説明

ワークのトリミング方法、及びその装置

【課題】加工精度に優れ効率の良いトリミング加工を得る。
【解決手段】本トリミング装置1を、複数枚の薄板5を厚み方向へ重ねてなるワークWと、ワークWを厚み方向の両外側からクランプするクランプ手段2と、クランプ状態のワークWを前後方向及び左右方向に沿って切断する左右端切断ユニット32及び上下端切断ユニット34と、左右端切断ユニット32及び上下端切断ユニット34をそれぞれ前後方向及び左右方向に沿って移動させる前後往復移動機構41及び左右往復移動機構42と、を備えて構成し、前後往復移動機構41及び左右往復移動機構42によってワークWと左右端切断ユニット32及び上下端切断ユニット34との互いの相対位置を変化させることによりワークWを切断し複数枚の薄板5を同時にトリミングするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の薄板であるワークのトリミング方法とその装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、店舗及び住宅用のフローリング材(床材等)は、合板または硬質繊維板等の基材に薄化粧単板を接着して製造される。薄化粧単板としては、厚さ0.2〜0.6mm程度の薄板状材を使用する事が多い。また、店舗及び住宅用の建材として、厚さ1〜6mm程度の薄板状の化粧単板を使用する事も多い。このような、フローリング用化粧単板等、同一面に複数枚を並べて使用される薄板材には、各板材を並べた状態で隙間が開かないように、個々の板材について高いトリミング精度(角度、寸法のサイジング精度)が要求される。
従来から、このような薄板材の外周を所定の寸法にトリミング加工する技術としては、いわゆるランニングソー、シャーリング及びダブルエンドテノーナ等が知られている。これらの従来技術では、薄板材を積層して加工対象となるワークを形成し、重なり合う薄板材がずれないようにワークをクランプした状態で、刃物、丸鋸等の切断手段によって外周縁をトリミング加工していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの従来技術では、何れも切断手段が一方向に沿う外周のみに対して切断するように構成されているため、最初に長辺側をサイジング加工した後には、一度クランプを解除してワークの向きを変え、再度クランプして短辺側を加工することになる。したがって、ワークの向きを変えたりクランプし直す際に積層した各薄板材にズレが生ずることがあり、この場合には、トリミング精度が悪化する点で問題があった。
【0004】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、一回のクランプ(拘束・固定)でトリミング加工する事により、精度に優れる製品を効率よく得る事が可能なワークのトリミング方法とその装置とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るワークのトリミング方法は、複数枚の薄板を厚み方向へ重ねてなるワークをクランプ手段によって厚み方向の両外側からクランプし、クランプ状態のワークと、少なくとも2方向に沿ってその方向毎に設けた複数の切断手段との少なくとも一方を、それぞれの切断方向に沿って移動させることで、ワークと切断手段との互いの相対位置を変化させてワークを切断手段で切断し、複数枚の薄板を同時にトリミングすることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明に係るワークのトリミング装置は、複数枚の薄板を厚み方向へ重ねてなるワークを厚み方向の両外側からクランプするクランプ手段と、クランプ状態のワークを、少なくとも2方向に沿ってその方向毎に切断するように設けた複数の切断手段と、ワークまたは切断手段のうち少なくとも一方をそれぞれの切断方向に沿って移動させる移動手段と、を備えてなり、移動手段によってワークと切断手段との互いの相対位置を変化させることによりワークを切断手段で切断し複数枚の薄板を同時にトリミングするように構成される。
【0007】
請求項3の発明に係るワークのトリミング装置は、ワークを所定位置に位置決めするワークガイドを備えてなるように構成される。
【0008】
請求項4の発明に係るワークのトリミング装置は、複数枚の薄板が、四角形板状であり、切断手段が、薄板の短辺方向に沿ってワークを切断する第1の刃物と、薄板の長辺方向に沿ってワークを切断する第2の刃物と、からなり、移動手段が、薄板の短辺方向に沿って第1の刃物を移動させる短辺側移動手段と、薄板の長辺方向に沿って第2の刃物を移動させる長辺側移動手段と、からなり、ワークガイドが、薄板の一方の短辺に接触してワークを位置決めする短辺側ワークガイドと、薄板の一方の長辺に接触してワークを位置決めする長辺側ワークガイドと、からなるように構成される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2の発明によれば、薄板に対して異なる方向へ切断する必要があっても、クランプし直す必要が無い為、ズレを無くす事が可能となり、加工精度に優れ効率の良いトリミング加工が可能となる。
