説明

一体化された燃料電池発電システムを有するガス化装置

発電システムに対する直接炭素質材料は、1個または複数個の固体酸化物燃料電池(SOFC)を流動化床ガス化装置内に一体化する。燃料電池アノードは、床材料と直接接触して、前記床において発生したH2およびCOがH2OおよびCO2に酸化されて、プッシュプルまたはソースシンクの反応環境を作り出すようになっている。SOFCは、発熱性であり、流動化床が吸熱反応を行うガス化装置の反応チャンバ内に熱を供給する。アノードからの生成物は、改質装置のための反応体であり、逆もまた然りである。反応チャンバにおける下方の床は、1種または複数種の触媒および1個または複数個の反応体吸着部位を組み込んで流動化床における優れた熱および物質移動および流動化動力学を容易にすることができる工業用の多機能材料を含んでいてよい。触媒は、タールを分解して炭化水素を改質することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体化された発電用フルセルを有するシステムおよび炭素質材料を生成ガスに変換するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、内容の全体が参照により組み込まれている、2009年6月2日に出願した米国特許仮出願第61/183,401号の優先権を主張するものである。
【0003】
ガス化装置、例えば、流動化床を使用するガス化装置は、炭素質材料を生成ガスに変換するのに用いられてきた。ガス化の際の目的は、原料の、合成ガス、すなわち、H2およびCOへの変換を最大化することである。このことは、凝縮性物質の形成もしくはタールおよび軽質炭化水素の形成のいずれかが最小化されること、またはこれらがインサイチュで変換されることを必要としている。多くの研究者らは、水蒸気改質、自己熱改質および部分酸化の形式の反応器操作で、タールを分解するおよび/または炭化水素を改質するための触媒を開発してきた。主な性能目標は、変換、収率、選択性および活性であり、課題は、無視できるまたは最小限の活性損失でありながら性能を維持することである。触媒の不活性化または劣化をもたらし得る潜在因子は:粒子または触媒層の摩耗またはデクレピテーション、焼結、凝集、コークス形成および原料不純物(H2S、COS、HCl、NH3、HCNなど)による被毒である。いくつかの最近のレビューとして以下が挙げられる:
例えば、非特許文献1を参照。
例えば、非特許文献2を参照。
例えば、非特許文献3を参照。
【0004】
悪条件のガス化チャンバにて作動することができる高度な触媒は、内容が参照により組み込まれている、以下の公開された米国特許出願に記載されている:例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3を参照。
【0005】
Girouxらは、硫黄含有炭化水素を改質する方法であって、硫黄含有炭化水素を、非硫酸化担体ならびに1種または複数種の耐硫黄貴金属および非貴金属化合物を含有する耐硫黄触媒と接触させて、耐硫黄触媒が硫黄含有炭化水素中の少なくとも一部の硫黄に吸着して低硫黄改質油が収集されるようにすること、ならびに耐硫黄触媒を酸素含有ガスと接触させて、吸着された硫黄の少なくとも一部を、耐硫黄触媒から脱着された酸化硫黄に変換することを含む方法を教示している(例えば、特許文献1を参照)。この発明は、流動化床ではなく簡単な反応器またはスイング反応器において実施されることを目的としている。
【0006】
Lomaxらは、水蒸気改質プロセスにおける炭化水素燃料からの水素の生成に用いられ得る触媒の調製を教示しており(例えば、特許文献2を参照);上記触媒は、例えば、Ir、PtおよびPdのうちの少なくとも1種の活性金属を、例えば、単斜晶系ジルコニアおよびアルカリ土類金属のヘキサアルミン酸塩うちの少なくとも1種の触媒支持体上に含有し、改善された活性、空気および還元雰囲気の両方における安定性、ならびに耐硫黄性を示す。好ましい反応器の種類は示されていないが、この出願は、充填床または固定床反応器を示唆しているようである。
【0007】
