説明

三フッ化窒素の製造方法

【課題】F2ガスとNH3ガスとを反応させて、NF3を直接フッ素化法により、工業的に
安全かつ収率よく連続的に製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る三フッ化窒素の製造方法は、フッ素ガスとアンモニアガスとを管状反応器に供給して、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて、主として三フッ化窒素からなるガス生成物と主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物とを生成させる三フッ化窒素の製造方法であって、前記管状反応器および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ガス(F2ガス)とアンモニアガス(NH3ガス)とを、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて三フッ化窒素(NF3)を効率的に製造する方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
NF3は、例えば半導体デバイス製造プロセスにおけるドライエッチング用ガスやクリ
ーニングガス等に使用される。その製造方法としては、一般に化学法と電解法とに大別される。化学法としては、例えば、(1)溶融酸性フッ化アンモニウム中にF2ガスとNH3ガスとを吹き込む方法(特公昭55−8926号公報(特許文献1)参照)、(2)F2
ガスとNH3ガスとを直接反応させる方法(特開平2−255513号公報(特許文献2
)、特開平5−105411号公報(特許文献3)参照)、等が知られている。
【0003】
一方、電解法としては、例えば、溶融酸性フッ化アンモニウムを電解液として、(3)黒鉛(グラファイト)を陽極として電解する方法、(4)ニッケルを陽極として電解する方法、等が知られている。また、Ruffらは、F2とNH3を気相中で反応させ、6%以下の収率ではあるが化学法によりNF3を合成し(Z.anorg.allg.chem
.197,395(1931)(非特許文献1)参照)、Morrowらも同様に気相でNF3を収率24.3%で合成したことを報告している(J.Amer.Chem.So
c.82.5301(1960)(非特許文献2)参照)。
【0004】
従来のF2ガスとNH3を反応させてNF3を合成する直接フッ素化反応は、極めて反応
性に富むF2ガスを用いるため、爆発や腐食の危険があり、またこれらの反応は反応熱が
大きく、反応器内の温度が上昇し副反応や生成したNF3の分解や副反応によりN2、HF、N22、N2O、NH4F(フッ化アンモニウム)やNH4HF2(酸性フッ化アンモニウム)等が生成して収率が低下したり、NH4FやNH4HF2の固体分により反応器や配管
が閉塞するという問題点があった。
【0005】
これらの問題点のうち、反応器や配管の閉塞等については、特開平2−255511号公報(特許文献4)および特開平2−255512号公報(特許文献5)に、薄い直方体様の反応器で、その上方にアンモニアガス吹き込み管を、側面にフッ素ガス吹き込み管を持つ反応器を用いること、また反応器を80〜250℃に保たれた熱媒槽内に設置することで改善されることが示されている。しかし、収率はどちらの方法によっても17%(NH3基準)程度と低い。また、特開平2−255513号公報(特許文献2)では、NH3ガスに対して3〜20倍のF2ガスを用いることにより収率59.5%(NH3基準)まで向上することを示しているが、F2基準での収率が悪く経済的ではない。
【0006】
特開平5−105411号公報(特許文献3)には、反応器内部において原料ガスを反応器内壁に沿って螺旋状に流して原料ガスを混合、反応させることにより、反応器および配管の閉塞がなく、収率63%(NH3基準)まで向上することを示している。しかしな
がら、高価なF2ガスを原料として用いるため、収率のさらなる向上が課題である。
【0007】
特開2001−322806号公報(特許文献6)は、希釈ガスの存在下、80℃以下で反応を行なうことにより収率約76%(F2基準)まで向上することを示しているが、
反応器の閉塞や収率向上に対する課題がある。
【特許文献1】特公昭55−8926号公報
【特許文献2】特開平2−255513号公報
【特許文献3】特開平5−105411号公報
【特許文献4】特開平2−255511号公報
【特許文献5】特開平2−255512号公報
【特許文献6】特開2001−322806号公報
【非特許文献1】Z.anorg.allg.chem.197,395(1931)
【非特許文献2】J.Amer.Chem.Soc.82.5301(1960)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、F2
スとNH3ガスとを反応させて、NF3を直接フッ素化法により、工業的に安全かつ収率よく連続的に製造することができる方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、F2ガスとNH3ガスとを管状反応器に供給して、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて、主としてNF3からなるガス生成物と主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモ
ニウムからなる固形生成物(固体生成物)を生成させる三フッ化窒素の製造方法において、前記管状反応器および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することにより、収率よく連続的にNF3を製造することができ
ることを見出した。
【0010】
また、F2とNH3との反応においてNH3中の水素原子1個をフッ素原子1個に置換す
る場合、約−110Kcal/molの大きな反応熱が発生する。したがって、F2ガス
とNH3ガスとを反応させる直接フッ素化反応によりNF3を製造する場合、約−330Kcal/molの大きな反応熱が発生し、局部的に温度が高くなる。反応器内の温度が高くなると目的のNF3生成反応〔下記式(1)〕以外に副反応〔下記式(2)〕が支配的
に起こる。
【0011】
4NH3 + 3F2 → NF3 + 3NH4F (1)
