説明

ワーク停止装置

【課題】ワークを位置精度良く停止させることができるワーク停止装置を提供する。
を提供する。
【解決手段】本発明は、扁平断面の長尺なワークTが搬入される搬送台31と、搬送台31上に設けられ、搬入されるワークTをその一側縁部T1を下側にし、他側縁部T2を上側にした起立状態で長さ方向に沿って滑走させる滑走搬送路47と、滑走搬送路47上に設けられ、かつ滑走搬送路47を滑走するワークTを衝突させて停止させるストッパー35と、を備える。ストッパー35におけるワークTとの衝突面37が、斜め下向きの傾斜面によって構成され、その衝突面37にワークTの先端上側部T3を衝突させてワークを停止させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長さ方向に沿って滑走する扁平断面の長尺なワークを停止させるようにしたワーク停止装置およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換チューブ等の扁平かつ長尺なワークを、コンベア等で搬送する場合、長さ方向を搬送方向に一致させて搬送するのが一般的である。このように長さ方向に沿って搬送されるワークを所定の位置で停止させる手段としては、下記特許文献1に示すように、停止位置の手前で、コンベアの回転速度を落として、所望の位置でコンベアの回転を止めるものが周知である。
【0003】
また搬送台上にストッパーを取り付けておいて、コンベアから搬出されて搬送台上を滑走するワークを、ストッパーに衝突させて停止させるようにしたワーク停止手段も周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−124004号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンベアの回転を停止するワーク停止手段は、コンベアの回転速度を制御するものであるため、可変モーターやクラッチ機構等の高価で精密な機構を装備させる必要があり、構造の複雑化やコストの増大を来す、という課題があった。
【0006】
またストッパーを用いるワーク停止手段では、ワークがストッパーに衝突した際にリバウンドによって後退するが、そのリバウンド量が大きく、バラツキもあるため、ワークを所定の位置に精度良く停止させることが困難である、という課題があった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ワークを位置精度良く停止させることができる上さらに、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができるワーク停止装置およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]扁平断面の長尺なワークが搬入される搬送台と、
前記搬送台上に設けられ、搬入されるワークをその一側縁部を下側にし、他側縁部を上側にした起立状態で長さ方向に沿って滑走させる滑走搬送路と、
前記滑走搬送路上に設けられ、かつ滑走搬送路を滑走するワークを衝突させて停止させるストッパーと、を備え、
前記ストッパーにおけるワークとの衝突面が、斜め下向きの傾斜面によって構成され、その衝突面にワークの先端上側部を衝突させてワークを停止させるようにしたことを特徴とするワーク停止装置。
【0010】
[2]ワークの先端面が、ワーク搬送方向に対し直交するように形成され、ワークの先端上側コーナー部が前記ストッパーの衝突面に衝突するようになっている前項1に記載のワーク停止装置。
【0011】
[3]前記ストッパーにおける衝突面の前記滑走搬送路に対する傾斜角度が5〜70°に設定される前項1または2に記載のワーク停止装置。
【0012】
[4]ワークが、前記ストッパーの衝突面に点接触で衝突するようになっている前項1〜3のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0013】
[5]前記ストッパーが前記滑走搬送路に沿って延びる長板形状を有し、そのストッパーのワーク搬送方向に対し上流側の端部に前記衝突面が設けられ、
前記ストッパーが、その衝突面側が非固定状態として、下流側が前記搬送台に対し固定されている前項1〜4のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0014】
[6]前記ストッパーにおける固定位置から衝突面のワーク衝突点までの長さが20〜300mmに設定されている前項5に記載のワーク停止装置。
【0015】
[7]前記ストッパーが、ヤング率2300MPa以下の材質によって構成されている前項1〜6のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0016】
[8]前記ストッパーがポリカーボネートによって構成されている前項1〜7のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0017】
[9]前記滑走搬送路の両側に、ガイド手段が設けられ、その両側ガイド手段のいずれか一方に、ワークがガイドされつつ支持されることにより、起立状態に保持されるようになっている前項1〜8のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0018】
[10]ワークの両側縁部外周面が断面略円弧状の湾曲面に形成されている前項1〜9のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0019】
[11]ワークとして、質量が5〜20gのものが用いられる前項1〜10のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0020】
[12]ワークとして、見かけの比重が0.3〜3.0のものが用いられる前項1〜11のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0021】