Parentらは、流動化床反応器において、原料についての分解、改質、水性ガスシフトおよびガス化反応に用いられるときの摩耗損失に対する改善された耐性を特徴とする水蒸気改質触媒を調製する方法であって:セラミック支持体粒子を製造すること、Ni、Pt、Pd、Ru、Rh、Cr、Co、Mn、Mg、K、LaおよびFeならびにこれらの混合物からなる群から選択される金属の前駆体塩の水溶液をセラミック支持体に添加することによってセラミック支持体をコーティングすること、ならびにコーティングされたセラミックを空気中でか焼して金属塩を金属酸化物に変換することを含む方法を教示している(例えば、特許文献3を参照)。この触媒は、流動床用途を特に目的としているが、触媒支持体材料を凝集させることによって100から1,000ミクロンの寸法範囲の球形粒子の形態で作製されている。未焼成の凝集体は、典型的には0.3から10ミクロンの範囲、好ましくは0.9から5ミクロンの範囲の平均寸法を有する触媒支持体粒子からなる。
【0008】
炭素質材料を生成ガスに変換する吸熱反応を継続させるためのガス化装置の床には、熱が必要とされる。この熱は、1個または複数個の直接または間接熱源によって与えられ得る。一般に、かかる熱源は、かなりのエネルギーを消費する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20080041766号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20070116639号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20090209412号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0245627号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Gerber, M.A., "Review of Novel Catalysts for Biomass Tar cracking and methane Reforming", Pacific Northwest National Laboratory Report PNNL-16950, October 2007
【非特許文献2】Fang, H., Haibin, L., and Zengli, Z., "Advancements in Development of Chemical-Looping Combustion: A Review', Intl. J. Ch. E., Volume 2009 (2009), Article ID 710515
【非特許文献3】Kolb, G., "Fuel Processing: for fuel cells", Technology & Engineering, 2008, 424 pages
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、炭素質材料ガス化装置および発電システムを対象とする。上記システムは、長手軸を有して、炭素質材料を含む原料を収容して炭素質材料から生成ガスを生成するのに好適なガス化装置チャンバを画定する反応容器と、ガス化装置チャンバ内に突出していて、同時に電力を発生させながら、発熱反応を行って、前記炭素質材料をガス化して生成ガスを生成させるのに十分な熱を付与するように構成された複数の燃料電池要素とを含む。
【0012】
各燃料電池要素は、外側アノード、内側カソード、および外側アノードと内側カソードとの間のセラミック電極を含む、長い管の形態であってよい。
【0013】
複数の燃料電池要素の少なくともいくつかは、燃料電池モジュールに付随している。燃料電池モジュールは、空気、O2および濃縮空気のうち1種または複数種が燃料電池要素に供給される酸化剤マニホールドと、N2もしくはO2および/または燃料電池要素によって消費されなかった他のガスの除去に備えるように構成された使用済み酸化剤プレナムとを含む。
【0014】
少なくとも1つの原料入口は、原料をガス化装置チャンバ内の乾燥および液化ゾーン内に導入するように構成されていてよい。
【0015】
複数の間接加熱器管路は、ガス化装置チャンバ内に突出していてよい。
【0016】
かかる場合、離間した第1の組および第2の組の間接加熱器管路は、ガス化装置チャンバ内にその側壁から突出していてよく、離間した第1の組および第2の組の燃料電池要素は、ガス化装置チャンバにおいてその側壁から突出していてよく、第1の組および第2の組の間接加熱器管路は、反応容器の長手軸に沿って第1の組および第2の組の燃料電池要素間にある。
【0017】
少なくとも1つの原料入口は、第1の組および第2の組の間接加熱器管路間に位置付けられていてよく、少なくとも1つの原料入口は、原料をガス化装置チャンバ内の乾燥および液化ゾーン内に導入するように構成されている。
