根タールの混合に必要とされるようなコロイド、及び油/水ベースのエマルジョン処理を含む様々な用途にコロイドミルを適合させる。
【0030】
ここで図1aを参照すると、三つの回転子−固定子の組み合わせを備える高せん断装置200の模式図が示されている。回転子−固定子の組み合わせは、限定するのではないが、生成機220、230、240又はステージとしても知られている。または、高せん断装置200は図1bに図示されるように一つの生成機を備えている。別の例では、高せん断装置は二つの生成機を備えている。容易に理解されるように、そのような高せん断装置は、それぞれの具体的な処理に必要な混合の程度に応じて一つ以上の回転子−固定子の組み合わせを備えて構成される。
【0031】
第1の生成機220は回転子222及び固定子227を備えている。第2の生成機230は回転子223及び固定子228を備えており、第3の生成機は回転子224及び固定子229を備えている。それぞれの生成機220、230、240において、回転子はインプット250によって回転駆動される。生成機220、230、240は軸260を中心に回転方向265に回転する。固定子227は高せん断装置の壁255に固定するよう連結されている。
【0032】
生成機は回転子と固定子の間に隙間を有している。第1の生成機220は第1の隙間225を有しており、第2の生成機230は第2の隙間235を有しており、第3の生成機240は第3の隙間245を有している。隙間225、235、245は約0.025mm(0.01インチ)から10.0mm(0.4インチ)の幅である。または、処理は隙間225、235、245が約0.5mm(0.02インチ)から約2.5mm(0.1インチ)である高せん断装置200の利用を含む。ある実施例においては、隙間は約1.5mm(0.06インチ)に維持されている。または、隙間225、235、245は生成機230、240、250間で異なる。ある実施例では、第1の生成機220の隙間225は、第3の生成機240の隙間245より大きい第2の生成機230の隙間235よりも大きい。
【0033】
さらに、隙間225、235、245の幅は、荒い、中間、細かい、及び非常に細かい特性を備えている。回転子222、223及び224並びに固定子227、228及び229は歯を有する設計であっても良い。それぞれの生成機は、当該分野で周知であるように、回転子−固定子の歯を二つ以上有しても良い。回転子222、223及び224は、各回転子の周囲に周方向に離間した多数の回転子の歯を有しても良い。固定子227、228及び229は、各固定子の周囲の周りに周方向に離間した多数の固定子の歯を有しても良い。ある実施形態においては、回転子の内径は約11.8cmである。ある実施形態においては、固定子の外径は約15.4cmである。別の実施形態においては、回転子及び固定子は、回転子に対して約60mm、固定子に対して約64mmの外径を有する。または、回転子及び固定子は、先端速度及びせん断圧力を変更できるように別の直径を有しても良い。ある実施形態においては、三つのステージのそれぞれは、約0.025mmから約3mmの隙間を有する非常に細かい生成機を用いて稼動されている。
【0034】
高せん断装置200は、供給ストリーム205を含む反応混合物を供給される。供給ストリーム205は分散性のエマルジョンと連続相とを含む。エマルジョンは、容易に混合及び一緒に溶解しない二つの区別可能な基質(又は相)を含む液状混合物を指す。大半のエマルジョンは、内部に非連続の液滴、泡、及び/又は他の相又は基質の粒子を保持する連続相(又はマトリックス)を含む。エマルジョンは、スラリー又はペーストのように粘性が高く、又は液体中に分散した小さな気泡を含む泡であっても良い。本明細書中で用いられる場合、用語“エマルジョン”は、気泡を含む連続相、粒子(例えば固形触媒)を含む連続相、連続相にほぼ不溶性である流体の液滴を含む連続相、及びそれらの組み合わせを含む。
【0035】
供給ストリーム205は、生成物分散体210が形成されるように、ポンプで生成機220、230、240を通される。それぞれの生成機において、回転子222、223、224は固定された固定子227、228、229に対して高速で回転する。回転子の回転は、供給ストリーム205などの流体を回転子222の外面と固定子227の内面との間に送り出し、局所的な高せん断状態を作り出す。隙間225、235、245は、供給ストリーム205を処理する高せん断力を生じる。回転子及び固定子の間の高せん断力が供給ストリーム205を処理するように作用することによって、生成物分散体210が生成される。高せん断装置200の各生成機220、230、240は、生成物分散体210において、供給ストリーム205が気体を含む場合には所望の気泡サイズ、供給ストリーム205が液体を含む場合には所望の球のサイズの狭い分布を生じるために、交換可能な回転子−固定子の組み合わせを有する。
【0036】
液体中の気体の粒子又は泡の生成物分散体210はエマルジョンを含む。ある実施形態においては、生成物分散体210は、以前は非混和性又は不溶性の気体、液体又は固体を連続相へ分散したものを含む。生成物分散体210は、約1.5μm未満の平均気体粒子又は泡のサイズを有し、好ましくは、気泡は直径がサブミクロンである。ある実施例においては、平均気泡サイズは約0.1μmから約1.0μmである。または、平均気泡サイズは約400nm(0.4μm)未満、最も好ましくは約100nm(0.1μm)未満である。
