三次元形状造形物の製造方法
【課題】複雑な設計や後の加工を要することなく、ガスが効果的に抜けるように設計された三次元形状造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】粉末材料13の層10の所定箇所に光ビームLを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで焼結層11を形成し、この焼結層11の上に新たな粉末材料13の層10を被覆して所定箇所に光ビームLを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで下層の焼結層11と一体になった新たな焼結層11を形成することを繰り返して複数の焼結層11が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法において、当該方法は、焼結層11に各焼結層11間を連通するクラック17を発生させる工程を含み、クラック17は、粉末材料13の層10の焼結層11においてクラックを発生させる箇所に、クラック17を発生させる添加粉末14を供給して、光ビームLを照射することで選択的に形成される。
【解決手段】粉末材料13の層10の所定箇所に光ビームLを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで焼結層11を形成し、この焼結層11の上に新たな粉末材料13の層10を被覆して所定箇所に光ビームLを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで下層の焼結層11と一体になった新たな焼結層11を形成することを繰り返して複数の焼結層11が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法において、当該方法は、焼結層11に各焼結層11間を連通するクラック17を発生させる工程を含み、クラック17は、粉末材料13の層10の焼結層11においてクラックを発生させる箇所に、クラック17を発生させる添加粉末14を供給して、光ビームLを照射することで選択的に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料の層に光ビームを照射して焼結層を形成する工程を繰り返すことにより、複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に新たな粉末材料の層を被覆するとともにこの新たな粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して焼結させることによって下の焼結層と一体になった焼結層を形成し、そしてこれを繰り返すことによって、複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図18は、その一例を示すものである。まず、昇降可能な造形用テーブル120上面の造形用ベース122の上に、造形用テーブル120に隣接する昇降可能な材料用テーブル124上の粉末材料113から、スキージング用ブレード121を用いて、所定の厚みΔt2の粉末材料113の層(粉末層)110aを形成する。造形用テーブル120はシリンダー115の側面に沿って昇降するものであり、ブレード121はシリンダー115の上面と同じレベルで水平方向に往復移動するようにしてある。したがって、造形用テーブル120の上面とシリンダー115の上面との間に形成された段差に相当する厚みで粉末層110aを造形用テーブル120の上に形成することができる。この後、粉末層110aの所定箇所に集光レンズで集光した光ビームLを照射し、粉末層110aの当該箇所を焼結させて、焼結層111aを形成する。次に、造形用テーブル120を少し下降させ、上記と同様にして、焼結層111a上に、材料用テーブル124上の粉末材料113から、ブレード121を用いて、所定の厚みの粉末層110bを形成する。そして、上記と同様にして、粉末層110bの所定箇所に光ビームLを照射し、粉末層110bの当該箇所を焼結させて、焼結層111a上に、焼結層111aと一体になった焼結層111bを形成する。以上の操作を繰り返すことによって、所定数の焼結層111a〜111fが積層一体化された三次元形状造形物を製造することができる。図19は三次元形状造形物の概略斜視図である。
【0004】
ここで、図20(a)に示すような製品100を製造するにあたり、製品100の三次元CADデータに基づいて、図20(b)に示すように、製品100を所定の間隔Δt3で水平にスライスしたときの各層100a〜100fのスライス面の断面データを得て、このスライス断面データをもとに各粉末層に照射する光ビームLの走査経路を決定し、各層100a〜100fに対応する水平断面形状で各焼結層111a〜111fを形成することによって、製品100と同じ三次元形状造形物を製造することができる。そしてこのように各焼結層111a〜111fを順次形成して積み重ねていく方法を採用することによって、複雑な機構の装置を用いることなく、迅速に所望の形状の三次元形状造形物を得ることができる。
【0005】
ところで、この三次元形状造形物は、プラスチック金型として用いられる。プラスチック金型は、金型内に樹脂が急速に充填される際に、金型内のガスおよび溶融した樹脂から発生するガスが効果的に逃げるように設計されている必要がある。このように設計しないと、成形品の表面に変色やガス焼けが生じて外観が損なわれたり、金型内での樹脂の流動状態が設計と異なるため、成形品の寸法精度が低下したりする虞がある。
【0006】
そのため、従来においては、ガスを抜きたい箇所にポーラス材を埋め込んだり、割り型構造にして形成された隙間を利用したり、ノックアウトピン挿入孔を施して当該挿入孔に形成された隙間を利用したりしてガスを抜いていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2620353号公報
