説明

一液湿気硬化型ウレタン組成物

【課題】本発明は、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性に優れ、さらに、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れる一液湿気硬化型ウレタン組成物を提供する。
【解決手段】ウレタンプレポリマーと充填剤と可塑剤とからなる組成物と、特定の接着付与剤と、ジモルフォリノジエチルエーテルと、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンと、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと、有機スズ化合物とを含有し、上記各成分の含有量が特定の関係を有する一液湿気硬化型ウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液湿気硬化型ウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、湿気硬化を利用した各種のウレタン組成物が提案されており、車体と窓ガラスとの接着等の自動車の分野、建築分野等の多方面で用いられている。このようなウレタン組成物は、ポリオール系化合物とインシアネート系化合物とからなる2液型と、空気中の湿気等によって硬化する1液型の組成物とが知られているが、近年、現地施工における組成物の混合調整が不要で取扱いが容易である等の点で、一液湿気硬化型ウレタン組成物の利用が拡大している。
【0003】
一般的に、自動車の車体と窓ガラスとの接着は、車体とガラス側の両方にプライマーを塗布し、それらのプライマー間にシーラント組成物を塗布して行われている。特に、車体側へのプライマーの塗布は、ほとんどの場合に手作業で行っているが、プライマー塗布時に用いる揮発性有機溶媒(VOC)の人体への影響が懸念されている。また、環境問題の面からもVOCの削減が求められている。さらに、プライマーが塗布すべき部分以外に付着した場合には、その補修に多大な手間とコストを要する。これらの問題を解消でき、さらに、作業工程を簡略化できるノンプライマー接着性に優れた一液湿気硬化型ウレタン組成物が要求されている。なお、ノンプライマー接着性とは、プライマーを用いない場合の被着体に対する接着性を意味する。
しかし、近年のハイソリッド塗料、耐酸性雨塗料、イージーメンテナンス塗料等で塗装されたいわゆる難接着性塗板に対して、ノンプライマー接着させることは困難であった。
【0004】
難接着性塗板に対するノンプライマー接着性を解決するものとして、例えば、特許文献1に、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化性一液型ウレタン系接着剤組成物において、(1)密着剤としてシランカップリング剤、ならびに、(2)硬化触媒として、(a)2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルおよび/またはジ(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、および(b)ジブチル錫ジアセチルアセトネート、を含有することを特徴とする湿気硬化性一液型ウレタン系接着剤組成物が記載されている。しかしながら、特許文献1では、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の一液湿気硬化型ウレタン組成物に求められる種々の特性については検討されておらず、例えば、該組成物を自動車の車体と窓ガラスとの接着に用いる場合、該組成物を塗布する際に形状維持性が十分でないことにより塗布すべき部分以外に付着するおそれ、該組成物の硬化物の機械的強度の問題、または、直射日光により加熱され、高温下に長時間放置された際に機械的強度の低下を起こすおそれ等の問題がある。
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/053423号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、近年の技術革新、材料等の最適化、製造工程の簡素化、短縮化等により、一液湿気硬化型ウレタン組成物に要求される特性等も高度化する現状においては、従来の一液湿気硬化型ウレタン組成物には、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸びおよび種々の被着体に対するノンプライマー接着性等を高い水準で満たすものはなく、これら特性のさらなる改善が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性に優れ、さらに、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れる一液湿気硬化型ウレタン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ウレタンプレポリマーと充填剤と可塑剤とからなる予備組成物と、特定の接着付与剤と、ジモルフォリノジエチルエーテルと、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンと、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと、有機スズ化合物の含有量を特定の関係にすると、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性に優れ、さらに、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れる一液湿気硬化型ウレタン組成物を提供することができることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、上記知見を基になされたものであり、以下の(1)〜(4)を提供する。
【0009】
(1)数平均分子量がそれぞれ1000〜7000のポリエーテルトリオールとポリエーテルジオールとの混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基とOH基の当量比が1.1〜2.5になるように反応させてなるウレタンプレポリマーと充填剤と可塑剤とからなる予備組成物100質量部と、
トリメチロールプロパンに2官能イソシアネートをNCO基とOH基の当量比が0.8〜1.5になるように反応させてなる化合物に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(A)、
2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(B)、ならびに、
2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
