説明

ワックス被処理硬化剤の製造方法、及びその利用

【課題】保存安定性及び反応性に優れたワックス被処理硬化剤を製造する方法、及びその利用を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるワックス被処理硬化剤を製造する方法は、樹脂の硬化を促進する固形状の硬化剤を、ワックスを分散又は溶解した液体中に分散させる分散工程と、次いで、上記硬化剤を分散させた上記液体を気相中に噴霧する噴霧工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス被処理硬化剤の製造方法、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、電気部品又は電子部品の封止材料、絶縁材料、及び接着材料等として用いられている。特に、エポキシ樹脂と当該樹脂の硬化剤とが予め混合された一液性エポキシ樹脂組成物は、使用の直前にエポキシ樹脂と硬化剤とを混合して用いる二液性エポキシ樹脂組成物と比較して保管及び取扱いが容易であるという利点を有する。
【0003】
一液性エポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤は、当該エポキシ樹脂組成物の貯蔵中に、エポキシ樹脂の硬化剤として機能をしない状態に保たれる必要がある。
【0004】
或いは、硬化剤粉末の表面を、常温で不活性な物質で被覆するマイクロカプセル化などの方法が知られている(特許文献1及び2)。
【0005】
特許文献1には、アミド化合物等の所定のワックスで被覆された硬化剤粉体が記載されている。また、この硬化剤粉体の調製法として、硬化剤粉体を気流中で流動させながら、溶融させたワックスを硬化剤粉体に対してスプレーコーティングすることが好ましい旨が記載されている。
【0006】
特許文献2には、硬化促進剤(硬化剤に相当)を含有するコア組成物を、ポリメチルメタクリレート樹脂等のシェル組成物を溶解した溶液(例えば、テトラヒドロフラン溶液)中に分散させて分散液を調製し(分散液調製工程)、次いで、この分散液を多孔質体を通過させて、液相(例えば水)中に分散液の液滴を形成し(液滴形成工程)、次いで、当該液相を加熱して分散液の液滴に含まれる溶液成分(テトラヒドロフラン等)を蒸発させ(溶媒除去工程)、次いで、上記液相を構成する水等を蒸発乾燥させて(乾燥工程)、シェル組成物で被覆されたコア組成物を製造する方法が記載されている(該文献の実施例等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−301985(公開日:1996年11月19日)
【特許文献2】特開2000−159861(公開日:2000年6月13日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、硬化剤粉末に対して、溶融させたワックスを一様に塗布することが技術的に困難である。そのため、硬化剤の表面がワックスで被覆されずに剥き出しになる部分が少なからず存在して、顕著な保存安定性を得ることができないという課題を有する。
【0009】
上記特許文献2に記載の方法では、1)シェル組成物で被覆されたコア組成物の製造に、非常に多工程を要し複雑である点、2)上記液滴形成工程、溶媒除去工程、及び乾燥工程において、上記シェル組成物が上記液相中に溶け出す虞がある点、3)上記分散液調製工程における溶液と、上記液滴形成工程における液相成分とを互いに混じり合わないものとする必要があるなど材料選択面での制約が多くなる点、等の課題を有する。
【0010】
本願発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、保存安定性に優れたワックス被処理硬化剤を製造する方法、及びその利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明にかかるワックス被処理硬化剤を製造する方法は、樹脂の硬化を促進する固形状の硬化剤を、ワックスを分散又は溶解した液体中に分散させる分散工程と、次いで、上記硬化剤を分散させた上記液体を気相中に噴霧する噴霧工程と、を含むことを特徴としている。
【0012】
本発明にかかる方法では、上記液体が、水を主成分とする液体であることが好ましい。
【0013】
本発明にかかる方法では、上記噴霧工程に供される事前に、又は上記噴霧工程と同時かそれ以降に、上記硬化剤を分散させた上記液体を加熱する加熱工程を含むことが好ましい。
【0014】
本発明にかかる方法では、上記加熱工程は、上記噴霧工程と同時かそれ以降に、気相中に噴霧された上記硬化剤を分散させた上記液体の液滴を加熱して乾燥する工程であることがより好ましい。
【0015】
本発明にかかる方法では、上記ワックスが、カルナバワックス及び酸化ポリエチレンワックスの少なくとも一方であることがより好ましい。
【0016】
本発明は、また、上記何れかの方法により製造されるワックス被処理硬化剤を提供する。
【0017】
