説明

一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤

【課題】塩化ビニルやゴムを素材とした床仕上げ材およびコンクリートや合板等の下地に対する接着性にすぐれ、かつ作業時や居住時の環境衛生面においても安全なウレタン樹脂系接着剤を提供する。
【解決手段】トリレンジイソシアネートと混合ポリオールとを、NCO基/OH基の当量比0.8〜1.2で反応させ、さらに該反応液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基/OH基の当量比が1.2〜2.0となるように加え、反応させて得られるウレタンプレポリマーからなる接着剤であって、この接着剤中の遊離トリレンジイソシアネートの含有率が0.1重量%未満である一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業性、接着性にすぐれ、かつ有害物質を低減したウレタン樹脂系接着剤に係り、特に、床仕上げ材用として有用な一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一液湿気硬化型ウレタン樹脂は、塩ビやゴムを素材とした床仕上げ材およびコンクリートや合板等の下地に対する接着力が強く、耐水性、耐熱性等の耐久性がよいことから床仕上げ材用接着剤として広く使用されている。
【0003】
しかし、現在床仕上げ材用接着剤として主として使用されているウレタン樹脂系接着剤は、特定化学物質として労働安全衛生法で規制される遊離トリレンジイソシアネートを0.2〜0.9重量%含有しており、施工時または居住後の健康への悪影響が懸念されている。
【0004】
このようなことから、ウレタン樹脂系接着剤の製造において、上記有害物質とされるトリレンジイソシアネートを使用せず、また有機溶剤に代えて低揮発性の希釈剤を使用することが提案され(特許文献1)、さらにトリレンジイソシアネートとポリオールとをNCO基/OH基の当量比1.05〜1.10で反応させて得たウレタンプレポリマー(A−1)と、NCO基/OH基の当量比1.15〜1.50で反応させて得たウレタンプレポリマー(A−2)を含有するウレタン樹脂系接着剤が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−221569号公報
【特許文献2】特開2006−111751号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているウレタン樹脂系接着剤では、下地および空気中の水分との反応により初期粘着力が発現するため、低温、低湿度の冬期には初期粘着力が弱いために床仕上げ材の収まりが悪く、また高温、高湿度の夏期には硬化が速くなりすぎて、床仕上げ材の張付可能時間が短くなり、使用しにくいという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献2に記載されているウレタン樹脂系接着剤では、ウレタンプレポリマー(A−1)の保存安定性が悪く、さらにウレタンプレポリマー(A−2)中の遊離トリレンジイソシアネートの含有率が0.1%以上となる可能性があって好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上記した問題を解決すべく鋭意検討した結果、作業性、接着性にすぐれ、かつ有害物質を低減した一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、トリレンジイソシアネートと混合ポリオールとを、NCO基/OH基の当量比0.8〜1.2で反応させ、さらに該反応液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基/OH基の当量比が1.2〜2.0となるように加え、反応させて得られるウレタンプレポリマーからなる接着剤であって、この接着剤中の遊離トリレンジイソシアネートの含有率が0.1重量%未満であることを特徴とする一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ウレタンプレポリマーを得るに用いる前記混合ポリオールが、平均分子量1000〜5000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエーテルトリオールと、平均分子量1000〜5000のポリエステルジオール、低分子ジオールの混合物であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
上記請求項に記載した、この発明の一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤によれば、塩化ビニルなどにより構成される床シートあるいは床タイルを耐水性が必要とされる場所に施工することが可能であり、かつ毒性の強い遊離トリレンジイソシアネートの含有率が0.1重量%未満であるため、作業者あるいは居住者に対する健康障害の懸念が低減されるという、環境衛生面からも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を詳細に説明する。まずこの発明の一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、トリレンジイソシアネートと混合ポリオールとを、NCO基/OH基の当量比が0.8〜1.2で反応させ、さらに該反応液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを加えてNCO基/OH基の当量比が1.2〜2.0で反応させて得られる分子中にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーからなるものである。
【0012】
この発明で使用するトリレンジイソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートのそれぞれ単独または混合品を用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=80/20(重量比)の混合物としては、日本ポリウレタン工業社製、コロネートT−80を、また2,4−トリレンジイソシアネート単独品としては、日本ポリウレタン工業社製、コロネートT−100などである。
【0013】
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMTが、また4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート=50/50(重量比)の混合物である独国、BASF社製、ルプラネートMIが用いられる。
【0014】
上記でイソシアネートと反応させる混合ポリオールは、平均分子量1000〜5000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエーテルトリオール、平均分子量1000〜5000のポリエステルジオールあるいは低分子ジオールを混合物として用いるものである。
【0015】
ポリエーテルジオールとしては、特に限定はなく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン等の活性水素化合物との付加重合によって製造される各種のものが使用できる。
【0016】
具体的には、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等である。これらのポリエーテルジオールは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。このポリエーテルジオールは、平均分子量1000〜5000(好ましくは1000〜3000)のものが最適である。分子量をこの範囲とすることにより、得られる一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力、張付け可能時間、接着力および塗布性を適度なものとすることができる。
【0017】
