説明

三相配電線の電圧不平衡の解消方法、及びこの方法に用いる情報処理装置

【課題】三相配電線の電圧不平衡を解消する。
【解決手段】単相接続している既設変圧器の各相の合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した第1類型を生成し、第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値を求め、既設変圧器又は新設変圧器の夫々について接続相の振替を行った第2類型を生成し、生成した第2類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求め、そのうちの最小値である第2合計容量差最大値を求め、配電線の相振替を行った第3類型を生成し、生成した第3類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求めるととともに、そのうちの最小値である第3合計容量差最大値を求め、第1合計容量差最大値、第2合計容量差最大値、及び第3合計容量差最大値のうちの最小値をとる類型を特定し、特定した類型に従って既設変圧器及び新設変圧器を設けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相配電線の電圧不平衡の解消方法、及びこの方法に用いる情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力品質指標の1つである三相配電線の電圧不平衡は、配電系統側においては設備利用率の低下、電圧降下の増大等の要因となり、一方、需要家側では、誘導電動機の加熱、効率低下、トルクの減少、出力制限等の要因となる。このため、電圧不平衡を解消するための様々な方策がとられている。
【0003】
例えば特許文献1には、三相不平衡を減少するために行われる負荷の接続相の切り換えを実施する際に配電系統に生じる励磁突入電流を防止すべく、配電線の切断相の切断点と並列に第1開閉器を取り付けるとともに、切断点よりも負荷側の点と切替相との間に第1開閉器の開路に引続き高速で閉動作を行う無接点開閉器と、これと並列な第2開閉器とを取り付けた相切り替え装置において、切替相に電圧検出手段を設けるとともに、第1開閉器の開路後に切替相の電圧が最初に正弦波の波高値になったときに無接点開閉器を投入する制御装置を設けることが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、配電系統の複数時間断面の計測情報を格納する計測情報データベースと、配電系統の系統構成と線路インピーダンスとを格納する設備情報データベースと、配電系統の負荷定格容量と複数時間断面の負荷需要率とを格納する負荷情報データベースと、不平衡率許容値および各データベースから出力される各情報から線間電圧変化量上下限値と負荷移動量上下限値とを算出する上下限値算出部と、上下限値算出部により算出された線間電圧変化量上下限値と負荷移動量上下限値とに基づいて電圧不平衡の最小化を目的関数として配電系統の複数時間断面の電圧不平衡を解消するための負荷移動量を最適化計算により求める負荷移動量算出部とを備える電圧不平衡解消支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−99728号公報
【特許文献2】特開2009−124913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、三相配電線の電圧不平衡不平衡を解消するための単純かつ比較的有効な方策として、変圧器が設けられる電柱番号を3で割った余りに応じて変圧器の接続相を決定する(例:余りが0→「赤白」相に接続、余りが1→「白青」相に接続、余りが2→「赤白」相に接続)ことが行われている。しかしこの方法では各変圧器の実際の負荷が考慮されていないため、実負荷の偏りが大きい場合には、必ずしも電圧不平衡を有効に解消することができない。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、三相配電線の電圧不平衡の解消方法、及びこの方法に用いる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の及び他の課題を解決するための本発明の一つは、三相配電線の電圧不平衡の解消方法であって、
情報処理装置に、
変圧器を新設しようとする三相配電線の区間である新設区間において単相接続している既設変圧器の各相の合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した第1類型を生成し、前記第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値を求めるステップと、
