説明

一体式サセプタを有するセラミック発光管

【課題】セラミック発光管の様々なサイズに合わせて一連のサセプタを設計し、保守し、取り付ける手間を省くことである。
【解決手段】窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭素、タングステン、ニオブ、モリブデン、サーメットから選択される導電性材料から成る一体式サセプタ20を有する封止領域25を有しているセラミック発光管1により解決される。一体式サセプタには、ベルト構造、コイル構造、ベルトとコイルの組み合わせ構造があり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフリットシールを有するセラミック発光管と前記フリットシールを形成する方法とに関する。より詳細には、本発明はセラミック発光管の高周波(RF)シーリングに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック発光管を内蔵した高輝度放電(HID)ランプは周知である。この種のランプには、高圧ナトリウムランプと透明な多結晶(PCA)発光管を有するメタルハライドランプが含まれる。メタルハライドランプの場合、発光管は軸対称な本体から外側に延びる向き合った毛管を有している。各毛管は放電管内へのアーク放電に必要な電気エネルギーを供給する電極アセンブリを内蔵している。各毛管の端部領域はフリット材で電極アセンブリに気密封止されている。このような発光管の例は特許文献1及び特許文献2ならびに特許文献3及び特許文献4に記載されている。
【0003】
従来技術による方法の1つは毛管内に気密封止を形成するために高周波(RF)加熱を使用している。参考として本明細書に取り入れられている特許文献5には、RF誘導加熱によってセラミック発光管を封止する方法が記載されている。RF封止装置は一方の端部にRF誘導加熱器の取り付けられた再封止可能な圧力室を有している。RF誘導加熱器はRF電源、圧力室外に配置されたRF誘導コイル、ならびに、圧力室内に配置されたRFサセプタから構成されている。発光管の封止すべき端部は好適には中空の黒鉛円筒であるRFサセプタ内に保持されている。封止のあいだ、RFサセプタはRF誘導コイルからのエネルギーを吸収し、これによりサセプタは加熱される。すると、熱せられたサセプタから発する熱放射が毛管の端部に取り付けられたフリット材のリングを溶かし、溶融フリットが毛管の開放端に流れ込み、電極アセンブリに沿って流れる。RF電源を外すと、フリットは凝固し、気密封止を形成する。
【0004】
この方法は有効ではあるが、サセプタが装置の一部である場合、発光管の様々なサイズに合わせて一連のサセプタを設計し、保守し、取り付けなければならない。サセプタの材料としては黒鉛がよく使われる。というのも、黒鉛は機械加工に適しており、導電性であると同時に高い抵抗を有しており、不活性雰囲気中で高温(〜3000°C)に耐えることができるからである。しかしながら、黒鉛サセプタの寿命は限られており、また幾分脆弱であり、製造法に応じてその電気的特性が変化することがありうる。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第5,973,453号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第5,424,609号
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0 971 043 A2号
【特許文献4】ヨーロッパ特許第0 954 007号
【特許文献5】アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0117965号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、発光管の様々なサイズに合わせて一連のサセプタを設計し、保守し、取り付ける手間を省くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、導電性材料から成る一体式サセプタを有する封止領域を有していることを特徴とするセラミック発光管により解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
我々は、RFサセプタを封止装置の一部としてではなく、セラミック発光管の一体部分として形成しうることを発見した。本発明の有利な方法によれば、一体式サセプタはセラミック発光管の封止領域内の外表面に直接塗布される導電被膜から形成される。ここで使用される「封止領域」なる用語は一般に、少なくとも部分的に溶融した材料を用いて封止が形成される又は部材が接合される発光管の任意の領域を指す。これは、セラミック部材が相互に又は他の金属に又はサーメット部材に接合されている領域、ならびにセラミック発光管の開口部が雰囲気の進入を防ぐために及び/又は封じ込めの目的で封止されている領域を含む。通常、この後者のような封止は気密であることが望ましいが、本発明は気密封止の形成に限定されない。
