説明

ワーク給送装置

【課題】積層されたワークごとにランダムな厚みの変化があっても、給送するワークの厚さに応じたゲートの微妙な高さの調整が必要なく、簡単な構成によりワークを1枚ずつ確実に分離した状態にして後続ラインに供給することができるワーク給送装置を提供する。
【解決手段】前当てガイド12の下方をくぐり抜けて搬送されるワークPを、該ワークPの搬送を許容する弾発力と摩擦力にて搬送ベルト20側へ圧接させる弾性ゲート部40を備え、各弾性ゲート部40は、それぞれ弾性変形が可能な範囲内でワークPごとの異なる厚さに応じて自動的に高さ方向へ変形し、該変形に伴いワークPを1枚ずつ分離した状態にして後続ラインに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層されたワークを最下層から順に抜き取り、後続ラインに1枚ずつ供給するためのワーク給送装置に関する。なお、ここでいうワークとは、封筒、葉書、カード類、雑誌、小冊子、印刷物等、ある程度の厚みと剛性を有するシート状のものを指す。
【背景技術】
【0002】
従来より、封筒、葉書、カード類、雑誌、小冊子、印刷物等を、積み重ねたものの一番下から順次1枚ずつ給送して、計数したり、あるいはカメラ、センサー等で検査したり、郵便番号による仕分け作業等を行っている。このような給送に用いる装置として、例えば特許文献1に記載された装置が提案されている。
【0003】
かかる装置は、積層されたシートの最下層に接するベルトの摩擦を利用して、最下層からシートを1枚ずつ順次給送するボトムフィーダであり、積層されたシートの前方側の下端を係止するセンターガイドを設け、シートの後方側をガイドするバックガイドの下方にシートが1枚だけ通過できるゲートを形成し、かつ最下方のシートを前記センターガイドによる係止を解除して下方へ落下させると共に前記ゲートへ導き、この後前方へ給送するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−114937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、ゲートによってシート1枚の厚さに合わせた隙間を空けて、シートを1枚ずつに分離して給送するゲート式のボトムフィーダにおいては、同一の厚みのシートを給送するには問題ないが、給送するシートの厚さが異なるものが混在するような場合は、ゲートの高さを瞬時に調整することができず、混在する様々な厚みのシートについては対応できないという問題があった。
【0006】
すなわち、現実問題として、厚みの異なるシートの一例として、金融機関等が発行するローン明細等は、個人ごとに内容物の部数が異なり厚みが不規則であり、一定の隙間のゲート式では、変化する厚さのシートには対応することができなかった。また、出版社の各種申し込み応募用の郵便物等のように、一般人からの郵便物の場合も、個人個人で封書に入れる用紙の枚数、厚さや折方により全体の厚さが異なり、同じくゲート式では対応することができなかった。
【0007】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、積層されたワークごとにランダムな厚みの変化があっても、給送するワークの厚さに応じたゲートの微妙な高さの調整が必要なく、簡単な構成によりワークを1枚ずつ確実に分離した状態にして後続ラインに供給することができるワーク給送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]積層されたワーク(P)を最下層から順に抜き取り、後続ラインに1枚ずつ供給するためのワーク給送装置(10)において
前記積層されたワーク(P)の最下層より1枚ずつ送り出す搬送ベルト(20)と、
前記積層されたワーク(P)の最下層より上方のワーク(P)を所定位置に停止させる前当てガイド(12)と、
前記前当てガイド(12)の直ぐ下流側で搬送方向に複数並ぶように設けられ、前記前当てガイド(12)の下方をくぐり抜けて搬送されるワーク(P)を、該ワーク(P)の搬送を許容する弾発力と摩擦力にて前記搬送ベルト(20)側へ圧接させる弾性ゲート部(40)とを備え、
前記各弾性ゲート部(40)は、それぞれ弾性変形が可能な範囲内で前記ワーク(P)ごとの異なる厚さに応じて自動的に高さ方向へ変形し、該変形に伴い前記ワーク(P)を1枚ずつ分離した状態にして後続ラインに供給することを特徴とするワーク給送装置(10)。
【0009】
[2]前記弾性ゲート部(40)は、ゴム板(42)の上端側を片持ち状態で取付ブラケット(41)を介して支持し、前記ゴム板(42)の下端側が搬送方向へ反り返る状態で前記搬送ベルト(20)に当接して成ることを特徴とする[1]に記載のワーク給送装置(10)。
