説明

三次元撮像のためのデータ取得方法

【課題】計測された三次元オブジェクト・シーンの迅速な自動化されたオブジェクト分類化を可能にする方法。
【解決手段】データ取得中または取得したデータを使用しての計測手順中など、三次元計測手順中においてこの方法を実施することができる。種々の実施例において、オブジェクト・シーンが光ビームで照らされ、画像が取得される。実施例によっては、オブジェクト・シーンが構成された光ビームで照らされ、異なる空間位相のパターンによって照らされたオブジェクト・シーンの画像のシーケンスが取得される。一つまたは複数の画像における複数の点の座標が求められ、前記点のそれぞれについて半透明度の値が求められる。前記点の半透明度の値に基づいて各点のオブジェクト・クラスが決められる。オプションとして、オブジェクト・クラスの決定を補助するため、各点についてグレイスケールまたカラー画像データのような追加の情報を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概して口腔内の空隙の三次元(3D)撮像に係る。より具体的には、この発明は、オブジェクト・シーンの3D計測においてオブジェクトの異なるクラスの間を差別化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2010年9月10日に米国でなされた仮特許出願第61/381,731号(名称:三次元口腔内スキャナのためのデータ処理およびディスプレイの方法)の利益を主張する。
【0003】
典型的な歯科または医療用の3Dカメラまたはスキャナ撮像システムにおいては、オブジェクト・シーン(object scene)における一つまたは複数のオブジェクト表面の2次元(2D)の一連の強度画像が取得され、各画像の照度は一様でない。システムによっては、体系化された光パターンが表面に投影され、それぞれ2Dの強度画像において検出される。たとえば、投影される光パターンは、1対のコヒーレントな(干渉性の)光ビームをオブジェクト表面に投射することによって生成することができ、こうして得られる縞のパターンは連続する2D画像の間で一様ではなかった。また、投影される光パターンは、強度マスクを使って生成される一連の投射された平行線であってもよく、こうして投影されたパターンは、連続する2D画像の間で位置がずれた。さらに他のタイプの3D撮像システムでは、共焦点の(confocal)撮像のような技術が使用される。
【0004】
ダイナミック3D撮像システムでは、カメラまたはスキャナがオブジェクト・シーンと相対的に動いている間に一連の3Dデータ・セットが取得される。たとえば、撮像システムは、ユーザが手動でオブジェクト・シーンに関して位置づけることができるウォンド(wand、棒状のエレメント)または取っ手の付いたデバイスであってもよい。応用によっては、デバイスをオブジェクトに関して動かすことにより複数のオブジェクトの表面を計測することができるので、ある位置においてデバイスの視野からぼやけた表面は、別の位置でデバイスによって計測されることができる。たとえば、歯科の分野では、静的な視野における歯その他の歯科的特徴(features)は、他の歯の見え方をぼかすことがある。処理ユニットがすべての3Dデータの重なり合った領域を登録し、計測手順の間に観測されたすべての表面の完全な3Dデータ・セット表現(representation)を得る。
【0005】
3D計測の結果は解釈するのが難しい。たとえば、口内空洞の計測は、歯、人工の歯科構造物および歯茎のような異なるクラスのオブジェクトについての3Dデータを典型的に含む。3Dデータは、3D表面マップ表現の形または3D点クラウド(cloud、雲)の形の点のディスプレイ表示のような異なるグラフィック形式でユーザに提示されることができる。ディスプレイに表された異なる構成の間の差別化は、問題が多く、ディスプレイにおける特徴(features)を適切に解釈するには大きな努力を必要とする。場合によっては、臨床医は、別々のオブジェクトの隣接する部分を区別することができないかもしれない。たとえば、歯科の専門家にとって、歯茎とエナメルまたは象牙質との間の境界を正確に認識することは困難なことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、口内空洞(intra-oral cavity)の画像についてオブジェクトを分類する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一面において、この発明は、口内空洞の画像についてオブジェクトを分類する方法を提供する。この方法は、口内空洞の少なくとも一部分を光りビームで照らし、照らされた部分の画像を取得することを含む。画像の複数の点について座標が決められ、それぞれの点について半透明値が求められる。オブジェクトのクラスは、それぞれの点について、その点の半透明値に基づいて判定される。
【0008】
