説明

一液型歯科用接着性組成物

【課題】歯科用セラミックスまたは、無機化合物を含む有機質複合体、歯科用貴金属、歯科用非貴金属のいずれの材料に対しても優れた接着性を発現させることができ、さらに、保存安定性に優れた一液型の歯科用接着性組成物の提供。
【解決手段】成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体およびその他成分を含有してなることを特徴とする一液型の歯科用接着性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用セラミックスまたは、無機化合物を含む有機質複合体(以下複合材料と呼ぶ場合がある。)、歯科用貴金属、歯科用非貴金属のいずれの材料に対しても優れた接着性を発現させることができ、さらに、保存安定性に優れた一液型の歯科用接着性組成物である。
【背景技術】
【0002】
歯科用修復材料には、無機材料や無機有機複合材料のコンポジットが用いられていることが多い。代表的なものに、歯科用陶材(二酸化珪素が主成分)、アルミナコア、ジルコニアコア、コンポジットなどがある。コンポジットとは無機粉末を樹脂と混合してペースト状にしたものである。また、金属材料なども用いられている。
【0003】
従来はこれらの接着において、シランカップリング剤を用いて表面の接着の向上を試みたものと、酸性モノマー用いて表面の接着の向上を試みたものとがあった。シランカップリング剤は二酸化珪素が主成分とする材料に対して接着性を向上させ、酸性モノマーはアルミナやジルコニアを主成分とする材料に対して接着性を向上さることが知られている。
【0004】
また、歯科用金属のうち、非貴金属合金は、ニッケル、クロム、銅、チタン等を主成分とする。特公昭60−42222号公報には、非貴金属接着性を解決するために4−アクリロキシルエチルトリメリット酸エステルおよびその酸無水物や、ホスホン酸エステル誘導体を用いることが提案されているが、貴金属の接着性が十分でない。また、歯科用金属のうち、貴金属合金は金、白金、パラジウム、銀等を主成分とする。従来、これらの金属を接着させる際には、予め表面を錫メッキまたは酸化処理するのが一般的であったが、非常に煩雑で、かつ十分な接着力が得られなかった。
【0005】
また、特公平5−67146号公報には、接着剤を塗布する前に、貴金属被着表面にトリアジンチオール基を有する(メタ)アクリル酸エステルと揮発性溶剤からなる組成物を塗布することにより、同様に貴金属合金に対する接着力を向上できることが報告されているが、非貴金属合金に対する接着強さは不十分であった。
【0006】
特開平7−258248号公報には、貴金属接着性を解決するためにジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体を使用することが提案されている。すなわち、ジスルフィド環式基含有化合物は貴金属に対し高い接着力を有しており、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体と有機溶剤とを含む接着性組成物は、貴金属合金に対する有機材料の接着性を向上させるのに有望な技術であった。しかしながら、口腔内の厳しい環境に耐える接着性は有しておらず、非貴金属合金に対する接着強さも不十分であった。
【0007】
さらに、特開平9−67546号公報には、これらの含イオウトリアジン環化合物の貴金属接着性を増強させるために、酸性化合物を配合した組成物が提案されているが、これらの組成物は非貴金属および貴金属合金に対する有機材料の接着性を向上させるに有望な技術ではあるが、耐水性が依然として不十分であった。また、一部破損した歯科材料を修復する場合、使用している金属の材質が分からないことが多いが、このような場合に、表面処理剤(プライマー)の種類を誤ると充分な接着力が得られないことがある。例えば、貴金属合金に非貴金属用表面処理剤(プライマー)を使用した場合、あるいは非貴金属合金に貴金属用表面処理剤(プライマー)を使用した場合には、十分な接着性が得られない。
【0008】
しかし、前記したように歯科用修復材料にはシリカ系、アルミナ系、ジルコニア系、金属系などの材料が使われていることから、被着体に合わせて、接着材を選定し、塗布する必要があった。
【0009】
近年、これらの問題を解決するために、シランカップリング剤と酸性モノマーの両方が配合された接着材が販売されている。しかし、通常シランカップリング剤と酸性モノマーを同一溶媒に長期保存することができない為に、2種類の材料を使用直前に混合して使用しなければならなかった。
【0010】
被着体の種類に関係なく用いる事ができ、さらに使用前に混合などの手間が必要ない材料が求められていた。
【0011】
特開昭63−51308号公報および、特開平7−277913号公報において、シランカップリング剤とリン酸エステルモノマーを組み合わせることによって二酸化珪素を含む歯科用陶材と、歯科用レジン、歯科用合金等の歯科修復用材料との接着を行なうための歯科用接着性組成物が開示されている。
しかし、シランカップリング剤と酸性モノマーの共存が難しく、使用前に混合しなければならなかった。
【0012】
また、特開平9−137129号公報において、シランカップリング剤と有機カルボン酸等の酸性化合物とを含有する塗布液と、該塗布液の塗布面に塗設されて重合触媒の存在下に重合する重合性モノマーからなる塗布材による歯科用接着性組成物が開示されているが、この歯科用接着性組成物において酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムに対する接着性がほとんど無い為、被着体を選ばなければならなかった。
【0013】
特開2006−45179号公報には、無機化合物または無機化合物を含む有機質複合体からなる歯科用材料を接着するための歯科用接着性組成物が開示されているが、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムに対して接着性を有する歯科用接着性組成物が提案されている。
【0014】
