説明

上下水道プラントの運転状況監視システム

【課題】上下水道プラントのオペレータの運用を支援する。
【解決手段】運用パラメータデータ11aの周期で、上水道プラント3の監視対象データ種別の実績データ14aを収集する実績データ収集手段22と、監視対象データ種別ごとに、運用予定データ13aと実績データ14aとを比較して、差分に対応する評価値を算出して運転状況データ15aに蓄積する運転状況評価手段23と、オペレータデータ12aを読み出して、上水道プラント3の運用を担当したオペレータの識別子ごとに、オペレータが担当したシフト時間帯の運用状況データ15aとを対応づけて統計処理した運用管理データ16aを記憶する統計処理手段26と、運転状況データ15aに基づいて、運転予定と実績との比較結果を表示装置に表示するとともに、運用管理データ16aに基づいて、所定のオペレータの運用データを前記表示装置に表示する運転状況表示手段25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道プラントの運用を監視する上下水道プラントの運転状況監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道プラントなどのプラントの運用業務において、通常オペレータは、オペレータ自身の経験と勘に基づいて、機器の設定値や機器の運転または停止のタイミングなどの運転パラメータを決定している。また、オペレータ単独で決定するのではなく、数人のオペレータが討議して運転パラメータを決定する場合や、管理部門の指示で決定している場合もある。
【0003】
一方、昨今の環境問題に対する意識の高まりに伴い、上下水道プラントにおいても、CO2削減やエコ運転などの省エネルギーの運用や、業務管理が期待されている。そこで、オペレータにプラントの稼働状況を把握させる運転評価システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、プラントにおける各種データを使用して、コストを算出し、プラント全体の運転コストを評価するシミュレータが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−59144号公報
【特許文献2】特開2006−260519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1および特許文献2に記載の発明においては、ユーティリティ費やプラント全体のコストを評価することができるものの、プラントの運用は、オペレータの勘に頼ることになってしまう問題がある。また、プラントを、24時間体制で運用しなければならないため、オペレータによって、その運用に差ができてしまうのは好ましい状態ではない。そこで、経験の浅いオペレータに、安心して運用でき、どのようなオペレータにも一定以上のスキルを備えるよう支援する方法が求められている。
【0006】
また、上記の特許文献1および特許文献2においては、現在の運転状況を表示するので、オペレータは、現在の運転状況について、予定との差分を把握し辛い問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、上下水道プラントのオペレータの運用を支援する運転状況監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、上下水道プラントの運用を監視する上下水道プラントの運転状況監視システムに関する。即ち、本発明の特徴に係る運転状況監視システムは、上下水道プラントから収集する監視対象データ種別と、データの収集の周期を含む運用パラメータデータと、上下水道プラントの監視対象データ種別に対応する運用予定データと、上下水道プラントの運用を担当するオペレータの識別子と、オペレータのシフト時間帯とを対応づけたオペレータデータと、を記憶装置に記憶する設定データ記憶手段と、運用パラメータデータの周期で、上下水道プラントの監視対象データ種別の実績データを収集する実績データ収集手段と、監視対象データ種別ごとに、運用予定データと実績データとを比較して、運転予定データと実績データとの差分に対応する評価値を算出し、監視対象データ種別、運転予定データ、実績データおよび評価値を対応づけて運転状況データに蓄積する運転状況評価手段と、オペレータデータを読み出して、上下水道プラントの運用を担当したオペレータの識別子ごとに、当該オペレータが担当したシフト時間帯の運用状況データとを対応づけて統計処理した運用管理データを記憶装置に記憶する統計処理手段と、運転状況データに基づいて、運転予定と実績との比較結果を表示装置に表示するとともに、運用管理データに基づいて、所定のオペレータの運用データを表示装置に表示する運転状況表示手段とを備える。
【0009】
上下水道プラントのうち、上水を配水する上水道プラントを監視する場合、監視対象データ種別は、配水量、取水量および配水池水位である。運転予定データは、予測配水量データ、予定取水量データおよび予測配水池水位データである。実績データは、実績配水量データ、実績取水量データおよび実績配水池水位データである。
【0010】