もう一つの面によると、この発明は、オブジェクト・シーンの3Dデータのオブジェクト分類の方法を特徴とする。この方法は、オブジェクト・シーンを構成された光パターンで照らし、照らされたオブジェクト・シーンの画像を取得することを含む。所得された画像に基づいてオブジェクト・シーンにおける複数の点について座標が決められる。それぞれの点について半透明値が決められ、それぞれの点についてその点の半透明値に基づいてオブジェクト・クラスが求められる。
【0009】
さらに他の面によると、この発明は、オブジェクト・シーンの3Dデータのオブジェクト分類の方法を特徴とする。この方法は、それぞれ異なる空間位相をもつ構成された光パターンのシーケンスでオブジェクト・シーンを照らすことを含む。構成された光パターンのそれぞれについてオブジェクト・シーンの画像が取得される。取得された画像に基づいてオブジェクト・シーンにおける複数の点の座標が決められる。取得された画像に基づいてそれぞれの点のバックグラウンド強度値(intensity、輝度値)が決められ、その点のバックグラウンド強度値に基づいてオブジェクト・クラスが求められる。
【0010】
さらにもう一つの面によると、この発明は、オブジェクト・シーンのオブジェクト分類のための装置を特徴とする。この装置は、オブジェクト・シーンを照らす照明源と、撮像装置およびこの撮像装置と通信するプロセッサを備える。撮像装置は、照らされたオブジェクト・シーンの画像を取得しそのオブジェクト・シーンの2D画像データを含む出力信号を出力するよう構成されている。プロセッサは、2D画像データに応じて画像に表される複数の座標の半透明値を決めるよう構成されている。プロセッサは、座標の半透明値に応じて座標のそれぞれについてオブジェクト・クラスを決める。
【0011】
さらにもう一つの面では、この発明は、オブジェクト・シーンのオブジェクト分類のための装置を特徴とする。この装置は、投影機(プロジェクタ)、撮像装置および撮像装置と通信するプロセッサを備える。プロジェクタは、オブジェクト・シーンを構成された光パターンのシーケンスで照らすよう構成されている。撮像装置は、シーケンスにおけるそれぞれの構成された光パターンについて照明されたオブジェクト・シーンの画像を取得するよう構成されている。撮像装置は、画像のそれぞれについてオブジェクト・シーンの2D画像データを含む出力信号を出力する。プロセッサは、オブジェクト・シーンの3D座標を求め、そのシーケンスの2D画像データに応じて3D座標のそれぞれについての半透明値を求めるよう構成されている。プロセッサは、3D座標の半透明値に応じて3D座標のそれぞれについてオブジェクト・クラスを求める。
【0012】
この発明の上述の利点およびさらなる利点は、図面と関連して以下の説明を参照することにより明らかになる。図において参照番号は構造エレメントおよび事項を示す。説明のため、すべての図においてすべてのエレメントにラベルをつけることはしていない。図は必ずしも等倍ではなく、この発明の原理を示すために強調がなされている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オブジェクト・シーンの3D画像を得るために使用することができる計測システムの例を示すブロック図。
【図2】口内空洞の3D計測データを得るのに使用される3D計測システムの一部である操作可能なウォンドを示す図。
【図3】図2のウォンドを使用して上部歯列弓を3D計測する方法を示す図。
【図4】この発明に従って歯列弓の3D表面データを分類する方法の実施例のフローチャート。
【図5】もう一つの実施例におけるオブジェクト・シーンの3Dデータのオブジェクト分類の方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に示される例示的な実施例を参照して教示内容を詳細に説明する。この教示内容は、種々の実施例および例に関連して説明するが、この発明がそれらの実施例に限定されることを意図していない。そうではなく、この発明は、当業者にとって明らかなように、種々の代替物、修正、および均等物を包含する。この発明にアクセスする当業者は、追加的な実行、修正および実施例、他の用途分野などを認識するであろうし、それらはここに説明するこの発明開示の範囲内のものである。
【0015】
この発明の方法は、動作可能な態様でのここに記載される任意の実施例およびその組み合わせを含む。まず全体的に説明すると、この発明の実施例の方法は、計測された3Dオブジェクト・シーンの迅速な自動化されたオブジェクト分類を可能にする。この明細書でオブジェクト分類は、計測されたオブジェクトについて複数のありうるオブジェクト・クラスからオブジェクトのタイプまたはクラスを決めることをいう。この方法は、データ取得中の3D計測手順において実行することができる。代替的に、この方法は、既に取得したデータで計測手順を完了した後に実施することもできる。種々の実施例において、オブジェクト・シーンは、光ビームで照らされ、画像が取得される。画像の点について座標が決められ、点のそれぞれについて半透明値が求められる。オブジェクト・クラスは、それぞれの点についてその点の半透明値に基づいて決められる。オプションとして、角点のグレイスケールまたは画像データがオブジェクト・クラスを決定するための補助として使用される。