【特許文献2】特開2003−1715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような方法でガスを抜く場合、複雑な設計や後の加工を要するという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなしたものであり、複雑な設計や後の加工を要することなく、ガスが効果的に抜けるように設計された三次元形状造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法は、粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで焼結層を形成し、この焼結層の上に新たな粉末材料の層を被覆して所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで下層の焼結層と一体になった新たな焼結層を形成することを繰り返して複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法において、当該方法は、焼結層に各焼結層間を連通するクラックを発生させる工程を含み、クラックは、粉末材料の層の焼結層においてクラックを発生させる箇所に、クラックを発生させる添加粉末を供給して、光ビームを照射することで選択的に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法において、粉末材料は、鉄系粉末と、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方と、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方と、を含む混合粉末で、その配合比率は、鉄系粉末が60〜90重量%、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方が5〜35重量%、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方が5〜15重量%であり、クラックを発生させる添加粉末は、硫黄、シリコン、リンから選ばれる少なくとも1種を含む粉末であり、その供給量は、粉末材料とクラックを発生させる添加粉末の総重量の0.1〜2.0重量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2に記載の三次元形状造形物の製造方法において、焼結層を形成した後に、焼結されなかったクラックを発生させる添加粉末を回収することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、焼結層を形成した後に、それまでに製造した造形物における表面部または不要部分の少なくとも一方の切削除去を行う工程を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、三次元形状造形物が射出成形用金型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、三次元形状造形物の所望の箇所にクラックを発生させることができる。特に、三次元形状造形物を金型に適用した場合に、クラックが通気孔の役割を果たし、効果的にガスを抜くことができる。その結果、成形品の外観を損なうことがなく、また、成形品の寸法精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
図1に実施形態1に係る三次元形状造形物の製造装置(以下、単に「製造装置」と呼ぶ)を示す。なお、以下の説明では具体例を挙げて本発明を説明する場合があるが、本発明は以下の具体例に限定されない。
【0016】
製造装置は、シリンダー15で外周が囲まれた空間内を上下に昇降する造形用テーブル20上に供給した粉末材料13をスキージング用ブレード21でならすことで所定厚みΔt1(図2参照)の粉末材料13の層(粉末層)10を形成する粉末層形成手段2と、粉末層形成手段2のベース部にXY駆動機構(高速化の点で直動リニアモータ駆動のものが好ましい)40を介して設けられ粉末層10の後述する焼結層11においてクラック17(図2参照)を発生させる箇所にクラック17を発生させる添加粉末14(図2参照)を供給する添加粉末供給部23を備えた添加粉末供給手段3と、粉末層形成手段2の上方に設けられレーザー発振器30から出力された光ビーム(レーザー)Lをガルバノミラー31等のスキャン光学系を介して上記粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14に照射することで粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14を焼結してクラック17が入った焼結層11を形成する焼結層形成手段4と、を基本構成とする。
【0017】
このものにおける三次元形状造形物の製造は、図2に示すように、焼結層形成手段4と焼結層11との相対距離を調整する調整手段であるところの昇降テーブル20上面の造形用ベース22表面に粉末材料13を供給してブレード21でならすことで第1層目の粉末層10を形成し、粉末層10の焼結層11においてクラック17を発生させる箇所にクラック17を発生させる添加粉末14を供給した後、この粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14に光ビームLを照射してベース22と一体化した焼結層11を形成する。
【0018】
この後、昇降テーブル20を少し下げて再度粉末材料13を供給してブレード21でならすことで第2層目の粉末層10を形成し、粉末層10の焼結層11においてクラック17を発生させる箇所にクラック17を発生させる添加粉末14を供給した後、この粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14に光ビームLを照射して下層の焼結層11と一体化した焼結層11を形成する。
【0019】
ここで、各焼結層に発生するクラック17は、各層間を連通するように発生させる。
【0020】
上記工程を繰り返すことにより、目的とする三次元形状造形物が製造される。
【0021】
ここで、粉末材料13は、鉄系粉末と、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方と、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方と、を含む混合粉末で、その配合比率は、鉄系粉末が60〜90重量パーセント、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方が5〜35重量パーセント、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方が5〜15重量パーセントである。具体的には、粉末材料13は、平均粒子径が30μmのクロムモリブデン鋼(SCM440)、ニッケル(Ni)、銅マンガン合金(CuMnNi)および黒鉛(C)の混合粉末であり、その配合割合は、(70重量%SCM440−20重量%Ni−9重量%CuMnNi)+0.3重量%Cである。なお、この混合粉末は、平均粒径が1〜100μmで、略球状の形状をしている。また、粉末層10の厚みΔt1は0.05mmである。
【0022】
クラック17を発生させる添加粉末14は、硫黄、シリコン、リンから選ばれる少なくとも1種を含む粉末であり、その供給量は、粉末材料13とクラック17を発生させる添加粉末の総重量の0.1〜2.0重量%である。0.1重量%より少なければ、三次元形状造形物1を金型に用いた場合に、ガスを抜くのに十分なクラック17を発生させることができず、2.0重量%より多ければ、クラック17が大きくなりすぎて三次元形状造形物の強度が十分ではなくなってしまう。
