説明

一種のオリゴヌクレオチド及びその応用

【課題】Toll様受容体9アゴニストがヒト末梢血単核細胞増殖に対する刺激作用を抑制し、Toll様受容体9アゴニスト、I型単純ヘルペスウィルス、インフルエンザウィルス及び全身性紅斑性狼瘡病人の血清がヒト末梢血単核細胞のインターフェロンを産生することに対する刺激作用を抑制し、個体がサイトカイン媒介された致死性ショックを発生することを抑制するオリゴヌクレオチドの提供。
【解決手段】一種のヌクレオチド配列が5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3'であるオリゴヌクレオチドであり、該オリゴヌクレオチドが全身性紅斑性狼瘡、セプシス、多臓器機能障害症候群及びその他の免疫介在性の疾病を治療するために用いられうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種のオリゴヌクレオチド及び当該オリゴヌクレオチドを利用して免疫介在性の疾病を治療するための応用に関わる。免疫介在性の疾病は、自己免疫疾病、移植拒絶、過敏反応、自己抗原や微生物がホストの免疫系を過剰刺激するために引き起こされる疾病とToll様受容体(TLR)が介在する疾病を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3'(SEQ ID NO:1)ヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド及び当該オリゴヌクレオチドを利用し、免疫介在性の疾病を治療するための応用を提供する。
【0003】
免疫系は生体を細菌や寄生虫、真菌、ウイルスの感染及び腫瘍細胞の成長から防護することができる。しかしながら、免疫応答には、時々望んでいないものもあるし、免疫介在性疾病を引き起こすこともある。免疫介在性疾病には、自己免疫疾病、移植拒絶、過敏反応、微生物がホストの免疫系を過剰刺激するために起こされる疾病とToll様受容体(TLR)が介在する疾病が含まれる。
【0004】
自己免疫疾病(autoimmune diseases)は、獲得性免疫応答と固有免疫応答によって、又は内因性及び/又は外因性の抗原によって引き起こされる。細菌、寄生虫、真菌、ウィルス由来の外来物質は、自己蛋白質に似ており、個体の免疫系を刺激して、自己細胞及び組織に対する免疫反応を起こし、自己免疫疾病を引き起こす。自己免疫疾病には、全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus,SLE)と関節リウマチ(rheumatoid arthritis)が含まれるが、これらに限定されない。移植拒絶は、移植物の受容者(ホスト)の移植器官又は組織に対する免疫応答によって引き起こされる器官又は組織の移植の結末である。主体が移植物、例えば、腎臓、膵臓、心臓、肺臓、骨髄、角膜及び皮膚を移植される場合、当該主体は移植物に対して免疫応答(拒絶)を起こし得る。過敏反応(Hypersensitivity)は、有害な作用を有する不適当な免疫応答であり、組織の重大な損傷さらには死を招く。過敏反応は四つのタイプ、例えば、タイプI、II、III及びIVに分けられる。微生物によるホストの免疫系の過剰応答に関連する疾病はウイルス、例えば、インフルエンザウィルス及びその他の微生物の感染によって引き起こされる。インフルエンザウィルスやグラム陰性菌(Gram-negative bacterium)に感染した場合、侵入者に対する過剰免疫応答は、患者の致命要因ともなり得る。当該応答は、サイトカインの過剰産生にて特徴付けられる。敗血性ショック症候群の研究は、サイトカインの過剰産生/異常産生は、サイトカイン介在致死性ショック(cytokine-mediated lethal shock)に起因する急速死を招くことを示している(Slifka MK,et al. J Mol Med 2000;78(2):74-80)。グラム陰性菌の感染に引き続く敗血性ショックが重病人の急速死の主因である。サイトカインの過剰な産生は、サイトカイン介在性致死性ショックで特徴付けられる敗血症の一因となることが知られている(Espat NJ, et al, J Surg Res. 1995 Jul; 59(1): 153-8)。多臓器機能障害症候群(Multiple organ dysfunction syndromes,MODS)は重篤な敗血症及びショックにおける罹患と死亡の主因である。ホストサイトカインの過剰産生の結果としてのサイトカイン介在致死ショックは、MODSに至る主メカニズムと考えられる(Wang H,et al. Am J Emerg Med 2008 Jul;26(6):711-5)。Toll様受容体(TLR)が介在する疾病(Toll-like receptor(TLR)-mediated disease)は、Toll様受容体(Toll-like receptor:TLRs)の活性化によって引き起こされる疾病である。TLRsは、微生物由来の分子構造(病原体関連分子パターン:pathogen-associated molecular patterns, PAMPs)を認識する一群の受容体である。TLRsを発現する免疫細胞は、PAMPsと結合することにより活性化される。TLRsは、多くの病原体由来の生産物を認識して、活性化される。細菌のリポ多糖体(LPS)はTLR4に、lipotechoic acidとジアシルリポペプチドはTLR2- TLR6ダイマーに、トリアシルリポペプチドはTLR2- TLR1ダイマーに、合成された又は細菌又はウィルスに由来するCpG含有オリゴヌクレオチド(CpG ODN)はTLR9に、細菌の鞭毛繊維はTLR5に、ザイモサンはTLR2- TLR6ダイマーに、呼吸器多核体ウイルス(RSV)からのF蛋白はTLR4に、ウイルス由来二本鎖 RNA(dsRNA)とpoly I:C,合成アナログ dsRNA は TLR3に、ウイルスDNA は TLR9に、 一本鎖ウィルス RNA(VSV及びインフルエンザウイルス)は TLR7とTLR8に、それぞれ認識される(Foo Y. Liew, et al. Nature Reviews Immunology. Vol.5, June 2005, 446-458)。近年、TLRの活性化が敗血症、拡張型心筋症、糖尿病、実験的自己免疫性脳脊髄炎、全身性紅斑性狼瘡、アテローム性動脈硬化症、喘息、慢性閉塞性肺疾病、臓器不全を含むある種の疾病の発生と結び付けられている(Foo Y Liew, et al. Nature Review Immunology,Vol 5, 2005 446-458)。自己DNAによるTLR9に対する活性化は、SLE(Christense SR, et al. Immunity 2006;25:417-28)やリウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)(Leadbetter EA,et al. Nature 2002;416:603-7;Boule MW, et al. J Exp Med 2004;199:1631-40)を含む自己免疫疾病の発展において重要な役割を果たしているとされている。また、TLR活性化の結果として高レベルのインターフェロン(interferons, IFNs)の産生は、全身性紅斑性狼瘡の発生の一因となると報告されている(Barrat FI,et al. J Exp Med 2005;202:1131-9;Wellmann U.et al. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:9258-63)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明において、核酸配列が5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3'であるオリゴヌクレオチドを開示する。これはTLR9アゴニスト(TLR9 agonist)によって活性化されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)の増生を抑制し、TLR9アゴニスト、HSV-1、インフルエンザウィルス及びSLE患者の血清によって誘導されるhPBMCからのインターフェロン産生を抑制し、マウスをサイトカイン誘導性ショックから救う。したがって、このようなオリゴヌクレオチドは、免疫介在性の疾病の治療応用として有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオリゴヌクレオチドはTLR9の活性化を抑制する。TLR9アゴニストが固有免疫応答(innate immune response)と獲得性免疫応答(adaptive immune response)を活性化する、との報文がある(Arthur M Krieg Nature Reviews Drug Discovery, Vol 5 June 2006,471-484)。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpG ODN)が、TLR9アゴニストである(D M.Klinman, Nat Rev,Immunol 4(2004)249-258)。本発明のオリゴヌクレオチドは、CpG ODNによって刺激を受けたhPBMCの増生とインターフェロンの産生を抑制する。これは、当該オリゴヌクレオチドがTLR9の活性化に関係した疾病の治療に使用し得ることを指し示している。TLR9の活性化がSLE(Barrat FJ,et al. Exp Med 2005;202:1131-9;Wellmann U,et al. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:9258-63;Christensen SR,et al.Immunity 2006;25:417-28)とリウマチ性関節炎(Leadbetter EA, et al.Nature 2002;416:603-7;Boule MW,et al. J Exp Med 2004;199:1631-40)の発生の一因となると報告されているので、本発明のオリゴヌクレオチドは、TLR9の活性化を抑制することにより、SLEとリウマチ性関節炎の治療応用として使用することができる。