【0016】
以下に説明する具体的な実施例では、この方法は、歯科分野において臨床医によって行われる計測のような、口内空洞の3D計測中またはその後の3Dデータについてのオブジェクト分類に関する。計測された表面は、歯のエナメル面、歯の象牙質構造、歯茎、その他種々の歯科構造物(支柱(post)、挿入物および充填物)および柔らかい組織(たとえば、舌、唇)を含むことができる。口内空洞計測の3D計測データの分類は、異なるオブジェクト・クラスに対応する3Dデータの間の区別を可能にする。異なるタイプのオブジェクトを区別する能力は、計測されたオブジェクト・シーンにおけるオブジェクト・クラスを示す態様で3D計測データがディスプレイ表示されることを可能にする。さらに、関心のないオブジェクトからの3D計測データは、そのように扱うことができる。たとえば、口内空洞計測分野において計測視野における舌または唇の動きは、妨げになるオブジェクトkらデータが取得されるようにすることがある。望まないデータは、廃棄するなどして所望のオブジェクト・シーン、すなわち歯および歯茎の計測を阻害することがないようにしなければならない。この方法は、複数のオブジェクト・クラスをもつオブジェクト・シーンについて3D計測データが取得される医療その他の分野で使用することもできる。
【0017】
以下に説明する実施例では、3D計測システムは、干渉縞投影その他の技術によって生成される構成された照射パターンを使用する。撮像コンポーネントは2D画像を取得し、これがオブジェクトの構成された照射に基づいてオブジェクト表面の点の位置情報を求めるために使われる。
【0018】
米国特許5,870,191は、干渉縞の投影に基づく3D計測に使用することができるアコーディオン縞干渉法(Accordion Fringe Interferometry、AFI)を記述している。AFIベースの3D計測システムは、オブジェクト表面に干渉縞パターンを投影するために、典型的には2つの近接しておかれたコヒーレント光源を使用する。縞パターンの画像は、縞パターンの少なくとも3つの空間相(spatial phase)に対して取得される。
【0019】
図1は、一つまたは複数のオブジェクト22の3D画像を得るために使用されるAFIベースの3D計測システムを示す。縞投影機(fringe projector、縞プロジェクタ)18によって発生された2つのコヒーレント光ビーム14Aおよび14Bが干渉縞26のパターンでオブジェクト22の表面を照射するのに使用される。オブジェクト22での縞パターンの画像が、撮像システムまたはレンズ30によって光検出器34のアレイを含む撮像装置に形成される。たとえば、検出器アレイ34は2次元の電荷結合デバイス(CCD)撮像アレイであってよい。検出器アレイ34によって発生された出力信号はプロセッサ38に提供される。この出力信号はアレイ34の各光検出器で受け取られた光の強度についての情報を含んでいる。光偏光子42が散乱光の主たる偏光成分と合致するように指向されている。制御モジュール46が縞投影機18から放射された2つのコヒーレント光ビーム14のパラメータを制御する。制御モジュール46は、2つのビーム14の位相差を調整するための位相シフトコントローラ50、およびオブジェクト22における干渉縞26のピッチまたはスペクトルを調節するための空間周波数コントローラ54を含む。
【0020】
縞パターンの空間周波数は縞投影機18におけるコヒーレント光放射の2つの仮想光源の分離、仮想光源からオブジェクト22までの距離、および放射の波長によって求められる。この仮想光源は、光放射が出されている見かけ状の点であり、光放射の実際の光源はどこかほかに位置していてよい。プロセッサ38および制御モジュール46は、位相差および空間周波数の変化に関し、光検出器アレイ34からの信号の処理を調和させるため通信し、プロセッサ38は、縞パターンの画像に従ってオブジェクト表面についての3D情報を判断する。
【0021】
プロセッサ38は、縞パターンの連続する位相シフトの後に生成される一連の2次元画像におけるピクセルの強度に基づき、各ピクセルについて撮像システム30および検出器アレイ34からオブジェクト表面までの距離を計算する。こうしてプロセッサはオブジェクト表面を表す点のクラウド(cloud、雲)すなわち表面マップとしてディスプレイすることができる1組の3D座標を生成する。プロセッサ38は、計測手順の間に生成される3Dデータを格納するためのメモリモジュール58と通信する。ユーザ・インターフェイス62は、入力デバイスおよびディスプレイを含んでおり、臨床医のようなオペレータが操作コマンドを入力し、取得された3D情報をリアルタイムに近い態様で観察すること可能にする。たとえば、オブジェクト22の表面の異なる領域が計測され追加的な3D計測データが取得されるにつれて、オペレータは、点クラウドすなわち表面マップのグラフィック表現の成長のディスプレイを観察することができる。
