説明

一回通し式精米機

【課題】精白室に搗精網を出し入れする際に、抵抗装置を簡単に邪魔にならない位置にすることができる様にするとともに、精白室と抵抗装置との芯ずれが起きない様にする。
【解決手段】精白室内に着脱自在に挿着される搗精網13と、該搗精網13を固定している口金14と、該精白室の白米排出口に対向する抵抗装置20と、該白米排出口から排出される白米の流れを規制する出口受34と、を備えた一回通し式精米機において、前記抵抗装置は、固定板22に固定され、前記固定板22は、その上部側がスプリングヒンジ24を介して前記白米排出口の上部側の取付板に連結され、その下部側は、押しボタン26により前記白米排出口の下部側に固定され、前記口金14は、前記固定板22により固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、玄米の精白等に用いられる一回通し式精米機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一回通し式精米機には、精白室の白米排出口に対向して抵抗装置が設けられている。この抵抗装置は、白米排出口の穀粒の排出圧力を調整するものであり、きわめて重要な装置である。
【0003】
前記精白室内には、糠を除去するための搗精網が設けられているが、精米中に糠が発生すると、その一部が付着し固ってしまう。そうすると、除糠効果が低下するとともに、衛生的にも好ましくない。
【0004】
又、前記白米排出口の抵抗装置周辺は、熱を持った白糠が接触し、固着し易い。特に、外気温の低い冬季などには抵抗装置部分から白米排出口、出口受(シュート)の周辺には、結露現象が発生し、糠固着が激しくなる。そのため、抵抗装置の抵抗板の作動不良が発生し、むら搗きになったり、運転不良になったりする。
【0005】
上記事情により、前記精米機は、抵抗装置を外し定期的に搗精網や精白室内を清掃しなければならない。
そこで、この抵抗装置は、着脱し易い様に、複数のボルトにより精米機本体に固定されている(例えば、特許文献1、参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭56−172334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来例には、次の様な問題がある。
(1)前記抵抗装置は、ボルトで固定されているので、スパナなどの工具を用いて取り外さなければならない。ところが、厨房などの狭いスペースに置かれている精米機では、前記工具を操作するためのスペースを十分確保できないので、前記抵抗装置の取り外が困難となり、時間がかかる。
(2)取り外した抵抗装置を床面上に置いて保管することがあるので、衛生上好ましくない。
(3)清掃終了後、複数のボルトを締めて抵抗装置を元の状態に戻そうとした場合、該抵抗装置の中心軸と精白室の中心軸がずれてしまう(芯ずれ)ことがある。
(4)精米機の構造が、分解しなければ搗精網を取り出せない構造であったり、又は、該搗精網を固定する口金がボルにより精米機に固定されている。そのため、前記搗精網の着脱が困難であると共に、その作業時間も長くなってしまう。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑み、搗精網を簡単に着脱できる様にすることを目的とする。他の目的は、精白室と抵抗装置との芯ずれが起きない様にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、精白室内に着脱自在に挿着される搗精網と、該搗精網を固定している口金と、該精白室の白米排出口に対向する抵抗装置と、該白米排出口から排出される白米の流れを規制する出口受と、を備えた一回通し式精米機において、
前記抵抗装置は、固定板に固定され、前記固定板は、その上部側がヒンジ部材を介して前記白米排出口の上部側に連結され、その下部側は、ワンタッチ係脱手段により前記白米排出口の下部側に固定され、前記口金は、前記固定板により固定されることを特徴とする。
【0010】
この発明の前記ヒンジ部材は、前記抵抗装置を跳ね上げるスプリングヒンジであることを特徴とする。この発明の前記出口受は、前記固定板、又は、前記白米排出口に固定されていることを特徴とする。この発明の前記ワンタッチ係脱手段は、フックの係止を解除する押しボタンであることを特徴とする。この発明の前記押しボタンは、前記固定板の下部側に左右一対設けられていることを特徴とする。この発明の前記固定板は、門型に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上の様に構成したので、搗精網等を清掃する際には、前記ワンタッチ係脱手段により白米排出口の下部側と前記固定板の下部側の係合を解除し、該固定板を上方に回動させると、前記白米排出口は開放されるとともに、前記口金の固定も解除される。そのため、該口金を手で掴んで手前側に引っ張ると、前記搗精網を精白室から簡単に取り出すことができる。
この時、抵抗装置は、ヒンジ部材を介して精米機に吊り下がっているので、床等に置いて保管する場合に比べ、衛生的である。
【0012】
又、清掃が完了した後、前記搗精網を精白室に挿着し、前記抵抗装置を前記と逆回転させて元の位置に戻し、ワンタッチ係脱手段により固定する。この時、抵抗装置は、ヒンジ部材に規制されながら回転するため、確実に、元の位置にもどるので、白米排出口と抵抗装置の芯ずれが発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の第1実施の形態を図1〜図3により説明する。
一回通し式精米機1の筐体3には、玄米タンク5が設けられ、該玄米タンク5の下端部は、精白室7に連通している。前記精白室7には、ロール転子9が内蔵されており、該ロール転子9の基端はモータ11に連結されている。精白室7内には、白米と糠とを分離する搗精網13が設けられ、該搗精網米13の網目を通り抜けた糠は、糠箱15内に落下する。
前記搗精網13の先端部には、口金14が設けられているが、この口金14は、該搗精網機13を固定する門型の部材で、天井壁と一対の脚壁とを備えている。
【0014】
