説明

三次元CADシステム

【課題】 入出力に仮想空間と現実空間を融合するMRシステムを利用した三次元CADシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】 サーバーとネットワークを介して接続された複数の複合現実感の提示機能を有するクライアントからなる三次元CADシステムであって、前記複合現実感の提示機能を有するクライアントは、前記サーバーで生成した三次元モデルと前記他のクライアントによる設計データと連動した動作シミュレーションとの少なくともいずれか一方を現実空間の映像に重畳して表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバーと、当該サーバーとネットワークを介して接続された複数のクライアントとからなる三次元CAD(Computer−Aided Design)システムに関する。また、本発明は、三次元CADシステムにおけるサーバーシステム及び三次元CADシステムにおけるクライアントCADシステムに関する。さらに、仮想空間と現実空間を重畳して表示し体験者に複合現実感を提示するMR(Mixed Reallity)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械設計の分野では三次元CADシステムが用いられており、機構、及び機構の構成部品を立体的に表示しながら設計を行うことが可能となっている。
【0003】
この種のシステムにおいては、例えばアクチュエーターやモーター等の能動部品やセンサー等の制御するための制御プログラムの開発を支援するため、機構を実際に組立することなく、各構成部品の動作をシミュレートする機能を有している。このようなシミュレーションの可能な三次元CADシステムは、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2006−195971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなCADシステムでは入力が2次元画面のGUI形式になるので、実際のユーザーが使用するような感覚でパラメータを入力することが難しい。また、その結果である三次元コンピュータグラフィックスの表示に関しても二次元のディスプレイでは結果を感覚的につかむのには物足りないことがある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものである。具体的には、本発明は、他のCADシステムによって設計されたデータを利用した動作シミュレーションを行いながら設計を行うことを可能とし、さらに入出力に仮想空間と現実空間を融合するMRシステムを利用した三次元CADシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明における三次元CADシステムは、サーバーとネットワークを介して接続された複数のクライアントからなる三次元CADシステムであって、前記複数のクライアントの少なくとも一つは、ユーザーの視点からの現実空間の映像にコンピュータグラフィックスによる映像を重畳表示する複合現実感の提示機能を備えており、前記サーバーは、データを蓄積するデータ蓄積部と、前記各クライアントからの要求に応じて前記データ蓄積部よりデータを読み出しあるいは書き込み、かつ三次元モデル及び当該三次元モデルの動作シミュレーションを生成する演算部とを備えており、前記サーバーは、前記演算部によって、任意のクライアントによる設計に基づいて生成された三次元モデルに対して他のクライアントによる設計データを反映させることによって生成した前記三次元モデルの動作シミュレーションのデータを生成し、生成した当該動作シミュレーションのデータを前記任意のクライアントへ前記ネットワークを介して送信し、前記任意のクライアントは、前記サーバーから送信された前記動作シミュレーションのデータを受け取って設計を行う画面を表示させることにより、前記他のクライアントによる設計データと連動した動作シミュレーションを表示させ、前記複合現実感の提示機能を有するクライアントは、前記サーバーで生成した三次元モデルと前記他のクライアントによる設計データと連動した動作シミュレーションとの少なくともいずれか一方を現実空間の映像に重畳して表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、他のCADシステムによって設計されたデータを利用した動作シミュレーションを行いながら設計を行うことを可能とし、さらに入出力に仮想空間と現実空間を融合するMRシステムを利用した三次元CADシステムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[第一の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態における三次元CADシステムの基本構成を示す図である。同図において、100はシステムの中枢部を構成するサーバー、110は装置を構成する機構部の設計を行うクライアントとしてのメカCADである。120は装置の電気回路部の設計を行うためのクライアントとしての電気CADである。また、130は装置の機構部及び電気回路部の制御を行うプログラム(ファームウエア)の開発及び開発支援のためのクライアントとしてのファーム開発支援ツール、140はレンズユニット等の光学部品の設計を行う光学CAD、150は実写映像(現実空間の映像)にCGを合成し、表示する提示機能を有するMRシステムである。