本発明は、また、エポキシ樹脂硬化用の上記ワックス被処理硬化剤と、エポキシ樹脂とを含む一液性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0018】
本発明は、また、上記ワックス被処理硬化剤を内包した樹脂層を備える電子・電気部品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、保存安定性及び反応性に優れたワックス被処理硬化剤を製造する方法、及びその利用を提供することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例及び比較例で行った気密測定の方法を説明する図である。
【図2】実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた硬化剤(実施例1及び比較例2ではワックス被覆硬化剤である)の形状を電子顕微鏡(SEM)で撮像した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔1.ワックス被処理硬化剤の製造方法〕
本発明にかかる「ワックス被処理硬化剤の製造方法」は、1)固形状の硬化剤を、ワックスを分散又は溶解した液体中に分散させる工程(分散工程)と、次いで、2)硬化剤を分散させた上記液体を気相中に噴霧する工程(噴霧工程)と、を含む。3)さらに、必要に応じて、上記噴霧工程に供される事前に、又は噴霧工程と同時かそれ以降に、硬化剤を分散させた上記液体を加熱する工程(加熱工程)を含む。
【0022】
<1.分散工程>
本発明における上記分散工程は、固形状の硬化剤を、ワックスを分散又は溶解した液体中に分散させた分散液を調製する工程である。
【0023】
分散工程では、硬化剤をより均一かつ容易に分散可能という観点から、ワックスを分散又は溶解した液体をまず調製して、次いで固形状の硬化剤をこの液体に分散させることが好ましい。しかし、上記分散工程は、液体中に、ワックスと硬化剤とを同時に投入して、上記分散液を調製する工程であってもよく、或いは、液体中にまず硬化剤を分散し、次いで当該液体にワックスを投入することにより、上記分散液を調製する工程であってもよい。
【0024】
液体にワックスを分散させる場合には、ワックスをより均一かつ容易に分散可能という観点では、界面活性剤を使用することがより好ましい。界面活性剤の具体例については後述する。
【0025】
分散工程では、液体中におけるワックスの分散又は溶解を促進するため、或いは液体中における硬化剤の分散を促進するため、液体の攪拌を行うことが好ましい。
【0026】
分散工程で調製される上記分散液中に含まれる、ワックスと硬化剤との含有比率は特に限定されないが、例えば、硬化剤100重量部に対して、ワックス5重量部以上で300重量部以下の範囲内であることが好ましく、ワックス10重量部以上で200重量部以下の範囲内であることがより好ましい。硬化剤100重量部に対してワックスが5重量部以上含まれれば、製造されるワックス被処理硬化剤の保存安定性がより確実に実用上充分なものとなる。また、硬化剤100重量部に対してワックスが250重量部以下の範囲で含まれれば、樹脂の硬化反応に供された際にワックス被処理硬化剤からワックスがより確実に流出して、硬化剤と樹脂との反応性はより確実に高まり、気密を保持することが可能となる。
【0027】
分散工程で調製される上記分散液中に含まれる、ワックスと液体との含有比率は特に限定されないが、スプレー装置の生産性の観点では、例えば、ワックスと液体との合計重の0.05重量%〜50重量%の範囲内でワックスが含まれることが好ましく、0.1重量%〜30重量%の範囲内でワックスが含まれることがより好ましい。また、この分散液中に含まれる、硬化剤と液体との含有比率も特に限定されないが、スプレー装置の生産性の観点では、例えば、硬化剤と液体との合計重の0.05重量%〜30重量%の範囲内で硬化剤が含まれることが好ましく、0.1重量%〜20重量%の範囲内で硬化剤が含まれることがより好ましい。
【0028】
以下、分散工程で使用される、「硬化剤」、「ワックス」、「ワックスを分散又は溶解する液体」、及び「界面活性剤」等に関して、より詳細に説明を行う。
【0029】
(硬化剤)
本発明に使用される硬化剤とは、樹脂と混合されることにより当該樹脂の硬化を促進する物質を指す。硬化剤は、混合される樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。硬化剤は、上記分散工程、噴霧工程、及び必要に応じて行われる加熱工程において、固形状態を保つ物質であるという特性が求められる。分散工程に供される際の硬化剤は好ましくは粉体であり、その平均粒径は好ましくは0.1μm〜50μmの範囲内である。
【0030】
