説明

万能前凝固薬

(i)活性化sTF、(ii)金属キレート脂質、(iii)金属イオン及び(iv)リン脂質を含むトロンボプラスチン試薬。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互引用:本出願は米国仮特許出願60/653,695(発明の名称”Universal Procoagulant”(万能前凝固薬))(2005年2月16日出願)(前記文献の全内容は参照により本明細書に含まれる)の権利を、本出願と一致しない点を除いて請求する。
連邦政府支援研究開発:本出願は以下の研究グラント及び契約により部分的に資金援助を受けた:米国立衛生研究所(NHLBI)グラント番号R01 HL47104。合衆国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
凝固因子とCa2+のみによる血液凝固カスケードの模式図は図15に示されている。この図では、種々の凝固因子がそれらのローマ数字で表示されている(すなわち第VII因子はVIIで表示される)。血液凝固の内在性経路(接触経路とも称される)は、血液とある種の人工的表面との間で接触が発生するときに開始する。血液凝固の外在性経路(組織因子経路とも称される)は、組織因子(第III因子としても認定されている)の露出をもたらす血管の損傷時に開始する。点線の矢印は、外在性及び内在性経路の交差点を表している。この2つの経路は第X因子からXa因子への活性化に収束する。Xa因子はVII因子からVIIa因子への更なる活性化の役割を有する。活性なXa因子はプロトロンビンをトロンビンに加水分解する。続いてトロンビンはXI、VIII及びV因子を活性化し、前記カスケードを更に促進することができる。最終的には、トロンビンの役割はフィブリノゲンをフィブリンに変換することであり、フィブリンは凝血塊を形成する。
【0002】
組織因子(細胞表面タンパク質)は、正常な血流遮断における血液凝固系の始動に必要であり、多様な血栓性疾患の原因である(1,2)。組織因子は、第VIIa凝固因子(VIIa)(血漿セリンプロテアーゼ)と堅固に結合しアロステリックにこれを活性化することによって前記の機能を達成する。組織因子とVIIaとの1:1複合体(TF:VIIa)は、血液凝固の組織因子経路の第一の酵素であり、VIIaは触媒サブユニットとして、組織因子は調節サブユニットとして機能する。したがって、血液凝固カスケードは、TF:VIIaが2つの血漿セリンプロテアーゼ酵素前駆体(凝固因子IX及びX)を限定的タンパク質分解により活性化するときに始動し、最終的には、フィブリン凝血塊及び活性化血小板から成る止血栓子の形成をもたらす。
【0003】
野生型ヒト組織因子(TF)は261又は263アミノ酸の単一ポリペプチド鎖であり、2つのジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基を含む。前記はI型内在性膜タンパク質であり、これはそのN-末端が細胞外側に位置し、そのC-末端が細胞質内に存在することを意味する。TFは、形質膜にタンパク質を固着させる単一膜スパンニングドメインを有する。TFの細胞外ドメインは、VIIaと結合しこれをアロステリックに活性化する部分である。TFの細胞質ドメインは、TFの前凝固薬活性にとって必要ではないが、TFの膜固着は完全なTF活性のために必須である(3)。膜スパンニングドメインも細胞質ドメインももたない可溶性切端形(sTF)が組換え手段によって生成された(3−7)。膜固着TFと異なり、sTFは高度に水溶性である(5, 8)。一方、sTFはVIIaと結合しこれをアロステリックに活性化する能力を保持するが(小さなペプチジル-アミド基質の加水分解によって決定される)、sTFの前凝固薬活性は大きく低下する(4,5,9,10)。sTFは、酵素前駆体第VII因子の活性酵素形VIIaへの変換支援能力を選択的に欠いている(9,11)(VII因子のVIIaへの変換促進能力はTFの重要な機能の1つであり(12)、この機能の消失は、正常なヒト血漿に関してsTFの低い前凝固薬活性の説明となる)。sTFのこの固有の欠陥を利用して、酵素前駆体VII因子の干渉を受けずに血漿VIIaレベルを定量する凝固アッセイが作成された(13)。他方、sTF前凝固薬活性におけるこの欠陥は、プロトロンビン時間(PT)アッセイのような標準的な凝固アッセイでは、sTFは膜固着TFの代用となり得ないことを意味している。
【0004】
その可溶性ために、sTFは、膜固着TFよりも発現、精製及び取り扱いが非常に容易である。sTFの生成に用いられるいくつかの発現系では、sTFの分泌は、大腸菌の細胞周辺腔(ジスルフィド結合の形成を可能にする酸化性環境)に誘導される(6)。sTFは大腸菌の細胞周辺腔から容易に放出され、更にまたsTFは水溶性を維持するために特殊な条件を一切必要としない。sTFは、操作によりそのN-末端に付加されたペプチドエピトープ(HPC4エピトープ)を利用して、イムノアフィニティークロマトグラフィーによって大腸菌放出物から精製することができる(6)。カルシウムイオンの存在下で、sTF-HPC4融合タンパク質は固定HPC4抗体と高い親和性で結合する。イムノアフィニティービーズを洗浄した後、精製sTFはEDTAを用いて溶出される。sTFの発現収量は、大腸菌培養1リットル当たりほぼ20mgである。
【0005】
組換え膜固着組織因子(rTF)は、sTFよりはるかに低レベルで大腸菌で発現され、rTFは、精製工程の全ての段階において操作がはるかに困難である。sTFのために使用した同じ標的誘導ベクターがrTFの大腸菌での発現に用いられた(前記はrTFの細胞外ドメインを細胞周辺腔に誘導し、一方、膜アンカーは大腸菌の内側膜内に埋め込まれたまま残存する)。大腸菌のrTF抽出はこの細菌の完全な溶解を必要とする。更にまた膜からrTFを抽出するためにも可溶化rTFの維持のためにも洗剤の使用が必要である。rTFの精製は、sTFと同じイムノアフィニティークロマトグラフィー法を用いて達成されたが、ただし洗剤(典型的には0.1%トリトンX-100)はrTFが暴露される全ての溶液に含まれている。大腸菌発現系におけるrTFの発現収量は、大腸菌培養1リットル当たりほぼ1mgであり、これは、sTFの収量よりも少なくとも1/20である。
【0006】
プロトロンビン時間(PT)は、血液凝固系のための一般的なスクリーニングとして及び特定因子のアッセイのための基礎として、経口抗凝固治療をモニターするために広く用いられている。PT検査で得られる凝固時間(PT時間)は主としてビタミンK依存凝固因子II(プロトロンビン)、VII及びXの血漿レベル、並びに2つのビタミンK非依存タンパク質、第V因子及びフィブリノゲンのレベルに左右される。クマリン治療は、ビタミンKカルボキシラーゼ/レダクターゼサイクルに拮抗し、したがってグルタメート残基のガンマ-グルタメートへの翻訳後変換を阻害する。ビタミンK依存凝固因子は、それらのGlaドメインに必須のガンマ-カルボキシグルタメート残基を含む。クマリン治療を受けている患者はしたがって、前凝固薬活性が低下した低カルボキシル化ビタミンK依存凝固因子を生成するであろう。これは、主として第II、第VII及び第X因子レベルの低下のためにPT時間を大きくする。クマリンによる経口抗凝固治療を成功させるには、患者のPT時間を注意深くモニターすることが、効果的な抗凝固レベルを達成しながら出血合併症を最小限にするために要求される(Hirshらが概説している(14))。
【0007】
PT検査は、クエン酸塩添加血漿サンプルをトロンボプラスチン試薬と混合し、凝血塊形成時間を測定することによって実施される。トロンボプラスチン試薬中の活性成分は組織因子である。1990年代に精製TFが利用可能になる前は、トロンボプラスチン試薬は、ヒト又は動物由来の比較的粗雑な組織抽出物から製造された。より最近では、高度に精製されたrTFが、完全に規定された成分を含むトロンボプラスチン試薬の調製に用いられた(15,16)。組換えトロンボプラスチン試薬は潜在的には組織由来試薬よりも優れている。なぜならば、製造者はそれらの組成(したがってそれらの特性)をより容易に管理することができるからである。組換えトロンボプラスチン試薬を調製するために、rTFは、適切なリン脂質混合物で構成されたリン脂質単層薄膜小胞に再構成される(TFのリン脂質小胞への再構成は時に“再脂質添加(relipidation)”と称される)。血液凝固で効率的に機能させるために、前記小胞は、正味の陰性荷電を持ついくつかのリン脂質を含んでいなければならないが、ホスファチジルセリンがもっとも有効な陰性荷電リン脂質である。rTFをリン脂質小胞に取り込むために多様な方法が利用可能である(Smith & Morrisseyが考察している(17))。
【0008】
血液凝固を始動させる第二の経路は内在性経路又は接触経路である。この組織因子非依存経路は、血漿がある種の人工的表面(例えばガラス、シリカ、又はカオリン)と接触したときに活性化される。前記接触経路は、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン及び第XII因子が陰性荷電表面に暴露されたときに開始する。前記によって、限定的タンパク質分解を介するXII因子のその活性酵素形(XIIa因子)への変換をもたらすイニシエーター複合体が形成される。続いてXIIa因子は、カルシウム依存反応でXI因子をXIa因子に変換し、前記は順次血液凝固カスケードを活性化し、最終的にはトロンビンの生成及びフィブリンのポリマー化をもたらして凝血塊を形成する。
【0009】
全ての止血関連凝固因子のレベルを患者で測定するためには2つの凝固検査を実施する必要がある。1つは上記に記載したPT検査であり、他方は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)検査である。PT検査は血液凝固カスケードの活性化のために組織因子を用いるので、前記は外在性経路の凝固因子に鋭敏である。aPTT検査は人工的な凝固活性化物質(例えばカオリンまたはシリカ)を使用し、したがって内在性経路の変化に敏感である。一方の検査が全ての止血関連凝固因子に鋭敏であるわけではないので、患者が出血体質を持たないことを(例えば外科手術前に)確かめるために、患者血漿の凝固能力は両検査を用いて評価する必要がある。更にまた、aPTTはヘパリン療法のモニターに広く用いられ、他の臨床凝固アッセイ(例えば抗リン脂質抗体症候群及び狼瘡の抗凝固薬のためのアッセイ)のための基礎でもある。市販のaPTT試薬の特性は製造業者間で(特にどの人工的凝固活性化物質が用いられているかに関して)異なっている。aPTTアッセイはまた標準化が困難であることが示されている。
【0010】
オリゴヒスチジンタグ(典型的には組換えタンパク質のN-末端又はC-末端のどちらかに取り込まれたいくつかの連続するヒスチジン残基から成る)は、そのようなタンパク質の精製を容易にするために広く用いられている(19)。そのようなオリゴヒスチジンタグを含む組換え融合タンパク質は、遷移金属イオン(例えばNi+2)にかなり高い親和性で結合するであろう。この特性は、金属キレート基の誘導体、例えば固相に結合させたニトリロトリ酢酸(NTA)を用いるアフィニティー精製に利用することができる。NTAはニッケルイオンをキレートし、結合Ni+2がなお組換えタンパク質のオリゴヒスチジンタグと堅固に相互作用することができるような態様でNi+2を提示するであろう。続いて、固定されたNTA- Ni+2複合体と結合した組換え融合タンパク質を、イミダゾールを用いて特異的に溶出させることができる。
【0011】
ニッケルキレート脂質、DOGS-NTA-Ni(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イニノジ酢酸)スクシニル]ニッケル塩)は市場で入手することができる。DOGS-NTA-Niは、主として構造生物学者が、電子結晶学による構造情報を得るために、オリゴヒスチジンタグ付加組換えタンパク質の人工膜上での二次元触媒を作出するために用いられた。
【発明の開示】
【0012】
発明の要旨