【0022】
図2は、口内空洞の3D計測データを得るのに使用することができる操作可能なウォンド66の形の手持ち式の3D計測デバイスを示す。ウォンド66は、可撓性のケーブル74に結合されている本体部分70を含む。ウォンド66は、その投射端82の近くから投射され計測すべき表面を照射する構成された光パターン78を生成する。たとえば、構成された光パターン78は、図1に関連して説明したAFI計測システムの原理に基づく干渉縞パターンであってよい。ウォンド66は、歯列弓の一部分の3Dデータを取得するのに使用してもよい。ウォンドは臨床医によって口内空洞内で操作されてよく、構成された光パターン78で照射することができるすべての表面について3Dデータを得ることができる。
【0023】
図3は、図2のウォンド66のような手持ちの3D計測デバイスを使用して上部歯列弓を計測する応用を示す。この例では、ウォンド66は、AFIタイプの3D計測システムの操作可能なコンポーネントである。歯列弓のほお側のスキャンの一部の間に、ウォンド66から縞が計測視野94において歯86および付近のゴム質組織90に投影される。この計測スキャンから得られる3Dデータは、は86および歯茎90の計測表面を示す3D点クラウドすなわち表面マップ(たとえば、ワイヤーフレーム表現)として臨床医にディスプレイ表示されるのが好ましい。
【0024】
図1も参照すると、撮像アレイ34が計測視野94内で歯86および付近の歯茎90に投影された縞パターンの画像を受け取る。エナメルの半透明性により、投影された縞パターンのいくつかは歯86の表面を浸透し表面下(subsurface)領域で散乱される。散乱光は、典型的には縞パターンの画像の品質を低下させる。半透明の度合いが、表面を浸透し散乱する縞パターンの光量を決める。表面下の領域からの散乱光の寄与が表面での縞照明からの散乱光の寄与より大きいならば、画像における縞パターンの見かけ上の位置(すなわち、見かけ上の位相)は、歯86の表面上の縞パターンの実際の位置とは異なる。縞プロジェクタ18は表面知覚の内部拡散を増大させる照明波長を使用する。たとえば、縞照明は紫外線またはより短い可視波長(たとえば、約350 mmから500 mm)を含むことができ、これらの波長は、長い波長よりも表面でより多くの散乱を生じ、表面下への浸透はより小さい。さらに、縞パターンは、浅い表面下領域から散乱する光が縞パターンの画像へのほぼ均一なバックグランド光寄与になるよう、高い空間周波数をもつように構成するのが好ましい。歯86のための3Dデータを求めるための2D画像の処理中は、表面下領域からのバックグラウンド寄与は無視される。さらに、表面下領域からの空間的に変化する輝度の寄与によって生じる残留誤差(residual error)の程度は、前記寄与がそれぞれの歯86の表面下の浅い領域に制限されるのでより小さい。実施例では、投影される縞パターンの波長は、405 mmであり、歯の表面における縞パターンの空間周波数すなわちピッチは、少なくとも1 縞/mm (1 mmあたり1つの縞)である。
【0025】
図4は、オブジェクト・シーンの3Dデータのためのオブジェクト分類の方法100の実施例のフローチャートである。方法100は、構成された光パターンでオブジェクト・シーンを照明することを含む(ステップ110)。例として、構成された光パターンは、コヒーレント(干渉性の)光ビームの干渉またはシャドウマスク投影によって生成されるストライプ状の輝度パターンであることができる。照明されたオブジェクト・シーンの画像が取得される(ステップ120)。応用によっては、オブジェクト・シーンは、3D撮像デバイスの計測視野に対応し、計測視野がより大きいオブジェクト・シーンの他の領域を含むよう撮像デバイスを操作することによりより大きなオブジェクト・シーンが計測される。オブジェクト・シーンの表面上の3D点の座標は、取得された画像から決められる(ステップ130)。
【0026】
それぞれの計測された3D点の半透明値が決められる(ステップ140)。オブジェクト・シーンは、互いに区別できるオブジェクトを含むことができる。たとえば、2つのオブジェクトは、異なる半透明性を示す異なる材料で構成されていることがある。こうして、前記点について、半透明性を利用してオブジェクトのタイプ、すなわちオブジェクト・クラスを決めることができる(ステップ150)。オブジェクトの分類は、半透明度の値を異なるタイプのオブジェクトに関連する一つまたは複数のしきい値と比較することに基づくことができる。たとえば、オブジェクトの分類は、半透明度の値の複数のレンジ(範囲)のうちどのレンジが前記点の半透明度の値を含むかを判定して行うことができる。この例では、半透明度の値の各レンジが特異なオブジェクト分類に対応する。オプションとして、対応するオブジェクトの表面から散乱される光の大きさに対応する反射値を、半透明度の値と組み合わせて使用してオブジェクト・クラスを判定することができる。この場合、反射値は、半透明度の値と組み合わせて、種々のオブジェクト・クラスに関連する複数の反射しきい値またはしきい値のレンジと比較される。