【0023】
そして、光ビームLとしては炭酸ガスレーザーが用いられる。光ビームLの照射経路は、予め三次元CADデータから作成しておく。すなわち、三次元CADモデルから生成したSTLデータを等ピッチ(ここでは0.05mm)でスライスした各断面の輪郭形状データを用いる。
【0024】
図3(a)にクラック17を発生させる添加粉末14を供給せずに製造された三次元形状造形物の断面組織を、図3(b)にクラック17を発生させる添加粉末14として0.3重量%の硫黄粉末を供給して製造された三次元形状造形物の断面組織を、図3(c)にクラック17を発生させる添加粉末14として1.0重量%のリン粉末を供給して製造された三次元形状造形物の断面組織を示す。図3(b)および図3(c)において、三次元形状造形物を金型として用いた場合に、効果的にガスを抜くことができるクラック17が発生していることがわかった。
【0025】
したがって、三次元形状造形物の所望の箇所にクラック17を発生させることができる。特に、三次元形状造形物は、射出成形用金型として用いることができ、射出成形用金型に適用した場合に、クラック17が通気孔の役割を果たし、クラック17から効果的にガスを抜くことができる。その結果、成形品の外観を損なうことがなく、また、成形品の寸法精度を向上させることができる。
(実施形態2)
図4に実施形態2に係る製造装置を示す。実施形態1とは、焼結されなかった粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14をそれぞれ分けて回収する回収手段5が設けられている点で異なり、その他の点については同様である。
【0026】
ここで、回収手段5は、エアポンプ50およびエアポンプ50に接続された吸引ノズル51からなり、吸引ノズル51は、自在に移動する必要があるため、XY駆動機構40に設けられている。図5に示すように、三次元形状造形物を製造した後には、粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14が焼結されずにそのまま残る場合があるが、その場合、回収手段5は、粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14をそれぞれ分けて回収する。具体的には、まず、クラック17を発生させる添加粉末14を部分的に吸引回収した後に、粉末材料13を吸引回収する。
【0027】
したがって、粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14を再利用することが可能となる。
(実施形態3)
図6に実施形態3に係る製造装置を示す。実施形態1とは、ボールエンドミルを備え粉末層形成手段2のベース部にXY駆動機構40を介して設けられた切削工具41によりそれまでに製造された造形物における表面部または不要部分の少なくとも一方を除去する除去手段6が設けられている点で異なり、その他の点については同様である。
【0028】
本実施形態では、三次元形状造形物の少なくとも最表面が高密度(気孔率5%以下)となるように焼結させることができるように光ビームLの照射を行うのが好ましい。除去手段6によって後述する表面除去を行っても、露出した部分がポーラスであれば、除去加工後の表面もポーラスな状態となるためである。このために予め形状モデルデータを図7に示すように、表層部Sと内部Nとに分割しておき、内部Nについてはポーラスとなるような焼結条件、表層部Sはほぼ粉末が溶融して高密度となる条件で光ビームLを照射する。図8に、高密度部12と前述の付着粉末によるところの低密度表面層16を示す。
【0029】
そして、粉末層10を形成しては光ビームLを照射して焼結層11を形成することを繰り返していくのであるが、焼結層11の全厚みが例えば切削工具41の有効刃長以下の所定値になれば、いったん除去手段6を作動させてそれまでに造形した造形物の表面を切削する。たとえば、工具径が0.6mmで、有効刃長が1.0mmのボールエンドミルを備えた切削工具41を用いる場合には、粉末層10の厚みΔt1を0.05mmとすると、10層の焼結層11を形成した時点、すなわち0.5mmの造形を行った時点で除去手段6を作動させる。
【0030】
この除去手段6による切削加工により、図8に示すように、造形物表面に付着した粉末による低密度表面層16を除去すると同時に、高密度部12まで削り込むことで、造形物表面に高密度部12を全面的に露出させる。これにより、造形物表面の面粗度を高くすることができる。このために、所望の形状Mよりも焼結層11が少し大きくなるようにしておく。
【0031】
この除去手段6による切削加工経路は、光ビームLの照射経路と同様に、予め三次元CADデータから作成しておく。この時、等高線加工を適用して加工経路を決定するが、Z方向ピッチは焼結時の積層ピッチにこだわる必要はなく、緩い傾斜の場合はZ方向ピッチをより細かくして補間することで、滑らかな表面を得られるようにしておく。切削加工を工具径1mmの切削工具41で行う場合は、切り込み量を0.1〜0.5mm、送り速度を5m/min〜50m/min、工具回転数を20,000rpm〜100,000rpmとするのが好ましい。
【0032】
なお、切削による除去に際しては、図9に示すように、切削加工の直前の部分にエネルギー密度を小さくした光ビームLを照射して加熱することで軟化させておき、この軟化した状態の部分を切削工具41が切削していくようにすると、切削抵抗が小さくなるために切削加工時間を短くできるとともに切削工具41の寿命を延ばすことができる。
【0033】
また、図10に示すように、切削除去直後の部分に再度光ビームLを照射して、溶融硬化させたり、熱処理したりすることで、表面密度を高めるようにすることも好ましい。
【0034】
ところで、除去手段6による造形物表面および不要部分の除去に際して、未焼結粉末や除去手段6による切削屑が除去作業の邪魔になる上に、次の粉末層10の形成に際して、ブレード21に切削屑が引っかかって平坦な粉末層10を形成することができなかったり、ブレード21と造形物との間に切削屑が挟まってブレード21が停止してしまったりすることがある。このために、図11および図12(a)あるいは図12(b)に示すように、例えば、エアポンプ60および吸引ノズル61からなる排除手段7を設けることが好ましい。ここで、エアポンプ60に接続した吸引ノズル61を切削工具41に隣接させて配置し、切削と同時に未焼結の粉末材料13、クラック17を発生させる添加粉末14および切削屑を吸引してしまうとよい。吸引ノズル51で切削工具41を囲んでいる図12(b)に示すものでは、切削工具41にスピンドルヘッドを好ましく用いることができる。
【0035】