上下水道プラントのうち、雨水を河川に流出する下水道プラントを監視する場合、監視対象データ種別は、降水量、雨水流入量、ポンプ吐出量および河川水位である。運転予定データは、予測降水量データ、予定雨水流入量データ、予定ポンプ吐出量および予測河川水位データである。実績データは、実績降水量データ、実績雨水流入量データ、実績ポンプ吐出量および実績河川水位データである。
【0011】
ここで、運用パラメータデータに、警報を出力する閾値が含まれていても良い。この場合、運転状況評価手段において、差分が、閾値を越えた場合、警報を出力する警報通知手段をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、運転状況評価手段は、さらに、直前の実績データも読み出し、実績収集手段によって新たに取得された実績データと、読み出された直前の実績データとを比較して、数値の傾向を算出し、運転状況データに蓄積するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上下水道プラントのオペレータの運用を支援する運転状況監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムのシステム構成と、運転状況監視装置の機能ブロックを説明する図である。
【図2】図1は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムの処理の概要を説明刷るフローチャートである。
【図3】図1は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置のハードウェア構成を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムの運用パラメータデータのデータ構造の一例を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムのオペレータデータのデータ構造の一例を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムの運用予定データのデータ構造の一例を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムの実績データのデータ構造の一例を説明する図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムの運転状況データのデータ構造の一例を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムの運用管理データのデータ構造の一例を説明する図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、各パラメータの予定値と実績値とを一覧表示する画面である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、所定のパラメータの予定値と実績値とを時系列に表示する画面である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、各パラメータの実績値を過去の統計値とともに表示する画面である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の予定値と実績値とを時系列に表示する画面である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、各パラメータの予定値と実績値とをグラフ表示する画面である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の実績が予定より多くなったデータ場合を一覧表示する画面である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の実績が予定より多くなったデータ場合をグラフ表示する画面である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の実績が予定より多くなった後、取水量を変更しなかった場合を一覧表示する画面である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の実績が予定より多くなった後、取水量を変更しなかった場合をグラフ表示する画面である。
【図19】図19は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の実績が予定より多くなった後、取水量を変更した場合を一覧表示する画面である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システムが表示する画面の一例であって、配水量の実績が予定より多くなった後、取水量を変更した場合をグラフ表示する画面である。
【図21】図21は、本発明の変形例に係る運転状況監視システムの運用予定データのデータ構造の一例を説明する図である。
【図22】図22は、本発明の変形例に係る運転状況監視システムの実績データのデータ構造の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0016】