【0007】
本発明のオリゴヌクレオチドは、TLR9アゴニスト、HSV-1、インフルエンザウィルス及びSLE患者からの血清によって誘導されるhPBMCからのインターフェロン産生を抑制する(Barrat FJ,et al.J Exp Med 2005;202:1131-9; Wellmann U.et al. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:9258-63)ので、本発明のオリゴヌクレオチドは、IFNの産生を抑制することによりSLEの治療応用として使用することができる。
【0008】
本発明のオリゴヌクレオチドは、インフルエンザウィルスによって誘導されるhPBMCからのインターフェロンの産生を抑制する。インフルエンザウィルスがTLR-7とTLR-8を活性化することができるとの報文がある(Wang JP,et al. Blood 2008 Jun 10[Epub ahead of print])ので、本発明のオリゴヌクレオチドは、TLR-7とTLR-8を抑制することにより、Toll様受容体(TLR)介在疾病の治療応用として使用することができる。
【0009】
本発明のオリゴヌクレオチドは、HSV-1によって誘導されるhPBMCからのインターフェロンの産生を抑制する。HSV-1がTLR9を活性化することができるとの報文がある(Hubertus Hochrein et al. PNAS,101,11416-11421)ので、本発明のオリゴヌクレオチドは、TLR9の活性化を抑制することによりSLEを含む(但しそれには限定されない)Toll様受容体(TLR)介在性疾病の治療応用として使用することができる。
【0010】
本発明のオリゴヌクレオチドの体内活性を検討するために、サイトカイン介在致死性ショックのマウスモデルが用いられた。このマウスモデルは、予めD-ガラクトサミン(D-Gal)で感作された (presensitized) マウスにCpG ODNを注射することにより作製された。作製された後、モデルマウスは12〜24時間以内に死亡した。血漿中のサイトカインの分析より、腫瘍壊死因子 (tumor necrosis factor, TNF)とインターロイキン-12(interleukin-12,IL-12) とγ-インターフェロン(gamma interferon)の過剰産生が明らかにされた(Marshall AJ,et al. infect Immun 1998 Apr;66(4):1325-33;Peter M, Bode K,et al. Immunology 2008 Jan:123(1):118-28)。当該モデルを用いて、本発明のオリゴヌクレオチドはマウスをサイトカイン介在致死性ショックから救えることを我々は証明した。サイトカイン介在致死性ショックは敗血性ショック (Slifka MK,et al. J Mol Med 2000;78(2):74-80;Espat NJ,et al. J Surg Res 1995 Jul;59(1):153-8) と多臓器機能障害症候群 (Multiple organ dysfunction syndromes, MODS) (Wang H,et al. Am J Emerg Med 2008 Jul;26(6):711-5)発生の一因であるため、本発明のオリゴヌクレオチドは、サイトカイン介在致死性ショックからホストを救うことにより、敗血症とMODSの治療応用として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
特に注記のない限り、本発明における全ての用語はこの開示が属する分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を持つ。単数の用語“a”、“an”及び“the”はコンテクストがほかのことを表していない限り複数の言及を含む。同様に、用語“or”はコンテクストがほかのことを表していない限り“and”を含む。コンフリクトが生じた場合、本願の明細書(用語の説明を含む)に制御される。更に、材料、方法及び実施例は例示であって、それに限定されることを意図してはいない。“Treat”, “treating”又は“treatment”は文法に関係なしに同じ意味を持つ。同様に“prevent”, “preventing”or“prevention" は文法に関係なしに同じ意味を持つ。
【0012】
“オリゴヌクレオチド”:「オリゴヌクレオチド」は、ポリヌクレオチド、即ち、糖(例えばジオキシリボース)、ホスファイト基及び交換可能な有機塩基に結合して構成する分子であり、当該有機塩基が、置換されたピリミジン(Py)(例えば、シトシン(C)、チミン(T))又は置換されたプリン(Pu)(例えば、アデニン(A)又はグアニン(G))のいずれかである、を意味する。ここで使われている用語「オリゴヌクレオチド」はオリゴジオキシリボヌクレオチド(ODN)を指す。オリゴヌクレオチドは、既存の核酸ソース(例えば、グノム(genomic)又はcDNA)から得ることができるが、合成物が好ましい。本発明のオリゴヌクレオチドは、市販されている種々の自動核酸合成機にて合成することができる。これらのオリゴヌクレオチドは「合成オリゴヌクレオチド」を指す。
【0013】
“化学修飾”:本発明に開示されているオリゴヌクレオチドは、天然DNAに比べ、種々の化学修飾が可能である。例えば、ヌクレオシド間のリン酸ジエステル架橋(phosphodiester internucleoside bridge)、リボース単位及び/又は天然ヌクレオシド塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)。当該修飾は、オリゴヌクレオチドの合成中又は合成後のいずれでも行い得る。合成中のそれは、修飾されるベースの内部又はその末端に行われ、合成後のそれは、活性基(アミノモディファイヤーを介して、3'又は5'の水酸基を介して又はホスフェート基を介して)を用いてなすことができる。当業者は種々の化学修飾を知っている。本発明のオリゴヌクレオチドは、1個又はそれ以上の化学修飾がなされてもよい。天然のDNAを構成する同じ配列のオリゴヌクレオチドと比べ、本発明のオリゴヌクレオチドの化学修飾は、局部のヌクレオシド間リン酸ジエステル架橋及び/又は局部のリボース単位及び/又は局部のヌクレオシド塩基に位置することができる。化学修飾は本発明のオリゴヌクレオチドのバックボーン修飾を含む。ここにおいて、本発明のオリゴヌクレオチドの修飾されたバックボーンには、ホスホロチオエートバックボーンが含まれるが、これに限定されない。ホスホロチオエートバックボーンは、核酸分子の安定な糖ホスフェートバックボーンを指す。その中で、少なくとも一つのヌクレオチド間の結合中の非架橋ホスフェートの酸素がイオウで置換される。一実施例において、各又は全てのヌクレオチド間の結合中の非架橋ホスフェートの酸素がイオウで置換される。他のバックボーン修飾は、非イオン性DNAアナログ、例えば、ホスホン酸アルキル、ホスホン酸アリル(そこでは、電荷を持っているホスホン酸塩の酸素がアルキル、アリル基で置換される)、リン酸ジエステル及びアルキルリン酸トリエステル(そこでは、電荷を持っている酸素部分がアルキル化される)での修飾を意味する。他の実施例では、オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート/リン酸ジエステルのキメラ体であることができる。化学修飾はまた本発明に開示されたオリゴヌクレオチドの塩基置換体を含む。置換されたプリン及びピリミジンは、C−5プロピンピリミジン及び7-deaza-7の置換されたプリンであることができる。置換されたプリンとピリミジンは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、その他の天然及び非天然に出現するヌクレオ塩基を含むが、これらに限定されない。また、本発明のオリゴヌクレオチドの化学修飾はさらにはオリゴヌクレオチドの塩基修飾を含む。修飾された塩基は、DNA中に典型的に見出される天然に出現する塩基(例えば、A、T、C、G)とは化学的に異なる塩基であるが、これらの天然に出現する塩基と基本的な化学構造をシェアしている。本発明のオリゴヌクレオチドは、シチジン誘導体を用いて修飾することができる。用語“シチジン誘導体”はシチジン様ヌクレオシド(シチジンを除く)を指す。用語“チミジンヌクレオシド誘導体”は、チミジン様ヌクレオチド(チミジンを除く)を指す。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの一方又は両方の末端に、ジオール、例えば、テトラエチレングリコール又はヘキサエチレングリコールを連結することで化学的に修飾することができる。
【0014】
“免疫介在性疾病”:「免疫介在性疾病」は、主体が望まない免疫応答により引き起こされる疾病である。当該疾病は、自己免疫疾病、移植拒絶、過敏反応、微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病及びTLR活性化と結びついた疾病を含む。本発明に開示されたオリゴヌクレオチドは、免疫介在性疾病の治療応用として使用することができる。
【0015】
“免疫応答”:「免疫応答」は、免疫系の細胞、例えば、B細胞、T細胞、NK細胞、樹状細胞、好中球及びマクロファージの刺激に対しする応答である。当該応答は、固有免疫応答と獲得性(特異的)免疫応答を含む。獲得性(特異的)免疫応答は、体液性免疫応答と細胞性免疫応答を含む。
【0016】
