説明

ワンタッチクランプ装置

【課題】ワンタッチ操作でチューブを狭持することができ、かつ、チューブを狭持するときのチューブの横ズレの修正・防止や係止突起部と係止溝部とを係合するときの両係止部のズレを防止し、及び金型自体のコスト削減、取り数の増加・成形サイクル時間の短縮などによるコスト削減を実現したクランプ装置の提供。
【解決手段】本発明のクランプ装置において、第1突起部21と係止突起部25の間から底部12に向かう押さえ部23を有し、該押さえ部23の先端側は二又状の形状を有し、湾曲部14を湾曲させて係止突起部25を係止溝部18に係合するとき、該押さえ部23の先端側の二又形状部がチューブ貫通路(湾曲部14のチューブ挿入孔15、両突起部21、22、そして立ち上がり部を貫通する通路16)の両側に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンタッチ操作でチューブを狭持することができ、かつ、チューブを狭持するときのチューブの横ズレの修正・防止や係止突起部と係止溝部とを係合するときの両係止部のズレを防止することができるクランプ装置、いわゆるワンタッチクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クランプ装置は、血液回路チューブや輸血チューブなどのチューブ内を流れる血液や、薬液などの流体を止めたり流したりする流体の開閉装置として用いられている。特に血液回路においては、このクランプ装置はチューブ径の種類によって各種の用途に用いられるため、使用に際し、クランプ装置上でチューブがずれて、チューブの遮断時に狭持部からはみ出て、該遮断が不充分であった。またクランプ装置の係止突起部と係止溝部との係合ズレを起こすことに伴い、第1突起部と第2突起部がずれ、挟持できる範囲(挟持範囲)が狭くなり、チューブの内腔を充分に遮断できないことがあった。これらのことが無い様に使用者には十分な注意や緊張感を強いられ、作業性が悪化する恐れが多分にあり問題であった。このような問題点を解決するために、種々の技術が開発されてきており、具体的には、クランプ装置の係止突起部と係止溝部との係合ズレを起こすことなく、チューブを確実に狭持し得るように、封止部材の先端に該封止部材の幅より狭く形成され、かつ先細りの係合突起を形成し、また係止部の下部に該係止部の幅より狭い四角形状の係合溝を形成し、該四角形状の係合溝に前記係合突起を係合することにより、前記係合部同士がずれずに、狭持したチューブが両狭持部からはみ出すことがないクランプが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、従来のクランプ装置における挿通孔は、その開口形状の径が一定に形成されているため、それより小径の可僥性チューブをクランプする際、クランプ装置が可僥性チューブの軸線方向へずれてしまうのを防止するために、一端部と他端部と中間部を有するクランプ装置において、中間部にチューブ挿通孔を有し、該挿通孔は、チューブの外形に応じた大径の孔と小径の孔とが連なって形成したものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005-169146 (段落0004、段落0006〜0007、図1、図2)
【特許文献2】特開2001-353220(段落0004、段落0024〜 0025、段落0028〜段落0029、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、本発明者等は、前述のような従来のクランプ装置においてもチューブの横ズレが十分防止できない場合があることがわかり、更なる検討を加えたところ、クランプ装置の第1突起部と係止突起部の間付近に押さえ部を設けることでチューブの横ズレを防止・修正すること、更に該押さえ部をガイドする押さえ部ガイドを底部に設けることで係止突起部と係止溝部の係合ズレを確実に防止し、チューブの内腔の遮断を充分にできることを見出した。これらの知見に基づいて本発明はなされたものである。また単に、押さえ部を設けただけの本発明のクランプ装置は、製造の際、射出成形用金型は割型となり金型自体のコストが増加し、更に成形サイクル時間も長くなり、クランプ装置のコストが増加するが、本発明において、更に押さえ部が対向する底部の部位に切り欠き部を設けたことにより、割型を用いることなく射出成形が可能となり、金型自体のコスト削減、取り数の増加・成形サイクル時間の短縮などによるコスト削減を実現できたものである。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする第1の課題は、チューブを挟持するときのチュ