(運転状況監視システム)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10を説明する。本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10は、上下水道プラントのうち、上水道プラントの運転状況を監視するものであるが、後述するように、下水道プラントにも適用することができる。
【0017】
運転状況監視システム10は、運転状況監視装置1、監視制御装置2および上水道プラント3を備える。
【0018】
上水道プラント3は、飲料その他に用いる上水を、各家庭や各建物に供給するためのプラントである。上水道プラント3は、取水場、上水道施設、ポンプ場、配水池および上水管路網を備える。上水管路網は、配水池の上水を、各家庭、各建物等に供給するための配管である。取水場は、河川から取水ポンプで水をくみ上げ、上水道施設に供給する。上水道施設において、河川4からくみ上げられた水が、殺菌および消毒により浄化される。上水道施設において浄化された上水は、ポンプ場に設置されたポンプによって、配水池に供給され蓄積される。配水池に蓄積された上水は、上水管路網を介して各家庭や各建物に供給される。
【0019】
監視制御装置2は、上水道プラント3を監視制御する装置である。監視制御装置2は、上水道プラント3から、各設備や機器のデータを取得して蓄積する。さらに、運転状況監視装置1からの要請に基づいて、所定のプラントデータ41を、運転状況監視装置1に送信する。プラントデータ41とは、上水道プラント3における設備の設定値や実績値などのデータである。
【0020】
運転状況監視装置1は、オペレータに、上水道プラント3の現在の運転状況と、予想とを比較して評価し、その結果を表示する。さらに運転状況監視装置1は、オペレータの運用を支援するために、過去の情報も蓄積するとともに、統計処理し、オペレータに表示する。
【0021】
運転状況監視装置1と監視制御装置2とは、通信ネットワーク4を介して相互に接続されている。通信ネットワーク4は、例えば、インターネットや社内LANなどである。
【0022】
図1に示す例では、運転状況監視装置1と、監視制御装置2は、別々の装置に実装されているが、同じ装置であっても良い。
【0023】
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10における処理の概要を説明する。図2においては、例えば運用の単位を1日とし、1日の始めに運用予定を入力し、1日の終わりに統計処理をする場合について説明する。
【0024】
まずステップS1において、運転状況監視装置1に、設定データが入力される。この設定データは、上水道プラント3を運転状況監視制御装置1が監視するための運用パラメータデータ、運用をするオペレータのオペレータデータ、上水道プラント3の運転予定データなどである。ステップS1で入力される運用パラメータデータには、監視制御装置2にモニタリングをする周期や、モニタリング対象の設備の識別子などが含まれる。
【0025】
次にステップS2において、運転状況監視装置1は、モニタリング周期の経過を待機する。モニタリング周期が経過すると、ステップS3において、運転状況監視装置1は、運転制御装置2に、監視対象の設備の識別子を含む取得リクエストを送信するとともに、そのレスポンスとして、運転制御装置2からその実績データを取得する。ステップS4において運転状況監視装置1は、ステップS3で取得した実績データと、ステップS1で入力された運転予定データ13とを比較して、運転状況を評価する。
【0026】
ステップS5において、運転状況監視装置1は、ステップS4で算出した運転状況の評価において、予定と実績の差分が、所定の閾値より大きいか否かを判定する。所定の閾値内に収まっている場合、ステップS7に進む。所定の閾値内に収まっていない場合、運転状況監視装置1は、ステップS6において警報を通知する。
【0027】
ステップS7において、運転状況監視装置1は、ステップS4の結果得られた運転状況の評価や、運転状況などを、表示装置に表示する。このとき運転状況監視装置1は、予想と実績とを比較したグラフや表、過去の実績と今回の実績とを比較したグラフや表などを生成し、表示装置に表示する。
【0028】
さらに、ステップS8において運転状況監視装置1は、例えば1日の運用予定が終了するか判定する。終了している場合、ステップS8において、運転状況監視装置1は、ステップS3で取得した実績データや、ステップS4で算出した運転状況の評価をもとに、統計処理する。さらに、運転状況監視装置1は、ステップS1で入力されたオペレータデータに基づいて、その運用を担当したオペレータのシフトなどの情報とを関連づけて、統計処理する。運用予定が終了しない場合、ステップS2に戻り、次のモニタリングのタイミングまで待機する。
【0029】
(運転状況監視装置)
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置1を説明する。図3に示すように、本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置1は、中央処理制御装置101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103および入出力インタフェース109が、バス110を介して接続されている。入出力インタフェース109には、入力装置104、表示装置105、通信制御装置106、記憶装置107およびリムーバブルディスク108が接続されている。
