説明

一定方向へのみへプリントするシリアル型インクジェットプリンタ、もしくは、微小液滴配置装置

【課題】 インクジェットプリンタ装置、もしくは、微小液滴配置装置内でのシリアル往復運動に伴う空気の乱れを防止する。
【解決手段】 1個もしくは複数個のインクジェットヘッド、もしくは、微小液滴噴出部のシリアル往復運動を一定移動方向移動運動とする構成とする。さらに、前記インクジェットヘッドもしくは微小液滴噴出部と装置本体との間に存在する空気空間をダミーカバーにより埋めて削除する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンターやFAX等の画像データ出力機器に使用されるインクジェットプリント装置、もしくは、電極膜腐食液や、医薬品や遺伝情報解析液滴などを精緻に配置する装置に関するものである。その中でも、10PL以下の液滴を精密に配置する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、特にオンデマンドの形式のインクジェットプリンターは、1985年以降サーマルジェットプリンター通称バブルジェット(登録商標)方式プリンターやピエゾ方式プリンターが市場に安価に出回るようになって、その使用稼動数は急激に増加しつつある。
【0003】
一方そのインクジェットプリンターは、市場からの要望に答える形式で、より高速により精彩にプリントできるようになって来ている。特に、その中でもバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットプリントヘッドは、インクジェット吐出孔の大きさの極小化、インクジェット吐出孔の多数化が急激に加速されたことで、そのプリント能力の拡大は目にみはるものがある。昨今では、A4サイズの写真調の精斑な画像をわずか1分程度でプリントできるまでに到っている。
【0004】
今後もこの傾向はとどまるところも知らず、さらに加速されている。
【0005】
インクジェットプリンタは、シリアル運動として、インクジェットヘッドがプリントする紙などの媒体の上を往復移動しながら、プリントする構成となっている。
【0006】
ところで、このようにインクジェットプリンタにおいては、液滴のサイズが小さくなれば成るほど、シリアルプリントの往復移動によるプリンタ内部での空気の乱れにより、インクジェット液滴の飛翔方向が乱れて、指定された位置からずれる現象が発生している。これは、密閉された空間の中で、物体を往復運動させれば、その密閉された空間の内部で空気の移動の変化が乱れることからも自明である。また、実際に、インクジェットプリンタの内部に煙などの微小粒子を充満させて、インクジェットヘッドを往復運動させれば煙の流れが乱れることからも観測されている。また、当然ながら往復運動であるために、インクジェットヘッドを、一定速度で移動させるまでの加速時間や加速距離を必要としている。当然ながら、減速距離や減速時間をも必要としている。
【0007】
ところで、このような問題を解決する手段の一つとして、(1)日本国公開特許公報平成5-200997、同平成8-25619には、当該問題(プリンタ内の空気の乱れる)の観点からの解決の目的ではなく、記録媒体の厚みによる画質の悪化を防止、中間転写体の回転変動による画像欠損を防止する観点からインクジェットヘッドを移動させずに、ロール状の記録媒体を回転させる構成を技術紹介している。この技術の問題点は、インクジェットヘッドを固定しているために、インクジェットヘッドの幅は、記録媒体の幅の長さを必要とする。つまり、一般的なシリアルインクジェットプリンタの印字可能幅ではなく、その数倍も長いインクジェットヘッドが必要である。また、記録媒体を丸く円筒状に丸めて配置、固定する機構が必要となり、平面にしか配置されないような電極膜腐食液を受ける電極プレート板や基板や、医薬品や遺伝情報解析液滴を受けるガラス基板やプローブには使用できないという問題もある。
【0008】
また、(2)日本国公開特許公報平成7-246711には、複数のインクジェットヘッドを固定して配置し、記録媒体を順次連続して通過させてプリントする技術が図式的に紹介されている。しかしながら、この技術の問題点は、インクジェットヘッドを固定しているために、インクジェットヘッドの幅は、記録媒体の幅の長さを必要とする。つまり、一般的なシリアルインクジェットプリンタの印字可能幅ではなく、その数倍も長いインクジェットヘッドが必要である。また、このこの構成では記録媒体は一回しかプリントできず、シリアルプリンタのように、何度も繰り返しプリントすることが出来ない。それを行うためには、記録媒体をプリントした方向と逆に戻して、再度、プリントする必要が発生し、記録媒体を基本的には往復運動させることとなり、このために、空気の乱れが発生することとなる。