【0010】
これらのサーバー100と、メカCAD110、電気CAD120、ファーム開発支援ツール130、光学CAD140及びMRシステム150とからなる任意のクライアントとは、ネットワーク160を介して接続されている。そして、各クライアント110〜150とサーバー100間、複数のクライアント110〜150間でサーバー100を介して各種データの送受信が行われる。
【0011】
サーバー100内には、演算部101とデータ蓄積部102が備えられている。演算部101は、各クライアント110〜150からの要求にしたがってデータ蓄積部102より必要なデータを取り出し、記憶し、演算処理を実行する。そして、設計対象である装置の三次元モデルの生成や、各種動作のシミュレーションのためのデータを生成し、データ蓄積部102に記憶あるいは各クライアント110〜150へダウンロードされる処理を実行する。
【0012】
各クライアント110〜150の構成について説明すると、メカCAD110は、設計に用いる機構部品の形状及び動作データと、それら機構部品を組み合わせて機構部を設計するためのアプリケーション等により、機械設計環境を構成する。同様に、電気CAD120は、装置の電気回路に関する各種回路部品、回路構成、回路図、各種動作パラメータ等のデータと、それらのデータに基づいて回路設計を行うアプリケーション等により、回路設計環境を構成する。光学CAD140は、レンズ形状、光学特性、レンズユニットとしての光学的な構造に関するデータと、それらのデータに基づいてレンズユニット等の光学設計を行うアプリケーション等により、光学設計環境を構成する。
【0013】
また、ファーム開発支援ツール130には、装置の機構部、電気回路、光学機構部の動作を制御するためのファームウエアすなわちプログラムが格納されている。そして、後述するように他のクライアント(メカCAD110、電気CAD120、光学CAD140)のそれぞれにおける最新のデータあるいは設計環境を共有して、リアルタイムで動作シミュレーションを行うことができるように構成される。MRシステム150は現実空間の映像とサーバー100内で形成される三次元モデルを重畳して表示する。
【0014】
このようなシステムにより、各クライアント110〜150において実行される設計にしたがい、その設計に必要なデータがサーバー100のデータ蓄積部102から読み出されて各クライアントへと供給される。一方、各クライアント110〜150において行われる設計動作は、リアルタイムでサーバー100の演算部101へとアップロードされ、サーバー100内で装置(機構部)の三次元モデルが形成される。この三次元モデルのデータは、データ蓄積部102に記憶され、また各クライアント110〜150からの要求に応じて要求元のクライアントへとダウンロードされる。要求元クライアントでは、ダウンロードした三次元モデルを、必要に応じて自身の設計データを反映させた上で表示したり、三次元モデルを用いたシミュレーションを行ったりすることが可能となる。
【0015】
図2は、本実施形態の三次元CADシステムに係る各クライアント110〜150のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【0016】
クライアント110〜150は、いずれも汎用的なコンピュータ200によって構成可能である。コンピュータ200は、その制御部としてのCPU201、コンピュータ200が起動する時にCPU201が実行するブートプログラムや、コンピュータ200のハードウエアに依存する各種のプログラムを格納したROM202を有する。RAM203は、CPU201が実行するプログラム及びCPU201が演算に使用するデータ等を格納する。通信インターフェース(I/F)204は、ネットワーク150を介してサーバー100と通信するためのインターフェースである。コンピュータ200は、さらに、ディスプレイ205、プリンタ206、マウス207、キーボード208、ハードディスクドライブ209、FDドライブ210、CD−ROMドライブ211を備えている。
【0017】
クライアントをCADとして機能させるためのアプリケーションプログラムや、オペレーティングシステムなどは、ハードディスクドライブ209に記憶されているものとする。
【0018】
CPU201は、ROM202やハードディスクドライブ209に格納されたプログラム(実行時にはRAM203に展開される)に基づいて動作し、コンピュータ200内の各部の制御を行う。通信I/F204は、ネットワーク150を介して他の装置(クライアント又はサーバー)等と通信を行う。ハードディスクドライブ209は、コンピュータ200がユーザーに提供する機能を実現するためのプログラム及びデータを格納し、RAM203を介してCPU201に提供する。FDドライブ210やCD−ROMドライブ211は、FD212やCD−ROM213等のリムーバブルメディアよりプログラムやデータを読み込み、RAM203へ供給する。内部バス214は、コンピュータ200内の各装置を接続するためのものである。