ーブのズレを修正・防止することができ、また係止突起部と係止溝部の係合ズレを防止することで、ワンタッチで狭持してチューブの内腔を充分に遮断することができるという優れたクランプ装置を提供することである。更に本発明の第2の課題は、金型自体のコスト削減、取り数の増加・成形サイクル時間の短縮などによるコスト削減を実現したクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)下方に延びた第1突起部を有する上端部と、第1突起部に対向する第2突起部を有する底部と、これら上端部と底部を連結する湾曲部と、底部の端から上端部側へ向かう立ち上がり部からなり、前記湾曲部と立ち上がり部のそれぞれにチューブを挿入し得るチューブ挿入孔を有し、また前記上端部の自由端に係止突起部を有し、そして立ち上がり部の自由端部側には該係止突起部が係合し得るように係止溝部を有し、前記湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、第1突起部と第2突起部が接近して前記二つのチューブ挿入孔に挿入されたチューブの内腔を遮断するクランプ装置において、前記第1突起部と係止突起部の間から底部に向かう押さえ部を有し、該押さえ部の先端側は二又状の形状を有し、前記湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、該押さえ部の先端側の二又形状部がチューブ貫通路(湾曲部のチューブ挿入孔、両突起部そして立ち上がり部を貫通する通路)の両側に移動することを特徴とするクランプ装置。
【0006】
(2)押さえ部が対向する底部の部位に切り欠き部を有することを特徴とする前記第1項に記載のクランプ装置。
(3)二つのチューブ挿入孔にチューブが挿入されたとき、押さえ部の先端側が該チューブの両側に位置することを特徴とする前記第1項又は第2項のいずれかに記載のクランプ装置。
(4)押さえ部の先端部の形状は、U字状、V字状またはY字状のいずれかであることを特徴とする前記第1乃至第3項のいずれかに記載のクランプ装置。
(5)湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端側が底部の切り欠き部内に位置する、若しくは押さえ部の先端側が底部上で撓むことを特徴とする前記第1項乃至第4項のいずれかに記載のクランプ装置。
(6)底部の第2突起部と端部(立ち上がり側)の間に一対の押さえ部ガイドを有し、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側に向かって移動することを特徴とする前記第1項乃至第5項のいずれかに記載のクランプ装置。
(7)湾曲部を湾曲させる前の状態で、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側もしくは外側に位置していることを特徴とする前記第6項に記載のクランプ装置。
(8)押さえ部の先端側の形状は、該部の押さえ部ガイド部側にある部分が切り欠き部となり、連続若しくは不連続の先細りであることを特徴とする前記第6項又は第7項に記載のクランプ装置。
(9)湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合して第1突起部と第2突起部が接近してチューブの内腔を遮断するとき、両突起部の突起端同士がチューブの内腔を遮断することなく、かつ第1突起部または第2突起部のいずれかの突起端に凹部を有することを特徴とする前記第1項乃至第8項のいずれかに記載のクランプ装置。
(10)上端部の上面の係止突起部近くに上端突起部を有することを特徴とする前記第1項乃至第9項のいずれかに記載のクランプ装置。
【発明の効果】
【0007】
(1)本願請求項1に記載の発明は、下方に延びた第1突起部を有する上端部と、第1突起部に対向する第2突起部を有する底部と、これら上端部と底部を連結する湾曲部と、底部の端から上端部側へ向かう立ち上がり部からなり、前記湾曲部と立ち上がり部のそれぞ
れにチューブを挿入し得るチューブ挿入孔を有し、また前記上端部の自由端に係止突起部を有し、そして立ち上がり部の自由端部側には該係止突起部が係合し得るように係止溝部を有し、前記湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、第1突起部と第2突起部が接近して前記二つのチューブ挿入孔に挿入されたチューブの内腔を遮断するクランプ装置において、前記第1突起部と係止突起部の間から底部に向かう押さえ部を有し、該押さえ部の先端側は二又状の形状を有し、前記湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、該押さえ部の先端側の二又形状部がチューブ貫通路(湾曲部のチューブ挿入孔、両突起部そして立ち上がり部を貫通する通路)の両側に移動することにより、二又形状部がチューブ貫通路の両側に移動するとき、横ズレしたチューブに接触した二又形状部が横ズレしたチューブの位置をチューブ貫通路に変位させることができ、その結果、該チューブは二又形状部に挿まれる位置に移動するので、横ズレが修正される。