“免疫介在性疾病を予防する又は治療する”:ここにいう「予防」とは、主体における免疫介在性疾病の完全進展を防ぐことを指し、「治療」とは、主体における治療法上の介入を指し、免疫介在性疾病の、前兆又は症状を軽減し、進展を停止させ又は病理条件を排除する。
【0017】
“主体”:ここにいう「主体」とは、ヒト及び非ヒト脊椎動物を指す。非ヒト脊椎動物は、非ヒト霊長類、家畜及び愛玩動物のことである。本発明のオリゴヌクレオチドは、主体における免疫介在性疾病の予防又は治療のために施され得る。
【0018】
“自己免疫疾病”:用語「自己免疫疾病」とは、自己耐性の崩壊によって引き起こされた疾病を指す。それは、自己抗原に対して獲得性及び固有免疫系が応答し、そして細胞と組織の損傷に至らしめる。自己免疫疾病は、それらが関与する単一器官、若しくは単一細胞タイプ、又は多器官若しくは組織にてしばしば特徴付けられる。自己免疫疾病はまた、“コラーゲン”、“コラーゲン−血管”、又は“結合組織”疾病を指す。自己免疫疾病はしばしば過敏反応と結び付けられる。本発明のオリゴヌクレオチドは、種々のタイプの自己免疫疾病の治療及び予防として有益である。特に、自己免疫疾病の限定されない例には、全身性紅斑性狼瘡、インスリン依存性(I型)糖尿病、炎症性関節炎、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、自己免疫性肝炎、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性悪性貧血、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性睾丸炎、獲得性血友病、強直性脊椎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、瘢痕性類天疱瘡、抗リン脂質抗体症候群、心筋症、寒冷凝集素症、円板状エリテマトーデス、交感神経性眼炎、特発性混合性クリオグロブリン血症、IgA腎症、若年性関節炎、全身性硬化症、 HYPERLINK "http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%90%E7%AF%80%E6%80%A7%E5%A4%9A%E7%99%BA%E5%8B%95%E8%84%88%E7%82%8E" \o "結節性多発動脈炎" 結節性多発動脈炎、多発軟骨炎、皮膚筋炎、原発性後天性無γ-グロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、高免疫グロブリンE症、進行性全身性硬化症、乾癬、ライテル症候群、結節症、スティッフマン症候群、ブドウ膜炎、血管炎、尋常性白斑、橋本病、Goopastute症、悪性貧血、アジソン病、シェーグレン症候群、重症筋無力症、Grave症、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎(N Engl J Med,Vol 345,No.5,August 2,p340-350)が含まれる 。DNA又はRNA含有する微生物から放出されるDNA又はRNAは、自己DNA又はRNAを含有する複合体に対して特異な自己抗体の産生を刺激し、ひいては自己免疫疾病、例えば、SLE(これには限定されない)を招くことができる。
【0019】
“過敏反応”:「過敏反応」とは、内外来性抗原に対する体液性又は細胞性(免疫)応答の結果として引き起こされる疾病を指し、それは四つの類型を分けられる。I型過敏反応(しばしば、過分反応型、即応型、アトピー性、特応性のIgE媒介過敏反応又はアレルギーとも呼ばれる)は、通常、IgE感作された好塩基球及び肥満細胞が特異性外来性抗原と接触した後に放出される薬理活性成分、例えば、ヒスタミン、過敏反応の遅延反応性物質(SRS-A)及び好酸球走化性因子(ECF)に起因する。I型過敏反応には、アレルギー性外来性喘息、季節性アレルギー性鼻炎と全身性アナフィラキシーを含むが、これらに限定されない。II型過敏反応(細胞毒性、細胞溶解性、補体依存性又は細胞刺激性過敏反応とも呼ばれる)は、抗体が自己の細胞若しくは組織の抗原を認識し、又は細胞若しくは組織とカップリングされた抗原若しくはハプテンを認識することに起因する。II型過敏反応には、自己免疫性溶血性貧血、顆粒球減少症、胎児赤芽球症、グッドパスチャー症候群が含まれるが、これらには限定されない。III型過敏反応(毒性複合体、可溶性複合体又は免疫複合体型過敏反応とも呼ばれる)は、循環している可溶性抗原抗体複合体の血管又は組織中の沈殿に起因し、免疫複合体の沈殿サイトにおける重篤な炎症反応を伴う。III型過敏反応には、Arthurs反応、血清病、全身性紅斑性狼瘡及び糸球体腎炎が含まれるが、これらに限定されない。IV型過敏反応(しばしば、細胞性、細胞介在の、遅発性又はツベルクリン型過敏反応とも呼ばれる)は、感作されたT細胞によって引き起こされ、それは特異性抗原との接触に起因する。IV型過敏反応には、接触性皮膚炎と同種異体移植拒絶が含まれるが、これらに限定されない(Richard A GoldsbyThomas J Kindt Barbara A Osborne Janis Kuby Immunology, Fifth Edition, 2003, WHFREEMAN AND COMPANY)。
【0020】
“微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病”:微生物の侵入が酷くなると、ある時、主体に全身性炎症反応を起こすことがあり、微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病を招き得る。疾病が進展した場合、例えば、インフルエンザウィルスA(H5NI)又は細菌に感染した場合に、血液中にかなり高レベルの下記の物質が見られる:TNF-α、IL-1、IL-6、IL-12、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、ケモカインのインターフェロン誘導タンパク質10、単球遊走因子1、IL-8、IL-1-β。このような応答は、敗血症(sepsis)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び多臓器機能障害症候群病人において、サイトカイン介在致死性ショック(cytokine-mediated lethal shock)を引き起すことができる (The Writing Committee of the World Health Organization(WHO)Consultation on Human Influenza A/H5.Avian Influenza A(H5NI)Infection in Humans.N Engl J Med 2005;353:1374-85)。微生物感染に引き続く血液中のかなり高レベルのサイトカインは、サイトカイン血症又はサイトカインの嵐と呼ばれる。研究は、鳥インフルエンザ(ウイルス)又はSARS(ウイルス)と接触した患者は、抗ウイルス薬を必要とすることに加え、免疫応答を抑制する薬を必要とすると助言している。本発明のオリゴヌクレオチドは、ホストの免疫系を微生物が過剰刺激することと結びついた疾病を治療する及び/又は予防するために用いられ得る。このような疾病を引き起こす微生物には、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫及びスポンジ型脳症の病因病原体が含まれるが、これに限定されない。微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病を引き起こすウイルスには以下のものが含まれる:SARSウイルス、インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、HTV-1、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコックサッキーウィルス、ライノウイルス属、エコーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、コロナウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、腎症候性出血熱ウイルス、ブンガウイルス(bunga virus)、フレボウイルス、ナイロウイルス(Nairo virus)、出血性熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス類、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)-1、HSV- 2、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、スポンジ型脳症の病因病原体、D型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、口蹄疫ウイルス。微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病を引き起こす細菌には以下のものが含まれる:ヘリコバクター・ピロリ、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィリア、ミコバクテリウム種(例えば、M. tuberculosis, M. avium, M. E intracellulare, M. kansaii, M. gordonae)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア菌、A群連鎖球菌属、B群連鎖球菌属、連鎖球菌属、糞便連鎖球菌、ストレプトコッカス・ボビス、連鎖球菌属(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター(Campylobacter)種、腸球菌種、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、エンテロバクター・アエロゲネス、肺炎桿菌、パスツレラ・ムルトチダ、バクテロイド属、フゾバクテリウム・ヌタレアツム、ストレプトバチラス・モニリフォルミス、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、レプトスピラ属およびイスラエル放線菌。微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病を引き起こす真菌には以下のものが含まれる:クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、ブラストマイセス菌、クラミジア・トラコマティス、カンジダ・アルビカンス。微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病を引き起こす寄生虫には、悪性マラリア原虫、トキソプラズマが含まれる。