【0018】
第1の組および第2の組の間接加熱器管路は、反応容器の第1の壁からガス化装置チャンバ内に突出していてよく、第1の組および第2の組の燃料電池要素は、反応容器の第1の壁と対向する第2の壁からガス化装置チャンバ内に突出していてよく、間接加熱器管路の少なくともいくつかと燃料電池要素の少なくともいくつかとが、長手軸に沿って重なり合っていてよい。
【0019】
反応容器は、矩形の断面を有していてよい。
【0020】
別の態様において、本発明は、電力を発生させながらも炭素質材料を生成ガスに変換する方法を対象とする。本発明方法は、上記反応容器と上記複数の燃料電池要素とを含む一体化されたシステムを付与するステップと、流動化媒体をガス化装置チャンバ内に導入するステップと、炭素質材料をガス化装置チャンバ内の乾燥および液化ゾーン内に導入するステップステップと、同時に発電させながら、燃料電池要素を操作して、前記炭素質材料をガス化して生成ガスを生成するのに十分な熱を作り出すステップとを含む。
【0021】
上記方法は、燃料電池要素を操作して、前記炭素質材料をガス化するのに十分な熱を作り出す前に、間接加熱器を操作して、ガス化装置チャンバ内の流動化床を、前記炭素質材料をガス化するのに十分な温度にするステップを含んでいてよい。
【0022】
本発明によるシステムは、したがって、間接的に加熱された流動化床ガス化装置であって、その床に高度な固体酸化物燃料電池(SOFC)要素(単位体積当たりの表面積が大きい、管状の幾何形状、例えば薄い、長円形状または平坦な形状または翼形状など)が浸漬されている上記ガス化装置を含んでいてよい。さらに、上記床は、特有の熱および物質移動特性ならびに触媒活性および吸着活性を有する工業用の多機能粒子を含んでいてよい。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、熱化学プロセス、電気化学プロセスおよび触媒プロセスの一体化によりプッシュプルまたはソースシンクの反応環境を作り出して、炭素質材料からの電気の直接生成を容易にすることを含む。炭素質材料は、天然ガス、プロパン、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、バイオマスおよび他の有機原料などの、気体燃料、液体燃料または固体燃料であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による一体化されたガス化装置/燃料電池システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による、炭素質材料が一体化された発電システム100を示す。システム100は、垂直方向を画定する長手軸Aを有するガス化装置チャンバ110を含む反応容器105を含む。いくつかの実施形態において、ガス化装置チャンバ110は、当業者に周知である種類の水蒸気改質装置の形態であってよい。
【0026】
分配器112は、チャンバ110の基部108に設けられて流動化媒体109の侵入を容易にし、流動化媒体は、水蒸気、空気、CO2、O2などの種を含んでいてよい。ガス化装置110は、分配器の上に、チャンバ基部に隣接した改善されたチャー変換ゾーン114、改善されたチャー変換ゾーン114の上の乾燥および液化ゾーン116、ならびに乾燥および液化ゾーン116の上の高密度流動床ゾーン118を含めた複数のゾーンを有する。高密度流動床ゾーン118の上に、チャンバ110の上部を占有するフリーボード領域120がある。チャンバ110の頂部は、生成ガス111の流出を許可するように構成されていてよい。当業者に公知の様式で、1個または複数個のサイクロン、フィルタおよび他の設備(図示せず)を用いて、生成ガスから固体を分離および/または回収してよい。
【0027】
一実施形態において、ガス化装置の床粒子は、多孔質で軽く、活性な反応体(H2、CO、H2O、CO2など)吸着部位を有し、優れた熱および物質移動特性を有し、触媒作用性または非触媒作用性のいずれであってもよい工業用の多機能粒子を含む。工業用の粒子は、アルミナなどのセラミックとゼオライトなどの固体吸着材との複合体であっても、H2、CO、H2OおよびCO2を含めたガス用の分子篩であってもよい。かかる粒子は、例えばゾルゲル処理を介して製造され得る。かかる工業用の粒子は、高密度床の圧力降下、ガスの膨張およびガスのバイパスを低減すること、必要とされる流動化速度を低下させること、ならびに優れた気固接触、熱および物質移動を容易にして反応を促進することを助けることができる。工業用の粒子は、比較的低い温度から非常に低い温度および比較的低い濃度勾配から非常に低い濃度勾配を有するチャンバの操作を可能にして、ひいては燃料または原料変換効率を向上させる。触媒の機能は、タールを分解して炭化水素を改質することであり、背景技術のセクションにおいて記載した触媒などが好適であり得る。さらに、特別に配合された吸着剤(ワンススルーまたは再生可能)が流動床内に注入されて、汚染物質を捕捉してもよい。