尚、この横ズレには次の二つがある。一つは、湾曲部と立ち上がり部の二つのチューブ挿入孔に直線状に挿入されたチューブが曲がることにより生じる横ズレである。もう一つは、前記二つの挿入孔の内腔より小さい外径のチューブが挿入孔の端側に位置することにより生じる横ズレである。本願発明において、押さえ部を立ち上がり部よりチューブ挟持部の近くに設けることになり、挟持部上でのチューブの横ズレを修正・防止する効果が高くなり、かつチューブのズレはチューブ挟持部から近くなるにつれて小さいので、押さえ部によるチューブの捕捉がより確実になる。更に、チューブの捕捉位置は押し潰されないところであるので押さえ部の先端側を大きくする必要はなく、本発明のクランプ装置を従来と同様に操作することができる。これらにより本発明はワンタッチ操作で、チューブを容易に捕捉し、チューブの横ズレを修正・防止し、チューブの内腔の遮断を容易かつ確実にすることができるという優れた効果を奏するものである。
【0008】
(2)本願請求項2に記載の発明は、前記第1項に記載のクランプ装置において、押さえ部が対向する底部の部位に切り欠き部を有することで、該切り欠き部を介して金型スライドコアピンを抜くことができるので、金型はコストの高い割型を用いることなく、また成形サイクル時間も短くなり安価に本発明のクランプ装置を製造できるという効果を奏するものである。
(3)本願請求項3に記載の発明は、前記第1項また第2項に記載のクランプ装置において、二つのチューブ挿入孔にチューブが挿入されたとき、押さえ部の先端部が該チューブの両側に位置することで、チューブは押さえ部に挿まれており、チューブの横ズレは防止される。その結果、本発明はチューブの内腔の遮断を更に容易かつ確実にすることができるという優れた効果を奏するものである。
【0009】
(4)本願請求項4に記載の発明は、前記第1項乃至は第3項に記載のクランプ装置において、押さえ部の先端側の形状は、U字状、V字状またはY字状のいずれかであることで、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端側はワンタッチ操作でチューブを捕捉し得ることになる。更に、押さえ部の形状がV字状またはY字状であるとき、チューブの捕捉したチューブをより挟持部の中央側(チューブ貫通路の中央側)へと変位させるので、チューブの横ズレの修正・防止がより確実に行なわれ、チューブの内腔の遮断を容易かつ確実にすることができるという優れた効果を奏するものである。
(5)本願請求項5に記載の発明は、前記第1項乃至第4項のいずれかに記載のクランプ装置において、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端部が底部の切り欠き部内に位置する、若しくは押さえ部の先端側が底部上で撓むことで、チューブの内腔を遮断するとき、押さえ部の先端部がクランプを操作する者の手に当接しなくなり、操作時に手に違和感を与えることはない。その結果、本発明のクランプ装置の操作がスムーズに行なえるという効果を奏するものである。
【0010】
(6)本願請求項6に記載の発明は、前記第1項乃至第5項のいずれかに記載のクランプ
装置において、底部の第2突起部と端部(立ち上がり側)の間に一対の押さえ部ガイドを有し、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側に向かって移動することで、係止突起部と係止溝部の係合ズレをも防止できる。このことにより、第1突起部と第2突起部のズレも防止されるのでチューブを挟持する範囲は狭くならず、チューブの内腔を充分に確実に遮断することができるという優れた効果を奏するものである。
(7)本願請求項7に記載の発明は、前記第6項に記載のクランプ装置において、湾曲部を湾曲させる前の状態で、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側もしくは外側に位置していることで、チューブは押さえ部又は押さえ部ガイドのいずれか若しくは両方に挟まれて横ズレは防止できる。更に押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側若しくは外側に沿って移動することで係止突起部と係止溝部の係合ズレを防止でき、第1突起部と第2突起部のズレも防止されるのでチューブを挟持する範囲は狭くならず、チューブの内腔を充分に確実に遮断することができる。これらにより、本発明はチューブの内腔を充分に確実に遮断することができるという優れた効果を奏するものである。
【0011】