しかし、ホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体によりシランカップリング剤が劣化し、長期間安定して接着効果を発現することが困難である。シランカップリング剤と酸性モノマーの共存が難しく、使用前に混合しなければならなかった。
【0015】
特開2006−45094号公報には、歯科用複合材料の硬化体と、歯科用材料とを接着するに際して、該接着材料の適用に先立ち、歯科用複合材料の硬化体からなる補綴物の被着面を前処理し接着性を向上させるための二液混合型プライマー組成物について記載されている。しかし、この接着材は陶材に対する接着性は無く、接着前に2液を混合しなければならないプライマー組成である。
【0016】
特開2000−248201号公報では、卑金属合金、貴金属合金、およびセラミックスのいずれに対しても充分な接着性を発現させる組成物について開示されているが、シランカップリング剤と酸性基含有重合性単量体とを一液型組成物として使用したときに、一液型組成物の貯蔵安定性に関して重大な欠陥が生じていた。
【0017】
特開2002−265312号公報では、歯質、卑金属合金、貴金属合金、およびセラミックスのいずれに対しても充分な接着性を発現させる組成物について技術開示されているが、シランカップリング剤と酸性基含有重合性単量体とを一液型組成物として使用したときに、一液型組成物の貯蔵安定性に関して重大な欠陥が生じていた。
【0018】
【特許文献1】特開昭63−51308号公報
【特許文献2】特開平7−277913号公報
【特許文献3】特開平9−137129号公報
【特許文献4】特開2006−45179号公報
【特許文献5】特開2006−45094号公報
【特許文献6】特開2000−248201号公報
【特許文献7】特開2002−265312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、歯科用セラミックスおよび無機化合物を含む有機質複合体、歯科用貴金属、歯科用非貴金属いずれの材料に対しても優れた接着性を発現させることである。とりわけ、シリカ系、アルミナ系、ジルコニア系、金属系などの材料を選ぶことなく、1液で接着力が向上する材料が求められていた。
さらに、本発明の目的は、作業時間の短縮、テクニカルエラーの軽減等、使用者からの要望の多数を占める操作性の良好な歯科用接着性組成物を提供することであり、つまり、一液型の歯科用接着性組成物を提供することにある。
【0020】
本発明において、歯科用接着性組成物として、歯科用プライマー、歯科用接着材、歯科用接着性修復材料が代表される。
本発明の歯科用接着性組成物は、特に、シランカップリング剤および、酸性基含有重合性単量体、硫黄原子含有重合性単量体が同じ溶液中に共存するように調製された一液型歯科用接着性組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(c)揮発性有機溶媒、および成分(d)硫黄原子含有重合性単量体を含有する組成物であって、ここに、成分(a)の含有量は、前記組成物全体に対して1〜60重量部であり、成分(b)の含有量は、成分(a)100重量部に対して1.0〜20.0重量部であることを特徴とする、一液型の歯科用プライマーを提供する。
【0022】
本発明による一液型の歯科用プライマーは、特に、成分(b)酸性基含有重合性単量体が、下記一般式[1]:
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15のアルキレン基を示す。]で表わされるホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体であって、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体が、一般式[2]:
【化2】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキレン基を示し、nは0〜15の整数を示す。]で表わされるジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体であることを特徴とする。
【0023】
本発明は、成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体、成分(e)ラジカル重合性単量体および成分(f)光重合開始剤を含有し、ここに、成分(b)の含有量が、成分(a)100重量部に対して1.0〜20.0重量部であることを特徴とする、一液型の歯科用接着材も提供する。
【0024】
本発明による一液型歯科用接着材は、特に、成分(b)酸性基含有重合性単量体が、下記一般式[1]:
【化3】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15のアルキレン基を示す。]で表わされるホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体であって、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体が、一般式[2]:
【化4】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキレン基を示し、nは0〜15の整数を示す。]で表わされるジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体であることを特徴とする。
【0025】
さらに、本発明は、成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(e)ラジカル重合性単量体、成分(f)光重合開始剤および成分(g)充填材を含有し、ここに、成分(b)の含有量が成分(a)100重量部に対して1.0〜20.0重量部であることを特徴とする、一液型の歯科用接着性修復材料も提供する。
【0026】
このような構成を採用することにより、歯科用セラミックスまたは、無機化合物を含む有機質複合体、歯科用貴金属、歯科用非貴金属のそれぞれに対して従来見られない優れた接着性とその耐久性をもたらし、操作性も簡便で、かつ保存安定性に優れることを特徴とする。
【0027】
本発明において、成分(a)シランカップリング剤としては、下記一般式[3]:
【化5】