【0008】
好適には、サセプタ材料はランプの寿命全体にわたって発光管に密着するように発光管材料の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を有しているべきである。また、サセプタ材料は不活性雰囲気中で高温(〜1900°C)での動作に耐えることができ、RF誘導コイルから印加されるRFエネルギーと良好に結合しなければならない。好適な実施形態では、一体式サセプタはフリット材を溶かし、電極アセンブリを発光管に気密封止するのに十分なRF加熱を可能にする。
【0009】
本発明の一体式サセプタでは、RFサセプタが封止炉内にある必要はない。というのも、サセプタはすでに封止すべき発光管の一部であるからである。その結果として、RF封止装置を単純化することができ、それより発光管の様々なタイプ間での変更に要する労力がより少なくなる。サセプタは従来の印刷技術によって塗布することができるため、サセプタを多くの発光管タイプに適合させることは容易である。さらに、RFコイルへのより良い結合を提供するため及び/又は異なる加熱速度を提供するためにサセプタの構造を変更することもできる。これにより、RF電力と封止に必要な時間とを少なくすることができる。特に、サセプタは封止領域の周りに固体のベルト又はコイルとして形成することができる。また、発光管の全体的な長さを減らすことも可能である。なせならば、封止の最中には発光管全体の加熱は僅かだからである。恐らくより重要なことに、一体式サセプタはフリットシールの長さをより正確に制御することができ、それにより所定の封止領域を越えたフリットの発光管内への進入を最小化することが分かった。
【実施例】
【0010】
本発明のより良い理解のために、本発明の他の別の対象、利点、及び性能とともに、以下の開示と、上記図面と組み合わせた添付した請求項とが参照される。
【0011】
好適な実施形態では、まず標準的なセラミック製造技術、例えば、セラミック粉末の射出成形、等方圧プレス、又は押出し成形を使用して、発光管又は発光管の部品が形成される。続いて、結合剤を除去し、高度の機械的安定性を付与するために、1つ又は複数の未焼結部品が空気中で予備焼成される。つぎに、一体式サセプタを形成する導電性物質から成る被膜が従来の多くのコーティング技術のうちの1つによって直接多孔質発光管に塗布される。このコーティング技術には、エアロゾル吹付、浸漬被覆、又は、ペンもしくは他のインク注出し手段を用いて被膜をインクとして塗布することが含まれる。エアロゾル吹付の場合には、導電性粉末がアルコール/アセトン/セルロースをベースとしたキャリアと混合され、発光管のマスクされていない部分に吹き付けられる。精細な線又はコイル形状を形成するためには、導電性粉末はアルコール/セルロースキャリアと混合され、インクディスペンサでペン先から基板に塗布される。一体式サセプタの透明性、粘着性、又は電気的特性を改善するために、導電性粉末を例えばアルミナなどの他の材料と混合することも可能である。導電性物質から成る被膜を塗布した後、予備焼成した発光管は、例えばN/8%Hの流動ガス雰囲気中で一時間にわたって1880°Cで焼結される。被膜中の導電性物質も同時にセラミック発光管に焼結される。択一的な方法では、導電性被膜は、発光管が完全に焼結した後に、例えばスパッタリング又はプラズマ蒸着法などの蒸着技術を用いて塗布される。
【0012】
前に述べたように、導電性のサセプタ材料は発光管材料の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を有し、不活性雰囲気中で高温(〜1900°C)での動作に耐えることができ、印加されるRFエネルギーと良好に結合しなければならない。好適な導電性材料は窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭素、タングステン、ニオブ、モリブデン、サーメット、又はこれらの化合物を含む。これら物質のうちの幾つかの特性は表1に列挙されている。より好適には、一体式サセプタは窒化チタン又はタングステン/アルミナサーメットから構成される。サセプタ被膜の厚さは約15μm〜約100μmの範囲である。例えば、タングステン/アルミナサーメットのストライプの好適な厚さは17〜37μmである。これは適切な電気的性能をもたらすと同時に、多結晶アルミナ(PCA)基板に適合した熱膨張をもたらす。PCA上のTiN被膜に関しては、2mmの距離にわたって0.9〜1.3Ωの表面抵抗を得るのに好適な厚さは20〜100μmである。
【0013】
【表1】

【0014】
