説明

三層ニット生地、それから形成された熱保護部材、およびその構成方法

ニット生地、それから構成された保護スリーブおよび手袋は、ニット構成されかつ一回の編み動作で互いに編まれ、単一片のニット材料である生地をもたらす3つのニット層を有する。生地は、外側層と、内側層と、外側層および内側層の間に挟まれた中間層とを含む。外側層は第1のヤーンで編まれ、内側層は第2のヤーンで編まれ、中間層は、第1のヤーンおよび第2のヤーンのうち少なくともいくつかの周りに輪になるように第3のヤーンで編まれ、一回の編み動作で互いに表編みされた3つの層を有する一体的に編まれた構造をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願との相互参照
本願は、2009年7月17日に提出された米国仮出願番号第61/226,350号の利益を主張し、引用によってその全体をここに援用する。
【0002】
発明の背景
1. 技術分野
本発明は概してニット生地に関し、特に、多層を有するニット生地、それから形成された熱保護部材、およびそれらの構成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連する技術
毛布およびスリーブなどの熱繊維部材は、当該部材を介して熱が放射したり伝導するのを防ぐために使用される。たとえば、熱手袋は高温の物体からユーザの手を保護するものと知られており、製造施設の熱処理部門で広く使用されている。さらに、熱繊維スリーブは、熱が管から外方に放射するのを防ぐために排気管の周りに使用するものとして知られている。また、熱毛布は、前述の熱処理部門内の炉から出る部分などについて、熱が物体から外方に放射するのを防ぐために高温の物体を覆うものとして知られている。これらは、熱毛布、スリーブおよび手袋が通常どこでどのように使用されるかについてのいくつかの例に過ぎない。
【0004】
前述の熱部材を構成するために、編み動作などにおいて別個の材料層を構成し、その後、毛布の形態で使用するために、またはその後たとえばスリーブもしくは手袋に加工するために、別個の層を互いに付着させることが知られている。生じる多層熱部材は意図された用途に有用であり得るが、互いに別個の材料層を別個の製造動作で構成する必要があり、その後層を互いに形成および/または接合するための二次的な動作が続くため、構成は典型的に高価である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明にしたがって構成されるニット生地は、ニット構成されかつ一回の編み動作で互いに編まれ、単一片のニット材料である生地を提供する3つのニット層を有する。生地は、外側層と、内側層と、外側層および内側層の間に挟まれた中間層とを含む。外側層は、自立的なニット層を提供するために互いに編まれた第1のヤーンを有し、内側層は、自立的なニット層を提供するために互いに編まれた第2のヤーンを有し、中間層は、外側層および内側層の第1のヤーンおよび第2のヤーンのうち少なくともいくつかの周りに輪になるように編まれた第3のヤーンを有する。したがって、ニット生地は、一回の編み処理で互いに表編みされた3つの層を有する一体的に編まれた構造を提供し、製造上経済的である一方、熱および摩耗に対して有効な障壁を提供する。
【0006】
発明の別の局面によれば、外側層、中間層および内側層は、別個の層に異なる性能属性を与えるために異なる種類のヤーンで編まれる。
【0007】
発明の別の局面によれば、外側層、中間層および内側層は、別個の層に異なる性能属性を与えるために異なるステッチの種類で編まれる。
【0008】
発明の別の局面によれば、3つのヤーン層を有する生地を構成する方法が提供される。当該方法は、露出した外面を有する外側層を編むステップと、露出した内面を有する内側層を編むステップと、外側層および内側層の間に挟まれた中間層を、単一の編み機上で同時に互いに編むステップと、を含む。
【0009】
発明の別の局面によれば、当該方法は、中間層からの表編みのヤーンを外側層および内側層の表編みのヤーンと噛合わせるステップをさらに含む。
【0010】
発明の別の局面によれば、当該方法は、別個の層に異なる性能属性を与えるために、外側層、中間層および内側層を異なる種類のヤーンで編むステップをさらに含む。
【0011】
発明の別の局面によれば、当該方法は、別個の層に異なる性能属性を与えるために、外側層、中間層および内側層を異なるステッチの種類で編むステップをさらに含む。
【0012】
発明の別の局面によれば、当該方法は、三層ニット生地を保護筒状スリーブに形成するステップをさらに含む。
【0013】
発明の別の局面によれば、当該方法は、三層ニット生地を保護手袋に形成するステップをさらに含む。
【0014】
発明の別の局面によれば、熱保護手袋が提供される。手袋は、第1のヤーンから編まれた外側層と、第1のヤーンとは別個の第2のヤーンから編まれた内側層と、外側層および内側層の間に挟まれた中間層とを含み、中間層は第3のヤーンから編まれる。第3のヤーンは、外側層を中間層を介して内側層に付着させるために、第1のヤーンおよび第2のヤーンの少なくともいくつかの周りに輪になるように編まれる。
【0015】
発明の別の局面によれば、三層ニット生地を構成する方法が提供される。当該方法は、第1のヤーンから外側層を編むステップと、第1のヤーンとは別個の第2のヤーンから編まれる内側層を編むステップと、外側層および内側層の間に挟まれた中間層を、第1のヤーンおよび第2のヤーンとは別個の第3のヤーンから編むステップとを含む。当該方法はさらに、外側層、内側層および中間層を、単一の編み機上で同時にかつ互いに編むステップを含む。
【0016】