前記新設区間において、前記既設変圧器又は前記新設変圧器の夫々について接続相の振替を行った第2類型を生成し、生成した前記第2類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求め、そのうちの最小値である第2合計容量差最大値を求めるステップと、
前記新設区間において、配電線の相振替を行った第3類型を生成し、生成した前記第3類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求めるととともに、そのうちの最小値である第3合計容量差最大値を求めるステップと、
前記第1合計容量差最大値、前記第2合計容量差最大値、及び前記第3合計容量差最大値のうちの最小値をとる前記類型を特定し、特定した前記類型を示す情報を出力するステップとを実行させることとする。
【0009】
本発明によれば、既設変圧器の各相の合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した類型、既設変圧器又は新設変圧器の夫々について接続相の振替を行った類型、配電線の相振替を行った類型、のうち合計容量差最大値が最小となる類型を特定するので、三相配電線の電圧不平衡を確実に解消することができる。また以上の処理を情報処理装置に行わせることで、電圧管理業務が軽減される。また高価な電圧補書機器を設置することなく、三相配電線の電圧不平衡を解消することができる。
【0010】
尚、前記類型決定処理部が出力する前記類型を示す情報は、例えば、前記既設変圧器及び前記新設変圧器の夫々が接続する相を示す情報、配電線の前記相振替を行う箇所を示す情報等である。
【0011】
本発明のうちの一つは、三相配電線の電圧不平衡を解消する上記方法であって、
前記既設変圧器又は前記新設変圧器の少なくともいずれかに共用変圧器が含まれていることとする。
【0012】
共用変圧器には夜間温水器等の負荷が接続していることが多く、そのような負荷は三相配電線の電圧不平衡を誘発する要因となりやすい。本発明によれば、共用変圧器の単相接続分も考慮して最適な類型を決定するので、三相配電線の電圧不平衡を確実かつ有効に解消することができる。
【0013】
本発明のうちの一つは、三相配電線の電圧不平衡を解消する上記方法であって、
前記情報処理装置に、さらに
前記接続相の振替に利用可能な予算と前記接続相の振替に要する費用とを記憶するステップと、前記予算の範囲内で前記類型を生成するステップとを実行させることとする。
【0014】
本発明によれば、接続相の振替に利用可能な予算の範囲内で接続相の振替を行った第2類型を生成するので、コスト面の制約を考慮した現実的な範囲で電圧不平衡を解消するための最適な方法を求めるこができる。
【0015】
本発明のうちの一つは、三相配電線の電圧不平衡を解消する上記方法であって、
前記配電線の相振替に利用可能な予算と前記配電線の相振替に要する費用とを記憶し、
前記配電線相振替処理部は、前記予算の範囲内で前記類型を生成することとする。
【0016】
本発明によれば、配電線の相振替に利用可能な予算の範囲内で配電線の相振替を行った第3類型を生成するので、コスト面の制約を考慮した現実的な範囲で電圧不平衡を解消するための最適な方法を求めるこができる。
【0017】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、三相配電線の電圧不平衡を有効に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】情報処理システム1の概略的な構成を示す図である。
【図2】電圧不平衡解消支援装置10及び/又は配電系統監視制御装置6のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図3】電圧不平衡解消支援装置10によって実現される機能を示す図である。
【図4】新設区間40の系統構成の一例を示す図である。
【図5】新設変圧器(共用変圧器467)の新設区間40への接続に際し、電圧不平衡解消支援装置10によって行われる処理を説明するフローチャートである。
【図6】設備情報テーブル600の一例を示す図である。
【図7】接続相仮決定処理S513の詳細を説明するフローチャートである。
【図8】各相の合計容量を求めた結果を示す図である。
【図9】仮決定した内容が反映された設備情報テーブル600を示す図である。
【図10】新設変圧器を追加した状態での各相の合計容量を求めた結果を示す図である。
【図11】接続相振替処理S514の詳細を説明するフローチャートである。