【0037】
先端速度は、エネルギーを反応物に伝える一つ以上の回転部材の先端に関する速度(m/秒)である。回転部材の先端速度は、単位時間当たりに回転子の先端が移動する周方向の距離であり、一般に式V(m/秒)=πDnで規定され、ここで、Vは先端速度、Dはメートル単位での回転子の直径、nは1秒あたりの回転数である回転子の回転速度である。したがって、先端速度は回転子の直径と回転速度との関数である。また、先端速度は、回転子の先端が移動する周方向の距離、2πR、ここでRは回転子の半径(例えばメートル)である、に回転頻度を掛けることによって算出可能である(例えば(メートルなどの)回転掛ける回転頻度(例えば1分あたりの回転数、rpm))。
【0038】
コロイドミルにおいて、一般的な先端速度は23m/秒(4500フィート/分)を超えており、40m/秒(7900フィート/分)を超えることもできる。本開示において、用語“高せん断”は、5m/秒(1000フィート/分)を超える先端速度が可能であり、反応する生成物のストリームへとエネルギーを伝達するための機械駆動される外部電源装置を必要とするミル又は混合装置などの機械式の回転子−固定子装置を指す。高せん断装置は、速い先端速度と非常に小さなせん断隙間を組み合わせることによって、処理される材料に大きな摩擦を生じる。したがって、せん断混合装置の先端における約1000MPa(約145,000psi)から約1050MPa(152,300psi)の範囲の局所圧力及び高温が作動中に生じる。ある実施形態においては、局所圧は少なくとも約1034MPa(約150,000psi)である。局所圧力は、作動中における先端速度、流体の粘度、回転子−固定子の隙間に依存している。
【0039】
流体に加えられるエネルギー(kW/L/分)は、モータのエネルギー(kW)と流体出力(L/分)を測定することによって概算できる。ある実施形態においては、高せん断装置のエネルギー消費は1000W/mを超える。ある実施形態においては、エネルギー消費は約3000W/mから約7500W/mの範囲である。高せん断装置200は、速い先端速度を非常に小さなせん断隙間と組み合わせることによって、材料に大きなせん断を生じることができる。せん断の量は一般に流体の粘度に依存する。高せん断装置200で生じるせん断速度は20,000s−1を超えても良い。ある実施形態においては、生じるせん断速度は20,000s−1から100,000s−1の範囲である。
【0040】
高せん断装置200は、大気圧で少なくとも約15分にわたって分散状態を維持できるガスエマルジョンを生成する。本開示において、直径が1.5μm未満である生成物分散体210中の分散相における気体粒子又は泡のエマルジョンはマイクロフォーム(micro-foam)を含んでも良い。特定の理論によって限定されないが、エマルジョン化学において、液体に分散したサブミクロンの粒子又は泡は主にブラウン運動効果によって移動する。高せん断処理中に生じた泡は大きな移動性と連続相に対する接触面とを有することによって、反応物の向上した移動により反応を促進及び加速させることができても良い。
【0041】
高せん断装置200の選択は、処理能力の要求値及び排出される分散体210において所望される粒子又は気泡のサイズに依存する。ある実施例においては、高せん断装置200はノースカロライナ州ウィルミントン(Wilmington,NC)のIKA(登録商標)ワークス インコーポレーテッド(IKA(R) Works,Inc.)及びマサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington,MA)のAPVノースアメリカ インコーポレーテッド(APV North America,inc.)のディスパックスリアクタ(登録商標)(Dispax Reactor(R))を含む。例えば、モデルDR2000/4はベルト駆動、4M生成機、PTFE密封リング、25.4mm(1インチ)の入口フランジ用清浄クランプ、19mm(3/4インチ)の出口フランジ用清浄クランプ、2馬力の出力、7900rpmの出力速度、(生成機に依存する)約300−700L/hの(水の)流通能力、9.4m/秒−約41m/秒(約1850フィート/分から約8070フィート/分)の先端速度を有する。様々な入口/出口の連結、馬力、名目上の先端速度、出力rpm、及び名目上の流速を有する幾つかの代替モデルが利用可能である。
【0042】
特定の理論に限定することは望まないが、高せん断混合のレベル又は程度は物質移動の速度を上昇させるのに十分であり、ギブスの自由エネルギー予測に基づき起こらないと予測される反応を起こすことができる局所的な非理想的な状態を作り出すことができる。局所的な非理想状態は、高せん断装置内で起こると考えられており、最も顕著な上昇は局所的な圧力であると考えられている温度及び圧力の上昇をもたらす。高せん断装置における圧力及び温度の上昇は一時的及び局所的であり、高せん断装置を出ると、大部分の又は平均のシステム状態にすぐに戻る。あるケースでは、高せん断混合装置は、化学反応を増大させ本来必要とされる条件よりもより穏やかな条件で反応を起こすことができるフリーラジカルへと一つ以上の反応物を解離するのに十分な強度のキャビテーションを生じる。キャビテーションは、局所的な乱流及び液体の微小循環(音響流)を生じることによって輸送処理の速度を上昇させることもできる。