図1は、本発明による一体式サセプタを有する封止されたセラミックメタルハライド発光管の断面図である。ここに示した発光管の基本的形状は一般に「バルジー(bulgy)」形と呼ばれている。バルジー形はアメリカ合衆国特許第5,424,609号及び第6,525,476号に記載されている直円筒形に比べてより均一な温度分布を提供するので好適である。しかしながら、セラミック発光管製造の当業者には理解されるように、本発明の一体式サセプタは他の形状及びタイプの発光管、特に例えば高圧ナトリウム発光管を封止するためにも使用することができる。
【0015】
発光管1は、同一に成形された2つのセラミック半対を未焼成の状態で接合することにより形成される2ピースデザインである。発光管の半対を接合する方法では概して、半対が対合する発光管の中央に表面的な継目5が残る。発光管のこの種の製造方法のより詳細な説明は、本明細書に参考として取り入れられたアメリカ合衆国特許第6,620,272号に記載されている。セラミック発光管材料は透明な多結晶アルミナ(PCA)であるが、他のセラミック材料を用いてもよい。発光管は放電室12を囲む軸対称な本体6を有している。向き合った2つの毛管2は中心軸に沿って本体6から外側へ延びている。この2ピースデザインでは、毛管は発光管本体と一体に成形されている。発光管の放電室12には、バッファガス、例えば、30〜300トルのXe又はArと、一般に水銀とハロゲン化金属塩との混合物であるハロゲン化金属添加物8、例えば、TlI、NaI、DyI、HoI、TmI、及び、CaIとが封入されている。
【0016】
電極アセンブリ14は各毛管2に挿入されている。電極アセンブリ14の一方の端部は発光管から突出し、電気的接続を形成している。電極アセンブリの先端は放電室の半球状凹端部17a,17bの中へ延びており、アーク放電のための付着点を提供するためにタングステンコイル3又は他の類似の手段が取り付けられている。電極アセンブリはフリット材9(好適には、Al−SiO−Dyフリット)により毛管に気密封止されている。一体式サセプタ20は封止領域25内の毛管2の外表面に配置されている。この第1の択一的実施形態では、一体式サセプタ20を毛管端部の周りにベルトを形成する均一な被膜として塗布した。ベルト構造は図2においてさらにはっきりと示されている。サセプタの端部は封止領域の縁部に大きな温度勾配を生じさせるので、一体式サセプタの長手方向の広がりは、溶融フリットの毛管への進入を制御することにより各封止の長さを決定するように作用する。
【0017】
封止作業の際に、フリット材のリング35は図3及び4に示されているように電極アセンブリの突出端に被せて配置される。毛管のこの端部は続いて圧力制御された不活性雰囲気のもとでRF誘導コイル内に挿入される。RF誘導コイルは一体式サセプタと良好に結合するRF周波数を用いて給電される。RFエネルギーはフリットリングが溶けるまで毛管端部を急速に加熱する。毛管現象と重力との組み合わせによって、溶融フリットは毛管端部内へ電極アセンブリに沿って引かれる。溶融フリットはサセプタ縁部における温度勾配に達すると凝固し、それによりフリットの進入長が固定される。そこでRF電源が切られ、封止が完了する。そのあと、ランプ添加物(Hg及びハロゲン化金属塩)が開放毛管を通して挿入され、第2の電極アセンブリとフリットリングが所定の位置に配置される。そして、発光管を完全に密封するために封止プロセスが繰り返される。
【0018】
サセプタの長さとフリットシールの長さとの間の線形の関係が図5に示されている。一体式サセプタの使用は、フリットシールのより精確な配置を可能にし、封止領域を越えたフリットの不所望な移動を最小化する。このことは、フリット材が発光管添加物中の腐食性ハロゲン化金属塩による腐食に弱いセラミックメタルハライドランプの場合に、特に重要である。
【0019】
図3は封止前のセラミック発光管の毛管の部分投影図を示している。フリット材のリング35は電極アセンブリ14の突出端に被せて配置されていることが示されている。第2の択一的実施形態によれば、一体式サセプタ30はコイル構造を有している。長手方向ストライプ37はコイル端部間の電気回路を完成させ、RF加熱を可能にする。長手方向ストライプをコイルの各巻きに接続させる必要はない。さらに、コイル構造の端部間の電気的接続を形成するにあたって、長手方向ストライプ以外の手段を用いてもよい。コイル構造は、毛管内へのフリットの流れ込みを封止の最中に監視できるようにする部分窓を形成するという付加的な利点を有している。
【0020】
図4も封止前のセラミック発光管の毛管の部分投影図を示している。一体式サセプタの第3の択一的実施形態が示されており、この実施形態では一体式サセプタはコイルとベルト構造との組み合わせである。特に、図3のコイル構造30が図1及び2のベルト構造20で覆われている。この組み合わせ構造は、コイル領域における勾配の低減に加えて、ベルト領域に非常に強い加熱を生じさせるために使用することができる。これは、セラミック基板に生じる熱応力、とりわけ、熱質量の大きなセラミック部品に生じる熱応力を減少させるのに役立つ。
【0021】