2NH3 + 3F2 → N2 + 6HF (2)
本発明者らは、選択的に上記式(1)の反応を進行させるため鋭意検討を重ねた結果、固形生成物の付着による線速度の上昇、ガスの乱流、冷却効率の低下等による収率の低下も反応温度と密接に関連していることを見出した。
【0012】
その結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[29]に示されるNF3の製造方法である。
[1]フッ素ガスとアンモニアガスとを管状反応器に供給して、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて、主として三フッ化窒素からなるガス生成物と主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物とを生成させる三フッ化窒素の製造方法であって、前記管状反応器および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする三フッ化窒素の製造方法。
【0013】
[2]前記管状反応器を2つ以上使用し、かつ、これら2つ以上の管状反応器を切り替えながら上記反応を行なうことを特徴とする上記[1]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0014】
[3]前記管状反応器が、その長さ方向が鉛直方向となるように設置されていることを
特徴とする上記[1]または[2]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
[4]前記管状反応器内部のガスの流れが、鉛直下向きであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0015】
[5]フッ素ガスとアンモニアガスとを60℃以下の温度で反応させることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
[6]前記管状反応器が冷却構造を有することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0016】
[7]フッ素ガスとアンモニアガスとを、モル比(フッ素ガス:アンモニアガス)が1:1〜1:2の範囲で供給することを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0017】
[8]前記希釈ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴン、六弗化硫黄、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパンおよび三フッ化窒素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0018】
[9]希釈ガスを循環使用することを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
[10]前記反応後、未反応のフッ素ガスをアルカリ水溶液および/またはアルミナで処理することを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0019】
[11]前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであることを特徴とする上記[1]〜[10]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0020】
[12]前記加熱処理を135℃以上で実施することを特徴とする上記[1]〜[11]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
[13]長さ方向が鉛直方向となるように設置された管状反応器の上部からフッ素ガスとアンモニアガスとを供給して、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて、主として三フッ化窒素からなるガス生成物と主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物とを生成させる三フッ化窒素の製造方法であって、
前記管状反応器を2つ以上使用し、かつ、これら2つ以上の管状反応器を切り替えながら上記反応を行い、
前記管状反応器に装着された、振動発生装置および/または掻き取り機により、前記管状反応器の内壁に付着した前記固形生成物の一部を除去し、かつ、前記管状反応器の内壁に残存した前記固形生成物および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする三フッ化窒素の製造方法。
【0021】
[14]前記振動発生装置が前記反応器の外部に装着されたエアーノッカーおよび/またはエア式ピストンバイブレ−タであり、該振動発生装置により前記固形生成物を払い落として除去することを特徴とする上記[13]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0022】
[15]前記掻き取り機を、前記管状反応器内部を鉛直上下方向に自在に駆動させて前記固形生成物を掻き取り除去することを特徴とする上記[13]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0023】
[16]前記掻き取り機を、前記管状反応器の半径方向断面の中心を通る鉛直軸を中心軸として該反応器内部を自在に回転させて前記固形生成物を掻き取り除去することを特徴とする上記[13]または[15]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0024】
[17]前記フッ素ガスが、酸素および酸素含有化合物の合計含有量が0.1vol%以下ならびにテトラフルオロメタンの含有量が50volppm以下の高純度フッ素ガスであることを特徴とする上記[13]〜[16]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0025】
[18]前記アンモニアガスが、酸素および酸素含有化合物の合計含有量が10volppm以下ならびに油分の含有量が2質量ppm以下の高純度アンモニアガスであることを特徴とする上記[13]〜[17]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0026】