【特許文献1】特開平5-200997号公報
【特許文献2】特開平8-25619号公報
【特許文献3】特開平7-246711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、インクジェットヘッドを移動させながら、プリントするにも拘わらず、インクジェットプリントヘッドのプリント移動方向を一定として、インクジェットプリントヘッドによる往復運動による空気の乱れを防止する構成を実現することである。しかも、インクジェットプリントにおいては、一回のプリント(1パスプリント)ではなく、複数回、同じ個所をプリントする複数パス(一般的には、3パスや4パスが用いられるが)を、実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
シリアルインクジェットプリンタにおいて、インク液滴を吐出してプリント移動する方向が、一定方向であることを特徴とすることである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、インクジェットヘッドの移動に伴い移動する空気の流れ方向が一定で、従来のプリンタのように、複雑な流れとならないために、安定した画像のプリントが可能となる。また、さらに、本発明の別の実施例では、インクジェットヘッドとインクジェットヘッドの隙間空間をダミーカバーで抑えることで、空気の存在を防止しているので、空気の乱れ自体が発生しない構造となり、且つ、ダミーカバーもインクジェットヘッドと同一方向へ移動するために、さらに、空気の流れが安定したプリント環境を構築することが可能となる。回転型の一定方向のプリント方式であるので、複数の種類のインクジェットヘッドを搭載し、種々のインクをプリントしながら良好な画像プリント環境を構築することができる。
【0012】
インクジェット方式で、精密な電極回路パターンを作成する場合、サテライトという微細な液滴が発生するがこれが電極回路間の絶縁部分となる場所に付着した際は、マイグレーションなどの発生などで耐電圧不良となる。このような懸念点を回避する場合にも、本発明の遮断は用いれる。
【0013】
また、インクジェット方式で、遺伝子などの分析を行う薬品や溶液を付着処理もしくは配置する場合でも、上記のサテライトが予定の位置より離れた場所に付着し、遺伝子の分析、診断などが良好に行われない場合も解消することが出来る。
【0014】
また、さらに、インクジェットプリント、もしくはインクジェット方式を用いた種々の物質の配置装置内の空気の流れが常に一定であるので、前述した微小なサテライトが空気中に浮遊してミストとなった場合でも、ミストの浮遊空間位置や付着位置などがほぼ規定範囲に治まることとなるので、上記のミスト回収が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(具体的説明例‐1)
当問題を解決するために、本発明者等は、鋭意検討した結果、図1に示すようなインクジェットプリントの構成を見出した。その一例を用いて、本発明の主旨を具体的に説明する。インクジェットヘッド1は、搬送ガイドレール5に沿って一定プリント方向101に等速度運動をすることで、常に同じ方向に回転移動する構成となっている。また、記録媒体4は不図示の搬送ローラーにて逐次必要な距離をプリントする構成となっている。このために、インクジェットヘッド1は記録媒体4に連続的に色を変えて画像102をプリントすることが可能となる。記録媒体4に、記録プリントするに当たっては、水平方向への移動でないために、搬送ガイドレール5の円弧中心を原点とする回転座標系で画像をプリントする手法をとることで、任意の画像を得ることが可能となる。
【0016】
このようにすることで、インクジェットヘッド1は、従来の一般のインクジェットプリンターのように往復シリアルプリントを行うことは無いので,当該往復運動により、空気の大きな乱れを防止して、常に、一定方向に流れる安定した空気の中で、安定した画像プリントを行うことが可能となる仕組みである。
【0017】
また、図2には、さらに空気の安定的な流れを実現するために、中央の広い開放された空間に、遮蔽板7を配置して、さらに、空気の流れを安定させることが可能である。このようにすることで、空気の流れを常に、一定の方向へと安定したプリント環境を構築することが可能である。
【0018】