【図12】配電線相振替処理S515の詳細を説明するフローチャートである。
【図13】配電線相振替の方法を示す図である。
【図14】配電線相振替処理S515に際して配電線相振替処理部133によって生成されるワークテーブル1400の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1に実施形態として説明する情報処理システム1の概略的な構成を示している。この情報処理システム1は、例えば電力会社の社内システムとして構築される。同図に示すように、情報処理システム1は、電圧不平衡解消支援装置10と、通信ネットワーク5を介して電圧不平衡解消支援装置10と通信可能に接続している配電系統監視制御装置6とを含んで構成されている。
【0021】
電圧不平衡解消支援装置10は、ユーザインタフェースを備えた情報処理装置(コンピュータ)である。電圧不平衡解消支援装置10は、電圧不平衡の解消を図りつつ、配電系統に新設しようとする単相変圧器(後述する共用変圧器が単相接続する場合も含む)の接続相(三相配電線の各相(赤白相、白青相、青赤相)のうちのいずれの相に接続するか)を決定するのに有用な情報を提供する。
【0022】
配電系統監視制御装置6は、電力系統に関する情報の監視や制御に用いられる情報処理装置である。配電系統監視制御装置6は、例えば電力会社の中央指令所等に設けられる。配電系統監視制御装置6は、電力系統の監視や制御のために必要となる、配電系統の構成や状態等に関する様々な情報を管理している。具体的には、配電系統監視制御装置6は、配電系統の構成や状態等に関する情報(以下、系統情報と称する。)が管理される系統情報データベース60を管理している。配電系統監視制御装置6は、電圧不平衡解消支援装置10から送られてくる情報取得要求に応じて系統情報データベース60を検索し、検索した系統情報を電圧不平衡解消支援装置10に送信する。
【0023】
配電系統監視制御装置6は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット(Internet)等の通信ネットワーク5を通じて電圧不平衡解消支援装置10から送られてくる情報提供要求を受信すると、該当する情報を系統情報データベース60から検索し、検索した情報を、通信ネットワーク5を介して電圧不平衡解消支援装置10に送信する。
【0024】
図2に電圧不平衡解消支援装置10及び/又は配電系統監視制御装置6のハードウエア構成の一例を示している。同図に示すように、この情報処理装置50は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等の中央処理装置51、RAM(random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリ52、ハードディスクドライブや半導体記憶装置(SSD)(SSD:Solid State Drive)等の外部記憶装置53、ユーザから操作入力を受け付けるキーボードやマウス等の入力装置54、ユーザに情報を提示する液晶モニタやプリンタ等の出力装置55、及び、NIC(Network Interface Card、無線通信モジュール等の、通信ネットワーク5を介して他の装置と通信するためのハードウエアである通信インタフェース56を備えている。
【0025】
図3に電圧不平衡解消支援装置10において実現される機能を示している。同図に示すように、電圧不平衡解消支援装置10は、入力情報受付部11、系統情報取得部12、及び類型決定処理部13を備える。尚、これらの機能は、電圧不平衡解消支援装置10のハードウエアにより、もしくは、電圧不平衡解消支援装置10の中央処理装置51が、メモリ52や外部記憶装置53に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0026】
入力情報受付部11は、新たな変圧器(以下、新設変圧器と称する。)を設けようとする配電系統上の所定の区間(以下、新設区間と称する。)を指定する情報(例えば区間の両端に存在する開閉器の識別子)、類型決定処理部13によって行われる処理に際して用いられる情報(以下、これらの情報を入力情報と称する。)等をユーザから受け付け、受け付けた情報をメモリ52又は外部記憶装置53に記憶する。
【0027】
系統情報取得部12は、通信ネットワーク5を介して配電系統監視制御装置6に系統情報の取得要求を送信し、この取得要求に応じて配電系統監視制御装置6から送られてくる系統情報を受信する。系統情報取得部12は、受信した系統情報をメモリ52や外部記憶装置53に記憶する。
【0028】