第一の特徴では、本発明は以下を含むトロンボプラスチン試薬である:(i)活性化sTF、(ii)金属キレート脂質、(iii)Ni2+、Cu2+、Co2+及びその混合物から成る群から選択される金属イオン、並びに(iv)リン脂質。
第二の特徴では、本発明は以下を含むaPTT試薬である:(i)金属キレート剤、(ii)Ni2+、Cu2+及びその混合物から成る群から選択される金属イオン、並びに(iii)リン脂質。
第三の特徴では、本発明は活性化sTFである。
第四の特徴では、以下を含む組み合わせPT及びaPTT検査キットである:(i)活性化sTF、(ii)金属キレート脂質、(iii)Ni2+、Cu2+及びその混合物から成る群から選択される金属イオン、並びに(iv)リン脂質。
第五の特徴では、本発明は以下を含む凝固を促進する組成物である:(i)金属キレート剤、(ii)Ni2+、Cu2+、Co2+、Zn2+及びその混合物から成る群から選択される金属イオン、並びに(iii)場合によって、TFの細胞外ドメイン及び少なくとも2つのヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン部分を含む活性化されたsTF。
【0013】
定義
Ni-NTA-DOGS又はDOGS-NTA-Niは、1,2-ジオレオイルsn-グリセロ-3-[(N(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル](ニッケル塩)を意味する。
NTA-DOGS又はDOGS-NTAは、1,2-ジオレオイルsn-グリセロ-3-[(N(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル]を意味する。
VII又はVII因子は凝固第VII因子(酵素前駆体)を意味する。
VIIa又はVIIa因子は凝固第VIIa因子(活性酵素)を意味する。
X又はX因子は凝固第X因子(酵素前駆体)を意味する。
Xa又はXa因子は凝固第Xa因子(活性酵素)を意味する。
VIII又はVIII因子は凝固第VIII因子(酵素前駆体)を意味する。
IX又はIX因子は凝固第IX因子(酵素前駆体)を意味する。
XI又はXI因子は凝固第XI因子(酵素前駆体)を意味する。
XIa又はXIa因子は凝固第XIa因子(活性酵素)を意味する。
XII又はXII因子は凝固第XII因子(酵素前駆体)を意味する。
XIIa又はXIIa因子は凝固第XIIa因子(活性酵素)を意味する。
PKはプレカリクレインを意味する。
HKは高分子量キニノゲンを意味する。
PNPは正常プール血漿を意味する。
NTAはニトリロ三酢酸又はニトリロ三酢酸部分を意味する。
rTFは組換え膜固着組織因子を意味する。
sTFは可溶性組織因子、膜スパンニングドメインも細胞質ドメインももたない組織因子の切端可溶形を意味する(3−7)。
【0014】
TF:VIIaは組織因子と第VIIa因子の複合体を意味する。
aPTT試薬は、aPTT検査で使用される、血液凝固の接触経路の活性化物質を含む試薬である。
金属キレート脂質は金属キレート部分と共有結合した脂質部分であり、例えばNTA-脂質(例えばNTA-DOGS)である。
金属キレート剤は共有結合した金属キレート部分を含み、例えば金属キレート脂質(例えばNTA-DOGS)及びNTA-ビーズである。
Hisはヒスチジン部分又は残基を意味する。
【0015】
オリゴヒスチジンは少なくとも2つのヒスチジン残基を含む部分である。好ましくは、前記ヒスチジン残基は連続的であり、その場合前記オリゴヒスチジンはまた(His)nとして表現され、ここでnは好ましくは少なくとも2、より好ましくは2−10である。
FVIIは、ヒトの第VII因子の血液凝固活性を示す任意のタンパク質を意味する。あるタンパク質の第VII因子凝固活性は、以下のアッセイでヒト第VII因子と同じ凝固時間を提供するために必要なタンパク質の量を比較することによって決定される:50μLのクエン酸添加第VII因子欠乏血漿をヒト第VII因子又は前記タンパク質とともに37℃にて2分キュベットでインキュベートし、その後、100μLの予備加温トロンボプラスチン試薬を添加することにより血液凝固を開始させ、凝血塊の形成時間を凝固計(例えばST4凝固計(Diagnostica Stago, Parsippany, NJ))で測定する。ヒト第VII因子の量及びトロンボプラスチン試薬のタイプは、10−15秒の凝固時間を提供するように選択される。ある凝固時間を達成するヒト第VII因子の分子の量を、同じ凝固時間を提供する前記タンパク質の分子の量で割る。前記の値は、前記タンパク質の相対的第VII因子凝固活性を提供する。好ましくは、FVIIはヒト第VII因子の凝固活性の少なくとも1%を有する。FVIIには、例えば天然のヒト第VII因子、天然のヒト第VIIa因子、組換えヒト第VII因子(33)及びVIIa、並びに他の哺乳動物の第VII因子及びVIIa(例えば天然のウサギ第VII因子及び天然のウサギ第VIIa因子)が含まれる。
【0016】
“第VIIa因子等価物”は、存在するFVIIの量が、天然のヒト第VIIa因子の特定の量と同じ凝固活性を有することを意味する。例えば、“10ngの第VIIa因子等価物のFVII”は、存在するFVIIの量が、10ngの天然のヒト第VIIa因子と同じ凝固活性を有することを意味する。
活性化sTFは、そのC-末端に金属結合ドメイン(例えば(His)n、ここでnは2−10)を含み、100mMのNaCl溶液(50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.4)を含む)中でsTFの溶解度の少なくとも10%の溶解度を有する、任意のペプチド、タンパク質又はポリペプチドを意味する。更に、トロンボプラスチン試薬(37℃に予備加温した100μLの試薬を50μLの正常個体由来のプール血漿と混合する)として用いられる、活性化sTF(1μg/mL)、金属(10μM)、並びに金属をキレートする15%の金属キレート脂質、5%PS、40%PE及び40%PC(100μMの全脂質濃度に対して)を含む試薬は1分以内に凝固をもたらす。前記の例にはsTF(His)6、sTF-5AA-(His)6、及びsTF-2(His)5が含まれる。
【0017】
金属結合ドメインは、50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.4)を含む100mMのNaCl溶液中で、少なくとも(His)2の親和性で金属と結合する部分である。例には(His)n(式中nは2−10)が含まれる。
TFは、任意の組織因子タンパク質、例えばrTF 及び天然の哺乳動物の組織因子を意味する。
トロンボプラスチン試薬は、TFを含み、更に37℃に予備加温した100μLの試薬を50μLの正常個体由来のプール血漿と混合したとき1分以内に凝固をもたらす(更にそのものだけで37℃に加温したときは2分以内に凝固しない)任意の試薬である。
【0018】
発明の詳細な説明
完全な前凝固薬活性を発現し、したがって組換えトロンボプラスチン試薬での使用に適切であるために、組換えTFは、典型的にはトランスメンブレンドメイン又は等価の膜固着ドメインを含む必要がある。しかしながらsTFと比較して、rTFははるかに低レベルで発現され、精製がより困難であり取り扱いも難しい。更にまた、rTFのリン脂質小胞への再構成も困難である。したがって、我々は、所望されるsTFの発現、取り扱い及び溶解度特性の全てを有するが、再脂質添加rTFに匹敵する前凝固薬活性を血液凝固検査で示す組換えTF形の開発を目指した。
【0019】
金属結合ドメイン(例えばオリゴヒスチジンタグ)をsTFのC-末端に付加することによって、金属キレート脂質を含むリン脂質小胞との前記タンパク質の結合が可能になる。野生型TFの細胞外ドメインのC-末端部分は、トランスメンブレンドメインと短いペプチド配列を介して連結されているので(18)、オリゴヒスチジンタグをsTFのC-末端に結合させることは(場合によって例えば他のアミノ酸残基のようなスペーサーを用いて)、金属キレート脂質にキレートされた金属を介してリン脂質表面と前記sTFが結合したとき、それが適切な向きで配置されることを可能にする。
金属キレート脂質(例えばDOGS-NTA-Ni)にキレートされた金属はリン脂質二重層に容易に取り込まれ、組換えタンパク質(例えば活性化sTF)の金属結合ドメインと前記金属との結合が可能になる。更にまた、このような態様で小胞と結合した活性化sTFは、膜固着rTFと実質的に類似の行動を示し、rTFに匹敵する前凝固薬活性を有することが見出された。
【0020】
更にまた、固相に固定されたニッケルキレート脂質を含む膜二重層は、粗混合物から活性化sTFを効率的に捕捉し、一工程で同時に前記タンパク質を精製しそれを前記膜に固着することができることが見出された。更にまた、活性化sTFの高度に活性な調製物を、金属キレート脂質を含む固定されたリン脂質二重層に結合させる能力を用いて、集中的注意を要する臨床凝固アッセイ(前記アッセイでは凝固アクチベーターがチップの表面に付加される)を調製することができる。
高度に活性なPT試薬(トロンボプラスチン試薬)は、活性化sTF(例えばsTF (His)6又はsTF-5AA-(His)6)を用い、リン脂質小胞(例えば10%DOGS-NTA-Ni、5%PS、30%PE及び55%PCを含む)の存在下で調製することができる。
【0021】
強力なトロンボプラスチン試薬の創薬に加えて、組織因子が全く存在しない場合でさえも、リン脂質小胞中のNi2+又はCu2+を含む金属キレート脂質(例えばDOGS-NTA-Ni)はまた血液凝固の接触経路の非常に強力なアクチベーターであることが見出された。これらのリン脂質小胞は診断及び治療薬として用いることができる。それらは、化学的に明確に規定されたaPTT試薬の活性成分として供し得る。それらは又、患者の出血症状の治療に用いることができる。
PT試薬(トロンボプラスチン)は、金属イオン(好ましくは遷移金属イオン、例えばNi2+、Cu2+、Zn2+又はCo2+であるが、Ni2+及びCu2+がもっとも強力である)と結合した金属キレート脂質の存在下で、活性化sTFから調製することができる。高度に活性なaPTT試薬は、金属イオン(好ましくは遷移金属イオン、例えばNi2+、Cu2+、Zn2+又はCo2+であるが、Ni2+がもっとも強力である)と結合した金属キレート剤から調製することができる。
【0022】
金属キレート剤にはNTAビーズ及び金属キレート脂質が含まれる。金属キレート脂質の例には以下が含まれる:1-パルミトイル-2-[8-[(E,E)-2',4'-ヘキサジエノイルオキシ]-sn-グリセロ3-N-[11-[N',N'-ビス[カルボキシメチル]イミノ]-3,6,9-トリオキサウンデカノイル]ホスファチジルエタノールアミン(前記は例えばCuをイミノジアセテート(IDA)部分を介してキレートする)(35)、脂質ジステアリルイミノ-ジアセテート(DSIDA)(前記は例えばCuをキレートする)(36)、及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル](アンモニウム塩)(DOGS-NTA)(前記は例えばNiをキレートする)。
活性化sTFは、好ましくはTFの細胞外ドメイン、及び少なくとも2つのヒスチジン、より好ましくは2−10のヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン部分を含む。好ましくは、ヒスチジン残基は連続的である。より好ましくは、活性化sTFは、(His)n(式中nは2−10、より好ましくは4−6)を含む。活性化sTFの例にはsTF(His)6、sTF-5AA-(His)6、及びsTF-2(His)5が含まれる。
【0023】
PT検査キットはトロンボプラスチン試薬を含む。aPTT検査キットはaPTT試薬を含む。場合によって、Ca2+含有試薬、緩衝液及び/又は保存料がどちらかのキットに含まれ得る。同様に、PT検査及びaPTT検査の両検査用組み合わせキットは、トロンボプラスチン試薬又はaPTT試薬のどちらかを構成することができる試薬、例えばNi2+及び/又はCu2+、及び金属キレート脂質を、別々に包装された活性化sTFとともに含むであろう。