発明のこれらおよび他の局面、特徴ならびに利点は、現在好ましい実施例およびベストモードについての以下の説明、追記の請求項、および添付図面を参照して考慮されると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自身の上に折り返された、発明の一局面にしたがって編まれた生地の布見本を例示する図である。
【図2】図1の生地の布見本の拡大部分図を示す図である。
【図3】図1の生地を使用して形成された筒状スリーブを示す図である。
【図4】図1の生地を使用して形成された手袋を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1および図2は、発明の1つの現在好ましい局面にしたがって編まれた生地10を例示する。生地10は3つのニット層を有し、ゆえに三層ニット生地とも称され、ニット外側層12、ニット内側層14およびニット中間層16を含む。中間層16は、外側層および内側層12,14の間に当接して挟まれる。3つの層12,14,16は、一回の編み動作で同時に構成され、それにより、生地10の製造において動作数、時間、編み機および床面積を最小化することを例として含む経済的な利点をもたらす。外側層12は、自立的なニット層をもたらすように表編みによって互いに編まれたヤーン13を有し、内側層14は、自立的なニット層をもたらすように表編みによって互いに編まれたヤーン15を有し、中間層16は、外側層12のヤーン13のうち少なくともいくつかおよび内側層14のヤーン15のうち少なくともいくつかと表編みによって編まれたヤーン17を有する。したがって、ニット生地10は、生地10の3つの層12,14,16が分離できないやり方で互いに固定されるように、生地10の全範囲にわたって実質的に均一な関係で互いに表編みされた3つの層を有する一体的に編まれた構造をもたらす。そのため、生地10は、優れた保護および熱障壁をもたらすだけでなく、張力および剪断力において層12,14,16の互いに対する分離と移動とに対して優れた抵抗を有する。
【0019】
製造において、層12,14,16は、デニール、直径、マルチフィラメント、モノフィラメントを含むいずれかの適切な寸法および種類のヤーンから編まれる。また、いずれかの適切な種類の表編みおよびステッチの密度を使用して、層12,14,16を構成することができる。したがって、機能上および/または審美上の所望の要件特性に応じて、所望であれば、同じもしくは異なる種類のヤーン(たとえばモノフィラメント、マルチフィラメント、デニール、直径、色、繊維、熱的特性、摩耗抵抗、物理的特性)または、同じもしくは異なる種類の表編みおよびステッチ密度のいずれかを使用して層12,14および16の各々を構成することができる。したがって、意図される用途に応じて、所望の特性に最も良く適合するように生地10をカスタマイズすることができる。
【0020】
生地は二重の平台式編み機(図示せず)を使用して編まれ、外側層12は機械の一方の台上で編まれ、内側層14は機械の他方の台上で編まれ、台は互いの方に向かって集束する。中間層16は、外側層および内側層12,14と同時に機械の両方の台によって編まれる。外側層12は、1つのヤーンからの1つの選択された表編みパターンを有して編まれ、内側層14は別のものを使用して別の表編みパターンを有して編まれ、意図される用途について所望の外側層および内側層12,14の物理的および/または審美的な特性に応じて、外側層および内側層12,14を構成するのに使用されるそれぞれの表編みパターンおよびヤーンの種類は、同じかまたは異なり得る。したがって、例として、限定はしないが、毛布または高温保護筒状スリーブ18(図3)を生地10から構成する際、PETのモノフィラメント、様々なナイロン配合、ステンレススチール、ポリプロピレン、または高い抗張力、疲労強度、摩耗および衝撃損傷に対する抵抗を有する他の材料などの摩耗、衝撃損傷に高い抵抗を有する耐久性のあるヤーンから、耐久性のあるニット構成を有する露出した外側層を構成することができる。対照的に、内側層14(スリーブ18内に保護されている部材に面する層)は、たとえば玄武岩、シリカ、セラミック、ステンレススチール、および両成分が耐高温性の材料である二成分ヤーンのマルチフィラメントなどの高温耐熱性を有するヤーンから構成することができる。もちろん、これは可能な構成の1つにすぎない。たとえば、生地10から手袋20(図4)を構成する場合、内側層14(ユーザの手と接触する層)は、ポリエステル、綿または他の柔らかな感触の材料などの軽い感触のヤーンから編むことができ、外側層12(環境に露出される)は、玄武岩、シリカ、セラミック、ステンレススチール、および両成分が耐高温性の材料である二成分ヤーンなどの耐高熱性を有するヤーンから構成することができる。これも生地10の外側層および内側層12,14をどのように構成することができるかについての別の例にすぎない。
【0021】
中間層16は、外側層および内側層12,14とは異なり、自立的な層として構成されない。換言すると、生地10から分離された場合、外側層および内側層12,14はユニット化された表編み構成において自立的なままであり、ゆえに解けない。しかし、外側層および内側層12,14が中間層16から分離された場合、中間層16は自立的なニット構成として存続しないであろう。これは、中間層16のヤーンが、タック編を使用して外側層および内側層12,14の選択されたヤーンの周りに輪になっているからであり、それゆえに、外側層および内側層12,14のヤーンがなければ中間層16は解けることになる。外側層および内側層12,14があるため、中間層16を形成するのに使用されるヤーンは、用途に応じて、所望のいずれかの種類(モノフィラメント/マルチフィラメント)、寸法(デニール/直径)、およびヤーンの材料(材料種類、繊維および色)から選択することができる。一般に、外側層および内側層12,14を互いに付着させるばかりでなく、中間層は絶縁層として機能し、それによって伝導、放射に対して、かつ砕片および他の形態の汚染に対して障壁をもたらす。
