説明

一定少量の試料を均一に導入可能な試料導入チャンネルを具備した電気化学的バイオセンサ

試料導入チャンネルを有する電気化学的バイオセンサが開示され、少量の試料を均一かつ正確に導入し、かつ、作用電極の領域を調節するために絶縁体が使用されることにより、試料の正確な定量分析が保証される。試料入口に試料捕集バリアを設けることにより、バイオセンサに試料を高精度で導入して、再現性及び信頼性に優れた分析を行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体を用いて一定少量の試料を均一かつ正確に導入して作用電極の面積を正確に調節して分析物質の量を正確に測定することができる試料導入チャンネルを具備した電気化学的バイオセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、糖尿病の診断及び予防のために、血糖値を定期的に測定する必要性が増大している。現在、血糖測定は携帯式計測器を利用して個人がストリップ形態のバイオセンサを使用して手軽に監視することができる。
市販のバイオセンサの多くは、電気化学的技術を用いて血液試料から血糖量を測定している。その原理を下記のスキーム1に示す。
【0003】
スキーム1
グルコース+GOx−FAD→グルコン酸+GOx−FADH
GOx−FADH+Mox→GOx−FAD+Mred
前記スキーム1で、GOxは、グルコースオキシダーゼを示し、GOx−FAD及びGOx−FADHは、グルコースオキシダーゼの触媒作用に必要な補因子であるグルコースに関連するフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の酸化状態及び還元状態をそれぞれ示し、Mox及びMredは、それぞれ酸化状態、還元状態の電子移動メディエータを示す。
【0004】
前記電気化学的バイオセンサは、電子移動メディエータとして、フェロセン、フェロセン誘導体、キノン類、キノン誘導体、遷移金属含有有機及び無機物(ヘキサアミンルテニウム、オスミウム含有高分子、フェリシアン化カリウム等)、有機導電性塩、ビオロゲン等の電子伝達有機物等を使用する。
【0005】
前記バイオセンサでの血糖測定原理を下記に示す。
血中のグルコースは、グルコースオキシダーゼの触媒作用によって、グルコン酸に酸化される。ここで、グルコースオキシダーゼの補因子であるFADが還元されてFADHになる。還元された補因子であるFADHは、電子をメディエータに移動させ、FADHは、その酸化状態、すなわち、FADに酸化され、メディエータは還元される。還元状態の電子移動メディエータは、電極表面まで拡散する。一連の反応サイクルを、作用電極表面に印加されるアノード電位により駆動し、血糖値に比例する酸化還元電流を測定する。電気化学的バイオセンサは、従来の比色法によるバイオセンサとは異なり、酸素による影響を減らすことができ、試料が混濁していても試料の前処理が不要であり、広範囲の試料の使用が可能であるという利点を有する。
【0006】
従来の試料導入チャンネルの例としては、大きくi字形及びー字形構造に分類することができる。i字形構造の試料導入チャンネルは、毛細管を形成するために、一直線の試料導入通路の終り部分に穴が開いた構造を有している。しかし、このようなi字形構造の試料導入チャンネルは、試料導入通路を通じて導入した試料の粘度によってたびたび通路終り部分にある円形の穴を完全に満たすことができなかったり、あふれ出る現象が頻繁に発生して、導入する試料の量が変化し得るため、均一に導入することができないという問題がある。
【0007】
一字形構造の試料導入チャンネルは、センサの側面の一方から他方まで一直線の通路を形成した構造を有している。このようなー字形構造の試料導入チャンネルは、横側面から試料導入がなされるため試料導入が不便であり、試料導入時に乱流や渦流が起きて試料を均一に導入することができないという問題がある。
【0008】
このような問題を解決するために、試料を導入した後に入口が細くなる形態の試薬チャンバと疎水性領域をタイムゲート(time gate)によって制御して、試料の乱流や渦流を克服する方法(米国特許第6156270号)が提案された。しかし、前記の提示された方法は、バイオセンサの反応を誘導する試薬と試料間の混合が検出領域の前で起きるため、疎水性領域が広く波型に製造されて、1マイクロリットル程度の少量試料を扱うには相応しくなく、バイオセンサの試薬と試料間の混合及び検出反応が狭い領域のセル内で実施される場合に用いるには、相応しくない。
【0009】