外在性経路(PT)又は内在性経路のどちらかの凝固アッセイの例は以下を含む:PTアッセイは、オリゴヒスチジンタグ付加sTF及びNi2+又はCu2+のどちらかをNTA-脂質と一緒に含むことができ、aPTTアッセイはNTA-脂質と一緒にNi2+を含むことができる。
外在性及び内在性凝固経路の両方を同時に強力に活性化する処方物(例えば治療薬として)の例は、オリゴヒスチジンタグ付加sTFをNi2+又はCu2+及びNTA-脂質と一緒に用いて調製することができる。
【0024】
組み合わせPT検査及びaPTT検査のためのキットの例は3本の試薬ビンを含む(下記に試薬A、B及びCとして列挙され、続いて各事例でそれらの内容物が列挙されている)。前記ビンはこれらの成分を既製溶液として含むか、又はこれらの成分は凍結乾燥されてあってもよい。後者の場合には、試薬は適切な体積の水を添加することによって、表示の最終濃度の構成物が得られる。
【0025】
試薬A
(a)100μMのNi-脂質
(b)随意で適切な緩衝液(例えば25mMトリス-HCl緩衝液、pH7.4)
(c)随意で保存料(例えば0.1%w/v NaN3
試薬B
(d)1から100nMの活性化sTF
(e)随意で25mMのCaCl2
(f)随意で適切な緩衝液(例えば25mMトリス-HCl緩衝液、pH7.4)
(g)随意で安定化剤(例えば0.1%w/v ウシ血清アルブミン)
(h)随意で保存料(例えば0.1%w/v NaN3
試薬C(随意)
(i)水に25mMのCaCl2
(j)随意で保存料(例えば0.1%w/v NaN3
【0026】
PTアッセイ(半自動化)
1.同体積の試薬A及び試薬Bを一緒に混合してトロンボプラスチン試薬を作成する。
2.50μLのクエン酸添加血漿を凝固計のキュベットのピペットで加える。
3.120秒インキュベートし、血漿が37℃に達したことを担保する。
4.100μLのトロンボプラスチン試薬を添加して混合し、トロンボプラスチン試薬の添加時点から凝血塊形成までの時間を測定する。
別法PTアッセイ(完全自動化)
1.50μLのクエン酸添加血漿を凝固計のキュベットのピペットで加える。
2.120秒インキュベートし、血漿が37℃に達したことを担保する。
3.50μLの試薬A、直後に50μLの試薬Bを添加する。混合する。試薬Bの添加時点から凝血塊形成までの時間を測定する。
この変型アッセイは、工程3の試薬Aと試薬Bの添加の間のラグが可能な限り短い自動凝固計に適切であり得る。
【0027】
aPTTアッセイ
1.50μLのクエン酸添加血漿を凝固計のキュベットにピペットで加える。
2.50μLの試薬Aを添加する。混合する
3.37℃にて180秒インキュベートする。
4.50μLの試薬Cを添加して混合し、試薬Cの添加時点から凝血塊形成までの時間を測定する。
創傷の出血を停止させるために治療用組成物を生成することができる。前記止血は創傷の血液を前記組成物と接触させることによって、又は創傷を前記組成物と接触させることによって実施される。前記組成物は、内在性経路、外在性経路又は両経路を開始させるために必要な組成物を含むことができる。前記組成物は、トロンボプラスチン試薬、aPTT試薬又は両試薬で用いられる成分と同じ成分であり得る。前記治療用組成物は、創傷の位置に応じて多様な形態を有することができる。すなわち、局所用組成物、鼻内スプレー、座薬、口内洗浄液、注射用組成物、包帯及び創傷包帯剤である。治療用組成物は好ましくは無菌的であり、保存料を含むことができる。治療用組成物は、ユニット剤形を含む多様な形態で投与することができ、更に種々の医薬的に許容される担体と組み合わせることができる。そのような担体には、固形稀釈剤又は充填剤、無菌的水性媒体及び種々の非毒性溶媒が含まれる。更にまた、経口組成物(口内洗浄液、及び前記治療用組成物を染み込ませた当てガーゼ又は綿棒を含む)には適切に甘味料又は香料を添加することができる。
包帯及び創傷包帯剤は湿潤又は乾燥(凍結乾燥)形の組成物を含むことができる。鼻内スプレーは、湿潤又は乾燥粉末形の組成物を、慣例的な他の添加物及び/又は担体(例えば米国特許6,815,424号に記載されたようなもの)とともに含むことができる。
【0028】
口内洗浄液は湿潤形の組成物を含み、場合によって口内洗浄液に一般的な他の成分を含むことができる。前記の例には米国特許5,945,087号及び米国特許5,338,538号に記載されたものが含まれる。
注射可能形は医薬的に許容できる担体を含むことができる。注射可能な組成物は任意の体腔に注射することができるが、典型的には静脈内に注射することはできない。
局所用組成物は湿潤形又は乾燥粉末形であり、局所に許容され得る担体を含むことができる。そのような局所に許容され得る担体の例は、国際特許公開WO00/62742号(2000年10月26日公開);米国特許5,691,380号;5.968,528号;4,139,619号;及び4,684,635号で見出すことができる。局所に許容され得る適切な担体は又、他の医薬的な担体と同様に、本分野で標準的な参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed.(Mack Publishing Company, Easton, Pa. 1990)に記載されている。
【0029】
好ましくは、トロンボプラスチン試薬はCa2+を含むか、又はCa2+は試薬の使用直前に添加することができる。Ca2+は、トロンボプラスチン試薬とともにキットとして、各々の部分を別個に包装して、場合によって各試薬を乾燥形で提供することができる。Ca2+は好ましくはCaCl2として添加される。Ca2+の量は、好ましくは1−100mM、より好ましくは5−75mM、より好ましくは15−50mM(20mM、25mM、30mM、35mM、40mM及び45mMを含む)である。
イオン強度は、塩、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩(ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩及び酢酸塩、例えばNaCl及びKClを含む)を添加することによって調節することができる。好ましくは、前記塩類は、0−200mM、10−150mM、15−125mMの量で、又はより好ましくは25−100mMの量で存在する。
【0030】
好ましくは、トロンボプラスチン試薬は、第II因子、第X因子、アクチン、ヘキソキナーゼ及びアルカリ性ホスファターゼの1つ又は2つ以上は含まない。アクチン、ヘキソキナーゼ及びアルカリ性ホスファターゼが存在しないことは、前記トロンボプラスチン試薬は組織抽出物を含まないことを示している(ただし組織因子自体は組織から既に単離及び精製されてあってもよい)。
トロンボプラスチン試薬は、リン脂質(例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルエタノールアミン((PE))に再脂質添加されたTFを含む。前記リン脂質の少なくとも一部分は、正味の陰性荷電を持つリン脂質、例えばホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)及びホスファチジルイノシトール(PI)である。好ましくは、PSの量は、全リン脂質含有量の5−50%、より好ましくは10−40%(15%、20%、25%、30%及び35%を含む)である。PEの量は、好ましくは全リン脂質含有量の0−50%、より好ましくは5−40%(10%、15%、20%、25%、30%及び35%を含む)である。好ましくは、前記リン脂質含有物の残余は中性リン脂質、例えばPC(例えば全リン脂質含有量の0−95%、より好ましくは40−90%(40%、50%、55%、60%、75%、80%及び85%を含む)である。
前記トロンボプラスチン試薬の国際感度指数(International Sensitivity Index; ISI)値は、好ましくは0.6から2、より好ましくは0.8から1.5、更に好ましくは0.8から1.2、もっとも好ましくは0.9から1.1である。また別には、好ましくは前記トロンボプラスチン試薬のISI値はせいぜい1.5又はせいぜい1.2である。トロンボプラスチン試薬のISI値はWHOが承認した方法(34)で決定されるべきである。
【0031】
トロンボプラスチン試薬は、凍結乾燥、噴霧乾燥又は適切なタンパク質乾燥方法による乾燥形で提供することができる。前記試薬は細片又は他の固相上で乾燥させることができ、別個に包装して提供される成分とともにキットとして、又は2つ以上の包装物に分けて包装した成分群として提供することができる。前記成分のいくつか又は全てを乾燥形で提供することができ、他の成分は食塩水で又は生理的緩衝液中で提供することができる。
【0032】
本発明のトロンボプラスチン試薬は添加されたFVIIを含むことができる。前記トロンボプラスチン試薬へのごく少量の第VIIa因子の添加を実施して第VII因子に対する鋭敏性を最小限にし、他の因子に対する応答を更に操作することができる。このことは、米国特許出願10/931,282号(2004年8月31日出願)(”Thromboplastin Reagents”, Morrisey et al.)で更に詳しく説明される。任意のFVII(任意の哺乳動物(例えばヒト、ウサギ、ラット、ウシなど)の第VII因子又はVIIa因子を含む)を用いることができる。好ましくは、トロンボプラスチン試薬は、添加された第VIIa因子、より好ましくはヒトの第VIIa因子を含むことができる。FVIIは組換えによって調製することができる(33)。
【0033】
好ましくは、存在するFVIIの量は、正常な個体の血漿中に見出される第VII因子又は第VIIa因子の量(第II及びX因子欠乏血漿中で見出される第VII又はVIIa因子の量を含む)よりも少ない。存在するFVIIの量は、好ましくは0.1から10ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)の第VIIa因子と等価な量、1から6ng/mLの第VIIa因子と等価な量、又は2.5から5ng/mLの第VIIa因子と等価な量、及びより好ましくは少なくとも1ng/mL又は少なくとも2.5ng/mLの第VIIa因子と等価な量である。また別には、FVIIの量はピコモル量で表され得る。例えば1−1000pMの第VIIa因子と等価な量、50−400pMの第VIIa因子と等価な量、好ましくは少なくとも150pMの第VIIa因子と等価な量、又は少なくとも200pMの第VIIa因子と等価な量である。
トロンボプラスチン試薬を用いていずれの抗凝固薬療法もモニターすることができる。下記の表Aは多様なこれらの薬剤を列挙する。
【0034】
表A:トロンボプラスチン試薬によりモニターすることができる抗凝固薬
クマリン誘導体(機能性第II、VII及びX因子を阻害する):
ワルファリン(COUMADIN(商標))1
ニクマローン(ACENOCOUMAROL(商標))1
ジクマロール(BISHYDROXYCOUMARIN(商標))
フェンプロクモン
トロンビン(FIIa)阻害物質:
アルガトロバン(NOVASTAN(商標))1
キシメルガトラン(EXANTA(商標))2
BIBR 10482;BIBR 953
デシルジン(REVASC(商標))1
レピルジン(REFLUDAN(商標)又はPHARMION(商標))1
ビバリルジン(ANGIOMAX(商標)、以前にはHIRULOG(商標))1
【0035】
FXa阻害剤:
DX-9065a2;DPC 9062;アンチスタシン3
TF/FVIIa阻害剤:
抗TF抗体
組換え線虫抗凝固タンパク質(rNAPc2)2
組換え組織因子経路阻害剤(TIFACOGIN(商標))2
FVIIai3
ART-123(商標)(組換え可溶性トロンボモジュリン)2
脚注:
1:ヒトでの使用がFDAにより承認
2:臨床試験で評価されたが未だ承認されていない
3:開発中(動物実験のみ)
【実施例】
【0036】
特段の記載がないかぎり、下記の実験はsTF(His)6を用いて実施し、Bio-Bead法によって調製したSUVを利用した。
改変トロンボプラスチン試薬のためのリン脂質