[13]ワークとして、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のものが用いられる前項1〜12のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0022】
[14]ワークとして、起立状態での幅寸法に対する高さ寸法が10〜20倍のものが用いられる前項1〜13のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0023】
[15]ワークとして、熱交換器用の扁平チューブが用いられる前項1〜14のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【0024】
[16]前項1〜15のいずれか1項に記載のワーク停止装置と、
平伏状態のワークをその一側縁部を下側にし、他側縁部を上側にした起立状態に起立させるワーク起立装置とを備え、
前記ワーク起立装置によって起立されたワークを起立状態のまま前記ワーク停止装置に搬入するようにしたことを特徴とするワーク搬送設備。
【0025】
[17]扁平断面の長尺なワークがその一側縁部を下側にし、他側縁部を上側にした起立状態で長さ方向に沿って滑走搬送路を滑走する一方、
前記滑走搬送路を滑走するワークをストッパーに衝突させて停止させるに際して、
前記ストッパーにおけるワークとの衝突面を、斜め下向きの傾斜面に形成しておいて、その衝突面にワークの先端上側部を衝突させてワークを停止させるようにしたことを特徴とする滑走ワークの停止方法。
【0026】
[18]前項1〜15のいずれか1項に記載されたワーク停止装置において衝突によるワークのバウンド量を制御する方法であって、
前記ストッパーにおける衝突面の傾斜角度を変更することによって、ワークのリバウンド量を制御するようにしたことを特徴とするワーク停止装置におけるリバウンド量の制御方法。
【0027】
[19]複数のワークを順次停止させるに際して、各ワークのリバウンド量のバラツキが小さくなるように、前記ストッパーにおける衝突面の傾斜角度を設定しておく前項18に記載のワーク停止装置におけるリバウンド量の制御方法。
【0028】
[16a]前記ワーク起立装置は、
扁平断面の長尺なワークが搬入されて配置されるワーク搬入部と、
前記ワーク搬入部から搬送方向に対し直交する一側方に向けて設けられ、かつ一側方に向かうに従って低くなるように傾斜する横滑り傾斜面と、
前記横滑り傾斜面の下端縁に対応して搬送方向に沿って連続して設けられた内側ガイド壁と、
前記内側ガイド壁に対し一側方に間隔をおいて並列に設けられる外側ガイド壁と、
前記両側ガイド壁間に設けられた壁狭間通路と、を備え、
前記ワーク搬入部に配置された平伏状態のワークが、その一側縁部を先行させつつ、自重により前記横滑り傾斜面に沿って一側方に滑走して、前記壁狭間通路に滑り落ちることにより、ワークが一側縁部を下側に向け他側縁部を上側に向けて配置した状態に起立されるように構成されている前項16に記載のワーク搬送設備。
【0029】
[16b]前記壁狭間通路の底面が、ワーク搬送機の搬送面によって構成され、
前記壁狭間通路に滑り落ちたワークの一側縁部が前記ワーク搬送機の搬送面に当接支持されて他側縁部が前記両側ガイド壁のうちいずれかに当接支持されることにより、ワークが起立状態に保持されて、
その起立状態のまま、ワークが前記壁狭間通路に沿って前記ワーク搬送機によって搬送されるように構成される前項16aに記載のワーク搬送設備。
【0030】
[16c]前記横滑り傾斜面が、断面円弧状の円弧面によって構成される前項16aまたは16bに記載のワーク搬送設備。
【0031】
[16d]前記横滑り傾斜面と、前記内側ガイド壁とが連続して形成される前項16a〜16cのいずれか1項に記載のワーク起立装置。
【0032】
[16e]上面が断面円弧状に形成されるとともに、一側面が垂直壁面に形成された起立シャフトを備え、
前記起立シャフトの上面によって前記横滑り傾斜面が構成されるとともに、前記起立シャフトの一側面によって前記内側ガイド壁が構成される前項16a〜16dのいずれか1項に記載のワーク搬送設備。
【発明の効果】
【0033】
発明[1]のワーク停止装置によれば、ワークをストッパーに衝突させて停止させるものであるため、高価で精密な機構を必要とせず、その分、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができる。さらにストッパーの衝突面を斜め下向きの傾斜面に形成しているため、その衝突面に、ワークが衝突した際に、下向きの反発力(制動力)が作用し、リバウンド量を小さくでき、ワークを所定の位置に精度良く停止させることができる。
【0034】
発明[2]〜[4]のワーク停止装置によれば、ワーク停止時の位置精度をより向上させることができる。
【0035】
発明[5]〜[8]のワーク停止装置によれば、ワーク停止時の位置精度をより一層向上させることができる。
【0036】
発明[9]のワーク停止装置によれば、ワークを確実に起立させた状態で滑走させることができる。
【0037】
発明[10]〜[15]のワーク停止装置によれば、停止位置のコントロールが困難なワークを用いる場合等の特有の用途に使用することができる。
【0038】
発明[16]のワーク搬送設備によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
発明[17]の滑走ワークの停止方法によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
発明[18][19]のワーク停止装置におけるリバウンド量の制御方法によれば、衝突によるワークのリバウンド量を的確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1はこの発明の実施形態であるワーク搬送設備を示す斜視図である。
【図2】図2は実施形態のワーク搬送設備のワークとして用いられる扁平チューブを示す正面図である。
【図3】図3は実施形態のワーク搬送設備に適用されたワーク起立装置を示す斜視図である。