[式中、Rは(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも1個有する有機残基を表わし、Rは水酸基、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表わし、RおよびRはそれぞれ水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。]で表されることを特徴とする。
【0028】
好ましい成分(a)シランカップリング剤としては、上記一般式[3]において、Rが(メタ)アクリロイル基、ビニル基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも1個有する有機残基を有し、Rが水酸基、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、RおよびRが、それぞれ、水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を有する化合物である。
【0029】
また、成分(b)酸性基含有重合性単量体としては、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、6−(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロキシデシルハイドロジェンホスフェートなどであることを特徴とする。
【0030】
また、成分(c)揮発性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、イソプロピルエーテル、さらに(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル等のラジカル重合可能なモノマーなどであることを特徴とする。
【0031】
また、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体としては、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の歯科用接着性組成物を使用することにより、歯科用セラミックスまたは、無機化合物を含む有機質複合体、歯科用貴金属、歯科用非貴金属のいずれの材料に対しても優れた接着性と耐久性を発現させることができ、さらに、保存安定性に優れており、操作が簡便である。特に、シリカ系、アルミナ系、ジルコニア系の歯科材料や貴金属、無機有機複合材料の接着に優れている。
【0033】
本発明の歯科用接着性組成物の具体的用途としては、歯科修復物・歯科修復材・歯科装置のいずれかの相互間の接着において、歯科修復物・歯科修復材・歯科装置のいずれかが、二酸化珪素を主成分とした歯科用セラミックスまたは、二酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムを主成分とした歯科用セラミックス、セラミックスまたは無機物フィラーを含むレジン系材料、貴金属材料、非貴金属材料で作製した歯科修復物である時にレジン系材料との接着に用いる。
歯科用接着性修復材料は歯科修復材料そのものに本発明の技術を用いて接着性を持たせたものである。具体的には前装冠用や破折修復用などの接着性コンポジットレジンである。
【0034】
しかし、本発明の歯科用接着性組成物を使用することによって、歯科医も簡便に被着体を選ぶことなく、接着作業を実施することができる。さらに、本発明は、歯科用接着性組成物に関するものであり、その操作方法も、現在まで使用されてきた種々の接着性組成物と全く同様である。つまり、本質的に全く新しい機能を有する接着性組成物であるにもかかわらず、使用方法が同一であることから、使用者である歯科医師に受け入れられやすく歯科医療全体に対して有益な発明である。
【0035】
本発明における歯科用接着性組成物は一液型接着性組成物であるために、操作が簡便である。従来、二液混合型の商品形態であるために使用時に混合操作が必要であり操作が煩雑であり、作業時間において損失であり、さらに、二液の適切な混合比率を確保し、十分な混合操作がなされているかどうか不明な点も多く、テクニカルエラーを生じやすいため、損失である。
【0036】
本発明はプライマーとして用いることもできるものであり、他の接着材と同時に使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の歯科用接着性組成物における具体的な実施の形態例は、歯科用セラミックスまたは、無機化合物を含む有機質複合体、歯科用貴金属、歯科用非貴金属用の一液型の歯科用プライマー、歯科用接着材、歯科用接着性修復材料である。接着性コンポジットレジンは、歯科用接着性修復材料に含まれ、レジンセメントは歯科用接着材に含まれる。
【0038】
特に、歯科用セラミックスまたは、無機化合物を含む有機質複合体、歯科用貴金属、歯科用非貴金属の一液型の歯科用プライマーとしての使用において、きわめて簡単な処理で高い接着性を発現させることができる。
本発明の歯科用接着性組成物は、その態様として歯科用接着剤である歯科用のボンディング剤、歯列矯正用接着材、レジンセメント、デユアルキュアー型レジンセメントへの使用が優れている。また、歯科用接着性修復材料への応用としてはオペーク剤、コンポマー、レジンコア、接着性コンポジットレジン前装冠材料等に使用できる。
【0039】
本発明において用いられる成分(a)シランカップリング剤としては、セラミック材料に対する良好な接着を得るために歯科用接着性組成物および被着体材料中の重合性単量体成分と共重合あるいは化学結合の形成が可能な官能基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0040】
本発明では、この条件を満たすシランカップリング剤として、上記一般式[3]で表わされるシラン化合物が用いられる。Rが有する上記の官能基のうち、(メタ)アクリロイル基およびビニル基、スチリル基は(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの共重合により、メルカプト基は連鎖移動・停止反応に由来する化学結合の形成により、エポキシ基はこれと反応が可能なアミノ基、カルボキシル基などを有するモノマーと化学結合を形成することにより、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合体に連結される。シランカップリング剤と被着体表面のシラノール基の縮合を迅速ならしめるには、R、RおよびRはそれぞれ炭素数1〜5の低級アルコキシ基か水酸基であることが好ましい。ただしRについては炭素数1〜5のアルキル基であってもよい。上記の条件を満足するシランカップリング剤の具体例としては、下記のものが例示される。
【0041】
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
【化6】