【0010】
請求項3の発明によれば、別体の薄板をワークにまとめ易くなり、切断作業の段取り時間を短縮できる。
【0011】
請求項4の発明によれば、フローリング材等、四角形状の薄板材に対して、トリミング加工の精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の一形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜5に示すように、本トリミング装置1(以下、本装置1とする)は、トリミング加工の作業領域が確保された全体カバー7の内部空間に配置されている。全体カバー7の前面側には、本装置1に対してワークWを出し入れするための横スライド扉8と、段取り等の作業スペースである作業ステップ9とが設けられている。また本装置1は、所定の幅、長さ及び厚みからなる略同一の長方形板状に形成された複数枚の薄板を厚み方向へ重ねてなるワークWをトリミング対象とするものである。ワークWは、複数枚の薄板5の各長辺及び短辺を合わせながら、厚み方向を前後方向に、長辺方向を左右方向に、短辺方向を上下方向にそれぞれ一致するように重ねられ、図2の2点鎖線に示す加工寸法でトリミングされる。
【0013】
本装置1において、ワークWは、長辺側ワークガイドであるワークガイド11の水平面部上に当接して配置されることによって、接触する各薄板5の下側の長辺が揃えられ、ワークWの底面が支持され所定位置に位置決めされる。さらに、短辺側ワークガイドであるワークガイド12の垂直面部に当接して配置されることによって、接触する各薄板5の左側の短辺が揃えられ、ワークWの左側面が支持され所定位置に位置決めされる。ワークガイド11,12は、ワークWの位置決め位置と待避位置との間を駆動シリンダ15,16の駆動によって往復動自在に構成されている。
【0014】
また本装置1は、ワークガイド11,12で位置決めされたワークWを前後両外側からクランプするクランプ手段2と、クランプ状態のワークWを2方向に沿ってその方向毎に切断するように設けた2つの切断手段3と、切断手段3をそれぞれの切断方向に沿って移動させる移動手段4と、ワークガイド11,12、クランプ手段2、切断手段3、移動手段4を連係して動作するように制御する制御手段とを備えている。
【0015】
クランプ手段2は、ワークWの前後両面にそれぞれ面接触してクランプする一対の挟持部を備えて構成されている。一対の挟持部のうち前方のものは本装置1内の所定位置に固定されている。他方の挟持部21は、ワークWのクランプ位置とワークWの後方に規定した待機位置との間で駆動シリンダ22によって往復動自在に構成されている。
【0016】
切断手段3は、ワークWの左右端を前後方向に沿って同時切断するように、一対の丸鋸31L,31Rをトリミング加工寸法の長さに合わせて左右に平行配置してなる第1の刃物としての左右端切断ユニット32と、同ワークWの上下端を左右方向に沿って同時切断するように、一対の丸鋸33U,33Dを同加工寸法の幅に合わせて上下に平行配置してなる第2の刃物としての上下端切断ユニット34とを備えて構成されている。左右端切断ユニット32と上下端切断ユニット34は、それぞれ備えたボールネジまたは台形ネジ等の回転調整によって切断長さ及び切断幅を調整する切断長さ調整機構35と切断幅調整機構36を備えている。また、左右端切断ユニット32は一対の丸鋸31L,31Rを回転させる駆動モータM1,M2を備え、上下端切断ユニット34は一対の丸鋸33U,33Dを回転させる駆動モータM3,M4を備えている。
【0017】
移動手段4は、クランプ状態のワークWと切断手段3との互いの相対位置を変化させるように、左右端切断ユニット32を切断方向である前後方向に沿って往復移動させる短辺側移動手段としての前後往復移動機構41と、上下端切断ユニット34を切断方向である左右方向に沿って往復移動させる長辺側移動手段としての左右往復移動機構42とを備えて構成されている。
【0018】
図4に示すように、前後往復移動機構41は、左右端切断ユニット32を、格納位置P1から切断前待機位置P2まで前進させ、ワークWの左右端を切断しながら切断前待機位置P2から上方の切断後待機位置P3まで上昇させ、切断後待機位置P3から格納準備位置P4まで後退させた後、格納準備位置P4から下方の格納位置P1まで下降させるように構成されている。P1とP2との間、及びP3とP4との間の水平移動は、左右端切断ユニット32に連結されたエアシリンダ45の伸縮によって駆動され、P2とP3との間、及びP4とP1との間の鉛直移動は、左右端切断ユニット32にエアシリンダ45を介して連結されたチェーンリンク46の正逆転によって駆動される。
