説明

ワーク搬送装置

【課題】
ワークセット及びワーク挟設固定の動作を簡単化することによって動作時間の短縮化を図り、自動溶接のサイクルタイムを短縮する。
【解決手段】
傾斜テーブルと固定テーブルおよびローラでワーク据付テーブルを構成することで、ワークセットとワーク固定及びワーク搬入出の機能を兼用する。ワーク40は転動体であるローラ4aによって案内挿入されるため、ワークをセットする際の人力負担を軽減することができる。また傾斜プレート中央部の上面側1fとローラ3aの下端との間隔t2とワークの板厚t0の関係はt2≦t0とすることで、ワークには押圧力が加わり、前記ローラ3aとワーク先端40aの接点は力点となり、傾斜溝の稜線部1eが支点となるため、ワーク後端部に働く作用点での反力の発生を拘束することが可能となり、溶接時のワーク搬送の震動によるワークの位置がずれることを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接のためのワーク搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークである鋼板と溶接用ナットをスポット溶接する時、作業者によるワークのセットは所定位置にセットした後、ワーク挟設固定方法としてシリンダにクランプ爪を具備しワーク挟設固定する方法がある。例えば特許文献1ではワーク搬送機ロッククランプ装置を具備しワークを挟設固定させた前記ワーク搬送機が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−227679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のワーク搬送機構においては、ワークを作業者が所定位置にセットした後、次の工程でワーク挟設固定の動作をすることになり、時間がかかるという課題があった。本発明の目的は、ワークセット及びワーク挟設固定の動作を簡単化することによって動作時間の短縮化を図り、自動溶接のサイクルタイムを短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は傾斜プレートと固定プレートから構成されるワーク据付テーブルを備えるワーク搬送装置において、前記傾斜プレートと前記固定プレートはそれぞれローラを有し、前記傾斜プレートは所定の傾斜溝を有し、前記ローラはワークの搬送とワークの挟設固定の機能をもつことを特徴とするものである
また、上記のワーク搬送装置はスポット溶接搬送装置であることが望ましい。さらに、傾斜プレートの中央の上面部と、傾斜プレートが備えるローラの下端との距離は前記ワーク据付テーブルに挿入するワークの板厚より小さいことが望ましい。
さらに、ローラと傾斜溝までの距離は、ワーク据付テーブルに挿入するワークの板厚より大きいことが望ましい。さらに、ローラは弾性体を備え、ローラはワークからの圧力によって移動することが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
この発明は以下に示すような効果を奏する。
【0007】
傾斜テーブルと固定テーブルおよびローラで構成したワーク据付テーブルはワークセットとワーク固定及びワーク搬送の機能を兼用しているため、作業工程の短縮ができ、さらにワーク40は転動体であるローラ4aによって案内挿入されるため、ワークをセットする際の人力負担を軽減することができる。
【0008】
傾斜プレート中央部の上面側1fとローラ3aの下端との間隔t2とワークの板厚t0の関係はt2≦t0とすることで、ワークには押圧力が加わり、前記ローラ3aとワーク先端40aの接点は力点となり、傾斜溝の稜線部1eが支点となるため、ワーク後端部に働く作用点での反力の発生を拘束することが可能となり、溶接時のワーク搬送の震動によるワークの位置がずれることを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本案発明のスポット溶接搬送装置の全体図を示す。図2は傾斜プレートと固定プレートから構成されるワーク据付テーブルの斜視図である。図3はワークをセットする途中のワーク据付テーブルの断面図である。図4は傾斜溝1aとローラ3aとを備えた傾斜プレート1の詳細断面図である。図5はワークをセットした後のワーク据付テーブルの断面図である。図6はワークを搬入出するときのローラ4aの動作状態図を示す。図7は傾斜プレートに備えられたローラの斜視図である。図8はワークをセットしたときのローラ4の詳細図である。図9はワーク搬出時のワーク据付テーブル30の斜視図である。図10は図9の状態の断面図である。
【0011】
図2、図3および図4に示すように、ワーク40のセットはまず、ワーク40の先端部40aをローラ4aと傾斜溝1aの間に挿入する。ここで前記挿入動作により、ワーク40は転動体であるローラ4aによって案内挿入され、続いてワーク先端部40aが傾斜溝1aの近傍となったときに傾斜角θに沿って傾斜溝に案内挿入されながら、傾斜溝終端部1cに突き当てを行ない、ワークの先端部40aの位置決めを行うことになる。ここでワーク40の板厚t0に対して、挿入口であるローラ3aと傾斜溝との間隔は広くしておく必要がある。(ここでワーク40の板厚t0は転動体であるローラ2aの接線に直交する溝までの最短距離t1に対しt1>t0とすることで挿入口が広くなりワーク40を容易に案内挿入することとなる。)