【0042】
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【化7】

【0043】
3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン
【化8】

【0044】
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
【化9】

【0045】
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【化10】

【0046】
ビニルトリメトキシシラン
【化11】

【0047】
ビニルトリエトキシシラン
【化12】

【0048】
p−スチリルトリメトキシシラン
【化13】

【0049】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
【化14】

【0050】
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
【化15】

【0051】
2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【化16】

【0052】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【化17】

【0053】
3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
【化18】

【0054】
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
【化19】

【0055】
好ましい成分(a)シランカップリング剤としては、上記一般式[3]において、Rを(メタ)アクリロイル基、ビニル基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも1個有する有機残基を有し、Rは水酸基、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、RおよびRはそれぞれ水酸基または炭素数1〜5のアルコキシ基を有する化合物である。
【0056】
特に好ましい成分(a)シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0057】
成分(a)シランカップリング剤の配合割合は、当該組成物の使用目的により適宜用いてもよいが、組成物全体に対して、1〜60重量部の範囲で調製され、好ましくは5.0〜50重量部の範囲で調製される。
【0058】
本発明における成分(b)酸性基含有重合性単量体は、従来から歯科用酸性基含有重合性単量体として使用されている重合性単量体は全て使用でき、特に分子内にカルボキシル基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ピロリン酸基、スルホン酸基などを有する重合性単量体から選択して使用できる。
【0059】
本発明における成分(b)酸性基含有重合性単量体のなかでも分子内にカルボキシル基を含有する単量体としては、例えば、メタクリル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸、マレイン酸、およびこれらの酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、7−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘプタンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、さらには、これらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩等も挙げられる。
【0060】
本発明における成分(b)酸性基含有重合性単量体のなかでも分子内にリン酸エステル基、ホスホン酸基、またはピロリン酸基を含有する単量体としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピル−3−ホスホノプロピオネート、3−(メタ)アクリロキシプロピル−3−ホスホノアセテート、4−(メタ)アクリロキシブチル−3−ホスホノプロピオネート、4−(メタ)アクリロキシブチルホスホノアセテート、5−(メタ)アクリロキシペンチルホス−3−ホノプロピオネート、5−(メタ)アクリロキシペンチル−3−ホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロキシデシル−3−ホスホノアセテート、ビス[2−(メタ)アクリロキシエチル]ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、ジ[4−(メタ)アクリロイルオキシブチル]ハイドロジェンホスフェート、ジ[6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]ハイドロジェンホスフェート、ジ[8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル]ハイドロジェンホスフェート、ジ[9−(メタ)アクリロイルオキシノニル]ハイドロジェンホスフェート、ジ[10−(メタ)アクリロイルオキシデシル]ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル フェニルホスホネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホン酸、ビニルホスホニックアシド、p-ビニルベンジルホスホニックアシド、特開昭62−281885号公報に記載されている2−メタクリロイルオキシエチル(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピル(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、ピロリン酸ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸ジ[4−(メタ)アクリロイルオキシブチル]、ピロリン酸ジ[6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]、ピロリン酸ジ[8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル]、ピロリン酸ジ[10−(メタ)アクリロイルオキシデシル]等の重合性単量体が挙げられるが、さらには、これらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩等も挙げられる。
【0061】
本発明における成分(b)酸性基含有重合性単量体のなかでも分子内にスルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、6−スルホヘキシル(メタ)アクリレート、10−スルホデシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられるが、さらには、これらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩等も挙げられる。
【0062】
本発明における成分(b)酸性基含有重合性単量体のなかでも好ましい重合性単量体としては、下記の一般式:
【化20】

で示されるホスホン酸基を含有する(メタ)アクリレート系単量体である。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とはアクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0063】
好ましくは、下記一般式[1]:
【化21】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15のアルキレン基を示す。]で表わされるホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体が挙げられる。
【0064】
アルキレン基の例としては、一般式[1]につき前記したものが挙げられる。ここに、RまたはRに結合してもよい置換基としては、アルケニル基およびアルキニル基などの不飽和基、アルキル基、またはフェニル基と結合したアルキル基等である。
【0065】
アルケニル基の例としては、
【化22】