【0019】
図5に示すように、左右往復移動機構42は、上下端切断ユニット34を、格納位置Q1から前方の切断前待機位置Q2まで前進させ、ワークWの上下端を切断しながら切断前待機位置Q2から左方の切断後待機位置Q3まで水平移動させ、切断後待機位置Q3から格納準備位置Q4まで後退させた後、格納準備位置Q4から右方の格納位置Q1まで水平移動させるように構成されている。Q1とQ2との間、及びQ3とQ4との間の水平移動は、上下端切断ユニット34に連結されたエアシリンダ47の伸縮によって駆動され、Q2とQ3との間、及びQ4とQ1との間の水平移動は、上下端切断ユニット34にエアシリンダ47を介して連結されたチェーンリンク48の正逆転によって駆動される。
【0020】
図6は本装置1の概略構成図であり、図7はワークガイドの動作状態を示し、(a)は切断状態の動作図、(b)は待避状態の動作図、(c)はクランプ状態の動作図であり、図8は本装置1によるトリミング加工処理S1のフローチャートである。図6〜8によって、トリミング加工処理S1の手順を説明する。
【0021】
先ず、位置決め位置に待機しているワークガイド11,12にワークWをセットする(S1−1)。この時、ワークガイド11,12は、ワークWの外形が略立方体形状となるように底面と左側面を揃え、ワークWを所定位置に位置決めする。起動SWをON操作(S1−2)して、駆動モータM1〜M4を起動させ丸鋸31L,31R,33U,33Dを回転させる(S1−3)。そしてワークWをクランプ手段2によってクランプする(S1−4、図7(c))。切断手段2の移動経路を確保するため、ワークガイド11,12を位置決め位置から待避位置まで移動させる(S1−5、図7(b))。
【0022】
次に、格納位置P1の左右端切断ユニット31が、前後往復移動機構41によって一連の往復動作を行い、切断前待機位置P2から切断後待機位置P3までの移動中に、ワークWを所定長さに切断する(S1−6〜S1−11)。切断完了後、駆動モータM1,M2を停止する(S1−9)。その後、格納位置Q1の上下端切断ユニット34が、左右往復移動機構42によって一連の往復動作を行い、切断前待機位置Q2から切断後待機位置Q3までの移動中に、ワークWを所定幅に切断する(S1−12〜S1−17、図7(a))。切断完了後、駆動モータM3,M4を停止する(S1−15)。
【0023】
切断後のワークWは、待避位置から移動したワークガイド11,12によって底面及び左側面が支持される(S1−18、図7(c))。クランプ手段2によるクランプを解除する(S1−19)。そして所定の加工寸法にトリミングされたワークWをワークガイド11,12から取り出す(S1−20)。この時、ワークWを構成する複数枚の薄板5が、均一の加工寸法にトリミングされている。
【0024】
このトリミング装置1によれば、一回クランプすれば、他方向に沿って切断する場合であってもクランプし直す必要が無い為、ズレを無くす事が可能となり、加工精度に優れたトリミング加工が可能となる。また、複数枚の薄板5の加工精度が均一にできる。さらに、例えば、含水率が高く、自由状態では「しわ」がよる程の低強度な薄板材でも、複数枚重ねた状態で作業可能な為、材料破損(割れ等)の可能性が低減する。また、同様の薄板材でも、一回の作業でトリミング可能な為、材料破損(割れ等)の可能性が低減する。また、トリミング寸法に合わせた大きさで面接触する挟持部21によって、ワークWをクランプするので、材料の「反り」「歪み」を伸ばした状態でトリミングが可能な為、寸法精度に優れたトリミング加工が可能となる。
【0025】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)本装置は、複数枚の薄板を厚み方向と前後方向とを合わせてなるワークに限らず、厚み方向を、上下方向や左右方向と合わせてなるワークにも適用可能である。その場合、第1及び第2の刃物、短辺側移動手段、長辺側移動手段、短辺側ワークガイド、及び長辺側ワークガイドをワークの短辺側及び長辺側に対応させて適宜変更する。
(2)クランプ手段は、一対の挟持部の何れか一方のみを可動するもの限らず、双方を可動するように構成しても良い。
(3)切断手段は、2方向に限らず、3方向以上の方向に沿って切断するように複数設けても良い。その場合、四角以上の多角形形状の薄板も精度良く効率的に得る事が可能である。