【0028】
原料入口148は、反応容器105の側壁126に設けられて、原料150をチャンバ110の乾燥および液化ゾーン116に導入する。原料入口148が1つだけ示されているが、複数の原料入口が設けられていてよく、それぞれが原料を導入するためのものであることが理解される。原料150は、乾燥および液化ゾーン116内に導入され、流動化媒体と合わされ、燃料電池要素134(以下に記載)に対して上方向に搬送される。これらの過程は、発熱であり、熱を高密度流動床ゾーン118に移動する。
【0029】
1個または複数個の離間した燃料電池モジュール130a、130bは、反応容器105に取り付けられている。各燃料モジュールは、チャンバ110内に突出する1個または複数個の燃料電池要素134の組132a、132bを含む。各燃料電池モジュール130a、130bは、燃料電池入口ガス137、例えば空気、O2および濃縮空気の1種または複数種が燃料電池要素134に供給される酸化剤マニホールド136を含む。燃料電池モジュールはまた、燃料電池排出ガス139、例えばN2、燃料電池要素134によって消費されなかった残りのO2などの除去に使用済み酸化剤プレナム138を含んでもよい。かかる2個の燃料電池モジュール130a、130bは、図1に示されていて、それぞれが電力160を出力するが、単一の燃料電池モジュール、または個々の燃料電池要素の集合であっても十分であろうことが理解される。
【0030】
燃料電池の基本的な構成要素は、一方の側では多孔質アノード、他方の側では多孔質カソードと接触している電解質層を含む。示されている実施形態において、各燃料電池要素134は、外側アノード、内側カソードおよびこれらの間にあるセラミック電解質電極を含む長い管134aの形態であってよい。SOFCの場合、セラミック電解質は、格子内に酸素イオンの空洞を有し、この空洞により、セラミックを酸素イオン伝導性の電解質とする。この点について、この空洞は、半導体として用いられる材料に見られる電子空洞と類似点がある。電池によって発生する平衡電位は、ネルンストの式を用いることによって算出され得る。しかし、発生した実際の電位は、不可逆損失に起因して平衡電位よりも低い。燃料電池の電池電圧および電力密度は、圧力、温度、反応体(燃料および酸化剤)の種類、組成および利用、電流密度ならびに不純物およびその濃度によって変動する。SOFC要素は、2つの電極(外側アノードおよび内側カソード)ならびにこれらの間にある電解質をそれぞれ含む。アノードは、改質装置の床材料と直接接触しており、カソードには、酸化剤(空気;O2または濃縮空気−場合による)が供給される。
【0031】
チャンバ110は、主な流動性媒体としての過熱された水蒸気(CO2、O2および/または空気は場合による)ならびに電気化学酸化によって付与された熱を利用して、燃料または原料を変換する。注入された燃料または原料は、乾燥、液化、ガス化、タール分解および炭化水素改質反応のうちの1または複数のステップを経て、H2、COおよびCO2を主として含む生成ガス、ならびに限定された程度での炭化水素ガス(固定ガス、例えば、CH4、C2+および凝縮性の蒸気またはタール)を発生させ;燃料または原料および操作条件(圧力、温度および流動化媒体)に応じて、生成ガスのさらなる成分は、HCl、H2S、NH3、HCN、COS、ならびにアルカリおよび微量金属の蒸気であってよい。流動化床において発生したH2およびCOは、(カソードからの酸素イオンの移動に起因して)SOFCのアノードにおいてH2OおよびCO2に電気化学的に酸化されて、プッシュプルまたはソースシンクの反応環境を作り出す。
【0032】
一方で、SOFC燃料電池要素134は、発熱形態で作動して、吸熱形態で作動するため熱を必要とするチャンバ110に熱を供給する。したがって、燃料電池要素134のアノードからの生成物は、改質装置のための反応体であり、逆もまた然りである。流動床の形態および連動する操作によって、本発明のいくつかの実施形態におけるSOFCの熱管理は、より簡単かつより効率的になり得る。
【0033】