[19]前記高純度フッ素ガス中に含まれる酸素含有化合物が、NO、NO2、N2O、CO、CO2、H2O、OF2およびO22からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合
物であることを特徴とする上記[17]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0027】
[20]前記高純度アンモニアガス中に含まれる酸素含有化合物が、NO、NO2、N2O、CO、CO2およびH2Oからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする上記[18]に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0028】
[21]前記管状反応器が冷却構造を有することを特徴とする上記[13]〜[20]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
[22]フッ素ガスとアンモニアガスとを60℃以下の温度で反応させることを特徴とする上記[13]〜[21]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0029】
[23]フッ素ガスとアンモニアガスとを、モル比(フッ素ガス:アンモニアガス)が1:1〜1:2の範囲で供給することを特徴とする上記[13]〜[22]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0030】
[24]前記フッ素ガスの供給濃度が3モル%以下であることを特徴とする上記[13]〜[23]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
[25]前記アンモニアガスの供給濃度が6モル%以下であることを特徴とする上記[13]〜[24]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0031】
[26]フッ素ガスとアンモニアガスとを0.05〜1.0MPaの圧力で反応させることを特徴とする上記[13]〜[25]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
[27]前記2つ以上の管状反応器のうちの少なくとも1つを用いてフッ素ガスとアンモニアガスとを反応させ、該反応に使用していない残りの管状反応器の内壁に残存した前記固形生成物および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする上記[13]〜[26]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0032】
[28]前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであることを特徴とする上記[13]〜[27]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【0033】
[29]前記加熱処理を135℃以上で実施することを特徴とする上記[13]〜[28]のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、F2ガスとNH3ガスとを反応させるNF3製造方法において反応器や
配管の閉塞等による収率の低下等の課題、問題に対して、管状反応器や配管の内壁に付着した主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理することにより、連続的かつ収率よく経済的にNF3を製造できる方法を提供できる。
【0035】
また、NF3中に含まれるCF4等の難分離物や微量不純物等の含有量を抑制するために高純度F2ガスと高純度NH3ガスを反応させることにより連続的かつ収率よく経済的にNF3を製造できる方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい態様について詳しく説明する。
まず、本発明に用いられる三フッ化窒素の製造装置について説明する。この製造装置は、フッ素ガス供給手段、アンモニアガス供給手段、反応器を有する。
【0037】
反応器は、反応温度制御手段(たとえば冷却構造)を有することが好ましく、たとえば、ジャケット型管状反応器が挙げられる。また、反応器には、反応器内壁に付着した固形生成物を除去するための装置が装着されていることが好ましい。このような装置としては、振動発生装置および掻き取り機が挙げられる。振動発生装置および掻き取り機は、いずれか一方を使用してもよいが、併用することが好ましい。
【0038】
上記振動発生装置としては、エアーノッカーとエア式ピストンバイブレ−タが挙げられる。エアーノッカーは、反応器外部に1個以上、好ましくは2個以上具備され、反応器内壁に付着した固形生成物にタイマー等により周期的に衝撃を与えて固形生成物を払い落し、反応器の閉塞を防止する装置である。エア式ピストンバイブレ−タは、例えば、マフラ−、ウェカバ−、Oリング、ピストン、シリンダ−、テーパ−スプリング等から構成され、ピストンの縦振動を応用した振動技術により固形物を取り除き、反応器の閉塞防止やすべり促進等の作用効果がある。すなわち、エア式ピストンバイブレ−タ装置は、反応器外部に1個以上、好ましくは2個以上具備され、反応器内壁に付着した固形生成物に衝撃を与えて固形生成物を払い落し、反応器の閉塞を防止する装置である。
【0039】
上記掻き取り機は、反応器の断面と同形状であり、ガスの通過を妨げないような構造であれば特に限定されないが、リング状薄板に支持棒が具備されたものが好ましく用いられる。また、管状反応器をその長さ方向が鉛直方向となるように設置した場合、上記掻き取り機は、反応器内部を鉛直上下方向に自在に駆動できること、および/または、反応器の半径方向断面の中心を通る鉛直軸を中心軸としてこの反応器内部を自在に回転できることが好ましい。
【0040】
