説明

一枚切りカッター

【課題】試し切りをする必要がなくワンタッチで一定量の切込み深さに変更する事が可能な機能を持ち、不慣れな作業者でも容易に一定枚数切る事が可能なカッターを提供すること。
【解決手段】内部に底部よりはみ出るように刃が把持部に把持された直方体の内部本体と、内部本体を内部にスライド可能に収納し内部本体との間に弾性体を設け底部に刃が通過できる穴を有する直方体の外部本体と、外部本体の底部側面に穴部を有しスライド方向に垂直な方向に移動可能なホルダーとからなり、ホルダーは刃がはみ出る穴を有し、スライドした内部本体はホルダーにより停止され、ホルダーの停止部が階段状の段差として形成されたことを特徴とする一枚切りカッター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重なった用紙の一番上の一枚を切る一枚切りカッターにおいて深さ調節可能な機構に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞の切り抜きなどを目的として市販されている従来の一枚切りカッターは、カッターの刃先を0.1mmほど露出させたものであり、力の入れ具合や刃の傾きによって切込み深さが変ってしまう。そこで近年では切込み深さの可変機能を搭載したものや、切り込む際の力を保持する機能を搭載したものが考案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、用紙を一枚だけ切る必要があるのは新聞の切抜きなどだけではなく、包装紙を剥く時に包まれているもの(例えば商品や重なっている用紙など)を傷つけたくない場合にも必要とされている。印刷工場などの現場では、ワンプと呼ばれる包装紙を剥く際に、中の用紙まで傷つけてしまうと、印刷した際に商品にならないため廃棄せざるを得ず、相当のロスとなってしまう。市販されている一枚切りカッターは新聞の切り抜きなどの軽作業を主目的としており、給紙装置に用紙をセットした状態でワンプを剥く場面では不向きの為、工場の現場では極力傷つけないような独自の方法・器具を用いている。
【0004】
しかしながら、前記のような印刷工場の現場などで用いられている独自の方法・器具では個人の力加減によって切る枚数が変化する為、不慣れな作業者では一定枚数切ることは難しい。また上記のような切込み深さの可変機能を搭載した一枚切りカッターは数回の試し切りをする必要があり、厚紙・薄紙やコート紙・上質紙など何種類もの用紙を取り扱う印刷工場の現場では用紙が替わる度に試し切りを行うというのは担当者にとって大きな作業負荷である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−285997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来の技術の持つ問題点に鑑みてなされたものであり、具体的には、試し切りをする必要がなくワンタッチで一定量の切込み深さに変更する事が可能な機能を持ち、不慣れな作業者でも容易に一定枚数切る事が可能なカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、内部に底部よりはみ出るように刃が把持部に把持された直方体の内部本体と、内部本体を内部にスライド可能に収納し内部本体との間に弾性体を設け底部に刃が通過できる穴を有する直方体の外部本体と、外部本体の底部側面に穴部を有しスライド方向に垂直な方向に移動可能なホルダーとからなり、ホルダーは刃がはみ出る穴を有し、スライドした内部本体はホルダーにより停止され、ホルダーの停止部が階段状の段差として形成されたことを特徴とする一枚切りカッターである。
【0008】
請求項2の発明は、前記ホルダーの段差が0.05mm〜0.1mmであることを特徴とする請求項1に記載の一枚切りカッターである。
【0009】
請求項3の発明は、前記刃が円盤状であることを特徴とする請求項1に記載の一枚切りカッターである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、段差を持たせたホルダーを図6のようにスライドすることで切込み深さの変更をワンタッチで容易に行う事ができ、力加減に注意を払わなくても表層の一定枚数の用紙を切ることが可能となる。例えば印刷工場において巻取り用紙を給紙機にセットした状態でワンプを剥いた後に用紙の表層一枚だけを切るといった薄紙・厚紙など異なる用紙を続けて切る場合に、不慣れな作業者でも容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図2の本発明の一枚切りカッターのA−A線断面
【図2】本発明の一枚切りカッターの平面図
【図3】本発明の一枚切りカッターの側面図
【図4】ホルダーの平面図
【図5】ホルダーの側面図
【図6】ホルダーをスライドさせた際の切込み深さの様子を示す概念図