【0043】
高せん断酸化
図2aは、酸化処理における高せん断装置の利用を表している。基質及び酸化剤(例えば、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、及びハロゲン)が高せん断装置を通過することによって、所望の生成物を生成することができる。所望の生成物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テレフタル酸、フェノール、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水フタル酸、硝酸、カプロラクタム、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、酸化ポリエチレンコポリマー、酸化ポリプロピレンコポリマーを含む。ある実施形態においては、混合工程は基質−酸化剤混合物に高せん断を加える前に含まれる。
【0044】
ある実施形態においては、溶解ポリエチレンワックスなどの液体ポリマーが酸化される。ポリマーは溶解され、システムを通るバルクの流体になる。(例えば酸素、オゾンなどの)酸化剤が一定期間にわたって少量添加されることによって、酸化を引き起こす。過剰な酸化又は非常に早い酸化はポリマーの好ましくない架橋を引き起こすことがあるため、酸化の程度及び速度は制御されている。別の実施形態においては、エチレン及びプロピレンなどの標準の温度及び圧力下では気体である低分子が酸化される。したがって、気体材料は液状に凝縮され、その後に適切な酸化剤と共に高せん断装置に送られることによって酸化される。または、酸化は水及び脂肪族炭化水素などのバルクの有機又は無機液体培地において行われる。そのような培地はシステムを通され、気体材料は適切な酸化剤と共に酸化が起こる高せん断装置に導入される。あるケースでは、せん断条件は水の解離を引き起こして酸素を生じるのに十分なほど厳しい。そのようなケースでは、生じた酸素は高せん断酸化処理における酸化剤として利用することができる。
【0045】
ある実施形態においては、アルケン(例えばエチレン)が酸化され、それは熱力学的に望ましく、非常に発熱性である。酸化アルケンを生成する従来の方法は気相で行われており、爆発及び死をもたらした。さらに、アルケンが完全に酸化されて二酸化炭素と水を生じないように、この反応は制御されなければならない(米国特許出願第20060054314号及び米国特許第7,153,985号参照)。高せん断及び液体培地を用いてアルケンの酸化を引き起こすことは、起こる反応が主に高せん断ユニット内に制限される一方で、液体培地が発熱反応の迅速な冷却をもたらすため、酸化処理のより優れた制御を可能にする。
【0046】
図2bは、発明のある実施形態に基づく高せん断酸化処理を模式的に示している。(ストリーム5を介する)酸化剤と(ストリーム8を介する)基質とが、温度圧力制御ユニット30を備える混合容器9に添加される。ある実施形態においては、気体の酸化剤が連続相との混合を促進するためにスパージャーを介して混合容器9に添加される。ある実施形態においては、攪拌及び超音波処理などの当業者に周知の好適な混合法を用いて、追加の混合が容器9で行われる。温度圧力制御ユニット30は当業者に周知のいかなる装置又はシステムであっても良く、混合容器9の温度及び圧力を上昇又は低下する機能を有する。ある実施形態において、制御ユニット30は内容物を1200°Fまで加熱することと、圧力を1000psiまで上昇させることができる。または、別の温度圧力制御システムが、酸化剤及び基質が容器9で混合された後に追加されても良く、容器9用の制御ユニット30はオプションである。混合容器9は、ストリーム12を介して貯蔵容器20に流体連通するように構成されている。貯蔵容器20は温度圧力制御ユニット30を備えているため、混合容器9における温度及び圧力を維持することができる。ある実施形態においては、ポンプ10が貯蔵容器20への流れを制御するために含まれる。ポンプ10は連続又は半連続稼動用に構成されており、好適ないかなるポンプ装置であっても良い。別の実施形態においては、貯蔵容器20は省略されている。
【0047】
貯蔵容器20は、(図1a及び図1bの入口205において)せん断装置40と流体連通するように構成されており、流体接続は当業者に周知であるいかなる態様であっても良い。せん断装置40の温度及び圧力は温度圧力制御ユニット30によって制御されており、制御ユニット30は当業者に周知ないかなる装置又はシステムであっても良く、せん断装置40の温度及び圧力を上昇又は低下させる機能を有する。ある実施形態においては、制御ユニット30は、内容物を1200°Fまで加熱することと、圧力を1000psiまで上昇することとができる。多くの酸化反応は発熱性であり、反応速度は高せん断の利用によって上昇すると推測されるため、酸化反応が暴走するのを防ぐためにせん断装置40を冷却する必要がある。
