説明

三次元造形装置及び三次元造形方法

【課題】サポート材の除去を容易にしつつも、取り扱いし易さを維持させる。
【解決手段】制御手段が、水平駆動手段でヘッド部20を一方向に往復走査させて、造形材吐出手段によりモデル材MA及びサポート材SAを造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、硬化手段24でモデル材MA及び/又はサポート材SAを硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御してなり、サポート材SAは、外表面に該サポート材SAと異なる材質のサポート殻SSを設けてなり、サポート殻SSは、サポート材SAよりも剛性の高い材質で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式で立体造形物を作製する三次元造形装置及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造形物を平行な複数の面で切断した各断面毎に樹脂を順次積層することよって立体造形を行い、造形物の三次元モデルとなる造形物を生成する装置が知られている。特に製品開発において試作等に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping:RP)の分野では、三次元造型が可能な積層造形法が利用されている。積層造形法は、製品の三次元CADデータをスライスし、薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙等の材料を積層して試作品を作成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が知られている。この内、インクジェット法は、液化した材料を噴射した後、紫外光(UV)を照射したり、冷却する等によって層を硬化させて形成する。この方法によれば、インクジェットプリンタの原理を応用できることから、高精細化が容易となる利点が得られる。
【0003】
樹脂積層方式の三次元造形装置は、最終的な造形物となるモデル材と、モデル材の張り出し(オーバーハング)部分を支え、最終的に除去されるサポート材をXY方向に走査しながら造形プレート上に吐出し、高さ方向に積層していくことにより、造形を行う。モデル材とサポート材は、紫外光を照射することにより硬化する特性を有する樹脂で構成されている。紫外光を照射する紫外光ランプを、モデル材とサポート材を吐出するノズルと共に、XY方向に走査し、ノズルから吐出されたモデル材およびサポート材に紫外光を照射して硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このサポート材は最終的に除去されるものであるため、除去し易さを考慮すれば、ある程度の柔らかさや柔軟性を備えた材質とすることが好ましい。しかしながら、サポート材に使用する樹脂の特性によっては、このような柔らかい樹脂では熱や湿度によって変形や潮解し易いという問題がある。また、サポート材の強度が低いと、ユーザがこれを持ったときに崩れてしまう。さらに、溶融し易さを考慮してサポート材に非硬化成分を含ませると、サポート材表面がべたつくため、手に持ったユーザに不快感を与えてしまうという問題もある。
【0006】
このような観点に鑑みれば、熱や湿度で変形せず、ユーザが手で触れても崩れないような剛性をサポート材に持たせることが必要となる。また一方で、モデル材の張り出し部分をサポート材で支持するという目的に鑑みても、モデル材を支持できる程度の剛性がサポート材に求められる。
【0007】
しかしながら、剛性を高めると、サポート材を除去する際に、モデル材から剥がれにくくなり、また除去の際にモデル材も一緒に引き剥がされて破損する可能性がある等、サポート材の除去作業が面倒になるという問題もある。このようにサポート材は、除去し易さと、取り扱い易さとで相反する特性が求められているため、このような相反する要求を満たすことのできるサポート材が求められていた。
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、サポート材の除去を容易にしつつも、取り扱いし易さを維持させた三次元造形装置及び三次元造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、前記モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24と、前記造形材吐出手段及び硬化手段24を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材による吐出及び硬化手段24による硬化を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部20を一方向に往復走査させて、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA及びサポート材SAを前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24で前記モデル材MA及び/又はサポート材SAを硬化させることにより、前記スライスを生成し、高さ方向に前記造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御してなり、前記サポート材SAは、外表面に該サポート材SAと異なる材質のサポート殻SSを設けてなり、前記サポート殻SSは、前記サポート材SAよりも剛性の高い材質で構成できる。これにより、サポート材に要求される造形後の除去し易さと、造形時の剛性という相反する特性を、サポート材の外殻にサポート材よりも剛性の高いサポート殻を設けることで解消している。すなわち、造形時においてはサポート殻でサポート材の流出を阻止し、さらに造形後においては、サポート殻で被覆されたサポート材を流出させて、容易にサポート材をモデル材から除去できるようになる。
【0010】