【図4】図4は実施形態のワーク起立装置を示す側面図である。
【図5】図5は実施形態のワーク起立装置を示す正面図である。
【図6】図6は実施形態のワーク起立装置における反転機構部周辺を拡大して示す正面図である。
【図7】図7は実施形態のワーク搬送設備に適用されたワーク停止装置を模式化して示す側面図である。
【図8】図8は実施形態のワーク停止装置を示す図であって、同図(a)は水平断面図、同図(b)は側面断面図である。
【図9】図9は実施形態のワーク停止装置を示す正面断面図である。
【図10】図10は実施形態のワーク停止装置におけるワーク衝突部周辺を拡大して示す側面図である。
【図11】図11は実施形態のワーク停止装置に適用されたストッパープレートを示す図であって、同図(a)は側面図、同図(b)は下面図である。
【図12】図12はワーク停止装置におけるストッパープレートの傾斜角度とリバウンド量との関係を示すグラフである。
【図13】図13はワーク停止装置におけるストッパープレートの突出長さとリバウンド量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1はこの発明の実施形態であるワーク停止装置3が適用されたワーク搬送設備を示す斜視図である。同図に示すように、このワーク搬送設備においては、ワーク搬送方向に対し上流側から下流側に向かって順に、上流側コンベア9、ワーク起立装置1およびワーク停止装置3が配列されている。
【0043】
図2に示すように、ワークとしての扁平チューブTは例えば、カーエアコン、ルームエアコン用の熱交換器に採用されるアルミニウムまたはアルミニウム合金製の略帯板形状のチューブによって構成されている。この扁平チューブTは、チューブ長さ方向に連続して延びる複数の通路孔(冷媒流通孔)がチューブ幅方向に沿って並列に設けられた多孔押出チューブによって構成されている。
【0044】
さらに本実施形態において、扁平チューブTは具体的には、厚さtが幅wよりも小さい扁平な断面形状で、長さが長い長尺なものが用いられている。詳細に説明すると、チューブ厚さ(チューブ高さ)tが1.0〜2.0mm、チューブ幅wが12〜20mm、チューブ長さが190〜700mmに調整されている。またこの扁平チューブTは、重さ(質量)が7〜20gであり、見かけの比重が0.3〜3.0となっている。
【0045】
またこの扁平チューブTは、両側縁部T1,T2の外周面が円弧状断面の湾曲面(R付き面)として構成されている。この両側縁部T1,T2の曲率半径は、チューブ厚さtの半分(t/2)程度に設定されている。
【0046】
なお扁平チューブTは、その両端面がチューブ長さ方向(搬送方向)に対し直交する平坦面に形成されている。従って、扁平チューブTには、両端面と、両側縁部T1,T2との間にコーナー部が形成されることになる。
【0047】
図1に示すように、本実施形態において、上流側コンベア9は、扁平チューブTをその一面側(表面側)を上向きにして、他面側(裏面側)を下向きで設置させた平伏状態で、搬送方向に沿って搬送できるようになっている。なお本実施形態においては、搬送される扁平チューブTの長さ方向が、扁平チューブTの搬送方向(搬送ライン)に対し平行に配置されるようになっている。
【0048】
図3〜6に示すように、ワーク起立装置1は、上流側コンベア9から平伏状態で搬入された扁平チューブTを搬送方向の軸線回りに90°回転させて起立させるとともに、その起立状態のまま、扁平チューブTを下流側へ搬出できるようになっている。
【0049】
ワーク起立装置1は、起立機構11と、その起立機構11の下方に配置されるコンベア10とを備え、起立機構11によって扁平チューブTを起立させて、コンベア10によって搬出するようになっている。
【0050】
起立機構11は、上流側コンベア9に対応して配置される起立シャフト2と、その起立シャフト2の一側方(図6の右側方)に並列に配置される外側ガイド部材13とを備えている。
【0051】
起立シャフト2の上面21は、円柱外周面の一部によって構成される断面円弧状に形成されており、この凸円弧状の上面21のうち、一方側半部領域(図6の右側半部領域)が、横滑り傾斜面22として構成されている。この横滑り傾斜面22は、一側方に向うに従って次第に低くなるように傾斜しているため、この横滑り傾斜面22上に配置される扁平チューブTは自重により、傾斜面22に沿って一側方に横滑りするようになっている。
【0052】
また起立シャフト2の両側面は、垂直にカットされた垂直壁面によって構成されており、その両側面のうち、一側方向(図6の右側方向)に向いた面が内側ガイド壁25として構成されている。
【0053】
さらに起立シャフト2の下面は、水平にカットされた水平面によって構成されており、この下面がコンベア10の搬送面から上方に僅かに間隔をおいた状態で、起立シャフト2が支持固定されている。
【0054】
起立シャフト2は、その円弧状の上面21の曲率中心軸cが、起立シャフト2の幅方向の中間位置に設定されている。
【0055】
さらに起立シャフト2は、曲率中心軸cが、上流側コンベア9の搬送ライン(搬送軸)に対し、他側方(図6左側方)に少し位置をずらせた位置に配置されている。従って、上流側コンベア9から起立シャフト2の上面21に搬送された扁平チューブTは、上面21の上端位置から少し一側方(図6右側方)に変異した位置、つまり横滑り傾斜面22の上側位置の上側位置に配置される。なお本実施形態においては、扁平チューブTが搬入される横滑り傾斜面22の上側位置が、ワーク搬入部23として構成されている。
【0056】
これにより上流側コンベア9からワーク搬入部23に搬入された扁平チューブTは自動的に、横滑り傾斜面22に沿って一側方へ滑走するようになっている。
【0057】
起立シャフト2の一側方(図6右側方)に配置される外側ガイド部材13は、起立シャフト2と同様、下端がコンベア10の搬送面から上方に僅かに間隔をおいた状態で支持固定されている。この外側ガイド部材13は、起立シャフト2の内側ガイド壁25に対し、一側方に間隔をおいて並列に設けられ、かつ内側ガイド壁25と同様に、搬送方向に沿って連続して延びる外側ガイド壁15を有している。