ポリエーテルトリオールとしては、特に限定はなく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドと、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の活性水素化合物との付加重合によって製造される各種のものが使用できる。具体的には、ポリテトラメチレンエーテルトリオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシブチレントリオール等を挙げることができる。これらのポリエーテルトリオールは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
このポリエーテルトリオールは、平均分子量1000〜5000(好ましくは2000〜4000)のものが最適である。分子量をこの範囲とすることにより、得られる一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力、張付け可能時間、接着力および塗布性を適度なものとすることができる。
【0019】
ポリエステルジオールとしては、特に限定はなく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール類と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸との縮合物が挙げられる。
【0020】
また、カプロテクトン等の環状エステル化合物を開環重合させることで得られるものも使用できる。これらのポリエステルジオールは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。このポリエステルジオールは、平均分子量1000〜5000(好ましくは1000〜3000)のものが最適である。分子量をこの範囲とすることにより、得られる一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力、張付け可能時間、接着力および塗布性を適度なものとすることができる。
【0021】
さらに、低分子ジオールとしては、低分子量の2つの水酸基を有する化合物で、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等であって、これらを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記で述べたように、この発明においては、まずトリレンジイソシアネートと混合ポリオールとを反応させ、その後さらに4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを加えることで、分子中にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーを得るのであるが、その際、上記トリレンジイソシアネートと混合ポリオールは、NCO基とOH基の当量比R値が0.8〜1.2となるように反応させ、さらに該反応液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを加えてNCO基とOH基の当量比R′値が1.2〜2.0となるように反応させるものである。
【0023】
この際に、上記NCO基とOH基の当量比R値が0.8未満であると、得られるウレタン樹脂の初期粘着力が低下し、またR値が1.2より大きくなると、遊離トリレンジイソシアネートの含有率が0.1重量%以上となって好ましくない。さらに、R′値が1.2未満であると、得られるウレタン樹脂の保存安定性が悪く、またR′値が2.5より大きくなると、初期粘着力が低下する。
【0024】
従って、得られる一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力、張付け可能時間、接着力および塗布性のバランスを考慮すると、R値=0.85〜1.15、R′値=1.2〜1.8であることが好ましい。
【0025】
上記した、トリレンジイソシアネートと混合ポリオールとの反応およびその後の4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応は、通常のウレタンプレポリマーの反応と同様の方法、例えば、50〜100℃で加熱攪拌することによって行うことができる。また、必要に応じて有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0026】
この発明の一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の製造に当たっては、上記ウレタンプレポリマーのほかに、必要に応じて希釈剤、充填材、可塑剤、揺変剤、保存安定性改良剤、架橋剤、反応促進触媒を用いることができる。
【0027】
希釈剤としては、アセトン、メチエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0028】
充填剤としては、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、無水ケイ酸、アルミニウム粉末、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機粉末状充填材、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填材、ガラスバルーン、シラスバルーンなどの無機系バルーン状充填材、あるいはこれらの表面を脂肪酸などの有機物で処理した充填材、木粉、パルプ粉、ゴム粉末、ポリエチレンなどの粉末、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの難燃性付与充填材などが挙げられる。
【0029】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステルなどのアルコールエステル類、リン酸トリオクチルなどのリン酸エステル類、塩素化パラフィンなどが挙げられる。
【0030】
揺変剤としては、コロイダルシリカ、脂肪酸処理炭酸カルシウムなどの無機揺変剤、有機ベントナイト、脂肪酸アマイドなどの有機揺変剤が挙げられる。
【0031】
保存安定性改良剤としては、P−トルエンスルホニルイソシアネート、塩化ベンゾイル、蟻酸エステル類、マロン酸エステル類、リン酸エステル類、酸化カルシウム、ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物などが挙げられる。
【0032】
架橋剤としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとしたポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースに多価アルコールを付加したポリイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0033】
反応促進触媒としては、ジオクチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫化合物、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0034】
この発明の一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の製造方法としては、特に限定されるものではなく、通常の一液性の湿気硬化型ウレタン樹脂組成物の製造と同様の方法で行うことができる。
【0035】
以下、この発明について、合成例および実施例により詳細に説明するが、この発明はこれらの合成例および実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
(合成例1) ウレタンプレポリマー溶液(1)の合成
【0036】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル568部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=80/20(重量比)混合物(以下、TDI(T−80)という)251部(R値(NCO当量/OH当量)=0.8)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート=50/50混合物(以下、4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物という)315部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)4.00重量%、遊離トリレンジイソシアネート0重量%、不揮発分70重量%を有するウレタンプレポリマー(1)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例2) ウレタンプレポリマー溶液(2)の合成