また、第2の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート材SAを、水溶性の材質で構成できる。これにより、造形後に造形物を水槽に満たした水に含浸する等して、サポート材を溶出させてこれを極めて簡単に除去することができる。
【0011】
さらに、第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSを、前記モデル材MAと同じ材質で構成できる。これにより、サポート殻の形成を、モデル材の造形時に合わせて行うことができ、別途異なる造形材を容易にする必要を無くして工数を減らし、また共通の造形材を用いることで製造コストも削減できる。
【0012】
さらにまた、第4の側面に係る三次元造形装置によれば、前記制御手段が、各スライスの形成時に前記サポート材SAの外表面で前記サポート殻SSが形成される位置に、前記モデル材MAを吐出して硬化させ、前記サポート材SAの外表面が薄いモデル材MAで覆われるように前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、サポート材の表面に薄いモデル材を形成してサポート殻を容易に形成できる利点が得られる。
【0013】
さらにまた、第5の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSは、部分的にサポート材SAを露出させた露出部を設けることができる。これにより、造形物の造形後に露出部でサポート殻を破断したり、あるいは造形物を水に含浸して露出部からサポート材を溶出させる等して、サポート殻を造形物から剥離し易くできる。
【0014】
さらにまた、第6の側面に係る三次元造形装置によれば、前記露出部を、前記サポート殻SSの表面に開口された多数の穴53とできる。これにより、造形後に造形物を水に含浸して、穴を介してサポート材を溶出させることができる。
【0015】
さらにまた、第7の側面に係る三次元造形装置によれば、前記露出部を、前記サポート殻SSの表面に、部分的な開口を直線状に設けた切り取り線状51とできる。これにより、切り取り線に沿って手でサポート殻を破断し易くできる。
【0016】
さらにまた、第8の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSを、一定の大きさの小片54を離間させて配列し、該小片54同士の間を露出部とすることができる。これにより、造形後に造形物を水に含浸すると、露出部からサポート材を溶出させてサポート殻が小片に細かく分解されるため、サポート材のより多くの部分が露出されることとなり、一層容易にかつ短時間でサポート材を除去できる利点が得られる。
【0017】
さらにまた、第9の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSに、部分的に肉薄にした溝部を形成することができる。これにより、造形物の造形後に肉薄の溝部でサポート殻を破断し易くできる。特にサポート材を直接外部に露出させないことで、サポート材を空気に触れさせず潮解を回避でき、また露出部分からサポート材が流出する事態を回避できる利点が得られる。
【0018】
さらにまた、第10の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSは、前記モデル材MAで造形される造形物と接触しないように離間して形成できる。これにより、モデル材とサポート殻が連続的に成形される部位を排除し、サポート殻をサポート材から剥離する際に、造形物のモデル材が部分的に破損される事態を回避し、モデル材を除去をスムーズに行えると共に、高品質な造形物を得ることができる。
【0019】
さらにまた、第11の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSは、造形物の外形を簡素化した形状に形成されてなり、前記サポート殻SSとモデル材MAとの間に前記サポート材SAを充填できる。これにより、特に造形物の外形が複雑な場合に、該複雑な外形に沿ったサポート殻を形成しないことで、サポート殻を除去し易くできる利点が得られる。
【0020】
さらにまた、第12の側面に係る三次元造形装置によれば、前記スライスは、前記サポート殻SSを形成する位置を、造形物を構成するモデル材MAよりも外周に位置させることができる。これにより、サポート材の水平方向において間欠的にサポート殻を有しない、サポート材が露出する造形物が形成され、サポート殻が造形物と接合される事態を回避し、サポート材の除去し易さと造形物の保護を図ることができる。
【0021】
さらにまた、第13の側面に係る三次元造形装置によれば、前記スライスは、前記サポート材SAの表面にサポート殻を形成しないスライスを含めることができる。これにより、サポート材の高さ方向において間欠的にサポート殻を有しない、サポート材が露出する造形物が形成され、サポート殻が造形物と接合される事態を回避し、サポート材の除去し易さと造形物の保護を図ることができる。
【0022】
さらにまた、第14の側面に係る三次元造形装置によれば、前記サポート殻SSは、前記サポート材SAの外表面の内、角度が急峻に変化する部位に設けないようにできる。これにより、エッジ部分にはサポート殻が形成されないため、手でサポート殻を破断し易くできる。
【0023】
