説明

ワンタッチ開閉キャップ

【課題】容器体Bに嵌着固定するキャップ本体A1と、キャップ本体A1上面を開閉可能に設けた蓋体A2と、キャップ本体A1前部に於いて蓋体A2前部を係止する係止手段と、蓋体A2の係止を解除する係止解除手段と、蓋体A2の開方向付勢手段とを備え、ワンタッチでの開蓋が可能で、使い勝手の良いワンタッチ開閉キャップを提案する。
【解決手段】蓋体A2の開方向付勢手段は、キャップ本体A1上端に一端を固定し、開蓋状態の蓋体周壁部後部下端面に至る弾性板41を設け、開蓋状態の蓋体A2を閉じることで弾性板41を中間部から折り返した状態に弾性変形させて閉蓋状態の蓋体A2を常時開方向へ付勢させる如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワンタッチ開閉キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ本体と蓋体とを備え、蓋体が開方向へ付勢されていて自動的な開蓋が可能なキャップが種々提案されている。(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)
【0003】
前者は一対のヒンジと、ヒンジ間に設けた中間部が屈曲された弾性アーム板とからなる連結機構を介してキャップ本体と蓋体とを連結している。
【0004】
また、後者は、キャップ本体と蓋体とをヒンジ体で連結しており、キャップ本体は、頂壁と筒状の外周壁とから形成され、外周壁の上端部の所定個所に、ヒンジ体が収納される収納部が設けられており、蓋体は、上壁と筒状壁とから形成され、筒状壁の一部にヒンジ体が収納される収納部が設けられており、ヒンジ体は、閉蓋した状態で、一対のヒンジ片が外方に向かって上下に拡がり、キャップ本体、蓋体に結合されている部分が薄肉に形成されており、一対のヒンジ片間のキャップ本体側と蓋体側双方に、空所を有する形状にブリッジを結合するとともに、一対のヒンジ片に結合されているブリッジの接続部が薄肉に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−239268号公報
【特許文献2】特開2007−320589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各文献のものはキャップ本体及び蓋体とヒンジ機構とが一体に形成され、ヒンジ機構の弾性反転性能を利用して蓋体の開方向への付勢を図っており、閉蓋状態における蓋体の係止を解除した途端に開蓋する機構ではなく、閉蓋状態からある程度開蓋させた後にヒンジ機構が働き、その時点から自動的に開蓋する機構を採用している。
【0007】
本発明は、蓋体をキャップ本体に係止する係止手段を備え、その状態から常時蓋体を開方向へ付勢する蓋体の開方向付勢手段を備えており、また、蓋体の係止を解除する係止解除手段を設けてワンタッチでの開蓋が可能に構成し、使い勝手の良いワンタッチ開閉キャップを提案するものである。また、構造も簡単で、組み付け操作が容易なキャップを提案する。更に、未使用を表現することができる利点も兼ね備えたキャップを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、容器体Bに嵌着固定するキャップ本体A1と、キャップ本体A1上面を開閉可能に設けた蓋体A2と、キャップ本体A1前部に於いて蓋体A2前部を係止する係止手段と、蓋体A2の係止を解除する係止解除手段と、蓋体A2の開方向付勢手段とを備え、蓋体A2の開方向付勢手段は、キャップ本体A1後部上端に一端を固定し、他端である自由端が開蓋状態の蓋体周壁部20後部下端面に至る弾性板41を設け、開蓋状態の蓋体A2を閉じることで弾性板41を中間部から折り返した状態に弾性変形させて閉蓋状態の蓋体A2を常時開方向へ付勢させる如く構成した。
【0009】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、蓋体A2の後部の周壁部20内面位置から蓋体A2の後部の頂壁部21下面位置に至り、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の先端縁が摺動する摺動面30を設けた。
【0010】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第2の手段に於いて、摺動面30を蓋体A2内の後部隅部に垂設した複数の板状突起32の各下端面で形成した。
【0011】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれか一つの手段に於いて、蓋体A2内の後部隅部に、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の両側に位置する一対の案内壁31を設けた。