また、本発明に用いられる製造装置は、上記反応器から除去された固形生成物を貯留する手段および固形生成物とガス成分とを分離する手段を有することが好ましい。具体的には、上記反応器の下部に、固形分を分離、排出する装置(以下、「固体分離排出装置」という)が設置されていることが好ましい。前記固体分離排出装置は、その断面が反応器の断面より大きいことが好ましい。より具体的には、定期的に交換可能な固体貯溜槽が好ましく、槽を直列に2つを設けてロ−タリーバルブで2槽間を切り離すことができる構造や槽を2基設けて切り替えることができる構造を有することが好ましい。また、前記固体分離排出装置は、上部に目的物のNF3および希釈ガスを次工程へと導くガス排出ラインが
フィルターを介して具備されていることが好ましい。このフィルターによりガスと共に同伴される微量の固形分を除去することができる。さらに、ガス排出ラインを例えば2ライン設けて、ガス流れを定期的に切り替え、連続的に稼働させることがより好ましい。
【0041】
フッ素ガス供給手段、アンモニアガス供給手段および使用する反応器を切り替える手段は従来公知のものを使用することができる。
上記構成装置および部品のうち、フィルター以外の装置および部品の材質はSUS316が好ましい。
【0042】
次に、本発明の三フッ化窒素の製造方法について説明する。本発明では、上記のような反応器を2つ以上使用し、これら2つ以上の反応器を切り替えながら反応を行う。原料であるF2ガスとNH3ガスとは、それぞれ異なる配管で反応器内に供給し、反応器内で初めて接触、混合する必要がある。F2ガスとNH3ガスとを反応器入口で混合して反応器に供給すると混合部で反応が進行し、固形分が生成して配管が閉塞するため好ましくない。
【0043】
2ガスを用いる直接フッ素化反応では極めて反応性に富むF2ガスを用いるため、水素を含有するNH3をF2と高濃度で反応させることは、燃焼や爆発の危険が生じ、さらに大きな反応熱により温度が上昇して目的物であるNF3の収率が低下するなどのため、好ま
しくない。このため、F2ガスおよびNH3ガスは希釈して低濃度領域で反応させる必要がある。F2ガスは希釈ガスで希釈して供給ガス全量の3モル%以下で供給することが好ま
しく、NH3ガスは希釈ガスで希釈して供給ガス全量の6モル%以下で供給することが好
ましい。つまり、原料ガス(NH3ガスおよびF2ガス)が合計9モル%以下で希釈ガスが91モル%以上であることが好ましい。NH3ガス濃度が6モル%を超え、フッ素ガスが
3モル%を超えると、反応熱が大きくなるなど温度の急激な上昇、燃焼や爆発等の危険が生じるため好ましくない。前記希釈ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、六弗化イオウ、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパンおよび三フッ化窒素などの不活性ガスが挙げられる。これらの希釈ガスは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、これらの希釈ガスのうち、希釈ガスの比熱、蒸留工程での分離・精製等を考慮すると、六弗化硫黄、ヘキサフルオロエタンおよびオクタフルオロプロパンが好ましい。
【0044】
また、F2ガスとNH3ガスは、モル比(F2ガス:NH3ガス)が1:1〜1:2の範囲で反応器に供給されることが好ましい。F2ガスを過剰に供給すると反応熱が大きくなる
など温度の急激な上昇、燃焼や爆発等の危険が生じるため好ましくない。また、F2ガス
に対してNH3ガスを2倍モルを超えて供給するとNH3に対するNF3の収率が低下する
ため好ましくない。
【0045】
このように希釈されたF2ガスとNH3ガスとを一方の反応器の上部から供給し、反応器内で混合、接触させ、気相中、無触媒条件下で反応させる。前述したように、反応温度は上記式(1)の主反応および上記式(2)の副反応と密接に関連し、上記式(1)の主反応を選択的に進行させるには、反応温度を好ましくは60℃以下、より好ましくは−20〜60℃、さらに好ましくは−20〜50℃範囲の温度が望ましい。反応温度を制御する方法としては、例えば、ジャケット型反応器による熱媒循環外部冷却方式により反応器内の温度を制御する方法や、原料および/または希釈ガスを予め反応器に導入する前に冷却して供給する方法等が好ましい。また、反応圧力は0.05〜1.0MPaの範囲が好ましい。1.0MPaを超えると装置の耐圧を高める必要があるなど経済的に好ましくない。反応器内部のガスは、鉛直下向きに流れていることが好ましい。
【0046】
上記F2ガスおよびNH3ガスには、酸素や酸素含有化合物が含まれていることがある。F2ガスに含まれる酸素含有化合物としては、NO、NO2、N2O、CO、CO2、H2
、OF2およびO22が挙げられ、これらは単独で、または2種以上が含まれている。N
3ガスに含まれる酸素含有化合物としては、NO、NO2、N2O、CO、CO2およびH2Oが挙げられ、これらは単独で、または2種以上が含まれている。また、F2ガスには、
さらにテトラフルオロメタン(CF4)が含まれていることがあり、NH3ガスには、さらにメタン、水素、水素含有化合物や油分が含まれていることがある。上記酸素や酸素含有化合物はN2OやN22等の不純物を副生したり、F2ガスと反応してCF4やCOF、C
OF2、OF2等を副生する。NH3ガスに含まれるメタンはF2ガスと反応してCF4を副
生する。この副生したCF4やF2ガスに含まれるCF4は、その沸点が−128℃であり
、目的物であるNF3の沸点に近く、分離が極めて困難である等の問題がある。また、N
3ガスに含まれる水素や水素含有化合物はF2ガスと反応してフッ化水素(HF)を生成し、これがNH3ガスと反応してNH4Fを形成するため好ましくない。NH3ガスに含ま
れる油分は、F2ガスと反応してCF4やCOF、COF2、OF2等を副生する。このように、原料ガスに含まれる微量不純物は、多くの不純物を副生するため、上記F2ガスおよ
びNH3ガスは高純度ガスであることが好ましく、不純物を極力低減する必要がある。
【0047】
上記F2ガスは、F2ガス(沸点:−188℃)とCF4(沸点:−128℃)との沸点
差を利用し、例えば、液体窒素等を用いて、−150〜−160℃の温度で低温蒸留してF2ガス中に含まれるCF4を除去することにより精製でき、同時に酸素および酸素含有化合物も除去される。精製後のF2ガス中のCF4の含有量は50volppm以下が好ましく、酸素および酸素含有化合物の合計含有量は0.1vol%以下が好ましい。
【0048】