【0021】
“移植拒絶”:「移植拒絶」は器官又は組織の移植により引き起こされる免疫介在性疾病である。移植は、ドナーからレシピエントへの移植物の移転を意味する。移植物は、ドナーからレシピエントへ移転される生きている細胞、組織又は器官である。自己移植は、自身の組織のある部位から別の部位への移植である。同系遺伝子型移植(isograft)は、一卵性双生児間での移植である。同種移植(homograft)は、同種の遺伝学的に区別を有するものの間で行われる移植である。異種移植(heterograft)は、異なる種間での移植である。主体が同種移植又は異種移植のレシピエントである場合、生体はドナーの組織に対して免疫応答を産生し得る。この状況下では、移植物の拒絶を避けるために免疫応答を抑制する明確な必要性がある(Richard A.et al. Immunology, Fifth Edition, 2003 WH FREEMAN AND COMPANY)。本発明のオリゴヌクレオチドは、移植拒絶を予防をなす際に有益である。移植物としては心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、膵臓、小腸、肢体、筋肉、神経、十二指腸及びランケルハンス島細胞などが例示される。ある場合には、レシピエントは本発明の主体として定義された動物であってもよい。
【0022】
“Toll様受容体(TLR)介在性疾病:「TOLL様受容体(TLR)介在性疾病」(A Toll-like receptor(TLR)-mediated disease)とは、TLRファミリーメンバーの活性化に係る免疫介在性の疾病を指す。この疾病は:リポポリサッカライド(LPS)によるTLR4の活性化と結びついた敗血症、TLR2、3、4、9の活性化と結びついた拡張型心筋症、TLR2、3、4、9の活性化と結びついた糖尿病、TLR3の活性化と結びついた実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、TLR9の活性化と結びついた全身性紅斑性狼瘡、TLR4の活性化と結びついた動脈粥状硬化症、LPSによるTLR4の活性化と結びついた喘息、TLR4の活性化と結びついた慢性閉塞性肺疾患、TLR4の活性化と結びついたEAE、TLR4の活性化と結びついた器官衰弱を含むが、これらに限定されない(Foo Y.et al. Nature Review Immunology,Vol 5, 2005,446-458)。核酸含有感染因子由来のCpG含有DNA(TLR9アゴニスト)は、SEの進展の一因となると思われるIFN-αの分泌作用に支配される充分な免疫応答を誘導するSLE血清から同定されている。本発明のオリゴヌクレオチドは、主体におけるSLEを含む(但しそれに限定されない)TOLL様受容体(TLR)介在性疾病を治療する又は予防するための施され得る。
【0023】
“CpG ODN”: TLR9アゴニストは固有及び獲得性の両免疫応答を活性化するとの報文がある(Arthur M. Krieg. Nature Reviews Drug Discovery, Vol.5 June 2006, 471-484)。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpG ODN)は、TLR9アゴニストである(DM Klinman, 428 Nat Rev, Immunol 4(2004)249-258)。機能特性により、 CpG ODNsは3種類に分けられる(Tomoki Ito,et al. Blood,15 March 2006,Vol 107,Num 6:2423-2431)。A型のCpG ODNは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDCs)を活性化して大量のI型インターフェロン(IFN-α/β)を産生し、NK細胞を激しく活性化する。B型のCpG ODNは、主にB細胞を活性化し、B細胞の増殖と抗体分泌を刺激する。C型のCpG ODNは、A型とB型の両CpG ODNの機能を有する。TLR9アゴニストとして、CpG2216、 CpG2006又はCpG C274は、細胞間隙に取り込まれ、そこでTLR9に暴露されそれを活性化する。pDCにおいては、TLR9の活性化は快速な固有免疫反応を起動させる。それは、炎症前駆サイトカイン(IL-6、腫瘍壊死因子-α(TNFα))の分泌、I型インターフェロン(IFN-α)の分泌及びIFN誘導ケモカインの分泌にて特徴付けられる。IFN依存及びIFN非依存の二つの経路を介して、NK細胞を含む固有免疫細胞、単球細胞及び好中球がpDCにより二次的に活性化される。TLR9を介して活性化されたB細胞は、抗原刺激に対して大幅に増大された敏感性を有し、抗体分泌細胞に効率的に分化される。従って、TLR9の刺激は、獲得性免疫応答、特に体液性免疫応答に寄与する。TLR9を介して活性化されたpDCはIFNαを分泌し、IFNαはリンパ節及びその他の周囲リンパ組織へpDCを凝集させる。これらの部位において、pDCは感作されていないT細胞を活性化し、CD8+細胞毒性Tリンパ細胞(CTL)への可溶性抗原の交差提示をアシストし、THI型のCD4及びCD8 T細胞応答を促進する。上述の知見に基づけば、CpG ODNの活性を拮抗させた製剤は、固有及び獲得性免疫を抑制することにより免疫介在性疾病を予防及び治療することに使用し得る。
【0024】
“薬学的に許容されるキャリアー”:「薬学的に許容されるキャリアー」とは、1種又はそれ以上の固状又は液状のフィラー、希釈剤又は包埋物質を指し、これらのキャリアーは本発明のオリゴヌクレオチドの主体への適用に適している。当該キャリアーは、有機物、無機物、天然物又は合成物であってよい。当該キャリアーは、溶液、希釈剤、溶剤、分散剤、リポソーム、エマルション、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤、及びその他本発明のオリゴヌクレオチドの適用に適するキャリアーを個別に又は全て含み、それらの使用は当業界でよく知られている。薬学的に許容されるキャリアーの選択は、本発明のオリゴヌクレオチドの適用に係る利用方式に応じてなされる。非経口的調製には、通常、注射可能な流動体を含み、それは薬学的及び生理学的に許容される流動体、例えば水、生理食塩水、平衡塩溶液、ブドウ糖溶液、グリセリンなどをキャリアーとして含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、タプレット、カプセルの形態)に対して、通常の非毒性固体キャリアー、例えば薬学純度を有するマンニトール、ラクトース、澱粉及びステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的に中性なキャリアーに加え、施されるべき薬学的組成物は、非毒性の補助物質を少量含有することができ、当該補助物質は湿化又は乳化剤、防腐剤及びpH緩衝剤、例えば酢酸ナトリウム又はモノラウレートなどを含むことができる。
【0025】
“治療学上の有効量”:免疫介在性の疾病を治療又は予防するために、本発明のオリゴヌクレオチドの治療学上の有効量が主体に施される。オリゴヌクレオチドの「治療学上の有効量」とは、免疫介在性の疾病を治療し又は予防して望ましい結果を得るために使用されるオリゴヌクレオチドの主体における充分な量を指す。本発明のオリゴヌクレオチドは、純粋な形態で又は薬学的に許容されるキャリアー中に使用されてもよい。それに代えて、オリゴヌクレオチドは薬学的組成物として施されてもよい。本発明における当該「量」を“用量”と称す。この“用量”は、当業者によく知られた標準テクニックにて決定され得、、そして、主体のサイズ及び/又は全体の健康状況又は疾病の重篤程度を含むが、これらに限定されないファクターによって変わる。本発明のオリゴヌクレオチドの導入は、単回処置又は一連の処置としてなされ得る。本発明のオリゴヌクレオチドの毎回の用量範囲は1μg〜100μgである。しかしながら、免疫介在性の疾病の治療のための用量は、上記の用量の10〜1,000倍であってもよい。より好ましい用量は、最良の治療効果を提供するために、当業者によって、例えば、主治医の適切な医療判断の範囲内で、調製され得る。
【0026】
“投与経路”:医療に使用される際、本発明のオリゴヌクレオチドは、単独又は薬学的組成物に処方作製されて、望ましい治療結果を達成するのに効果的な適当な経路にて投与され得る。本発明のオリゴヌクレオチドの投与経路は、腸(enteral)、注射(非経口)及び局所投与又は吸入であることができる。本発明のオリゴヌクレオチドの腸(enteral)投与経路は、経口、胃、腸(intestinal)及び直腸を含む。注射経路は、静脈、腹膜、筋肉、髄腔内(intrathecal)、皮下、局部注射、膣、、局所、鼻粘膜及び肺投与を含む。本発明のオリゴヌクレオチドの局所投与経路とは、外部から、表皮、口腔へ、及び耳、目及び鼻の中へのオリゴヌクレオチドの投与を意味する。