例えば、樹脂がエポキシ樹脂の場合には、エポキシ樹脂用の硬化剤から適宜選択されればよく、当該硬化剤の好ましい例として、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物;変性脂肪族ポリアミン化合物;第三級アミン(脂肪族三級アミン、芳香族三級アミン);変性脂肪族アミン;芳香族ポリアミン;イミダゾール化合物;酸無水物;フェノール類;尿素系化合物;等が挙げられる。中でも、連鎖重合型硬化剤である、第三級アミン及びイミダゾール化合物を用いることがより好ましい。また、比較的低温でエポキシ樹脂を硬化させるという観点では、80℃から150℃の温度範囲内で加熱を行うことにより、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を選択することがより好ましい。
【0031】
上記エポキシ樹脂アミンアダクト化合物とは、基本的には、エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物である。詳しくは、単官能および多官能エポキシ化合物のエポキシ基と付加反応し得る活性水素を1分子内に1個以上有し、かつ1級、2級、又は3級アミノ基の中から選ばれた置換基を少なくとも1分子内に1個以上有するアミン化合物と、前記単官能および多官能エポキシ化合物との反応生成物(即ち、エポキシ化合物アミンアダクト)である。エポキシ樹脂アミンアダクト化合物の市販品としては、特に限定されるものではないが、アミキュアMY−24、MY−R(以上、味の素ファインテクノ(株)製品)、ノバキュアHX−3721、HX−3742(以上、旭化成工業(株)製品)等が挙げられる。
【0032】
上記変性脂肪族ポリアミン化合物とは、エポキシ樹脂との混合系中でもとりわけ安定で、かつ、エポキシ樹脂とともに例えば80℃以上120℃以下で熱処理することにより高い熱変形温度を示す硬化物が得られる硬化剤であり、室温付近で液状の一般的なエポキシ樹脂には不溶性の固体であるが、加熱することにより可溶化し本来の機能を発揮する化合物である。基本的には、アミン化合物とイソシアネート化合物との反応生成物(一般に、脂肪族ポリアミン変性体と呼称されている)である。詳しくは、ジアルキルアミノアルキルアミン化合物、分子内に活性水素を有する窒素原子を1あるいは2個以上有する環状アミン化合物、およびジイソシアネート化合物の反応生成物(すなわち、脂肪族ポリアミン変性体)である。変性脂肪族ポリアミン化合物の市販品として、FXE-1000(富士化成製(株))が挙げられる。
【0033】
上記第三級アミンとは、例えば、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0034】
上記芳香族ポリアミンとしては、例えば、N−アミノエチルピペラジンなどの脂肪族ポリアミン類、メタフェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリンジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0035】
上記イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、等が挙げられる。
【0036】
上記酸無水物としては、例えば、メチルハイミック酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロ酸無水物、等が挙げられる。
【0037】
上記フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0038】
上記尿素系化合物としては、例えば、(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素等が挙げられる。
【0039】
(ワックス、及び水性ワックス)
本発明に使用されるワックスの種類は、分散工程で使用される上記液体に分散又は溶解するものであれば特に限定されない。ワックスは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
ワックスは、天然ワックス及び合成ワックスの何れも本発明に使用することができる。天然ワックスの例としては、カルナバワックス、パラフィン等を主成分としたものが挙げられる。合成ワックスの例としては、酸化ポリエチレン系ワックス、高級エステル系ワックス等の炭化水素系合成ワックス、或いは脂肪族アミド等を主成分としたものが挙げられる。
【0041】
ワックスは、比較的硬度が高く、かつその融点を80℃から120℃の温度範囲内に持つものがより好ましい。上記例示のワックスの中では、この条件を充足しうる、カルナバワックス、又は酸化ポリエチレン系ワックスの少なくとも一方を用いることが特に好ましい。
【0042】
また、ワックスは、水性ワックスとして分散工程に供されてもよい。水性ワックスとは、後述する「水を主成分とする液体」にワックスを分散させたワックス分散液を指し、水のみを含む液体にワックスを分散させたワックス分散液であることが好ましい。水性ワックス中に分散される好適なワックスとしては、例えば、カルナバワックス、パラフィン等を主成分とする天然ワックス、或いは、炭化水素系合成ワックスである酸化ポリエチレン系ワックス、高級エステル系ワックス、脂肪酸アミド等を主成分とする合成ワックス等が挙げられる。なお、水性ワックスを調製するために、必要に応じて界面活性剤を用いてワックスの分散性を向上させてもよい。