【0019】
なお、サーバー100もまた、CPU201が実行するプログラムをサーバー100の機能を実現するものに変更することで、図2に示すコンピュータ200により実現可能である。
【0020】
図3は、サーバー100の機能構成例を示すブロック図である。
【0021】
サーバー100は、演算部101とデータ蓄積部102とで構成される。データ蓄積部102は、例えばハードディスクドライブ209のような記憶装置により実現される。そして、クライアントであるメカCAD110、電気CAD120、光学CAD140、ファーム開発支援ツール130、MRシステム150に対応したメカデータ301、電気データ303、光学データ304、ファームデータ302を記憶、蓄積する。
【0022】
たとえば、メカCAD110に対応するメカデータ301には、機構設計に必要な各種機構部品や、アクチュエーター、モーター等の能動部品の構成、サイズ、形状、各種特性などのデータが格納される。さらに、クライアントのメカCAD110において設計された機構モデルデータが格納されている。そして、登録された部品やデータの形状・属性等を管理し、プロセッサー部309よりの要求に基づいて、演算部101に必要なデータを渡す。他の電気データ303、光学データ304、ファームデータ302についても同様である。すなわち、電気データ303には電気回路部品に関するデータと、電気CAD120で設計された電気回路データが格納される。光学データ304には、光学部品に関するデータと、光学CAD140で設計された光学設計データが、ファームデータ302にはファーム開発支援ツール130で作成したファームウエアデータがそれぞれ格納されている。
【0023】
そして、例えばCPU201により実現される演算部101は、メカデータ用のデータ変換部305、ファームデータ用のデータ変換部306、電気データ用のデータ変換部307及び光学データ用のデータ変換部308を備える。また、プロセッサー部309は、データ変換部305〜308が変換したデータをプログラムに基づいて演算処理する。このデータ変換部305〜308は、データ蓄積部102から、メカデータ301、電気データ303、光学データ304、ファームデータ302を、クライアントからの指示に基づいて読み出す。そして、たとえば機構設計であれば、要求元クライアントの設計環境に応じて、メカデータを変換する。具体的には、メカデータ301から読み出した登録部品データについて、表示スケール、装置への取り付け位置、姿勢等を、予め登録されている、クライアントが取り扱い可能な特性、仕様にしたがってデータ変換する。なお、メカCAD110が要求元クライアントの場合など、要求元クライアントでデータ変換は必須ではない。これにより、異なるCADシステム間で設計データの相互利用が可能になる。変換後のデータは、プロセッサー部309へと渡し、要求元のクライアントへ提供される。
【0024】
同様に、電気データ303は、クライアント110〜140からの指示にしたがって読み出される。そして、要求元クライアントが取り扱い可能な形式にデータ変換部307で変換され、プロセッサー部309を通じて要求元クライアントへと供給される。
【0025】
他の光学データ304、ファームデータ302についても同様で、それぞれ要求のあったクライアントへと、その要求にしたがったデータ形式に変換した後、プロセッサー309を介してクライアントへと供給される。
【0026】
すなわち、クライアントであるメカCAD110より出された要求信号は、ネットワーク150を介してサーバー100の演算部101内のプロセッサー部309へ供給される。プロセッサー部309は、要求信号と、RAM203及びハードディスク209に格納されたプログラムとに基づいて、必要なデータをデータ蓄積部102へ要求する。データ蓄積部102は、要求されたデータ301,302,303,304を読み出し、対応する其々のデータ変換部305,306,307,308へ渡す。
【0027】
各々のデータ変換部305〜308は、RAM203やハードディスク209に記憶されたデータ変換プログラムに基づいてデータ変換を行い、プロセッサー部309へ提供する。プロセッサー部309は提供された変換データを用いてシミュレーション等の演算を行い、その演算結果をネットワーク160を介して要求元クライアントであるメカCAD110へ提供する。メカCAD110は、その演算結果をディスプレイ205へ表示したり、ファイルとしてハードディスク209へ格納したりする。これらの流れは、クライアント120、130、140共に同様である。
【0028】
図4は、要求元クライアントとサーバー100との間のコマンド及びデータの流れを示した図である。
【0029】