一方、従来のバイオセンサの試料導入チャンネルは、両面テープやフィルムをラミネートさせて作用電極、補助電極または基準電極上に試料導入チャンネルを形成させて、試料導入チャンネルに酵素反応溶液を塗布する構造を有する。しかし、このように形成された試料導入チャンネルは、両面テープやラミネートされたフィルムの切断面に大きな影響を受けて、酵素溶液が不均一に塗布されたり、導入される試料の量が不正確で、測定誤差を発生させる短所を有する。
【0010】
そこで、本発明者等は、電気化学的バイオセンサにおいて、試料導入時に間違いなしに正確に試料が導入されて、バイオセンサの正確な測定値を提供して、製造が容易で大量生産することができるバイオセンサを研究中、前記電気化学的バイオセンサストリップの作用電極または作用電極と補助電極上に絶縁体パターンを中間層のラミネートされる毛細管パターンと適切に合わせて形成することで、試料導入の始まる部分が、不均一に反応部に導入されることを調節することができ、試料導入チャンネルで発生する乱流や渦流を効果的に制御することができ、測定の正確性を高めることができることを見い出して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、疎水性絶縁体を用いて一定少量の試料を均一及び正確に導入することができる試料導入チャンネルを具備したバイオセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明は、電子移動メディエータ及び酸化酵素を含む試薬層でコーティングされた作用電極及び補助電極が形成された下部基板と、試料導入チャンネル入口、試料導入通路部及び通気部を含む試料導入チャンネルのプレカットパターンを具備した中間基板と、前記試料導入チャンネルが外部に露出することを防止するための上部基板またはカバーが順次積層された構造を有する試料導入チャンネルとを含む電気化学的バイオセンサを含み、前記試料導入チャンネルが具備された中間基板と下部基板との間に提供される絶縁体によって形成される疎水性試料捕集バリアをさらに含む電気化学的バイオセンサを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による電気化学的バイオセンサにおいて、試料導入チャンネルの下部基板と中間基板との間に形成された絶縁体は、試料導入チャンネル入口に試料捕集バリアを形成することによって、血液試料の流れを均一に調節することができる。その絶縁体を、電極部を含む下部基板上に一定パターンでスクリーンプリントすることによって、製造が容易で反応する作用電極の面積を正確に調節することができる。このような試料導入チャンネルが具備された本発明によるバイオセンでは、試料を正確かつ精緻に導入することができ、再現性及び信頼性に優れかつ製造方法が簡単であるので、バイオセンサを大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による電気化学的バイオセンサの試料導入チャンネルを示す分解斜視図。
【図2】本発明の一実施形態による電気化学的バイオセンサの試料導入チャンネルを示す斜視図。
【図3】本発明の他の実施形態による電気化学的バイオセンサの試料導入チャンネルを示す分解斜視図。
【図4】本発明の更なる実施形態による電気化学的バイオセンサの試料導入チャンネルを示す分解斜視図。
【図5】本発明の一実施形態による試料導入チャンネルを具備した電気化学的バイオセンサの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。同一または類似する部品を指定するため、各図を通じて同一の参照番号を使用する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態によるバイオセンサ試料導入チャンネルを示したもので、図1は前記試料導入チャンネルの分解斜視図、図2は図1の分解された基板を結合した試料導入チャンネルの斜視図を示す。
【0016】
図1に示したように、本発明によるバイオセンサの試料導入チャンネルは、下部基板400、下部絶縁体500及び中間基板200を順に積層して形成され、これらは他の上部基板(またはカバー)300によって外部への露出が遮断された構造を有する。
本発明によるバイオセンサの試料導入チャンネル100は、大きく分けて試料導入チャンネル入口101、試料導入通路部102、及び通気部103で構成される。
【0017】
本明細書において、「試料導入チャンネル入口101」という用語は、試料と接触して前記試料をセンサ導入通路部に導入するための入口を意味し、「試料導入通路部102」という用語は、前記試料導入チャンネル入口で導入した試料を反応電極と反応させるためにセンサ内部に試料を導入するための通路を意味し、「通気部103」という用語は、空気が通過することができる通路を意味する。試料が試料導入チャンネル入口を通って試料導入通路部に流入する時、試料導入チャンネル内に存在する空気は通気部を通じて排出され、このような通気部103は毛細管現象による試料導入を可能にする。