【0043】
なお、上記カルナバワックスとは、天然ヤシ科の植物の葉の表面に吹くワックス成分を集めたものを指し、一般的な天然ワックスのなかでも比較的高分子量であるため、非常に硬いという特性を有する。上記酸化ポリエチレンワックスとは、ポリエチレンを酸化処理し、水酸基などの極性基を導入したワックスを指す。酸化ポリエチレン系ワックスは、極性基を有するゆえに水、アセトン等の極性溶媒(後述する液体の一部)への分散性にも優れるという利点も有する。上記パラフィンワックスとは、常温では固体であるが、加熱すると低粘度の液体となる飽和炭化水素の化合物を有するワックスを指す。
【0044】
本発明においてワックスは、少なくとも硬化剤の表面に処理され、好ましくは硬化剤の表面を被覆するものである。後述するが、表面にワックス処理がなされた硬化剤(ワックス被処理硬化剤)は、硬化対象となる樹脂と混合された場合でも、所定の環境下(硬化開始環境下)になるまで樹脂との相互作用、すなわち樹脂の硬化開始を抑制又は阻害する。
【0045】
なお、樹脂がエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の場合には、樹脂の硬化反応の制御がより容易になるとの観点では、ワックスは当該熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下、より好ましくは硬化開始温度未満にその融点を持つことが好ましい。これによれば、樹脂とワックス被処理硬化剤とを混合してなる組成物を加熱すると、まずワックス被処理硬化剤の表面に存在するワックスが溶融して硬化剤表面と樹脂との接触面積が増大する。次いで、組成物の加熱を継続すれば、熱硬化性樹脂の硬化開始温度に達して、熱硬化性樹脂の硬化が開始される。
【0046】
また、ワックスは、硬化対象となる樹脂と難相溶性のものであることが好ましい。
【0047】
(ワックスを分散又は溶解する液体)
本発明に使用される上記液体の種類は、用いるワックスの種類に応じて適宜選択すればよい。液体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
当該液体は、最終的には乾燥除去されるものであり、乾燥除去が容易という観点では、沸点が水と同等(100℃)又はそれ以下であるものが好ましい。この条件を満たす液体の例示としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低分子量のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の低分子量のケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の低分子量のエーテル類;酢酸エチル等の低分子量のエステル類;水;などが挙げられる。
【0049】
上記例示の液体の中では、環境負荷が実質的に無く、またVOC(揮発性有機化合物)ガス等の発生の懸念のない水を主成分として用いることが最も好ましい。なお、本発明において「水を主成分とする」とは、上記液体に占める水の体積が50%を越えることを指し、より好ましくは80%を越えることを指し、さらに好ましくは液体として水のみを用いる(水が100%)ことを指す。
【0050】
(界面活性剤)
ワックスを液体に分散させる際に、必要に応じて用いられる界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型、ジチオアリン酸エステル塩型の界面活性剤等を用いることができる。カチオン性界面活性では、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型などを用いることができる。両性界面活性では、アミノ酸型、ベタイン型などを用いることができる。非イオン界面活性では、ポリエチレングリコール型、高級アルコールエチレンオキサイド付加型、脂肪酸エチレンオキサイド型、高級脂肪酸型、脂肪酸アミド型、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型などを用いることができる。
【0051】
<2.噴霧工程>
噴霧工程は、上記分散工程で調製された、ワックスと固形状の硬化剤とを含む分散液を、気相中に噴霧する工程である。噴霧工程を行うことにより、硬化剤を核とした分散液の液滴が形成され、次いで液滴に含まれる液体が乾燥除去されることによって、硬化剤の表面が略均一にワックス処理(好ましくはワックス被覆)されると推定される。また、分散液が気相中に噴霧されることにより、分散液の液滴同士、或いはワックス処理された硬化剤(ワックス被処理硬化剤)同士が塊状になる虞が低減されて、粒径が比較的均一なワックス被処理硬化剤が得られると推定される。
【0052】
噴霧工程は、液体の迅速な乾燥除去効率及びワックス処理効率の双方が特に良好になるという観点では、気相中に噴霧される分散液の液滴の平均粒径が0.1μm以上で500μm以下の範囲内になることが好ましく、1μm以上で100μm以下の範囲内になることがより好ましい。