sTF(His)6の前凝固薬特性は、先ず初めに、PTアッセイで最短の凝固時間を生じたリン脂質の組成を決定することによって調べた。SUV中のPE、PS、PC及びDOGS-NTA-Niの割合を系統的に変化させ、正常プール血漿の血液凝固を支援するそれらの有効性を検査した。SUV(100μM脂質)及び0.3μg/mLのsTF(His)6の混合物を用い、PT凝固アッセイのための改変トロンボプラスチン試薬を作成した。これらの試薬による最短の血液凝固時間は、SUVが12%のNi-脂質(40%PE、5%PS、12%DOGS-NTA-Ni及び43%PC)を含むときに得られた(図2)。
更にまた、最短の凝固時間をもたらすSUV濃度を調べた。PTアッセイ及び0.3μg/mLのsTF(His)6を用い、12.5%のDOGS-NTA-Niを含む全リン脂質の濃度を変化させた。SUV濃度が増加するにつれて凝固時間は短くなり、ほぼ100μMのリン脂質でプラトーに達した(図3)。
【0037】
オリゴヒスチジンタグ付加sTFの特性
10%DOGS-NTA-Ni、5%PS、30%PE及び55%PCを含むリン脂質小胞(10%Ni-脂質と称する)の存在下で、sTF(His)6及びsTF-5AA-(His)6の凝固活性を、PCPS小胞の存在下でのsTFの活性及びPCPS小胞へ再脂質添加したrTFの活性と比較した。TF及びリン脂質を含むトロンボプラスチン試薬を調製し、種々のTF濃度に稀釈した。続いてこの稀釈トロンボプラスチン試薬をPTアッセイで用いた(図4)。以下のような4つの改変トロンボプラスチン試薬を作成した:1.PCPS小胞(30μM)に再脂質添加した100ng/mLのrTF;2.1000ng/mLのsTF(His)6及び10%Ni-脂質(100μM);3.1000ng/mLのsTF-5AA-(His)6及び10%Ni-脂質(100μM);及び4.10,000ng/mLのsTF及びPCPS小胞(100μM)。トロンボプラスチン試薬は、TA(50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.5)、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%NaN3)で稀釈してTFの濃度を変化させた。
【0038】
50秒の凝固時間をもたらしたTF濃度を用い、種々のトロンボプラスチン調製物の活性を比較した(表1)。sTF(His)6及びsTF-5AA-(His)6の両者の前凝固薬活性はsTFよりも劇的に高くなった。sTF-5AA-(His)6はより活性が高い変種であり、rTFのそれより10倍以内の前凝固薬活性を有する。
VIIaをアロステリックに活性化するsTF(His)6の能力をsTF及びrTF/PCPSと比較した。sTF(His)6はまた完全にVIIaをアロステリックに活性化することができた(データは示されていない)。
【0039】
表1:PTアッセイにおける組換え組織因子の種々の形態の血液凝固活性

*10mol%のNi-NTA-DOGSを有するSUV
**図1の血液凝固データを示す
sTF(His)6がVIIaとどの程度良好に結合するかについてsTF(His)6を調べた。膜固着rTF及びsTFはVIIaに対するそれらの結合親和性において劇的に相違する。VIIaは、PCPSに再脂質添加されたrTFと極めて堅固に結合し、Kd値は50pM未満であった(4)。他方、VIIaはsTFとはかなり弱く結合し、Kd値はほぼ2から5nMであった(4)。Kd値は、VIIaのrTF/PCPSとの結合について、PCPS小胞存在下のsTFとの結合について、及びNi-脂質存在下のsTF(His)6との結合について決定された(表2;Ni-脂質の存在下のVIIaとsTF(His)6との結合についての典型的な結合等温線については図5を参照されたい)。
【0040】
表2:種々の形態の組換えヒト組織因子とVIIaとの結合の解離定数

【0041】
文献の値と一致して、40pMのKd値がVIIaとrTF/PCPSとの結合について得られ、7nMのKd値がVIIaとsTFとの結合について得られた。これによって、VIIaは、前記がsTFと結合する親和性よりもほぼ100倍高い親和性でrTF/PCPSと結合するという以前の報告が確認された。興味深いことには、VIIaはNi-脂質の存在下で非常に高い親和性でsTF(His)6と結合することが見出された。
この実験でこれまで述べたものは、Bio-Bead法により作成したリン脂質小胞を用いて実施した。同様な凝固実験を、超音波又は押出しによって作成した小胞を用いて実施し、同様な結果が得られた(データは示されていない)。したがって、3つのタイプの小胞の全てがsTF(His)6の凝固活性を支援した。Bio-Bead法によって調製した小胞は、押出し又は超音波作成小胞と比べて最も高い活性(最短凝固時間)を提供した。
【0042】
PT試薬としてのオリゴヒスチジンタグ付加sTF及びNi-脂質
主要目標は、PTアッセイでトロンボプラスチン試薬として機能し得るTFの可溶形を作成することであった。これを検討するために、以下の最終濃度を含む改変トロンボプラスチン試薬を作成した:3μg/mLのsTF(His)6及び100μMの15%Ni-脂質。続いて、この試薬を市販のトロンボプラスチン試薬、STA-ネオプラスチンClプラス(Diagnostica Stago)とPTアッセイで比較した。2つの試薬による凝固時間を正常プール血漿とともに多数の因子欠乏血漿を用いて比較した(図6)(後者の血漿は第V、VII、VIII、IX、X、XI、XII因子、プレカリクレイン(PK)又は高分子量キニノゲン(HK)が欠乏していた)。PTアッセイでは予想したとおり、両試薬が、第V、VII又はX因子欠乏血漿で凝固時間の延長を示し、一方、内在性経路の凝固因子(第VIII、IX、XI、XII因子、PK又はHK)の欠乏に対しては感受性を示さなかった。
【0043】
aPTTアッセイのためのリン脂質
いくつかの環境下では、Ni-脂質は、sTF(His)6の非存在下でさえもそれ自体が前凝固薬である。更なる実験によって、Ni-脂質は、特にカルシウムイオンの添加前に37℃で2から4分血漿とともに予備インキュベートしたとき、血液凝固の接触経路の強力なアクチベーターであることが示された(図9参照)。(上記に提示したPT検査データでは、Ni-脂質は血漿と予備インキュベートされず、したがって血液凝固の接触経路は有意な程度には活性化されなかった)。
Ni-脂質の接触経路を活性する能力を以下の一連の実験で調べた。第一の実験では、Ni-脂質の前凝固薬活性のリン脂質依存性を、aPTTアッセイでPS、PE、PC及びDOGS-NTA-Niの含有量を変化させることによって調べた(図7)。最短の凝固時間が、15%のDOGS-NTA-Ni、5%PS、40%PE及び40%PC(15%Ni-脂質と称する)で構成されたSUVで得られた。
【0044】
次に、凝固時間に対するリン脂質濃度の影響を15%Ni-脂質を用いてaPTTアッセイで調べた(図8)。最短の凝固時間は100μM以上のリン脂質濃度で得られた。
Ni-脂質と血漿との予備インキュベーション(カルシウム添加前)の時間がaPTTアッセイの実施で重要であった(図9)。予備インキュベーションがない場合、凝固時間は非常に長い(>100秒)。Ni-脂質と血漿との最適な予備インキュベーション時間は2から4分で、それ以降凝固時間は長くなった。この反応態様はaPTT試薬の典型であり、市販のaPTTアッセイと共通している。
Ni-脂質の前凝固薬活性は接触経路の活性化によるものであることを確立するために、Ni-脂質によるaPTTアッセイを正常血漿と第VIII因子欠乏血漿とで繰り返した(図10)。正常血漿の凝固時間は15%Ni-脂質の濃度の増加で劇的に短縮され、一方、第VIII因子欠乏血漿による凝固時間は、全ての検査した小胞濃度ではこれらのアッセイで有意には延長されなかった。このことは、Ni-脂質の前凝固薬活性は血液凝固の内在性経路に左右されることを示している。
【0045】
aPTT試薬としてのリン脂質
正常プール血漿及び個々の多様な凝固因子が欠乏した血漿を用いて、Ni-脂質の前凝固薬活性を市販のaPTT試薬とaPTTアッセイで比較した(図11)。Ni-脂質試薬については、15%のDOGS-NTA-Ni、5%PS、40%PE及び40%PCを含む50μMリン脂質小胞を用いた。市販のaPTT試薬はSTA-PTT-Automate5(Diagnostica Stago)であった。Ni-脂質の50μMの濃度は、正常プール血漿を用いたときの市販のaPTT試薬の凝固時間に類似する、正常プール血漿によるaPTT凝固基準値が前記濃度によって得られるので選択された。前記aPTTアッセイは、50μLのaPTT試薬を50μLの血漿と37℃で3分インキュベートし、続いて50μLの予備加温CaCl2(25mM)を添加することにより血液凝固を開始させることによって実施した(図11)。予想通り、両試薬の凝固時間は第VII因子の欠乏には感受性を示さなかった(前記因子は血液凝固の外在性経路に特異的である)。更にまた予想したとおり、両試薬の凝固時間は、血漿が以下の凝固因子のいずれかを欠くとき長くなった:第V、VIII、IX、X、XI、XII因子、プレカリクレイン又は高分子量キニノゲン。このことによって、Ni-脂質は、血液凝固の接触経路を介して凝固カスケードを活性化することが確認された。これらの結果はまた、Ni-脂質をベースにするaPTT試薬は、市販のaPTT試薬に極めて共通する特性を有することを示している。
【0046】
接触アクチベーターとしてのNi-脂質の金属イオン特異性
この実験シリーズでは、他の多様な遷移金属をNTA-DOGSと結合させたときの、新規なPT及びaPTTアッセイを支援する前記の能力を調べた。これらの実験は、(Bio-Bead法を用いて)混合リン脂質小胞(15%NTA-DOGS、5%PS、40%PE及び40%PCのmol%脂質を含む)を調製することによって実施した。続いて、これらの混合リン脂質小胞(ここではNTA-脂質と称する)をaPTT及びPTアッセイで用いた。
改変トロンボプラスチン試薬は、種々の濃度の表示金属塩、NTA-脂質(100μM脂質)、30ng/mLのsTF-5AA-(His)6、0.004%(w/v)ウシ血清アルブミン、0.08%(w/v)アジ化ナトリウム、及び16mMのHEPES緩衝液(pH7.4)を含んでいた。改変トロンボプラスチン試薬は、種々の濃度の表示金属塩、NTA-脂質(100μM脂質)、0.08%(w/v)アジ化ナトリウム、及び16mMのHEPES緩衝液(pH7.4)を含んでいた。
【0047】
PTアッセイは、NTA-脂質の存在下で、30ng/mLのsTF-5AA-(His)6及び種々の濃度のNiSO4、CoCl2、CuSO4、ZnCl2、FeSO4、CdCl2、CrCl2、AgNO3又はMnCl2を含む改変トロンボプラスチン試薬を用いて実施した(図12)。(この実験セットでは、金属イオン濃度を変化させるので、容易に観察することができる凝固時間範囲を得ることができるように低濃度(30ng/mL)のsTF-5AA-(His)6を選択した。より典型的なPTアッセイでは、もっと高い濃度のsTF-5AA-(His)6が用いられるべきであり、正常プール血漿を用いて10秒から15秒の範囲の凝固時間が得られる。)
0から90μMの濃度の被検金属イオンのいくつか(Fe2+、Cd2+、Cr2+、Ag2+及びMn2+)は、前記改変トロンボプラスチン試薬に加えたときこのPTアッセイでは凝固時間を延長した(>200秒)(データは示されていない)。Zn2+はある程度の活性を示した(図12)。対照的に、Ni2+、Cu2+及びCo2+はいずれも、前記改変トロンボプラスチン試薬に添加したとき、濃度依存態様で劇的に凝固時間を短縮させた(図12)。もっとも短い凝固時間が、10μMのCuSO4又はNiSO4で得られ(<30秒)、Cu2+及びNi2+はこのアッセイ系で相当な活性を有することを示した。しかしながら、10μM未満の金属イオン濃度では、Ni2+はCu2+よりも凝固時間を短縮させた(図12B)。Co2+は、前記改変トロンボプラスチン試薬に添加したとき100秒未満にPT凝固時間を短縮することができる唯一のその他の被検金属であった。しかしながら、調べたCo2+濃度のいずれも、最適濃度のCu2+又はNi2+で観察されたような短い凝固時間を提供できなかった。