さらにまた、第15の側面に係る三次元造形方法によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、造形物を載置するための前記造形プレート40上に、前記モデル材MA及び/又はサポート材SAを吐出させる造形材吐出手段及び前記モデル材MA及びサポート材SAを硬化させる硬化手段24を備えるヘッド部20を一方向に往復走査させる往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記モデル材MA及びサポート材SAを前記造形材吐出手段で前記造形プレート40上に吐出させ、他方で前記硬化手段24で前記モデル材MA及び/又はサポート材SAを硬化させ、スライスを生成する工程と、高さ方向に前記造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返す工程と、を含み、前記スライスの生成及び積層工程において、前記サポート材SAの外表面に、該サポート材SAよりも剛性の高い材質で構成されたサポート殻SSが設けることができる。これにより、サポート材に要求される造形後の除去し易さと、造形時の剛性という相反する特性を、サポート材の外殻にサポート材よりも剛性の高いサポート殻を設けることで解消している。すなわち、造形時においてはサポート殻でサポート材の流出を阻止し、さらに造形後においては、サポート殻で被覆されたサポート材を流出させて、容易にサポート材をモデル材から除去できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図2】変形例に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図3】ヘッド部がXY方向に移動される様子を示す平面図である。
【図4】モデル材とサポート材で造形された造形物を示す斜視図である。
【図5】図4の断面図である。
【図6】サポート殻に切り取り線を設けた例を示す斜視図である。
【図7】サポート殻に切れ目を設けた例を示す斜視図である。
【図8】サポート殻に多数の穴を設けた例を示す斜視図である。
【図9】サポート殻を多数の小片で構成した例を示す斜視図である。
【図10】サポート材表面にサポート殻を設けない例を示す断面図である。
【図11】図10のサポート材表面にサポート殻を設けた例を示す断面図である。
【図12】サポート殻をモデル材から水平方向に離間させた例を示す断面図である。
【図13】サポート殻をモデル材から垂直方向に離間させた例を示す断面図である。
【図14】図14(a)はサポート殻をモデル材の表面形状に沿って設けた例を示す水平断面図、図14(b)はサポート殻をモデル材の表面形状を単純化して設けた例を示す水平断面図である。
【図15】ヘッド部の外観を示す斜視図である。
【図16】図15のヘッド部で造形材を吐出する様子を示す平面図である。
【図17】ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置及び三次元造形方法を例示するものであって、本発明は三次元造形装置及び三次元造形方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0026】
本発明の実施例において使用される三次元造形装置とこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232xやRS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において三次元造形装置とは、三次元造形装置本体のみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた三次元造形システムも含む意味で使用する。
【0027】
また、本明細書において三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形プログラムは、三次元造形を行うシステムそのもの、ならびに画像生成に関連する入出力、表示、演算、通信その他の処理をハードウエア的に行う装置や方法に限定するものではない。ソフトウエア的に処理を実現する装置や方法も本発明の範囲内に包含する。例えば汎用の回路やコンピュータにソフトウエアやプログラム、プラグイン、オブジェクト、ライブラリ、アプレット、コンパイラ、モジュール、特定のプログラム上で動作するマクロ等を組み込んで画像生成そのものあるいはこれに関連する処理を可能とした装置やシステムも、本発明の三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体に該当する。また本明細書においてコンピュータには、汎用あるいは専用の電子計算機の他、ワークステーション、端末、携帯型電子機器、PDCやCDMA、W−CDMA、FOMA(登録商標)、GSM、IMT2000や第4世代等の携帯電話、PHS、PDA、ページャ、スマートフォンその他の電子デバイスも包含する。さらに本明細書においてプログラムとは、単体で使用されるものに限られず、特定のコンピュータプログラムやソフトウエア、サービス等の一部として機能する態様や、必要時に呼び出されて機能する態様、OS等の環境においてサービスとして提供される態様、環境に常駐して動作する態様、バックグラウンドで動作する態様やその他の支援プログラムという位置付けで使用することもできる。
(実施例1)
【0028】
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。この三次元造形システム100は、造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
【0029】
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることにより造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。
【0030】
コンピュータPCは、三次元形状の造形物、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材にて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。
(スライス)
【0031】
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
【0032】
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が未硬化の状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。
【0033】