【0030】
中央処理制御装置101は、入力装置104からの入力信号に基づいてROM102から運転状況監視装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、さらに記憶装置107に記憶されたオペレーティングシステムを読み出す。さらに中央処理制御装置101は、入力装置104や通信制御装置106などの入力信号に基づいて、各種装置の制御を行ったり、RAM103や記憶装置107などに記憶されたプログラムおよびデータを読み出してRAM103にロードするとともに、RAM103から読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、データの計算または加工など、後述する一連の処理を実現する処理装置である。
【0031】
入力装置104は、操作者が各種の操作を入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を作成し、入出力インタフェース109およびバス110を介して中央処理制御装置101に送信される。表示装置105は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイなどであり、中央処理制御装置101からバス110および入出力インタフェース109を介して表示装置105において表示させる出力信号を受信し、例えば中央処理制御装置101の処理結果などを表示する装置である。通信制御装置106は、LANカードやモデムなどの装置であり、運転状況監視装置1をインターネットやLANなどの通信ネットワークに接続する装置である。通信制御装置106を介して通信ネットワークと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インタフェース109およびバス110を介して中央処理制御装置101に送受信される。
【0032】
記憶装置107は半導体記憶装置や磁気ディスク装置であって、中央処理制御装置101で実行されるプログラムやデータが記憶されている。リムーバブルディスク108は、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、入出力インタフェース109およびバス110を介して中央処理制御装置101に送受信される。
【0033】
本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置1の記憶装置107は、運転状況監視プログラムを記憶するとともに、運用パラメータデータ記憶部11、オペレータデータ記憶部12、運転予定データ記憶部13、実績データ記憶部14、運転状況データ記憶部15および運用管理データ記憶部16を備える。また、運転状況監視プログラムが運転状況監視装置1の中央処理制御装置101に読み込まれ実行されることによって、設定データ入力手段21、実績データ収集手段23、運転状況評価手段23、警報通知手段24、運転状況表示手段25、統計処理手段26およびオペレータ支援検索手段27が、運転状況監視装置1に実装される。
【0034】
次に、図1を参照して、運転状況監視装置1の各部について詳述する。
【0035】
運用パラメータデータ記憶部11は、運用パラメータデータ11aを記憶する記憶領域である。運用パラメータデータ11aは、運転状況監視装置1が運用される際のパラメータのデータである。例えば、運用状況監視装置1が上水道プラント3から収集する監視対象データ種別と、データの収集の周期および警報を出力する閾値を含む。さらに、この監視対象データ種別に関連する上水道プラント3の設備の識別子である監視対象識別子を含む。
【0036】
運用パラメータデータ11aは、例えば図4に示すデータである。運用パラメータデータ11aは、プラントの機器性能データ、モニタリング周期、監視対象識別子、監視対象データ種別、実績と予想の偏差閾値を含む。プラントの機器性能データは、例えば上水道プラント3における取水ポンプの場合、その取水ポンプの識別子と、取水ポンプの定格容量を対応づけたデータである。モニタリング周期は、運転状況監視装置1が、監視制御装置2に実績データの取得をリクエストする周期である。監視対象識別子は、運転状況監視装置1が、監視する上水道プラント3の機器の識別子である。運転状況監視装置1は、実績データの取得リクエストに、監視対象識別子を含ませて、監視対象の機器のプラントデータを取得する。実績と予想の偏差閾値は、後述する警報通知手段24において、警報を発報するか否かを判断するための閾値である。この閾値は、監視対象識別子や、監視対象データ種別ごとに設定されても良い。
【0037】
本発明の実施の形態においては、運用パラメータデータ11aにおいて、取水ポンプの運転/停止信号、配水量、取水量、取水量設定値、配水池水位の各パラメータのデータを取得する場合について説明する。
【0038】
このように、運用パラメータデータ11aで、モニタリング周期や監視対象機器を特定することにより、プラントデータ41の収集において、監視制御装置2における負荷を軽減することができる。さらに、運転状況監視装置1において、不要なデータを保持する必要がないので、コストを削減することができる。