【0018】
本発明によるバイオセンサにおいて、前記試料導入チャンネル入口101は、試料導入通路部102に向かってその幅が狭くなるテーパ状の斜線形態に形成された構造を有することが好ましいが、これは血液試料を集める役割をして、試料が前記試料導入チャンネル入口を通って試料導入通路部に流れる時に通路部方向にますます幅が狭くなるので、試料の乱流現象と渦現象なしに試料導入通路部に試料を導入させることができる。
【0019】
また、図1に示したように、中間基板200の試料入口に対応する位置において、絶縁体500に試料捕集バリア501が設けられている。
前記試料捕集バリア501は、試料導入チャンネル入口から試料導入通路部に血液試料が導入される時、有効な測定信号を発生させるのに十分な量の試料を作用電極が位置した試料導入通路部に均一に導入されるように血液試料を集める役割を果たし、図1に示したように下部絶縁体500を用いて形成することができる。このような役割を充分に遂行するために、前記試料捕集バリアは1〜10μmの高さを有することが好ましい。このような試料捕集バリアによって不均一な試料導入によって発生する不正確性を減らすことができ、正確な測定が可能になる。
【0020】
本発明によるバイオセンサにおいて、中間基板200に形成される試料導入通路部102及び通気部103は、交差形成された構造を有することが好ましい。
本明細書で、「交差形成されている」という用語は、試料導入通路部102と通気部103が一直線に配列されているのではなく、一点で交わる構造になっていることを意味する。
【0021】
前記試料導入通路部102と通気部103との幅の比は、試料の早い導入を可能にするために1/2以下、好ましくは1/5〜1/2の範囲であることが好ましい。1/2以下に調整することで、試料の量を減少させることができるだけでなく、試料が早い速度で通気部に移動することにより、試料の早い導入が可能になる。前記試料導入通路部102と通気部103とが成す角度(Φ)は、図1に示したように90゜であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、45〜135゜、好ましくは60〜120゜で、最も好ましくは75〜105゜の範囲内で適切に調節することができる。
【0022】
試料導入通路部102の全体体積は、0.1〜3.0μl、好ましくは0.1〜1.0μlで、最も好ましくは0.2〜0.7μlの範囲内で調節される。0.1μl未満の場合、試料の導入量があまりに少量であるため、センサの誤差範囲による影響を受けて正確な測定を保証することができないという問題点があり、3.0μlを超過する場合には過度な血液採取による問題点がある。本発明の具体的な例によると、0.2μlの試料量を用いても正確な測定が可能である。
【0023】
また、前記試料導入通路部と通気部とが交わる位置にボイドスペース104を形成することができる。前記ボイドスペース104は、試料導入通路部102と通気部103とが交わる位置に少しの余裕空間を提供することで、試料導入通路部102が交わる部位(または交差点部位)で発生し得るエアポケット現象を最小化する役割を果たす。試料導入通路部102が交わる部位(または交差点部位)は電極と接触する部分であり、ここでエアポケット現象が発生すると、正確な測定が不可能になるという問題点が発生し得る。前記ボイドスペース104の実施形態としては、図1に示したように、試料導入通路部の延長線上に形成することができるが、これに限定されるものではなく、例えば、試料導入通路部102及び通気部103の間の角度と同一角度を成して形成することもできる。
【0024】
本発明によるバイオセンサにおいて、図1に示したように、下部絶縁体500内に形成される試料導入通路部と通気部は、中間基板200内に形成される試料導入通路部及び通気部と一致する構造を有することが好ましい。
【0025】
前記疎水性下部絶縁体内に形成される試料導入通路部を中間基板内に形成される試料導入通路部と一致するように下部基板上にスクリーンプリントすることによって、既存の絶縁体なしに両面テープやラミネートされたフィルムによって形成された試料導入通路部を通じて露出した作用電極105に比べて、より一層面積を正確に調節することができる。また、酵素反応試薬の分注を下部基板に中間基板を付着させる前に行なうことができ、従来の酵素反応試薬が乾燥しながら両面テープやラミネートされたフィルムと願わない化学反応をして測定に不正確な影響を及ぼすことを防止することができ、試薬を作用電極上に均一に塗布することができ、正確な反応を誘導することができる。したがって、測定の正確度を高めることができる。