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
【0034】
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
【0035】
また、造形物が張り出した、いわゆるオーバーハング形状の場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる
【0036】
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
【0037】
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
【0038】
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20を一方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
【0039】
この制御手段10は、一回の往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
(造形材)
【0040】
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。図4に、球状のモデル材MAの周囲を直方体状のサポート材SAで覆うようにして造形された造形物の斜視図を、図5にこの断面図を、それぞれ示す。
(硬化手段24)
【0041】
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材も紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。あるいはモデル材として熱硬化性樹脂を使用する場合は、硬化手段24は冷却気体を照射する冷却手段が利用できる。
(モデル材MA)
【0042】
またモデル材として、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
【0043】
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
【0044】
サポート材SAは、除去可能な材料として、水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
【0045】
サポート材は、最終的に除去されるため、除去しやすいような特性が求められる。例えば水溶性のサポート材は、造形物が造形された後、水槽に投入することでサポート材を溶融させて除去することができる。一方で、サポート材の可溶性を高めるほど、サポート材の強度が低下し、湿度が高いと潮解し、型崩れしたり垂れる等が起こりやすくなる。サポート材の剛性が不十分になると、モデル材を支持する能力が低下し、サポート材の上面にモデル材を造形することが難しくなり、モデル材の精度が低下するおそれもある。その一方でサポート材の剛性を高めると、最終造形物からサポート材を除去する際に、水に溶出し難くなり、除去に時間がかかる。このようにサポート材には相反する特性が求められる結果、最適な特性を備えるサポート材を得ることが従来は困難であった。
【0046】
そこで本実施例のように、サポート材として例えば、水溶性の材料を用いる場合は、サポート材SAの外殻としてサポート殻SSを形成することにより、造形装置におけるモデルの造形中にサポート材が直接空気に触れることを極力抑制でき、その結果サポート材が空気中の水分を吸収することが抑制できることにより、造形時における、サポート材の変形やサポート材の変形によるモデル材の変形を防止できる。さらに、サポート殻SSの形成により、内部のサポート材が空気中の水分を吸収することを抑制できるため、サポート材の水溶性としての性能を高めることができ、その結果、サポート材除去時に水等の溶液中に浸した場合のサポート材の溶出速度を高めることができる。この構成であれば、十分な剛性を備えつつ、除去の際には最外殻のサポート材SAを破ることで溶出を早め、サポート材の除去を短時間で行える利点が得られる。図4、図5の例では、直方体状の表面に被覆されたサポート殻SSを破断して、内部のサポート材SAを除去する。
(サポート材SAの詳細)
【0047】
サポート材SAには非硬化性成分が含まれる。特に、可溶性を高めることで、水槽中に投入して短時間でサポート材を溶出させ、除去できる。サポート材の可溶性は、水溶性に限らず、特定の溶媒に対する可溶性としてもよい。一方でこのようなサポート材は液状又はゲル状となるため、手で触るとべとつきやぬめりがあり、汚れやすくなる。そこで、上述の通りサポート材の表面にサポート殻SSを設けて保護している。
(サポート殻SS)
【0048】
サポート材SAの外表面に設けられるサポート殻SSは、サポート材SAよりも剛性の高いモデル材MAで構成されている。このようにしてサポート材SAの表面の剛性を高め、サポート材SAの流出を阻止できる。本実施例ではサポート殻SSをモデル材吐出用ノズル21から吐出されるモデル材MAにより構成しているため、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21をサポート殻SSの吐出ノズルとして共用化でき、モデル材MAの造形時にサポート材SAのサポート殻SSも合わせて造形できるので、コスト面、スピード面でも有利となる。具体的には、少なくともモデル材MAとサポート材SAにて三次元の造形データを生成する時点において、その造形データにおいて、サポート材にて造形データの外表面が形成される位置に対して、自動的にその外表面に位置するサポート材を、モデル材に変更するか、又はサポート材のその外表面を覆うようにモデル材から形成される薄膜の層を形成するようにデータを生成する。そして、この生成されたデータに対応する各スライスの形成時にサポート材SAの外表面でサポート殻SSが形成される位置に、モデル材MAを吐出して硬化させ、サポート材SAの外表面が薄いモデル材MAで覆われるように、制御手段10が造形材吐出手段を制御する。これにより、サポート材SAの表面に薄いモデル材MAを形成することで、サポート殻SSを容易に形成できる利点が得られる。なお、このモデル材にて形成される薄膜の厚みは、除去のし易さと強度の確保のバランスという観点から考えると、その厚みは0.1mm〜5mm程度が好ましいと考える。さらに、本実施例ではサポート殻SSをモデル材吐出用ノズル21から吐出されるモデル材MAにより構成したが、サポート殻として適切な特性を有する材料であれば、モデル材MAとは異なる材料を吐出するノズルを別途設けてサポート殻を構成するようにしてもよい。この際、このサポート殻用の材料の特性としては、除去のし易さと強度の確保をより高い次元でバランスさせるという観点から、モデル材MAよりも硬度があり、且つ靭性が低い材料であることが好ましい。