図4では、MRシステム150が要求元クライアントである場合を例として示している。図4には、実際にサーバー100とMRシステム150との間で双方向に行われる各種データの流れと、処理の内容を示している。また、メカ設計者(MRシステム150のユーザー)が、本実施形態における三次元CADシステムを使って機構部を設計する場合の各種操作及びデータの送受信の手順を示している。ここで、図4の上から下へと処理の流れが移行するが、各ステップの処理は並行して行うことが可能である。
【0030】
ステップS400で、メカ設計者は、MRシステム150を起動し、メカCAD110において設計しているモデルを実写映像と重畳してMR空間上で観察する。図4の処理の詳細は、後述する。本実施形態では図5に示すようにそのモデルをカメラとする。
【0031】
図5はMR空間を表した図である。カメラ501はメカCAD110によって描画されたメカ設計者の視点に基づくコンピュータグラフィックスである。カメラ501は、位置姿勢センサーが装備されたカメラを模した模型505の位置姿勢などの状態に表示位置姿勢が連動する。模型505の位置姿勢はHMD(ヘッドマウントディスプレイ)504に装備された物体位置姿勢計測部607によって計測される。カメラ501にはシャッターボタン502がついており、模型505のシャッターボタンに連動する。ユーザー503は504をかぶり、カメラ501を操作している。
【0032】
図6はHMD504およびMRシステム150の構成を示したものである。MRシステム150は以下のものから構成される。現実画像入力部602、画像合成部603、複合現実感画像出力部604、カメラ位置姿勢計測部605、仮想物体入力部606、物体位置姿勢計測部607を備えている。
【0033】
ヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD)504は左カメラ632と右カメラ633と左現実画像出力部634と右現実画像出力部135と複合現実感画像入力部636と画像表示部637を備えている。
【0034】
再び図5に戻り、ユーザー503の動作について説明する。ユーザー503の指には位置姿勢センサーが接続されている。ユーザー503は模型505を持ちカメラ501を操作している。ユーザー503はカメラ501のシャッターボタン502を押そうとする。ユーザー503の指はシャッターボタン502に徐々に近づいていく。本来はシャッターボタン502が押された位置にユーザー503の指が到達した時に、カメラ501のシャッターボタン502が押されたというシミュレーションが開始する。
【0035】
しかし、実際に到達してからシミュレーションを始めるとシミュレーションに時間がかかり、ユーザー503が押した直後に押した結果のコンピュータグラフィックスが得られない場合がある。実際にユーザー503の指が到達する前に実際にシミュレーションを行いその結果を保存しておく。図4に戻り、以上の流れを図4のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
ステップ400でシステムが起動した後、ステップS401で位置姿勢センサーがユーザー503の指の位置を測定する。ステップS402で、MRシステムがユーザー503の指の位置がシャッターボタン502が押された位置にあるかどうか判定する。もし所定の位置にあればステップS406に進む。所定の位置になければステップS403に進む。
【0037】
ステップS403では所定の位置まで到達していないが所定の位置にあとわずかで到達しそうか判定する。あとわずかで到達しそうだと判定されればステップS408へ進む。ステップS408ではユーザー503の指が所定の位置に到達した場合に対応するシミュレーションを行う。次にステップS409に進みステップS408のシミュレーション結果をデータ蓄積部102に保存する。
【0038】
サーバー100はステップS406でデータ蓄積部102から先行シミュレーション結果を取り出す。次にステップS412に進んでメカCAD110用のデータに変換し、当該データをメカCAD110に配信する。次にサーバー100ではステップS407に、メカCAD110ではステップS410に進む。ステップS410ではサーバー100から先行シミュレーション結果を取得し表示する。次にMRシステム150でステップS404に進みス実写にステップS410で表示したコンピュータグラフィックスを重畳表示する。
【0039】
サーバー100ではステップS407で本来のシミュレーションを行う。次にステップS413に進んでメカCAD110用のデータに変換し、当該データをメカCAD110に配信する。次にメカCAD110ではステップS411に進み、サーバー100から本来のシミュレーション結果を取得し表示する。次にMRシステム150でステップS405に進み実写にステップ411で表示したコンピュータグラフィックスを重畳表示する。
【0040】
以上説明したように、ユーザー503の指の位置に応じて現実空間の環境を予測し、先行して行うシミュレーションを決定することにより、ユーザー503は遅延を感じずに、MR空間を体験することが出来る。
【0041】
[第二の実施形態]
第二の実施形態の基本構成は第一の実施形態と同じである。違いはシミュレーション開始の条件である。第一の実施形態ではMRシステム150がサーバー100でのシミュレーションを開始した。本実施形態ではメカCAD110がサーバー100でのシミュレーションを開始する。