【図7】従来の形状のカッターを示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一例を示す断面図である。本発明による一枚切りカッターは、刃1を装着する本体(内側)3、切込み深さを変更するホルダー11、本体(内側)3を支えるバネ軸4及びバネ5、およびそれらを内包する本体(外側)2からなる。上記刃1の形状は、図1では円盤状である例を図示しているが、図7のような一般に市販されている細長く薄い鉄板状の物でも良い。また、刃1を円盤状にする場合は、把持部6に刃1が回転できるようにする機構をつけると、刃1にかかる負荷が分散され寿命が伸びる。また実際に一枚切りカッターを使用する際に滑らかに切る事ができるようになる。
【0013】
図4は上記ホルダー11の平面図であり、図5はホルダー11の側面図である。ホルダー11は中心線を堺にして段差ができており、その片側の面がもう一方の面と比べて0.05mm〜0.1mmの段差となるような形状をしている。また図3に示すスライド用穴23a、スライド用穴23bをホルダー11がスライドできるようにする為、ホルダー11は、バネ軸4を通す長穴(バネ軸移動用)12と刃1が当たらないようにする穴(刃移動用)13を有する。
【0014】
上記本体(内側)3の上部にグリップ状の持ち手7を備え、バネ軸4を入れるための長穴12と上記刃1を取り付けるための把持部6が形成されている。刃1を固定する把持部6の位置は、ホルダー11を段差の低い方に合わせて本体(内側)3を押し込み、用紙を切るようにした状態で、刃1が本体(外側)2の本体穴(下部)21から用紙1枚の厚さ分の長さ、例えば0.1mm飛び出るような位置にする。また、この本体(内側)3にはここでは図示されていないが、返しが形成されており本体(外側)2から外れないようになっている。
【0015】
上記本体(外側)2は上記本体(内側)3を内包かつ上下に移動可能なスペースを内部に有し、上部に本体(内側)3の持ち手7が出る為の本体穴(上部)22、下部に刃1が出る本体穴(下部)21、側面下部に上記ホルダー11を通す本体穴(側面)23aと23bが形成されている。ここでバネ軸4を有するように本体(外側)2を成型してもよい。
【0016】
上記構成の一枚切りカッターにおいて、例えば印刷工場において用紙のワンプを剥く時は、図6の(3)の状態のようにホルダー11を深く切るホルダーの厚みの部位にスライドさせ、その状態で本体(内側)3の上部の持ち手を持ってワンプに押し当てると刃1が飛び出し、そしてワンプ上を滑らせることでワンプには刃圧が加わり順次切断していく。この時、ホルダー11が本体(内側)3のストッパーとなることで、押す力加減に注意を払わなくとも一定の切込み深さを保持する事ができる。また図6の(2)のようにこのホルダー11をスライドさせることで、ワンタッチで切込み深さを変更する事が可能となり、ワンプとは異なった薄い紙でもすぐに一定の切込み深さを保持する事ができる。また図6の(1)は、本体(内側)3の上部の持ち手を放した状態であり、刃1が本体穴(下部)21の内側まで引っ込んだ状態である。
【0017】
以上、この発明を実施の形態に基づいて説明したが、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限り、どのようにでも実施する事ができる。例えば本体(外側)2の形状は任意であり、長方形にせず本体を安定させるような台形にしてもよい。
【0018】
図1では成人男性が握りやすい形状として本体(内側)3の上部をグリップ状にしているが、持ち手の形状は任意である。
【0019】
また、ホルダー11の段差は上記の実施形態では1つにしたが、2つ以上の段差をつけてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1・・・刃
2・・・本体(外側)
3・・・本体(内側)
4・・・バネ軸
5・・・バネ
6・・・把持部
7・・・持ち手
11・・・ホルダー
12・・・長穴(バネ軸移動用)
13・・・穴(刃移動用)
21・・・本体穴(下部)
22・・・本体穴(上部)
23a、23b・・・スライド用穴
70・・・刃(薄い鉄板状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に底部よりはみ出るように刃が把持部に把持された直方体の内部本体と、内部本体を内部にスライド可能に収納し内部本体との間に弾性体を設け底部に刃が通過できる穴を有する直方体の外部本体と、外部本体の底部側面に穴部を有しスライド方向に垂直な方向に移動可能なホルダーとからなり、ホルダーは刃がはみ出る穴を有し、スライドした内部本体はホルダーにより停止され、ホルダーの停止部が階段状の段差として形成されたことを特徴とする一枚切りカッター。
【請求項2】
前記ホルダーの段差が0.05mm〜0.1mmであることを特徴とする請求項1に記載の一枚切りカッター。
【請求項3】
前記刃が円盤状であることを特徴とする請求項1に記載の一枚切りカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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