【0037】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル497部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)313部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物90部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.2)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)1.83重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(2)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例3) ウレタンプレポリマー溶液(3)の合成
【0038】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル552部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)313部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物225部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)4.10重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(3)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例4) ウレタンプレポリマー溶液(4)の合成
【0039】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル651部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)313部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物450部(R′値(NCO当量/OH当量)=2.0)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)6.97重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(4)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例5) ウレタンプレポリマー溶液(5)の合成
【0040】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル543部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)376部(R値(NCO当量/OH当量)=1.2)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物135部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)4.18重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.07重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(5)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例6) ウレタンプレポリマー溶液(6)の合成
【0041】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル552部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)313部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDIを225部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)4.10重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(6)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例7) ウレタンプレポリマー溶液(7)の合成
【0042】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール300部、平均分子量3000のポリオキシプロピレントリオール300部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール120部、ネオペンチルグリコール187部および酢酸エチル666部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)376部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物270部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)4.09重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(7)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例8) ウレタンプレポリマー溶液(8)の合成
【0043】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル578部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)188部(R値(NCO当量/OH当量)=0.6)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物405部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)3.92重量%、遊離トリレンジイソシアネート0重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(8)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例9) ウレタンプレポリマー溶液(9)の合成
【0044】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル531部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)438部(R値(NCO当量/OH当量)=1.4)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物45部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)4.27重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.5重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(9)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例10) ウレタンプレポリマー溶液(10)の合成
【0045】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル747部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)313部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物675部(R′値(NCO当量/OH当量)=2.5)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)9.10重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(10)酢酸エチル溶液を得た。