一方、上記NH3ガスは、液体アンモニアを熱交換器等により蒸発させ、冷却回収を繰
り返して油分を除去したり、蒸留精製や吸着操作等を繰り返して水素や水素含有化合物、メタン、酸素、酸素含有化合物を除去することにより精製できる。精製後のNH3ガス中
の油分の含有量は2質量ppm以下が好ましく、酸素および酸素含有化合物の合計含有量は10volppm以下が好ましい。
【0049】
また、本発明では、反応後の不純物を低減する観点から、希釈ガスも極力不純物を含有しない高純度ガス、たとえば99.999%以上の純度を有する六弗化イオウ等がより好ましく用いられる。
【0050】
上記反応により、主として三フッ化窒素からなるガス生成物が生成する。また、上記反応が進行するにつれて、主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物が生成し、これが反応器の内壁に付着する。付着した固形生成物は、例えば、冷却効率の低下による温度上昇やガス流の乱れ、線速度の上昇等により目的物であるNF3の収率、選択率の低下を引き起こすため、定期的または連続的に払い落と
して除去する必要がある。このため、上記固形生成物を反応器の内壁から、反応器に装着された上記振動発生装置を用いて払い落としたり、反応器内部に装着された上記掻き取り機を用いて掻き取って除去する。この払い落としおよび掻き取りは併用することが好ましい。
【0051】
除去された固形生成物は、反応器下部に設置された前記固体分離排出装置に回収される。この回収を容易にするため、上述したように反応器はその長さ方向が鉛直方向になるように設置されていることが好ましい。
【0052】
固体分離排出装置に回収された固形生成物をさらに分離精製することにより、得られたフッ化アンモニウムおよび酸性フッ化アンモニウムは他の用途に使用することができる。
一方、ガス生成物は、目的物のNF3と希釈ガスの他に、微量の未反応のF2ガス等を含有する。このため、前記固体分離排出装置の上部に設けられたフィルタ−を通過したガス生成物から、未反応のF2ガスを除去することが好ましい。未反応のF2ガスを除去する方法としては、たとえば、アルミナ(酸化アルミニウム)を用いて反応させて除去する乾式除去方法、またはアルカリ水溶液と接触させて除去する湿式除去方法が好ましく適用され、場合によっては両方法を併用してもよい。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム水
溶液、水酸化カリウム水溶液が好ましい。
【0053】
未反応のF2ガスを除去したNF3と希釈ガスとの混合ガス中には水分が含まれるため、モレキュラーシーブ等を用いて脱水することが好ましい。モレキュラーシーブとしては3A、4A、5Aが好ましい。これらのモレキュラーシーブは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
脱水処理後のガスは蒸留・分離工程でNF3と希釈ガスとに分離され、NF3は回収して製品となり、希釈ガスは原料や反応系の希釈ガスとして再利用することができる。
上記のように、反応管の内壁に付着した固形生成物を除去しながら、F2ガスとNH3ガスとを反応させることにより、効率的かつ連続的にNF3を製造できるが、長時間製造す
るとNF3の収率が低下することがある。このため、本発明では、上記反応器を2つ以上
併用し、これらの反応器を切り替えながらNF3を製造する。具体的には、2つ以上の反
応器のうちの少なくとも1つの反応器(以下、この反応器を「反応器A」という)を用いて一定時間NF3を製造した後、残りの反応器(以下、この反応器を「反応器B」という
)に原料ガスを供給して反応を開始する。次いで、反応器Aへの原料ガス供給を停止し、反応器BでのみNF3を製造する。この反応器Bでの製造の間に反応器Aに不活性ガスを
導入して反応器Aを加熱する。この加熱処理により、反応器Aの内壁に残存した前記固形生成物および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を除去することができる。具体的には、固形生成物であるフッ化アンモニウムをフッ化水素とアンモニアに分解して除去することができる。フッ化水素およびアンモニアは公知の方法、例えば酸またはアルカリ水溶液で無害化することができる。
【0055】
上記加熱処理時の温度は、135℃以上が好ましく、135〜300℃がより好ましい。また、上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
反応器Bで一定時間NF3を製造した後、上記と同様にして反応器を切り替え、再度、
反応器AでNF3を製造し、この間に反応器Bを加熱処理して固形生成物を除去する。こ
の一連の操作を繰り返すことにより、製造ラインを停止させることなく、高収率で安定してNF3を製造することができる。
【0057】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
【0058】
<F2ガスの調製>
[調製例1]
KF・1.8HF〜KF・2.5HFの組成物を約100℃で溶融塩電解し、陽極にF2を発生させて捕集し、得られた粗F2ガス中のHFを液体窒素を用いて分離・精製した後、F2ガスを液体窒素を用いて低温蒸留し、高純度フッ素ガスを得た。この高純度フッ素
ガス中に含まれる酸素および酸素含有化合物、テトラフルオロメタンを、ガスクロマトグラフィー(GC)のTCD法およびFID法、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)を用いて分析した結果を以下に示す。
【0059】
酸素および酸素含有化合物 0.0610vol%
テトラフルオロメタン 0.0013vol%
[調製例2]
KF・1.8HF〜KF・2.5HFの組成物を約100℃で溶融塩電解し、陽極にF2を発生させて捕集し、得られた粗F2ガス中のHFを液体窒素を用いて分離・精製し、フ
ッ素ガスを得た。このフッ素ガス中に含まれる酸素および酸素含有化合物、テトラフルオロメタンを、ガスクロマトグラフィー(GC)のTCD法およびFID法、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)を用いて分析した結果を以下に示す。
【0060】
酸素および酸素含有化合物 0.3320vol%
テトラフルオロメタン 0.0108vol%
<NH3ガスの調製>