【0012】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれか一つの手段に於いて、弾性部材A3が、キャップ本体A1の頂板11後部に凹設した凹部15内に基部40を嵌着固定して装着するとともに、基部40の上端部から後方へ一体に弾性板41を延設してなる。
【0013】
第6の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第5の手段のいずれか一つの手段に於いて、上記係止手段を、蓋体A2前部より垂設したフック24をキャップ本体A1前部に突設した係止突起14に離脱可能に係合させて構成し、上記係止解除手段を、蓋体A2前端部に弾性揺動可能に突設した押圧板25と、押圧板25の後部両側より延設し、自由端をキャップ本体A1の頂板11上面に支持させた一対の支持弾性板26とで構成した。
【0014】
第7の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第6の手段のいずれか一つの手段に於いて、蓋体A2の前面を覆う封緘帯33を切り取り可能に設けた。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記した弾性部材A3による蓋体A2の開方向付勢手段を備えているため、また、蓋体A2の係止手段を備えているため、蓋体A2を係止している時点で常時蓋体A2が開方向に付勢されており、係止解除手段の作用で蓋体の係止を解除すると、ワンタッチで簡単に開蓋することができる。弾性部材A3は簡単な構造であるためキャップ本体A1に簡単に組み付けることができる利点もある。
【0016】
蓋体A2の後部の周壁部20内面位置から蓋体A2の後部の頂壁部21下面位置に至り、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の先端縁が摺動する摺動面30を設けた場合には、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の先端部が摺動面30上を摺動するため、弾性板41の折り返しを円滑に行え、蓋体A2に弾性板41が引っ掛かる等の不都合を生じる虞はない。
【0017】
摺動面30を蓋体A2内の後部隅部に垂設した複数の板状突起32の各下端面で形成した場合には、各板状突起32間の空間の存在で弾性板41の先端部のより円滑な摺動が可能となり、牽いてはより円滑な弾性板41の折り返し操作を行える。
【0018】
蓋体A2内の後部隅部に、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の両側に位置する一対の案内壁31を設けた場合には、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に先端縁が左右にぶれることなく弾性板41を折り返すことができ、従って、この場合も弾性板41の折り返しをさらに円滑に行える。
【0019】
弾性部材A3が、キャップ本体A1の頂板11後部に凹設した凹部15内に基部40を嵌着固定して装着するとともに、基部40の上端部から後方へ一体に弾性板41を延設してなる場合には、キャップ本体A1への弾性部材A3の組み付けが極めて容易である。
【0020】
上記係止手段を、蓋体A2前部より垂設したフック24をキャップ本体A1前部に突設した係止突起14に離脱可能に係合させて構成し、上記係止解除手段を、蓋体A2前端部に弾性揺動可能に突設した押圧板25と、押圧板25の後部両側より延設し、自由端をキャップ本体A1の頂板11上面に支持させた一対の支持弾性板26とで構成した場合には、蓋体A2の係止解除にあたり梃の原理で弱い力でも簡単にワンタッチでの係止解除を行える利点がある。
【0021】
蓋体A2の前面を覆う封緘帯33を切り取り可能に設けた場合には、装着した容器の未使用を表現でき、容器の信用性を増大する等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】容器体に装着したキャップの縦断面図である。(実施例1)
【図2】キャップの開蓋状態の平面図である。(実施例1)
【図3】キャップの前部に於ける要部拡大断面図である。(実施例1)
【図4】キャップ後部の開蓋状態に於ける要部拡大断面図である。(実施例1)
【図5】キャップ後部の閉蓋状態に於ける要部拡大断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図5はワンタッチ開閉キャップA(以下、単にキャップAという)の一例を示す。
【0025】