【0022】
明らかに、上記の教示に照らすと本発明の多くの修正および変更が可能である。したがって、追記の請求項の範囲内において、具体的に記載されたのとは異なる方法で発明が実施され得ると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニット生地であって、
第1のヤーンから編まれた外側層と、
第2のヤーンから編まれた内側層と、
外側層および内側層の間に挟まれた中間層とを備え、前記中間層は第3のヤーンから編まれ、前記第3のヤーンは、前記外側層および前記中間層を前記中間層の対向する側に付着させるために、前記第1のヤーンおよび前記第2のヤーンのうち少なくともいくつかの周りに輪になるように編まれる、ニット生地。
【請求項2】
前記中間層は、外側層および内側層がなければ解ける引上げ編で編まれる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項3】
前記外側層および前記内側層は、前記中間層から分離されたときに解けない自立的な表編みで編まれる、請求項2に記載のニット生地。
【請求項4】
前記外側層、前記内側層および前記中間層の各々は、異なる表編みを使用して編まれる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項5】
前記第1のヤーン、第2のヤーンおよび第3のヤーンの各々は、異なる種類のヤーンである、請求項1に記載のニット生地。
【請求項6】
前記生地は、筒状保護スリーブに形成される、請求項1に記載のニット生地。
【請求項7】
熱保護手袋であって、
第1のヤーンから編まれた外側層と、
前記第1のヤーンとは別個の第2のヤーンから編まれた内側層と、
外側層および内側層の間に挟まれた中間層とを備え、
前記中間層は第3のヤーンから編まれ、前記第3のヤーンは、前記外側層を前記中間層を介して前記内側層に付着させるために、前記第1のヤーンおよび前記第2のヤーンの少なくともいくつかの周りに輪になるように編まれる、熱保護手袋。
【請求項8】
前記中間層は、外側層および内側層がなければ解ける引上げ編で編まれる、請求項1に記載の熱保護手袋。
【請求項9】
前記外側層および前記内側層は、前記中間層から分離されたときに解けない自立的な表編みで編まれる、請求項8に記載の熱保護手袋。
【請求項10】
前記外側層、前記内側層および前記中間層の各々は、異なる表編みを使用して編まれる、請求項7に記載の熱保護手袋。
【請求項11】
前記第1のヤーン、第2のヤーンおよび第3のヤーンの各々は、異なる種類のヤーンである、請求項7に記載の熱保護手袋。
【請求項12】
前記第1のヤーンは耐高温性のヤーンであり、前記第2のヤーンは柔らかな感触のヤーンである、請求項12に記載の熱保護手袋。
【請求項13】
前記第1のヤーンは、玄武岩、シリカ、セラミック、ステンレススチール、および両成分が耐高温性の材料である二成分ヤーンからなるグループから選択される、請求項12に記載の熱保護手袋。
【請求項14】
三層ニット生地を構成する方法であって、
第1のヤーンから外側層を編むステップと、
第1のヤーンとは別個の第2のヤーンから編まれる内側層を編むステップと、
外側層および内側層の間に挟まれた中間層を、第1のヤーンおよび第2のヤーンとは別個の第3のヤーンから編むステップと、
外側層、内側層および中間層を、単一の編み機上で同時にかつ互いに編むステップと、を含む、方法。
【請求項15】
引上げ編を使用して、第1のヤーンおよび第2のヤーンの周りに中間層を編むステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
異なる表編みを有する外側層、内側層および中間層の各々を編むステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第1のヤーン、第2のヤーンおよび第3のヤーンの各々について異なる種類のヤーンを使用するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
生地を筒状保護スリーブに形成するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
生地を手袋に編むステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−533693(P2012−533693A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520833(P2012−520833)
【出願日】平成22年7月19日(2010.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/042391
【国際公開番号】WO2011/009112
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(503170721)フェデラル−モーグル パワートレイン インコーポレイテッド (32)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Powertrain, Inc.
【住所又は居所原語表記】26555 Northwestern Highway, Southfield, Michigan 48034, U.S.A.
【Fターム(参考)】