【0026】
前記構造の試料導入チャンネル100の作用原理を下記に説明する。まず、試料導入チャンネル入口101を試料と接触さると、毛細管現象によって試料が試料導入チャンネル入口101を経て試料導入通路部102に導入される。ここで、試料導入チャンネル入口101に具備された試料捕集バリア501によって試料が十分な量になるまで集められて十分な量になると、試料捕集バリアを越して試料導入通路部に導入される。試料導入通路部102をすべて満した試料は、通気部103に供給される。また、ボイドスペース104を追加で設置することで、試料導入通路部と通気部とが交差する部位でのエアポケット現象を防止することができるようになる。
【0027】
本発明によるバイオセンサの試料導入チャンネルにおいて、下部絶縁体500内に形成される試料導入チャンネルパターンは、中間基板200内に形成される試料導入通路部及び通気部の構造に限られず、多くの模様に変形することができる。
【0028】
また、本発明によるバイオセンサの試料導入チャンネルにおいて、前記絶縁体を用いて前記試料導入通路部に導入する血液試料の量を調節することができる。具体的には、下部絶縁体内に形成される試料導入チャンネル通路の長さを所望の長さに調節して前記血液試料の量を調節することができる。これは、空気は下部絶縁体の影響を受けないので通気部を通じて外に移動するが、血液試料は親水性であるため、疎水性である下部絶縁体に出会うと、毛細管現象による移動がそれ以上進行されないからである。しかし、このような場合、前記疎水性絶縁体を下部基板にのみ形成すると血液試料が疎水性絶縁体がない上部基板にそって通気部に移動してエアポケットを形成するなどの、望ましくない結果が起こり得るので、図3及び図4に示したように、中間基板の試料導入通路部上部に上部絶縁体600を具備することが好ましい。
【0029】
図3及び図4は、本発明の他の実施形態によるバイオセンサ試料導入チャンネルを示した分解斜視図である。具体的に、図3は電子移動メディエータ及び酸化酵素を固着した作用電極105が形成された下部基板400、試料捕集バリア501を形成して、所望する試料量を正確に満たすために通気口なしに試料導入通路部の形状を除いてスクリーンプリントした下部絶縁体500、試料導入通路部102と通気部103とがL字形に形成され、試料導入通路部102と通気部103とが交わる位置にボイドスペース104が形成され、試料導入通路部方向に段々その幅が細くなるテーパ形態の試料導入チャンネル入口101を具備した構造を有する試料導入チャンネル100を具備した中間基板200、、中間基板と下部絶縁体とからなる試料注入通路末端で試料が中間基板の通気部に移動することを防止するための上部絶縁体600、及び、前記試料導入チャンネルが外部に露出することを防止するための上部基板またはカバー300が順次積層された構造を有する。前記絶縁体を上部、下部の両方に具備する場合には、試料を通気部まで移動させなくても、所望する量の試料で正確に満たすことができるので、図4のように前記中間基板内にボイドスペースがない形態の試料導入チャンネルを具備することができる。
【0030】
前記構造を有する試料導入チャンネルは、多様な形態のバイオセンサに導入することができる。その例としては、作用電極、補助電極または基準電極が同じ基板上に形成された平面形バイオセンサ、または補助電極を上部基板に形成して作用電極と向かい合うように製作した対面型バイオセンサ、または前記平面形及び対面型がディファレンシャル型式で信号を処理するように具現したディファレンシャル式バイオセンサを挙げることができる。
【0031】
図5は、前記した構造の試料導入チャンネルを具備した平面形バイオセンサの好ましい事例を示した分解斜視図であり、前記平面形バイオセンでは、電子移動メディエータ及び酸化酵素が固着した作用電極105、基準電極106などの電極部が形成された下部基板400、試料捕集バリア501を形成して、所望する試料量を正確に満たすために通気口なしに試料導入通路部の形状を除いてスクリーンプリントした下部絶縁体500、試料導入通路部102と通気部103とをL字形に形成して、試料導入通路部102と通気部103とが交わる位置にボイドスペース104を形成して試料導入通路部方向に段々その幅が細くなるテーパ形態の試料導入チャンネル入口101を具備した構造を有する試料導入チャンネル100を具備した中間基板200、中間基板と下部絶縁体からなる試料注入通路末端で試料が中間基板の通気部に移動することを防止するための上部絶縁体600、及び、前記試料導入チャンネルが外部に露出することを防止するための上部基板(またはカバー)300が順次積層された構造を有する。ここで、試料導入チャンネル100の構造は、試料導入通路部と通気部とが交差形成されて、試料導入チャンネル入口が試料導入通路部に向かってその幅が狭くなるテーパ形態に形成された構造であることが好ましいが、その構造は前述のように変更することができる。下部絶縁層のパターン模様及び上部絶縁層の模様も、前述のように変更することができる。