【0048】
せん断装置40は、(図1における出口210において)ストリーム42を介して貯蔵容器50と流体連通するように構成されており、流体接続は当業者に周知のいかなる形態であっても良い。貯蔵容器50の温度及び圧力は制御ユニット30によって制御されており、制御ユニット30は当業者に周知のいかなる装置又はシステムであっても良く、容器50の温度及び圧力を上昇又は低下する機能を有する。ある実施形態においては、容器50用の制御ユニット30は省略されている。ある実施形態においては、ポンプ45は容器50への流れを制御するために含まれる。ポンプ45は連続又は半連続稼動用に構成されており、好適ないかなるポンプ装置であっても良い。別の実施形態においては、貯蔵容器50は省略されている。処理された混合物は更なる処理のためにストリーム60を介して抽出される。ある実施形態においては、ストリーム60は、更なる酸化のために(図2bに示されない)ストリーム8、12又は25を介してせん断装置40に再循環される。
【0049】
ポリエチレンの官能基化
ポリエチレンは、世界中で毎年6000万トン以上生産される最も広く用いられているポリマーの一つである。酸化ポリエチレンワックスは、官能基又は極性基(例えば酸性及びエステル基)が好まれる高品質のエマルジョンを製造するのに有用である。理論によって限定されることは望まないが、16mgKOH/gを超える酸価がエマルジョン製造のためには推奨される。高せん断酸化処理は、低分子量のポリエチレン及びポリエチレンワックスを酸化することによって、ポリマー骨格に官能基を付与する効率的、経済的、及び柔軟な方法を提供する。
【0050】
ポリエチレン及びポリエチレンワックスの高せん断酸化は室温から1000°Fの温度範囲で起こる。あるケースでは、高せん断酸化は室温から600°Fで起こる。稼動圧力は14.7psiから1000psiである。ある実施形態においては、高せん断酸化は14.7psiから300psiで起こる。あるケースでは、高せん断酸化は数分間継続され、別のケースでは、高せん断酸化は数時間継続される。好適な酸化剤は、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む。ポリマーと酸化剤の割合は、それぞれの具体的な処理に望まれる酸化の程度によって決定され、それは得られた生成物の酸価又は鹸化価によって観測される。
【0051】
さらに、滞留時間、流速(又は量)、せん断速度、稼働温度及び圧力、酸化剤の種類、ポリマーの供給、及び所望される生成物は、高せん断酸化処理において相互に関係する。例えば、ポリマー供給、所望される生成物、及び生成速度が決められると、数時間内に所望の酸化レベルを達成するために周囲の温度及び圧力で酸素を用いることができる。酸素の代わりに空気が用いられる場合、同レベルの酸化を達成するためには処理はより長く継続される必要がある。有機過酸化物が代わりに使用される場合、ポリマーの酸化のために有機過酸化物の解離を促進するため、稼動温度を上昇することが必要となる。さらに、非常に早い速度でポリエチレンを酸化するとポリマーの望ましくない架橋を生じる。ポリマーのフリーラジカルの二つの末端基が連結すると、架橋は起こる。架橋されたポリエチレンワックスは、一般に不溶性であり、ポリマー溶解において“魚の目(fish eyes)”として現れる。
【0052】
粘度低下
また、ポリマーの酸化は、長いポリマー鎖を短い鎖へと切断し、粘度を低下する効果を有する(粘度低下、又はビスブレーキング)。粘度低下のためのポリエチレン及びポリエチレンワックスの高せん断酸化は、室温から1000°Fの温度範囲で起こる。あるケースでは、高せん断酸化は室温から600°Fで起こる。別のケースでは、高せん断酸化は室温から300°Fで起こる。稼動圧力は14.7psiから1000psiの範囲である。ある実施形態においては、高せん断酸化は14.7psiから300psiで起こる。あるケースの場合、高せん断酸化は数分間継続され、別のケースの場合、高せん断酸化は数時間継続される。好適な酸化剤は、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む。ポリマーと酸化剤の割合は、それぞれの具体的な処理に望まれる粘度低下の程度によって決定される。ある実施形態においては、ポリマー骨格の官能基化がほぼ起こらず、高分子量ポリマーの切断及び消滅により低分子量ポリマーの形成のみが起こるように、酸化が制御される。
【0053】
滞留時間、流速(又は量)、せん断速度、稼動温度及び圧力、酸化剤の種類、ポリマー供給、及び所望される生成物は、高せん断酸化処理において相互に関連している。例えば、ポリマー供給、所望される生成物、及び生成速度が決定されると、数時間内で所望されるレベルの粘度低下を達成するために、周囲の温度及び圧力で酸素を使用することができる。酸素の代わりに空気が使用される場合、同レベルの粘度低下を達成するためには、処理をより長く継続する必要があると思われる。有機過酸化物が代わりに用いられる場合、粘度低下を引き起こすポリマー酸化のために有機過酸化物の解離を促進するために、稼動温度を上昇する必要があると思われる。ポリマーの架橋は、流速、せん断速度、稼動温度及び圧力、酸化剤の種類及びポリマー供給によって決定される酸化速度を制御することによって回避可能である。