類型決定処理部13は、入力情報受付部11が受け付けた入力情報及び系統情報取得部12が取得した系統情報を用いて新設変圧器の接続相を決定する。図3に示すように、類型決定処理部13は、接続相仮決定処理部131、接続相振替処理部132、及び配電線相振替処理部133を有する。
【0029】
このうち接続相仮決定処理部131は、新設区間における各相の合計容量(新設区間において接続している既設の変圧器(以下、既設変圧器と称する。)の各相の容量の合計)を求め、合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した類型(以下、第1類型と称する。)を生成し、この第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値を求める。
【0030】
接続相振替処理部132は、上記第1類型を基本とし、新設区間内において既設変圧器及び新設変圧器の夫々について接続相の振替(以下、接続相振替と称する。)を行った類型(以下、第2類型と称する。)を生成し、生成した第2類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求め、そのうちの最小値である第2合計容量差最大値を求める。また接続相振替処理部132は、接続相の振替に利用可能な予算と接続相の振替に要する費用とを記憶しており、接続相振替処理部132はこの予算の範囲内で上記第2類型を生成する。尚、接続相の振替に利用可能な予算や接続相の振替に要する費用は、例えば入力情報受付部11がユーザから受け付ける。
【0031】
配電線相振替処理部133は、第1類型(又は第2類型)を基本とし、新設区間において配電線の相振替を行った類型(以下、第3類型と称する。)を生成し、生成した第3類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求めるとともに、そのうちの最小値である第3合計容量差最大値を求める。尚、配電線相振替は、新設区間において、配電線の途中で相の入れ替えを行う(例えば、配電線の赤相と白相とを接続する。)ことにより行う。また配電線相振替処理部133は、配電線の相振替に利用可能な予算と配電線の相振替に要する費用とを記憶しており、配電線相振替処理部133はこの予算の範囲内で上記類型を生成する。尚、配電線の相振替に利用可能な予算や配電線の相振替に要する費用は、例えば入力情報受付部11がユーザから受け付ける。
【0032】
類型決定処理部13は、第1合計容量差最大値、第2合計容量差最大値、及び第3合計容量差最大値のうちの最小値をとる類型を特定し、特定した類型を示す情報を出力装置55に出力する。尚、類型決定処理部13が出力する類型を示す上記情報には、既設変圧器及び新設変圧器の夫々が接続する相を示す情報、配電線の相振替を行う箇所を示す情報等が含まれている。
【0033】
次に、以上のように構成される情報処理システム1において行われる処理について具体例とともに説明する。
【0034】
図4は新設区間40の系統構成の一例である。同図に示すように、この新設区間40は、上流側(変電所側)に設けられる第1開閉器41と、下流側に設けられる第2開閉器42とによって区画されている。同図に示すように、この新設区間40には、13本の電柱43[10]〜[22]を含んで構成される第1配電線44と、電柱43[12]において第1配電線44から分岐し、6本の電柱43[1]〜[6]を含んで構成される第2配電線45とが含まれる。
【0035】
同図に示すように、新設区間40には、既設変圧器として、電灯用変圧器及び電灯用/動力用共用変圧器(以下、共用変圧器と称する。)が接続している。より詳細には、第1配電線44の電柱43[10]には共用変圧器461(電灯用変圧器容量=30KVA,動力用変圧器容量=10KVA)が、電柱43[13]には電灯用変圧器462(20KVA)が、電柱43[15]には動力用変圧器463(電灯用変圧器容量=20KVA,動力用変圧器容量=5KVA)が、電柱43[18]には共用変圧器464(電灯用変圧器容量=10KVA,動力用変圧器容量=10KVA)が、電柱43[20]には電灯用変圧器465(電灯用変圧器容量=20KVA)が接続している。また第2配電線45の電柱43[6]には、既設変圧器として電灯用変圧器466(20KVA)が接続している。
【0036】
以下では、以上に説明した系統構成からなる新設区間40の第2配電線45の45[3]に、共用変圧器467(電灯用変圧器容量=30KVA,動力用変圧器容量=10KVA)を接続する場合について説明する。
【0037】