【0039】
オペレータデータ記憶部12は、オペレータデータ12aを記憶する記憶領域である。オペレータデータ12aは、上水道プラント3の運用を担当するオペレータのデータである。オペレータデータ12aは例えば、オペレータの識別子と、オペレータのシフト時間帯とを対応づけている。さらに、図5に示すように、各オペレータの識別子と、オペレータの経歴、経験年数を対応づける。またグループ単位で運用を担当する場合、オペレータデータ12aは、そのグループを構成するオペレータの識別子と、個々のオペレータの情報とを対応づけても良い。
【0040】
運転予定データ記憶部13は、運転予定データ13aを記憶する記憶領域である。運転予定データ13aは、上水道プラント3の運用予定データである。運用予定データ13aは、例えば、図6に示すように、各家庭への配水量の予測である予測配水量、配水池の水位の予測である予測配水池水位、配水池から取水する取水量の予定の予定取水量である。また、設定値を変更する際は、その変更のタイミングや、機器に対する操作の情報を含む。上水道プラントでは、運用する前に、予測配水量および予測配水池水位から配水量を予定する。季節や時期によって、上水道プラント3が配水する配水量が決まる。一方、配水池においては、常に一定以上貯水することが求められており、予測配水量と勘案された結果、配水量が予定される。
【0041】
このような運転予定データ13aにより、「本日予想される総配水量が、25400mである。この処理に必要な使用電力量は、3400kWを予定している。この運転を実現するためには、0時から4時までは取水ポンプ1号を取水量500mの一定値で運転する。配水池水位の変動状況は、6時に5.5メートルである。また、6時以降は、取水ポンプ2号に切り換えて、取水量を200mの一定値で、22時まで運転する。」などのように、上水道プラント3を運転することができる。
【0042】
運転予定データ13aは、入力装置104から入力される場合もあるし、他の運用を計画するシステムから入力されても良い。
【0043】
実績データ記憶部14は、実績データ14aを記憶する記憶領域である。実績データ14aは、運転状況監視装置1が、監視制御装置2から取得した実績データである。実績データ14aは、図7に示すように、取水ポンプの識別子と、取水ポンプの運転/停止信号、配水量、取水量、取水量設定値、配水池水位などが、関連づけられたデータである。これらのデータは、データを取得した時刻とともに、実績データ14aとして蓄積される。
【0044】
運転状況データ記憶部15は、運転状況データ15aを記憶する記憶領域である。運転状況データ15aは、後述する運転状況評価手段23によって出力されるデータである。運転状況データ15aは、図8に示すように、各パラメータごとに、予定値、実績値、および評価値が対応づけられている。評価値は、予定値と実績値の差分の評価であって、後述する運転状況評価手段23によって算出される。
【0045】
運用管理データ記憶部16は、運用管理データ16aを記憶する記憶領域である。運用管理データ16aは、上水道プラント3の運用を担当したオペレータの識別子ごとに、オペレータが担当したシフト時間帯の運用状況データ15とを対応づけて統計処理したデータである。運用管理データ16aは、運用状況データ15aおよびオペレータデータ12aに基づいて生成される。運用管理データ16aは、様々な統計データを算出したり、後述のオペレータ支援検索手段27によるオペレータ検索などに対応できるようなデータ形式を備える。
【0046】
運用管理データ16aは、例えば図9に示すようなデータを備える。運用管理データ16aは、過去数ヶ月の移動平均、標準偏差のデータ、前年同時期と比較したデータ、オペレータまたはグループごとの運転状況を比較したデータ、過去の情報とそのときの平均処理および傾向処理との関係を示したデータを備える。
【0047】
設定データ入力手段21は、運用パラメータデータ11a、オペレータデータ12aおよび運転予定データ13aを、運用パラメータデータ11、オペレータデータ記憶部12および運転予定データ記憶部13にそれぞれ記憶する手段である。運用パラメータデータ11a、オペレータデータ12aおよび運転予定データ13aは、入力部104からオペレータ等によって入力されても良いし、これらのデータを管理する他の装置から、通信制御装置106および通信ネットワーク4等を介して入力されても良い。
【0048】
実績データ収集手段22は、運用パラメータデータ11aに含まれるモニタリング周期で、監視制御装置2を介して上水道プラント3の監視対象データ種別の実績データを収集する。このとき実績データ収集手段22は、前回の収集から、モニタリング周期を経過したことを検知すると、監視対象データ種別を監視制御装置2に送信し、その実績データ14aを受信する。実績データ収集手段22は、受信した実績データ14aを、実績データ記憶部14に記憶する。
【0049】
運転状況評価手段23は、監視対象データ種別ごとに、運用予定データ13と実績データ14aとを比較して、運転予定データ13aと実績データ14aとの差分に対応する評価値を算出し、監視対象データ種別、運転予定データ、実績データおよび評価値を対応づけた運転状況データ15aを生成する。さらに運転状況評価手段23は、生成した運転状況データ15aを、運転状況データ記憶部15に蓄積する。