(サポート殻SSの剥離構造)
【0049】
一方で、サポート材SAにサポート殻SSを設ける構成では、サポート殻SSの剛性が高い程、造形材からサポート殻SSを剥離し難くなる。そこで、サポート殻SSを剥離しやすくする構造を付加することが好ましい。具体的には、サポート材SAの表面をすべてサポート殻SSで覆うのでなく、部分的にサポート材SAを露出させた露出部を設ける。このようにすることで、造形物の造形後に露出部でサポート殻SSを破断し易くなる。またサポート材SAを可溶性とした場合は、造形物の造形後に液中に含浸して露出部からサポート材SAを溶出させることができ、サポート殻SSを破断させることなく造形物から剥離でき、サポート材SAの除去作業を省力化できる利点が得られる。または、サポート殻SSを成形しなければならない連続する外表面の外周部のみを、サポート殻SSが形成される他の外表面に比較して、厚みのある形状とすることにより、サポート殻SSが成形される連続する外表面を一体的に剥ぎ取りやすくすることも可能である。
(露出部)
【0050】
このような露出部には、様々な形態が利用できる。例えば、図6に示す例では露出部を、サポート殻SSの表面に、部分的な開口を直線状に設けた切り取り線状51としている。この構成では、切り取り線状51に沿って手でサポート殻SSを破断し易くできる。また、図7に示すように、サポート材SAのエッジ部分等、外表面の角度が大きく変わる部分にはサポート殻SSを設けない切れ目52とすることでも、同様に手でサポート殻SSを容易に剥離できるようになる。あるいはこれらの切り取り線状51や切れ目52を設けた造形物を、上述の通り液中に含浸させることでも、サポート殻SSに設けられた切り取り線状51や切れ目52の隙間からサポート材SAが流出できるため、自然にサポート材SAを除去することもできる。
【0051】
また、他の露出部の形態として、図8に示すように、サポート殻SSの表面に多数の穴53を開口することもできる。このように多くの穴53を開口することで、より多くの面積で水がサポート殻SS内部に侵入するため、サポート材SAを溶出し易くできる。このような穴53は、サポート殻SSの表面に均一に設けることが好ましい。
【0052】
さらに他の露出部の形態として、図9に示すように、サポート殻SSを多数の小片54に分割し、この小片54を離間させて配列することで、小片54同士の間に露出部を設ける構成とすることもできる。この構成によれば、露出部がより均一にサポート殻SSの表面に形成されるため、造形物を水に含浸すると、効率よくサポート材SAが溶出される。サポート材SAが溶出されるとサポート殻SSが小片54に細かく分解されるため、サポート材SAのより多くの部分が露出される。加えて、サポート殻SSが分解されることで内部のモデル材MAを取り出せるため、サポート殻SSを破断する必要が無くなり、一層容易にかつ短時間でサポート材を除去できる利点が得られる。
【0053】
以上述べた露出部の様々な形態は、2以上を組み合わせることも可能であることはいうまでもない。
【0054】
また、露出部を形成する構成に代えて、あるいはこれに加えて、サポート殻を部分的に肉薄にした溝部を形成することもできる。この構成によれば、肉薄の溝部でサポート殻を破断し易くできる。またサポート材を直接外部に露出させないことで、サポート材を外気に触れさせず、高湿度による潮解を回避でき、また露出部分からサポート材が垂れる事態も回避できる利点が得られる。
【0055】
このような露出部分や溝部は、サポート殻SSを形成する際に、サポート殻SSを部分的に吐出しない、あるいは吐出量を制限することで容易に形成できる。
【0056】
なお露出部を、モデル材MAを造形プレート40上に載置した状態で、極力サポート材SAの上面に設けると潮解したサポート材SAが露出部から漏れ出す事態を回避でき、好ましい。
(サポート殻SSの離間構造)
【0057】
またサポート殻SSは、最終的に除去されるため、剥離する際にはモデル材MAで造形された造形物を破損しないように留意する必要がある。仮に、サポート殻がモデル材と接合されていると、サポート殻の剥離時にモデル材が部分的に破損される可能性がある。特に、サポート殻をモデル材と同じ材質で構成する際は、モデル材と繋がるようにサポート殻が成形されてしまうことが考えられる。例えば図10に示すようなモデル材MAの造形において、サポート材SAの側面にサポート殻SSを形成しようとすると、図11に示すようにサポート殻SSの上端がモデル材MAと接触して形成される。この場合にサポート殻を剥離しようとすれば、矢印で示す部位でモデル材の一部が破断される可能性もある。そこで本実施例では、サポート殻を成形する際に、予めモデル材と接触しないように離間して形成するように制御する。
(サポート材SAの拡張)
【0058】
具体的には、図12に示すように、サポート殻SSを形成する位置を、造形物を構成するモデル材MAよりも外周に位置させるよう、制御手段10がスライス成形時に制御する。言い換えると、サポート材SAを水平方向に拡張することで、サポート材SAの最外殻をモデル材MAの最外殻と離間させる。このようにすることで、サポート殻がモデル材と接触することが回避され、破断の虞を無くすと共に、サポート殻の剥離も容易となる。
【0059】