ジモルフォリノジエチルエーテル0.01〜0.15質量部と、
N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン0.01〜0.15質量部と、
2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン0.010〜0.30質量部と、
有機スズ化合物0.0010〜0.2質量部とを含有し、
前記予備組成物の含有量をX質量部、前記化合物(A)の含有量をA質量部、前記化合物(B)の含有量をB質量部、前記化合物(C)の含有量をC質量部、前記ジモルフォリノジエチルエーテルの含有量をY質量部、前記N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンの含有量をZ質量部としたときに、下記式(1)〜(3)を満たす一液湿気硬化型ウレタン組成物。
【0010】
0.10X≦100(A+B+C)≦7.0X (1)
【0011】
Z≦Y (2)
【0012】
0.10X≦100(Y+Z)≦0.25X (3)
【0013】
(2)前記有機スズ化合物を0.0010〜0.05質量部含有する上記(1)に記載の一液湿気硬化型ウレタン組成物。
【0014】
(3)下記式(4)を満たす上記(1)または(2)に記載の一液湿気硬化型ウレタン組成物。
【0015】
0.30X≦100(A+B+C)≦5.0X (4)
【0016】
(4)前記アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物が、γ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランであり、前記2官能イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の一液湿気硬化型ウレタン組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性に優れ、さらに、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物について詳細に説明する。
本発明は、数平均分子量がそれぞれ1000〜7000のポリエーテルトリオールとポリエーテルジオールとの混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基とOH基の当量比が1.1〜2.5になるように反応させてなるウレタンプレポリマーと充填剤と可塑剤とからなる予備組成物100質量部と、トリメチロールプロパンに2官能イソシアネートをNCO基とOH基の当量比が0.8〜1.5になるように反応させてなる化合物に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(A)、2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(B)、ならびに、2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ジモルフォリノジエチルエーテル0.01〜0.15質量部と、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン0.01〜0.15質量部と、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン0.010〜0.30質量部と、有機スズ化合物0.0010〜0.2質量部とを含有し、前記予備組成物の含有量をX質量部、前記化合物(A)の含有量をA質量部、前記化合物(B)の含有量をB質量部、前記化合物(C)の含有量をC質量部、前記ジモルフォリノジエチルエーテルの含有量をY質量部、前記N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンの含有量をZ質量部としたときに、下記式(1)〜(3)を満たす一液湿気硬化型ウレタン組成物。
【0019】
0.10X≦100(A+B+C)≦7.0X (1)
【0020】
Z≦Y (2)
【0021】
0.10X≦100(Y+Z)≦0.25X (3)
【0022】
<予備組成物>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に含有される予備組成物に配合されるウレタンプレポリマー(以下、「本発明に用いられるウレタンプレポリマー」ともいう。)は、一分子当り3個の水酸基を有する数平均分子量1000〜7000のポリエーテルトリオールと、一分子当り2個の水酸基を有する数平均分子量1000〜7000のポリエーテルジオールとの混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基とOH基の当量比(NCO/OH)が1.1〜2.5になるように反応させて得られるものである。
【0023】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーを合成するのに用いるポリエーテルトリオール(以下、「本発明に用いられるポリエーテルトリオール」ともいう。)は、数平均分子量が1000〜7000である。得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の粘度および該組成物の硬化物の物性に優れるという点から、好ましくは、2000〜5000である。
上記ポリエーテルトリオールは、具体的には、例えば、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリテトラメチレントリオール、ポリエチレントリオール、ポリプロピレントリオール、ポリオキシブチレントリオール等が挙げられる。中でも、物性とコストのバランスという点から、ポリオキシプロピレントリオールおよびポリオキシエチレントリオールが好ましい。
本発明に用いられるポリエーテルトリオールには、上記ポリエーテルトリオールを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーを合成するのに用いるポリエーテルジオール(以下、「本発明に用いられるポリエーテルジオール」ともいう。)は、数平均分子量が1000〜7000である。得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の粘度および該組成物の硬化物の物性に優れるという点から、好ましくは、2000〜5000である。
上記ポリエーテルジオールは、具体的には、例えば、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリエチレンエーテルジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等が挙げられる。中でも、物性とコストのバランスが良好である点から、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリエチレンエーテルジオールが好ましい。
本発明に用いられるポリエーテルジオールには、上記ポリエーテルジオールを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーを合成するのに用いるイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。上記MDIは、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物(例えば、クルードMDI等)のいずれでもよいが、入手し易く、安価である点から、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0026】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーの製造方法は、公知の製造方法により製造することができ、例えば、上記ポリエーテルトリオールと上記ポリエーテルジオールとを混合し脱水した後、溶融した上記MDIを、該MDIのNCO基と上記混合物のOH基の当量比が1.1〜2.5になる量を加え、窒素置換中撹拌して得ることができる。
【0027】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に含有される予備組成物(以下、「本発明に用いられる予備組成物」ともいう。)は、上記ウレタンプレポリマーと、充填剤と、可塑剤とからなる組成物である。
【0028】
本発明に用いられる予備組成物に配合される充填剤は、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、ホワイトカーボン、シリカ、ガラス、カオリン、タルク(ケイ酸マグネシウム)、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、あるいはこれらの表面処理品等の無機質充填剤;カーボネート類、有機ベントナイト、ハイスチレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、変性メラミン樹脂、環化ゴム、リグニン、エボナイト粉末、セラック、コルク粉末、骨粉、木粉、セルローズパウダー、ココナッツ椰子がら、木材パルプ等の有機質充填剤;ランプブラック、チタンホワイト、ベンガラ、チタンイエロー、亜鉛華、鉛丹、コバルトブルー、鉄黒、アルミ粉等の無機顔料およびネオザボンブラック RE、ネオブラック RE、オラゾールブラック CN、オラゾールブラック Ba(いずれもチバ・ガイギー社製)、スピロンブルー2BH(保土ヶ谷化学社製)等の有機顔料等が挙げられる。中でも、所望の特性を付与するために、カーボンブラックと炭酸カルシウムを用いることが好ましい。これらのカーボンブラックおよび炭酸カルシウムとしては、特に限定されず、通常市販されているものを用いることができる。例えば、カーボンブラックは、米国材料試験協会規格における、N110、N220、N330、N550、N770等あるいはこれらの混合物が挙げられ、炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム等が挙げられる。中でも、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に深部硬化性を付与できる点で、重質炭酸カルシウムが好ましい。
これらの充填剤は、1種単独でも2種以上を併用しても使用することができる。
【0029】
上記カーボンブラックの配合量は、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物が十分な機械的強度を有し、取扱い性に優れた粘度、チクソ性を付与できる点で、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。この特性により優れる点で、20〜90質量部がより好ましい。
上記炭酸カルシウムの配合量は、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の深部硬化性が良好である点で、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、2〜30質量部であることが好ましい。この特性により優れる点で、3〜20質量部がより好ましい。
【0030】
上記混合物と上記MDIとの反応は、混合物とMDIとを、NCO基とOH基の当量比が、1.1〜2.5となるように混合させて行う。該当量比がこの範囲であれば、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の接着性、架橋密度が良好となり、硬化物が脆くならないため好ましい。この特性により優れる点で、好ましくは1.5〜2.0である。
【0031】
本発明に用いられる予備組成物に配合される可塑剤は、特に限定されないが、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、フタル酸ジイソデシル等のフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、トリメリット酸、イソフタル酸、アジピン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体等が挙げられる。
上記可塑剤の配合量は、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物が適度な柔軟性を有し、また、取扱い性に優れた粘度を有する点で、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3〜40質量部であることが好ましい。この特性により優れる点で、5〜30質量部がより好ましい。
【0032】
本発明に用いられる予備組成物の製造方法は、特に限定されず、各成分の配合量も本発明の目的を逸脱しない範囲であれば特に限定されず、具体的には、例えば、上記ウレタンプレポリマー80質量部あたり、カーボンブラック70質量部、炭酸カルシウム15質量部、可塑剤20質量部を加えて、減圧下で撹拌して本発明に用いられる予備組成物を得ることができる。
【0033】
<化合物(A)>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に接着付与剤として含有される、トリメチロールプロパン(TMP)に2官能イソシアネートをNCO基とOH基の当量比(NCO/OH)が0.8〜1.5になるように反応させてなる化合物(以下、「化合物(A−1)」ともいう。)に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「化合物(A−2)」ともいう。)を、NCO基とNH基の当量比(NCO/NH)が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(A)(以下、「本発明に用いられる化合物(A)」ともいう。)は、NCO基と加水分解性シリル基をそれぞれ分子内に平均して1つ以上有する化合物である。