【0050】
ここで、運転状況評価手段23は、実績データ14aから現在の設定値や機器の状態を読み込むとともに、運用予定データ13aから予定設定値、予定危機状態、予定計測値などの予定データとを比較する。運転状況評価手段23は、この比較において、実績と予定との差分により、運転状態を判定する。この判定結果は、例えば、差分の値に基づいて算出された、◎(優秀)、○(普通)、△(劣)などのランク評価である。運転状況評価手段23は、個々のパラメータごとに判定しても良いし、さらに全てのパラメータを含めて判定しても良い。この判定結果は、運転状況データ15aに記憶される。
【0051】
運転状況評価手段23は、さらに、直前の実績データ14aも読み出し、実績収集手段22によって新たに取得された実績データと、読み出された直前の実績データ14aとを比較して、数値の傾向を算出し、運転状況データ15aに蓄積する。例えば、運転状況評価手段23は、11時に実績データを新たに取得した場合、前時間の10時に取得したデータと、比較しも良い。さらに、運転状況評価手段は、8時〜10時などの数時間前のデータを取得して、平均や変化量(傾向)なども算出しても良い。これらのデータは、運転状況データ15aとして記憶される。
【0052】
警報通知手段24は、運転状況評価手段23において、差分が、運用パラメータデータ11aに含まれる閾値を越えた場合、警報を出力する。この閾値は、例えば、「数値が20%乖離した場合に警報を発報する」という形式でも良いし、「評価値が△になった場合に警報を発報する」という形式でも良い。また、警報通知手段24は、新たに取得した実績データのみに基づいて警報を発報するか否かを通知しても良いし、その前の時間帯の平均や傾向なども考慮して、警報を発報しても良い。
【0053】
警報通知手段24は、警報を発報する場合、表示装置105上にポップアップを表示したり、音声を出力するなどして、オペレータに通知する。
【0054】
統計処理手段26は、オペレータデータ12aを読み出して、上水道プラント3の運用を担当したオペレータの識別子ごとに、当該オペレータが担当したシフト時間帯の運用状況データ15aとを対応づけて統計処理した運用管理データ16aを生成する。統計処理手段26は、生成した運用管理データ16aを、運用管理データ16に記憶する。
【0055】
統計処理手段26は、例えば、運用パラメータデータ11に記憶されている運用パラメータに対して、運転状況データ15aから過去の運転状況を読み出す。さらに統計処理手段26は、パラメータごとに、過去数ヶ月から現在までの移動平均、標準偏差、前年同時期との比較などを算出する。また、統計処理手段26は、オペレータデータ12から、オペレータやグループの情報を読み出し、各オペレータおよびグループごとに、過去の運転状況との比較や、過去の運転状況データ15aと併せて、平均や傾向などを算出する。統計処理手段26は、このように統計の対象要素となるデータを生成し、運用管理データ16aに蓄積する。
【0056】
運転状況表示手段25は、運転状況データ15aに基づいて、運転予定と実績との比較結果を表示装置105に表示する。さらに運転状況表示手段25は、運用管理データ15aに基づいて、所定のオペレータの運用データを表示装置105に表示する。
【0057】
運転状況表示手段25は、例えば、図10ないし図12に示す画面を、表示装置105に表示する。図10に示す画面は、目標値の設定状況を示している。図10に示す画面においては、監視項目ごとに、予定値である最適設定値、実績値である現在地などを一覧表示している。さらに、図10に示す画面においては、運転状況評価手段23によって算出された評価が対応づけられている。また、各監視項目について、閾値である許容範囲も対応づけられている。図10に示す画面により、オペレータは、評価の低い項目、高い項目を容易に特定することができる。
【0058】
図11に示す画面は、所定の監視項目について、その時系列のデータの流れを表示している。図11に示す例では、監視項目「送水量」について、時間ごとに、最適設定値、実績値、運用に関する評価が対応づけられている。図11に示す画面により、オペレータは、時系列の評価を把握することができ、評価が悪くなったタイミングなどを把握することができる。また、オペレータは、時間ごとの過去の運用状況や、これからの運用予定を把握して、現状を把握することができる。
【0059】
図12に示す画面は、現在の状況と、過去の統計データを併せて表示している。図12に示す画面により、オペレータは、トータルの運転状況について、現状、短期間の状況、長期にわたる運用状況などを把握することができる。これにより、オペレータは、短期的および長期的な運転状況を把握することができる。
【0060】
