説明

ワッペンの取付構造およびその取付方法

【課題】高い接着強度でワッペンを表素材に取り付けるとともに見栄え良く取り付けて商品価値を向上する。
【解決手段】表素材1の裏面に、離型紙2を付設したホットメルト樹脂3を接着する。表素材1を作業台4上に載置し、ワッペン素材との重ね合わせ部分を残す状態でワッペン部分の形状に合わせた開口5が形成されるように、レーザー切断機により切抜く。表素材1の裏面から離型紙2を剥がしてから、表素材1の裏面にワッペン素材6を加熱状態で圧着し、表素材1とワッペン素材6とを仮止めする。ワッペン部分の形状に対応する箇所を凸部7aに形成した下型7と、ワッペン部分の形状に対応する箇所を凹部8aに彫刻した上型8とにより押圧した状態で、高周波溶着により接着し、ワッペン素材6のワッペン部分を表素材1の開口5内に嵌入させた状態でワッペン素材6を表素材1に一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革、人工皮革、布帛などの表素材に、ロゴや模様やキャラクターやエンブレムなどのワッペンを取り付けたワッペンの取付構造およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワッペンの取付構造およびその取付方法としては、次のようなものがあった。
印刷等により模様等を作成したポリ塩化ビニル等の表面材をポリウレタン等の熱可塑性合成樹脂の表面に形成してワッペン構成材が構成されている。
下型の表面に、防水膜が形成されたポリエステル系の防水処理布と同じ生地、又は、防水処理布に近い性質を有する裏当布を敷き、その裏当布に重ねて防水処理布を敷く。
【0003】
次に、ワッペン構成材を防水処理布上に位置決め配置し、上型に設けられたヒータを駆動して上型の温度を所定の温度、例えば、210℃に加熱する。その後、上型を下降させてワッペン構成材を加熱加圧状態で押圧する。
これにより、上型の凹部と凸部の形に応じて、ワッペン構成材を構成する表面材とポリウレタンとが所望形状に成形され、ワッペン類が成型されると同時に防水処理布に溶着され一体となる。
しかる後、上型を上昇させることにより、防水処理布にだけワッペン類が確実に溶着された状態となり、裏当布を外してワッペン類の防水処理布への取り付けを完了する。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−331520号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例の場合、表素材である防水処理布の表面に接着するものであり、ワッペン構成材の周端面が表面に露出し、見栄えが悪い欠点があった。
また、洗濯などによりワッペン構成材の周端面の一部が防水処理布から剥がれてほつれた状態になりやすく、商品価値が早期に損なわれる欠点があった。特に、スキーウェアやスポーツウェアといった防水膜が形成された防水処理布では、その撥水加工等の防水処理のために接着強度を高くできない欠点があった。
更に、ロゴなどで、そのロゴ部分だけを接着する場合には、接着面積を大きくとることができないために接着強度を高くできず、剥がれやすい欠点があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、高い接着強度でワッペンを表素材に取り付けるとともに見栄え良く取り付けて商品価値を向上できるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、高い接着強度でワッペンを表素材に取り付けるとともに見栄え良く取り付けて商品価値を向上できるものを良好に提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明のワッペンの取付構造は、上述のような目的を達成するために、
表素材にワッペン部分の形状に合わせた開口を形成し、ワッペン素材のワッペン部分を前記表素材の開口内に嵌入させた状態で前記ワッペン素材のワッペン部分以外の部分の表面全面を前記表素材の裏面に接着して一体化して構成する。
【0007】
(作用・効果)
請求項1に係る発明のワッペンの取付構造の構成によれば、ワッペン素材のワッペン部分を表素材の開口内に嵌入させ、ワッペン素材のワッペン部分以外の部分の表面全面を表素材の裏面に接着し、ワッペン素材の周端面を表面に露出させることが無い。
したがって、ワッペン部分とそれ以外の部分とが一連のもので、ワッペン部分以外の部分の表面全面を表素材の裏面に接着するから、ワッペン部分の裏面だけで接着していたものに比べて接着面積を大きくでき、接着強度が高くて剥がれにくく、寿命を長くできて商品価値を向上できる。
しかも、ワッペン部分だけを表素材の開口に嵌入させて表面に露出させ、ワッペン素材の周端面を表面に露出させないから、見栄えが良くて商品価値を向上できる。
そのうえ、表素材の表面に対しては接着させずに裏面に接着するから、スキーウェアやスポーツウェアといった表面に撥水加工等の防水処理を施した表素材に対しても接着強度を低下すること無く良好に取り付けることができる。