【0034】
上記化合物(A−1)に含有される2官能イソシアネートは、1分子内にイソシアネート基を2個有する化合物であれば特に限定されない。この2官能イソシアネートとしては、具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ジイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)等の脂環式ジイソシアネート;上記各ジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、HDIおよびXDIを用いることが、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の接着性が優れるため好ましい。
【0035】
上記2官能イソシアネートとTMPとの反応は、該2官能イソシアネートとTMPとを、NCO基とOH基の当量比が、0.8〜1.5となるように混合させて行う。該当量比がこの範囲であれば、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の接着性、架橋密度が良好となり、硬化物が脆くならないため好ましい。この特性により優れる点で、好ましくは0.9〜1.2である。
また、上記化合物(A−1)の製造は、通常のウレタンプレポリマーの製造と同様の方法で行うことができ、例えば、上述の当量比のTMPと2官能イソシアネートを、50〜100℃で加熱撹拌することによって行うことができる。また、必要に応じて、有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0036】
上記化合物(A−1)は、イソシアネート基を1分子中に少なくとも3個有することが好ましい。イソシアネート基含有量(NCO%)で表すと、該NCO%は、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上である。ここで、NCO%とは、化合物(例えば、化合物(A−1))の全質量に対するイソシアネート基の質量%を表す。
化合物(A−1)のNCO%がこの範囲であれば、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の硬化物が脆くならないため好ましい。
【0037】
このような化合物(A−1)としては、具体的には、TMPとHDIを反応させて得られるHDI−TMP付加体、TMPとXDIを反応させて得られるXDI−TMP付加体等が好適に例示される。HDI−TMP付加体の構造式を下記式(a)に示す。
上記化合物(A−1)としては、市販されているものを用いることもでき、具体的には、例えば、HDI−TMP付加体として武田薬品社製のD160N、XDI−TMP付加体として武田薬品社製のD110N等が挙げられる。
また、上記化合物(A−1)は、水酸基とイソシアネート基とが完全に反応した完全付加体でなくてもよく、未反応原料を含んでいてもよい。
【0038】
【化1】

【0039】
次に、上記化合物(A−2)について説明する。
上記化合物(A−2)は、下記式(b)で表される構造を有し、少なくともイミノ基(2級アミノ基)と加水分解性シリル基を有する化合物である。
【0040】
【化2】

【0041】
式(b)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して加水分解性を有する基またはアルキル基を示すが、これらのうち少なくとも1つは加水分解性を有する基である。シリル基に加水分解性を有する基が2つまたは3つ結合していると、本発明に用いられる化合物(A)の接着付与効果がより高まるため好ましく、R1、R2およびR3がすべて加水分解性を有する基であるのがより好ましい。R1、R2およびR3によって、用途に応じて、加水分解速度や接着性発現時間を調整することができる。加水分解性を有する基としては、具体的には、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうちでも加水分解性の穏やかなアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が入手容易であるので好ましい。
【0042】
また、アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜8のアルキル基であるのが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基等が挙げられ、これらの基が二重結合または三重結合を含んでいてもよい。
【0043】
上記式(b)において、R4 は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられ、接着性が優れる点からトリメチレン基がより好ましい。
【0044】
上記式(b)において、R5はアリール基を表す。アリール基としては、好ましくは、フェニル基、フェニルエーテル基、アニリノ基、フェニルチオエーテル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0045】
このような構造を有する本発明に用いられる化合物(A−2)としては、例えば、下記式(c)で表される構造を有するγ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましく挙げられる。
【0046】
【化3】

【0047】
本発明に用いられる化合物(A)は、上記化合物(A−1)の有するNCO基と、上記化合物(A−2)の有するイミノ基とが反応することにより生成する。この反応によりウレア基が生成されるが、従来ではこのウレア基の活性水素の反応性が高いために、長期間活性を損なわずに貯蔵することが困難であった。しかし、本発明に用いられる化合物(A−2)は、窒素原子にフェニル基が直接結合するため、その立体障害と電子吸引効果により、生成されたウレア基の活性水素の反応性が抑制され、長期間貯蔵しても活性が損なわれず、高い接着性を付与することができると考えられる。
【0048】
本発明に用いられる化合物(A)は、上記化合物(A−1)と上記式(b)で表される構造を有する化合物(A−2)との反応物であり、上記化合物(A−1)と上記化合物(A−2)とを、NCO基とNH基の当量比(NCO/NH)が1.8〜3.5、好ましくは2.0〜3.3となる当量比で反応させて得られた反応物である。