オペレータ支援検索手段27は、オペレータが過去の運用を参考にしたい場合に、過去の運用管理データ16を検索する手段である。例えば、現状の数値や前時間の数値などを入力すると、オペレータ支援検索手段27は、運用管理データ16aから同様の状況を検索する。オペレータ支援検索手段27は、同様の状況の各設備の設定値や取水値の水位などの情報を表示装置105に表示する。また、オペレータ支援検索手段27は、さらにオペレータの識別子をキーに、検索しても良い。例えば、新人のオペレータが、現状の数値を入力するとともに、ベテランのオペレータの識別子を入力すると、オペレータ支援検索手段27は、そのベテランのオペレータが過去に運用した同様の状況のデータを検索する。これにより、新人のオペレータは、ベテランのオペレータの運用を参考にして、上水道プラント3を運用することができる。
【0061】
(上水道プラントの運用例)
次に、図13ないし図20を参照して、上水道プラント3の浄水場を対象とした場合の取水量を運転状況を監視する場合について説明する。ここでは特に、省エネを意識した上水道プラント3の運用を説明する。
【0062】
上水道プラント3の浄水場を運用する場合、需要家の使用状況により変動する配水量に対して、需要家への配水が滞らないように取水量をなるべく一定になる様に取水ポンプを運転/停止するのが望ましい。このとき、配水池のバッファの有効活用が期待される。
【0063】
一方、省エネを考慮すると、夜間の電力量の安い時間帯になるべく取水ポンプを回し、朝方のピーク前に配水池水位を上限にしておくことが好ましい。また、日中は配水池の水位を下限ギリギリまで取水しないように運用することが期待される。夜間電力量の対象となる22時頃に、配水池が下限なる様に運用することが好ましい。
【0064】
まず、運用パラメータデータ11aとして、取水ポンプ1号〜4号の定格電力、昼夜の電力量割引率、実績と予測の偏差閾値、および1時間おきにモニタリングするモニタリング周期、警報を発報する閾値が、運用パラメータデータ記憶部11に記憶される。さらに、運転オペレータとしてオペレータAおよびオペレータBの情報が、オペレータデータ12aとして、オペレータデータ記憶部12に記憶される。さらに、当日の予測配水量と配水予測値から、配水池水位が朝方に上限となり22時付近で下限となる様に演算された、予測配水池水位および予定取水量設定値が、運転予定データ13aとして、運転予定データ記憶部13に記憶される。
【0065】
実績データ収集手段22は、監視制御装置2からモニタリング対象となる取水ポンプ1号〜4号の運転/停止状態、配水量・取水量・配水池水位の実績値、取水ポンプを運転するための取水量設定値などのプラントデータ41を収集する。実績データ収集手段22は、収集したプラントデータ41を、実績データ14aとして、実績データ記憶部14に記憶する。
【0066】
運転状況評価手段23は、運転予定データ13aから予測配水予測値、予測配水池水位、予定取水量設定値を読み出すとともに、各予測・予定値に対する、実績データ14aとの偏差を算出する。偏差が、運用パラメータデータ11に含まれる閾値を逸脱した場合、運用状況評価手段23は、その旨をに警報通知手段24に通知する。警報通知手段24は、表示装置105等にガイダンス表示を行う。
【0067】
さらに運転状況評価手段23は、予定取水量および実績取水量から、運転が必要な取水ポンプの号機・台数を決定、予定電力量および実績電力量を算出する。次に、運転状況評価手段23は、実績電力量と実績配水量から、運転状況の指標値である当日の1kW当りの配水量を算出する。運転状況評価手段23によって算出した各種情報は、運転状況データ15aとして、運転状況データ記憶部15に記憶される。
【0068】
統計処理手段26は、オペレータデータ12aと運転状況データ15aとを対応づけて、各オペレータの運転方法や過去の最適な運転事例などを収集し、解析する。その結果生成された運転管理データ16aを、運用管理データ記憶部16に記憶する。
【0069】
オペレータは、警報通知手段24による偏差逸脱のガイダンスや、運転状況表示手段25によって表示された画面などを参照する。オペレータは、当日の配水量や取水量の状況を一覧表やグラフにより、取水量設定値の変更や継続を判断し、最適な運転を行う。また、オペレータ支援検索手段27は、同様の配水量の傾向について、運用管理データ16aから検索し、運転方法の参考にすることができる。
【0070】
ここで、図13および図14を参照して、運転状況表示手段25が表示する画面を説明する。図13において、13時時点における、配水量の予測および実績、取水量の設定値および実績値、配水池水位の予定および実績、取水ポンプの電力量の予定および実績が、それぞれ時系列に表示されている。また図14は、図13に表示された各種データを、グラフ表示したものである。図14においては、配水池水位、取水量および電力量について、それぞれ時系列で、予定および実績が表示されている。
【0071】
ここで、配水量予測が大きく外れた場合を説明する。図15および図16に示すように、D101で9時以降の配水量が予想より大きい場合、D102で13時の時点で配水池の水位が予定より大きく逸脱してしまう。配水池水位の下限値が、1.5mの場合、このまま、図17および図18に示すように、D103で取水量設定を変更しない状態で運用を継続すると、D104で19時から24時の時間帯に配水池水位が下限値を下回ってしまう。
【0072】
このケースの場合、完全に配水池が枯渇するまでの水位には至らず、省エネ指標値の1kW当りの配水量は、17.26m/kWと予定より大幅に高い数値となる。これは、良い運転の様に見えるが、水位下限を下回ったことにより、上水道プラント3全体としては、危険な運用結果となってしまう。