またこのようなサポート材SAの拡張は、水平方向のみならず、垂直方向にも行える。具体的には、図13のようなモデル材MAを形成する際、下方のモデル材MAが、その上面に積層されるサポート材SAのサポート殻SSと接触しないように、サポート材SAを下方向に拡張する。この結果、サポート殻SSの下端は、下方のモデル材MAと離間されて、モデル材MAの保護とサポート材SAの除去し易さとを図ることができる。
【0060】
またこの場合は、サポート材を垂直方向に拡張する他、サポート殻の高さを小さくする、いいかえると下方のモデル材との接触部分にサポート殻を設けないことでも、同様の効果が得られる。この場合は、サポート材の使用量を低減できる利点が得られる。いずれの場合も、スライスの成形時に、サポート材の下面においてはサポート殻を設けないことで、このような離間構造が実現できる。すなわち、サポート材の外縁にモデル材を吐出しないスライスを間欠的に生成することで、サポート材表面の高さ方向に、間欠的に露出部を形成できる。
【0061】
なおサポート材SAとモデル材MAを離間させる距離は、短い程好ましい。距離を小さくすれば、サポート材の使用量を少なくできる。ただ、上述したサポート材の溶出を促進するための露出部としても機能させる場合は、距離を大きくすることもできる。スライス成形の厚さの公差等を考慮して、例えばスライス1枚〜3枚分程度の厚さだけ、サポート材をモデル材と離間させる。
【0062】
またこのようなサポート殻とモデル材の離間構造は、モデル材の保護のみならず、上述の通りサポート殻の剥離しやすさの面でも有利となる。モデル材からサポート殻を分離するよう破断する必要がないことから、弱い力でもサポート殻を手で剥離できる。
【0063】
さらに加えて、サポート殻の形状を簡素化することでも、剥離しやすくできる。例えば、図14(a)の水平断面図に示すような、表面に多数の突起を有する形状のモデル材MAを形成する場合、単にモデル材MAの表面形状に沿ってサポート材SAを設けようとすれば、同様に多数の突起が形成されることとなる。このサポート材SAの表面にサポート殻SSを付加すると、サポート殻SSの形状も複雑になり、これを手で除去しようとすれば、除去作業が面倒になる。そこで、図14(b)の水平断面図に示すように、サポート材SAの外形をより単純化して球状に変形させることで、その表面に形成されるサポート殻SSの形状も単純化させ、手での剥離作業を容易に行えるようになる。このようなサポート材SAの変形は、例えばモデル材MAの外形を、画像処理によって膨張、収縮させる処理を繰り返す等により単純化させることで行える。このようにサポート材の外形は必ずしも最終造形物となるモデル材の外表面と一致させる必要はなく、一定の簡素な形状に規格化することで、サポート殻を剥離し易くできる。
(ヘッド部20)
【0064】
図15に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23を設けており、これらのノズル列23は、図16の平面図に示すように半ノズル分ずらして配置することで、分解能を向上させている。またオフセット状態に配置された各ノズル列23は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とで、それぞれ同一ライン上に一致するように配置することで、モデル材とサポート材の分解能を一致させている。
【0065】
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
【0066】
図15の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)ではこれを硬化手段24で硬化させている。
(ローラ部25)
【0067】
ヘッド部20はさらに、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去することにより、造形材表面を平滑化するためのローラ部25を設けている。このようなローラ部25の動作の様子を、図17の模式図に基づいて説明する。この例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図17において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度、回転速度を10回転/s程度としている。
【0068】
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えば、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
【0069】
図1、図15に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の三次元造形装置及び三次元造形方法は、インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を積層した三次元造形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
100…三次元造形システム
1…設定データ作成装置
2、2’…三次元造形装置
10…制御手段
20…ヘッド部
21…モデル材吐出ノズル
22…サポート材吐出ノズル
23…ノズル列
24…硬化手段
25…ローラ部
26…ローラ本体
27…ブレード
28…バス
29…吸引パイプ
30…ヘッド移動手段
31…XY方向駆動部
32、32’…Z方向駆動部
40…造形プレート
51…切り取り線状
52…切れ目
53…穴
54…小片
MA…モデル材
SA…サポート材
SS…サポート殻
PC…コンピュータ
SB…オーバーハング支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、
前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を硬化させるための硬化手段(24)と、