【0042】
図7のフローチャートを説明する。MRシステム150はステップS700で操作を開始する。次にステップS714で模型505の位置姿勢計測を行い、その出力値をメカCAD110に送信する。
【0043】
次にメカCAD110においてステップS701に進み、位置姿勢の計測値をMRシステム150から受信し、カメラ501の位置姿勢をその計測値に設定する。次にステップS702に進み、そのときにシミュレーションを行う条件であればサーバー100のステップS706へ進む。そうでなければステップS703に進む。先行してシミュレーションを行う条件(シミュレーションを行う順序)は、例えば、処理にかかる時間が最小になるように設定してもよい。
【0044】
ステップS703では先行してシミュレーションする条件か判断する。先行してシミュレーションする条件であると判断された場合、サーバー100のステップS710に進む。そうでなければステップS701に進む。
【0045】
サーバー100のステップS710では先行シミュレーションを行う。上記処理により、シミュレーションを行う順序が変更され、シミュレーション遅延を防止することが出来る。
【0046】
次にステップS711において先行シミュレーションの結果をデータ蓄積部102に保存する。
【0047】
サーバー100のステップS706では先行シミュレーションの結果をデータ蓄積部102から取り出す。次にステップS707に進んでそのデータをメカCAD110用に変換し、ステップS708に進む。また並行してメカCAD110のステップS712に進み、先行シミュレーションの結果を受信して表示する。次にMRシステム150のステップS704に進み、ステップS712で表示したコンピュータグラフィックスに実写画像を合成して表示する。
【0048】
サーバー100のステップS708では現在の条件においてシミュレーションを実施する。次にステップS709に進んでメカCAD110用のデータに変換し、そのデータをメカCAD110に送信し、メカCAD110のステップS713に進む。メカCAD110のステップS713では先行シミュレーションの結果を受信して表示する。次にMRシステム150のステップS705に進み、ステップS713で表示したコンピュータグラフィックスに実写を合成して表示する。
【0049】
[第三の実施形態]
基本構成は第一の実施形態と同じである。違いはシミュレーション遅延時の制御方法である。第一の実施形態および第二の実施形態ではシミュレーションの遅れを先行シミュレーションで解決したが、本実施形態では、高精度なシミュレーションを行うことはできないが、高速な処理が可能である遅延しない簡易なシミュレーション方法を用意して遅延を防ぐ。
【0050】
図8のフローチャートにおいて説明する。MRシステム150はステップS800で操作を開始する。次にステップS801に進み、ユーザー503の動作を計測する。次にステップS802に進み、シミュレーションを行うか判断する。シミュレーションを行う場合はサーバー100のステップS807とステップS809へ進む。このステップは並行して動作する。ステップS809は本来のシミュレーションを行い、ステップS809では遅延しない簡易なシミュレーションを行う。次にステップS808へ進む。ステップS808ではステップS807の処理が終わっていればステップS807で処理した結果をデータ変換し、MRシステム150へ送信する。また、ステップS807の処理が終わっていなければステップS809の処理結果をデータ変換し、MRシステム150へ送信する。
【0051】
MRシステム150のステップS806へ進み、シミュレーション結果を描画し、現実画像と合成表示する。次にステップS800へ進む。
【0052】
このように、MR・機構・電気・ソフト・光学が統合された設計環境を実現でき、相互にシミュレーションを行うことができるので、試作品の組立が完成していない状況でも完成品としてのシミュレーションが可能となる。さらに、ユーザー503は視覚的にその動きを確認でき、開発設計環境が大幅に改善され、設計試作回数・台数の削減が行え、開発設計コストを大幅に改善することができる。
【0053】
また、本発明によれば、サーバーとMRシステムと複数のクライアントからなる三次元CADシステムにおいて、各クライアントによってそれぞれ設計されたデータを互いに共有できる。たとえば機構・電気回路・ソフトウエア・光学部品等、それぞれ別個に設計される要素を統合したシミュレーションを行うことができる。そのため、試作品の組立が完成していない状況でも完成品としてのシミュレーションが可能となり、開発設計環境が大幅に改善され、設計試作回数・台数の削減が行え、開発設計コストを大幅に改善することができる。また、開発段階においても設計対象をシミュレートすることができ、また視覚的にその動きを三次元的に確認できるので、他の設計者との間での並行設計・共同検討・仕様ミスの軽減等を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態における三次元CADシステムの基本構成を示す図である。