[調製例3]
工業的な製法である高圧触媒法で製造された液体アンモニアを熱交換器により蒸発させて冷却回収し、さらに蒸留精製を行なうことにより高純度アンモニアを得た。この高純度アンモニア中に含まれる酸素および酸素含有化合物、メタン、油分をガスクロマトグラフィ−(GC)のTCD法およびFID法、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)を用いて分析した結果を以下に示す。
【0061】
酸素および酸素含有化合物 <0.5volppm
メタン <0.1volppm
油分 <0.1質量ppm
[調製例4]
工業的な製法である高圧触媒法で製造された液体アンモニア中に含まれる酸素および酸素含有化合物、メタン、油分をガスクロマトグラフィ−(GC)のTCD法およびFID法、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)を用いて分析した結果を以下に示す。
【0062】
酸素および酸素含有化合物 0.0110vol%
メタン 0.0008vol%
油分 0.0006質量%
【実施例1】
【0063】
図1に示す装置を用いた。図1に示すように、2本の原料ガス供給ラインを具備した、内径54.9mm、長さ700mmのSUS316L製管状反応器(ジャケット4付き、冷媒循環冷却式)11および21が並列に接続されている。これらの管状反応器11および21は、それぞれ、その内部に、外径53.9mm、内径53.1mmのリング状薄板にシャフト(棒)およびハンドルを装着した自動上下駆動式の掻き取り機2を具備し、その外部に、エアーノッカー3((株)セイシン企業製、エアーノッカーSK・30タイプ)を具備している。また、管状反応器11および21のそれぞれの下部には、内径109.8mm、長さ350mmのSUS316L製固体貯溜槽5が装着され、この固体貯溜槽5の上部には、フィルター6を介してガス排出ライン7が接続されている。
【0064】
管状反応器11の原料ガス供給ラインの一方から調製例1で得た高純度F2ガス2.3
NL/hrと六弗化イオウ(純度:>99.999%)59.64NL/hrとの混合ガスを、管状反応器11のもう一方の原料ガス供給ラインから調製例3で得た高純度NH3
ガス3.06NL/hrと六弗化イオウ(純度:>99.999%)50NL/hrとの混合ガスを、管状反応器11内にそれぞれ供給し、反応器11内でF2ガスとNH3ガスとを混合して反応させた。反応中、掻き取り機2をタイマーにより30分間ごとに反応器11内を上下させ、エアーノッカー3をタイマーによりノッカー打撃間隔30分間で作動させた。また、反応器11を冷媒により冷却しながら反応を行なった。反応開始から10時間後、反応器11内のピーク温度は15.8℃であった。
【0065】
ガス排出ラインから回収したガスをヨウ化カリウム水溶液で処理することにより未反応フッ素ガスと生成フッ化水素とを除去した後、ガス成分をガスクロマトグラフィーで分析
した。結果を以下に示す。
【0066】
NF3収率:97.6%(F2基準)
CF4 :0.0012vol%
COF2 :検出されず
COF :検出されず
OF2 :検出されず
2O :検出されず
さらに反応器11での反応を継続したところ、反応開始から48時間後の反応器11内のピーク温度は16.1℃であった。ガス排出ラインから回収したガスを上記と同様にして分析した。結果を以下に示す。
【0067】
NF3収率:97.2%(F2基準)
さらに反応器11での反応を継続したところ、反応開始から72時間後の反応器11内のピーク温度は15.9℃であった。ガス排出ラインから回収したガスを上記と同様にして分析した。結果を以下に示す。
【0068】
NF3収率:97.2%(F2基準)
この結果から明らかなように、高純度フッ素ガスと高純度アンモニアガスとを用いることにより、微量不純物、特にCF4の副生を抑制でき、また、低濃度で原料ガスを供給し
、反応器内の温度を制御し、さらに固形生成物を反応器内から除去することにより目的物であるNF3を連続的に、高収率(97%以上)で得ることができた。
【0069】
次に、管状反応器21の原料ガス供給ラインの一方から調製例1で得た高純度F2ガス
と六弗化イオウ(純度:>99.999%)との混合ガスを、管状反応器21のもう一方の原料ガス供給ラインから調製例3で得た高純度NH3ガスと六弗化イオウ(純度:>9
9.999%)との混合ガスを、上記と同様の条件で管状反応器21内にそれぞれ供給し、上記と同様の条件で反応器21の内部に付着した固形生成物を除去し、かつ反応器21を冷却しながら、反応器21内でF2ガスとNH3ガスとを混合して反応させた。
【0070】
その後、管状反応器11への原料ガスおよび希釈ガスの供給を停止し、管状反応器21のみで反応を行なった。この反応中に、反応器11を後述する手順で加熱処理した。
管状反応器21での反応開始から1時間後、反応器21内のピーク温度は16.4℃であった。
【0071】
さらに反応器21での反応を継続したところ、反応器21での反応開始から24時間後の反応器21内のピーク温度は16.0℃であった。ガス排出ラインから回収したガスをヨウ化カリウム水溶液で処理することにより未反応フッ素ガスと生成フッ化水素とを除去した後、ガス成分をガスクロマトグラフィーで分析した。結果を以下に示す。
【0072】
NF3収率:98.1%(F2基準)
CF4 :0.0012vol%
COF2 :検出されず
COF :検出されず
OF2 :検出されず
2O :検出されず
さらに反応器21での反応を継続したところ、反応器21での反応開始から72時間後の反応器21内のピーク温度は15.8℃であった。ガス排出ラインから回収したガスを上記と同様にして分析した。結果を以下に示す。
【0073】
NF3収率:97.6%(F2基準)
この結果から明らかなように、反応器21に切り替えて反応を行なっても、反応器11を用いた場合と同様に、目的物であるNF3を連続的に、高収率(97%以上)で得るこ
とができた。
【0074】
(反応器11の加熱処理)