図5は、新設変圧器(共用変圧器467)の新設区間40への接続に際し、電圧不平衡解消支援装置10によって行われる処理を説明するフローチャートである。以下、同図とともに電圧不平衡解消支援装置10によって行われる処理(構成決定支援処理S500)について説明する。
【0038】
まず入力情報受付部11が、ユーザから入力情報を受け付けてメモリ52や外部記憶装置53に記憶する(S511)。図4に示す例では、新設区間40を特定する情報(例えば第1開閉器41の識別子と第2開閉器42の識別子)、先に述べたところの、接続相の振替に利用可能な予算、接続相の振替に要する費用、配電線の相振替に利用可能な予算、配電線の相振替に要する費用等を、入力情報として受け付ける。
【0039】
次に系統情報取得部12が、通信ネットワーク5を介して配電系統監視制御装置6に系統情報の取得要求を送信し、この取得要求に応じて配電系統監視制御装置6から送られてくる系統情報を受信する。そして系統情報取得部12は、受信した系統情報を、メモリ52や外部記憶装置53に記憶する(S512)。
【0040】
図4に示す例では、系統情報取得部12は、S511で受け付けた新設区間40を特定する情報を検索条件として配電系統監視制御装置6に送信し、系統情報として、図6に示す情報(以下、設備情報テーブル600と称する。)を配電系統監視制御装置6から取得する。
【0041】
同図に示すように、設備情報テーブル600は、電柱の識別子が設定される電柱番号611、新設区間40を特定する情報が設定される開閉器区間612、その新設区間40に接続している既設変圧器の種類(電灯用変圧器、共用変圧器)を示す情報が設定されるTr種別613(Trは変圧器(トランス)の略字である)、既設変圧器の容量(共用変圧器の場合は電灯用変圧器の容量のみ(共用変圧器のうち動力用変圧器については三相接続なので不平衡の調整に関係なし))が設定される設備容量614、及びその既設変圧器が接続している相が設定される接続相615、の各項目を含む複数のレコードで構成されている。
【0042】
次に、類型決定処理部13の接続相仮決定処理部131が、入力情報受付部11が受け付けた入力情報及び系統情報取得部12が取得した系統情報を用いて新設変圧器(共用変圧器467)の接続相を仮決定する処理(接続相仮決定処理S513)を行う。
【0043】
まず接続相仮決定処理部131は、新設区間における各相の合計容量(新設区間において接続している既設変圧器の各相の容量の合計)を求め、合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した第1類型を生成し、この第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値Sを求める。
【0044】
図7は接続相仮決定処理S513の詳細を説明するフローチャートである。接続相仮決定処理部131は、まず各相の合計容量を求める(S5131)。設備情報テーブル600が図6に示した内容である場合には、図8に示すように、「赤白」相の合計容量は30KVA、「白青」相の合計容量は50KVA、「青赤」相の合計容量は40KVAとなる。この場合、接続相仮決定処理部131は、合計容量が最小の「赤白」相に新設変圧器を接続した構成を第1類型として生成し(S5132)、この第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値S(S=60−40=20)を求める(S5133)。また接続相仮決定処理部131は、生成した内容を設備情報テーブル600に反映する。
【0045】
図9にこの反映後の設備情報テーブル600を示す。同図において、電柱番号[3]のレコードが新設変圧器のレコードである。また図10に、図9に対応する各相の合計容量を示す。
【0046】
図5に戻って、次に類型決定処理部13の接続相振替処理部132は、第1類型を基本とし、新設区間内において既設変圧器及び新設変圧器の夫々について接続相振替を行った第2類型を生成し、生成した第2類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求め、そのうちの最小値である第2合計容量差最大値を求める(接続相振替処理S514)。尚、接続相振替処理部132は、接続相の振替に利用可能な予算の範囲内で上記第2類型を生成する。
【0047】
図11に接続相振替処理S514の詳細を示している。まず接続相振替処理部132は、相振替に利用可能な工費を超えないような、最大の相振替数aを求める。また接続相振替処理部132は、新設区間40において変圧器(既設変圧器+新設変圧器)が接続している電柱の総数を変数mに設定する(S5141)。
【0048】