【0054】
ある別の実施形態においては、高せん断酸化は、軽度の酸化により高粘度の原油のレオロジー特性を調整するために利用される。高分子組成物を含む重質原油は粘性であり、密度が高い。そのような性質は、軽質原油と比べて生産、輸送、及び精製をより困難にしている。高粘度の原油は好適な酸化剤と混合され、その後に混合物が高せん断装置を通される。好適な酸化剤は、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む。原油と酸化剤の割合は、所望される粘度低下の程度に応じて決定される。ある実施形態においては、高分子量組成物の切断及び消滅によって低分子量組成物が形成されるように、酸化が制御される。他の調整可能な処理パラメータは、温度、圧力、せん断速度、滞留時間、流速、及び高せん断酸化の合計時間を含む。
【0055】
ある実施形態においては、熱及びせん断がワックスに加えられることによって、その粘度が低下される。あるケースの場合、蒸気導入によってワックスに熱が加えられる。別の実施形態においては、酸化剤がワックスと混合され、混合物にせん断が加えられることによってワックスの粘度が低下する。別の実施形態においては、ビスブレーキングのために、熱、酸化剤、及びせん断がワックスに加えられる。図3aは、本発明のある実施形態における粘度低下用の高せん断酸化システム1000を図示している。システム1000は、ポンプ110、熱交換器120及び150、並びにせん断装置140を備えている。システム1000は、基質源105、酸化剤源115及び蒸気源125も備えている。
【0056】
基質は基質源105からポンプ110へストリームS105として送られ、ストリームS110として出て、熱交換器120を通り、ストリームS120として出る。基質105はポリマー、ワックス又はそれらの混合物を含む。あるケースでは、基質105は原材料である。別のケースでは、例えば(せん断装置140の前に溶解装置を用いた)溶解ワックス、精製ワックスのように、基質105は処理されている。あるケースでは、基質105は熱いポリエチレンワックスを含み、その温度は約160℃から約400℃、又は約180℃から約250℃、又は約200℃である。
【0057】
酸化剤源115は、ストリームS120と混合されるストリームS115を送り出す。あるケースでは、酸化剤は空気、酸素などの酸素含有ガスを含む。ある実施形態においては、蒸気源125はストリームS120と混合されるストリームS125を送り出す。我々は、蒸気の使用が粘度低下処理において有用であると考えている。理論によって限定されることは望まないが、ビスブレーキング処理における蒸気の導入は、より均一な酸化を促進し、更なる熱及び場合によってはフリーラジカルを添加する。
【0058】
ストリームS120は、ストリームS115及びS125と混合された後に、基質の粘度低下が起こるせん断装置140へと送られる。ストリームS140はせん断装置140から出て、冷却されるために熱交換器150へと入り、ストリームS150として出る。ある実施形態においては、ストリームS150は更に処理される。例えばストリームS150は、貯蔵及び輸送される前に、不要な揮発性成分を除去するために、気化システムに通される。あるケースの場合、ストリームS150は、更なる粘度低下のために基質として使用される又は基質と混合されるために再循環される(図3aにおいて図示しない)。
【0059】
接着剤形成
本発明によって生成されたワックスは、熱溶融性接着剤の形成に特に適している。熱溶融性接着剤は、通常三つの主要成分、ワックス、粘着付与剤、及び樹脂を含んでいる。熱溶融性接着剤の用途において、配合された接着剤の全体の粘度を低下させ、接着剤の基材への浸透を可能にすることによって優れた接着剤を実現するためには低粘度のワックスが望ましい。そのため、本発明によりポリエチレンワックスの粘度を制御できることは望まれる。さらに、ポリエチレンホモポリマーワックスは非極性であり、熱溶融性接着剤は、エチレンビニルアセテート及びロジンのエステルなどの樹脂及び粘着付与剤に極性成分を利用する場合がある。ポリエチレンワックスを官能基化し、極性を付与できることは、熱溶融性接着剤成分の樹脂及びワックス成分間の適合性を向上することができ、結果的により高い配合の柔軟性を実現できる。
【0060】
本発明は熱溶融性接着剤配合のための広範な性質の形成及び制御を可能にするため、高せん断装置に高分子量及び低分子量の材料を供給することによって、熱溶融性接着剤配合のワックス及び樹脂成分の両方を置換するポリマーを形成するために本発明を利用することができる。または、完全に調合された接着剤も、入口に又は高せん断装置の後に接着付与剤を添加することによって調合されても良い。高せん断装置へのポリマー及び/又は接着付与剤の混合物を供給することは、当業者に周知のいかなる方法で行われても良いが、一般に高分子量樹脂と他の成分とを混合できる押出装置を含む。