図13に示すように、切削加工前に、未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14のみを吸引回収し、切削加工と同時に切削屑を吸引排除するようにしてもよい。この際、実施形態2で述べたように、未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14をそれぞれ分けて吸引回収することが好ましい。未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14に切削屑が混入することがないために、未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14の再利用が容易となる。
【0036】
ところで、未焼結の粉末材料13を吸引回収してしまった場合、除去工程後にさらに粉末層10を積層する時、多量の粉末材料13が必要となり、除去工程を複数回繰り返す場合、その都度、未焼結の粉末材料13がなくなった全空間に粉末材料13を埋めなくてはならず、時間的なロスが大きくなる。このために、未焼結の粉末材料13がなくなった空間には、図14に示すように、樹脂あるいはろう材を流し込んで固化させることで固化部18を形成し、次の粉末層10は最上層の焼結層11と上記固化部18の上面に形成するとよい。使用する粉末材料13の量を削減することができる。
【0037】
なお、上記排除手段7における吸引ノズル61は、除去工程に先だって未焼結の粉末材料13を吸引回収するものについては、図15に示すように、粉末層形成手段2におけるブレード21の駆動部に取り付けておくと、全域の未焼結の粉末材料13の吸引回収を行うことができるとともに吸引ノズル61のための専用の駆動機構を必要としなくなるために、装置構成を簡単にすることができる。
【0038】
また、図16に示すように、吸引ノズル61を専用のXY駆動機構55、もしくは除去手段6におけるXY駆動機構40に取り付けた場合には、造形物の断面輪郭線形状に沿って吸引ノズル61を移動させることができる。
【0039】
未焼結の粉末材料13については、除去工程前に吸引回収してしまうのではなく、例えば液体窒素などを吹き付ける(必要とあれば湿気を含んだガスを同時に吹き付ける)ことで未焼結の粉末材料13を冷凍して固化させたり、樹脂やろう材などを流し込んで固化させたりしておき、この状態で除去手段6を動作させるようにしてもよい。切削屑が未焼結粉末内に入り込んでしまうことがないために、粉末材料13の再充填などを必要とすることなく、切削屑のみを容易に吸引排除することができる。
【0040】
図17に示すものは、焼結直後もしくは除去加工直後の造形物の形状および位置を測定するための計測手段8を設けたものである。光ビームの照射精度や除去加工の加工精度をオンマシンで計測することができるものであり、計測結果をフィードバックして、測定データ(位置座標データ)とCADデータを比較することで、造形精度を算出することができるとともに、比較結果に基づいて次の光ビーム照射経路データを修正したり、次の除去加工経路データを修正したりすることで、より高精度な造形が可能となる。
【0041】
上記計測手段8が例えば圧電型接触センサである場合には、除去手段6におけるXY駆動機構40に計測手段8を設けると、計測手段8のための専用駆動機構を必要とすることなく、計測を行うことができる。
【0042】
また、計測手段8としてはCCDカメラのような撮像手段を用いてもよい。測定しようとする点が画像の中心となるように撮像手段を移動させて、画像中心と造形物中の測定しようとしている点とのずれた画素数からずれ量を計測するのである。
【0043】
なお、除去部分は造形物の表面部に限るものではなく、造形の都合上、本来ならば不要である部分も造形しなくてはならない場合、この不要部分の除去も行うことができる。
【0044】
したがって、表面の外観がよい三次元形状造形物を製造することができる。
【0045】
なお、各実施形態に記載の事項は、適宜に選択し、組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態1の一例に係る概略斜視図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】三次元形状造形物の断面組織図である。
【図4】実施形態2の一例に係る概略斜視図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】実施形態3の一例に係る概略斜視図である。
【図7】同上の表面高密度部に関する説明図である。
【図8】同上の除去工程を示す断面図である。
【図9】同上の他例の動作を示す斜視図である。
【図10】同上のさらなる他例の動作を示す斜視図である。
【図11】同上の他例の概略斜視図である。
【図12】排除手段の一例を示す概略断面図である。
【図13】排除手段の他例の動作を示す概略断面図である。
【図14】排除後の処理を示す概略断面図である。
【図15】排除手段の他例を示す概略断面図である。
【図16】排除手段のさらなる他例を示す概略斜視図である。
【図17】計測手段を備えた例の概略斜視図である。
【図18】三次元形状造形物を製造する従来の方法の説明図である。
【図19】三次元形状造形物の斜視図である。
【図20】三次元形状造形物を製造する従来の方法の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
3 添加粉末供給手段
10 粉末層
11 焼結層
13 粉末材料
14 添加粉末
17 クラック
23 添加粉末供給部
L 光ビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料の層に光ビームを照射して焼結層を形成する工程を繰り返すことにより、複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に新たな粉末材料の層を被覆するとともにこの新たな粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して焼結させることによって下の焼結層と一体になった焼結層を形成し、そしてこれを繰り返すことによって、複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図18は、その一例を示すものである。まず、昇降可能な造形用テーブル120上面の造形用ベース122の上に、造形用テーブル120に隣接する昇降可能な材料用テーブル124上の粉末材料113から、スキージング用ブレード121を用いて、所定の厚みΔt2の粉末材料113の層(粉末層)110aを形成する。造形用テーブル120はシリンダー115の側面に沿って昇降するものであり、ブレード121はシリンダー115の上面と同じレベルで水平方向に往復移動するようにしてある。したがって、造形用テーブル120の上面とシリンダー115の上面との間に形成された段差に相当する厚みで粉末層110aを造形用テーブル120の上に形成することができる。この後、粉末層110aの所定箇所に集光レンズで集光した光ビームLを照射し、粉末層110aの当該箇所を焼結させて、焼結層111aを形成する。次に、造形用テーブル120を少し下降させ、上記と同様にして、焼結層111a上に、材料用テーブル124上の粉末材料113から、ブレード121を用いて、所定の厚みの粉末層110bを形成する。そして、上記と同様にして、粉末層110bの所定箇所に光ビームLを照射し、粉末層110bの当該箇所を焼結させて、焼結層111a上に、焼結層111aと一体になった焼結層111bを形成する。以上の操作を繰り返すことによって、所定数の焼結層111a〜111fが積層一体化された三次元形状造形物を製造することができる。図19は三次元形状造形物の概略斜視図である。