が挙げられ、アルキル基の例としては、−CH、−C、−Cが挙げられ、フェニル基と結合したアルキル基の例としては、−CHCHOCが挙げられる。一般式[1]で示される具体的化合物としては、下記のものが例示される。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【0066】
特に好ましいホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体は、6−メタクリロキシヘキシル−ホスホノアセテート、6−メタクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−メタクリロキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、10−メタクリロキシデシル−ホスホノアセテートであり、特に好ましいホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体は、6−メタクリロキシヘキシル‐ホスホノアセテートまたは6−メタクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネートである。
【0067】
成分(b)酸性基含有重合性単量体の配合割合は、当該組成物の使用目的により適宜に変化させてもよいが、成分(a)シランカップリング剤100重量部に対して、1.0〜20.0重量部の範囲で調製され、好ましくは4.0〜15.5重量部の範囲において調製される。
【0068】
本発明における成分(c)揮発性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、イソプロピルエーテル、さらに(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル等のラジカル重合可能なモノマーなどであることを特徴とする。
【0069】
好ましくはエタノール、アセトンであり、成分(c)揮発性有機溶媒の配合割合は、当該組成物の使用目的により適宜に変化させてもよいが、28〜99重量部の範囲内で調製され、好ましくは、42.25〜94.8重量部の範囲内で調製される。
【0070】
本発明における硫黄基含有重合性単量体は、従来から歯科用硫黄基含有重合性単量体として使用されている重合性単量体は全て使用できる。
特に、下記一般式[2]:
【化39】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキレン基を示し、nは0〜15の整数を示す。]で表わされるジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましい。
【0071】
一般式[2]中、Rは水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示す。炭素原子数1〜3の炭化水素基の例としては、−CH、−C、−Cが挙げられる。好ましいRは水素原子またはメチル基である。
は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30、好ましくは1〜14、さらに好ましくは2〜12のアルキレン基を示す。アルキレン基の例としては、−C−、−C−、−C−、−C1020−が挙げられる。Rに結合していてもよい置換基としては、アルケニル基やアルキル基、あるいはフェニル基と結合したアルキル基等である。アルケニル基の例としては、
【化40】

が挙げられ、アルキル基の例としては、−CH、−C、−Cが挙げられ、フェニル基と結合したアルキル基の例としては、−CHCHOCが挙げられる。
また、nは0〜15の整数を示す。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0072】
一般式[2]で表される化合物の具体例としては、下記の化合物が例示される。
【0073】
【化41】