精白室7の白米排出口7aは、抵抗装置20の抵抗板38により閉鎖されている。この抵抗装置20は、固定板22に固定されているが、この固定板22は、門型に形成された板体であり、天井部と一対の脚部とを備えている。前記両脚部の間は、方形状の空間部20aとなっている。前記固定板22の上端部は、スプリングヒンジ24に連結されている。このスプリングヒンジ24は、ヒンジ部材の一例であり、精白室7の白米排出口7aの上部側の取付板に固定され、前記固定板22を跳ね上げる方向に付勢する。
【0015】
前記固定板22の両脚部の下部側には、空間部22aを挟む様にして押しボタン26が左右一対設けられている。このボタン26は、ワンタッチ係脱手段の一例であり、このボタン26を押すことによりフック28が引っ込み、前部取付板に設けた係止部30との係合が解除される。この係止部30は、前記白米排出口7aの下部側に、前記フック28に対応する位置に、左右一対設けられている
【0016】
前記固定板22には、抵抗装置20と出口受34が固定されている。前記抵抗装置20は、抵抗力(精白力)を調整する抵抗ハンドル36と、該抵抗ハンドル36の回転及び抵抗ばね37のばね力により摺動する抵抗板38と、を備えている。前記抵抗板38は、前記貫通穴20a及び白米排出口7aと対向している。
【0017】
次に、本実施の形態の作動について説明する。
搗精網13の取り出し(清掃時):
精米機は、図2に示す状態(白米排出口の閉鎖状態)になっている。この精米機のボタン26を押して、フック28を引っ込ませ、取付板の係止部30との係合を解除させる。
そうすると、スプリングヒンジ24は、固定板22を矢印A方向に跳ね上げるので、抵抗装置20は、図1、図2に示す状態(白米排出口の閉鎖状態)から図3に示す状態(白米排出口の開放状態)に変位する。
この時、抵抗装置20は、白米排出口7aの延長線上から上方の位置で、精米機1に吊るされた状態で支持されている。
【0018】
前記固定板22の回転に伴い、該固定板22は口金14から離れるため、口金14は、前記固定板22の規制から開放されるので、前記口金14に手を掛けて手前側に引っ張ると、搗精網13は摺動し、簡単に精白室7から外れる。
前記搗精網13を水洗いした後乾燥させるとともに、精白室7内も清掃する。
なお、抵抗装置20は、錆対策の施されていない場合には、水洗いすると錆が発生する恐れがあるので、布や圧縮空気を用いて掃除をする。
又、抵抗装置20は、精米機1に吊るされた状態となっているので、従来と異なり、床において保管する必要もないため、衛生的に作業をすることができる。
【0019】
搗精網の挿着(清掃完了後):
前記搗精網13の清掃作業終了後、該搗精網13を精白室7内に挿着する。その後、前記固定板22を前記スプリングヒンジ24のばね力に抗して前記と逆方向に回動させ、前記固定板22を前記口金14に強く押し付ける様にすると、フック28が引っ込みながら進行して取付板の係止部30に係合し、口金14を挟持固定する(図2参照)。
【0020】
この時、前記固定板22は、スプリングヒンジ24に規制されながら回転するので、前記抵抗装置20は、確実に元の位置に戻される。そのため、芯ずれが発生することが無い。
【0021】
この発明の第2実施の形態を図4、図5により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施の形態と前記第1実施の形態との相違点は、出口受34が、抵抗装置20と一体となっている代わりに、搗精網13と一体となっていることである。この実施の形態では、口金14を掴んで手前側に引くと、搗精網13が引き出されるとともに、出口受34も同時に引き出される。
【0022】
この発明の実施の形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、次のようにしても良い。
(1)ワンタッチ係脱手段として、押しボタンの代わりに、スライド式、摘み回転式ボタンなどを用いることができるが、この手段は、工具等を使用しなくても簡単に操作できるものであれば、上記に限定されるものではない。
【0023】
(2)ヒンジ部材として、スプリングヒンジの代わりに、一般のヒンジを用いてもよい。但し、一般のヒンジを用いる場合には、白米排出口の開放状態時には、該抵抗装置を人手、又は、ステー等などにより所定位置に維持する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図(白米排出口の閉鎖状態)である。
【図3】図2と異なる状態(白米排出口の開放状態)を示す要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施の形態を示す側面図である。
【図5】白米排出口の開放状態を示す要部拡大断面図で、図3に相当する図である。
【符号の説明】
【0025】
1 一回通し式精米機
7 精白室
13 搗精網米
14 口金
20 抵抗装置
22 固定板
24 スプリングヒンジ
26 押しボタン
34 出口受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精白室内に着脱自在に挿着される搗精網と、該搗精網を固定している口金と、該精白室の白米排出口に対向する抵抗装置と、該白米排出口から排出される白米の流れを規制する出口受と、を備えた一回通し式精米機において、
前記抵抗装置は、固定板に固定され、
前記固定板は、その上部側がヒンジ部材を介して前記白米排出口の上部側に連結され、その下部側は、ワンタッチ係脱手段により前記白米排出口の下部側に固定され、
前記口金は、前記固定板により固定されることを特徴とする一回通し式精米機。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は、前記抵抗装置を跳ね上げるスプリングヒンジであることを特徴とする請求項1記載の一回通し式精米機。
【請求項3】
前記出口受は、前記固定板、又は、前記白米排出口に固定されていることを特徴とする請求項1記載の一回通し式精米機。
【請求項4】
前記ワンタッチ係脱手段は、フックの係止を解除する押しボタンであることを特徴とする請求項1記載の一回通し式精米機。
【請求項5】
前記押しボタンは、前記固定板の下部側に左右一対設けられていることを特徴とする請求項1記載の一回通し式精米機。
【請求項6】
前記固定板は、門型に形成されていることを特徴とする請求項1記載の一回通し式精米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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