【0048】
aPTTアッセイは、NTA-脂質の存在下で、種々の濃度のNiSO4、CoCl2、CuSO4、ZnCl2、FeSO4、CdCl2、CrCl2、AgNO3又はMnCl2を含む改変aPTT試薬を用いて実施した(図12C)。調べたいくつか金属イオン(Fe2+、Cd2+、Cr2+、Ag2+及びMn2+)はいずれも、前記改変aPTT試薬に0から90μMの範囲の濃度で加えたとき、このaPTTアッセイでは凝固時間を延長させた(>200秒)(データは示されていない)。Co2+及びZn2+はある程度の活性を示した(図12C参照)。対照的に、Ni2+及びCu2+の両イオンは、NTA-脂質の存在下で濃度依存態様で劇的に凝固時間を短縮させた(図12C)。Ni2+は、このアッセイでCu2+よりも実質的に良好な性能を示した(図12C)。Ni2+は、10から25μMで改変aPTT試薬に添加したとき最良の活性(最短凝固時間)を示した。
他の固定相に結合したNi2+は、血液凝固の接触経路を活性化させることによって前凝固薬活性を示す。このことを、Niセファロース6 Fast Flowビーズ(Amersham Biosciences)を用いることによって調べた(前記ビーズは架橋アガロースビーズに共有結合したNTA部分にキレートされたNi2+を含む(Ni-NTAビーズ))。Ni-NTAビーズの前凝固薬活性は、アガロースビーズがST4凝固計のボールベアリング検出系に干渉するので96ウェルプレートリーダーを用いて調べた。比較物質として、15%Ni-脂質の能力を同じ検査系で調べた。15%Ni-脂質を含むサンプルはほぼ瞬時に凝固し(あまりに迅速でマイクロプレートリーダーでは測定できない)、接触経路アクチベーターとしてのそれらの優秀性を示した(データは示されていない)。アクチベーター非存在下での血漿の凝固時間は311秒であった(表3)。Ni-NTAビーズは前記血漿の凝固時間を126秒に短縮し、前記は、顕著な短縮であるにもかかわらず、15%Ni-脂質について観察された凝固時間よりも相当に長い。このことは、Ni-NTAビーズは測定可能な前凝固活性を有することを示しているが、前記はまた、Ni-NTAはNi-脂質より劣ることもまた示している。アガロースビーズはそれ自体が前凝固薬ではないことを確認させるコントロールとして、ビーズの一部分をEDTAに暴露することによって結合ニッケル金属を除去した(EDTAはその後徹底的な洗浄によって除去した)。これらの裸のNTAビーズは前凝固薬活性をほとんど示さなかった。
【0049】
表3:血液凝固を活性化させる種々の形態のNi-NTAの存在下における正常プール血漿の凝固時間

【0050】
Ni-NTAビーズは血漿から接触因子を枯渇させるために用いることができる
NI-脂質は接触経路を活性化させるので、前記接触経路の少なくとも1つの因子はNi2+-結合タンパク質でなければならない。最初の実験は、Ni-NTAビーズに吸着させることにより、接触経路の因子を正常プール血漿から枯渇させることができるか否かを決定するために実施した。血漿をNi-NTAビーズと30分周囲温度でインキュベートし、続いてろ過によって前記ビーズを血漿(枯渇血漿)から除去した。改変PTアッセイ(トロンボプラスチン試薬としてrTF/PCPSを使用)及びaPTTアッセイ(Diagnostica Stago aPTT試薬を使用)の両アッセイを用いて、枯渇血漿の凝固時間を測定した。枯渇血漿を用いた凝固時間を正常プール血漿(Ni-NTAビーズで処理されていない)を用いた凝固時間と比較した(表4)。PTアッセイでは、枯渇血漿の凝固時間は正常血漿の凝固時間より短かった。aPTTアッセイでは、枯渇血漿の凝固時間は正常血漿の凝固時間より相当長かった。この結果は、Ni-ビーズで吸着することにより、極めて重要な接触因子を血漿から枯渇させることができることを示している。
【0051】
表4:PT及びaPTTアッセイを用いて枯渇血漿を正常プール血漿と比較した凝固時間

【0052】
また別のオリゴヒスチジンタグ付加sTF変種
更にまた、2つの新規なオリゴヒスチジンタグ付加sTF変種:sTF-2(His)5及びsTF-5AA-(His)6(アミノ酸配列については図1を参照されたい)を用いて実験を行った。PTアッセイを、種々の量のDOGS-NTA-Ni(5%PS、30%PE、PCで残余を調節)で構成される50μMのSUVを用い、オリゴヒスチジンタグ付加sTFの3つ全ての型(0.15μg/mL)について実施した(図13)。これらの実験は、sTF-2(His)5構築物はsTF(His)6と比較して前凝固薬活性が低下し、一方、sTF-5AA-(His)6構築物はsTF(His)6と比較して前凝固薬活性が増加することを示した。
【0053】
各変種のVIIaに対する結合親和性もまた、以前にsTF(His)6のKd値を測定するために用いた同じ条件を用いて測定した(結合等温線については図14を、Kd値については表5を参照されたい)。これらの実験は、sTF-2(His)5構築物は、sTF(His)6構築物よりも弱く第VIIa因子と結合することを示した。対照的に、sTF-5AA-(His)6構築物は、sTF(His)6構築物よりも極めて堅固に第VIIa因子と結合する。これらの結果は、sTF-5AA-(His)6構築物はsTF(His)6構築物より優れていることを示している。
【0054】
表5:Hisタグ付加sTF変種とのVIIa結合についての解離定数

【0055】
VIIaがTFと結合するとき、そのX活性化の速度は劇的に増加するので、前記はTF:VIIa複合体形成の簡便な情報として用いることができる。このアプローチを用いて、我々は、VIIaは極めて高い親和性でsTF-5AA-(His)6+NiPCPS(15%DOGS-NTA-Ni、65%PC、20%PSを含むリン脂質小胞)の組み合わせと10.8pMのKdで結合することを見出した(表6)。この値は、PCPSリポソーム中の組換え膜結合組織因子(membTF)に対するその親和性と本質的に同じであった(Kd=10.0pM)。したがって、単離したTFエクトドメインを金属キレート脂質との相互作用を介して膜表面に付着させたとき、そのVIIa結合能力は脂質二重層をしっかりとつかんだmembTFと区別することができなかった。
【0056】
TF:VIIa機能の厳密な検査は、その天然の基質Xの活性化を支援するその能力である。これは、TFが適切なリン脂質膜(すなわち陰性荷電リン脂質を含む膜)に取り込まれることを必要とする。他方、単離したTFエクトドメインは、たとえPCPSリポソームの存在下であってもmembTFよりも数桁遅い速度でX活性化を支援する。なぜならばsTFは膜に固着されないからである(4, 9)。Xの活性化を支援する種々の形態のTFの能力を、等価濃度の酵素(500pMのVIIa)、補助因子(4pMのTF)及びリポソーム(50μMの全脂質)の下で比較した。sTF-5AA-(His)6及びNiPCPSの組合せが、PCPSリポソーム中のmembTFを用いて得られた速度に匹敵する速度でXIIaによるX活性化を支援した(表6)。TF:VIIa複合体の2つの形態のKcat値は類似しており、一方、sTF-5AA-(His)6+NiPCPSと結合したVIIaのXについてのKmは実際にはPCPS中のmembTFに関するものよりも低く、わずかに高い全体的触媒効率(Kcat/Km)をもたらした。sTF-5AA-(His)6に結合したVIIaの高い酵素活性は、ニッケル-キレート脂質及びsTF上のオリゴヒスチジンタグの両方に依存していた。なぜならばsTF-5AA-(His)6とPCPSリポソームとの混合又はsTFとNiPCPSとの混合は、VIIaによるX活性化の速度にほとんど影響を与えなかったからである。
【0057】
TFの更に別の機能は、TFの表面密度に依存する反応でVIIの自己活性化を促進することである(25, 50)。対照的に、sTFはこの反応を支援することができない(11)。同じTF表面密度という条件下では、PCPS中のmembTF及びsTF-5AA-(His)6+NiPCPSの両者は、VII自己活性化を同様な速度定数で支援した(表6)。総合すれば、これらの発見は、野生型レベルのTF活性を達成するためにはTFエクトドメインが膜固定材と共有結合することが必要というわけではないことを示している。金属キレート脂質を介するsTFと膜表面との可逆的結合は、通常の膜固着と機能的に等価である。
【0058】
表6:TF:VIIa複合体の結合及び動力学定数

a精製タンパク質;b粗培養上清から捕捉;c未決定
【0059】
上記に記載した実験では精製sTF-5AA-(His)6が用いられた。我々は、DOGS-NTA-Niを含む固定された脂質二重層は、粗混合物からsTF-5AA-(His)6を捕捉し、同時にこのタンパク質を迅速な1つの工程で単離及び膜に固着させることができるはずであると推論した。我々の大腸菌発現系ではsTF-5AA-(His)6の発現は細胞周辺腔に誘導されるが、一晩培養液中には相当な量が蓄積される(ELISAで測定したとき典型的には55μg/mL(2.0μM)のsTF-5AA-(His)6)。したがって、粗培養上清を緩衝液で10倍に稀釈し、DOGS-NTA-Ni、PS及びPCを含む脂質混合物で先に被覆しておいた96ウェルのポリスチレンプレートのウェルでインキュベートした。未結合タンパク質を洗い流した後で、前記ウェルをVIIaで処理し、X活性化の速度を測定した。VIIaはTF及び適切なリン脂質膜の非存在下では非常に能力の低いXのアクチベーターであるので、このアッセイは、固定脂質のsTF-5AA-(His)6捕捉能、及び生じたTF:VIIa:膜複合体の機能的状態の厳密な検査である。sTF-5AA-(His)6をこのようにして培養上清から捕捉したとき、前記はVIIaによるX活性化を強力に支援することが見出され、見かけのKm及びKcat値は、PCPSリポソーム中のmembTFの値に匹敵するものであった(表6)。これらのアッセイ条件下では、X活性化の1/2-最大速度(EC50)のために要求される精製sTF-5AA-(His)6の濃度は6.2±4.1nM(図16)であり、前記濃度は、我々の大腸菌培養上清中のsTF-5AA-(His)6の濃度よりも2桁以上低い。sTF-5AA-(His)6と固定PCPSの組合せも、sTFと固定ニッケルキレート脂質混合物の組合せも、たとえsTF濃度が1μMの高さであったとしても、検出可能なX活性化レベルを生じなかったので、sTF上のオリゴヒスチジンタグ及びニッケルキレート脂質の存在の両方がひつようであった(図16)。
【0060】
DOGS-NTA-Niとリン脂質との混合物をポリスチレンの凝固計キュベットのウェルの中で乾燥させ、前記キュベットを洗浄して未固定の脂質を完全に除去し、続いてsTF-5AA-(His)6を前記ウェルに添加した。続いてカルシウムイオン及び血漿をウェルに添加して凝固検査を実施した。ウェル当り200から800nmolのNiPCPSPE(10%DOGS-NTA-Ni、47.5%PC、12.5%PS、30%PEを含むリン脂質小胞)を加えたキュベットで20nMのsTF-5AA-(His)6を用いて、25秒未満の凝固時間を達成することができることが見出された(図17)。コントロール実験は、他の脂質組成物(前記組成物は全て各ウェル当たり1種類の量(200nmol)でキュベットのウェル中で乾燥させた)を用いて実施した。脂質がDOGS-NTA-Niを欠くとき(PCPS又はPCPSPE;図17)、凝固時間が顕著に長くなることが観察された。DOGS-NTA-Niを含むがPEを欠く脂質混合物は凝固時間を中等度に延長させた(NiPCPS*;図17)。この実験は、固定NiPCPSPE及びsTF-5AA-(His)6の組合せは強力なトロンボプラスチン試薬として機能することを示している。それらはまた、DOGS-NTA-Niは、sTF-5AA-(His)6が前凝固薬として効率的に機能するために必要であり、更にPEはsTF-5AA-(His)6の前凝固薬活性を強化するが、前記活性に絶対的に要求されるわけではないことを示している。
【0061】