キャップAは、容器体Bに嵌着固定するキャップ本体A1と、蓋体A2と、弾性部材A3とを備えている。容器体Bは、筒状の胴部100 上端より肩部101 を介して広口の口頸部102 を起立しており、合成樹脂、ガラス等の材質で形成される。口頸部102 の外周に係止突条103 を周設している。
【0026】
キャップ本体A1は、口頸部102 外周に嵌合させる周壁10の上端縁より内方へフランジ状の頂板11を延設し、頂板11の下面より口頸部102 内周に密嵌させるシール筒12を垂設している。また、頂板11の内周縁より開口筒13を起立し、開口筒13の前面には蓋体A2の係止手段を構成する係止突起14を突設している。更に、頂板11の後部には弾性部材A3を固定するための凹部15を凹設している。
【0027】
蓋体A2は、キャップ本体A1と合成樹脂により一体に形成されており、周壁部20の上端縁より頂壁部21を延設した伏皿状をなし、周壁部20の後部下端をヒンジ22を介してキャップ本体A1の周壁10後部上端に回動可能に連結している。また、頂壁部21の裏面から開口筒13の内周に着脱可能に嵌合するシール筒部23を垂設している。更に、頂壁部21の前部からは、キャップ本体A1の係止突起14と係合するフック24を垂設し、係止突起14とフック24とで係止手段を構成している。上記フック24は、後述する切欠凹部の中央の突部下面より垂設している。
【0028】
また、上記係止手段を解除する係止解除手段を備えている。係止解除手段は、蓋体前端部に弾性揺動可能に突設した押圧板25と、押圧板25より延設し、自由端をキャップ本体頂板11に支持させた支持弾性板26とから構成している。押圧板25の端部を押し上げることで、蓋体A2前端部を開方向へ回動させる如く構成している。
【0029】
図示例では、図2に示す如く、頂壁部21の前部に切欠凹部27を形成し、切欠凹部27の中央に突出した、頂壁部21の一部を構成する突部28の前方に、弾性を備えたU字板29を介して押圧板25を弾性的な揺動が可能に延設している。U字板29は突部28の先端縁に一方の上縁を一体に連結し、他方の上縁を押圧板25の後端縁中央部に一体に連結して押圧板25の弾性揺動が可能に構成している。押圧板25は外縁が頂壁部21外周と略同径の円弧状をなしている。また、支持弾性板26は、押圧板25の両側から一対延設しており、それぞれ突部28両側位置において後方へ下降する円弧板状をなしている。
【0030】
本発明では蓋体A2の開方向付勢手段を備えている。開方向付勢手段は、キャップ本体A1後部上端に一端を固定し、他端である自由端が開蓋状態の蓋体周壁部20後部下端面に至る弾性板41を設け、開蓋状態の蓋体A2を閉じることで、弾性板41を中間部から折り返した状態に弾性変形させて閉蓋状態の蓋体A2を常時開方向へ付勢させる。
【0031】
図示例では、開方向付勢手段を弾性部材A3を用いて構成している。弾性部材A3は、シリコーンゴム等の柔軟で弾力性に富む材質で形成されたもので、図2或いは図4に示す如く、キャップ本体A1の凹部15に嵌着固定した基部40の後部上縁より、180°開蓋状態の蓋体周壁部20の後部の下端面に至る弾性板41を延設している。弾性板41は、図1或いは図5に示す如く、蓋体A2を閉じることで折り返された状態となり、その弾性復元力により蓋体A2を常時開方向に付勢する。
【0032】
また、本例では弾性板41の折り返し及び復元操作をより円滑に行うための摺動面30及び案内壁31を蓋体A2に設けている。摺動面30は、蓋体A2の後部の周壁部20内面位置から蓋体A2の後部の頂壁部21下面位置に至り、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の先端縁が摺動する。
【0033】
図示例では、図2に示す如く、蓋体A2内の後部隅部に垂設した複数の板状突起32の各下端面を摺動面30として構成している。各板状突起32の下端面は、図4に示す如く、円弧状に湾曲している。尚、摺動面30の構成はこれに限らず、例えば各板状突起32に連結した幅広のスロープ状に構成したものであっても良い。また、円弧状の湾曲面に限らず、傾斜面であっても良い。
【0034】
案内壁31は、弾性板41の折り返し或いは復元時に弾性板41が左右方向にそれることを防止するために設けたもので、蓋体A2内の後部隅部に、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の両側に位置する一対を設け、弾性板41の幅よりもやや広い間隔で設けている。
【0035】
また、本例では、未使用を表現するための封緘帯33を備えている。封緘帯33は、蓋体A2の前面に切り取り可能に設けたもので、取り除かない限り開蓋操作ができないように構成している。図示例では、図2及び図3に示す如く、切欠凹部27両側位置から押圧板25前方を被覆する円弧板状の封緘帯33を、棒状をなす易切断性の連結片34を介して切り取り可能に設けている。封緘帯33の下面は頂板11の前端縁上面に載置し、蓋体A2と一体に形成した独特の構成を備えている。