また、上記化合物(A)の製造は、通常のポリウレタンの製造と同様の方法で行うことができ、例えば、上述の当量比の化合物(A−1)と化合物(A−2)とを、20〜40℃、例えば30℃で撹拌することによって行うことができる。また、必要に応じて、有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0049】
本発明に用いられる化合物(A)を含有する一液湿気硬化型ウレタン組成物は、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性を損なわず、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れた組成物となるため有用である。
この接着性が優れる理由は、ガラスやシリコーン系の基体等の表面にあるシリル基に対してはシリル基が高い接着性を示し、また、アクリル系塗料等の表面にある水酸基に対してはイソシアネート基が高い接着性を示すためであると考えられる。シリル基およびイソシアネート基を有する本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、いずれの材料に対しても、接着性が非常に優れている。このため、例えば、ガラスの一部が難接着性のアクリル系塗料で塗布されている場合においても、本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物により接着することが可能となる。
また、上記化合物(A−1)が、上述したようにTMPと2官能イソシアネートとを反応させて得られる化合物であるため、イソシアネート基を3個有するビュレット体、イソシアヌレート体よりも極性が高く、難接着性塗板に対しても親和性を有するため接着性が優れると考えられる。
【0050】
<化合物(B)>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に接着付与剤として含有される、2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「化合物(B−1)」ともいう。)に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「化合物(B−2)」ともいう。)を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(B)(以下、「本発明に用いられる化合物(B)」ともいう。)は、NCO基と加水分解性シリル基をそれぞれ分子内に平均して1つ以上有する化合物である。
【0051】
本発明に用いられる化合物(B−1)に配合される2官能イソシアネートとしては、上記化合物(A−1)に用いる2官能イソシアヌレートと基本的に同様であり、下記式(d)に示すHDIのイソシアヌレート体、下記式(e)に示すHDIのビュレット体が得られる化合物(B)の接着付与効果が高いため好ましい。
【0052】
【化3】

【0053】
上記2官能イソシアネートと反応させるトリオールとしては、1分子中に3個の水酸基を有するものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール等が挙げられる。中でも、物性調整と相溶性という点から、プロパントリオールが好ましい。
【0054】
上記2官能イソシアネートと上記トリオールとの反応は、2官能イソシアネートとトリオールとを、NCO基とOH基の当量比(NCO/OH)が、1.5〜2.5となるように混合させて行う。該当量比がこの範囲であれば、得られる本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の接着性、架橋密度が良好となり、硬化物が脆くならないため好ましい。この特性により優れる点で、好ましくは1.8〜2.2である。
上記2官能イソシアネートと上記トリオールとを反応させてなる化合物の製造は、通常のウレタンプレポリマーの製造と同様の方法で行うことができ、例えば、上述の当量比のトリオールと2官能イソシアネートを、50〜100℃で加熱撹拌することによって行うことができる。また、必要に応じて、有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0055】
上記2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、上記2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物は、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0056】
上記化合物(B−2)は、本発明に用いられる化合物Aに配合される上記化合物(A−2)と同様である。
【0057】
本発明に用いられる化合物(B)は、上記化合物(B−1)と上記化合物(B−2)との反応物であり、上記化合物(B−1)と上記化合物(B−2)とを、NCO基とNH基の当量比(NCO/NH)が1.8〜3.5、好ましくは2.0〜3.3となる当量比で反応させて得られた反応物であることが好ましい。
また、上記化合物(B)の製造は、通常のポリウレタンの製造と同様の方法で行うことができ、例えば、上述の当量比の化合物(B−1)と化合物(B−2)とを、20〜40℃、例えば30℃で撹拌することによって行うことができる。また、必要に応じて、有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0058】
本発明に用いられる化合物(B)を含有する一液湿気硬化型ウレタン組成物は、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性を損なわず、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れた組成物となるため有用である。
この接着性が優れる理由は、上記化合物(A)と同様であるが、特に、上記化合物(B−1)を含有することによって、相溶性が変わり、界面へ移行しやすくなるため接着性が優れると考えられる。
【0059】
<化合物(C)>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に接着付与剤として含有される、2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)は、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物に難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性を付与するだけでなく、3官能の化合物(C)と2官能の化合物(A)および/または化合物(B)の含有量を調節することで、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物の高温高湿硬化性、強度発現性、硬度、伸び性等の特性を用途に応じて調節することができる。