凝固時間のsTF-5AA-(His)6濃度に対する依存性を調べた。各ウェル当たり200nmolの乾燥NiPCPSPEを用い、我々は、20秒未満の凝固時間は、4.8から4800nMの範囲のsTF-5AA-(His)6の濃度で得られることを見出した(図18)。この実験で最短の凝固時間(16.3秒)は48nMのsTF-5AA-(His)6を用いて得られた。対照的に、オリゴヒスチジンタグをもたないsTFは、非常に高濃度(4800nM;図18)で用いたときでさえ、はるかに長い凝固時間を示した。このことは、sTF-5AA-(His)6のオリゴヒスチジンタグは、固定NiPCPSPEの存在下で、sTF-5AA-(His)6が効率的なトロンボプラスチン試薬として機能するために必要であることを示している。
【0062】
材料と方法
材料:プールした正常なヒト血漿及び個々の因子が欠乏した血漿(第V、VII、VIII、IX、X、XI、XII因子、又はプレカリクレイン)は業者(George King Bio-Medical)から購入した。キニノゲン(HK)欠乏血漿はAffinity Biologicalsから購入した。ニワトリ卵ホスファチジルコリン(PC)、ブタ脳ホスファチジルセリン(PS)、ウシ肝ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びDOGS-NTA-NiはAvanti Polar Lipids, Inc.から購入した。前記脂質は、クロロホルムに溶解して供給され、必要になるまで-20℃にて窒素下で保存した。Chromozym(商標)t-PA(N-メチルスルホニル-D-Phe-Gly-Arg-4-ニトラニリドアセテート)はRoche Applied Scienceから購入した。S-2222はDiaPharmから購入した。Bio-Beads(商標)SM-2吸着剤はBioRad Laboratoriesから購入した。オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E8)はFlukaから購入した。組換えヒトVIIaはAmerican Diagnosticaから、血漿由来第X因子はEnzyme Research Laboratoriesから購入した。市販のPT試薬(STA-Neoplastine CI Plus)及びaPTT試薬(STA-PTT-Automate 5)はDiagnostica Stagoから購入した。Niセファロース6 Fast Flowビーズは、Amersham Biosciencesから購入した。組換えヒトrTF及びsTFは大腸菌細胞で発現させ、以前に記載されたように精製した(6, 21)。ウシ血清アルブミン(BSA)はCalbiochem(La Jolla, CA)から得た。STA凝固計キュベット及びSTart4凝固計はDiagnostica Stago(Parsippany, NJ)から得た。SpectroZyme Xa基質(メトキシカルボニル-D-
シクロヘキシルグリシル-Gly-Arg-4-ニトロアニリドアセテート)及び組換えヒトVIIaはAmerican Diagnostica, Inc.(Stamford, CT)から得た。血漿由来精製VII、X及びXa因子(Xa)はEnzyme Research Laboratories(South Bend, IN)から得た。アンチフォームCはSigma(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)から得た。
【0063】
オリゴヒスチジンタグ付加sTFの生成:異なる3つの型のオリゴヒスチジンタグ付加sTFを、sTFの配列を含むベクターを変異させることによって作成した。大腸菌で前記変種を産生する発現ベクターはプラスミドpET26b(+)(Novagen)の改変型である。この3つ全ての変型は以下のアミノ酸配列をコードした(N-末端からC-末端に向けて列挙する):
1.組換えタンパク質を大腸菌の細胞周辺腔へ誘導するための細菌リーダーペプチド(peIB)。前記peIBは大腸菌細胞によってタンパク質合成中に除去される。
2.固定HPC4抗体を用いるアフィニティ精製用の成熟組換えsTFのN-末端上の短いペプチドエピトープ(AEDQVDPRLIDGKS)。多数の実験によって、sTFのN-末端にこの短いペプチドが存在することがsTFの機能に影響を及ぼさないことが示された(6)。
3.ヒトTFの細胞外ドメイン。前記は、成熟ヒトTF配列のアミノ酸1−217又は1−219から成る(Morrisseyら(22)の番号付与にしたがった)。
【0064】
sTFのC-末端の配列はこれら3つの変種で異なっている(図1)。sTF(His)6では、sTFの最後の2つのアミノ酸が6つのヒスチジン残基で置き換えられている。sTF-2(His)5は、5つのヒスチジン残基、8アミノ酸長のスペーサー及び更に5つのヒスチジン残基を含むという点を除いてsTF(His)6と同様である。sTF-5AA-(His)6はsTFの最後の2つのアミノ酸を保持し、したがって5アミノ酸長スペーサーを含み、その後に6つのヒスチジン残基が続く。3つの変種はいずれも大腸菌BL21(DE3)細胞で発現され、HPC4イムノアフィニティーカラムを用いてsTFについて以前に記載(6)されたように精製したが、ただし以下の小さな改変があった。
【0065】
細菌のペレットは、Rezaieらが以前に記載したように遠心により得た。前記ペレットを細胞洗浄緩衝液(10mMトリス-HCl(pH7.5)、30mMのNaCl、0.5mMのEDTA(pH8.0))で洗浄し、以前に記載されたように遠心し、更に洗浄して2度目の遠心を実施した。この洗浄ペレットをスフェロプラスト緩衝液(100mMトリス-HCl(pH8.0)、0.5mMのEDTA(pH8.0)、1mMのMgCl2、500mMのシュクロース)+0.2mMのPMSFに再懸濁させた。ペレットを遠心により採取し、周囲温度で10分インキュベートした。ペレットを冷水に再懸濁し、氷上で5分インキュベートした。MgCl2を前記懸濁物に最終濃度1mMで添加し、この懸濁物を再び遠心した。上清を採集し、以前に記載(6)されたようにクロマトグラフィーを実施した。
【0066】
小胞の調製:小さな単層薄膜リン脂質小胞(SUV)は3つの異なる方法によって調製した。3方法のいずれにおいても、合計2.6mmolの所望の脂質混合物を乾燥窒素流の下で乾燥させ、続いて高圧下で更に1時間乾燥させてクロロホルムの痕跡を完全に除去する。特段に記載されないかぎり、リン脂質小胞は、Bio-Bead法(17)を用いて調製された。この事例では、1mLのHBS(20mMのHEPES-NaOH緩衝液(pH7.4)、100mMのNaCl、0.1%のNaN3)+6mMのC12E8に前記乾燥脂質混合物を室温にて40分再懸濁した。続いて、前記溶液を1.5時間室温にて400mgのBio-BeadsとともにインキュベートすることによってC12E8を除去した(17)。小胞調製のための他の2つの方法は超音波処理及び押出しであった。これら2つの方法のどちらについても、乾燥脂質混合物は1mLのHBSに再懸濁し、最終脂質濃度は2.6mMとした。続いて、濁った脂質懸濁物を水浴超音波装置で前記が透明に見えるようになるまで超音波処理してSUVを作成するか、又はAvestin LiposoFast小胞押出し装置を用いて100nmポリカーボネートフィルターから繰り返し押出した。全ての事例で、脂質混合物は、種々の量のPS、DOGS-NTA-Ni、PE及び十分なPCから成り、2.6mmolに等しい全脂質含有量とした。20mol%のPS及び80mol%のPCから成るSUVはPCPSと称される。特段に記載されないかぎり、5%のPS、40%のPE並びに種々の量のDOGS-NTA-Ni及びPCを含むSUVはNi-脂質と称され、それらのDOGS-NTA-Ni含有量によって表示される。したがって、15%Ni-脂質は、5%PS、40%PE、15%DOGS-NTA-Ni及び40%PCを含むSUVを指す。
【0067】
トロンボプラスチン試薬:通常のトロンボプラスチン試薬を調製するために、記載されたように(17, 23)、20mol%のPS、80mol%のPCで構成されたリン脂質小胞にrTFを、8700:1のリン脂質対rTFのモル比で脂質添加した(rTF/PCPS)。続いて、rTF/PCPS調製物を所望の最終rTF濃度にTBSA(50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.5)、100mMのNaCl、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%のNaN3)で稀釈した。
改変トロンボプラスチン試薬を調製するためには、SUV及びsTF又はオリゴヒスチジンタグ付加sTF変種を所望の濃度にTA(50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.5)、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%のNaN3)で稀釈した。
【0068】
PT凝固アッセイ:PTアッセイは、モデルST4凝固計(Diagnostica Stago)で、50μL(25mM)のCaCl2及び50μLの稀釈トロンボプラスチン試薬をピペットで凝固計のキュベットに加え、前記混合物を37℃に2分加温することによって実施した。続いて50μLの予備加温正常プール血漿をピペットで前記キュベットに添加し凝血塊形成時間を記録した。
【0069】
aPTT凝固アッセイ:aPTT凝固アッセイもまたモデルST4凝固計(Diagnostica Stago)で実施した。aPTTアッセイは、50μLのaPTT試薬及び50μLの正常プール血漿をピペットで凝固計のキュベットに加え、前記混合物を37℃で3分インキュベートすることによって実施した。続いて50μLの予備加温CaCl2(25mM)をピペットで前記キュベットに添加し、凝血塊形成時間を記録した。
VIIaのアロステリック活性の測定:第VIIa因子をアロステリックに活性化させるTFの能力は、発色アッセイによってVIIa因子の酵素活性を測定することにより測定した。VIIa及び種々の濃度のTF(又はsTF)を含む反応混合物をHBSAC(HBS+0.1%のウシ血清アルブミン及び5mMのCaCl2)で調製した。反応は、発色基質、Chromozym(商標)t-PA(ChtPA)を平底の96ウェルプレートに添加することによって開始させた。TFの全ての形態について典型的な反応条件は、100μLの最終体積のHBSAC中に、15nMのVIIa、0−50nMのTF(rTFはPCPS小胞で再脂質添加し;sTF変種は50μMの最終リン脂質濃度でリン脂質小胞と混合した)、及び1mMのChtPAであった。A405における変化を周囲温度で30秒毎に20分間VERSAmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で読み取ってモニターした。
【0070】
VIIaのTFとの結合のためのKdの測定:種々の形態のTFに対するVIIaの結合親和性を、TF:VIIa複合体形成のための情報としてX活性化速度におけるTF-依存増加を用いて測定した。TF:VIIa複合体によるXの活性化は、Fioreら(9)の連続発色アッセイを応用して測定した。VIIa及びrTF/PCPS又はsTF+SUVのどちらかを含む反応混合物をHBSACで調製した。反応は、Xと発色原基質(S-2222)の混合物を平底の96ウェルプレートに添加することによって開始させた。A405における変化を、VERSAmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で周囲温度にて15秒毎に20分間サンプリングしながらモニターした。X活性化の初速は、以前に記載(9, 24)されたように、二次多項式をA405のデータに適合させることによって決定した。VIIaとTFの結合についての見かけのKd値を誘導するために、以前に記載(24)されたようにリガンド結合二次方程式を速度データに適合させた。再脂質添加rTFを用いた実験の場合、0.25pMのVIIa及び20nMのXをHBSAC中に含む典型的な反応混合物をrTF/PCPSの濃度を増加させながらインキュベートした。sTFを用いる実験の場合、反応混合物は、400pMのVIIa、100μMのPCPS小胞、20nMのX、及び種々の濃度のsTFを含むように改変された。sTFのオリゴヒスチジンタグ付加形を用いる実験の場合、反応混合物は、10pMのVIIa、Ni-脂質(50μMの全脂質)、20nMのX、及び種々の濃度のオリゴヒスチジンタグ付加sTF変種を含むように改変された。