(4)切断手段は、一対の丸鋸に限らず、何れか一方側の丸鋸のみで構成してもよい。この場合、ワークの一方側の左右端のみを一方側の丸鋸で切断することになる。ワークの前後端についても同様である。
(5)前後往復移動機構は、1基の丸鋸を備えてなる左右端切断ユニットを、一方の切断前待機位置P2から切断後待機位置P3までの往路を移動させて一方の左右端を切断した後、一方の切断後待機位置P3から他方の切断後待機位置P3までの迂回路を移動させ、他方の切断後待機位置P3から他方の切断前待機位置P2までの復路を移動させて他方の左右端を切断するように往復移動自在に構成しても良い。迂回路の移動中に、丸鋸の回転方向を変えるように構成しても良い。左右往復移動機構についても、同様に構成可能である。
(6)移動手段は、切断手段のみを移動させるものに限らず、切断手段を固定して、クランプ手段とともにワークを所定方向へ移動させたり、切断手段とワークとの両方を所定方向へ移動させるように構成しても良い。
(7)移動手段は、往復移動するものに限らず、片道移動するものでも良い。
(8)第1及び第2の刃物は、ワークの厚み方向に平行に切断するものに限らず、所定の交差角を設けて、厚み方向に対して斜めにワークを切断するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るトリミング装置の一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】ワークの拡大斜視図である。
【図3】図1の装置のクランプ手段を示す(a)は要部右側面図、(b)は要部背面図、(c)は要部平面図である。
【図4】図1の装置の前後往復移動機構を示す(a)は要部右側面図、(b)は要部背面図、(c)は要部平面図である。
【図5】図1の装置の左右往復移動機構を示す(a)は要部平面図、(b)は要部正面図、(c)は要部右側面図である。
【図6】図1の装置の概略構成を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】ワークガイドの動作状態を示し、(a)は切断状態の動作図、(b)は待避状態の動作図、(c)はクランプ状態の動作図である。
【図8】本装置によるトリミング加工処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1・・トリミング装置、2・・クランプ手段、3・・切断手段、4・・移動手段、5・・薄板、11・・長辺側ワークガイド、12・・短辺側ワークガイド、21・・挟持部、22・・駆動シリンダ、31L,31R,33U,33D・・丸鋸、32・・左右端切断ユニット、34・・上下端切断ユニット、M1〜M4・・駆動モータ、41・・前後往復移動機構、42・・左右往復移動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の薄板を厚み方向へ重ねてなるワークをクランプ手段によって厚み方向の両外側からクランプし、クランプ状態のワークと、少なくとも2方向に沿ってその方向毎に設けた複数の切断手段との少なくとも一方を、それぞれの切断方向に沿って移動させることで、ワークと切断手段との互いの相対位置を変化させてワークを切断手段で切断し、複数枚の薄板を同時にトリミングする、
ことを特徴とするワークのトリミング方法。
【請求項2】
複数枚の薄板を厚み方向へ重ねてなるワークを厚み方向の両外側からクランプするクランプ手段と、
クランプ状態のワークを、少なくとも2方向に沿ってその方向毎に切断するように設けた複数の切断手段と、
ワークまたは切断手段のうち少なくとも一方をそれぞれの切断方向に沿って移動させる移動手段と、
を備えてなり、
移動手段によってワークと切断手段との互いの相対位置を変化させることによりワークを切断手段で切断し複数枚の薄板を同時にトリミングする、
ことを特徴とするワークのトリミング装置。
【請求項3】
ワークを所定位置に位置決めするワークガイドを備えてなる、
請求項2に記載のワークのトリミング装置。
【請求項4】
複数枚の薄板が、四角形板状であり、
切断手段が、
薄板の短辺方向に沿ってワークを切断する第1の刃物と、
薄板の長辺方向に沿ってワークを切断する第2の刃物と、からなり、
移動手段が、
薄板の短辺方向に沿って第1の刃物を移動させる短辺側移動手段と、
薄板の長辺方向に沿って第2の刃物を移動させる長辺側移動手段と、からなり、
ワークガイドが、
薄板の一方の短辺に接触してワークを位置決めする短辺側ワークガイドと、
薄板の一方の長辺に接触してワークを位置決めする長辺側ワークガイドと、からなる、
請求項3に記載のワークのトリミング装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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