【0027】
“薬学的組成物”:「薬学的組成物」とは、薬学的に許容されるキャリアーを含むと含まざるに係らず、本発明のオリゴヌクレオチドの治療学上の有効量を含む組成物のことである。薬学的組成物は、1又はそれ以上の本発明のオリゴヌクレオチドを含むことができる。薬学的組成物は、水溶液、含塩溶液、粒子、エアロゾール、ペレット、粒状体、粉末、タブレット、コーティングタブレット、(マイクロ)カプセル剤、座剤、シロップ、エマルション、サスペンジョン、クリーム、ドロップ及び種々のドラッグ・デリバリー・システムでの使用に適するその他の薬学的組成物を含む。当該薬学的組成物は、注射(非経口)、経口、直腸経由、膣経由、腹膜内経由、局部経由(投与形態:粉末、軟膏、ゲル、ドロップ、経皮パッチ)、頬経由又は口腔若しくは経鼻スプレーで投与されてもよい。全てのケースにおいて、薬学的組成物は、製造及び保管状態下で無菌及び安定で、微生物汚染から保護されていなければならない。本発明の注射用薬学的組成物は、薬学的に許容される無菌の、水溶液又は非水溶液、分散剤、懸濁剤若しくは乳化剤を含み、同様に、注射前に無菌の注射溶液又は分散剤で再構成する粉末剤を含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、水様キャリアー、例えば、pH3.0〜pH8.0の等張緩衝液、好ましくはpH範囲がpH3.5〜pH7.4、 pH3.5〜pH6.0、pH3.5〜pH5.0の等張緩衝液に懸濁させることができる。緩衝液は、クエン酸ナトリウム−クエン酸、リン酸ナトリウム−リン酸、酢酸ナトリウム−酢酸を含む。経口投与の薬学的組成物は、食用キャリアーと共に調製され、粉末タブレット、丸剤、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー又はサスペンジョンを形成する。固体組成物用の通常の非毒性固体キャリアーには薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉及びステアリン酸マグネシウムを含ませることができる。頬側投与用の薬学的組成物は、伝統的形態のタプレットや錠剤であってもよい。吸入用の薬学的組成物は、エアロゾルスプレー剤であり、当業者は圧力パック、ネブライザー又はドライパウダーから選択使用することができる。あるケースでは、本発明のオリゴヌクレオチドの効果を長引かせるために、本発明のオリゴヌクレオチドはまた、持続放出システムにて適宜投与される。本発明のオリゴヌクレオチドは、水への溶解性に乏しい結晶性又は非晶質物質の液状サスペンジョンにて使用されてもよい。非経口投与薬剤形態のオリゴヌクレオチドの遅延放出は、疎水性材料(例えば、許容される油性キャリアー)中にオリゴヌクレオチドを溶解又は懸濁させることにより達成される。注射可能なデポ形態は、リポソーム、マイクロエマルション、又は生分解可能な半透過性のポリマーマトリクス、例えば、ポリラクタイド−ポリグリコライド、ポリオルトエステル類及びポリ酸無水物中にオリゴヌクレオチドを包埋させることで作製される。
【0028】
“活性成分”:本発明のオリゴヌクレオチドは、単独で又はそれらを組み合わせて、薬物的に許容されるキャリアーを利用し、1種又はそれ以上の付加的活性成分と組み合わせて使用することができる。本発明のオリゴヌクレオチドとそ付加的活性成分の投与は、シーケンシャルにも、又は同時にもできる。活性成分は、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、非特異性免疫抑制剤、生物学的応答調節物質、化合物、小分子、核酸分子、TLR拮抗剤を含む。また、活性成分とは、以下の方式により免疫活性化を抑制する剤を指している:走化性因子を拮抗させる;調整力を持つT細胞(CD4+CD25+T細胞)の産生を誘導する;補完する、マトリックスメタロプロテアーゼ及びNOシンターゼを抑制する;共刺激分子をブロックする;免疫細胞のシグナル形質導入を抑制する。非ステロイド性抗炎症剤は、ジクロフェナク、ジフルニサル、インドール酢酸、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、スリンダク、tohnetin、セレコキシブ、ロフェコキシブを含むが、これらに限定されない。ステロイドは、副腎皮質刺激ホルモン、デキサメサゾン、コルチゾール、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン及びトリアムシノロンを含むが、これらに限定されない。非特異性免疫抑制剤は免疫介在性の疾病の進展をを抑制するために使われる剤を意味する。非特異性免疫抑制剤は、シクロフォスファミド、シクロスポリン、メトトレキセート、ステロイド、FK506、タクロリムス、ミコフェノール酸、シロリムスを含むが、これに限定されない。生物学的応答調節物質は、組み換えヒトインターロイキン- 1受容体拮抗剤 (Kineret or anakima)、可溶性p75 TNF-α受容体-IgG1融合タンパク質(etanercept or Enbrel)、又は抗TNF-αモノクローナル抗体(infliximab or RemicadeX)を含むがこれに限定されない、また同剤は、インターフェロンβ-Ia、インターロイキン-10及びTGFβを含むが、これに限定されない。
【0029】
“送達担体”:本発明のオリゴヌクレオチドは送達担体の中/と共に、又は単体と結合した形態にて投与され得る。当該担体は、ステロール(例えば、コレステロール)、錯化合物、乳化物、ISCOMs;、脂質(例えば、陽イオン脂質と陰イオン脂質)、リポソーム;(ポリ)エチレングリコール(PEG) ;生きている細菌ベクター(例えば、サルモネラ、大腸菌、カルメット・グラン結核菌(bacillus Calmette-Gurin)、赤痢菌、乳酸菌)、生きているウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス)、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、マイクロスフェアー、核酸ワクチン、ポリマー (例えば、カルボキシメチルセルロース、キトサン)、ポリマーリング及びターゲッテイング剤(それは、特異性の受容体によってターゲット細胞を認識する)を含むが、これに限定されない。
【0030】
“ポリエチレングリコール化”:「ポリエチレングリコール化」とは、ポリエチレングリコールのポリマーチェーンの他の分子(一般には薬剤又は治療用タンパク質)への共有結合過程である。ポリエチレングリコール化はPEGの反応性誘導体をターゲット剤と温置することで必ずや達成される。ポリエチレングリコール化剤は、ホストの免疫系から当該剤をマスクすることができ、その循環時間を延長する当該剤の流体力学上のサイズを増大することができる。本発明のオリゴヌクレオチドは、ポリエチレングリコール化されることができる。
【0031】
実施例の簡単な紹介
第1実施例において、本発明は、5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3'(SEQ ID NO:1)ヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを提供しており、当該オリゴヌクレオチドは式(5'CCT3')nに従う。
【0032】
第2実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを用いて免疫介?性の疾病を治療するための応用を提供している。免疫介在性の疾病は自己免疫疾病、移植拒絶、過敏反応、自己抗原及び微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病及びToll様受容体(TLR)介在性の疾病を含む。
【0033】
第3の実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを用い、TLR の活性化とIFNの産生(それは、DNAウイルス、RNAウイルス、SLE患者からの血清によって誘導される)を抑制し、サイトカイン介在性致死性ショックから主体を救出して、免疫介在性の疾病を治療するための応用を提供している。
【0034】
第4実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを用いて、主体におけるSLE、敗血症及び多臓器機能障害症候群を治療するための応用を提供している。
【0035】
第5の実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを、単独で又は薬学的に許容されるキャリアーと共に、経腸、非経口(注射)、局部投与及び吸入経路を介して主体に投与して、免疫介在性の疾病を治療するための応用を提供している。
【0036】
第6実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドの、免疫介在性の疾病の治療の治療学上の有効量を含む組成物を提供している。
【0037】
その他の実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを、単独で又は付加的活性成分と組み合わせて投与して免疫介在性の疾病を治療するための応用を提供している。
【0038】
その他の実施例において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを送達担体により投与して免疫介在性の疾病を治療するための応用を提供している。
【0039】
一面において、本発明は、式(5’CCT3')n(ここで、5’CCT3'は繰り返し単位であり、nは2〜50の整数、好ましくは5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3'(SEQ ID NO:1)である)に適合する配列を含むオリゴヌクレオチドを提供している。
【0040】