前記造形材吐出手段及び硬化手段(24)を備えるヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材による吐出及び硬化手段(24)による硬化を制御する制御手段(10)と、
を備え、
前記制御手段(10)が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部(20)を一方向に往復走査させて、前記造形材吐出手段により前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を前記造形プレート(40)上に吐出させ、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段(24)で前記モデル材(MA)及び/又はサポート材(SA)を硬化させることにより、前記スライスを生成し、高さ方向に前記造形プレート(40)とヘッド部(20)の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御してなり、
前記サポート材(SA)は、外表面に該サポート材(SA)と異なる材質のサポート殻(SS)を設けてなり、
前記サポート殻(SS)は、前記サポート材(SA)よりも剛性の高い材質で構成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート材(SA)は、水溶性の材質で構成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、前記モデル材(MA)と同じ材質で構成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載される三次元造形装置であって、
前記制御手段(10)が、各スライスの形成時に前記サポート材(SA)の外表面で前記サポート殻(SS)が形成される位置に、前記モデル材(MA)を吐出して硬化させ、前記サポート材(SA)の外表面が薄いモデル材(MA)で覆われるように前記造形材吐出手段を制御することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、部分的にサポート材(SA)を露出させた露出部を設けてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載される三次元造形装置であって、
前記露出部は、前記サポート殻(SS)の表面に開口された多数の穴(53)であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項5に記載される三次元造形装置であって、
前記露出部は、前記サポート殻(SS)の表面に、部分的な開口を直線状に設けた切り取り線状(51)であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項8】
請求項5に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、一定の大きさの小片(54)を離間させて配列し、該小片(54)同士の間を露出部としてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、部分的に肉薄にした溝部を形成してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、前記モデル材(MA)で造形される造形物と接触しないように離間して形成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項11】
請求項10に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、造形物の外形を簡素化した形状に形成されてなり、前記サポート殻(SS)とモデル材(MA)との間に前記サポート材(SA)が充填されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記スライスは、前記サポート殻(SS)を形成する位置を、造形物を構成するモデル材(MA)よりも外周に位置させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記スライスは、前記サポート材(SA)の表面にサポート殻(SS)を形成しないスライスを含んでなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記サポート殻(SS)は、前記サポート材(SA)の外表面の内、角度が急峻に変化する部位に設けないことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項15】
造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)上に、前記モデル材(MA)及び/又はサポート材(SA)を吐出させる造形材吐出手段及び前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を硬化させる硬化手段(24)を備えるヘッド部(20)を一方向に往復走査させる往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を前記造形材吐出手段で前記造形プレート(40)上に吐出させ、他方で前記硬化手段(24)で前記モデル材(MA)及び/又はサポート材(SA)を硬化させ、スライスを生成する工程と、
高さ方向に前記造形プレート(40)とヘッド部(20)の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返す工程と、
を含み、
前記スライスの生成及び積層工程において、前記サポート材(SA)の外表面に、該サポート材(SA)よりも剛性の高い材質で構成されたサポート殻(SS)が設けることを特徴とする三次元造形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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