(8)本願請求項8に記載の発明は、前記第6項又は第7項に記載のクランプ装置において、押さえ部の先端側の形状は、該部の押さえ部ガイド側にある部分が切り欠き部となり、連続若しくは不連続の先細りであることで、湾曲部14を湾曲させるとき、押さえ部23は押さえ部ガイド28の内側若しくは外側にスムーズに誘導され、係止突起部25を係止溝部18に係合するときのズレが防止される。このことにより、第1突起部と第2突起部のズレも防止されるのでチューブを挟持する範囲は狭くならず、チューブの内腔を充分に確実に遮断することができる。また、押さえ部23と押さえ部ガイド28の構成をも小さくでき、操作するに際し適切な大きさのものに成し得るという効果を奏するものである。更に、押さえ部23の不連続の先細りの形状を段差とすることで、該段差部分が押さえ部ガイド28に当接したとき、押さえ部23の先端が底部12辺りや切り欠き部17までに移動するようにする。当接してからは、更に湾曲部14を湾曲させても、押さえ部23は底部12の方向へ移動できなくなり、押さえ部23の先端部が底部12の切り欠き部17を超えないので、押さえ部23の先端部がクランプを操作する者の手に当接しなくなり、操作時に手に違和感を与えることはない。その結果、本発明のクランプ装置の操作がスムーズに行なえるという効果を奏するものである。
【0012】
(9)本願請求項9に記載の発明は、前記第1項乃至第8項に記載のクランプ装置において、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合して第1突起部と第2突起部が接近してチューブの内腔を遮断するとき、両突起部の突起端同士がチューブの内腔を遮断することなく、かつ第1突起部または第2突起部のいずれかの突起端に凹部を有することで、チューブの内腔の遮断は例えば第1突起部の突起端と第2突起部の突起端以外の部分で行なわれるので、第2突起部の突起端に凹部を有するとしてもチューブの内腔を遮断できる。そして本発明は第1突起部または第2突起部のいずれかの突起端に凹部を有することで前記チューブの横ズレが抑えられ、横ズレは少なくなる。その結果、本発明では押さえ部によるチューブの捕捉が容易になり、チューブの内腔を充分に確実に遮断することができるという優れた効果を奏するものである。
【0013】
(10)本願請求項10に記載の発明は、前記第1項乃至第9項に記載のクランプ装置において、上端部の上面の係止突起部近くに上端突起部を有することで、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、指で押圧する上端部の位置を確認することができるようになる。このことにより上端部の押圧する位置を目視確認することが不要になる。また同時に上端突起部より係止突起部に近い部位や逆に湾曲部に近い部位を押圧すると、押圧する指が立ち上がり部に接触すること、湾曲部に近い上端部を押圧すると、梃子の原理で湾曲部を湾曲させる負荷が大きくなること等の係合作業を阻害することを避けることができる。これらにより係止突起部と係止溝部との係合作業がスムーズにできるので、本発明のクランプ装置は使い易くなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について図面を用いて具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。図1は本発明のクランプ装置を示す側面図である。図1において、本発明のクランプ装置は、上端部11とチューブ挿入孔15を設けた湾曲部14と底部12とチューブ挿入孔16を設けた立ち上がり端部13が連結し、上端部11の先端部には係止突起部25を有する。一方、立ち上がり端部13の先端側には、内側に係止溝部18を有しており、この係止溝部18と前記係止突起部25とが着脱自在に係合して環状体が形成される。この環状体の内側には、上端部11の下面に、下方に延びた第1突起部21を有し、また底部12の上面には、前記第1突起部21と対向した第2突起部22を有している。これらの突起部には第1突起部21にはその先端に突起端21aを有し、第2突起部22にはその先端に突起端22aを有している。これら両突起でチューブ2を狭持する。尚、両突起端(21a及び22a)の形状は、共に平面、凹凸の対となすものように、チューブの挟持が充分にできるものであればよい。また前記上端部11の下面には、第1突起部21と係止突起部25の間の所望の位置に押さえ部23を有しており、この押さえ部23の先端側には、突起23a、23bが二又に形成されている。この先端側の形状には、図4に示されるように、U字形状、V字形状やY字形状などの形状とすることができるが、チューブ2を補足し得る形状であり、前記両突起(21及び22)上で横ズレしたチューブを中央側の位置に修正し得るものであれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0015】