接続相振替処理部132は、各変圧器(i=1〜m)について接続相振替(2パターン)を行い、夫々の合計容量差最大値S1pi, S2pi(i=1〜m)求める。次に接続相振替処理部132は、各変圧器(i=1〜m)まで合計容量差最大値が最小となるiを求める。続いて接続相振替処理部132は、以上の処理を、振替数jを1〜aまで変化させた各組み合わせ(総数=mCj)回数実行し、その中で最大合計容量差が最小となる類型を求める。そして接続相振替処理部132は、求めた類型における最大合計容量差を第2合計容量差最大値SJとする(S5142)。
【0049】
図5に戻って、次に類型決定処理部13の配電線相振替処理部133は、第1類型(又は第2類型)を基本とし、新設区間において配電線の相振替を行った第3類型を生成し、生成した第3類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求めるとともに、そのうちの最小値である第3合計容量差最大値を求める(配電線相振替処理S515)。尚、配電線相振替処理部133は、配電線の相振替に利用可能な予算の範囲内で上記第2類型を生成する。
【0050】
図12に配電線相振替処理S515の詳細を示している。同図は配電線相振替を配電線の一箇所でのみ行い、新設区間40において変圧器(既設変圧器及び新設変圧器)が接続している電柱の総数を変数mとしたときm−1箇所(隣接する変圧器の間の箇所)について配電線相振替を行った場合を示している。尚、図13に示すように、配電線相振替の方法としては、配電線の一箇所について2つの方法が考えられる。
【0051】
まず配電線相振替処理部133は、各振替箇所について、振替箇所以降の各変圧器の接続相を、上記2つの振替方法に従って変更した全ての類型(第3類型)について合計容量差最大値を求める。次に配電線相振替処理部133は、求めた合計容量差最大値の中で最小の値である第3合計容量差最大値SKを求める(S5151)。図14に配電線相振替処理S515に際して配電線相振替処理部133によって生成されるワークテーブル1400の一例を示す。
【0052】
図5に戻って、類型決定処理部13は、第1合計容量差最大値S、第2合計容量差最大値SJ、及び第3合計容量差最大値SKのうちの最小値をとる類型を特定し、特定した類型を示す情報を出力装置55に出力する(類型決定処理S516)。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態の電圧不平衡解消支援装置10によれば、既設変圧器の各相の合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した類型(第一類型)、既設変圧器又は新設変圧器の夫々について接続相の振替を行った類型(第二類型)、配電線の相振替を行った類型(第三類型)のうち合計容量差最大値が最小となる類型を特定するので、三相配電線の電圧不平衡を確実に解消することができる。
【0054】
また電圧不平衡解消支援装置10を用いることで、電力会社等における電圧管理業務が大幅に軽減される。また高価な電圧補償機器を設置することなく、三相配電線の電圧不平衡を確実に解消することができる。
【0055】
また共用変圧器には夜間温水器等の負荷が接続していることが多く、そのような負荷は三相配電線の電圧不平衡を誘発する要因となりやすいが、本実施形態の電圧不平衡解消支援装置10は、共用変圧器の単相接続分も考慮して最適な類型を決定するので、三相配電線の電圧不平衡を確実かつ有効に解消することができる。
【0056】
また電圧不平衡解消支援装置10は、接続相の振替に利用可能な予算の範囲内で接続相の振替を行った第2類型を生成するので、コスト面の制約を考慮した現実的な範囲で電圧不平衡を解消するための最適な方法を求めることができる。
【0057】
また電圧不平衡解消支援装置10は、配電線の相振替に利用可能な予算の範囲内で配電線の相振替を行った第3類型を生成するので、コスト面の制約を考慮した現実的な範囲で電圧不平衡を解消するための最適な方法を求めることができる。
【0058】
以上に説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 情報処理システム
5 通信ネットワーク
6 配電系統監視制御装置
60 系統情報データベース
10 電圧不平衡解消支援装置
11 入力情報受付部
12 系統情報取得部
13 類型決定処理部
131 接続相仮決定処理部
132 接続相振替処理部
133 配電線相振替処理部
41 第1開閉器
42 第2開閉器
43 電柱
44 第1配電線
45 第2配電線
461〜466 変圧器(既設)
467 変圧器(新設)
S513 接続相仮決定処理
S514 接続相振替処理
S515 配電線相振替処理