反応器11へのガス供給を停止した後、固体貯溜槽5内に回収(堆積)された、主としてフッ化アンモニウムからなる固形生成物を除去し、反応器11のジャケット4への冷媒循環を停止した後、このジャケット4に約169℃のスチームを導入しながら、予め、約350℃に加熱した窒素ガスを原料ガス供給ラインから100NL/hrで反応器11に導入した。このとき、ガス排出ライン7から回収したガス(フィルター6通過後のガス温度:148℃)を分析したところ、フッ化水素とアンモニアガスが生成していることを確認した。この加熱処理を10時間継続した後、窒素ガスおよびスチームの導入を停止した。反応器11内部、固体貯溜槽5、フィルター6および配管を目視により観察したところ、固形物の付着は認められなかった。
【0075】
[参考例1]
図2に示す装置を用いた。図2に示すように、2本の原料ガス供給ラインを具備した、内径54.9mm、長さ700mmのSUS316L製管状反応器31(ジャケット4付き、冷媒循環冷却式)は、その内部に、外径53.9mm、内径53.1mmのリング状薄板にシャフト(棒)およびハンドルを装着した自動上下駆動式の掻き取り機2を具備し、その外部に、エアーノッカー3((株)セイシン企業製、エアーノッカーSK・30タイプ)を具備している。また、この管状反応器31の下部には、内径109.8mm、長さ350mmのSUS316L製固体貯溜槽5が装着され、この固体貯溜槽5の上部には、フィルター6を介してガス排出ライン7が接続されている。
【0076】
原料ガス供給ラインの一方から調製例2で得たF2ガス2.3NL/hrと六弗化イオ
ウ(純度:>99.999%)59.64NL/hrとの混合ガスを、もう一方の原料ガス供給ラインから調製例4で得たNH3ガス3.06NL/hrと六弗化イオウ(純度:
>99.999%)50NL/hrとの混合ガスを、管状反応器31内にそれぞれ供給し、反応器31内でF2ガスとNH3ガスとを混合して反応させた。掻き取り機2をタイマーにより30分間ごとに反応器31内を上下させ、エアーノッカー3をタイマーによりノッカー打撃間隔30分間で作動させた。また、反応器31を冷媒により冷却しながら反応を行なった。反応開始から24時間後、反応器31内のピーク温度は15.8℃であった。
【0077】
ガス排出ラインから回収したガスをヨウ化カリウム水溶液で処理することにより未反応フッ素ガスと生成フッ化水素とを除去した後、ガス成分をガスクロマトグラフィーで分析した。結果を以下に示す。
【0078】
NF3収率:97.3%(F2基準)
CF4 :0.0115vol%
COF2 :0.0002vol%
COF :0.0001vol%
OF2 :0.0001vol%
2O :0.0002vol%
その後、原料ガスおよび希釈ガスの供給を停止し、反応器内部および固体貯溜槽を目視により観察したところ、反応器内部には固形生成物の付着は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の三フッ化窒素の製造方法は、F2ガスとNH3とを、希釈ガスの存在下、気相中
、無触媒条件で反応させる直接フッ素化反応を利用したものであり、この方法を用いることにより、従来の課題や問題を克服し、工業的に安全、連続的かつ高収率で経済的にNF3を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の三フッ化窒素の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、参考例の三フッ化窒素の製造方法において用いた製造装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
1 熱電対挿入管
2 掻き取り機
3 エアーノッカー
4 ジャケット(冷媒またはスチーム循環式)
5 固体貯溜槽
6 フィルター
7 ガス排出ライン
8 排出ガス(主として、NF3および希釈ガス)
9 冷媒またはスチーム
10 排出ガス(主として、HFおよびNH3ガス)
11、21、31 管状反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素ガスとアンモニアガスとを管状反応器に供給して、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて、主として三フッ化窒素からなるガス生成物と主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物とを生成させる三フッ化窒素の製造方法であって、前記管状反応器および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする三フッ化窒素の製造方法。
【請求項2】
前記管状反応器を2つ以上使用し、かつ、これら2つ以上の管状反応器を切り替えながら上記反応を行なうことを特徴とする請求項1に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項3】
前記管状反応器が、その長さ方向が鉛直方向となるように設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項4】
前記管状反応器内部のガスの流れが、鉛直下向きであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項5】
フッ素ガスとアンモニアガスとを60℃以下の温度で反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項6】
前記管状反応器が冷却構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項7】
フッ素ガスとアンモニアガスとを、モル比(フッ素ガス:アンモニアガス)が1:1〜1:2の範囲で供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項8】
前記希釈ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴン、六弗化硫黄、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパンおよび三フッ化窒素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項9】
希釈ガスを循環使用することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項10】
前記反応後、未反応のフッ素ガスをアルカリ水溶液および/またはアルミナで処理することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項11】