【0004】
ここで、図20(a)に示すような製品100を製造するにあたり、製品100の三次元CADデータに基づいて、図20(b)に示すように、製品100を所定の間隔Δt3で水平にスライスしたときの各層100a〜100fのスライス面の断面データを得て、このスライス断面データをもとに各粉末層に照射する光ビームLの走査経路を決定し、各層100a〜100fに対応する水平断面形状で各焼結層111a〜111fを形成することによって、製品100と同じ三次元形状造形物を製造することができる。そしてこのように各焼結層111a〜111fを順次形成して積み重ねていく方法を採用することによって、複雑な機構の装置を用いることなく、迅速に所望の形状の三次元形状造形物を得ることができる。
【0005】
ところで、この三次元形状造形物は、プラスチック金型として用いられる。プラスチック金型は、金型内に樹脂が急速に充填される際に、金型内のガスおよび溶融した樹脂から発生するガスが効果的に逃げるように設計されている必要がある。このように設計しないと、成形品の表面に変色やガス焼けが生じて外観が損なわれたり、金型内での樹脂の流動状態が設計と異なるため、成形品の寸法精度が低下したりする虞がある。
【0006】
そのため、従来においては、ガスを抜きたい箇所にポーラス材を埋め込んだり、割り型構造にして形成された隙間を利用したり、ノックアウトピン挿入孔を施して当該挿入孔に形成された隙間を利用したりしてガスを抜いていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2620353号公報
【特許文献2】特開2003−1715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような方法でガスを抜く場合、複雑な設計や後の加工を要するという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなしたものであり、複雑な設計や後の加工を要することなく、ガスが効果的に抜けるように設計された三次元形状造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法は、粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで焼結層を形成し、この焼結層の上に新たな粉末材料の層を被覆して所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで下層の焼結層と一体になった新たな焼結層を形成することを繰り返して複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法において、当該方法は、焼結層に各焼結層間を連通するクラックを発生させる工程を含み、クラックは、粉末材料の層の焼結層においてクラックを発生させる箇所に、クラックを発生させる添加粉末を供給して、光ビームを照射することで選択的に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法において、粉末材料は、鉄系粉末と、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方と、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方と、を含む混合粉末で、その配合比率は、鉄系粉末が60〜90重量%、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方が5〜35重量%、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方が5〜15重量%であり、クラックを発生させる添加粉末は、硫黄、シリコン、リンから選ばれる少なくとも1種を含む粉末であり、その供給量は、粉末材料とクラックを発生させる添加粉末の総重量の0.1〜2.0重量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2に記載の三次元形状造形物の製造方法において、焼結層を形成した後に、焼結されなかったクラックを発生させる添加粉末を回収することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、焼結層を形成した後に、それまでに製造した造形物における表面部または不要部分の少なくとも一方の切削除去を行う工程を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、三次元形状造形物が射出成形用金型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、三次元形状造形物の所望の箇所にクラックを発生させることができる。特に、三次元形状造形物を金型に適用した場合に、クラックが通気孔の役割を果たし、効果的にガスを抜くことができる。その結果、成形品の外観を損なうことがなく、また、成形品の寸法精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
図1に実施形態1に係る三次元形状造形物の製造装置(以下、単に「製造装置」と呼ぶ)を示す。なお、以下の説明では具体例を挙げて本発明を説明する場合があるが、本発明は以下の具体例に限定されない。
【0016】
製造装置は、シリンダー15で外周が囲まれた空間内を上下に昇降する造形用テーブル20上に供給した粉末材料13をスキージング用ブレード21でならすことで所定厚みΔt1(図2参照)の粉末材料13の層(粉末層)10を形成する粉末層形成手段2と、粉末層形成手段2のベース部にXY駆動機構(高速化の点で直動リニアモータ駆動のものが好ましい)40を介して設けられ粉末層10の後述する焼結層11においてクラック17(図2参照)を発生させる箇所にクラック17を発生させる添加粉末14(図2参照)を供給する添加粉末供給部23を備えた添加粉末供給手段3と、粉末層形成手段2の上方に設けられレーザー発振器30から出力された光ビーム(レーザー)Lをガルバノミラー31等のスキャン光学系を介して上記粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14に照射することで粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14を焼結してクラック17が入った焼結層11を形成する焼結層形成手段4と、を基本構成とする。