【0032】
前記電気化学的バイオセンサを製造する方法を記述すると、下記のようになる。まず、下部基板400の上部に炭素または金属導体材質をストリップの長さ方向に対称形の電極(作用電極104及び補助電極105)を印刷または蒸着させる。このように構成された下部基板400上に反応する作用電極の一部分を残して一定パターンでスクリーンプリントして下部絶縁体600を蒸着させる。次に、露出した電極上に電子移動メディエータ及び酸化酵素を分散させて固着させる。以後、前記下部絶縁体が蒸着された下部基板に前記構造の試料導入チャンネル100を具備した中間基板200を数百マイクロメータ程度の高さで電極の電気的接続部位を除くすべての部分に接着させる。ここで、下部基板400と上部基板300との接着は、接着剤または両面テープを用いて容易に行なうことができる。次に、上部基板(またはカバー)300に上部絶縁体を印刷して接着剤または両面テープなどを用いて中間基板200の上部に圧着して組み立てることによって、本発明による電気化学的バイオセンサを製作することができる。
【0033】
前記バイオセンサの下部基板及び上部基板の材質としては、セラミックス、ガラス板または高分子材料を使用することができ、ポリエステル、ポリビニルクロライド及びポリカーボネートなどの有機高分子材料を使用することが好ましい。
前記バイオセンサの中間基板の材質としては、圧着または加熱圧着粘着剤が加えられた高分子材質を用いることができ、ポリエステル、ポリビニルクロライド及びポリカーボネートなどの有機高分子材料を用いることが好ましい。
【0034】
前記絶縁体の材質としては、ウレタン系列、ポリアクリレート系列などを用いることができる。
前記基準電極、作用電極及び補助電極の材料としては、導電性物質であれば特に制限されない。導電性物質の例としては、銀エポキシ、パラジウム、銅、金、白金、イリジウム、銀/塩化銀、炭素及び特定の酸化還元対またはその他添加剤が補強された変形された炭素などを挙げることができる。前記基準、補助及び作用電極は導電性物質を基板上にスクリーンプリント、物理的蒸着またはエッチングによって形成したり、導体テープの付着などによって形成することができる。
【0035】
前記構造を有する試料導入チャンネルが具備された電気化学的バイオセンでは、血液試料を毛細管現象で吸い込む時、試料導入チャンネル入口がテーパ状の斜線型に形成されて、試料導入チャンネル入口と試料導入通路部の間に絶縁体からなる試料捕集バリアが形成されて十分な量の血液試料を均一に導入することができ、電極部を含む下部基板上に一定パターンでスクリーンプリントすることによって製造が容易で大量生産するのに便利に用いることができ、反応する作用電極の面積を正確に調節することができて測定誤差が少なくて測定値の正確度、精密度、再現性及び信頼度が高い。また、試料注入通路部の所望する位置の上板及び下板のすべてに絶縁体をスクリーンプリントして、試料注入通路部の所望する長さまで正確に試料を満たすことができ、再現性及び信頼性を兼ね備えた試料の導入が可能である。
【0036】
作用電極に固定される電子移動メディエータの例としては、従来から広く使用されてきたフェロセン、フェロセン誘導体、キノン類、キノン誘導体、有機導電性塩、あるいはビオロゲンを使用できる。好ましくは、ヘキサアミンルテニウム(III)塩化物、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、ジメチルフェロセン(DMF)、フェリシニウム、フェロセンモノカルボン酸(FCOOH)、7,7,8,8,−テトラシアノキノ−ジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)、ニッケロセン(Nc)、N−メチルアシジニウム(NMA+)、テトラチアテトラセン(TTT)、N−メチルフェナジニウム(NMP+)、ヒドロキノン、3−ジメチルアミノベンゾ酸(MBTHDMAB)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン、2−メトキシ−4−アリルフェノール、4−アミノアンチピリン(AAP)、ジメチルアニリン、4−アミノアンチピレン、4−メトキシナフトール、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2−アジノ−ジ−[3−エチル−ベンズチアゾリンスルホネート]、o−ジアニジジン、o−トルイジン、2,4−ジクロロフェノール、4−アミノフェナゾン、ベンジジン、プルシアンブルーなどの酸化還元対を形成可能な混合電子価化合物を挙げることができる。