【0053】
また、噴霧工程により気相中に噴霧された分散液の液滴は、当該気相中での自然乾燥により上記液体が乾燥除去されてもよいが、噴霧工程と同時かそれ以降に、後述する加熱工程(乾燥工程)が行われることが好ましい。詳細は、加熱工程の説明が参照される。
【0054】
<3.加熱工程>
加熱工程は、上記噴霧工程に供される事前に、又は上記噴霧工程と同時かそれ以降に、上記ワックスと固形状の硬化剤とを含む分散液を加熱する工程である。
【0055】
加熱工程が、噴霧工程に供される事前に行われる場合、「加熱」とは、上記分散工程で調製された上記分散液の温度を越え、かつ当該分散液が含む液体の沸点以下の温度に、分散液を加熱することを指す。特に、水を主成分とする液体を用いて分散液を調製した場合は、加熱工程では、25℃以上で100℃以下の範囲内に分散液を加熱することが好ましい。加熱工程を事前に行うことにより、噴霧工程で形成された分散液の液滴の乾燥(自然乾燥を含む)が促進され、例えば、より速やかにワックス被処理硬化剤の粉末が得られるという利点がある。
【0056】
一方、加熱工程が、噴霧工程と同時かそれ以降に行われる場合、「加熱」とは、上記分散工程で調製された上記分散液の温度を越えることであり、好ましくは当該分散液が含む液体の沸点以上の温度に、分散液を加熱することを指す。特に、水を主成分とする液体を用いて分散液を調製した場合は、加熱工程では、25℃以上で250℃以下の範囲内に分散液を加熱することが好ましい。
【0057】
加熱工程が噴霧工程と同時かそれ以降に行われる場合、加熱の対象は、分散工程において気相中に噴霧された上記分散液の液滴である。なお、分散液の液滴を直接加熱して乾燥することができるという観点では、加熱工程は、噴霧工程と同時かその直後に開始することが好ましい。
【0058】
また、加熱工程が噴霧工程と同時かそれ以降に行われるとは、噴霧工程で上記分散液を噴霧する気相を噴霧工程を行う期間中、継続して加熱しておくことが含まれ、例えば、分散液が噴霧される気相に、加熱用の熱風を継続して吹き込むことも意図される。
【0059】
また、加熱工程を噴霧工程と同時かそれ以降(直後)に行う方法は特に限定されないが、例えばスプレー乾燥装置を用いたスプレー乾燥法が挙げられる。スプレー乾燥装置とは、分散液をスプレーし、直後に加熱処理をし、粉末化する装置である。スプレー乾燥法は、一般的に、溶液又は微粒子のスラリーをスプレーして微粒子化(液滴化)し、この微粒子を熱風中にさらすことにより、微粒子同士を分散しつつ粉末状になるまで乾燥する乾燥装置である。スプレー時に生じる液滴の平均粒径が例えば20μmから500μmになるため、乾燥後に微粒子を得ることができる。さらに乾燥時間が5秒から30秒と短く、コストの面からも優れている。スプレー乾燥装置が備えるスプレー手段として、例えば、加圧ノズル、回転円盤、2流体ノズル、及び4流体ノズル等が用いられる。スプレー乾燥装置は市販の装置を用いてもよく、例えば、藤崎電機マイクロミストドライヤMDLシリーズ、ニロ社FSD流動層内臓型スプレードライヤ、大川原化工機社流動スプレードライヤ、及びヤマト科学社製DS-21型等が挙げられる。
【0060】
〔2. ワックス被処理硬化剤〕
上記〔1.ワックス被処理硬化剤の製造方法〕にて説明した手順により、本発明にかかるワックス被処理硬化剤が得られる。ワックス被処理硬化剤とは、硬化剤の表面がワックス処理されたものを指し、好ましくは表面がワックス被覆されているもの(ワックス被覆硬化剤)である。
【0061】
本発明にかかるワックス被処理硬化剤は、硬化剤の表面が略均一にワックス処理されるという特性を有する。加えて、当該ワックス被処理硬化剤は、粒径が比較的均一となる。それゆえ、本発明にかかるワックス被処理硬化剤と、当該硬化剤により硬化が促進される樹脂(硬化反応前のプレポリマー)とを混合して樹脂組成物を製造した場合、樹脂組成物の保存安定性に優れるとともに、加熱等により迅速に硬化させることも可能となる。この利点については、後述する実施例等も参照される。
【0062】
〔3. エポキシ樹脂組成物〕
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、上記〔1.ワックス被処理硬化剤の製造方法〕にて説明した手順により製造したエポキシ樹脂硬化用のワックス被処理硬化剤と、エポキシ樹脂とを含む一液性エポキシ樹脂組成物である。当該エポキシ樹脂組成物は、ワックス被処理硬化剤及び主剤であるエポキシ樹脂以外に、潜在性硬化剤、及び無機フィラーを含むことが好ましく、さらに必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0063】
上記一液性エポキシ樹脂組成物の硬化工程の一例は、次のように進行する。例えば、上記ワックスの融点が、エポキシ樹脂の硬化開始温度より低い場合、上記一液性エポキシ樹脂組成物を昇温すると、まずワックスが溶融して硬化剤とエポキシ樹脂との接触が増大する。次いで、さらに昇温を続けて上記硬化開始温度に達すると、エポキシ樹脂の硬化が開始される。このように、硬化開始温度に達する事前に、ワックスと硬化剤との接触が十分に確保されていれば、エポキシ樹脂は迅速に硬化する。