本発明に用いる化合物(C)は、上記化合物(B−1)と基本的に同様である。
【0060】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、上記予備組成物の含有量をX質量部、上記化合物(A)の含有量をA質量部、上記化合物(B)の含有量をB質量部、上記化合物(C)の含有量をC質量部としたときに、下記式(1)を満たす。
【0061】
0.10X≦100(A+B+C)≦7.0X (1)
【0062】
上記式(1)を満たす場合は、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物の高温高湿硬化性、強度発現性、接着発現性に優れる。
この特性により優れる点で、下記式(4)を満たすのが好ましい。
【0063】
0.30X≦100(A+B+C)≦5.0X (4)
【0064】
<ジモルフォリノジエチルエーテル>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、上記予備組成物100質量部に対して、ジモルフォリノジエチルエーテルを0.01〜0.15質量部含有する。ジモルフォリノジエチルエーテルは、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と空気中の水分との反応を触媒するので、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物は硬化性に優れ、また、イソシアネート基と水以外の活性水素との反応を触媒しにくいので貯蔵安定性に優れる。
上記ジモルフォリノジエチルエーテルの含有量が上記の範囲であると、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物の空気中での硬化性に優れ、また、密封保管中の貯蔵安定性に優れる。この特性により優れる点から、0.09〜0.13質量部が好ましく、0.10〜0.12質量部が特に好ましい。
【0065】
<N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、上記予備組成物100質量部に対して、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンを0.01〜0.15質量部含有する。ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と空気中の水分との反応を触媒するので、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物は硬化性に優れ、また、高温高湿硬化性に優れる。
上記N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンの含有量が上記の範囲であると、難接着性塗板等の種々の被着体との接着性に優れ、また、高温高湿硬化性に優れる。この特性により優れる点から、0.03〜0.1質量部が好ましく、0.05〜0.08質量部が特に好ましい。
【0066】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、上記予備組成物の含有量をX質量部、上記ジモルフォリノジエチルエーテルの含有量をY質量部、上記N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンの含有量をZ質量部としたときに、上記各成分の範囲内で、下記式(2)および(3)を満たす。
【0067】
Z≦Y (2)
【0068】
0.10X≦100(Y+Z)≦0.25X (3)
【0069】
上記式(2)を満たす場合は、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物の形状維持性、貯蔵安定性に優れる。
上記式(3)を満たす場合は、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物の形状維持性、貯蔵安定性、高温高湿下での硬化性に優れる。
【0070】
<2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、上記予備組成物100質量部に対して、下記式(II)で表される2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを0.010〜0.30質量部含有する。該2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンは、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と被着体表面の活性水素との反応を触媒するので、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物は、難接着性塗板等の種々の被着体との接着性に優れる。
【0071】
【化2】

【0072】
上記2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンの含有量が上記の範囲であると、難接着性塗板等の種々の被着体との接着性に優れ、また、貯蔵安定性に優れる。この特性により優れる点から、0.05〜0.15質量部が好ましく、0.06〜0.12質量部が特に好ましい。
【0073】
<有機スズ化合物>
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、上記予備組成物100質量部に対して、有機スズ化合物を0.0010〜0.2質量部含有する。該有機スズ化合物は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と被着体表面の活性水素との反応を触媒するので、得られる一液湿気硬化型ウレタン組成物は、難接着性塗板等の種々の被着体との接着性に優れる。
上記有機スズ化合物の含有量が上記の範囲であると、難接着性塗板等の種々の被着体との接着性に優れ、また、耐熱接着性に優れる。この特性により優れる点から、0.0010〜0.05質量部が好ましく、0.002〜0.03質量部が特に好ましい。
【0074】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に含有される有機スズ化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、第一スズオクテート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジオクチルスズマレエート等が挙げられる。中でも、難接着性塗板等への接着性に優れるという点から、ジオクチルスズラウレートが好ましい。