最も好ましくは、ヘキサアミンルテニウム(III)塩化物である。何故なら、それは、水溶液の中で酸化還元状態が安定して可逆的で、pHに敏感ではなく、電子移動メディエータの形式電位が充分に低く(約−0.2〜0.2V)、アスコルビン酸、アセトアミノフェン及び尿酸などの各種の妨害物質による影響を最小化することができるという特性を有する。
【0037】
本発明は、血糖測定バイオセンサを実施例にして説明するが、グルコースの適用と同様に特定酵素を導入することで、多様な代謝物質、例えばコレステロール、ラクタート、ガラクトース、ケトン、クレアチニン、タンパク質、過酸化水素、アルコール、アミノ酸、酵素、例えば、GPT(glutamate pyruvate transaminase)、GOT(glutamate oxaloacetate transminase)などの生体試料と環境試料、農業・工業試料または食品試料中の多様な有機物または無機物濃度も同様な方法で定量することができる。したがって、本発明は、作用電極にコーティングする酵素の種類を変えることで多様な代謝物質の定量に用いることができることを理解しなければならない。例えば、コレステロール酸化酵素、ラクタート酸化酵素、グルタマート酸化酵素、過酸化水素酸化酵素及びアルコール酸化酵素などを使用してコレステロール、ラクタート、グルタマート、過酸化水素及びアルコールの定量を行なうことができる。
【0038】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するにすぎず、本発明が実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0039】
バイオセンサの製作
図5と同じ形態の作用電極と電気接続部を炭素ペーストでスクリーンプリントした後、140℃で5分間熱処理した。その後、電気接続部の端部に銀ペーストを中間基板電極の厚さになるようにスクリーンプリントして回路接続部を完成する。上部基板電極は、炭素ペーストで基準電極兼補助電極をスクリーンプリントして下部基板電極製作時と同じ条件で熱処理する。基準電極兼補助電極の端部は、銀ペーストで回路接続部を形成して対面型バイオセンサの上部基板電極を製作した。
【0040】
ポリエステル材質の両面テープに、図5に示された形状の試料導入チャンネル入口、試料導入通路部、通気部及びボイドスペースを含む中間基板をプレス金型で製作した。試料導入通路部と通気部の幅の比は4:1になるように調節した。このように形成された試料導入チャンネルの全体体積は、0.2μlになるように製作した。
【0041】
バイオセンサを完成するために電極が印刷された下部基板上に、図5に示された模様で試料捕集バリアがある絶縁体をスクリーンプリントによって蒸着させた。次に、露出した試料導入通路部の電極上に溶液の総体積を1mlとする時、ヘキサアミンルテニウム(III)塩化物0.015mg、分散剤(カルボキシメチルセルロース:CMC)0.015mg、界面活性剤(商品名:トリトンX−100)0.01mg及びグルコース酸化酵素40mgを混合した水溶液を滴下した後、45℃で30分間乾燥させた。酵素混合物が乾燥した後、中間基板を圧着して組み立てて、続いて中間基板の上面を上部基板電極で回路接続部がよく接続されるように圧着して対面型バイオセンサを製作した。
【0042】
比較例
試料捕集バリアがある絶縁体を蒸着しないことを除き、実施例の方法と同一な方法で対面型バイオセンサを製作した。
【0043】
実験例
試料注入口に試料捕集バリアが具備されたバイオセンサの分析精度についての効果
本発明によるバイオセンサの試料注入口に試料捕集バリアが具備されることによって示される測定時の精度を調べるために次のような実験を行なった。
【0044】
血液サンプル1〜3を使って一般総合病院で血糖測定時に使用される基準測定装置(YSI 2300 stat plus)を用いて血糖値(mg/dl)を測定し、これを標準値に設定した。以後、実施例と比較例で製作した対面型バイオセンサに前記血液サンプルを注入した後、血糖値を測定した。前記実験を5回繰り返して平均、変動係数、標準偏差などを計算して表1に示した。