図2、図3及び図5は本発明のクランプ装置の使用態様を示す側面図である。これらクランプ装置の違いは、押さえ部23の長さである。図2において、本発明のクランプ装置の押さえ部23は、二つのチューブ挿入孔(15及び16)にチューブ2が挿入されたとき、押さえ部23の先端側はチューブ2の両側には位置していない。そして湾曲部14を湾曲させて係止突起部25を係止溝部18に係合するとき、押さえ部23の先端側はチューブ2の両側に移動する長さを有しており、前記両突起(21及び22)上で横ズレしたチューブを中央側の位置に修正し得るのである。本発明のクランプ装置では二つのチューブ挿入孔(15及び16)に挿入するときに、押さえ部23にチューブ2がぶつかり、該挿入をスムーズに行なえない可能性がある。しかし、押さえ部23を短くすることで、チューブ2とのぶつかりは無く、チューブ2の挿入は容易に行なえる。また、このようなクランプ装置は、チューブ2のズレが大きいときは、ズレの修正は充分にできない可能性がある。そこで横ズレが少ない比較的に硬度の高いチューブや、後述の図9に示される、第1突起部若しくは第2突起部のいずれかに凹部を設けることでチューブのズレを少なくしたクランプ装置において、図2のような長さの押さえ部が適する。
【0016】
図3及び図5において、本発明のクランプ装置の押さえ部23は、二つのチューブ挿入孔(15及び16)にチューブ2が挿入されたとき、押さえ部の先端部が該チューブの両側に位置する長さを有している。図3のように、チューブ2の半分程度は押さえ部23に挟まれていることで、チューブ2の横ズレは防止される。更に図5のaのように押さえ部23がチューブ2の半分以上挟んでいれば、確実にチューブ2のズレを防止することができる。本発明のクランプ装置において、係止突起部25を係止溝部18に係合してチューブ2の内腔を遮断するとき、押さえ部23の先端側は底部12へ移動する。しかし、図5のように押さえ部23を長くしたことで、係止突起部25を係止溝部18に係合してチューブ2の内腔を遮断するとき、押さえ部23の先端側は底部12へぶつかるときもある。そのようなときは、図5のbやcのように、底部12上で押さえ部23の先端側が容易に撓むように肉厚の調整や樹脂を選択し、または底部12に押さえ部23の先端側が入り込む切り欠き部17を設けることで、係止突起部25を係止溝部18に係合しやすくし、本発明のクランプ装置の操作性を維持するようにできる。更に、切り欠き部17の構成を、湾曲部14を湾曲させて係止突起部25を係止溝部18に係合するときに、押さえ部23の先端側が切り欠き部17の縁に沿って移動するようにすることで、係止突起部25と係止溝部18との係合ズレを防止できる。このことにより、第1突起部と第2突起部のズレも防止されるのでチューブを挟持する範囲は狭くならず、チューブの内腔を充分に確実に遮断することができるという優れた効果を奏するものである。
【0017】
図6は押さえ部23及び押さえ部ガイド28を備えた本発明のクランプ装置の使用態様を示す図面であり、図10は、図6に示される押さえ部ガイド部28のA−A′の点線に沿って切断した断面図を示す。当図に示されるように一対のガイド突起(28a及び28b)からなる。押さえ部23の二又形状部の突起(23a及び23b)は、ガイド突起(28a及び28b)に沿って移動し、図10のaでは押さえ部ガイド部(28a及び28b)の内側に、cでは押さえ部ガイド部(28a及び28b)の外側に移動する。図10のbでは、一対の押さえ部ガイド(28a及び28b)がそれぞれ対となっており、その間に移動する。図6は図10のaに示された押さえ部ガイド部を備えるものである。本発明において、押さえ部23は、湾曲部14が湾曲されていくとき、押さえ部23の先端側が押さえ部ガイド28の内側に沿って移動することで、係止突起部25と係止溝部18の係合ズレをも防止する。このとき押さえ部23の形状は、図8の記載のように、押さえ部23の先端側の形状は、該部の押さえ部ガイド側にある部分、すなわち外側が切り欠き部となり、連続(図8のa乃至c)若しくは不連続(図8のd)の先細りの形状とすることができる。これらのような形状により、湾曲部を湾曲させるとき、押さえ部23が押さえ部ガイド28の内側にスムーズに誘導され、かつ係止突起部25を係止溝部18に係合するときのズレがより確実に防止される。同時に、押さえ部23と押さえ部ガイド28の構成をも小さくでき、操作するに際し適切な大きさのクランプ装置とし得るものである。また押さえ部23の不連続の先細りの形状を図8のdのように段差とすることで、該段差部分が押さえ部ガイド28に当接したとき、押さえ部23の先端が底部12辺りや切り欠き部17までに移動するようにする。該当接の後では、更に湾曲部14を湾曲させても、押さえ部23は底部12の方向へ移動できなくなり、押さえ部23の先端部が底部12の切り欠き部17を超えないので、押さえ部23の先端部がクランプを操作する者の手に当接しなくなり、操作時に手に違和感を与えることはない。その結果、本発明のクランプ装置の操作がスムーズに行なえるという効果を奏することができる。