【0061】
稼動モード
上述した実施形態によると、高せん断酸化は連続的、半連続的、又はバッチ式に行うことができることが当業者に容易に理解される。または、高せん断装置を介して処理される材料は、再循環される、又は別の高せん断装置に送られることによって、粘度低下及び/又は官能基化を促進できる。したがって、示される高せん断酸化処理の稼動モードは発明の範囲を限定せず、発明の均等物として考慮される。
【0062】
実施例
高せん断装置の入口への蒸気の添加は、供給原料の入口における温度のより優れた制御を可能にする。高せん断装置内において、蒸気は進行している化学反応に関与しても良い。特定の理論によって限定はされないが、音響学及び流体力学的キャビテーションの状態に存在する極度の温度及び圧力条件下において、蒸気は解離できることが知られている(Cavitation reaction engineering(キャビテーション反応工学)、Yatish T. Shah, A. B. Pandit, V.S. Moholkar、ISBN−13:978−0306461415のページ315、practicalsonochemistry: uses and applications of ultrasound(実践音響化学:超音波の使用及び用途)、T. J. Mason, DietmarPeters、ISBN−10:1898563837のページ34、Cavitation(キャビテーション)、F.Ronald Young、ISBN−13:9781860941986のページ360参照)。本発明の高せん断装置内において、蒸気は解離可能であり、遊離水素が反応することによって、破断したポリマー鎖を消滅させ、及び/又は起こる可能性のある他の化学反応に加わることができる。解離した蒸気のヒドロキシル成分は同様に反応することができる。蒸気及び酸素が高せん断ユニットにワックスと共に導入される下記の実施例においては、通常は形成された酸性の化学種が見つかると予測されるであろう。実質的な粘度の低下が起き、ワックスの密度の変化もあるにもかかわらず、酸は検出されず、架橋も観察されない。水素の消滅に加えて、高せん断装置を通過した後の最終産物中に存在し得る化学種は、ケトン、アルコール、エステル、アルデヒド、及び他の酸化種を含むであろう。
【0063】
実施例1
ポリエチレンコポリマー(エチレン 1−ブテン)が本明細書中に開示されるように粘度低下のための供給原料として使用される。ポリエチレンコポリマーの供給原料の性質は表1にまとめてある。
【表1】


*“Nil.”:酸価<1mgKOH/gm、実施例全体において
1センチポワズ=1CPS=1mPas
【0064】
供給原料は180℃に加熱されることで溶解される。そして、加熱された供給原料は、高せん断装置(IKAモデルDR2000/20)に入る前に空気及び蒸気と混合される。蒸気は8kg/cmの圧力で、空気は7kg/cmの圧力で供給される。高せん断装置を通る流速は8MT/時である。高せん断装置からの流出物は218℃に加熱され、その後に揮発成分を除去するために610mmHgでフラッシュ蒸発装置を通る。得られるポリマーは表2に示される以下の性質を有している。
【表2】


供給原料の粘度は66センチポワズだけ低下した、約37%の減少。
【0065】
低下した蒸気の流れの効果を示すために、実施例1のポリエチレンコポリマーが以下のように処理される。供給原料は222℃に加熱されて融解される。そして、加熱された供給原料は、高せん断装置(IKAモデルDR2000/20)に入る前に、空気及び蒸気と混合される。蒸気は実施例1における約5%の割合で、空気は7kg/cmで供給される。高せん断装置を通る流速は8MT/時である。高せん断装置からの流出物は218℃に加熱され、その後に揮発性成分を除去するために590mmHgでフラッシュ蒸発装置を通る。処理されたポリマーは表3に示される性質を有する。
【表3】


供給原料の粘度は97センチポワズだけ低下した、約54%の減少。
【0066】
実施例3
実施例1で処理された生成物は実施例2で処理された生成物と混合される。混合されたポリマー生成物は表4に示される以下の性質を有する。
【表4】

【0067】
そして、混合ポリマー生成物は、高せん断装置(IKAモデルDR2000/20)に入る前に218℃まで加熱されることで融解されて空気及び蒸気と混合される供給原料として使用される。蒸気は実施例1における約5%の割合で、空気は7kg/cmで供給される。高せん断装置を通る流速は7.8MT/時である。高せん断装置からの流出物は218℃に加熱され、そして揮発性成分を除去するために580mmHgでフラッシュ蒸発装置を通る。高せん断装置の後に位置する保持タンクは、粘度が低下し続ける約5分の保持時間を有する。必要に応じて、高せん断装置を通過した後に、ポリマーは更なる粘度低下のために高い温度及び/又は圧力で保持されても良い。得られるポリマーは表5に示される以下の性質を有する。
【表5】

【0068】
結果は、高せん断装置は粘度を低下することができるのみではなく、ポリマーの滴点及び密度を変化させることが可能であることを示している。顕微鏡レベルでのポリマーの結晶化度は、(ポリマーの融解性に関連する)密度及び滴点のようなポリマーのいくつかの肉眼レベルの性質に影響を与える。したがって、ポリマーの密度及び滴点の変化はポリマーの結晶化度の変化の指標である。