【0008】
請求項2に係る発明のワッペンの取付方法は、前述のような目的を達成するために、
表素材の裏面に、離型紙を付設したホットメルト樹脂を接着し、その後に、ワッペン素材との重ね合わせ部分を残す状態でワッペン部分の形状に合わせた開口を形成するように前記表素材をレーザ切断機により切抜き、前記離型紙を剥がしてから前記ワッペン素材を前記表素材の裏面に加熱状態で圧着し、しかる後に、下型上に前記ワッペン素材を載置し、その上方から、ワッペン部分の形状に形成した上型を、その凸面表面を前記表素材の表面に接触させるようにセットし、前記上型と前記下型とにより押圧した状態で高周波溶着により前記ワッペン素材を前記表素材の裏面に一体的に接着し、前記ワッペン素材のワッペン部分を前記表素材の開口内に嵌入させた状態で前記ワッペン素材を前記表素材に一体化することを特徴としている。
【0009】
(作用・効果)
請求項2に係る発明のワッペンの取付方法の構成によれば、離型紙を付設したホットメルト樹脂を表素材の裏面に接着した後に、ワッペン部分を嵌入する開口をレーザ切断機により切抜き、加熱状態での圧着により、ワッペン素材を表素材の裏面に一体化しておき、最終的に、上型と下型とにより押圧した状態での高周波溶着により、ワッペン部分を表素材の開口内に嵌入させた状態でワッペン素材を表素材に一体化する。
【0010】
したがって、表素材をレーザ切断機によって局部的に加熱しながら切抜くから、切断面が溶着した状態となり、布製のものはもちろんのこと皮製のものでも切断面からほつれを生じることを回避できる。
しかも、上型と下型とを用いての高周波溶着によって、表素材の裏面へのワッペン素材のワッペン部分以外の表面の接着とワッペン部分の開口内への嵌入とを一挙に行うから、高い接着強度でワッペンを表素材に取り付けるとともに見栄え良く取り付けて商品価値を向上できるものを良好に提供できる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明のワッペンの取付構造の構成によれば、ワッペン素材のワッペン部分を表素材の開口内に嵌入させ、ワッペン素材のワッペン部分以外の部分の表面全面を表素材の裏面に接着し、ワッペン素材の周端面を表面に露出させることが無い。
したがって、ワッペン部分とそれ以外の部分とが一連のもので、ワッペン部分以外の部分の表面全面を表素材の裏面に接着するから、ワッペン部分の裏面だけで接着していたものに比べて接着面積を大きくでき、接着強度が高くて剥がれにくく、寿命を長くできて商品価値を向上できる。
しかも、ワッペン部分だけを表素材の開口に嵌入させて表面に露出させ、ワッペン素材の周端面を表面に露出させないから、見栄えが良くて商品価値を向上できる。
そのうえ、表素材の表面に対しては接着させずに裏面に接着するから、スキーウェアやスポーツウェアといった表面に撥水加工等の防水処理を施した表素材に対しても接着強度を低下すること無く良好に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明のワッペンの取付方法の実施例を示す工程図であり、この工程図に基づいて各工程ごとに順に説明する。
【0014】
(1)ホットメルト樹脂接着工程
図1の(a)の断面図に示すように、表素材1の裏面に、離型紙2を付設したホットメルト樹脂3を接着する。図1の(a)では、表素材1、離型紙2およびホットメルト樹脂3それぞれの厚みは誇張して示している〔図1の(b)でも同様である〕。
【0015】
(2)レーザー切断工程
図1の(b)の断面図に示すように、離型紙2を付設したホットメルト樹脂3を接着した表素材1を作業台4上に載置し、ワッペン素材との重ね合わせ部分を残す状態でワッペン部分の形状に合わせた開口5が形成されるように、レーザー切断機(図示せず)により切抜く。
【0016】
(3)圧着工程
図1の(c)の断面図に示すように、表素材1の裏面から離型紙2を剥がしてからワッペン素材6上に重ね合わせ、その状態で、例えば、アイロンなどにより、表素材1の裏面にワッペン素材6を加熱状態で圧着し、表素材1とワッペン素材6とを仮止めする。図1の(c)では、表素材1およびホットメルト樹脂3と同様に、ワッペン素材6の厚みは誇張して示している。
【0017】
(4)高周波溶着工程
図1の(d)の断面図に示すように、ワッペン部分6a(図2参照)の形状に対応する箇所を凸部7aに形成した下型7上にワッペン素材6を載置し、表素材1の上方から、ワッペン部分6a(図2参照)の形状に対応する箇所を凹部8aに形成した上型8を、その凸面表面を表素材1の表面に接触させるようにセットする。
その後、上型8を下降させ、上型8と下型7とにより押圧した状態で高周波溶着することにより、ホットメルト樹脂3を溶融して、ワッペン素材6を表素材1の裏面に一体的に接着する。これにより、ワッペン素材6のワッペン部分6a(図2参照)を表素材1の開口5内に嵌入させた状態でワッペン素材6を表素材1に一体化し、ワッペンの取り付けを完了する。図1の(d)では、表素材1、ホットメルト樹脂3およびワッペン素材6と同様に、下型7および上型8の厚みは誇張して示している。