【0018】
図7は本発明のクランプ装置の使用態様を示すものである。当図において、本発明のクランプ装置の押さえ部23の先端側が押さえ部ガイド28の内側に位置していることで、チューブ2は押さえ部23又は押さえ部ガイド28のいずれか若しくは両方に挟まれていることでチューブの横ズレは防止でき、かつ押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側若しくは外側に沿って移動することで係止突起部と係止溝部の係合ズレを防止できる。これらにより、本発明はチューブの内腔を充分に確実に遮断する効果を奏することができる。また図7には示されていないが、押さえ部23を図8に示されるものと組合せてもよい。
【0019】
図9は本発明のクランプ装置の使用態様を示すものである。当図のクランプ装置は、チューブ2の内腔を遮断は、第1突起部21の突起端21aと、突起端22aから外れた第2突起部22の斜面(図9では第2突起部22の右側部分)とにより行なわれる。従って、チューブ2の内腔の遮断に係らない第2突起部22の突起端22aに凹部を設けても、突起端21aと第2突起部22の斜面によりチューブ2の内腔を充分に遮断でき、また該凹部の構成によりチューブ2のズレを防止することができる。このように、両突起部(21及び22)の突起端(21a及び22a)同士が当接せず、該突起端(21a及び22a)のいずれかがチューブ2の内腔を遮断するものでないとき、該突起端(21a及び22b)のいずれか)に凹部を有することで、凹部はチューブ2の内腔の遮断を妨げることなく、チューブ2の横ズレが抑えられる。その結果、本発明のクランプ装置において、押さえ部23によるチューブ2の捕捉が容易・確実になり、チューブ2の内腔を充分に確実に遮断することができるという優れた効果を奏するものである。
【0020】
またこの押さえ部23の先端部24の延長方向にある底部12には、切り欠き部17が設けられており、この切り欠き部17を有することにより、該切り欠き部から金型スライドコアピン(押さえ部を形成するための金型)を抜くことができるので、金型はコストの高い割型を用いる必要がなく、また成形サイクル時間も短くなり安価に本発明のクランプ装置を製造することができる。この切り欠き部17の形状は、特に限定されるものではないが、好ましくは、円形、正方形、長方形、楕円形などがよい。本発明のクランプ装置の射出成形方法は、金型スライドコアピンを有する金型を取り付けて被成形物を注入して成形した後、金型スライドコアピンを抜いてから成形品を取り外すことにより割型を使用しないで成形することができる。
【0021】
更に本発明のクランプ装置においては、上端部11の上面には滑り止め27を有すると共に、前記係止突起部25の近傍に上端突起部26を有しており、上端突起部26の突起形状は、特に限定されるものではないが、好ましくは三角形、円形、正方形、五角形(特に野球ベース型)がよい。これにより係止突起部25と係止溝18とを係止する際、上端部11の押圧位置を直ちに確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のクランプ装置は、血液回路チューブや輸血チューブなどのチューブ内を流れる血液や、薬液などの流体を止めたり流したりする流体の開閉装置として広く医療分野において用いられ、特に血液回路チューブや輸血チューブの分野に好都合に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のクランプ装置を示す側面図である。
【図2】本発明のクランプ装置における使用態様を示す側面図であり、aはチューブを挿入した状態、bはチューブを遮断した状態を示している。
【図3】本発明のクランプ装置おける別の使用態様を示す側面図であり、比較的に押さえ部が長いクランプ装置を示すものである。尚、aはチューブを挿入した状態、bはチューブを遮断した状態を示している。
【図4】本発明のクランプ装置における押さえ部を示す図面である。aはU字形状、bはV字形状及びcはY字形状を概略に示している。
【図5】本発明のクランプ装置おける別の使用態様を示す側面図であり、押さえ部が更に長いクランプ装置を示すものである。aはチューブを挿入した状態、b及びcはチューブを遮断した状態を示しており、bでは押さえ部の先端側は底部上で撓み、cでは押さえ部の先端側は底部の切り欠き部内に位置していることを示している。
【図6】本発明のクランプ装置において、押さえ部ガイドを有するクランプ装置の使用態様を示す側面図である。尚、aはチューブを挿入した状態、bはチューブを遮断した状態を示している。
【図7】本発明のクランプ装置において、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側に位置しているクランプ装置の別の使用態様を示す側面図である。