(合成例11) ウレタンプレポリマー溶液(11)の合成
【0046】
反応容器に平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール500部、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール100部、ネオペンチルグリコール156部および酢酸エチル477部を仕込み、窒素雰囲気下で均一になるまで攪拌した。次いで、TDI(T−80)313部(R値(NCO当量/OH当量)=1.0)を仕込み、70〜90℃で6時間反応させた。さらに、この反応液に4,4′−MDI/2,4′−MDI=50/50混合物45部(R′値(NCO当量/OH当量)=1.1)を加え、70〜90℃で約2時間加熱して、NCO含有量(計算値)0.95重量%、遊離トリレンジイソシアネート0.01重量%、不揮発分70重量%のウレタンプレポリマー(11)酢酸エチル溶液を得た。
実施例1〜7
【0047】
上記合成例1〜7で得たウレタンプレポリマー溶液(1)〜(7)を、それぞれ表1に示す量(不揮発分量)を窒素ガスを封入した高速攪拌機に入れ、これに充填材として乾燥炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ホワイトンSB)、揺変剤としてコロイダルシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルRY−200)、希釈剤として酢酸エチル、安定剤としてP−トルエンスルホニルイソシアネート、を表1に示す量加えて充分に攪拌し、粘度15000mPa・s/25℃に調整して、それぞれの一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を得た。
(比較例1〜4)
【0048】
上記合成例8〜11で得たウレタンプレポリマー溶液(8)〜(11)に、上記実施例1〜7と同じ充填材、揺変剤、希釈剤、および安定剤を、それぞれ表1に示す量(ウレタンプレポリマー溶液は不揮発分量)用いて上記実施例1〜7と同じようにして4種の一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を得た。
【0049】
上記実施例1〜7および比較例1〜4で得られた、それぞれのウレタン樹脂系接着剤について、遊離トリレンジイソシアネート含有量や、塗布性、初期粘着力、引張接着強さなどのテストを行った。その結果は表1に示した。それらテストの評価方法および評価基準は次の通りである。なお、テストは保存安定性以外は全て温度23±2℃、湿度50±10%RHの標準状態の雰囲気で行った。
【0050】
遊離トリレンジイソシアネート含有率:JIS K 7301に規定されている「熱可塑性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法」に準拠して、ウレタンプレポリマーの遊離トリレンジイソシアネート含有率を測定し、配合比より一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の遊離トリレンジイソシアネート含有率を計算値より求め、以下の通り判定した。
○:含有率0.1重量%未満 ×:含有率0.1重量%以上。
【0051】
塗布性:JIS A 5430に規定する厚さ8mmのストレート板(以下、フレキシブル板という)上に、JIS A 5536にて規定する高分子系張り床材試験用くし目ごて(以下、くし目ごてという)を使用して試料を塗布し、以下の通り判定した。
○:塗りやすく、くし目の山が崩れない。
×:塗り難い、またはくし目の山が崩れる。
【0052】
初期粘着力:フレキシブル板上に、くし目ごてを使用して試料を約300g/mに塗布し、20分後にJIS A 5705にて規定する厚さ2mmで、25mm×150mm寸法のビニル床シート(以下、ビニル床シートという)を張り付け、ハンドローラーで約50Nの荷重で2回往復して圧着し、その後垂直方向に持ち上げて剥がし、その時の最高強度を測定し、以下の通り判定した。
○:2N/25mm以上 △:1N/25mm以上、2N/25mm未満
×:1N/25mm未満。
【0053】
張付け可能時間:フレキシブル板上に、くし目ごてを使用して試料を約300g/mに塗布し、塗布後10分経過ごとにJIS A 5705にて規定する厚さ2mmで、40mm×40mm寸法のビニル床タイル(以下、ビニル床タイルという)を張り付け、質量1Kgのおもりを5秒間載せて圧着し、すぐに剥がす。この時、ビニル床タイルの接着面に転写した試料の面積の占める割合が50%以上である時間を張付け可能時間として、以下の通り判定した。
○:60分以上 △:40分以上60分未満 ×:40分未満。
【0054】
引張接着強さ(常態):JIS A 5536にて規定する引張接着強さ(常態)試験に準拠する。即ち、寸法70mm×70mmのフレキシブル板上に、くし目ごてを使用して試料を約300g/mに塗布し、塗布10分後にJIS A 5705にて規定する厚さ2mmで、40mm×40mm寸法のビニル床タイルを張り付け、質量1Kgのおもりを5秒間載せて圧着し、その後48時間養生してから引張接着強さを測定した。その結果により、以下の通り判定した。
○:0.8N/mm以上
△:0.5N/mm以上、0.8N/mm未満 ×:0.5N/mm未満。
【0055】
引張接着強さ(耐水):JIS A 5536にて規定する引張接着強さ(水中浸漬)試験に準拠する。即ち、上記した引張接着強さ(常態)試験と同様にして作成した試験体を48時間養生した後、水中に168時間浸漬し、その後引張接着強さを測定した。その結果により、以下の通り判定した。
○:0.5N/mm以上
△:0.3N/mm以上、0.5N/mm未満 ×:0.3N/mm未満。
【0056】
保存安定性:得られた接着剤を50℃の雰囲気中に2週間放置し、以下に示す数1の式にて粘度の変化率を測定し、以下の通り判定した。
○:30%以下 △:30%より大きく、50%以下 ×:50%より大きい。
【0057】
【数1】

【0058】
【表1】

【0059】
上記表1から、この発明の実施例1〜7で得たウレタン系接着剤は、遊離トリレンジイソシアネート含有率が0.1重量%未満で、かつ塗布性、初期粘着力、張付け可能時間、引張接着強さや保存安定性等にすぐれ、総合的な性能が良好であることが認められた。これに対して、比較例1〜4による接着剤は、いずれも性能が不十分であり、総合的な性能にも劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリレンジイソシアネートと混合ポリオールとを、NCO基/OH基の当量比0.8〜1.2で反応させ、さらに該反応液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基/OH基の当量比が1.2〜2.0となるように加え、反応させて得られるウレタンプレポリマーからなる接着剤であって、この接着剤中の遊離トリレンジイソシアネートの含有率が0.1重量%未満であることを特徴とする一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤。
【請求項2】
ウレタンプレポリマーを得るに用いる前記混合ポリオールが、平均分子量1000〜5000のポリエーテルジオールおよび/またはポリエーテルトリオールと、平均分子量1000〜5000のポリエステルジオール、低分子ジオールの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤。

【公開番号】特開2008−285616(P2008−285616A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133951(P2007−133951)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000107952)セイコー化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】