【0075】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物に含有される有機スズ化合物には、上記有機スズ化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物においては、上記成分の他に、調製の容易性、塗布工程の作業性を改善するため、有機溶媒を含有させることもできる。
有機溶媒としては、上記成分に対して不活性であり、かつ、適度な揮発性を有するものであれば特に限定されない。
有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、イソヘキサン、メチレンクロリド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、トルエン、ミネラルスピリット、メチルエチルケトンが好ましい。
これらの有機溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物には、上記有機溶媒を1種用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。また、上記有機溶媒はVOC削減の観点から用いなくてもよい。
【0077】
さらに、本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物には、必要に応じて、他の添加剤を含有させることもできる。例えば、サイアソルブ(Cyasorb UV24Light Absorber、アメリカン・サイアナミド社製)、ウビヌル(Uvinul D−49、D−50、N−35、N−539、ジェネラル・アニリン社製)等の紫外線吸収剤等を含有させると、紫外線や可視光線を遮蔽または吸収し耐光性の向上に有効である。
さらに、増粘剤、マロン酸ジエチル等の安定剤等を含有させてもよい。
【0078】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物の製造方法は、特に限定されないが、具体的には、例えば、上記予備組成物に、上記化合物(A)、上記化合物(B)および上記化合物(C)の少なくとも1種と、ジモルフォリノジエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを有機溶媒または可塑剤に溶かして加え、さらに上記有機スズ化合物を加えて、減圧下で十分混練して本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物とするのが好ましい。
【0079】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、ウレタンプレポリマーと充填剤と可塑剤とからなる予備組成物と、上記化合物(A),上記化合物(B)および上記化合物(C)の少なくとも1種と、ジモルフォリノジエチルエーテルと、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンと、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと、有機スズ化合物とを、上述の範囲で含有することにより、高温高湿硬化性、形状維持性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び等の特性に優れ、さらに、難接着性塗板等の種々の被着体に対するノンプライマー接着性に優れる。
【0080】
本発明の一液湿気硬化型ウレタン組成物は、その用途、適用条件等は、特に限定されないが、上述の優れた特性を有するため、車体と窓ガラスとの接着等の自動車の分野等に好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜18、比較例1〜14)
<予備組成物の調製>
ポリエーテルトリオール(エクセノール5030、数平均分子量約5000、旭硝子社製)と、ポリエーテルジオール(エクセノール2020、数平均分子量約2000、旭硝子社製)とを質量比70/30で混合し、120℃で減圧下脱水後、溶融した4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(アイソネート125M、三井武田ウレタン社製)をNCO基/OH基の当量比が1.7になる量を加え、窒素置換中80℃で24時間混合撹拌後、ウレタンプレポリマーを得た。このようにして得られたウレタンプレポリマーに該ウレタンプレポリマー80質量部当り、カーボンブラック(エルフテック8、キャボット社製)70質量部、可塑剤としてフタル酸ジイソデシル(DIDP、三菱化学社製)20質量部、炭酸カルシウム(SB青、白石カルシウム社製)15質量部を添加し真空下でミキサーを用いて1時間混合し、予備組成物を得た。
【0082】
<化合物(A)の合成>
HDI−TMP付加体(D160N、三井武田ウレタン社製、NCO%:12.8%)100gに、NCO/NHの値が3/1となるように、γ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(Y9669、日本ユニカー社製)26gを滴下しながら反応させることで化合物(A)(NCO%:6.8%)を得た。
【0083】
<化合物(B)の合成>
HDIイソシアヌレート体(D170N、三井武田ウレタン社製、NCO%:27%)100gに、NCO/NHの値が3/1となるように、γ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(Y9669、日本ユニカー社製)18gを滴下しながら反応させることで化合物(B)(NCO%:15.3%)を得た。
【0084】
続いて、予備組成物100質量部に対して、下記第1表に示す量の化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)(HDIイソシアヌレート変性体、D170N、三井武田ウレタン社製、NCO%:27%)、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE、ハンツマン社製)、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン(X−DM、エアプロダクツ社製)、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(Me−DABCO、エアプロダクツ社製)およびジオクチルスズジラウレート(DOTL)(U−810、日東化成社製)を加え、さらに安定剤としてマロン酸ジエチル(DEM、井上香料社製)を投入して、10分間混合し一液湿気硬化型ウレタン組成物を得た。
得られた一液湿気硬化型ウレタン組成物について、下記の方法に従って、高温高湿硬化性、垂下性、貯蔵安定性、耐熱接着性、破断伸び、および各種塗板に対する接着性を評価した。結果を第1表に示す。
【0085】
(高温高湿硬化性試験)