【0017】
このものにおける三次元形状造形物の製造は、図2に示すように、焼結層形成手段4と焼結層11との相対距離を調整する調整手段であるところの昇降テーブル20上面の造形用ベース22表面に粉末材料13を供給してブレード21でならすことで第1層目の粉末層10を形成し、粉末層10の焼結層11においてクラック17を発生させる箇所にクラック17を発生させる添加粉末14を供給した後、この粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14に光ビームLを照射してベース22と一体化した焼結層11を形成する。
【0018】
この後、昇降テーブル20を少し下げて再度粉末材料13を供給してブレード21でならすことで第2層目の粉末層10を形成し、粉末層10の焼結層11においてクラック17を発生させる箇所にクラック17を発生させる添加粉末14を供給した後、この粉末層10の所定箇所およびクラック17を発生させる添加粉末14に光ビームLを照射して下層の焼結層11と一体化した焼結層11を形成する。
【0019】
ここで、各焼結層に発生するクラック17は、各層間を連通するように発生させる。
【0020】
上記工程を繰り返すことにより、目的とする三次元形状造形物が製造される。
【0021】
ここで、粉末材料13は、鉄系粉末と、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方と、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方と、を含む混合粉末で、その配合比率は、鉄系粉末が60〜90重量パーセント、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方が5〜35重量パーセント、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方が5〜15重量パーセントである。具体的には、粉末材料13は、平均粒子径が30μmのクロムモリブデン鋼(SCM440)、ニッケル(Ni)、銅マンガン合金(CuMnNi)および黒鉛(C)の混合粉末であり、その配合割合は、(70重量%SCM440−20重量%Ni−9重量%CuMnNi)+0.3重量%Cである。なお、この混合粉末は、平均粒径が1〜100μmで、略球状の形状をしている。また、粉末層10の厚みΔt1は0.05mmである。
【0022】
クラック17を発生させる添加粉末14は、硫黄、シリコン、リンから選ばれる少なくとも1種を含む粉末であり、その供給量は、粉末材料13とクラック17を発生させる添加粉末の総重量の0.1〜2.0重量%である。0.1重量%より少なければ、三次元形状造形物1を金型に用いた場合に、ガスを抜くのに十分なクラック17を発生させることができず、2.0重量%より多ければ、クラック17が大きくなりすぎて三次元形状造形物の強度が十分ではなくなってしまう。
【0023】
そして、光ビームLとしては炭酸ガスレーザーが用いられる。光ビームLの照射経路は、予め三次元CADデータから作成しておく。すなわち、三次元CADモデルから生成したSTLデータを等ピッチ(ここでは0.05mm)でスライスした各断面の輪郭形状データを用いる。
【0024】
図3(a)にクラック17を発生させる添加粉末14を供給せずに製造された三次元形状造形物の断面組織を、図3(b)にクラック17を発生させる添加粉末14として0.3重量%の硫黄粉末を供給して製造された三次元形状造形物の断面組織を、図3(c)にクラック17を発生させる添加粉末14として1.0重量%のリン粉末を供給して製造された三次元形状造形物の断面組織を示す。図3(b)および図3(c)において、三次元形状造形物を金型として用いた場合に、効果的にガスを抜くことができるクラック17が発生していることがわかった。
【0025】
したがって、三次元形状造形物の所望の箇所にクラック17を発生させることができる。特に、三次元形状造形物は、射出成形用金型として用いることができ、射出成形用金型に適用した場合に、クラック17が通気孔の役割を果たし、クラック17から効果的にガスを抜くことができる。その結果、成形品の外観を損なうことがなく、また、成形品の寸法精度を向上させることができる。
(実施形態2)
図4に実施形態2に係る製造装置を示す。実施形態1とは、焼結されなかった粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14をそれぞれ分けて回収する回収手段5が設けられている点で異なり、その他の点については同様である。
【0026】
ここで、回収手段5は、エアポンプ50およびエアポンプ50に接続された吸引ノズル51からなり、吸引ノズル51は、自在に移動する必要があるため、XY駆動機構40に設けられている。図5に示すように、三次元形状造形物を製造した後には、粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14が焼結されずにそのまま残る場合があるが、その場合、回収手段5は、粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14をそれぞれ分けて回収する。具体的には、まず、クラック17を発生させる添加粉末14を部分的に吸引回収した後に、粉末材料13を吸引回収する。
【0027】
したがって、粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14を再利用することが可能となる。
(実施形態3)
図6に実施形態3に係る製造装置を示す。実施形態1とは、ボールエンドミルを備え粉末層形成手段2のベース部にXY駆動機構40を介して設けられた切削工具41によりそれまでに製造された造形物における表面部または不要部分の少なくとも一方を除去する除去手段6が設けられている点で異なり、その他の点については同様である。
【0028】
本実施形態では、三次元形状造形物の少なくとも最表面が高密度(気孔率5%以下)となるように焼結させることができるように光ビームLの照射を行うのが好ましい。除去手段6によって後述する表面除去を行っても、露出した部分がポーラスであれば、除去加工後の表面もポーラスな状態となるためである。このために予め形状モデルデータを図7に示すように、表層部Sと内部Nとに分割しておき、内部Nについてはポーラスとなるような焼結条件、表層部Sはほぼ粉末が溶融して高密度となる条件で光ビームLを照射する。図8に、高密度部12と前述の付着粉末によるところの低密度表面層16を示す。