【0045】
【表1】

表1に示したように、本発明による試料捕集バリアがあるバイオセンサ(実施例)を用いた場合、変動係数(CV:Coefficient of Variation)は0.8〜1.3、標準偏差(STDEV:Standard Deviation)は1.2〜3.9であり、試料捕集バリアがないバイオセンサ(比較例)を用いた場合(変動係数:2.5〜4.2、標準偏差:2.3〜17.0)より標準値との誤差が小さいことが分かる。これによって、試料捕集バリアを通じて測定の精度が向上したことを確認することができる。
【0046】
したがって、本発明によるバイオセンでは、試料注入口に試料捕集バリアを具備して試料を正確かつ精緻に導入することができ、再現性及び信頼性が優れている。
【符号の説明】
【0047】
100:試料導入チャンネル、101:試料導入チャンネル入口、102:試料導入通路部、103:通気部、104:ボイドスペース、105:作用電極、106:補助電極または基準電極、107:電極接続部、108:流動感知電極、200:中間基板、300:上部基板、400:下部基板、500:下部絶縁体、501:試料捕集バリア、600:上部絶縁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子移動メディエータ及び酸化酵素を含む試薬層でコーティングされた作用電極及び基準電極が形成された下部基板と、試料導入チャンネル入口、試料導入通路部及び通気部を含む試料導入チャンネルのプリカットパターンを具備した中間基板と、試料セル構造を形成する上部基板またはカバーとを有する電気化学的バイオセンサにおいて、
前記中間基板と下部基板との間に、絶縁体によって形成される疎水性試料捕集バリアを備えることを特徴とする電気化学的バイオセンサ。
【請求項2】
前記試料導入チャンネルは、試料導入通路部と通気部とが交差形成され、試料導入チャンネル入口が試料導入通路部に向かってその幅が狭くなる斜線形態に形成されたプリカットパターンを有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項3】
前記絶縁体が、試料導入チャンネル入口に一定高さの試料捕集バリアを提供して、反応電極の面積を調節するプリカットパターンを有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項4】
前記絶縁体のプリカットパターンが、中間基板内の試料導入チャンネル、試料導入通路部及び通気部の形態と一致するように、下部基板上にスクリーンプリントすることによって、作用電極の面積を調節するパターンで形成されることを特徴とする請求項3に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項5】
前記通気部部分に絶縁体がさらに形成される請求項4に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項6】
前記通気部部分に該当する上部基板と中間基板の間に、絶縁体をさらに含む請求項5に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項7】
前記試料導入通路部の所望の位置まで試料を導入させるため、前記試料導入通路部の長さを制限する部分において、下部基板と中間基板との間、及び、上部基板と中間基板との間にそれぞれの絶縁体を具備することを特徴とする請求項1に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項8】
前記絶縁体が、ウレタンまたはポリアクリレートから形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の電気化学的バイオセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−502259(P2011−502259A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531957(P2010−531957)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006313
【国際公開番号】WO2009/057917
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(504206469)アイ−センス インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】I−SENS,INC.