さらに、図3は、図1に、示す本発明の一例に掛かる例のインクジェットヘッド1の上に、当該インクジェットヘッド1と良好に勘合してプリント空間の隙間を埋めるインクジェットヘッドダミーカバー8を配置したものの概略斜視透視図である。当然ながら、当該インクジェットダミーカバー8はインクジェットヘッド1と同じ速度で回転運動するものである。図4は、図3をさらに判り易く説明するために、前記インクジェットヘッドダミーカバー8の一部を切断した場合の概略斜視図である。この二つの図より、インクジェットヘッドダミーカバー8により、インクジェットヘッド1が回転移動する経路上にある空気の隙間はほとんど完全に削除され、インクジェットヘッド1よりインクが噴出吐出される当該ヘッド1と記録媒体4との空間(以後紙間空間と称す。)のみが残されることとなる。このようにすれば、常に、当該紙間空間にある空気は、当該ヘッド1と同じ速度で一定方向に回転移動する安定した空間となる。このような安定した空間の中で、インクジェットプリントを行うことで、0.5PL程度の極微小液滴のインクジェットプリントに関しても、図3、4に示す様なインクジェットヘッドダミーカバー8を配置することで、さらに、安定した空気の流れを構築可能とすることで、良好なインクジェットプリントが可能となる。 また、さらに、その空間の遮蔽密閉度を向上させようとすれのであれば、図3に示すインクジェットヘッドダミーカバー8の内側面84、および、外側面85に、可能な限り接触しない隙間を持って配置される遮蔽板7を配置することで、さらに、密閉度の高い空間を配置することが可能となる構成とすることが出来る。
【0019】
特に、インクジェット方式で、精密な電極回路パターンを作成する場合、サテライトという微細な液滴が発生するがこれが電極回路間の絶縁部分となる場所に付着した際は、マイグレーションなどの発生などで耐電圧不良となる。また、高周波数の電気回路となると、このような異常点が異常ノイズ発信や異常共振の原因の懸念点となる。このような懸念点を回避する場合にも、本発明の手段は用いることが可能で対応できる。また、インクジェットの主滴が微妙に位置ズレを起こして、電極回路の隙間の絶縁の耐電圧の低下を防止したりすることも可能となる。
【0020】
また、インクジェット方式で、遺伝子などの分析を行う薬品や溶液、あるいは種々の酵素やたんぱく質を付着処理もしくは配置する場合でも、上記のサテライトが予定の位置より離れた場所に付着し、遺伝子の分析、診断などが良好に行われない場合も解消することが出来る。
【0021】
また、さらに、プリント装置内の空気の流れが常に一定であるので、前述した微小なサテライトが空気中に浮遊してミストとなった場合でも、ミストの浮遊空間位置や付着位置などがほぼ規定範囲に治まることとなるので、上記のミスト回収が容易となる。
【0022】
(具体的説明例‐2)
図5に本発明の一例に掛かる別の事例の一例を示す。この例においては、インクジェットプリントを行う部分は、搬送ガイドレール5,6に従い紙面に対して横方向へ一定の速度で移動する場合のプリントをする構成であり、当該プリントを終えた後は、インクジェットヘッド1は可撓性搬送ガイドレール51,61に沿って移動することで、反対側の位置をインクジェットヘッド1Aのように移動プリントすることが可能な構成である。このようにすることで、インクジェットヘッド1は矢印101に示す方向へ一定の移動速度でプリント移動することが可能となる。
【0023】
インクジェットプリントヘッド1と相対するインクジェットプリントヘッド1Aの隙間が狭い場合は、相互に相対する運動に近い構成となるために、インクジェットヘッド1が引きずる空気が互いに衝突して、空気の乱れを発生させることとなる。
【0024】
図6はこのような問題を解消するために、遮蔽板7を図中に示すように配置して、相互の空気の衝突を回避して、空気の乱れを防止することが可能となる。
【0025】
図7は、インクジェットヘッド1を多数配置した場合の概略斜視図である。このように、インクジェットプリントヘッドを複数個配置することで、多種多様な画像を連続してプリント可能となる。
【0026】
特に、インクジェット方式で、精密な電極回路パターンを作成する場合、サテライトという微細な液滴が発生するがこれが電極回路間の絶縁部分となる場所に付着した際は、マイグレーションなどの発生などで耐電圧不良となる。このような懸念点を回避する場合にも、本発明の遮断は用いれる。
【0027】
また、インクジェット方式で、遺伝子などの分析を行う薬品や溶液を付着処理もしくは配置する場合でも、上記のサテライトが予定の位置より離れた場所に付着し、遺伝子の分析、診断などが良好に行われない場合も解消することが出来る。