【0064】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、具体的には例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−1,2−プロピレンオキサイド2モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロイソフタル酸ジグリシジルエステル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン−3−グリシジルエーテル、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリジルアミノメチレン)シクロヘキサン、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。硬化物の耐熱性の観点では、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどを使用するのが好ましい。これらエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせても使用することもできる。なお、これらエポキシ樹脂は硬化反応前の、いわゆるプレポリマーを意図する。
【0065】
(潜在性硬化剤)
上記潜在性硬化剤として、具体的には例えば、エポキシアミンアダクト系化合物、及びジシアンジアミドが挙げられる。エポキシアミンアダクト系化合物とはアミン系硬化剤にビスフェノール型のエポキシを付加させた化合物である。この化合物を加えることにより、低温での反応を加速させることができる。また、ジシアンジアミドは単独化合物である。ジシアンジアミドは靭性付与効果を持っており、潜在性硬化剤として汎用されている化合物である。これら潜在性硬化剤は、1種単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせても使用することもできる。
【0066】
(無機フィラー)
無機フィラーとして、具体的には例えば、炭酸カルシウム、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、タルク、及びマイカ等が挙げられ、これらは1種単独でも2種類以上組み合わせても使用することができる。また、これらの中でもシリカ、アルミナ及びタルクを単独又は2種類以上併用して用いることが好ましい。
【0067】
(各種添加剤)
その他、添加剤として、粘度を調整するためのチクソ剤、或いは着色をするための着色剤を添加してもよい。着色剤として、具体的には例えば、カーボンブラック及び酸化鉄等が挙げられる。
〔4. 電気・電子部品〕
本発明にかかる電気・電子部品は、上記〔1.ワックス被処理硬化剤の製造方法〕にて説明した手順により製造したワックス被処理硬化剤を内包した樹脂層を備える。なお、樹脂層を構成する樹脂は、ワックス被処理硬化剤によりその硬化が促進されるものであり、好ましくはエポキシ樹脂である。なお、上記樹脂層は、硬化前の状態であっても、硬化後の状態であってもよい。また、樹脂層の形状は特に限定されない。
【0068】
電気・電子部品の種類は特に限定されないが、上記ワックス被処理硬化剤を内包した樹脂層を封止材、絶縁材、又は部材同士の接着材として備える電気部品又は電子部品である。
【実施例】
【0069】
本発明について、以下の実施例、及び比較例等に基づいてより具体的に説明する。
【0070】
はじめに、実施例、及び比較例にて行った保存安定性等の評価方法について説明する。
【0071】
<粘度の貯蔵安定性評価試験>
実施例1〜6及び比較例1〜2の記載に従い調製した直後の一液性エポキシ樹脂組成物を、回転粘度計(E型粘度計、製品名:RE215型、東機産業(株)社製)で測定して初期粘度とした。一液性エポキシ樹脂組成物を所定温度(40℃)の恒温槽で2週間保管した後、上記の装置で粘度を測定し、初期粘度に対する変化率を評価した。変化率が150%未満の場合「◎」、変化率が150%以上で200%未満の場合「○」とし、変化率が200%以上の場合「×」とした。結果は、表1における「保存安定性」の欄に記載した。
【0072】
<気密測定>
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた一液性エポキシ樹脂組成物を、リレーを構成する成形材における一液性エポキシ樹脂組成物塗布面に塗布し、成形材と金属端子とを密着させた後、一液性エポキシ樹脂組成物を100℃で60分硬化させ、リレーを作製した。
【0073】