【0069】
さらに、一般に酸化によるポリマーワックスの官能基化に関係する処理されたワックスの酸価(酸性度指数)の実質的な上昇は見られていない。したがって、ポリマーは酸化によって切断されており、それが粘度の低下の原因であろう。得られたポリマーはヒドロキシル基、ケトン基、不飽和基、水素付加基、又は切断が起こる他の官能基を有するであろう。
【0070】
実施例4
図3bはポリエチレンワックス(PEワックス)の粘度を低下させるための高せん断酸化処理を図示している。5つのサンプリング位置(1)〜(5)は図3bにおいて標識されており、3セットのサンプルが3つの異なる時点で取得される。位置(1):原材料の性質、位置(2):再循環された生成物と混合された原材料の性質、位置(3):せん断モジュールを通過した後のワックスの性質、(4):フラッシュ装置を通過した後のワックスの性質、(5)生成物貯蔵タンクを通過した後のワックスの性質。PEワックスの性質及びいくつかの作動パラメータが表6〜8にまとめられている。
【表6】


【表7】


【表8】

【0071】
実施例5
図4は、粘度低下のための高せん断酸化システムを表している。開放反応器、歯車ポンプ、及びせん断ポンプは相互に流体接続されており、ループを形成している。気体導入は歯車ポンプとせん断ポンプの間で利用可能である。8リットルのポリエチレンワックスが最初に300°Fまで加熱され、ループを循環される。開放反応器内のポリエチレンワックスは外気に開放されており、外気と混合される。粘度は300°Fで測定される。
【0072】
実施1では、0〜85分において窒素が気体導入ラインを介して導入される。実施2では、窒素はシステムに導入されない。実施3では、時間0及び0〜30分における粘度の測定前に気体導入ラインを介して15分間酸素が導入される。理論により限定されることは望まないが、実施1と実施2の結果を比較すると、窒素が無い状態においてポリエチレンワックスの粘度はより早い速度で低下している、すなわち、実施例2における酸化剤としての空気はより早い粘度の低下を引き起こしており、このことは、窒素の導入により影響を受けない早いポリマー酸化は長いポリマー鎖の切断と低分子量ポリマーの形成を引き起こすことを示している。理論によって限定されることは望まないが、実施2と実施3の結果を比較すると、ポリエチレンワックスの粘度低下は酸素の存在によって促進されている。実施3における60分の合計稼動時間は、実施2の195分間における粘度低下、すなわち65.5%の粘度低下と同程度である。これは、高せん断酸化における酸化剤の種類の影響を表している。





【0073】
発明の好適な実施形態が示されて説明されたが、それらの変更を発明の精神及び教示から逸脱することなく当業者は行うことができる。本明細書に記載された実施形態は単なる例示であり、限定することを意図していない。本明細書で開示された発明の様々な変更及び改良が可能であり、それらは発明の範囲内に属する。数値的な範囲又は限定が明確に記載されている場合、そのような明確な範囲又は限定は、明確に記載された範囲又は限定内に入る同程度の反復する範囲又は限定を含むと理解されなければならない。請求項のいくつかの要素に関する用語“任意に”は、対象となる要素が必要又は不要であることを意味する。両方の選択肢が請求項の範囲に属することを意図している。有する、含む、包含するなどの広い用語は、〜からなる、ほぼ〜からなる、実質的に〜からなるなどの狭い用語に対するサポートを提供すると理解されなければならない。
【0074】
したがって、保護の範囲は上述の説明によっては限定されず、以下の請求項によってのみ限定され、請求項は請求項の対象物の全ての均等物を含む範囲を有する。それぞれ及び全ての請求項は本発明の実施形態として明細書に導入される。したがって、請求項は更なる説明であり、本発明の好適な実施形態の追加である。文献の導入又は説明は、特に本願の優先日後の発行日を有する文献が本発明の従来技術であることを認めるものではない。本明細書で引用されている全ての特許、特許出願、及び公報の開示内容は、それらが背景に関する知識、又は例示的、手続に関する、又は他の本明細書に記載される内容を補完する詳細な説明を提供する範囲において、参照によって援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高せん断酸化用のシステムであって、
少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を有するせん断装置と、
少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を有する混合容器と
を備え、せん断装置の入口は混合容器の出口と流体連通されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
せん断装置及び混合容器が流体連通用のループを形成していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