【0058】
この外側ガイド壁15は、起立シャフト2の内側ガイド壁25に対し、平行に配置されており、両側ガイド壁15,25間には、搬送方向に沿って連続して延びる壁狭間通路14が形成されている。
【0059】
この壁狭間通路14は、上端が上方に開放されており、その上端開放部を介して、後述するように扁平チューブTが壁狭間通路14内に落下するようになっている。
【0060】
さらに壁狭間通路14は、下端が開放されており、その下端開放部を介してコンベア10の搬送面に連通されている。換言すれば、壁狭間通路14の底面が、コンベア10の搬送面によって構成されている。なお、本実施形態において、コンベア10は、ワーク搬送機を構成している。
【0061】
また本実施形態において、外側ガイド壁15の上端位置は、内側ガイド壁25の上端位置よりも高い位置に配置されている。
【0062】
本実施形態において、起立シャフト2の横滑り傾斜面22に沿って一側方に滑走した扁平チューブTは、横滑り傾斜面22の下端縁24から壁狭間通路14内に滑り落ちる際に、扁平チューブTの一側縁部T1が外側ガイド壁15にガイドされて、図6の時計方向回り(右回り)に少量回転することにより、一側縁部T1を先行させて、壁狭間通路14内に落下する。こうして壁狭間通路14内に落下する扁平チューブTは、一側縁部T1を下側に向け他側縁部T2を上側に向けた状態に起立される。さらに起立した扁平チューブTは、一側縁部T1がコンベア10の搬送面に設置されて支持されるとともに、他側縁部T2が内側ガイド壁25および外側ガイド壁15のいずれかに当接支持されることにより、起立姿勢に保持される。そして扁平チューブTは起立姿勢を保持したままの状態で、壁狭間通路14に沿ってコンベア10により下流側に搬送されるようになっている。
【0063】
次に本実施形態において、起立装置1の各構成部材の位置関係について詳細に説明する。図2,6に示すように、扁平チューブTの幅を「w」、起立シャフト2における横滑り傾斜面22の曲率半径を「r」としたとき、以下の関係式f1を成立させるのが好ましい。
【0064】
w≦r≦1.5w…f1
すなわちこの関係式f1が成立する場合、横滑り傾斜面22を、扁平チューブTの横滑りに適切な曲率に形成することができ、横滑り傾斜面22に配置された扁平チューブTを安定状態に滑走させることができる。
【0065】
また横滑り傾斜面22における一側方向の水平方向長さ(幅)を「A」としたとき、以下の関係式f2を成立させるのが好ましい。
【0066】
w≦A…f2
すなわちこの関係式f2が成立する場合には、横滑り傾斜面22を適度な長さ(幅)に設定できて、横滑り傾斜面22に沿って扁平チューブTを安定状態に走行させることができる。
【0067】
なお横滑り傾斜面22の幅Aは、起立シャフト2の幅の1/2であるため、起立シャフト2の幅を「D」としたとき、上記の関係式f2は、2w≦Dと書き換えることができる。
【0068】
また起立シャフト2における内側ガイド壁25の壁面高さ(ガイド面高さ)を「B1」としたとき、以下の関係式f3を成立させるのが好ましい。
【0069】
w≦B1…f3
すなわちこの関係式f3が成立する場合、内側ガイド壁25によるガイド領域(支持領域)を十分に確保でき、ひいては壁狭間通路14の深さを十分に確保ができるため、壁狭間通路14内に滑り落ちた扁平チューブTを所望の起立姿勢に確実に保持することができる。
【0070】
なお起立シャフト2の下端と、コンベア10の搬送面との間の隙間s1、つまり内側ガイド壁25の下端と、コンベア10の搬送面との隙間s1は、0.05w〜0.15w程度に設定するのが好ましい。すなわちこの隙間s1が大き過ぎる場合、その隙間s1から扁平チューブTが脱外して横転してしまうおそれがあり、逆に隙間s1が小さ過ぎる場合、起立シャフト2の下端がコンベア10の搬送面に干渉するおそれがある。
【0071】
さらに本実施形態では、内側ガイド壁25の上端位置におけるコンベア10の搬送面からの高さを「H1(=s1+B1)」としたとき、1.65w≦H1の関係を成立させるのが好ましい。
【0072】
また壁狭間通路14の幅を「x」、扁平チューブTの厚さを「t」としたとき、以下の関係式f4を成立させるのが好ましい。
【0073】
2.0t≦x≦0.4w…f4
すなわちこの関係式f4が成立する場合には、壁狭間通路14内に滑り落ちた扁平チューブTをより一層安定した起立姿勢に保持することができる。
【0074】
また横滑り傾斜面22の下端縁24における水平面との傾斜角度を「θ1」としたとき、以下の関係式f5を成立させるのが好ましい。
【0075】
50°≦θ1…f5
すなわちこの関係式f5が成立する場合には、横滑り傾斜面22から滑り落ちる扁平チューブTを、その一側縁部T1を先行させて確実に、壁狭間通路14内に落とし込むことができ、扁平チューブTをより一層確実に起立させることができる。
【0076】
また外側ガイド壁15の壁面高さ(ガイド面高さ)を「B2」としたとき、以下の関係式f6を成立させるのが好ましい。
【0077】
1.9w≦B2…f6
すなわちこの関係式f6が成立する場合には、横滑り傾斜面22から滑り落ちる扁平チューブTを外側ガイド壁15によってスムーズにガイドすることができて、扁平チューブTを確実に起立させることができるとともに、所望の起立姿勢に確実に保持することができる。
【0078】
なお外側ガイド壁15の下端と、コンベア10の搬送面との間の隙間s2は、0.05w〜0.15w程度に設定するのが好ましい。すなわちこの隙間s2が大き過ぎる場合、その隙間s2から扁平チューブTが脱外して横転してしまうおそれがあり、逆に隙間s2が小さ過ぎる場合、外側ガイド部材13の下端がコンベア10の搬送面に干渉するおそれがある。
【0079】
さらに本実施形態では、外側ガイド壁15の上端位置におけるコンベア10の搬送面からの高さを「H2(=s2+B2)」とすると、1.95w≦H2の関係を成立させるのが好ましい。