【0010】
[3]前記弾性ゲート部(40)は、前記取付ブラケット(41)の高さ位置を調整可能に配設されることを特徴とする[2]に記載のワーク給送装置(10)。
【0011】
[4]前記弾性ゲート部(40)は、前記ゴム板(42)の下端縁に両側方向に並ぶ切込みが入れられていることを特徴とする[2]または[3]に記載のワーク給送装置(10)。
【0012】
前記本発明は、次のように作用する。
本発明に係るワーク給送装置(10)によれば、積層されたワーク(P)は、搬送ベルト(20)によって最下層から順次給送される。ここで、積層されたワーク(P)の最下層より上方は、前当てガイド(12)に当接することで、当該位置に停止している。
【0013】
最下層から抜き取られたワーク(P)は、前当てガイド(12)の下方をくぐり抜けて搬送される途中で、複数並ぶ弾性ゲート部(40)によって、搬送ベルト(20)側へ圧接させられる。このとき、各弾性ゲート部(40)は、それぞれ弾性変形が可能な範囲内でワーク(P)ごとの異なる厚さに応じて自動的に高さ方向へ変形する。このような各弾性ゲート部(40)の変形に伴って、ワーク(P)は1枚ずつ分離された状態となる。
【0014】
すなわち、最初にワーク(P)に圧接する1番目の弾性ゲート部(40)だけでは、ワーク(P)の分離が完全でなく複数枚が通り抜けたとしても、次に圧接する2番目の弾性ゲート部(40)によって、さらに分離される。このように複数並ぶ各弾性ゲート部(40)によって、ワーク(P)は1枚ずつ完全に分離された状態となり、ワーク(P)を余裕を持った一定間隔で給送することが可能となる。
【0015】
前記弾性ゲート部(40)としては、具体的には例えば、ゴム板(42)の上端側を片持ち状態で取付ブラケット(41)を介して支持し、ゴム板(42)の下端側が搬送方向へ反り返る状態で前記搬送ベルト(20)に当接して成るものとすれば良い。これにより、コスト高を招くことなく簡易に構成することができる。
【0016】
また、前記弾性ゲート部(40)において、前記取付ブラケット(41)の高さ位置を調整可能に配設すると良い。これにより、積層されたワーク(P)の標準的な厚さに応じて、ワーク(P)に対する弾発力を適宜調整することができる。
【0017】
さらにまた、前記弾性ゲート部(40)において、前記ゴム板(42)の下端縁に両側方向に並ぶ切込みを入れると良い。これにより、ワーク(P)における両側方向の厚さ(高さ)の違いを、各々の切込み間の単位で吸収することができ、いっそう確実にワーク(P)を1枚ずつ分離された状態として給送することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るワーク給送装置によれば、積層されたワークごとにランダムな厚みの変化があっても、給送するワークの厚さに応じたゲートの微妙な高さの調整が必要なく、簡単な構成によりワークを1枚ずつ確実に分離した状態にして後続ラインに供給することができる。また、従来のゲート式のボトムフィーダのように、ゲートの磨耗による高さの変化による再調整が必要なくなり、操作が簡単で耐久性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係るワーク給送装置の概略的な構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例に係るワーク給送装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るワーク給送装置の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係るワーク給送装置の要部を拡大して示す側面図である。
【図5】図4中の破線の囲い部分をさらに拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施例を説明する。
本実施例に係るワーク給送装置は、積層されたワークを最下層から順に抜き取り、後続ラインに1枚ずつ供給するための装置である。ここでいうワークとは、封筒、葉書、カード類、雑誌、小冊子、印刷物等、定型である程度の厚みと剛性を有するシート状のものを指すが、以下に、郵送された定型封筒を例にワークPとして説明する。
【0021】
図1は、ワーク給送装置10の概略的な構成を示す側面図である。図2は、ワーク給送装置10の概略的な構成を示す斜視図である。図3は、ワーク給送装置10の要部を示す斜視図である。図1〜図3に示すように、ワーク給送装置10は、機本体11に、搬送ベルト20、送出ベルト30、前当てガイド12、複数の弾性ゲート部40,40…等を装備して成る。