次に、図6に示すように示すようにワーク40の後端部40bを押圧しながらローラ4aの下部に挿入する。このとき、図7に示すようにローラ4aは軸4cの外周に弾性体4bを包設する構造であるため、図6のように前記弾性体4bが圧縮し、軸4cが押され、転動体であるローラ4aがワーク外側に移動するので、ローラ4aの下部にワークを挿入することが可能となる。またワークの後端部40bが挿入された後は、図8のように、再び弾性体4bの反力によりワーク40の後端角部40cを前記ローラ4aによって圧設することとなる。
【0012】
また、傾斜プレート中央部の上面側1fとローラ3aの下端との間隔t2とワークの板厚t0の関係はt2≦t0であるため、ワーク40は図5に示すように挟設固定された状態となる。この後、図1に示すサーボモータ15とガイドレールによって傾斜プレート1と固定プレート2およびローラ3a、4aをもって構成される据付テーブル30が移動し、所定の位置でパーツフィーダ21から供給された溶接ナット22をスポット溶接機20にて溶接接合する。
【0013】
溶接終了後、図9および図10に示すように傾斜プレート1はシリンダ7にて押し上げられ回転軸6を中心に回転し傾斜する。この動作の際、図6に示すように再びワーク後端40bはローラ4aを押圧し、弾性体4bを圧縮することでローラ4aが移動するため、前記ローラ4aを乗り超え、図1に示す受けテーブル8に搬出される構造である。
【0014】
このように本発明の実施例は、傾斜角θを備えた傾斜溝1aおよび開口窓1を備えた傾斜プレート1にローラ3aを具設するとともに、固定プレートに具設したローラ4aによってワークのセットと挟設固定及び搬出動作工程を兼用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のスポット溶接ためのワーク搬送装置の全体図
【図2】図1においてワーク据付テーブルの斜視図
【図3】ワークセット途中のワーク据付テーブル断面図
【図4】傾斜溝とローラの詳細断面図
【図5】ワークセット後のワーク据付テーブル断面図
【図6】固定プレートに備えられたローラのワーク搬入出時の動作状態図
【図7】固定プレートに備えられたローラの斜視図
【図8】固定プレートに備えられたローラのワークセット後の詳細図
【図9】ワーク搬出時のワーク据付テーブルの斜視図
【図10】ワーク搬出時のワーク据付テーブルの断面図
【符号の説明】
【0016】
1:傾斜プレート 、1a:傾斜溝、 1b:角窓、1f、傾斜プレート中央部の上面側、2:固定プレート
3a:ローラ、3b:ローラ支えブラケット、4a:ローラ、 4b:弾性体、4c:軸、4d:ローラ支えブラケット、6:回転軸7:シリンダ8:受けテーブル、15:サーボモータ、16:ガイドレール、20:スポット溶接機、21:パーツフィーダ、22:溶接ナット、23:ハンドロボット、30:据付テーブル
40:ワーク、40a:ワーク先端部、40b:ワーク後端部、40c:ワーク後端角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜プレートと固定プレートから構成されるワーク据付テーブルを備えるワーク搬送装置において、前記傾斜プレートと前記固定プレートはそれぞれローラを有し、前記傾斜プレートは所定の傾斜溝を有し、前記ローラはワークの搬送とワークの挟設固定の機能をもつことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ワーク搬送装置はスポット溶接搬送装置であることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項3】
請求項2において、前記傾斜プレートの中央の上面部と、傾斜プレートが備えるローラの下端との距離は前記ワーク据付テーブルに挿入するワークの板厚より小さいことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項3において、前記ローラと傾斜溝までの距離は、前記ワーク据付テーブルに挿入するワークの板厚より大きいことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項5】
請求項3において、前記ローラは弾性体を備え、前記ローラは前記ワークからの圧力によって移動することを特徴とするワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−62286(P2008−62286A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244962(P2006−244962)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】