【図8】本発明のクランプ装置における別の押さえ部を示す図面である。a乃至cでは先端側の外側が連続して切り欠きされて先細りとなり、dでは先端側の外側が不連続に切り欠きされ先細りとなっている。
【図9】本発明のクランプ装置において、第2突起部に凹部を有するクランプ装置の使用態様を示す側面図である。
【図10】図6の本発明のクランプ装置に示される押さえ部ガイド部28のA−A´の点線に沿って切断した断面図を示す。押さえ部の先端側は、aでは押さえ部ガイド部の内側に、bでは押さえ部ガイドの間に、cでは押さえ部ガイド部の外側に移動する。
【符号の説明】
【0024】
1 クランプ装置
2 チューブ
11 上端部
12 底部
13 立ち上がり部
14 湾曲部
15、16 チューブ挿入孔
17 切り欠き部
18 係止溝部
21 第1突起部
21a、22a 突起端
22 第2突起部
23 押さえ部
23a、23b 突起
25 係止突起部
26 上端突起部
27 滑り止め
28 押さえ部ガイド
28a、28b ガイド突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に延びた第1突起部を有する上端部と、第1突起部に対向する第2突起部を有する底部と、これら上端部と底部を連結する湾曲部と、底部の端から上端部側へ向かう立ち上がり部からなり、前記湾曲部と立ち上がり部のそれぞれにチューブを挿入し得るチューブ挿入孔を有し、また前記上端部の自由端に係止突起部を有し、そして立ち上がり部の自由端部側には該係止突起部が係合し得るように係止溝部を有し、前記湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、第1突起部と第2突起部が接近して前記二つのチューブ挿入孔に挿入されたチューブの内腔を遮断するクランプ装置において、前記第1突起部と係止突起部の間から底部に向かう押さえ部を有し、該押さえ部の先端側は二又状の形状を有し、前記湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、該押さえ部の先端側の二又形状部がチューブ貫通路の両側に移動することを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
押さえ部が対向する底部の部位に切り欠き部を有することを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
二つのチューブ挿入孔にチューブが挿入されたとき、押さえ部の先端側が該チューブの両側に位置することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項4】
押さえ部の先端部の形状は、U字状、V字状またはY字状のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項5】
湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端側が底部の切り欠き部内に位置する、若しくは押さえ部の先端側が底部上で撓むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項6】
底部の第2突起部と端部(立ち上がり側)の間に一対の押さえ部ガイドを有し、湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合するとき、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側に向かって移動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項7】
湾曲部を湾曲させる前の状態で、押さえ部の先端側が押さえ部ガイドの内側もしくは外側に位置していることを特徴とする請求項6に記載のクランプ装置。
【請求項8】
押さえ部の先端側の形状は、該部の押さえ部ガイド部側にある部分が切り欠き部となり、連続若しくは不連続の先細りであることを特徴とする請求項6又は7に記載のクランプ装置。
【請求項9】
湾曲部を湾曲させて係止突起部を係止溝部に係合して第1突起部と第2突起部が接近してチューブの内腔を遮断するとき、両突起部の突起端同士がチューブの内腔を遮断することなく、かつ第1突起部または第2突起部のいずれかの突起端に凹部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項10】
上端部の上面の係止突起部近くに上端突起部を有することを特徴とする請求項1乃至第9項のいずれかに記載のクランプ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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