【0074】
【化42】

【0075】
【化43】

【0076】
【化44】

【0077】
【化45】

【0078】
特に好ましい化合物は、10−メタクリロキシデシル−6,8−ジチオクタネートまたは6-メタクリロキシヘキシル−6,8−ジチオクタネートである。
【0079】
本発明の歯科用接着性組成物は、上記の成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(c)揮発性有機溶媒を必須として、その他成分を適宜選択して加えることができるが、その用途に応じて添加成分、即ち、ラジカル重合性単量体、光重合開始剤、光重合促進剤、熱重合開始剤、重合触媒、無機および有機充填材、重合抑制材、顔料などが適宜配合されても良い。
【0080】
本発明における歯科用接着性組成物には、成分(e)ラジカル重合性単量体を添加できる。成分(e)ラジカル重合性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートおよび水酸基やハロゲンによるそのアルキル側鎖置換体、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2'−ビス{4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル}プロパン、2,2'−ビス{4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル}プロパン、2,2'−ビス{4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル}プロパン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、エポキシ−(メタ)アクリレート、有機ジイソシアネートと(メタ)アクリル酸オキシアルキルとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート類、ウレタンプレポリマー(有機ジイソシアネートとジオールの反応生成物)と少なくとも2個の炭素原子を有するオキシアルカノールの(メタ)アクリル酸エステルとの反応生成物で少なくとも2個の重合性エチレン性不飽和基を含む重合性プレポリマー、エチレン性不飽和基を有する二塩基性カルボン酸と二価のアルコールとの反応生成物(すなわち、一般的にエチレン性不飽和基を有するポリエステル)などが挙げられる。
【0081】
これらのラジカル重合性単量体は、単独または、適宜組み合せて使用されるが、中でも、ジ(メタ)アクリレート等の重合性単量体のビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートとトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとの組合せが好ましい。
【0082】
本発明で用いられる成分(f)重合開始剤は、一般に歯科用組成物で用いられている公知の化合物が何等制限無く使用される。重合開始剤は、一般に、熱重合開始剤と光重合開始剤に分類される。
【0083】
成分(f)光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光増感剤を用いることができる。紫外線に対する光増感剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン化合物系、アセトインベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、等のチオキサントン系化合物が挙げられる。また、可視光線で重合を開始する光増感剤は、人体に有害な紫外線を必要としないために好適に使用される。これらの例としては、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類が挙げられる。好ましくは、カンファーキノンが用いられる。
【0084】
また、上記光増感剤に光重合促進剤を組み合わせて用いることも好ましい。特に第三級アミン類を光重合促進剤として用いる場合には、芳香族基に直接窒素原子が置換した化合物を用いることがより好ましい。かかる光重合促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、また、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類および、そのナトリウム塩、カルシウム塩などの金属塩類、さらに、ジブチル−錫−ジアセテート、ジブチル−錫−ジマレエート、ジオクチル−錫−ジマレエート、ジオクチル−錫−ジラウレート、ジブチル−錫−ジラウレート、ジオクチル−錫−ジバーサテート、ジオクチル−錫−S,S’−ビス−イソオクチルメルカプトアセテート、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等の錫化合物類等も使用できる。これらの光重合促進剤のうち少なくとも一種を選んで用いることができ、さらに二種以上を混合して用いることもできる。上記開始剤および促進剤の添加量は適宜決定することができる。
【0085】
さらに、光重合促進能の向上のために、第三級アミンに加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類の添加が効果的である。
【0086】
熱重合開始剤として具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。
【0087】
また、上記有機過酸化物とアミン化合物を組み合わせて用いることにより重合を常温で行うこともできる。このようなアミン化合物としては、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが、硬化促進の観点より好適に用いられる。例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチル−アニリン、N−メチル−p−トルイジンが好ましい。
【0088】
上記有機過酸化物とアミン化合物の組合せに、さらにスルフィン酸塩またはボレートを組み合わせることも好適である。かかるスルフィン酸塩類としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。ボレートとしてはトリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。また、酸素や水との反応によりラジカルを発生するトリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類は有機金属型の重合開始剤としても使用することができる。
【0089】
本発明の歯科用接着性組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、重合禁止剤、着色剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0090】
本発明の成分(g)には、無機および有機充填材が含まれ、無機および有機充填材としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合体、ポリスチレン等の有機ポリマー粉末、熱硬化性樹脂硬化物または無機充填材を含む熱硬化性樹脂硬化物等を粉砕した有機充填材、または無機充填材(カオリン、タルク、石英、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、窒化けい素、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス粉など)、無機充填材と有機充填材との複合充填材等が挙げられ、当該組成物を粉/液タイプ、ペースト状、スラリー状で用いるのに適している。これらは、シラノール基を含むカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなど)で表面を被覆されていてもよい。
【0091】
重合抑制剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエン等が挙げられ、当該組成物の棚寿命の安定化に適している。
【実施例】
【0092】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0093】
実施例に示した略称(化学名)
1)シランカップリング剤
3−MPDES:3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン
3−MPTES:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
2)酸性基含有重合性単量体
6−MHPA:6−メタクリロキシヘキシル−ホスホノアセテート
6−MHPP:6−メタクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート
10−MDPP:10−メタクリロキシデシル−3−ホスホノプロピオネート
4−META:4−メタアクリルオキシエチルトリメリト酸無水物
PM:ホスマーM (ユニケミカル社製)
3)ラジカル重合性単量体
Bis-GMA:ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