【0036】
上記の如く構成したキャップAは、図1に示す如く、キャップ本体周壁10を口頸部102 外周に嵌合させ、周壁10内面の係合突条16を口頸部102 外周の係止突条103 に乗り越え係合させて抜け出しの防止を図り、また、シール筒12を口頸部102 内周に密嵌させて容器体Bに装着する。
【0037】
使用に当たっては、図1の状態から、強制的に引き剥がすことで各連結片34を切断して封緘帯33を取り外し、次いで押圧板25の前部を押し上げることで、蓋体A2前端部が上方へ移行し、フック24と係止突起14の係合を外す。その際弾性板41の弾性復元力により蓋体A2が開放され、図2或いは図4に示す如く、弾性板41が板状に延びた状態となる。
【0038】
使用後は、蓋体A2を閉じれば弾性板41の先端部は摺動面30をスライドしつつ中央部から折り返され、また、フック24を係止突起14に乗り越え係合させて図1において封緘帯33を取り除いた状態となる。
【符号の説明】
【0039】
A…ワンタッチ開閉キャップ
A1…キャップ本体
10…周壁,11…頂板,12…シール筒,13…開口筒,14…係止突起,15…凹部,
16…係合突条
A2…蓋体
20…周壁部,21…頂壁部,22…ヒンジ,23…シール筒部,24…フック,
25…押圧板,26…支持弾性板,27…切欠凹部,28…突部,29…U字板,
30…摺動面,31…案内壁,32…板状突起,33…封緘帯,34…連結片
A3…弾性部材
40…基部,41…弾性板
B…容器体
100 …胴部,101 …肩部,102 …口頸部,103 …係止突条


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体Bに嵌着固定するキャップ本体A1と、キャップ本体A1上面を開閉可能に設けた蓋体A2と、キャップ本体A1前部に於いて蓋体A2前部を係止する係止手段と、蓋体A2の係止を解除する係止解除手段と、蓋体A2の開方向付勢手段とを備え、蓋体A2の開方向付勢手段は、キャップ本体A1後部上端に一端を固定し、他端である自由端が開蓋状態の蓋体周壁部20後部下端面に至る弾性板41を設け、開蓋状態の蓋体A2を閉じることで弾性板41を中間部から折り返した状態に弾性変形させて閉蓋状態の蓋体A2を常時開方向へ付勢させる如く構成したことを特徴とするワンタッチ開閉キャップ。
【請求項2】
蓋体A2の後部の周壁部20内面位置から蓋体A2の後部の頂壁部21下面位置に至り、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の先端縁が摺動する摺動面30を設けた請求項1に記載のワンタッチ開閉キャップ。
【請求項3】
摺動面30を蓋体A2内の後部隅部に垂設した複数の板状突起32の各下端面で形成した請求項2に記載のワンタッチ開閉キャップ。
【請求項4】
蓋体A2内の後部隅部に、開蓋状態から蓋体A2を閉じる際に弾性板41の両側に位置する一対の案内壁31を設けた請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のワンタッチ開閉キャップ。
【請求項5】
弾性部材A3が、キャップ本体A1の頂板11後部に凹設した凹部15内に基部40を嵌着固定して装着するとともに、基部40の上端部から後方へ一体に弾性板41を延設してなる請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のワンタッチ開閉キャップ。
【請求項6】
上記係止手段を、蓋体A2前部より垂設したフック24をキャップ本体A1前部に突設した係止突起14に離脱可能に係合させて構成し、上記係止解除手段を、蓋体A2前端部に弾性揺動可能に突設した押圧板25と、押圧板25の後部両側より延設し、自由端をキャップ本体A1の頂板11上面に支持させた一対の支持弾性板26とで構成した請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のワンタッチ開閉キャップ。
【請求項7】
蓋体A2の前面を覆う封緘帯33を切り取り可能に設けた請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のワンタッチ開閉キャップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−131930(P2011−131930A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295366(P2009−295366)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】