【0022】
機本体11の上面部には、搬送ベルト20と送出ベルト30とが搬送方向に互いに直列に並ぶように配設されている。搬送ベルト20は、積層されたワークPの最下層より1枚ずつ送り出すものであり、駆動ローラ21と従動ローラ22に巻き掛けた無端ベルトから成り、その送り面側が機本体11の上面部に連なっている。
【0023】
一方、送出ベルト30は、前記搬送ベルト20から1枚ずつ分離された状態で送り出されたワークPを後続ラインに供給するものであり、前記搬送ベルト20と同様に駆動ローラ31と従動ローラ32に巻き掛けた無端ベルトから成り、その送り面側が機本体11の上面部に連なっている。
【0024】
図3に示すように、駆動ローラ21の回転軸には入力ローラ25が固結されており、この入力ローラ25は、電動モータ等を内蔵したギヤボックスの出力ローラ24と伝動ベルト23を介して動力伝達可能に連結されている。図示省略したが送出ベルト30も、同様な動力伝達機構によって駆動されるように構成されている。
【0025】
図1に示すように、搬送ベルト20の送り面上に積層されるワークPは、その最下層より上方の前端部を前当てガイド12、後端部を後押えガイド14によって支持されている。前当てガイド12は、機本体11の上面部に立設された縦壁材13により略垂直に支持されており、下部12aは後方(下流側)に折り曲げられて、上面部との間に数枚のワークPが重なった状態で通過し得る隙間を形成している。ここで隙間の高さ寸法は、ワークPにおける最大限の厚さを考慮して定めると良い。
【0026】
後押えガイド14は、機本体11の上面部に傾斜する状態で取付ブラケット15を介して支持されており、積層されたワークPを搬送方向に傾斜させて保持する。なお、後押えガイド14の取付位置は、締結ネジ16を弛めることで適宜調整することができ、ワークPの種類(搬送方向の長さ)に対応させることができる。
【0027】
複数の弾性ゲート部40,40…は、前当てガイド12の直ぐ下流側で搬送方向に等間隔で並ぶように設けられている。各弾性ゲート部40は、前当てガイド12の下方をくぐり抜けて搬送されるワークPを、該ワークPの搬送を許容する弾発力と摩擦力にて搬送ベルト20側へ圧接させるものである。
【0028】
具体的には弾性ゲート部40は、ゴム板42の上端側を片持ち状態で取付ブラケット41を介して支持し、ゴム板42の下端側を搬送方向へ反り返る状態で搬送ベルト20に当接させて成る。ここでのゴム板42は、全てがゴムで成型されたものだけでなく、不織布の芯材の両面または片面にゴムを積層させたものでも良い。
【0029】
図3に示すように、取付ブラケット41は、ゴム板42と同様に略正方形に形成されており、ゴム板42の下半部分が延出した状態で止着されている。各弾性ゲート部40の取付ブラケット41はハウジング43に支持されており、このハウジング43ごと高さ位置を調整可能に縦壁材13に対して配設されている。
【0030】
また、図1に示すように、ハウジング43の後方には支持ブラケット17が接続されており、この支持ブラケット17の前後部には、それぞれ下向きに揺動可能に枢支されたアーム部材18を介して、押えテンションローラ19が回転可能に軸支されている。各押えテンションローラ19は、送出ベルト30上を搬送されるワークPを上から押えるものである。なお、送出ベルト30の下流端には、後続ラインに供給されるワークPを計数するための計数用センサ50が設けられている。
【0031】
次に、ワーク給送装置10の作用を説明する。
図1において、ワーク給送装置10の使用にあたっては、先ず後押えガイド14の前後位置を調整し、給送するワークPが後押えガイド14と前当てガイド12の間に納まるように設定する。そして、後押えガイド14と前当てガイド12の間にワークPを積層させてセットする。ここで積層されたワークPは、後端部の位置が前端部より高く保持されており、自重によって搬送方向へ進むように搬送ベルト20と接触する。
【0032】
そして、搬送ベルト20および送出ベルト30を回転駆動すると、積層されたワークPは、先ず搬送ベルト20によって最下層から順次給送される。ここで、積層されたワークPの最下層より上方は、前当てガイド12に当接することで、当該位置に停止している。なお、搬送ベルト20および送出ベルト30の走行速度は、ワークPの重さや大きさに応じて適宜調整する。
【0033】
図5に示すように、最下層から抜き取られたワークPは、前当てガイド12の下方をくぐり抜けて搬送される途中で、複数並ぶ弾性ゲート部40,40…によって、搬送ベルト20側へ圧接させられる。このとき、各弾性ゲート部40は、それぞれ弾性変形が可能な範囲内でワークPごとの異なる厚さに応じて自動的に高さ方向へ変形する。