上記のように、図1に示されている構成は、2007年10月25日の日付の特許文献4に開示されているように、チャンバ110を、原料の乾燥および液化をもたらすゾーン、ならびにチャー反応および炭素変換を促進する別のゾーンを含めた個別の反応ゾーンに分割する。このことは、合成ガスの収率および組成、炭素変換、ならびにプロセス熱効率の向上、ならびにひいては所与のチャンバでのより高いスループットを促進する。したがって、チャンバ操作温度は、名目上約800℃(1,472F)であり、燃料または原料に応じて600℃から1,000℃の範囲であってよい。
【0034】
チャンバ反応。チャンバにおける反応の主たる群は以下である:
乾燥および液化
燃料または原料→H2O、H2、CO、CO2、HCガス、タール、チャー
触媒分解/改質
HCガス、タール+H2O+熱→H2、CO
ガス化
【0035】
過熱された水蒸気は、燃料または原料の炭素質成分と吸熱反応して(熱を消費して)、水素および一酸化炭素燃料ガス(合成ガス(synthesis gas)または合成ガス(syngas))を生成する:
H2O+C+熱→H2+CO(水蒸気改質)
【0036】
二酸化炭素は、燃料または原料の炭素質成分と吸熱反応して(熱を消費して)、一酸化炭素を生成する:
CO2+C+熱→2CO(乾燥改質またはブードワ)
酸化
【0037】
SOFCのカソードからアノードに輸送された酸素は、一酸化炭素と発熱反応をして(熱を放出して)、二酸化炭素を生成し、水素と発熱反応をして、水蒸気を生成する:
H2+1/2O2→H2O+熱
CO+1/2O2→CO2+熱
シフト反応
【0038】
水性ガスシフト反応もまた、水蒸気改質反応と同時に起こり、さらなる水素および二酸化炭素を生ずる:
H2O+CO→H2+CO2+熱(水性ガスシフト)
二次反応
CO+3H2→CH4+H2O+熱(メタン化)
C+2H2→CH4+熱(水素添加ガス化)
H2O+C+熱→1/2CH4+1/2CO2(ガス化)
燃料または原料に存在する他の要素または汚染物質(S、Cl、N、重金属/有害金属)に応じて、生成された合成ガスは、H2S、COS、HCl、NH3、HCN、ならびに金属およびアルカリ蒸気を含んでいてよい。また、ある一定の鉱物(Na、K、Ca、Mg、Si、Fe)は、十分な濃度で存在する場合、低融点化合物または共晶混合物を形成して、ひいては、凝集、クリンカ生成、内部の汚染および非流動化をもたらし得る。これらの場合には、添加物、例えば、カオリナイト、珪藻土、エマスライト(emathlite)、酸化マグネシウムなどをチャンバに連続的に添加して、鉱物を拘束し、良好な流動化特性を促進することができる。
【0039】
容器105およびそのチャンバ110のみが示されているが、システム100全体は、以下のうちの1つまたは複数をも含むことが構想される:燃料または原料の調製、取り扱いおよび給送サブシステム、熱回収および冷ガス浄化サブシステム、場合によるCO2捕捉サブシステム、場合によるガスタービンサブシステム、場合によるボトミング水蒸気循環サブシステムならびに場合による酸素供給サブシステム。
【0040】
天然ガスなどの燃料は、吸着剤床などを用いて浄化されて、硫黄および他の不純物を、存在する場合には除去することができる。原料は、バイオマスなどの固体であるとき、細断(25mm、すなわち1インチの最大寸法)および典型的にはプロセス煙道ガスを用いた乾燥(約10%湿分)によって必要に応じて調製される。給送サブシステムは、場合による圧縮器、ならびに燃料が天然ガスである場合には1個または複数個の燃料注入器、液体燃料の場合にはポンプおよび燃料注入器、ならびに固体原料用の貯蔵瓶、専用のプラグフィーダおよび注入オーガーを含み;上記オーガーは、固体原料を大気圧の瓶から低圧から中程度の圧力(1から15バールのゲージ)で作動するチャンバに移動させる。ガス化装置サブシステムは、2ステップのガス化プロセスを使用してよい。第1の段階は、先に記載した、内部および外部サイクロンを備える一体化されたガス化装置−SOFCユニットであり;第2の段階は、チャー変換器または炭素トリムセル(carbon trim cell)(CTC)と称され、下流に含まれて、微細なチャーをガス化して高い炭素変換を確保することができる。この変換器は、酸素または空気によるトリム流動化床として準化学量論形態で作動して、残りの炭素をガス化する。変換器からの生成物は、サイクロンを通過して、フライアッシュから離脱する。反応の固体生成物(大部分が無機材料)は、このサイクロン捕集体から排出され;原料が、KおよびP化合物を含有するとき、これら化合物は、この捕集体ストリームに向かう傾向にある。