好ましい実施例において、オリゴヌクレオチドのホスフェートバックボーンは、部分的に又は完全にホスホロチオエート修飾がされてもよいし又はされなくてもよい。
【0041】
他の好ましい実施例において、オリゴヌクレオチドは、1又は多少のヌクレオチドをオリゴヌクレオチドの各末端に付加することで、及びオリゴヌクレオチドの1又は多少の塩基を変更することで、それらの誘導体へと進展している。
【0042】
他の好ましい実施例において、オリゴヌクレオチドは、他のDNA分子、プラスミド又はウイルスベクターの一部を構成している。
【0043】
更なる好ましい実施例において、オリゴヌクレオチドは化学修飾受けている。
【0044】
他の面において、本発明は、主体における免疫介在性の疾病治療するための応用を準備するための上記オリゴヌクレオチドの使用を提供している。
好ましい実施例において、免疫介在性の疾病は、自己免疫疾病、過敏反応、移植拒絶、微生物によるホストの免疫系の過剰刺激と結びついた疾病、又はToll様受容体(TLR)介在性疾病である。
【0045】
更に好ましい実施例において、免疫介在性の疾病の治療は、Toll様受容体9アゴニストにより活性化された免疫細胞の増殖を抑制し、Toll様受容体9の活性化を抑制し、インターフェロンの産生を抑制し、そして主体をサイトカイン介在致死性ショックから救出することである。
好ましくは、免疫介在性の疾病は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)(それは、TLR9活性化と、TLR9アゴニスト、ウイルス及びSLE患者の血清によって誘導されるインターフェロンの産生を抑制することによって治療される)であり、敗血症(それは、サイトカイン介在致死性ショックから主体を救出することによって治療される)であり、又は多臓器機能障害症候群(それは、サイトカイン介在致死性ショックから主体を救出することによって治療される)である。
他の面において、本発明は、免疫介在性の疾病進展のリスクを有している、又はリスク状態にある主体に上記オリゴヌクレオチドを投与するための応用を提供する。
【0046】
好ましくは、当該レメディ(そのための応用)は、薬学的に許容し得るキャリアー及び/又は付加的活性物質を更に含む。更に好ましくは、当該レメディ(そののための応用)は、経腸、非経口(注射)、局部投与及び吸入経路を介して投与するための形態である。
好ましい実施例において、オリゴヌクレオチドはポリエチレングリコール化される。
【0047】
図面の簡単な説明
図1は、CpG 2006とCpG C274に刺激されたヒト末梢血単核細胞(hPBMC)の増殖に対するSAT05fの抑制効果を表しているグラフである。
図2は、CpG C274に刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制効果を表しているグラフである。
図3は、I型単純ヘルペスウイルスとインフルエンザウイルスで刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制効果を表している。ここで、
(A)は、不活性化されたHSV-1 により誘導されたインターフェロン(IFN)と組換えヒトαインターフェロン(IFN-α)の抗ウィルス活性の比較である。尚、"IU"は国際単位を表している。
(B)は、不活性化されたHSV-1に刺激されたヒトPBMCからのインターフェロンの産生に対するSAT05fの抑制効果である。
(C)は、HSV-1に刺激されたヒトPBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制作用の用量効果である。
(D)は、不活性化されたPR8により誘導されたインターフェロン(IFN)と組換えヒトαインターフェロン(IFN-α)の抗ウィルス活性の比較である。
(E)は、不活性化されたPR8で刺激されたhPBMCからのIFN産生に対するSAT05fの抑制効果である。
(F)は不活性化されたPR8で刺激されたhPBMCからのIFN産生に対するSAT05fの抑制に係る用量効果である。
当該図が表しているものは、3回反復可能な試験中の1回の試験結果である。HSV-1はI型単純ヘルペスウイルスを表し、PR8はインフルエンザウイルス(HINI/PR8)を表している。
図4は、紅斑性狼瘡(SLE)患者の血清で刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生をSAT05fが抑制していることを示したグラフである。
図5は、SAT05fがサイトカイン介在致死性ショックからマウスを救うことを示したグラフである。
【実施例】
【0048】
実施例
以下の実施例において、本発明がより詳しく記述される。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されない。これらの実施例において、特に説明されない限り、市販されているキット及び薬剤を使用した実験が、添付されたプロトコールに従って行われた。当業者は、本発明のオリゴヌクレオチドが免疫介在性の疾病の治療に容易に適用できることの真価を認めるであろう。本発明が、以下の限定されていない実施例にて説明される。
【0049】
以下の実施例においてオリゴヌクレオチド(ODNs)を取り扱うために使用された全ての薬剤は、パイロジェン−フリーである。ODNの調製において、エンドトキシンがリムルス変形細胞分解法(Associates of CapeCod.Inc)によりテストされた。以下の実施例において使用されたヒト末梢血単核細胞(hPBMC)は、ヒト末梢血(The Blood Center of Jilin Province, China)から密度勾配遠心分離法(P M Daftarian et al.(1996):Journal of Immunology, 157,12-20)により分離された。当該細胞は、10%(v/v)熱不活性化されたウシ胎児血清(FBS;GIBCO) 、抗生物質(100IUペニシリン/mlと100IUストレプトマイシン/ml)を含有するIMDM培地を使用し、5% CO2インキュベーター中、37℃で培養された。トリパンブルー染色法でhPBMCの活着率が95%〜99%と確認された。
【0050】
実施例1 CpG ODNに誘導されたヒト末梢血単核細胞(hPBMCs)増殖に対するSATO5fの影響
本実施例に使用されたオリゴヌクレオチドは、上海生工生物技術有限公司(Shanghai,China)により合成され、これらはCpG2006(5'-tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt-3'), CpG274 (5'-tcgtcgaacgttcgagatgat3'), A151 (5'-ttagggttagggttagggttaggg3') (Hidekazu Shirota,et al. The Journal of Immunology, 2005, 174:4579-4583), SATO5f (5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3')とコントロール ODN (5'-gttagagattaggca--3')である。
【0051】
CpG2006(Dominique De Wit,et al. Blood, 2004,Vol 103, Num 3:1030-103)はB型CpG ODNのプロトタイプである。CpG274 (Omar Duramad,et al. The Journal of Immunology, 2005, 174:5193-5200)はC型CpG ODNのプロトタイプである。
【0052】
3H〕チミジン取り込み法で、SATO5fがCpG2006とCpG274に刺激されるhPBMCsの増殖を抑制するかどうかをテストした。5×105/ウェルの密度でhPBMCsを96ウェルのU底マイクロタイタープレート(Costar)上に接種し、SATO5f、A151又は対照オリゴヌクレオチド(コントロール ODN)が存在する状況下で、CpG2006(1μg/ml)又はCpG274(1μg/ml)とともに、合計48時間培養し、その後、〔3H〕チミジン(New England Nuclear, Boston, MA)を添加し、16時間継続的に培養した。当該細胞は、ガラス繊維フィルターで収穫され、シンチレーション カウンタで結果を検査した。3つのウェル中の細胞増殖が平均cpm±SDとして表される。
【0053】
図1に示すように、SAT05fは、CpG ODN 2006又はCpG ODN 274で刺激されたhPBMCsの増殖を抑制しており、その抑制効果は A151の誘導されたそれより強い。対照ODNは抑制効果を示さなかった。CpG2006又はCpG274を含むCpG ODNはTLR9アゴニスト[D.M.Klinman, Nat Rav, Immunol 4(2004)249-258]であるので、このデータは、SAT05がTLR9活性化を抑制し、TLR9活性化に関係する疾病及びその他のTOLL様受容体(TLR)介在性の疾病を治療するために用いられ得ることを示している。
【0054】
実施例2 CpG ODNに誘導されたhBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの効果
〈試験方法〉
10%(v/v)熱不活性化されたウシ胎児血清(GIBCO) 、抗生物質(100IUペニシリン/mlと100IUストレプトマイシン/ml)を含有するIMDM培地を使用し、5% CO2インキュベーター中、37℃でVero E6細胞 (African green monkey kidney cell line, American Type Culture Collection) を培養した。
【0055】