現時点で本発明の好適な実施形態と考えられる実施形態を示し、説明してきたが、当業者には添付した請求項により定義される本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更及び改善が為されうることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】毛管に一体式サセプタを有する本発明による封止されたセラミック発光管の断面図である。
【図2】図1の封止された発光管の正面図であり、一体式サセプタのベルト構造をさらに示す。
【図3】一体式サセプタがコイル構造を有している封止前のセラミック発光管の毛管の部分投影図である。
【図4】一体式サセプタがコイルとベルトを組み合わせた構造を有している封止前のセラミック発光管の毛管の部分投影図である。
【図5】サセプタの長さとフリットシールの長さとの間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料から成る一体式サセプタを有する封止領域を有していることを特徴とするセラミック発光管。
【請求項2】
前記一体式サセプタがベルト構造を有する、請求項1記載のセラミック発光管。
【請求項3】
前記一体式サセプタがコイル構造を有する、請求項1記載のセラミック発光管。
【請求項4】
前記一体式サセプタがベルトとコイルとの組み合わせ構造を有する、請求項1記載のセラミック発光管。
【請求項5】
前記一体式サセプタが少なくとも前記コイルの端部を接続する長手方向ストライプを有する、請求項3記載のセラミック発光管。
【請求項6】
前記導電性材料は窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭素、タングステン、ニオブ、モリブデン、サーメット、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載のセラミック発光管。
【請求項7】
前記一体式サセプタは発光管の外表面上の導電性材料の層から構成されている、請求項1記載のセラミック発光管。
【請求項8】
前記導電性材料の層はセラミック発光管の表面に焼結されている、請求項7記載のセラミック発光管。
【請求項9】
前記層の厚さは約15〜約100μmである、請求項7記載のセラミック発光管。
【請求項10】
前記導電性材料は窒化チタン、又はタングステンとアルミナとの混合物から選択される、請求項7記載のセラミック発光管。
【請求項11】
前記導電性材料は窒化チタンであり、前記層の厚さは20μm〜100μmである、請求項10記載のセラミック発光管。
【請求項12】
前記導電性材料はタングステンとアルミナとの混合物であり、前記層の厚さは17μm〜37μmである、請求項10記載のセラミック発光管。
【請求項13】
前記一体式サセプタの表面抵抗は2mmの距離にわたって0.9〜1.3Ωである、請求項11記載のセラミック発光管。
【請求項14】
前記導電材料はセラミック発光管の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を有している、請求項1記載のセラミック発光管。
【請求項15】
放電室を内蔵した軸対称な本体と、中心軸に沿って該本体から外側へ延びる2つの向かい合った毛管とを有しており、各毛管は電極アセンブリと封止領域を有しており、各封止領域は導電性材料の層から成る一体式サセプタを有している、ことを特徴とするセラミック発光管。
【請求項16】
前記一体式サセプタがベルト構造を有する、請求項15記載のセラミック発光管。
【請求項17】
前記一体式サセプタがコイル構造を有する、請求項15記載のセラミック発光管。
【請求項18】
前記一体式サセプタがベルトとコイルとの組み合わせ構造を有する、請求項15記載のセラミック発光管。
【請求項19】
(a)毛管を有するセラミック材料の発光管本体を形成するステップと、
(b)前記毛管の封止領域に一体式サセプタを形成するステップと、
(c)電極アセンブリを前記毛管内に挿入し、フリット材を前記封止領域に隣接して配置するステップと、
(d)前記一体式サセプタにRFエネルギーを印加して前記毛管と前記フリット材とを加熱し、それにより前記フリット材を溶かし、前記電極アセンブリに沿って前記毛管内へと流れ込ませるステップと、
(f)RFエネルギーを止めて前記フリット材を凝固させ、封止を形成するステップを有することを特徴とする、電極アセンブリをセラミック発光管内に封止する方法。
【請求項20】
前記一体式サセプタの長さが前記封止の長さを決定する、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−19293(P2006−19293A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190553(P2005−190553)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(596104131)オスラム−シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】