【0080】
また外側ガイド壁15の上端位置は、内側ガイド壁25の上端位置よりも高く設定するのが好ましい。すなわちこの構成を採用する場合、横滑り傾斜面22から滑り落ちる扁平チューブTを外側ガイド壁15によってスムーズにガイドすることができる。従って本実施形態では、外側ガイド壁15の上端位置と内側ガイド壁25の上端位置との高位差hを、0.2w〜0.4w程度に設定するのが好ましい。
【0081】
図1,7に示すように、ワーク停止装置3は、搬送台31と、搬送台31上に設けられる停止機構4とを備え、ワーク起立装置1から起立状態で搬入された扁平チューブTを所定の位置に停止させるものである。
【0082】
図7〜9に示すように、搬送台31は、その搬送面32がワーク起立装置1のコンベア10の搬送面に対応して配置され、コンベア10から起立状態で搬出される扁平チューブTが搬送面32上を慣性力で滑走するようになっている。
【0083】
停止機構4は、ワーク起立装置1から搬入される扁平チューブTの搬送ラインの一方側(図9の右側)に配置される一方側ガイド部材40と、一方側ガイド部材40の上面から片面を覆うように配置される他方側ガイド部材45と、両ガイド部材40,45間に配置されるストッパーとしてのストッパープレート35とを備えている。
【0084】
一方側ガイド部材40は、支持フレーム41と、支持フレーム41の搬送ライン側に、スペーサー42を介して設けられる一方側ガイド壁43とを備えている。一方側ガイド壁43は、帯板形状の滑り板等によって構成されており、搬送ラインの一方側に沿うようにして、起立状態に保持されている。
【0085】
他方側ガイド部材45は、山型鋼等のアングル部材によって構成されており、その垂直片によって構成される他方側ガイド壁46が、搬送ラインを挟んで一方側ガイド壁43に対向し、かつ搬送ラインに沿って連続して延びるように配置されている。
【0086】
本実施形態においては、搬送台31の搬送面32上における一方側ガイド壁43および他方側ガイド壁46間によって、滑走搬送路47が構成されている。
【0087】
滑走搬送路47の上流側端部は開放されており、その開放端部が、上記ワーク起立装置1における壁狭間通路14の下流側端部(搬出側端部)に対応して配置されている。
【0088】
従って、ワーク起立装置1のコンベア10から起立状態で搬出された扁平チューブTは、滑走搬送路47に搬入されて、滑走搬送路47を搬送ラインに沿って下流側に滑走するようになっている。さらにこの滑走中においては、扁平チューブTの下側に配置される一側縁部T1が搬送面32に設置された状態で、上側に配置される他側縁部T2が両側ガイド壁43,46のいずれか一方に支持されることにより、起立状態に維持されるようになっている。
【0089】
図7〜11に示すように、ストッパープレート35は、搬送方向に延びる長板形状を有しており、両側ガイド壁43,46間における下流側に挿入配置されている。このストッパープレート35は、一方側ガイド部材40を介して搬送台31に支持されている。すなわち一方側ガイド部材40における支持フレーム41の下流側端部には、ブラケット48が固定されており、このブラケット48に、ストッパープレート35の下流側端部(先端部)が2本のボルト49,49によって固定されている(図8参照)。
【0090】
なおストッパープレート35は、下流側端部のみが固定されるものであり、この固定位置よりも上流側は、非固定状態となっている。
【0091】
またストッパープレート35の上流側端部は、滑走する扁平チューブTと衝突する衝突側端部36として構成されている。この衝突側端部36の衝突面(衝突縁部)37は、上端が下端に対し上流側に位置するような下向きの平坦な傾斜面に形成されている。このストッパープレート35は、組付状態での搬送面32からの高さ寸法(非組付状態での幅寸法)が、扁平チューブTの幅wよりも大きく設定されており、後述するように扁平チューブTにおける先行側端面の上側コーナー部T3が、ストッパープレート35の衝突面37に点接触で衝突するようになっている。
【0092】
本実施形態において、ストッパープレート35の材質としては、扁平チューブTの衝撃を吸収して、リバウンド量xを小さくできるように、ヤング率が2300MPa以下の弾性体からなるもの、具体的には、ポリカーボネートからなるものを好適に用いることができる。
【0093】
以上の構成のワーク停止装置において、ワーク起立装置1のコンベア10から起立状態で搬出された扁平チューブTは、ワーク停止装置3における両側ガイド壁43,46間の滑走搬送路47内に起立状態のまま搬入されて、慣性力によって滑走搬送路47を起立状態のまま滑走していく。さらに滑走搬送路47を滑走する扁平チューブTは、先端上側コーナー部T3がストッパープレート35の衝突面37に衝突する。
【0094】
図10に示すように、この衝突時において、衝突力F1の一部は、ストッパープレート35によって吸収され、吸収されない衝突力に応じて、扁平チューブTに対して後方斜め下向きに反発力F2が発生する。この反発力F21によって扁平チューブTは搬送面32(滑走搬送路47)に押し付けられるため、摩擦力が大きくなり、その大きい摩擦力(制動力)によってリ後方への移動が抑制されて、後方への移動量(リバウンド量x)が非常に小さくなる。従って扁平チューブTを、衝突位置もしくはその近傍で確実に停止させることができ、停止位置を精度良くコントロールすることができる。
【0095】
以上のように、この実施形態のワーク停止装置3によれば、搬入される扁平チューブTをストッパープレート35に衝突させて停止させるものであるため、コンベア等の搬送手段の搬送速度を制御して、扁平チューブを停止させるものとは異なり、可変駆動装置(可変モーター)やクラッチ機構等の高価で精密な機構を必要とせず、その分、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0096】