【0029】
そして、粉末層10を形成しては光ビームLを照射して焼結層11を形成することを繰り返していくのであるが、焼結層11の全厚みが例えば切削工具41の有効刃長以下の所定値になれば、いったん除去手段6を作動させてそれまでに造形した造形物の表面を切削する。たとえば、工具径が0.6mmで、有効刃長が1.0mmのボールエンドミルを備えた切削工具41を用いる場合には、粉末層10の厚みΔt1を0.05mmとすると、10層の焼結層11を形成した時点、すなわち0.5mmの造形を行った時点で除去手段6を作動させる。
【0030】
この除去手段6による切削加工により、図8に示すように、造形物表面に付着した粉末による低密度表面層16を除去すると同時に、高密度部12まで削り込むことで、造形物表面に高密度部12を全面的に露出させる。これにより、造形物表面の面粗度を高くすることができる。このために、所望の形状Mよりも焼結層11が少し大きくなるようにしておく。
【0031】
この除去手段6による切削加工経路は、光ビームLの照射経路と同様に、予め三次元CADデータから作成しておく。この時、等高線加工を適用して加工経路を決定するが、Z方向ピッチは焼結時の積層ピッチにこだわる必要はなく、緩い傾斜の場合はZ方向ピッチをより細かくして補間することで、滑らかな表面を得られるようにしておく。切削加工を工具径1mmの切削工具41で行う場合は、切り込み量を0.1〜0.5mm、送り速度を5m/min〜50m/min、工具回転数を20,000rpm〜100,000rpmとするのが好ましい。
【0032】
なお、切削による除去に際しては、図9に示すように、切削加工の直前の部分にエネルギー密度を小さくした光ビームLを照射して加熱することで軟化させておき、この軟化した状態の部分を切削工具41が切削していくようにすると、切削抵抗が小さくなるために切削加工時間を短くできるとともに切削工具41の寿命を延ばすことができる。
【0033】
また、図10に示すように、切削除去直後の部分に再度光ビームLを照射して、溶融硬化させたり、熱処理したりすることで、表面密度を高めるようにすることも好ましい。
【0034】
ところで、除去手段6による造形物表面および不要部分の除去に際して、未焼結粉末や除去手段6による切削屑が除去作業の邪魔になる上に、次の粉末層10の形成に際して、ブレード21に切削屑が引っかかって平坦な粉末層10を形成することができなかったり、ブレード21と造形物との間に切削屑が挟まってブレード21が停止してしまったりすることがある。このために、図11および図12(a)あるいは図12(b)に示すように、例えば、エアポンプ60および吸引ノズル61からなる排除手段7を設けることが好ましい。ここで、エアポンプ60に接続した吸引ノズル61を切削工具41に隣接させて配置し、切削と同時に未焼結の粉末材料13、クラック17を発生させる添加粉末14および切削屑を吸引してしまうとよい。吸引ノズル51で切削工具41を囲んでいる図12(b)に示すものでは、切削工具41にスピンドルヘッドを好ましく用いることができる。
【0035】
図13に示すように、切削加工前に、未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14のみを吸引回収し、切削加工と同時に切削屑を吸引排除するようにしてもよい。この際、実施形態2で述べたように、未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14をそれぞれ分けて吸引回収することが好ましい。未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14に切削屑が混入することがないために、未焼結の粉末材料13およびクラック17を発生させる添加粉末14の再利用が容易となる。
【0036】
ところで、未焼結の粉末材料13を吸引回収してしまった場合、除去工程後にさらに粉末層10を積層する時、多量の粉末材料13が必要となり、除去工程を複数回繰り返す場合、その都度、未焼結の粉末材料13がなくなった全空間に粉末材料13を埋めなくてはならず、時間的なロスが大きくなる。このために、未焼結の粉末材料13がなくなった空間には、図14に示すように、樹脂あるいはろう材を流し込んで固化させることで固化部18を形成し、次の粉末層10は最上層の焼結層11と上記固化部18の上面に形成するとよい。使用する粉末材料13の量を削減することができる。
【0037】
なお、上記排除手段7における吸引ノズル61は、除去工程に先だって未焼結の粉末材料13を吸引回収するものについては、図15に示すように、粉末層形成手段2におけるブレード21の駆動部に取り付けておくと、全域の未焼結の粉末材料13の吸引回収を行うことができるとともに吸引ノズル61のための専用の駆動機構を必要としなくなるために、装置構成を簡単にすることができる。
【0038】
また、図16に示すように、吸引ノズル61を専用のXY駆動機構55、もしくは除去手段6におけるXY駆動機構40に取り付けた場合には、造形物の断面輪郭線形状に沿って吸引ノズル61を移動させることができる。
【0039】
未焼結の粉末材料13については、除去工程前に吸引回収してしまうのではなく、例えば液体窒素などを吹き付ける(必要とあれば湿気を含んだガスを同時に吹き付ける)ことで未焼結の粉末材料13を冷凍して固化させたり、樹脂やろう材などを流し込んで固化させたりしておき、この状態で除去手段6を動作させるようにしてもよい。切削屑が未焼結粉末内に入り込んでしまうことがないために、粉末材料13の再充填などを必要とすることなく、切削屑のみを容易に吸引排除することができる。
【0040】
図17に示すものは、焼結直後もしくは除去加工直後の造形物の形状および位置を測定するための計測手段8を設けたものである。光ビームの照射精度や除去加工の加工精度をオンマシンで計測することができるものであり、計測結果をフィードバックして、測定データ(位置座標データ)とCADデータを比較することで、造形精度を算出することができるとともに、比較結果に基づいて次の光ビーム照射経路データを修正したり、次の除去加工経路データを修正したりすることで、より高精度な造形が可能となる。
【0041】
上記計測手段8が例えば圧電型接触センサである場合には、除去手段6におけるXY駆動機構40に計測手段8を設けると、計測手段8のための専用駆動機構を必要とすることなく、計測を行うことができる。
【0042】
また、計測手段8としてはCCDカメラのような撮像手段を用いてもよい。測定しようとする点が画像の中心となるように撮像手段を移動させて、画像中心と造形物中の測定しようとしている点とのずれた画素数からずれ量を計測するのである。
【0043】
なお、除去部分は造形物の表面部に限るものではなく、造形の都合上、本来ならば不要である部分も造形しなくてはならない場合、この不要部分の除去も行うことができる。
【0044】