【図2】三次元CADシステムに係る各クライアントのハードウエア構成のブロック図である。
【図3】サーバーの構成を示すブロック図である。
【図4】第一の実施形態におけるクライアントのMRシステム、メカCADとサーバーとの間のコマンド及びデータの流れを示した図である。
【図5】ユーザーが仮想のカメラを操作しているところを示した図である。
【図6】MRシステムの詳細を表した図である。
【図7】第二の実施形態におけるクライアントのMRシステム、メカCADとサーバーとの間のコマンド及びデータの流れを示した図である。
【図8】第三の実施形態におけるクライアントのMRシステムとサーバーとの間のコマンド及びデータの流れを示した図である。
【符号の説明】
【0055】
100 サーバー
110 メカCAD
120 電気CAD
130 ファーム開発支援ツール
140 光学ツール
150 MRシステム
160 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバーとネットワークを介して接続された複数のクライアントからなる三次元CADシステムであって、
前記複数のクライアントの少なくとも一つは、ユーザーの視点からの現実空間の映像にコンピュータグラフィックスによる映像を重畳表示する複合現実感の提示機能を備えており、
前記サーバーは、データを蓄積するデータ蓄積部と、前記各クライアントからの要求に応じて前記データ蓄積部よりデータを読み出しあるいは書き込み、かつ三次元モデル及び当該三次元モデルの動作シミュレーションを生成する演算部とを備えており、
前記サーバーは、前記演算部によって、任意のクライアントによる設計に基づいて生成された三次元モデルに対して他のクライアントによる設計データを反映させることによって生成した前記三次元モデルの動作シミュレーションのデータを生成し、生成した当該動作シミュレーションのデータを前記任意のクライアントへ前記ネットワークを介して送信し、 前記任意のクライアントは、前記サーバーから送信された前記動作シミュレーションのデータを受け取って設計を行う画面を表示させることにより、前記他のクライアントによる設計データと連動した動作シミュレーションを表示させ、
前記複合現実感の提示機能を有するクライアントは、前記サーバーで生成した三次元モデルと前記他のクライアントによる設計データと連動した動作シミュレーションとの少なくともいずれか一方を現実空間の映像に重畳して表示することを特徴とする三次元CADシステム。
【請求項2】
前記複合現実感の提示機能を有するクライアントは、現実空間の環境を計測する手段を更に有し、計測したデータを前記ネットワークを介して前記サーバーへ送信し、
前記サーバーは前記計測したデータに従って前記演算部を制御して三次元モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の三次元CADシステム。
【請求項3】
前記複合現実感の提示機能を有するクライアントは、計測した前記現実空間の環境を、前記ネットワークを介して前記任意のクライアントに送信し、前記他のクライアントによる設計データと連動した動作シミュレーションの表示を制御することを特徴とする請求項2に記載の三次元CADシステム。
【請求項4】
前記演算部の制御は、前記複合現実感の提示機能を有するクライアントから現実空間の環境を入力し上記三次元モデル及び当該三次元モデルの動作シミュレーションの結果を現実空間に重畳して出力するまでの時間により演算を制御することを特徴とする請求項2もしくは3に記載の三次元CADシステム。
【請求項5】
前記時間により制御される演算は、前記時間が最小になるように、順序が制御された演算であることを特徴とする請求項4に記載の三次元CADシステム。
【請求項6】
前記時間により制御される演算は、前記現実空間の環境をあらかじめ予測して、その予測に従って開始される演算であることを特徴とする請求項4に記載の三次元CADシステム。
【請求項7】
前記現実空間の環境は、ユーザーの動作を含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の三次元CADシステム。
【請求項8】
前記ユーザーの動作は、ユーザーに取り付けたセンサーにより計測されることを特徴とする請求項7に記載の三次元CADシステム。
【請求項9】
前記現実空間の環境は、ユーザーが観察している三次元モデルを模した模型の状態を含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の三次元CADシステム。
【請求項10】
前記三次元モデルを模した模型の状態は、三次元モデルに装備されたセンサーにより計測されることを特徴とする請求項9に記載の三次元CADシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−66898(P2010−66898A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231189(P2008−231189)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】