【0071】
プレートリーダーでの凝血塊形成の測定:この実験では、50μMのPCPSを補充した正常プール血漿を種々の量のNi-NTAビーズ(Niセファロース6 Fast Flow)とTA中で混合し、37℃で3分間インキュベートした。この混合物の80μLを平底96ウェルプレートの予備加温(37℃)した20μLのCaCl2(53mM)に加えた。A405における変化をVERSAmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で37℃にて20分にわたって30秒毎に得られた量によりモニターした。最大吸収の半分に達する時間を凝固時間として用いた。
【0072】
リポソームを用いた第X因子活性化:X活性化の初速を周囲温度にてマルチウェルプレートで、以下のように改変した不連続発色アッセイ(4)を用いて測定した:HBSAC中の反応混合物は、500pMのVIIa、多様なX、及びPCPS(+50μMのPCPS)中の4pMのmembTF又は4pMのsTF-5AA-(His)6+50μMのNiPCPSを含んでいた。種々の時間で、20μLアリコットを、100μLの停止緩衝液I(40mMのMes-NaOH(pH5.8)、12mMのEDTA、50mMのNaCl、0.25%トリトンX-100、0.1%NaN3、0.012%アンチフォームC)(4℃)を含む96ウェルプレートに取り出した。停止させた反応を室温に加温した後、HBSAC+0.6Mのトリシン-NaOH(pH8.4)中のSpectrozyme Xa(1.5mM)の60μLを添加し、A405における変化を定量することによりXaを検出した。精製Xaを用いた標準曲線と比較することによって、生成されたXaの量を決定した。
【0073】
固定脂質を用いた第X因子活性化:全工程を周囲温度で実施した。脂質混合物を硼珪酸ガラスの試験管中で穏やかな乾燥窒素ガス流の下で乾燥させて溶媒(クロロホルム)を除去し、続いて全脂質濃度2mMでn-ヘキサンに再溶解させた。96ウェルのポリスチレンプレート(Costar 9018高結合プレート、Corning, Inc. Corning, NY)の各ウェルに全脂質60nmolを加え、更にヘキサンを燻蒸カップボードで蒸発させた。続いてウェルを100μLのTBSA(50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.5)、100mMのNaCl、0.02%のNaN3、1%ウシ血清アルブミン)とともに1時間インキュベートし、液を吸引し、TBS(アルブミンを含まないTBSA)で3回洗浄した。ウェルを100μLの表示の濃度のHBSA(カルシウムを含まないHBSAC)中のsTF又はsTF-5AA-(His)6とともにインキュベートし、続いて液を吸引し、TBSで3回洗浄した。HBSAC中の第VIIa因子(5pM)の100μLとともにウェルを1時間インキュベートし、その後、Spectrozyme Xa基質(1mM)の100μL及び表示のX濃度のHBSACを添加することによって反応を開始させた。A405における変化を定量し、生成されたXaの量を標準曲線と比較することにより決定した。
【0074】
第VII因子の自己活性化:第VII因子の自己活性化速度を本質的に文献(25)に記載されたように測定した。VII及びTFの等モル濃度(各々15nM)を37℃にてHBSAC中でインキュベートした。種々の時点で、20μLアリコットを、60μLの停止緩衝液II(0.1Mのトリシン-NaOH(pH8.4)、6.7mMのCaCl2、0.1%のウシ血清アルブミン、0.1%トリトンX-100、0.05%NaN3、及び100nMのsTF)を含む96ウェルプレートに取り出した。5mMのChromozyme t-PA基質の20μLアリコットを添加し、A405における変化を周囲温度でモニターした。二次元の二次速度定数(K2D)を文献(25)に記載されているように決定した。
【0075】
TF凝固アッセイ:凝固アッセイ用トロンボプラスチン試薬は、低塩TBSA(100mMのNaClの代わり10mMのNaClを含むTBSA)中のPCPS、NiPCPS、又はNiPCPSPEリポソーム中のmembTFを用いて調製された(100μMの全脂質濃度を得るために、前記リポソームに対して更に別のリポソームが添加された)。sTF又はsTF-5AA-(His)6を含むトロンボプラスチン試薬は同じように低塩TBSA+100μMのPCPS、NiPCPS、又はNiPCPSPEリポソーム中で調製された。凝固アッセイはSTart4凝固計(Diagnostica Stago, Parsippany, NJ)で実施した。簡単に記せば、25mMのCaCl2及びトロンボプラスチン試薬(各々50μLアリコット)を一緒に凝固計のキュベット中で120秒37℃にてインキュベートした。続いて、予備加温したヒト正常プール血漿の50μLアリコットを添加し、凝血塊形成時間を測定した。血漿を最後に添加するように前記凝固アッセイを改変することにより、接触経路の活性化を最小限にして、凝固時間をTF活性に依存させた。TF活性単位は、50秒の凝固時間をもたらす最後の150μLの凝固反応中のTFの量と定義される。
【0076】
固定脂質による凝固アッセイ:クロロホルム中の脂質混合物を硼珪酸ガラスの試験管で
穏やかな乾燥窒素ガス流の下で乾燥させて溶媒を除去し、その後、0.3から5.3mMの全脂質濃度でn-ヘキサンに再溶解させた。完全な脂質混合物をNiPCPSPEと称し、10%DOGS-NTA-Ni、12.5%PS、30%PE及び47.5%PCから成っていた。これらの成分の各々の1つを欠く脂質混合物もまたコントロール実験のために調製した。前記の組成は以下のとおりであった:PCPSPEは12.5%PS、30%PE及び57.5%PCを含んでいた;NiPCPS*は10%DOGS-NTA-Ni、12.5%PS及び77.5%PCを含んでいた;更にPCPSは12.5%PS及び87.5%PCを含んでいた。
【0077】
ST4キュベットの各ウェルにヘキサン中の脂質溶液150μLを加えた(各ウェル当たり全脂質50から800nmolを含む)。続いてヘキサンを燻蒸カップボードで室温にて完全に蒸発させた。次にウェルをTBS(50mMトリス-HCl緩衝液(pH7.5)、100mMのNaCl、及び0.02%のNaN3)で3回洗浄した。続いて、各ウェルに、TA(50mMトリス-HCl(pH7.5)、0.1%のBSA、及び0.1%のNaN3)中の表示の濃度の50μLのsTF又はsTF-5AA-(His)6を加え、その後、ウェルをパラフィルムで覆い、室温で1時間インキュベートした。続いてパラフィルムをキュベットから取り除き、キュベットを37℃に予備加温したSTart4凝固計に移した。25mMのCaCl2(50μLアリコット)を各ウェルに添加し、キュベットを37℃で2分間インキュベートし、その後、予備加温(37℃)したヒト正常プール血漿の50μLアリコットを添加し、凝血塊形成時間を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】sTF及び3つのオリゴヒスチジンタグ付加変種のC-末端のアミノ酸配列並びにこれらのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列である。sTFと異なる配列には下線が付されてあり、ヒスチジン残基は斜字体で示されている。
【図2】2A、B及びCは、0.3μg/mLのsTF(His)6及び100μMのSUVを用いたPTアッセイにおける脂質組成の凝固時間に対する影響を示すグラフである。A:小胞は5%のPS、15%のDOGS-NTA-Ni及び種々の量のPEを含む。B:小胞は15%のDOGS-NTA-Ni、40%のPE及び種々の量のPSを含む。C:小胞は5%のPS、30%のPE及び種々の量のDOGS-NTA-Niを含む。
【図3】0.3μg/mLのsTF(His)6及び種々の濃度の12.5%Ni-脂質を用いたPTアッセイにおける全脂質濃度に対する凝固時間の依存性を示すグラフである。
【図4】改変トロンボプラスチン試薬を用いたPTアッセイにおけるTF活性のグラフである:rTF/PCPS(丸)、sTF/PCPS(白逆三角形)、sTF(His)6/10%Ni-脂質(ひし形)、及びsTF-5AA-(His)6/10%Ni-脂質(三角形)。x軸に表示されたTF濃度は稀釈試薬の濃度である。
【図5】15%のNi-脂質の存在下におけるVIIaとsTF(His)6との相互作用に対する結合等温線のグラフである。
【図6】sTF(His)6/15%Ni-脂質PT試薬と市販のPT試薬との比較棒グラフである。凝固時間は、プールした正常血漿(PNP)又は種々の因子欠損血漿を用いて測定した。
【図7】7A、B及びCは、100μMのSUVを用いたPTTアッセイにおける脂質組成の凝固時間に対する影響を示すグラフである。A:小胞は5%のPS、15%のDOGS-NTA-Ni及び種々の量のPEを含む。B:小胞は15%のDOGS-NTA-Ni、40%のPE及び種々の量のPSを含む。C:小胞は5%のPS、40%のPE及び種々の量のDOGS-NTA-Niを含む。
【図8】PTTアッセイにおける全リン脂質濃度(15%のNi-脂質)に対する凝固時間の依存性を示すグラフである。
【図9】正常プール血漿と15%Ni-脂質を用いたPTTアッセイにおける凝固時間に対する(カルシウムイオンを添加前の)予備インキュベーション時間の変動の影響を示すグラフである。
【図10】プールした正常血漿(丸)とVIII欠損血漿(三角形)を用いたPTTアッセイにおける15%Ni-脂質の凝固活性を示すグラフである。
【図11】15%Ni-脂質aPTT試薬と市販のaPTT試薬との比較棒グラフである。凝固時間は、プールした正常血漿(PNP)又は種々の因子欠損血漿を用いてaPTTアッセイで測定した。
【図12】12A及びBは、種々の濃度のNiSO4(丸)、CuSO4(ひし形)、CoCl2(三角形)又はZnCl2(白逆三角形)を含む改変トロンボプラスチン試薬を用いて実施したPTアッセイでの凝固時間を示すグラフである。x軸に示した金属イオン濃度は改変試薬で用いた濃度である。A及びBは、異なる濃度範囲における金属イオンの同じデータを表す。12Cは、種々の濃度のNiSO4(丸)、CuSO4(ひし形)、CoCl2(三角形)又はZnCl2(白逆三角形)を含む改変試薬を用いて実施したaPTTアッセイでの凝固時間を示すグラフである。x軸に示した金属イオン濃度は改変試薬で用いた濃度である。
【図13】sTF(His)6(四角)、sTF-2(His)5(ひし形)及びsTF-5AA-(His)6(逆三角形)のPTアッセイにおける凝固時間を示すグラフである。各タイプのTFをDOGS-NTA-Niの含有割合が増加するSUVとインキュベートした。
【図14】15%のNi-脂質の存在下におけるVIIaと種々のタイプのTFとの相互作用に対する結合等温線のグラフである:sTF(His)6(四角)、sTF-2(His)5(ひし形)及びsTF-5AA-(His)6(逆三角形)。
【図15】血液凝固カスケードの模式図である。
【図16】16(a)及び(b)は、VIIaによってXの活性化速度を増加させるsTF-5AA-(His)6の能力のEC50を示すグラフである。種々の濃度の精製sTF又はsTF-5AA-(His)6を96ウェルプレートのウェルでインキュベートした。前記ウェルは先に10%DOGS-NTA-Ni、20%PS、70%PC(黒記号)又は20%PS、80%PC(白記号)のどちらかで被覆されてあった。Xa生成の初速は40nMのXを用いて測定し、DOGS-NTA-Niを含む脂質混合物で被覆したウェルで1μMのsTF-5AA-(His)6を用いて観察された活性のパーセントとして表される。(a)VIIaによるX活性化の速度を増加させるsTF-5AA-(His)6(丸)又はsTF(四角)の能力の濃度依存性。(b)パネル(a)から得たsTF-5AA-(His)6のデータを、0から50nMに広げたx軸を用いてプロットした。