SAT05fがCpG C274にて刺激されたhPBMCからのINF産生を浴するかどうかテストするためにVero E6細胞とVSVを用いてインターフェロン・バイオアッセイを行った。CpG C274、 A151、 SAT05f及びコントロール ODNを含むオリゴヌクレオチドは、上海生工生物技術有限公司(Shanghai, China)にて合成されたものである。それらの配列は実施例1に示された通りである。CpG C274はC型CpG ODNのプロトタイプであり、A型CpG ODN とB型CpG ODNの両方の活性を有している。A型CpG ODNは、ヒト形質細胞様樹状細胞(human plasmacytoid dendritic cells ,pDCs))を活性化して大量のI型インターフェロンを産生させることができる。hPBMCs(5×105/ウェル)を96ウェルマイクロタイタープレート(Costar)上に接種し、SATO5f、A151又はコントロール ODNの存在下、CpG C274(1μg/ml)とともに48時間培養した後、上澄みを収集し、上澄み中のインターフェロン活性を検証した。Vero E6細胞(3×104/ウェル)を96ウェル平底プレートに接種し、24時間培養した。次いで、当該細胞を上澄み100μlと共に18時間培養し、さらに10×TCID50(50%組織培養感染量)の水疱性口内炎ウイルス (VSV)を添加し、48時間継続して培養した。VSVはVero E6細胞中で増殖していた。培養した後、−70℃でaliquots中に保存して使用待ちとした。クリスタルバイオレット0.5%で染色した後、マルチウェルマイクロタイタープレート検出装置にてウイルスの細胞変性効果を測定し、OD値(A578nm)として表示した。
【0056】
<試験結果>
図2に示すように、SATO5fは、CpG C274で刺激されたhPBMCsからのINFの産生を抑制している。TLR-9活性化の結果としての高レベルのINFs産生が全身性紅斑性狼瘡(SLE)の進展を促進することが報告されている(Barrat FJ, et al. J Exp Med 2005;202:1131-9; Wellmann U, et al. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102;9258-63)ので、このデータは、高レベルのINFの産生を抑制することによりSLE及びその他のToll様受容体(TLR)介在性の疾病を治療するための応用としてSAT05fが使用し得ることを示している。
【0057】
実施例3 I型単純ヘルペスウィルスとインフルエンザウィルスで刺激されたhPBMCsからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制効果
<実験方法>
Vero E6細胞を実施例2と同様にして培養した。I型単純ヘルペスウィルス(HSV-1)とインフルエンザウィルス(HINI/PR8, PR8)は、吉林大学ベチューン医学院免疫学教室由来である。HSV-1(MO1=200)はVero E6細胞で増殖させられ、PR8(MO1=3)はMDCK細胞(Madin-Darby Canine Kidney Cells, ATCC)で増殖させられた。MDCK細胞は、10%(v/v)熱不活性化されたウシ胎児血清(FBS; GIBCO)と抗生物質(100IUペニシリン/mlと100IUストレプトマイシン/ml)を含有するIMDM培地で培養した。2%(v/v)FBS含有するIMDM培地の中のHSV-1は、70℃のウォーターバス中で10分間加熱することで不活性化させた。2%(v/v)FBSを含有するIMDM培地中のPR8は、56℃のウォ−ターバス中で30分間加熱することで不活性化させた。
【0058】
SAT05F及びCTRLODN(図3中にCTRLとして示されている)を含み、5'-aaaaataaaaataaaataaaat-3'のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドは、Takara社(Dalian, China)にて合成されたものである。SAT05fの配列は実施例1に記載されている。
96ウェルのマイクロタイタープレート(Costar)を使用し、SAT05f又はCTRLの存在下若しくは不存在下で、hPBMCs(5×106 ml)を、不活性化させたHSV-1又は不活性化させたPR8と共に、37℃で48時間培養した後、検証のため上澄みを収集した。Vero E6細胞(3×104 /ウェル)を96ウェル平底プレートに接種し、24時間培養した。その後、100μlの上記収集された上澄み(HSV-1により誘導された上澄みの希釈度が1:20で、PR8により誘導された上澄みの希釈度が1:80である)と共に16時間培養した。10×TCID50(50%組織培養感染量)のVSVを添加し、48時間継続的に培養した。クリスタルバイオレット0.5%で染色した後、マルチウェルマイクロタイタープレート検出装置にて細胞変性効果を測定し、平均OD値±SD(A578nm)として表示した。3回反復試験の1回のデータが示されている。
【0059】
<試験結果>
図3-A に示すように、不活性化されたHSV-1ウイルスはインターフェロンを誘導することができ、組み換えヒトαインターフェロン(IFN-α)がなしたように、それがVero E6細胞をVSVの攻撃から保護していることを示している。図3-Bに示すように、SAT05fは、不活性化されたHSV-1ウイルスに刺激されたhPBMCsからのインターフェロン産生を抑制している。用量反応関係の分析より、SAT05fが不活性化されたHSV-1で刺激されたhPBMCsからのインターフェロン産生を抑制することには、用量依存関係が存在しているとが明らかにされた。SAT05Fは、1μg/mlで、このような抑制を介在することができる(図3-C)。図3-Dに示すように、不活性化されたPR8がインターフェロンを誘導することができ、組み換えヒトαインターフェロン(IFN-α)がなしたように、それが、Vero E6細胞をVSVの攻撃から保護していることを示している。図3-Eに示すように、SAT05fは、不活性化されたインフルエンザウイルス(PR8)に刺激されたhPBMCsからのインターフェロン(IFN)産生を抑制している。用量反応関係の分析より、不活性化されたPR8で刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生を抑制するのにSAT05fは2μg/mlの用量で充分であり、SAT05fが4μg/mlの用量であれば、その抑制は最大となることが明らかにされた(図3-F)。
【0060】
研究より、インフルエンザウィルスがTLR7を認識して活性化すること(Wang JP,et al. Blood 2008 Jun 10[Epub ahead of print])、HSV-1がTLR9を認識して活性化すること(Hubertus Hochrein et al. PNAS,101,11416-11421)、さらには、インターフェロンの産生を刺激することが解明されている。本実施例の結果を合わせると、本発明のオリゴヌクレオチドは、TLR7又はTLR9の活性化及びINFの産生を抑制することによってSLEのようなToll様受容体(TLR)介在性の疾病の治療のための応用として使用し得ること、明らかである。
【0061】
実施例4 SLE患者の血清で刺激されたhPBMBsからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制効果
<実験方法>
SLE患者の抗二本鎖DNA陽性血清は、吉林大学中日聯誼医院リューマチ科由来である。
SAT05F及びCTRL-ODN(図4中にCTRLとして示されている)を含み、5'-aaaaataaaaataaaataaaat-3'の配列を有するONDsは、Takara社(Dalian, China)により合成されたものである。これらがSAT05fと対照ODN(CTRL)である。SAT05fの配列は実施例1に記載されている。
【0062】
96ウェルのマイクロタイタープレート(Costar)を使用し、SAT05f又はCTRLODNの存在下若しくは不存在下で、hPBMCs(5×106 ml)をSLE患者の抗二本鎖DNA陽性血清(1:1希釈)と共に48時間培養した。hPBMCsは培地のみとともに培養した。同時に、健康なドナーの血液の抗二本鎖DNA陽性血清とともに培養し、それをコントロールとした。上澄みを収集し、上澄み中のインターフェロン活性を検証した。Vero E6細胞を、上記収集された上澄み(1:5希釈)と共に16時間培養し、その後10X TCID50のVSVを、48時間作用させた。、クリスタルバイオレット0.5%で染色した後、マルチウェルマイクロタイタープレート検出装置を使用し、A578nmで細胞変性効果を測定した。
【0063】
<試験結果>
図4に示すように、SLE患者からの血清はhPBMCからのインターフェロン産生を刺激し、SAT05fはSLE患者からの血清で刺激されたhPBMCsからのインターフェロン産生を抑制している。3回反復試験の一回のデータが示されている。高レベルのIFNsの産生が、SLEの進展を促進することはよく知られている(Barrat FI,et al. J Exp Med 2005;202:1131-9;Wellmann U.et al. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:9258-63)。またSLE患者の血清中に、内生INFを誘導する物質が存在していること(Kwok SK, et al. Arthritis Res Ther 2008;10(2):R29)、SLE患者がIFN産生の循環誘導物質を有しており、SLE患者の血清がたびたびけんこうなドナーの血液からのPBMC倍地中でINF産生を誘導していること(Vallin H, et al. Clin Exp Immunol 1999 Jan;115(1):196-202)、そして抗二本鎖DNA抗体又はDNA-抗-DNA抗体複合体がSLE患者の内在性のINF-αの誘導体として機能しそしてSLEの病原因子でもあること(Vallin H, et al. J Immunol 1999 Dec 1;115(1):163(11):6306-13)が報文で明らかにされている。これらを考えあわせると、本データは、SAT05はIFNの産生を抑制することによりSLE患者の治療のために使用し得ることを示している。