したがって、表面の外観がよい三次元形状造形物を製造することができる。
【0045】
なお、各実施形態に記載の事項は、適宜に選択し、組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態1の一例に係る概略斜視図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】三次元形状造形物の断面組織図である。
【図4】実施形態2の一例に係る概略斜視図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】実施形態3の一例に係る概略斜視図である。
【図7】同上の表面高密度部に関する説明図である。
【図8】同上の除去工程を示す断面図である。
【図9】同上の他例の動作を示す斜視図である。
【図10】同上のさらなる他例の動作を示す斜視図である。
【図11】同上の他例の概略斜視図である。
【図12】排除手段の一例を示す概略断面図である。
【図13】排除手段の他例の動作を示す概略断面図である。
【図14】排除後の処理を示す概略断面図である。
【図15】排除手段の他例を示す概略断面図である。
【図16】排除手段のさらなる他例を示す概略斜視図である。
【図17】計測手段を備えた例の概略斜視図である。
【図18】三次元形状造形物を製造する従来の方法の説明図である。
【図19】三次元形状造形物の斜視図である。
【図20】三次元形状造形物を製造する従来の方法の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
3 添加粉末供給手段
10 粉末層
11 焼結層
13 粉末材料
14 添加粉末
17 クラック
23 添加粉末供給部
L 光ビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで焼結層を形成し、この焼結層の上に新たな粉末材料の層を被覆して所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで下層の焼結層と一体になった新たな焼結層を形成することを繰り返して複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法において、
当該方法は、焼結層に各焼結層間を連通するクラックを発生させる工程を含み、
クラックは、粉末材料の層の焼結層においてクラックを発生させる箇所に、クラックを発生させる添加粉末を供給して、光ビームを照射することで選択的に形成されることを特徴とする三次元形状造形物の製造方法。
【請求項2】
粉末材料は、鉄系粉末と、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方と、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方と、を含む混合粉末で、その配合比率は、鉄系粉末が60〜90重量%、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方が5〜35重量%、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方が5〜15重量%であり、
クラックを発生させる添加粉末は、硫黄、シリコン、リンから選ばれる少なくとも1種を含む粉末であり、その供給量は、粉末材料とクラックを発生させる添加粉末の総重量の0.1〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項3】
焼結層を形成した後に、焼結されなかったクラックを発生させる添加粉末を回収することを特徴とする請求項1または2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項4】
焼結層を形成した後に、それまでに製造した造形物における表面部または不要部分の少なくとも一方の切削除去を行う工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項5】
三次元形状造形物が射出成形用金型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項1】
粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで焼結層を形成し、この焼結層の上に新たな粉末材料の層を被覆して所定箇所に光ビームを照射して該当箇所の粉末を焼結させることで下層の焼結層と一体になった新たな焼結層を形成することを繰り返して複数の焼結層が積層一体化された三次元形状造形物を製造する方法において、
当該方法は、焼結層に各焼結層間を連通するクラックを発生させる工程を含み、
クラックは、粉末材料の層の焼結層においてクラックを発生させる箇所に、クラックを発生させる添加粉末を供給して、光ビームを照射することで選択的に形成されることを特徴とする三次元形状造形物の製造方法。
【請求項2】
粉末材料は、鉄系粉末と、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方と、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方と、を含む混合粉末で、その配合比率は、鉄系粉末が60〜90重量%、ニッケルまたはニッケル系合金粉末の少なくとも一方が5〜35重量%、銅または銅系合金粉末の少なくとも一方が5〜15重量%であり、
クラックを発生させる添加粉末は、硫黄、シリコン、リンから選ばれる少なくとも1種を含む粉末であり、その供給量は、粉末材料とクラックを発生させる添加粉末の総重量の0.1〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項3】
焼結層を形成した後に、焼結されなかったクラックを発生させる添加粉末を回収することを特徴とする請求項1または2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項4】
焼結層を形成した後に、それまでに製造した造形物における表面部または不要部分の少なくとも一方の切削除去を行う工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項5】
三次元形状造形物が射出成形用金型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−291317(P2008−291317A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138093(P2007−138093)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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