【0027】
オブジェクト・シーンのグラフィック・ディスプレイ表示が生成される(ステップ160)。このディスプレイ表示は、前記点のそれぞれについてのオブジェクト・クラスの表示を含む。たとえば、ディスプレイ表示は、3D表面マップ表現であってよく、ワイヤフレーム表現、表面エレメント描画などがオブジェクト・クラスを示すために異なる色で表示される。それぞれの点のオブジェクト・クラスを示すためにその他のグラフィック・パラメータを使うことができる。別の例では、ディスプレイ表示は、3D点クラウドであることができ、各点がそのオブジェクト分類に関連する色をもつ。実施例によっては、グラフィック・ディスプレイ表示は、オブジェクト・シーンの異なる領域を区分し区別するための境界線などの特徴をグラフィック・オブジェクトに含ませることができ、異なるオブジェクトが容易に認識される。
【0028】
オプションとして、オブジェクト・シーンの照明された領域のカラー画像が取得される。各点について得られたカラーデータは、前記点のオブジェクト・クラスを決めるため、前記点の半透明度の値と組み合わせて使われることができる。カラー画像は、白光源またはブロードバンド光源のような補助光源または消極照明(passive lighting)の下で取得することができ、カラーによる区別を行う能力を改善するのに使用することができる。代替実施例では、赤、緑、青の発光ダイオード(LED)のようなスペクトル光源の連続動作を使用してRGB画像を生成する。このようにして、単色(monochromatic)里増装置を使用してオブジェクト分類を補助するカラーデータを生成することができる。
【0029】
別のオプションでは、オブジェクト・シーンの照明された領域のグレイスケール画像が取得される。それぞれの点のオブジェクト・グレイスケール値は、前記点の半透明度の値と組み合わせて使用され、前記点のオブジェクト・クラスが求められる。グレイスケール画像は、消極照明または補助光源を使用して取得することができる。
【0030】
図5は、オブジェクト・シーンの3Dデータのオブジェクト分類方法200の実施例のフローチャートである。方法200は、異なる空間位相の構成された光パターンのシーケンスでオブジェクト・シーンを照明することを含む(ステップ210)。構成された光パターンは、一方向に正弦曲線の輝度変化をもつ干渉輝度パターンであるのが好ましい。正弦曲線の輝度変化は、たとえば、図1に関して上述した2つのコヒーレント・ビームの干渉によって生成される。前記シーケンスは、それぞれが他の2つの正弦曲線輝度パターンから120度オフセットされている空間位相をもつ1組の3つの正弦曲線輝度パターンを含むのが好ましい。
【0031】
前記シーケンスの光パターンのそれぞれについて、照明されたオブジェクト・シーンの画像が取得される(ステップ220)。構成された光パターンのシーケンスの画像に基づいてオブジェクト・シーンの複数の点について3Dデータが求められる(ステップ230)。
【0032】
画像のシーケンスからそれぞれの点のバックグラウンド輝度値が計算される(ステップ240)。概して、オブジェクト・シーンの点のバックグラウンド輝度値は、オブジェクト・シーンを照らす他の光源が低レベルに維持され、画像取得時間が十分短ければ、主として、その点に関連するオブジェクトの半透明度による。こうしてバックグラウンド輝度値は、前記点の半透明性(すなわち、半透明度の値)の目安として使用することができる。3つの正弦曲線の輝度パターンの投影に基づく実施例では、ある点のバックグラウンド輝度値は、まず正弦曲線の輝度変化を、照明されたオブジェクト・シーンの2D画像におけるその点の箇所についての3つの輝度値に数学的に当てはめる(fit)ことによって求める。たとえば、この数学的当てはめは、正弦関数の最小二乗法であることができる。バックグラウンド輝度は、前記シーケンスの全ての画像に存在し、コントラストを低下させる。バックグラウンド輝度の値は、当てはめられた正弦関数の最小値として求められる。
【0033】
バックグラウンド輝度値は、半透明度の値に密接に関係しているので、バックグラウンド輝度のレベルを前記点についてのオブジェクトのタイプ、すなわちオブジェクト・クラスを決めるために使用することができ、たとえば、バックグラウンド輝度値を、異なるタイプのオブジェクトに関連する一つまたは複数のしきい値またはバックグラウンド輝度値のレンジと比較することによって決めることができる。さらに別の実施例では、オブジェクト分類は、オブジェクト分類が、当てはめられた正弦関数の最大値を一つまたは複数のしきい輝度値と比較することを含む、2ステップの比較を含んでいる。