【0028】
また、さらに、プリント装置内の空気の流れが常に一定であるので、前述した微小なサテライトが空気中に浮遊してミストとなった場合でも、ミストの浮遊空間位置や付着位置などがほぼ規定範囲に治まることとなるので、上記のミスト回収が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一例に掛かるインクジェットプリンタのインクジェットヘッドのプリンタ内における配置を示す斜視概略構成図である。
【図2】図1に遮蔽板を配置した場合の斜視概略構成図である。
【図3】図1に、示す本発明の一例に掛かる例のインクジェットヘッド1の上に、当該インクジェットヘッド1と良好に勘合してプリント空間の隙間を埋めるインクジェットヘッドダミーカバー8を配置したものの概略斜視透視図である。
【図4】図3をさらに判り易く説明するために、前記インクジェットヘッドダミーカバー8の一部を切断した場合の概略斜視図である。
【図5】本発明の一例に掛かる別の事例の一例を示す斜視概略構成図である。
【図6】図5の説明図に遮蔽板を配置した場合の斜視概略構成図である。
【図7】インクジェットヘッド1を多数配置した場合の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 インクジェットヘッド
2 インクタンク
3 色の異なるインクタンク
4 紙などの記録媒体
5、6 ヘッドガイドシャフト
7 遮蔽板
8 ヘッドダミーカバー
11 ガイドシャフト受け部
51,61 可撓性ヘッドガイドシャフト部
81、82,83 ヘッドダミーカバーのヘッド勘合隙間
84,85 ヘッドダミーカバー側面
101 ヘッド移動方向
102 画像印字部例
103 記録媒体移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルインクジェットプリンタにおいて、インク液滴を吐出してプリント移動する方向が、一定方向であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
一定方向へ移動しながらインクジェットプリントする場合、移動速度もしくは、移動加速度が、一定であることを特徴とする特許請求の範囲1項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタは、同じ方向へ移動する複数のインクジェットヘッドを有することを特徴とする特許請求の範囲第2項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドの搬送ガイドレールが、インクジェットプリントを行う位置では強固で変形しない部材で構成されており、インクジェットヘッドの方向を変える位置では変形可能な可撓性部材で構成されていることを特徴とする特許請求の範囲第3項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドへのデータ。
転送は、一時的に接続が断然される形態の有線接点もしくは、常時無線接点で行われることを特徴とする特許請求の範囲第4項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
インクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドの移動は、
各インクジェットヘッドが有する駆動手段によることを特徴とする特許請求の範囲第5項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インクジェットプリントヘッドには、プリントしないダミーの隙間充填ヘッドが配置されていて、インクジェットヘッドの一定方向運動による気流の変化の均一化を図る構成であることを特徴とする特許請求の範囲3項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記インクジェットプリントヘッドと、遮蔽板の隙間は極力狭く、外部より空気の進入、排出が困難な構成であることを特徴とする特許請求の範囲7項記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−55840(P2008−55840A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237749(P2006−237749)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】