また本実施形態においては、ストッパープレート35の衝突面37を斜め下向きの傾斜面によって構成し、その衝突面37に、扁平チューブTの先端上側コーナー部T3を衝突させるようにしているため、チューブ衝突時の反発力が下向きに作用する。このため、リバウンド移動に対して大きな制動力が作用し、リバウンド量xを極力小さくでき、扁平チューブTを所定の位置に精度良く停止させることができる。
【0097】
さらに本実施形態においては、長尺なストッパープレート35の下流側端部を固定端として、上流側端部の自由端側(非固定端側)に衝突面37を設けているため、チューブ衝突時の衝突力をストッパープレート35の全域でバランス良く十分に吸収することができ、この点においても、衝突時のリバウンド量xを小さくでき、より一層、扁平チューブTを位置精度良く停止させることができる。
【0098】
さらに本実施形態においては、ストッパープレート35として、ヤング率の小さい弾性体を用いているため、ストッパープレート35の素材自体においても、チューブ衝突時の衝突力を確実に吸収することができ、リバウンド量xをより一層小さくでき、より一層確実に、扁平チューブTを所定位置に停止させることができる。
【0099】
このように本実施形態においては、停止位置のコントロールが困難なワーク、すなわち軽量の扁平チューブTや、搬送面に接触する一側縁部T1が湾曲面で滑り易い扁平チューブT等の軽量で滑性に優れたワークであっても、停止位置を的確にコントロールできて、高い位置精度で停止させることができる。換言すれば、本実施形態のワーク停止装置3は、扁平チューブTのように軽量で滑性に優れた扁平なワークを停止させる装置として特に有益である。
【0100】
また本実施形態のワーク停止装置3においては、一側縁部T1を搬送面32との接触部として扁平チューブTを搬送/停止させるものであるため、扁平チューブTの表面や裏面が搬送面32に接触するのを防止することができる。このため表面や裏面を搬送面に接触させたくないような扁平チューブT、例えば表面や裏面に溶射等でZnを付着させるような表面処理を行った扁平チューブTであっても、滑走や搬送による悪影響が及ぶことがなく、品質を高度に維持しつつ、搬送/停止させることができる。
【0101】
また本実施形態のワーク停止装置3においては、扁平チューブTの先端上側コーナー部T3をストッパープレート35に点接触で衝突させるようにしているため、衝突による扁平チューブTのリバウンド量xのバラツキを小さくすることができる。
【0102】
すなわち本実施形態で使用されるワークのように切断された扁平チューブTは、切断面(先端面)の形状や寸法にバラツキがあることから、そのバラツキのある切断面を、既存のストッパーに面接触により衝突させて停止させる場合には、衝突時にストッパーに対する扁平チューブTの接触状態にバラツキが生じて、扁平チューブT毎のリバウンド量xにもバラツキが生じてしまう。
【0103】
そこで、本実施形態においては、ストッパープレート35の衝突面37を斜め下向きの傾斜面により構成して、衝突時には、扁平チューブTの先端上側コーナー部T3を、衝突面37に点接触で衝突させるようにしているため、扁平チューブTの先端面(切断面)にバラツキがあろうとも、衝突時の接触状態はほとんど変化しないので、扁平チューブT毎のリバウンド量xのバラツキも小さく抑えることができる。
【0104】
その上さらに、本実施形態においては、ストッパープレート35の衝突面37を斜め下向きに形成しているため、既述したように、リバウンド時の扁平チューブTおよび搬送滑走路47間の摩擦力が増大し、扁平チューブTのリバウンド量xを小さくすることができる。換言すれば、既存のストッパー等に面接触により衝突させた際に、反発力(バウンド量)の大きい扁平チューブを、本実施形態のワーク停止装置3で停止させる場合、衝突時の反発力が大きい分、扁平チューブTおよび搬送滑走路47間の摩擦力も大きくなるため、反発力が大きくとも、リバウンド量xは小さくすることができる。このため、反発力の大きい扁平チューブTであっても、反発力の小さい扁平チューブTと同程度にリバウンド量xを小さくすることができ、リバウンド量xのバラツキを、より一層小さくすることができる。
【0105】
このように本実施形態のワーク停止装置3は、点接触により衝突させることによるリバウンド量xのバラツキ抑制効果と、搬送滑走路47との摩擦力によるリバウンド量xの低減効果とが相まって、リバウンド量xおよびそのバラツキを、より確実に小さくできて、扁平チューブTの停止位置を、精度良く的確にコントロール(制御)することができる。従って、本実施形態のワーク停止装置3は、特に、切断面の形状や寸法にバラツキのある扁平チューブ等、反発力が異なる複数のワークを順次停止させる装置として、好適に用いることができる。
【0106】
なお言うまでもなく、本発明において用いられるワークは、必ずしも、切断チューブ等の切断されたワークに限定されるものではない。
【0107】
一方、本実施形態のワーク停止装置3においては図7,10に示すように、ストッパープレート35の衝突面37の搬送面32(滑走搬送路47)に対する傾斜角度θ2は5〜70°に設定するのが好ましい。すなわちこの傾斜角度θ2が大き過ぎる場合には、扁平チューブTが衝突した際のリバウンド量xが大きくなり、扁平チューブTを所定の位置に精度良く停止させることが困難になるおそれがある。逆に傾斜角度θ2が小さ過ぎる場合には、衝突側端部36の搬送ライン方向の長さが長くなるため、ストッパープレート35の長さ、ひいては装置全体の大型化を来すおそれがある。
【0108】
さらに本実施形態のワーク停止装置3において、ストッパープレート35の固定位置から、衝突面37の扁平チューブTとの衝突点Pまでの長さ(突出長さ)Lは20〜300mmに設定するのが好ましい。すなわちこの距離Lが短過ぎる場合には、扁平チューブTが衝突した際の衝撃を十分に吸収できず、リバウンド量xが大きくなり、扁平チューブTを所定の位置に精度良く停止させることが困難になるおそれがある。逆に距離Lが長過ぎる場合には、ストッパープレート35の長さが長くなるため、装置全体の大型化を来すとともに、ストッパープレート35を一方側ガイド部材40に位置精度良く取り付けるのが困難になるおそれがある。