作製したリレーは、リフロー炉((株)トーヨーコーポレーション、NRY−540S−7Z)を用い、リフロー処理に供した。図1は、リフロー処理における半田の温度の変化の一例を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は温度を表す。本実施例及び比較例では、リフロー処理(IRS法)は、予備加熱を150℃(図1におけるT1)で90〜120秒(図1におけるt1)行い、最高温度が250℃(図1におけるT3)で加熱する条件にて処理を行った。なお、IRS法の詳細は、品質・信頼性ハンドブック(ソニー(株)等)に記載されている。
【0074】
その後、日本電気制御機器工業会規格 NECA0404 制御機器の封止(気密性)試験方法(リレーハンドブック、眞野國夫著、森北出版)に従って70℃に加熱したフッ素系不活性液体に1分間浸漬させ、気密性評価試験を行った。結果は、目視にて観察し、浸漬中に気泡が発生しない場合を◎または○(◎は、気密性が○よりも優れていることを示す)、浸漬中に気泡が発生した場合を×として表した。一液性エポキシ樹脂組成物の組
成および気密性評価試験の結果を表1に示した。
【0075】
〔実施例1〕
イミダゾール系硬化剤2P4MZ(化合物名:2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成製)10gをカルナバワックス10重量%分散液(水のみを溶媒とする水性ワックス)100gに添加し、攪拌を30分間行うことにより、硬化剤分散カルナバワックス溶液を得た(分散工程)。この溶液の微粉末化するために藤崎電機マイクロミストドライヤー(MDL050B)を用いて、平均液滴の直径を約50μmにし、乾燥条件を120℃により、ワックス被処理硬化剤を得た(噴霧工程及び加熱工程)。
【0076】
このカルナバワックス被処理硬化剤を6重量部(表1に示す硬化剤とカルナバワックスとの合計)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(日本アエロジル社製:チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0077】
〔実施例2〕
イミダゾール系硬化剤2P4MZ 10gをカルナバワックス1重量%分散液(水のみを溶媒とする水性ワックス)100gに添加し、攪拌を30分間行うことにより、硬化剤分散カルナバワックス溶液を得た。この溶液の微粉末化するために藤崎電機マイクロミストドライヤー(MDL050B)を用いて、平均液滴の直径を約50μmにし、乾燥条件を200℃により、ワックス被処理硬化剤を得た。
【0078】
このカルナバワックス被処理硬化剤を3.3重量部(表1に示す硬化剤とカルナバワックスとの合計)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(日本アエロジル社製:チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
〔実施例3〕
イミダゾール系硬化剤2P4MZ 10gをカルナバワックス20重量%分散液(水のみを溶媒とする水性ワックス)100gに添加し、攪拌を30分間行うことにより、硬化剤分散カルナバワックス溶液を得た。この溶液の微粉末化するために藤崎電機マイクロミストドライヤー(MDL050B)を用いて、平均液滴の直径を約50μmにし、乾燥条件を120℃により、ワックス被処理硬化剤を得た。
【0079】
このカルナバワックス被処理硬化剤を9重量部(表1に示す硬化剤とカルナバワックスとの合計)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0080】
〔実施例4〕
イミダゾール系硬化剤2P4MZ 10gを酸化ポリエチレンワックス10重量%分散液(水のみを溶媒とする水性ワックス)100gに添加し、攪拌を30分間行うことにより、硬化剤分散カルナバワックス溶液を得た。この溶液の微粉末化するために藤崎電機マイクロミストドライヤー(MDL050B)を用いて、平均液滴の直径を約50μmにし、乾燥条件を120℃により、ワックス被処理硬化剤を得た。
【0081】
このカルナバワックス被処理硬化剤を6重量部(表1に示す硬化剤と酸化ポリエチレンワックスとの合計)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(日本アエロジル社製:チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0082】
〔実施例5〕
イミダゾール系硬化剤2P4MZ 10gをカルナバワックス0.5重量%分散液(水のみを溶媒とする水性ワックス)100gに添加し、攪拌を30分間行うことにより、硬化剤分散カルナバワックス溶液を得た。この溶液の微粉末化するために藤崎電機マイクロミストドライヤー(MDL050B)を用いて、平均液滴の直径を約30μmにし、乾燥条件を120℃により、ワックス被処理硬化剤を得た。
【0083】
このカルナバワックス被処理硬化剤を3.15重量部(表1に示す硬化剤とカルナバワックスとの合計)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(日本アエロジル社製:チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0084】