【0018】
上記表素材1の材料としては、人工皮革、合成皮革、布帛などが使用される。
ワッペン素材の材料としては、表素材1の材料に加えて、ポリエステルフィルムやポリウレタンフィルム、それらのフィルムに金属箔を蒸着して光沢を持たせたものなどが使用される。更には、表素材1と同じ材料で色の違うものも使用される。
下型7の材料としては、ベークライト樹脂や発泡スポンジ材などの絶縁性の材料が使用される。また、上型8の材料としては、真鍮製などの導電性の材料が使用される。
【0019】
図2は、ワッペンの取付構造の実施例を示す平面図、図3は断面図(図2のA−A線拡大断面図)であり、ワッペン素材6のワッペン部分6aが上方に膨出され、ワッペン部分6aが表素材1の開口5内に嵌入された状態で、ワッペン素材6のワッペン部分6a以外の部分6bの表面全面が表素材1の裏面に接着されて一体化されている。図3においては、表素材1およびワッペン素材6の厚みは、誇張して示している。
【0020】
このワッペンの取付構造は、上述したワッペンの取付方法によって製作される。図3において、ホットメルト樹脂3は高周波溶着によって溶融されていて図示していない。
上記実施例の方法では、高周波溶着工程における下型7と上型8とによる押圧により、ワッペン素材6のワッペン部分6aを膨出させて表素材1の開口5内に嵌入するようにしているが、例えば、ワッペン素材6において、予め、別の成型処理によりワッペン部分6aを膨出させたものを使用するようにしても良い。
【0021】
上記実施例において使用するホットメルト樹脂3としては、例えば、厚みが70μmで溶融温度(メルティングポイント)が120℃程度のウレタン系熱可塑性樹脂が用いられるが、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)など、表素材1の材質に応じ、それぞれに適した性状のものを用いれば良い。
【0022】
また、上記実施例におけるレーザー切断機で用いるレーザーとしては、炭酸ガス(CO2)レーザーやYAGレーザーなど各種のレーザーが適用できる。また、レーザーを照射するヘッド部は、マイクロコンピュータで制御され、設計通りの軌跡を移動して切断できるように構成されている。また、高周波溶着機の発振周波数としては、一例を示せば、40〜42MHz程度である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のワッペンの取付方法の実施例を示す工程図であり、(a)は、ホットメルト樹脂接着工程の説明に供する図、(b)は、レーザー切断工程の説明に供する図、(c)は、圧着工程の説明に供する図、(d)は、高周波溶着工程の説明に供する図である。
【図2】本発明のワッペンの取付構造の実施例を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…ワッペン素材
2…離型紙
3…ホットメルト樹脂
5…開口
6…ワッペン素材
6a…ワッペン部分
6b…ワッペン部分以外の部分
7…下型
8…上型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表素材にワッペン部分の形状に合わせた開口を形成し、ワッペン素材のワッペン部分を前記表素材の開口内に嵌入させた状態で前記ワッペン素材のワッペン部分以外の部分の表面全面を前記表素材の裏面に接着して一体化してあることを特徴とするワッペンの取付構造。
【請求項2】
表素材の裏面に、離型紙を付設したホットメルト樹脂を接着し、その後に、ワッペン素材との重ね合わせ部分を残す状態でワッペン部分の形状に合わせた開口を形成するように前記表素材をレーザ切断機により切抜き、前記離型紙を剥がしてから前記ワッペン素材を前記表素材の裏面に加熱状態で圧着し、しかる後に、下型上に前記ワッペン素材を載置し、その上方から、ワッペン部分の形状に形成した上型を、その凸面表面を前記表素材の表面に接触させるようにセットし、前記上型と前記下型とにより押圧した状態で高周波溶着により前記ワッペン素材を前記表素材の裏面に一体的に接着し、前記ワッペン素材のワッペン部分を前記表素材の開口内に嵌入させた状態で前記ワッペン素材を前記表素材に一体化することを特徴とするワッペンの取付方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−100223(P2007−100223A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287478(P2005−287478)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(503313317)株式会社 オクガワ (1)
【Fターム(参考)】