サイクロン捕集体からのアッシュは、冷却され、貯蔵庫に搬送されて廃棄される。第1の段階および第2の段階からの合成ガスは、一緒にブレンドされて、熱回収水蒸気発生器(HRSG)を含む浄化サブシステム、続いてベンチュリスクラバおよびガス冷却器に送られて、合成ガスから粒子状物を除去し、タールを捕捉し、過剰の水蒸気を濃縮する。タールは、収集され、専用の溶媒系システムによって分離され、炭素トリムセルに通されて、分解および改質する。浄化された合成ガスは、第2のHRSGにおいて焼かれ、煙道ガスは、原料乾燥器、次いで排気筒に通される。場合によるオンサイトの商業用VPSA酸素分離プラントは、産業用の純酸素をCTCに供給する。HRSGにおいて発生した高圧の過熱された水蒸気は、ボトミング水蒸気循環サブシステムに送られて電力を発生させる。あるいは、燃料が天然ガスまたは液体であるとき、ガス浄化トレーンからの合成ガスは、発電用の、ガスタービンが合わされた循環に送られてよい。ガス浄化ステップはまた、CO2の捕捉および隔離のための手段を含んでいてよい。したがって、システム全体が、全ての電力または熱と電力との組合せを分散型発電で発生するように構成され得る。
【0041】
離間した1または複数の組120a、120Bの間接加熱器要素122に属する間接加熱器管路122Aは、側壁128からチャンバ110内に突出している。かかる2組120a、120Bが示されているが、かかる1組のみ、または簡単にはいずれの特定の様式にも配置されていない複数のかかる間接加熱器要素も設けられていてよいことが理解される。いくつかの実施形態において、間接加熱要素122は、例えば、作り出される生成ガスの一部によって駆動される、パルス燃焼加熱器を含んでいてよい。他の実施形態において、間接加熱要素122は、電気加熱器を含んでいてよい。
【0042】
間接加熱器要素122は、流動化床操作の開始、およびさらには高密度流動床の温度の制御(「温度トリム」)を助ける。しかし、間接加熱器要素122は、チャンバ110の定常状態運転の間、熱を供給してガス化(例えば、炭素質材料から生成ガス)反応を継続させる役割を一般には有していない。
【0043】
図1の実施形態において、下方の第1の燃料電池モジュール130aは、改善されたチャー変換ゾーン114の直ぐ上に、また、下方の第1の組120aの間接加熱器要素122の下に設けられている。一方で、上方の第2の燃料電池モジュール13BAは、上方の第2の組120Bの間接加熱器要素122の直ぐ上に設けられている。原料150は、下方の第1の組120aの間接加熱器と上方の第2の組120Bの間接加熱器との間の乾燥および液化ゾーン116内に導入される。原料150は、流動化媒体と合わされて、燃料電池要素134に対して上方向に搬送される。燃料電池要素134は、原料から生成ガスを放出する水蒸気改質プロセスの間、高密度流動床ゾーン118を所望の温度に維持するように制御され得る。
【0044】
本発明によるシステムは、ある一定の効率を実現することができる。例えば、原料としてバイオマスを用いると、HHV基準で50%程度の正味のプラント電気効率が実現され得る。かかる効率は、従来の水蒸気系バイオマス発電の約2倍であり、当該分野における現在の状態に対して有意な向上である。天然ガスを用いると、HHV基準で75%程度の正味の電気効率を達成する可能性がある。これは、エネルギー利用、エネルギーセキュリティ、および気候変動の緩和について有意な意義を有する。
【0045】
本発明をある一定の実施形態を参照して説明したが、以下の特許請求の範囲の発明の精神または範囲から逸脱することなく、種々の改変および変更がなされ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料ガス化装置および発電システムであって、
長手軸を有するとともに炭素質材料を含む原料を収容して前記炭素質材料から生成ガスを生成するのに好適なガス化装置チャンバを画定する反応容器と、
前記ガス化装置チャンバ内に突出していて、発熱反応を行って、前記炭素質材料をガス化して前記生成ガスを生成させるのに十分な熱を、同時に電力を発生させながら、付与するように構成された複数の燃料電池要素と
を含むことを特徴とする炭素質材料ガス化装置および発電システム。
【請求項2】
各燃料電池要素は、外側アノード、内側カソード、および前記内側カソードと外側アノードとの間のセラミック電極を含む、長い管の形態であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の燃料電池要素の少なくともいくつかは、燃料電池モジュールに関連付けられており、