前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項12】
前記加熱処理を135℃以上で実施することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項13】
長さ方向が鉛直方向となるように設置された管状反応器の上部からフッ素ガスとアンモニアガスとを供給して、希釈ガスの存在下、気相中、無触媒条件で反応させて、主として三フッ化窒素からなるガス生成物と主としてフッ化アンモニウムおよび/または酸性フッ化アンモニウムからなる固形生成物とを生成させる三フッ化窒素の製造方法であって、
前記管状反応器を2つ以上使用し、かつ、これら2つ以上の管状反応器を切り替えなが
ら上記反応を行い、
前記管状反応器に装着された、振動発生装置および/または掻き取り機により、前記管状反応器の内壁に付着した前記固形生成物の一部を除去し、かつ、前記管状反応器の内壁に残存した前記固形生成物および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする三フッ化窒素の製造方法。
【請求項14】
前記振動発生装置が前記反応器の外部に装着されたエアーノッカーおよび/またはエア式ピストンバイブレ−タであり、該振動発生装置により前記固形生成物を払い落として除去することを特徴とする請求項13に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項15】
前記掻き取り機を、前記管状反応器内部を鉛直上下方向に自在に駆動させて前記固形生成物を掻き取り除去することを特徴とする請求項13に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項16】
前記掻き取り機を、前記管状反応器の半径方向断面の中心を通る鉛直軸を中心軸として該反応器内部を自在に回転させて前記固形生成物を掻き取り除去することを特徴とする請求項13または15に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項17】
前記フッ素ガスが、酸素および酸素含有化合物の合計含有量が0.1vol%以下ならびにテトラフルオロメタンの含有量が50volppm以下の高純度フッ素ガスであることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項18】
前記アンモニアガスが、酸素および酸素含有化合物の合計含有量が10volppm以下ならびに油分の含有量が2質量ppm以下の高純度アンモニアガスであることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項19】
前記高純度フッ素ガス中に含まれる酸素含有化合物が、NO、NO2、N2O、CO、CO2、H2O、OF2およびO22からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である
ことを特徴とする請求項17に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項20】
前記高純度アンモニアガス中に含まれる酸素含有化合物が、NO、NO2、N2O、CO、CO2およびH2Oからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項18に記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項21】
前記管状反応器が冷却構造を有することを特徴とする請求項13〜20のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項22】
フッ素ガスとアンモニアガスとを60℃以下の温度で反応させることを特徴とする請求項13〜21のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項23】
フッ素ガスとアンモニアガスとを、モル比(フッ素ガス:アンモニアガス)が1:1〜1:2の範囲で供給することを特徴とする請求項13〜22のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項24】
前記フッ素ガスの供給濃度が3モル%以下であることを特徴とする請求項13〜23のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項25】
前記アンモニアガスの供給濃度が6モル%以下であることを特徴とする請求項13〜24のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項26】
フッ素ガスとアンモニアガスとを0.05〜1.0MPaの圧力で反応させることを特
徴とする請求項13〜25のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項27】
前記2つ以上の管状反応器のうちの少なくとも1つを用いてフッ素ガスとアンモニアガスとを反応させ、該反応に使用していない残りの管状反応器の内壁に残存した前記固形生成物および/または配管の内壁に付着した前記固形生成物を不活性ガスの存在下で加熱処理して除去することを特徴とする請求項13〜26のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項28】
前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであることを特徴とする請求項13〜27のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。
【請求項29】
前記加熱処理を135℃以上で実施することを特徴とする請求項13〜28のいずれかに記載の三フッ化窒素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−119294(P2007−119294A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313361(P2005−313361)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)