【0034】
各弾性ゲート部40の変形に伴って、ワークPは1枚ずつ分離された状態となり、後続ラインに供給される。すなわち、最初にワークPに圧接する1番目の弾性ゲート部40だけでは、ワークPの分離が完全でなく複数枚が通り抜けたとしても、次に圧接する2番目の弾性ゲート部40によって、さらに分離される。このように複数並ぶ各弾性ゲート部40によって、ワークPは1枚ずつ完全に分離された状態となり、ワークPを余裕を持った一定間隔で給送することが可能となる。
【0035】
前記弾性ゲート部40は、ゴム板42の上端側を片持ち状態で取付ブラケット41を介して支持し、ゴム板42の下端側が搬送方向へ反り返る状態で前記搬送ベルト20に当接して成るものであり、コスト高を招くことなく簡易に構成することができる。また、各弾性ゲート部40は、ハウジング43によって高さ位置を調整できるので、積層されたワークPの標準的な厚さに応じて、ワークPに対する弾発力を適宜調整することができる。
【0036】
さらにまた、前記弾性ゲート部40において、ゴム板42の下端縁に両側方向に並ぶ切込みを入れると良い。これにより、ワークPにおける両側方向の厚さ高さの違いを、各々の切込み間の単位で吸収することができ、いっそう確実にワークPを1枚ずつ分離された状態として給送することができる。
【0037】
なお、本発明の実施例を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、弾性ゲート部40の構成は図示したものに限定されるものではなく、ワークPの搬送を許容する弾発力と摩擦力にてワークPを搬送ベルト20側へ圧接させることができるものであれば、他の構成であってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
封筒、葉書等の一般的な郵便物の仕分けだけではなく、雑誌、小冊子、印刷物等と、あらゆる定型のワークに関して、個々の厚さが異なるようなものの仕分けの用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
P…ワーク
10…ワーク給送装置
11…機本体
12…前当てガイド
13…縦壁材
14…後押えガイド
15…取付ブラケット
16…締結ネジ
17…支持ブラケット
18…アーム部材
19…押えテンションローラ
20…搬送ベルト
21…駆動ローラ
22…従動ローラ
23…伝動ベルト
24…出力ローラ
25…入力ローラ
30…送出ベルト
31…駆動ローラ
32…従動ローラ
40…弾性ゲート部
41…取付ブラケット
42…ゴム板
43…ハウジング
50…計数用センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されたワークを最下層から順に抜き取り、後続ラインに1枚ずつ供給するためのワーク給送装置において
前記積層されたワークの最下層より1枚ずつ送り出す搬送ベルトと、
前記積層されたワークの最下層より上方のワークを所定位置に停止させる前当てガイドと、
前記前当てガイドの直ぐ下流側で搬送方向に複数並ぶように設けられ、前記前当てガイドの下方をくぐり抜けて搬送されるワークを、該ワークの搬送を許容する弾発力と摩擦力にて前記搬送ベルト側へ圧接させる弾性ゲート部とを備え、
前記各弾性ゲート部は、それぞれ弾性変形が可能な範囲内で前記ワークごとの異なる厚さに応じて自動的に高さ方向へ変形し、該変形に伴い前記ワークを1枚ずつ分離した状態にして後続ラインに供給することを特徴とするワーク給送装置。
【請求項2】
前記弾性ゲート部は、ゴム板の上端側を片持ち状態で取付ブラケットを介して支持し、前記ゴム板の下端側が搬送方向へ反り返る状態で前記搬送ベルトに当接して成ることを特徴とする請求項1に記載のワーク給送装置。
【請求項3】
前記弾性ゲート部は、前記取付ブラケットの高さ位置を調整可能に配設されることを特徴とする請求項2に記載のワーク給送装置。
【請求項4】
前記弾性ゲート部は、前記ゴム板の下端縁に両側方向に並ぶ切込みが入れられていることを特徴とする請求項2または3に記載のワーク給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168201(P2010−168201A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13844(P2009−13844)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(390036261)サンレイインターナショナル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】