【図17】ポリスチレン凝固計キュベットのウェル中で乾燥させた脂質混合物と混合したsTF-5AA-(His)6の凝固活性を示すグラフである。ウェル当りの乾燥脂質の量はx軸に示されている。各ウェルにはまた、20nMのsTF-5AA-(His)6の50μLを加えた。凝固時間は、プールした正常ヒト血漿を用いて決定した。脂質混合物は以下のとおりであった:NiPCPSPE(黒丸);PCPS(白逆三角形);PCPSPE(白四角);及びNiPCPS*(白ひし形)。
【図18】ウェル当り200nmolのNiPCPSPEを被覆した凝固計キュベット中でのsTF-5AA-(His)6の凝固活性を示すグラフである。濃度が増加するsTF-5AA-(His)6(黒丸)又は単一濃度のsTF(4800nM;白逆三角)を前記ウェルでインキュベートし、その後で血漿及びカルシウムイオンを添加して凝固を開始させた。x軸に表示した濃度は、各ウェルに添加した50μLアリコット中のsTF又はsTF-5AA-(His)6の濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(i)活性化sTF、
(ii)金属キレート脂質、
(iii)金属イオン、及び
(iv)リン脂質、
を含むことを特徴とするトロンボプラスチン試薬。
【請求項2】
前記活性化sTFが、TFの細胞外ドメイン及び少なくとも2つのヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン部分を含む、請求項1に記載のトロンボプラスチン。
【請求項3】
前記活性化sTFが、sTF(His)6、sTF-5AA-(His)6、及びsTF-2(His)5から成る群から選択される、請求項1又は2のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項4】
更に、(v)Ca2+を含む、請求項1から3のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項5】
更に、(vi)第VII因子を含む、請求項1から4のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項6】
前記金属イオンが、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Co2+及びその混合物から成る群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項7】
前記金属キレート脂質が、NTA-DOGSである、請求項1から6のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項8】
前記リン脂質が、PSを含む、請求項1から7のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項9】
前記オリゴヒスチジン部分が、(His)nを含み、式中nが、2−10である、請求項1から8のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項10】
前記試薬が、更に(iv)Ca2+及び(v)第VII因子を含み、前記金属キレート脂質が、NTA-DOGSであり、前記リン脂質が、PC及びPSを含む、請求項1から9のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項11】
以下の成分、
(i)金属キレート剤、
(ii)金属イオン、及び
(iii)リン脂質、
を含むことを特徴とするaPTT試薬。
【請求項12】
前記金属キレート剤が、金属キレート脂質である、請求項11に記載のaPTT試薬。
【請求項13】
更に、Ca2+を含む、請求項11又は12に記載のaPTT試薬。
【請求項14】
前記金属キレート脂質が、NTA-DOGSである、請求項11から13のいずれかに記載のaPTT試薬。
【請求項15】
活性化sTF。
【請求項16】
TFの細胞外ドメイン及び少なくとも2つのヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン部分を含む、請求項15に記載の活性化sTF。
【請求項17】
sTF(His)6、sTF-5AA-(His)6、及びsTF-2(His)5から成る群から選択される、請求項15又は16に記載の活性化sTF。
【請求項18】
前記オリゴヒスチジン部分が、(His)nを含み、式中nが、2−10である、請求項1から17のいずれかに記載の活性化sTF。
【請求項19】
以下成分、
(i)活性化sTF、
(ii)金属キレート脂質、
(iii)金属イオン、及び
(iv)リン脂質、
を含むことを特徴とする組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項20】
前記活性化sTFが、TFの細胞外ドメイン及び少なくとも2つのヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン部分を含む、請求項19に記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項21】
前記活性化sTFがsTF(His)6、sTF-5AA-(His)6、及びsTF-2(His)5から成る群から選択される、請求項19又は20に記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項22】
更に、Ca2+を含む、請求項19から21のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項23】
更に、第VII因子を含む、請求項19から22のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項24】
前記金属イオンが、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Co2+及びその混合物から成る群から選択される、請求項19から22のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項25】
前記金属キレート脂質が、NTA-DOGSである、請求項19から22のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項26】
前記リン脂質が、PSを含む、請求項19から25のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項27】
前記キットが、更に(iv)Ca2+及び(v)第VII因子を含み、前記金属キレート脂質が、NTA-DOGSであり、前記リン脂質が、PS及びPCを含む、請求項19から26のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項28】
以下の成分、
(i)金属キレート剤、
(ii)金属イオン、及び
(iii)場合によって、TFの細胞外ドメイン及び少なくとも2つのヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン部分を含む活性化sTF、
を含むことを特徴とする凝固を促進する組成物。
【請求項29】
前記活性化sTFが存在し、かつsTF(His)6、sTF-5AA-(His)6、及びsTF-2(His)5から成る群から選択され、更に前記金属キレート剤が金属キレート脂質である、請求項28に記載の凝固促進物質。
【請求項30】
前記金属キレート脂質が、NTA-DOGSである、請求項28又は29に記載の凝固促進物質。
【請求項31】
前記金属イオンが、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Co2+及びその混合物から成る群から選択される、請求項28から30のいずれかに記載の凝固促進物質。
【請求項32】
前記組成物が、局所用組成物、鼻内スプレー、座薬、口内洗浄液、注射用組成物、包帯及び創傷包帯剤から成る群から選択される、請求項28から31のいずれかに記載の凝固促進物質。
【請求項33】
抗凝固薬をその必要がある患者に投与する工程、及び請求項1から9のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬を用いて患者の血液凝固時間を測定する工程を含む、抗凝固薬を投与する方法。
【請求項34】
請求項19から27のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キットを用いて、PT検査及びaPTT検査による患者の血液凝固時間を測定する工程を含む、患者が出血体質を有するか否かを決定する方法。
【請求項35】
創傷の血液を請求項28から32のいずれかに記載の組成物と接触させる工程を含む、創傷からの出血を止めるか又は出血の速度を低下させる方法。
【請求項36】
前記トロンボプラスチン試薬が更に固相を含み、前記リン脂質及び金属キレート脂質が前記固相の表面に存在する、請求項1から10のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項37】
前記トロンボプラスチン試薬が、更に固相を含み、前記リン脂質及び金属キレート脂質が前記固相の表面に存在する、請求項1から10のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項38】
前記固相がポリスチレンを含む、請求項1から10のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項39】
前記aPTT試薬が更に固相を含み、前記リン脂質及び金属キレート脂質が前記固相の表面に存在する、請求項11から14のいずれかに記載のaPTT試薬。
【請求項40】
前記aPTT試薬が更に固相を含み、前記リン脂質及び金属キレート脂質が前記固相の表面に存在する、請求項11から14及び39のいずれかに記載のaPTT試薬。
【請求項41】
前記固相ポリスチレンを含む、請求項11から14及び39及び40のいずれかに記載のaPTT試薬。
【請求項42】
前記検査キットが、更に(viii)固相を含み、前記リン脂質及び金属キレート脂質が前記固相の表面に存在する、請求項11から14及び39から41のいずれかに記載の組み合わせPT及びaPTT検査キット。
【請求項43】
前記トロンボプラスチン試薬が更に固相を含み、前記リン脂質及び金属キレート脂質が前記固相の表面に存在する、請求項1から10及び36から38のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項44】
前記固相がポリスチレンを含む、請求項1から10及び36から38及び43のいずれかに記載のトロンボプラスチン試薬。
【請求項45】
前記金属イオンがNi2+、Cu2+、Zn2+、Co2+及びその混合物から成る群から選択される、請求項11から14及び41のいずれかに記載のaPTT試薬

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−530208(P2008−530208A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556216(P2007−556216)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004789
【国際公開番号】WO2006/088741
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【住所又は居所原語表記】506 South Wright Street, Urbana, IL 61801
【Fターム(参考)】