【0064】
実施例5 サイトカイン介在致死性ショックからのマウスの救出に対するSAT05fの効果
<実験方法>
SAT05Fの体内での機能を明らかにするために、サイトカイン介在致死性ショックのモデルが常法 (Marshall AJ,et al. infect Immun 1998 Apr;66(4):1325-33;Peter M, Bode K,et al. Immunology 2008 Jan:123(1):118-28) を参照して導入された。
メスBALB/Cマウス(体重20±1g) を吉林大学医学院実験動物センターから得た。実験中、マウスは、餌と水に自由にアクセスできるようにされていた。実験はローカル法に従って行われた。
5'-cctcctcctcctcctcctcctcct--3'の配列を有するSAT05F,5'-aaaaataaaaataaaataaaat-3'の配列を有するCTRL-ODN、5'-tccatgacgttcctgacgtt--3'の配列を有するCpG-ODN 1826(1826)(Sanjai Kumar, et al. Infection and Immunity, February 2004, p.949-957, Vol 72, No 2) を含むオリゴヌクレオチドは、Takara社(Dalian, China)にて合成されたものである。。
D-ガラクトサミン(D-(+)-ガラクトサミン HCL, D-GALN)はDeBioChem(Nanjing, China)からのものである。
【0065】
BALB/Cマウスを以下の群(マウス5匹/1群)に分けた:D-GALN+1826、D-GALN+1826+SAT05F、D-GALN+1826+CTRL-ODN。全てのマウスにD-ガラクトサミン32 mg/ml in PBS)を500μl腹腔注射し、1.5時間後、さらにPBSに溶解された1826(10μg/マウス)を腹腔注射した。続いて、D-GALN+1826+SAT05F群のマウスにPBSに溶解されたSAT05F(50μg/マウス)を腹腔注射した。D-GALN+1826+CTRL-ODN群のマウスにはPBSに溶解されたCTRL-ODN(50μg/マウス)を腹腔注射した。D-GALN+1826群のマウスにはD-ガラクトサミンと1826だけを腹腔注射した。マウスを観察し、マウスの死亡を記録した。
【0066】
<実験結果>
図5に示すように、D-ガラクトサミンを注射して24時間以内に、D-GALN+1826群又はD-GALN+1826+CTRL-ODN群のマウス(各群5匹)は全て死亡した。これに比し、D-ガラクトサミンを注射して168時間後、D-GALN+1826+SAT05F群の全てのマウスは生存しており、SAT05fがD-ガラクトサミンと1826を投与されたマウスを救出し得ることを示している。D-ガラクトサミンが投与されたマウスは、CpG ODを注入されることによりイトカイン介在致死性ショックの動物モデルとなることが報告されている(Peter M, et al. Immunology. 2008 Jan; 123 (1): 118-28)。これらの結果から明らかにわかるとおり、データは、SAT05Fは体内で抑圧的であり、サイトカイン介在致死性ショックを抑制することを示している。2回独立の反復可能な実験の一次実験のデータが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】CpG 2006とCpG C274に刺激されたヒト末梢血単核細胞(hPBMC)の増殖に対するSAT05fの抑制効果を表しているグラフである。
【図2】CpG C274に刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制効果を表しているグラフである。
【図3】I型単純ヘルペスウイルスとインフルエンザウイルスで刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制効果を表している。ここで、(A)は、不活性化されたHSV-1 により誘導されたインターフェロン(IFN)と組換えヒトαインターフェロン(IFN-α)の抗ウィルス活性の比較である。尚、"IU"は国際単位を表している。(B)は、不活性化されたHSV-1に刺激されたヒトPBMCからのインターフェロンの産生に対するSAT05fの抑制効果である。(C)は、HSV-1に刺激されたヒトPBMCからのインターフェロン産生に対するSAT05fの抑制作用の用量効果である。(D)は、不活性化されたPR8により誘導されたインターフェロン(IFN)と組換えヒトαインターフェロン(IFN-α)の抗ウィルス活性の比較である。(E)は、不活性化されたPR8で刺激されたhPBMCからのIFN産生に対するSAT05fの抑制効果である。(F)は不活性化されたPR8で刺激されたhPBMCからのIFN産生に対するSAT05fの抑制に係る用量効果である。当該図が表しているものは、3回反復可能な試験中の1回の試験結果である。HSV-1はI型単純ヘルペスウイルスを表し、PR8はインフルエンザウイルス(HINI/PR8)を表している。
【図4】図4は、紅斑性狼瘡(SLE)患者の血清で刺激されたhPBMCからのインターフェロン産生をSAT05fが抑制していることを示したグラフである。
【図5】SAT05fがサイトカイン介在致死性ショックからマウスを救うことを示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(5'CCT3')nと一致している配列を含み、式中の5'CCT3'は繰り返し単位であり、nが繰り返し単位の個数を表し、2〜50である、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
5'-cctcctcctcctcctcctcctcct-3'(SEQ ID NO:1)である請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンが修飾されない、又は全部或いは部分的にホスホロチオエート修飾されている請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドがその誘導体に転換されることができ、転換する方法が両端に一つ又は多数のオリゴヌクレオチドを連結し、又はその内部において1個又は数個の塩基を変更することである請求項1〜3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドがその他のDNA分子、プラスミド又はウイルスベクターの一部を構成することができる請求項1〜4のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが化学修飾されることができる請求項1〜5のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの、個体における免疫介在性の疾病を治療するための薬の調製における使用。
【請求項8】
前記免疫介在性の疾病が、自己免疫疾病、過敏反応、移植拒絶、微生物がホストの免疫系を過剰刺激するために起こした疾病及びToll様受容体(TLR)が介在する疾病を含む請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記個体が人又はその他の脊髄動物である請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記免疫介在性の疾病の治療が、Toll様受容体9アゴニストの免疫細胞増殖の刺激作用を阻害すること、Toll様受容体9を阻害すること、インターフェロン生産を阻害する、サイトカインにより介在される致死性ショックから救われることからなる群から選択されるメカニズムにより行われる請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記免疫介在性の疾病が、TLR9アゴニスト、ウイルスおよびSLE患者の血清により誘導されるTLR9(Toll様受容体9)の活性化及びインターフェロン生産を阻害することにより治療される全身性紅斑性狼瘡(SLE)、致死性ショックから救われることにより治療される敗血症、あるいはサイトカイン媒介された致死性ショックから患者が救われることにより治療される多臓器機能障害症候群である請求項7に記載の使用。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを含む、免疫介在性の疾病又は免疫介在性の疾病の危険性を有する個体に投与するための薬剤。
【請求項13】
薬学的に許容される担体および/または追加の活性成分を含む請求項12に記載の薬剤。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドがポリエチレングリコール化処理され得る請求項13に記載の薬剤。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドが個体に投与する時、腸内、腸外、局所外用及び吸入を含む経路により投与される剤形である請求項14に記載の薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35488(P2010−35488A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−202242(P2008−202242)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(506027583)長春華普生物技術有限公司 (3)
【Fターム(参考)】