〔比較例1〕
3重量部のイミダゾール硬化剤2P4MZを10重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(日本アエロジル社製:チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0085】
〔比較例2〕
イミダゾール系硬化剤2P4MZ 30gをヘンシェルミキサーで粉末を攪拌させながら、100℃に加熱した固体のカルナバワックス(日興リカ社:カルナバ1号)30gを滴下し、カルナバワックスを硬化剤表面にコートさせた。このカルナバワックス被処理硬化剤を6重量部(表1に示す硬化剤とカルナバワックスとの合計)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を100重量部と、表1に示す各種添加剤としてのアミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製:潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド(潜在性硬化剤)、炭酸カルシウムNS100(日東粉化工業社製:無機フィラー)、カーボンブラックMA7(三菱化学社製:着色剤)、及びR200(三菱化学社製:チクソ剤)を表1中に示す重量部混合し、攪拌することにより一液性エポキシ樹脂組成物を得た。なお、比較例2の方法は、特許文献1の記載に準じた方法である。
【0086】
<粘度の貯蔵安定性評価試験>及び<気密測定>にて得られた結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すように、実施例に記載の一液性エポキシ樹脂組成物は何れも貯蔵安定性及び気密性の双方に優れていたが、比較例に記載の一液性エポキシ樹脂組成物は貯蔵安定性又は気密性の何れかが劣っていた。
【0089】
また、図2は、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた硬化剤の形状を電子顕微鏡(SEM)で撮像した様子を示す図である。実施例1及び比較例2では、ワックス被覆された硬化剤が得られた。しかし、同図より明らかなように、比較例2と比較して、実施例1では、ワックス被覆硬化剤の粒径は小さく、比較的均一な粒径を有し、かつ均一にワックス被覆されている。このようなワックス被覆の相違が、実施例1と比較例2との性能の相違につながっていると推定される。
【0090】
本発明は上述した各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、保存安定性及び反応性に優れたワックス被処理硬化剤を製造する方法、及びその利用を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の硬化を促進する固形状の硬化剤を、ワックスを分散又は溶解した液体中に分散させる分散工程と、次いで、
上記硬化剤を分散させた上記液体を気相中に噴霧する噴霧工程と、を含むことを特徴とするワックス被処理硬化剤を製造する方法。
【請求項2】
上記液体が、水を主成分とする液体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記噴霧工程に供される事前に、又は上記噴霧工程と同時かそれ以降に、上記硬化剤を分散させた上記液体の液滴を加熱する加熱工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記加熱工程は、上記噴霧工程と同時かそれ以降に、気相中に噴霧された上記硬化剤を分散させた上記液体を加熱して乾燥する工程であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記ワックスが、カルナバワックス及び酸化ポリエチレンワックスの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の方法により製造されることを特徴とするワックス被処理硬化剤。
【請求項7】
エポキシ樹脂硬化用の請求項6に記載のワックス被処理硬化剤と、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする一液性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6に記載のワックス被処理硬化剤を内包した樹脂層を備えることを特徴とする電子・電気部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−190295(P2011−190295A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55144(P2010−55144)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】