S516 類型決定処理
600 設備情報テーブル
1400 ワークテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相配電線の電圧不平衡の解消方法であって、
情報処理装置に、
変圧器を新設しようとする三相配電線の区間である新設区間において単相接続している既設変圧器の各相の合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した第1類型を生成し、前記第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値を求めるステップと、
前記新設区間において、前記既設変圧器又は前記新設変圧器の夫々について接続相の振替を行った第2類型を生成し、生成した前記第2類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求め、そのうちの最小値である第2合計容量差最大値を求めるステップと、
前記新設区間において、配電線の相振替を行った第3類型を生成し、生成した前記第3類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求めるととともに、そのうちの最小値である第3合計容量差最大値を求めるステップと、
前記第1合計容量差最大値、前記第2合計容量差最大値、及び前記第3合計容量差最大値のうちの最小値をとる前記類型を特定し、特定した前記類型を示す情報を出力するステップとを実行させることを特徴とする三相配電線の電圧不平衡の解消方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三相配電線の電圧不平衡の解消方法であって、
前記既設変圧器又は前記新設変圧器の少なくともいずれかに共用変圧器が含まれている
ことを特徴とする三相配電線の電圧不平衡の解消方法。
【請求項3】
請求項1に記載の三相配電線の電圧不平衡の解消方法であって、
前記情報処理装置に、さらに
前記接続相の振替に利用可能な予算と前記接続相の振替に要する費用とを記憶するステップと、
前記予算の範囲内で前記類型を生成するステップと
を実行させることを特徴とする三相配電線の電圧不平衡の解消方法。
【請求項4】
請求項1に記載の三相配電線の電圧不平衡の解消方法であって、
前記情報処理装置に、さらに
前記配電線の相振替に利用可能な予算と前記配電線の相振替に要する費用とを記憶するステップと、
前記予算の範囲内で前記類型を生成するステップと
を実行させることを特徴とする三相配電線の電圧不平衡の解消方法。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記類型決定処理部が出力する前記類型を示す情報には、
前記既設変圧器及び前記新設変圧器の夫々が接続する相を示す情報、配電線の前記相振替を行う箇所を示す情報のうちの少なくともいずれかが含まれている
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
三相配電線の電圧不平衡の解消方法に用いる情報処理装置であって、
変圧器を新設しようとする三相配電線の区間である新設区間において単相接続している既設変圧器の各相の合計容量が最小の相に新設変圧器を接続した第1類型を生成し、前記第1類型における各相の合計容量の差の最大値である第1合計容量差最大値を求める接続相仮決定処理部と、
前記新設区間において、前記既設変圧器又は前記新設変圧器の夫々について接続相の振替を行った第2類型を生成し、生成した前記第2類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求め、そのうちの最小値である第2合計容量差最大値を求める接続相振替処理部と、
前記新設区間において、配電線の相振替を行った第3類型を生成し、生成した前記第3類型の夫々について各相の合計容量の差の最大値を求めるととともに、そのうちの最小値である第3合計容量差最大値を求める配電線相振替処理部と、
前記第1合計容量差最大値、前記第2合計容量差最大値、及び前記第3合計容量差最大値のうちの最小値をとる前記類型を特定し、特定した前記類型を示す情報を出力する類型決定処理部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−101564(P2011−101564A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256488(P2009−256488)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】