【0034】
オブジェクト・シーンのグラフィック・ディスプレイ表示が生成され(ステップ260)、点のそれぞれについてオブジェクト・クラスの表示を含む。ディスプレイは、図4に関連して上述したように、表面マップ表現の任意のタイプまたは3D点クラウドであることができ、カラーその他のグラフィックの特徴が異なるオブジェクト・クラスおよび構成を示すために使われる。オプションとして、オブジェクト・シーンのカラーまたはグレイスケールの画像が取得され、バックグラウンド輝度値と組み合わせて使用され、オブジェクト・クラスの判定が行われる。
【0035】
上述の実施例は、主として構成された光パターンを使用してオブジェクト・シーンが照明される場合のオブジェクト分類に関するものであったが、半透明性の判定によるオブジェクト分類もより一般的な照明条件の下で実施することができる。たとえば、オブジェクト上の点または領域についての半透明性が決められる任意の態様で、オブジェクト・シーンを光ビームで照射することができる。光コヒーレンス・トモグラフ(optical coherence tomography, OCT)システムおよび共焦点検鏡法(confocal microscopy)システムは、半透明計測およびオブジェクト分類のために使うことができる計測システムの例である。波長すなわち空間幅のような光ビームの特性は、異なるオブジェクト・クラスの間を区別するのに最も助けになるよう選ぶことができる。さらに、オブジェクト/シーンのグレイスケールまたはカラー画像は、オブジェクト分類の能力を改善するため種々の実施例で利用することができる。
【0036】
この発明を特定の実施例に関して説明したが、特許請求の範囲に記載されるこの発明の精神および範囲から離れることなく種々の変更が可能であることは、当業者にとって自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口内空洞の画像のオブジェクト分類の方法であって、
口内空洞の少なくとも一部分を光りビームで照明することと、
前記口内空洞の照明された部分の画像を取得することと、
前記画像の複数の点について座標を決めることと、
前記点のそれぞれについて半透明度の値を決めることと、
前記点の半透明度の値に基づいて前記点のそれぞれについてオブジェクト・クラスを決めることと、
を含む方法。
【請求項2】
前記オブジェクト・クラスを決めることは、前記半透明度の値をオブジェクト・クラスに関連する少なくとも一つのしきい値と比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに各点についてオブジェクトのカラーを決めることを含み、各点のオブジェクト・クラスを決めることは、前記半透明度の値および前記オブジェクトのカラーに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各点について、オブジェクト・グレイスケール値を決めることを含み、各点のオブジェクト・クラスを決めることは、前記半透明度の値および前記オブジェクト・グレイスケール値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記座標は、前記口内空洞のオブジェクト表面の3D座標である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記座標は、前記口内空洞の画像の2D座標である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
オブジェクト・シーンの三次元(3D)データのオブジェクト分類の方法であって、
構成された光パターンでオブジェクト・シーンを照らすことと、
照らされたオブジェクト・シーンの画像を取得することと、
前記オブジェクト・シーンの複数の点の座標を、前記取得された画像に基づいて決めることと、
各点について、半透明度の値を決めることと、
前記半透明度の値に基づいて各点のオブジェクト・クラスを決めることと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記オブジェクト・シーンを照らすことは単一波長をもつ光を投射することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記オブジェクト・シーンを照らすことは、複数の波長をもつ光を投射することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記オブジェクト・シーンを照らすことは、連続する波長スペクトルをもつ光を投射することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記座標は、前記オブジェクト・シーンの3D座標である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