硬化試験評価用被着体(プライマー(MS−90、横浜ゴム社製)を塗布したガラス)に一液湿気硬化型ウレタン組成物を塗布し、20℃、60RH%下で3時間放置した後、40℃の温水に24時間浸漬させた。この一液湿気硬化型ウレタン組成物の硬化物の一端を把持して180度剥離し、破壊状態を観察した。該硬化物の凝集破壊をCF(数値は、該硬化物を剥離した部分の面積に対する硬化物の凝集破壊が起きた面積(%))、プライマー/硬化物間の界面剥離をPS(数値は、該硬化物を剥離した部分の面積に対するプライマー/硬化物間の界面剥離が起きた面積(%))とした。
【0086】
(垂下性試験)
塗布した一液湿気硬化型ウレタン組成物の形状維持性を評価するために垂下性試験を行った。図1は、垂下性試験の一例を示す概念図である。
図1に示すように、ガラス板3に一液湿気硬化型ウレタン組成物1を底辺6mm、高さ10mmの直角三角形ビードで帯状に押し出し、直ちにガラス板3に保持具4を取り付け90°の角度に保持し、20℃、65%RH下で30分放置後の一液湿気硬化型ウレタン組成物2の頂点の垂れ下がりの距離hを測定した。
【0087】
(貯蔵安定性試験)
一液湿気硬化型ウレタン組成物を密閉容器に充填して窒素置換し、40℃で7日間放置し、押出し粘度を測定し、初期粘度に対する増粘率(%)を求めた。
【0088】
(耐熱接着性試験)
硬化試験評価用被着体(プライマー(MS−90、横浜ゴム社製)を塗布したガラス)に一液湿気硬化型ウレタン組成物を塗布し、20℃、60RH%下で7日間放置した後、120℃で5日間放置し、20℃まで徐冷した。この一液湿気硬化型ウレタン組成物硬化物の一端を把持して180度剥離し、破壊状態を観察した。該硬化物の凝集破壊をCF(数値は、該硬化物を剥離した部分の面積に対する硬化物の凝集破壊が起きた面積(%))、プライマー/硬化物間の界面剥離をPS(数値は、該硬化物を剥離した部分の面積に対するプライマー/硬化物間の界面剥離が起きた面積(%))とした。
【0089】
(破断伸び試験)
得られた一液湿気硬化型ウレタン組成物の硬化物を厚さ2mmのダンベル状試験片(ダンベル状3号形)に切り出し、JIS K6251−1993に準拠して、破断伸び(%)を測定した。
【0090】
(塗板A、Bに対する接着性試験)
下記の塗料A、Bをそれぞれ鋼板に塗布した塗板A、Bに、それぞれプライマーを用いず直接一液湿気硬化型ウレタン組成物を塗布し、20℃、60RH%下で168時間放置させた。この一液湿気硬化型ウレタン組成物硬化物の一端を把持して180度剥離し、破壊状態を観察する。該硬化物の凝集破壊をCF(数値は、該硬化物を剥離した部分の面積に対する硬化物の凝集破壊が起きた面積(%))、塗板/硬化物間の界面剥離をAF(数値は、該硬化物を剥離した部分の面積に対する塗板/硬化物間の界面剥離が起きた面積(%))とした。
塗料A:RK−8012(デュポン社製)
塗料B:TKU−1050(PPG社製)
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、垂下性試験の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0096】
1 初期状態の一液湿気硬化型ウレタン組成物
2 30分放置後の一液湿気硬化型ウレタン組成物
3 ガラス板
4 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量がそれぞれ1000〜7000のポリエーテルトリオールとポリエーテルジオールとの混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネートをNCO基とOH基の当量比が1.1〜2.5になるように反応させてなるウレタンプレポリマーと充填剤と可塑剤とからなる予備組成物100質量部と、
トリメチロールプロパンに2官能イソシアネートをNCO基とOH基の当量比が0.8〜1.5になるように反応させてなる化合物に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(A)、
2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に、アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物を、NCO基とNH基の当量比が1.8〜3.5になるように反応させてなる化合物(B)、ならびに、
2官能イソシアネートのイソシアヌレート体、ビュレット体、および、2官能イソシアネートとトリオールとを反応させてなる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
ジモルフォリノジエチルエーテル0.01〜0.15質量部と、
N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン0.01〜0.15質量部と、
2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン0.010〜0.30質量部と、
有機スズ化合物0.0010〜0.2質量部とを含有し、
前記予備組成物の含有量をX質量部、前記化合物(A)の含有量をA質量部、前記化合物(B)の含有量をB質量部、前記化合物(C)の含有量をC質量部、前記ジモルフォリノジエチルエーテルの含有量をY質量部、前記N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリンの含有量をZ質量部としたときに、下記式(1)〜(3)を満たす一液湿気硬化型ウレタン組成物。
0.10X≦100(A+B+C)≦7.0X (1)
Z≦Y (2)
0.10X≦100(Y+Z)≦0.25X (3)
【請求項2】
前記有機スズ化合物を0.0010〜0.05質量部含有する請求項1に記載の一液湿気硬化型ウレタン組成物。
【請求項3】
下記式(4)を満たす請求項1または2に記載の一液湿気硬化型ウレタン組成物。
0.30X≦100(A+B+C)≦5.0X (4)
【請求項4】
前記アリール基が窒素原子に直接結合したイミノ基を有し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物が、γ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランであり、前記2官能イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1〜3のいずれかに記載の一液湿気硬化型ウレタン組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−131802(P2006−131802A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323887(P2004−323887)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】