せん断装置を通る流体の流速及び滞留時間を制御するためのポンプを更に有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
せん断装置の温度及び圧力を制御するための温度圧力制御ユニットを更に有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
気体を混合容器に分散するための少なくとも一つのスパージャーを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを有するせん断装置、
基質源に流体接続されている少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを有する基質パイプ、
酸化剤源に流体接続されている少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを有する酸化剤パイプ、及び
蒸気源に流体接続されている少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを有する蒸気パイプ
を備え、基質パイプの少なくとも一つの出口、酸化剤パイプの少なくとも一つの出口、及び蒸気パイプの少なくとも一つの出口がせん断装置の入口に流体接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
せん断装置の出口に流体接続されている気化システムを備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
基質の温度を制御するための少なくとも一つの熱交換器を備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
酸化剤パイプ内における酸化剤の流速を制御するための気体導入システムを備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
蒸気パイプ内における蒸気の流速を制御するための蒸気導入システムを備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
せん断装置の出口に流体接続されている少なくとも一つの貯蔵容器を備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
高せん断酸化の方法であって、
酸化剤を基質と混合することによって基質−酸化剤混合物を形成すること、及び
基質−酸化剤混合物にせん断を加えることによって生成物を形成すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
基質及び酸化剤がバルクの有機又は無機液体培地中で混合されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酸化剤は、空気、酸素、オゾン、過酸化物、有機過酸化物、ハロゲン、酸素含有ガス、及びハロゲン含有ガスからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
酸化剤を基質と混合することが、基質又は液体培地中に酸化剤を分散することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
混合中に基質と酸化剤の割合を制御することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
基質が、高粘度の原油、ポリエチレン、又はポリエチレンワックスを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
生成物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テレフタル酸、フェノールアクリロニトリル、無水マレイン酸、無水フタル酸、硝酸、カプロラクタム、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、酸化ポリエチレンコポリマー、及び酸化ポリプロピレンコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
蒸気を酸化剤及び基質と混合することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
基質、酸化剤及び蒸気を混合すること及びせん断を加えることがせん断装置で同時に行われることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−512316(P2012−512316A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542312(P2011−542312)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067907
【国際公開番号】WO2010/077823
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】