各点のオブジェクト・クラスを決めることは、前記半透明度の値をオブジェクト・クラスに関連する少なくとも一つのしきい値と比較することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
さらに各点についてオブジェクト・カラーを求めることを含み、前記各点についてオブジェクト・クラスを決めることは、前記半透明度の値および前記オブジェクト・カラーに基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
さらに各点についてオブジェクト・グレイスケールを求めることを含み、前記各点についてオブジェクト・クラスを決めることは、前記半透明度の値および前記オブジェクト・グレイスケールに基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
さらに前記座標にしたがって前記点のグラフィック・ディスプレイ表示を生成することを含み、前記点のそれぞれはその点のオブジェクト・クラスを示すグラフィック表現を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記座標は2D画像の座標である、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
さらに2D画像座標のグラフィック・ディスプレイ表示を生成することを含み、前記2D画像座標のそれぞれは該2D画像座標のオブジェクト・クラスを示すグラフィック表現をもつ、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記グラフィック・ディスプレイ表示を生成することは、前記オブジェクト・シーンの点の3D表面マップ表現を生成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記グラフィック・ディスプレイ表示を生成することは、3D点クラウド・ディスプレイ表示を生成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
オブジェクト・クラスを示す前記グラフィック表現はカラーである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記オブジェクト・クラスは、歯、歯茎およびソフト組織を含むグループの中の少なくとも2つのオブジェクト・クラスを含む複数のオブジェクト・クラスから求められる、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
オブジェクト・シーンの三次元(3D)データのオブジェクト分類の方法であって、
異なる空間位相をもつ構成された光パターンのシーケンスでオブジェクト・シーンを照明することと、
前記構成された光パターンのそれぞれについてオブジェクト・シーンの画像を取得することと、
前記取得された画像に基づいてオブジェクト・シーンの複数の点の座標を求めることと、
各点について、前記取得された画像に基づいてバックグラウンド輝度値を求めることと、
前記バックグラウンド輝度値に基づいて各点のオブジェクト・クラスを求めることと、
を含む方法。
【請求項23】
前記バックグラウンド輝度値は前記オブジェクト・シーンの前記点の半透明性に応答する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
さらに各点についてオブジェクト・カラーを求めることを含み、各点の前記オブジェクト・クラスを求めることは、前記バックグラウンド輝度値および前記オブジェクト・カラーに基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
さらに各点についてオブジェクト・グレイスケール値を求めることを含み、各点の前記オブジェクト・クラスを求めることは、前記バックグラウンド輝度値および前記オブジェクト・グレイスケール値に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記バックグラウンド輝度値を求めることは、
正弦曲線の輝度関数を計算し、前記シーケンスにおける画像の前記点についての輝度値に数学的に当てはめることを含み、前記正弦曲線の輝度関数は、最大値および最小値をもち、
前記バックグラウンド輝度値を前記正弦曲線輝度関数の最小値として求めることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記オブジェクト・クラスを求めることは、バックグラウンド輝度値をオブジェクト・クラスに関連する少なくとも一つのしきい値と比較することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