【0109】
なお、本実施形態において、突出長さLの起点となるストッパープレート35の固定位置は、2本のボルト49,49による固定位置のうち、上流側に配置された固定位置、つまり衝突点Pに近い方の固定位置となっている。
【0110】
ところで、上記実施形態においては、ワークとして扁平チューブを用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、扁平チューブ以外のワークであっても対応することができる。要は、起立状態において幅(厚み)よりも高さが高い扁平な断面形状で、高さよりも長さが長い長尺なワークであれば、どのようなワークでも対応することができる。
【0111】
また上記実施形態においては、ストッパープレート35の衝突面37の全域(上流側端面)を平坦な傾斜面によって形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、衝突面37を湾曲面によって形成するようにしても良い。さらに本発明においては、衝突面37のうち衝突点Pの周辺領域のみを、所定の傾斜角度を有する斜め下向きの傾斜面によって構成し、他の領域を他の面、傾斜角度が異なる傾斜面や、垂直面等によって構成するようにしても良い。
【0112】
<実験例1>
この実験例1は、ワーク停止装置3のストッパープレート35における衝突面37の傾斜角度θ2と、チューブ衝突時のリバウンド量xとの関係についての実験である。
【0113】
実験設備としては図7に示すように、上記実施形態と同様のワーク起立装置1およびワーク停止装置3を並べて配置したものを準備した。このとき、ワーク起立装置1のコンベア10とワーク停止装置3の搬送台31との間隔L1を15mm、搬送台31の上流側端部からストッパープレート35の衝突点Pまでの距離L2を365mmに設定した。
【0114】
さらにストッパープレート35として、衝突面37の傾斜角度θ2が15°で、ポリカーボネート製のものを組み付けた。さらにストッパープレート35の下流側端部の固定位置から衝突点Pまでの突出長さLを290mmに設定した。
【0115】
なおストッパープレート35の上流側端部は、一方側ガイド部材40の支持フレーム41に対し2箇所でボルト止めしており、このボルト間の距離L3を20mmに設定した(図7参照)。
【0116】
この実験設備において、ワーク起立装置1のコンベア10の搬送速度を70m/minに設定しておき、扁平チューブTをワーク起立装置1の壁狭間通路14に投入した。これにより、扁平チューブTを起立状態でワーク停止装置3の滑走搬送路47内に70m/minの速度で搬入させて、その扁平チューブTの先端上側コーナー部T3をストッパープレート35の衝突面37に衝突させ、そのときのリバウンド量xを測定した。
【0117】
なお扁平チューブTとしては、チューブ厚さ(チューブ高さ)tが1.4mm、チューブ幅wが17mm、チューブ長さが227mm、質量が7gのものを使用した。
【0118】
またストッパープレート35として、衝突面37の傾斜角度θ2が30°、60°、90°のものをそれぞれ用いた以外は上記と同様にして、各リバウンド量xを測定した。なおこの実験においては、各ストッパープレート毎(各傾斜角度毎)に、5回ずつ同様の試験を行った。その結果を表1および図12のグラフに示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1において、「Ave」は各傾斜角度毎のリバウンド量xの平均値であり、「R」は各傾斜角度毎のリバウンド量xのバラツキ量、具体的には各傾斜角度毎のリバウンド量xにおいて最大値から最小値を差し引いた値である。言うまでもなく「n」は実験ナンバーである。
【0121】
表1および図12から明らかなように、ストッパープレート35の衝突面傾斜角度θ2が小さくなるに従って、リバウンド量xやバラツキが小さくなっている。つまり、衝突面傾斜角度θ2が小さい程、高い位置精度で停止させることができるものであった。
【0122】
<実験例2>
実験例2は、ストッパープレート35の固定位置から扁平チューブTの衝突点Pまでの長さ(突出長さ)Lと、チューブ衝突時のリバウンド量xとの関係につての実験である。
【0123】
この実験においては、ストッパープレート35として、衝突面傾斜角度θ2が30°のものを使用するものの、突出長さLを300mm、200mm、50mmとの3段階に変更してそれぞれ実験した以外は、上記実験例1と同様に実験を行った。その結果を表2および図13のグラフに示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表2および図13明らかなように、突出長さLが長くなるに従って、リバウンド量xやバラツキが小さくなっている。つまり、突出長さ長くなる程、高い精度で停止させることができるものであった。
【0126】
<実験例3>
実験例3は、ワークとしての扁平チューブTの質量(重量)と、リバウンド量xとの関係についての実験である。
【0127】
この実験においては、衝突面傾斜角度θ2が30°のストッパープレート35を、突出長さLが290mmとなるようにして取り付けた以外は、上記実験例1,2と同様の実験設備を使用した。
【0128】
そしてこの実験設備を用いて、質量8g(長さ227mm)の扁平チューブTと、質量18g(長さ500mm)の扁平チューブTとをワークとして用いた以外は、上記実験例1,2と同様に、リバウンド量xを測定した。その結果を表3に示す。
【0129】
【表3】

【0130】
表3から理解されるように、重量が軽い扁平チューブTの方が、リバウンド量xやバラツキが大きくなっていた。つまりワーク(処理対象物)としての扁平チューブTは、軽い程、停止位置のコントロールが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
この発明のワーク停止装置は、長さ方向に沿って搬送される扁平断面の長尺なワークを停止させるようにしたワーク搬送設備等に適用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1:ワーク起立装置