4)光重合開始剤、光重合促進剤
CQ:カンファーキノン
DMBE:p−ジメチルアミノ安息香酸エチル
5)充填材
R-972:微粒子ケイ酸[日本アエロジル(株)製]
6)硫黄原子含有重合性単量体
10−MDDT:10−メタクリロキシデシル−6,8−ジチオクタネート
【0094】
(実験に使用した材料および、装置)
レジンセメント:「レジセム」[(株)松風製]
酸化アルミニウム平板:約15×15×2mm[日本ファインセラミックス株式会社製]
酸化ジルコニウム平板:約15×15×2mm[日本ファインセラミックス株式会社製]
陶材料円盤状平板:直径15.0×5.0mm[歯科用金属焼付用陶材[商品名「ヴィンテージハロー」 (株式会社松風製)]]
金合金平板:約15×15×2mm[商品名「スーパーゴールドタイプ4」 (株式会社松風製)]
サーマルサイクル試験機:[東京技研株式会社製]
インストロン万能試験機[インストロン社製]
【0095】
実験番号1〜21:歯科用プライマーまたは、歯科用接着材の例
酸化アルミニウムまたは、酸化ジルコニウムからなる歯科用セラミックス材料の例として、酸化アルミニウム平板(約15×15×2mm[日本ファインセラミックス(株)製])および、酸化ジルコニウム平板(約15×15×2mm[日本ファインセラミックス(株)製])を使用し、引張接着強度試験を実施した。表1−4に示す重量比で混合して接着性組成物の調合を行った。
【0096】
約15×15×2mmの酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム平板の平坦面を240番次いで、600番のシリコンカーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、平滑面にエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、2.5kgf/cm2圧)を行った後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。
被着体の接着面に接着性組成物をミニブラシで塗布し、そのまま30秒間放置した後、エアーシリンジで接着性組成物の流動性が無くなる程度まで乾燥させた。一方、直径5mm×高さ10mmの円筒形ステンレス棒の接着面をエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5kgf/cm圧)し、その後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い接着強さ測定用治具とした。均一なペースト状に練和した「レジセム」を被着体の接着面とステンレス棒の接着面に介在させ接着を行った。この際、余剰セメントをミニブラシで除去し、セメントマージンに「松風グリップライトII」を用いて10秒間光重合した。
全試験片7個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後に引張接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
【0097】
ここで、接着性組成物として、表1〜4に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合の引張接着強さを、「初期」引張接着強さとした。また、接着性組成物として、表1〜4に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合の引張接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」引張接着強さとした。
【0098】
二酸化珪素を主成分とする歯科用セラミックス材料の例として歯科用金属焼付用陶材[商品名「ヴィンテージハロー」 (株式会社松風製)]を使用し、円盤状(直径15.0×5.0mm)の焼成物を陶材焼成用真空電気炉[商品名「ツインマット」(株式会社松風製)]を使用して作製し、引張接着強度試験を実施した。表1−4に示す重量比で混合して接着性組成物の調合を行った。
【0099】
円盤状(直径15.0×5.0mm)の焼成物の平坦面を240番次いで、600番のシリコンカーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。
被着体の接着面に接着性組成物をミニブラシで塗布し、そのまま30秒間放置した後、エアーシリンジで接着性組成物の流動性が無くなる程度まで乾燥させた。一方、直径5mm×高さ10mmの円筒形コバルタン(コバルトクロム合金:松風社製)棒の接着面をエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5kgf/cm2圧)し、その後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い接着強さ測定治具とした。均一なペースト状に練和した「レジセム」を被着体の接着面とステンレス棒の接着面に介在させ接着を行った。この際、余剰セメントをミニブラシで除去し、セメントマージンに「松風グリップライトII」を用いて10秒間光重合した。
全試験片7個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後に引張接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
【0100】
ここで、接着性組成物として、表1〜4に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合の引張接着強さを、「初期」引張接着強さとした。また、接着性組成物として、表1〜4に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合の引張接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」引張接着強さとした。
【0101】
歯科用貴金属材料の例として、金合金平板(約15×15×2mm[スーパーゴールドタイプ4(松風社製)])を使用し、引張接着強度試験を実施した。表1−4に示す重量比で混合して接着性組成物の調合を行った。
【0102】
約15×15×2mmの金合金平板の平坦面を600番のシリコンカーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、平滑面にエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5.0kgf/cm2圧)を行った後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。
被着体の接着面に接着性組成物をミニブラシで塗布し、そのまま30秒間放置した後、エアーシリンジで接着性組成物の流動性が無くなる程度まで乾燥させた。一方、直径5mm×高さ10mmの円筒形ステンレス棒の接着面をエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5kgf/cm圧)し、その後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い接着強さ測定治具とした。均一なペースト状に練和した「レジセム」を被着体の接着面とステンレス棒の接着面に介在させ接着を行った。この際、余剰セメントをミニブラシで除去し、セメントマージンに「松風グリップライトII」を用いて10秒間光重合した。
全試験片7個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後に引張接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
【0103】
ここで、接着性組成物として、表1〜4に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合の引張接着強さを、「初期」引張接着強さとした。また、接着性組成物として、表1〜4に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合の引張接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」引張接着強さとした。
【0104】
実験番号22〜23:歯科用プライマーまたは、歯科用接着材の例
酸化アルミニウムまたは、酸化ジルコニウムからなる歯科用セラミックス材料の例として、酸化アルミニウム平板(約15×15×2mm[日本ファインセラミックス(株)製])および、酸化ジルコニウム平板(約15×15×2mm[日本ファインセラミックス(株)製])を使用し、せん断接着強度試験を実施した。表5に示す重量比で混合して接着性組成物の調合を行った。
【0105】
約15×15×2mmの酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム平板の平坦面を240番次いで、600番のシリコンカーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、平滑面にエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、2.5kgf/cm圧)を行った後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。研磨した被着面に直径4mmの穴をあけた両面テープを貼りつけ接着面を規定した。