前記燃料電池モジュールは、
空気、O2および濃縮空気のうち1種または複数種が前記燃料電池要素に供給される酸化剤マニホールドと、
2もしくはO2および/または前記燃料電池要素によって消費されなかった他のガスの除去に備えるように構成された使用済み酸化剤プレナムと
を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
原料を前記ガス化装置チャンバ内の乾燥および液化ゾーン内に導入するように構成されている少なくとも1つの原料入口をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ガス化装置チャンバ内に突出している複数の間接加熱器管路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
間接加熱器管路の離間した第1の組および第2の組は、前記ガス化装置チャンバ内にその側壁から突出しており、
燃料電池要素の離間した第1の組および第2の組は、前記ガス化装置チャンバにおいてその側壁から突出しており、
前記間接加熱器管路の第1の組および第2の組は、前記反応容器の前記長手軸に沿って、前記燃料電池要素の第1の組および第2の組の間にあることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記間接加熱器管路の第1の組および第2の組の間に位置付けられている少なくとも1つの原料入口をさらに含み、前記少なくとも1つの原料入口が原料を前記ガス化装置チャンバ内の乾燥および液化ゾーン内に導入するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記間接加熱器管路の第1の組および第2の組は、前記反応容器の第1の壁から前記ガス化装置チャンバ内に突出しており、
前記燃料電池要素の第1の組および第2の組は、前記反応容器の第2の壁から前記ガス化装置チャンバ内に突出していて、前記第2の壁は前記第1の壁と対向しており、
前記間接加熱器管路の少なくともいくつかと前記燃料電池要素の少なくともいくつかとが、前記長手軸に沿って重なり合っていることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記反応容器は、矩形の断面を有することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
電力をも発生させながら炭素質材料を生成ガスに変換する方法であって、
一体化されたシステムであって、
長手軸を有するとともに炭素質材料を含む原料を収容して前記炭素質材料から生成ガスを生成するのに好適なガス化装置チャンバを画定する反応容器、および
前記ガス化装置チャンバ内に突出する複数の燃料電池要素であって、発熱反応を行って前記炭素質材料をガス化して生成ガスを生成させるのに十分な熱を与えるように構成された、複数の燃料電池要素
を含むシステムを用意するステップと
流動化媒体を前記ガス化チャンバ内に導入するステップと、
炭素質材料を前記ガス化装置チャンバ内の乾燥および液化ゾーン内に導入するステップと、
前記燃料電池要素を操作して、前記炭素質材料をガス化して生成ガスを生成するのに十分な熱を、同時に発電させながら、作り出すステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記燃料電池要素を操作して前記炭素質材料をガス化するのに十分な熱を作り出す前に、間接加熱器を操作して、前記ガス化装置チャンバ内の流動化床を、前記炭素質材料をガス化するのに十分な温度にするステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−528925(P2012−528925A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514101(P2012−514101)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037127
【国際公開番号】WO2010/141629
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508318627)サーモケム リカバリー インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】