3:ワーク停止装置
31:搬送台
35:ストッパープレート(ストッパー)
37:衝突面
43:一方側ガイド壁(ガイド手段)
46:他方側ガイド壁(ガイド手段)
47:滑走搬送路
t:チューブ高さ(厚さ)
w:チューブ幅
L:突出長さ(ストッパーの固定位置から衝突点までの長さ)
P:衝突点
T:扁平チューブ
T1:一側縁部
T2:他側縁部
T3:先端上側コーナー部
θ2:傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平断面の長尺なワークが搬入される搬送台と、
前記搬送台上に設けられ、搬入されるワークをその一側縁部を下側にし、他側縁部を上側にした起立状態で長さ方向に沿って滑走させる滑走搬送路と、
前記滑走搬送路上に設けられ、かつ滑走搬送路を滑走するワークを衝突させて停止させるストッパーと、を備え、
前記ストッパーにおけるワークとの衝突面が、斜め下向きの傾斜面によって構成され、その衝突面にワークの先端上側部を衝突させてワークを停止させるようにしたことを特徴とするワーク停止装置。
【請求項2】
ワークの先端面が、ワーク搬送方向に対し直交するように形成され、ワークの先端上側コーナー部が前記ストッパーの衝突面に衝突するようになっている請求項1に記載のワーク停止装置。
【請求項3】
前記ストッパーにおける衝突面の前記滑走搬送路に対する傾斜角度が5〜70°に設定される請求項1または2に記載のワーク停止装置。
【請求項4】
ワークが、前記ストッパーの衝突面に点接触で衝突するようになっている請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項5】
前記ストッパーが前記滑走搬送路に沿って延びる長板形状を有し、そのストッパーのワーク搬送方向に対し上流側の端部に前記衝突面が設けられ、
前記ストッパーが、その衝突面側が非固定状態として、下流側が前記搬送台に対し固定されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項6】
前記ストッパーにおける固定位置から衝突面のワーク衝突点までの長さが20〜300mmに設定されている請求項5に記載のワーク停止装置。
【請求項7】
前記ストッパーが、ヤング率2300MPa以下の材質によって構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項8】
前記ストッパーがポリカーボネートによって構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項9】
前記滑走搬送路の両側に、ガイド手段が設けられ、その両側ガイド手段のいずれか一方に、ワークがガイドされつつ支持されることにより、起立状態に保持されるようになっている請求項1〜8のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項10】
ワークの両側縁部外周面が断面略円弧状の湾曲面に形成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項11】
ワークとして、質量が5〜20gのものが用いられる請求項1〜10のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項12】
ワークとして、見かけの比重が0.3〜3.0のものが用いられる請求項1〜11のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項13】
ワークとして、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のものが用いられる請求項1〜12のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項14】
ワークとして、起立状態での幅寸法に対する高さ寸法が10〜20倍のものが用いられる請求項1〜13のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項15】
ワークとして、熱交換器用の扁平チューブが用いられる請求項1〜14のいずれか1項に記載のワーク停止装置。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のワーク停止装置と、
平伏状態のワークをその一側縁部を下側にし、他側縁部を上側にした起立状態に起立させるワーク起立装置とを備え、
前記ワーク起立装置によって起立されたワークを起立状態のまま前記ワーク停止装置に搬入するようにしたことを特徴とするワーク搬送設備。
【請求項17】
扁平断面の長尺なワークがその一側縁部を下側にし、他側縁部を上側にした起立状態で長さ方向に沿って滑走搬送路を滑走する一方、
前記滑走搬送路を滑走するワークをストッパーに衝突させて停止させるに際して、
前記ストッパーにおけるワークとの衝突面を、斜め下向きの傾斜面に形成しておいて、その衝突面にワークの先端上側部を衝突させてワークを停止させるようにしたことを特徴とする滑走ワークの停止方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載されたワーク停止装置において衝突によるワークのバウンド量を制御する方法であって、
前記ストッパーにおける衝突面の傾斜角度を変更することによって、ワークのリバウンド量を制御するようにしたことを特徴とするワーク停止装置におけるリバウンド量の制御方法。
【請求項19】
複数のワークを順次停止させるに際して、各ワークのリバウンド量のバラツキが小さくなるように、前記ストッパーにおける衝突面の傾斜角度を設定しておく請求項18に記載のワーク停止装置におけるリバウンド量の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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