さらに前記座標にしたがって前記点のグラフィック・ディスプレイ表示を生成することを含み、前記点のそれぞれは、前記点のオブジェクト・クラスを示すグラフィック表現を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記グラフィック・ディスプレイ表示を生成することは、前記オブジェクト・シーンにおける前記点の表面マップ表現を生成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記グラフィック・ディスプレイ表示を生成することは、3D点クラウド・ディスプレイ表示を生成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記オブジェクト・クラスを示す前記グラフィック表現は、カラーである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記オブジェクト・クラスは、歯、歯茎およびソフト組織のグループのうちの少なくとも2つのオブジェクト・クラスを含む複数のオブジェクト・クラスから求められる、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
オブジェクト・シーンのオブジェクト分類のための装置であって、
オブジェクト・シーンを照明する照明源と、
照明されたオブジェクト・シーンの画像を取得し、前記オブジェクト・シーンの2次元(2D)画像データを含む出力信号を提供するよう構成されたそつ増装置と、
前記撮像装置と通信し、前記2D画像データに応じて前記画像に表される複数の座標について半透明度の値を求めるよう構成されたプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記座標の半透明度の値に応じて前記座標のそれぞれについてオブジェクト・クラスを判定する、
前記オブジェクト分類のための装置。
【請求項34】
前記プロセッサは、前記2D画像データに応じて前記座標のそれぞれについてカラーを決め、前記座標の前記半透明度の値および前記カラーに応じて前記座標のそれぞれについてオブジェクト・クラスを決定する、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記プロセッサは、前記2D画像データに応じて前記座標のそれぞれについてオブジェクト・グレイスケール値を決め、前記座標の前記半透明度の値および前記オブジェクト・グレイスケール値に応じて前記座標のそれぞれについてオブジェクト・クラスを決める、請求項33に記載の装置。
【請求項36】
オブジェクト・シーンのオブジェクト分類のための装置であって、
構成された光パターンのシーケンスでオブジェクト・シーンを照らすよう構成されたプロジェクタと、
前記シーケンスの構成された光パターンのそれぞれについて照らされたオブジェクト・シーンの画像を取得するよう構成された撮像装置と、を備え、該撮像装置は、前記画像のそれぞれについて前記オブジェクト・シーンの2次元(2D)画像データを含む出力信号を提供し、
前記撮像装置と通信し、前記シーケンスについての前記2D画像データに応じて、前記オブジェクト・シーンについて三次元(3D)座標および該3D座標のそれぞれについて半透明度の値を決めるよう構成されたプロセッサと、を備え、該プロセッサは、前記3D座標の前記半透明度の値に応じて前記3D座標のそれぞれのオブジェクト・クラスを決める、
前記オブジェクト分類のための装置。
【請求項37】
前記プロセッサは、前記2D画像データに応じて前記3D座標のそれぞれについてカラーを決め、前記3D座標の前記半透明度の値および前記カラーに応じて前記3D座標のそれぞれについて前記オブジェクト・クラスを決める、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記プロセッサは、前記2D画像データに応じて前記3D座標のそれぞれについてオブジェクト・グレイスケール値を決め、前記3D座標についての前記半透明度の値および前記オブジェクト・グレイスケール値に応じて前記3D座標のそれぞれについて前記オブジェクト・クラスを決める、請求項36に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−59268(P2012−59268A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195659(P2011−195659)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(511195655)ディメンジョナル フォトニクス インターナショナル,インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】DIMENSIONAL PHOTONICS INTERNATIONAL,INC.
【Fターム(参考)】