被着体の接着面に接着性組成物をミニブラシで塗布し、そのまま30秒間放置した後、エアーシリンジで接着性組成物の流動性が無くなる程度まで乾燥させた。続いて松風グリップライトII[(株)松風社製]で10秒間光照射した。その後、直径4mm、高さ2mmのプラスティックモールドを接着規定面枠に固定し、モールド内に光重合型コンポジットレジン「ビューティフィル」[(株)松風社製]を填入した。次いでカバーガラスで空気を遮断し松風グリップライトIIで30秒間光照射しコンポジットレジンを光硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
全試験片7個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後にせん断接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件でせん断接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
【0106】
ここで、接着性組成物として、表5に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合のせん断接着強さを、「初期」せん断接着強さとした。また、接着性組成物として、表5に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合のせん断接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」せん断接着強さとした。
【0107】
二酸化珪素を主成分とする歯科用セラミックス材料の例として歯科用金属焼付用陶材[商品名「ヴィンテージハロー」 (株式会社松風製)]を使用し、円盤状(直径15.0×5.0mm)の焼成物を陶材焼成用真空電気炉[商品名「ツインマット」(株式会社松風製)]を使用して作製し、せん断接着強度試験を実施した。表5に示す重量比で混合して接着性組成物の調合を行った。
【0108】
円盤状(直径15.0×5.0mm)の焼成物の平坦面を240番次いで、600番のシリコンカーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。
研磨した被着面に直径4mmの穴をあけた両面テープを貼りつけ接着面を規定した。被着体の接着面に接着性組成物をミニブラシで塗布し、そのまま30秒間放置した後、エアーシリンジで接着性組成物の流動性が無くなる程度まで乾燥させた。続いて松風グリップライトII[(株)松風社製]で10秒間光照射した。その後、直径4mm、高さ2mmのプラスティックモールドを接着規定面枠に固定し、モールド内に光重合型コンポジットレジン「ビューティフィル」[(株)松風社製]を填入した。次いでカバーガラスで空気を遮断し松風グリップライトIIで30秒間光照射しコンポジットレジンを光硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
全試験片7個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後にせん断接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件でせん断接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
【0109】
ここで、接着性組成物として、表5に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合のせん断接着強さを、「初期」せん断接着強さとした。また、接着性組成物として、表5に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合のせん断接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」せん断接着強さとした。
【0110】
歯科用貴金属材料の例として、金合金平板(約15×15×2mm[スーパーゴールドタイプ4(松風社製)])を使用し、せん断接着強度試験を実施した。表5に示す重量比で混合して接着性組成物の調合を行った。
【0111】
約15×15×2mmの金合金平板の平坦面を600番のシリコンカーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、超音波洗浄およびエアー乾燥を行い被着体とした。研磨した被着面に直径4mmの穴をあけた両面テープを貼りつけ接着面を規定した。
被着体の接着面に接着性組成物をミニブラシで塗布し、そのまま30秒間放置した後、エアーシリンジで接着性組成物の流動性が無くなる程度まで乾燥させた。続いて松風グリップライトII[(株)松風社製]で10秒間光照射した。その後、直径4mm、高さ2mmのプラスティックモールドを接着規定面枠に固定し、モールド内に光重合型コンポジットレジン「ビューティフィル」[(株)松風社製]を填入した。次いでカバーガラスで空気を遮断し松風グリップライトIIで30秒間光照射しコンポジットレジンを光硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
全試験片7個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後にせん断接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件でせん断接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
【0112】
ここで、接着性組成物として、表5に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合のせん断接着強さを、「初期」せん断接着強さとした。また、接着性組成物として、表5に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合のせん断接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」せん断接着強さとした。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(c)揮発性有機溶媒、および成分(d)硫黄原子含有重合性単量体を含有する組成物であって、
ここに、成分(a)の含有量は、前記組成物全体に対して1〜60重量部であり、成分(b)の含有量は、成分(a)100重量部に対して1.0〜20.0重量部であることを特徴とする、一液型の歯科用プライマー。
【請求項2】
成分(b)酸性基含有重合性単量体が、下記一般式[1]:
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15のアルキレン基を示す。]で表わされるホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体であって、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体が、一般式[2]:
【化2】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキレン基を示し、nは0〜15の整数を示す。]で表わされるジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体であることを特徴とする、請求項1記載の一液型の歯科用プライマー。
【請求項3】
成分(a)シランカップリング剤、成分(b)酸性基含有重合性単量体、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体、成分(e)ラジカル重合性単量体および成分(f)光重合開始剤を含有し、ここに、成分(b)の含有量が、成分(a)100重量部に対して1.0〜20.0重量部であることを特徴とする、一液型の歯科用接着材。
【請求項4】
成分(b)酸性基含有重合性単量体が、下記一般式[1]:
【化3】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15のアルキレン基を示す。]で表わされるホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体であって、成分(d)硫黄原子含有重合性単量体が、一般式[2]:
【化4】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキレン基を示し、nは0〜15の整数を示す。]で表わされるジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体であることを特徴とする、請求項3記載の一液型の歯科用接着材。

【公開番号】特開2009−67746(P2009−67746A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239651(P2007−239651)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【Fターム(参考)】