【0073】
そこで、本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置1は、11時の時点で配水池水位が予定より大幅にずれてきたことを検知する。さらに運転状況監視装置1は、その旨をガイダンス表示することにより、オペレータに、12時以降の取水量設定値を変更し運用することを、促すことができる。その結果、図19および図20に示す通り、D105で取水量を増やすことにより、配水池水位が下限値を下回ることなく運用することができる。また、D106で65m/kWで運用することができるので、最終的には、省エネ指標値の1kW当りの配水量も予定とほぼ同じ、16.39m/kWを記録することができる。このように、本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置1は、安定した良い運用方法を、オペレータに選択させることができる。
【0074】
このように本発明の実施の形態に係る運転状況監視装置1により、プラントの運用状況を予め与えられ運用条件を逸脱していないかモニタリングし、必要に応じてその旨を通知することにより、上水道プラント3を、最適に運用することができる。
【0075】
このような本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10は、運用パラメータデータ11aおよび運転予定データ13aとを入力するとともに実績データ14aを収集することにより、運転状況評価手段23により、運用予定と実績との差分を比較することができる。従って、省エネルギーとなるよう運用を監視することができる。また、他のシステムの配水量需要予測システム等から、予測配水量および予測配水池水位を運用予定データとして入力することができる。これにより、運転状況監視システム10における運転予定データの入力負荷を軽減することができる。オペレータデータ12aは、運用パラメータデータ11a等のその他の情報についても、勤務管理システムや機器設備管理システムなどと連携することによりさらに、入力負荷を軽減することができる。実績データ14aの収集についても、運用パラメータデータ11aで運転状況監視システム10の監視対象を特定している。これにより、上水道プラント3を制御する監視制御装置2に必要以上の負荷を掛けることがなく、必要な情報のみを収集することができる。
【0076】
また、運転状況評価手段23においては、予測と実績とを比較することにより、この差分を算出することができる。さらに運転状況評価手段23は、予測値と実績値とを取得することにより、プラント、設備、信号等に応じて、移動平均、標準偏差、パターンマッチングなどにより、運転状況を評価しても良い。さらに、運転状況評価手段23は、オペレータデータ12aも考慮して、オペレータごとに運転状況を評価しても良い。このように、運転状況評価手段23は、運転状況監視装置1に入力されるデータを用いて、様々な演算処理により上水道プラント3の運転状況を評価することができる。
【0077】
さらに、運転状況評価手段23によって算出された運転状況データ15aは、データベースとして蓄積される。運転状況データ15aに、
さらに、運転状況データ15aを統計処理した運用管理データ16aを生成し、過去の実績から現在の運転状況を検索することができる。また、オペレータの情報を併せて運用管理データ16aを生成することにより、オペレータ支援検索手段27は、オペレータごとの運用状況、成熟度、運用方法の違いなどを収集することができる。
【0078】
さらに、運転状況表示手段26により、オペレータに運転状況を通知し、また可視化することができる。運転状況表示手段26は、現在の運用状況に対するガイダンスを通知したり、運転状況を一覧表示、グラフ表示などをすることにより可視化する。これにより、対象プラントや設備適切な表示方法を提供することができるので、オペレータの操作性および視認性の向上を支援することができる。
このように、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10によって、例えば上水道プラント3の浄水場のプラント運用として、予め決定された運転パラメータ通りに実際に運用されているかをモニタリングすることができる。これにより、確実に最適な運用を支援することができる。最適運用パラメータと差を可視化することにより、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10は、オペレータの省エネ運転への意識向上を図ることができる。
【0079】
さらに、運転状況データ15aをナレッジシステムやシミュレーションシステムにフィードバックすることにより、オペレータの教育・技術継承などのノウハウとして使用することができる。また、オペレータ支援検索手段27により、過去の運転状況データ15aをオペレータに検索させることにより、経験の浅いオペレータでも状況を見ながら確実にプラントを最適に運用することができる。
【0080】
本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10は、予め決定された運転パラメータ通りに実際に運用されているかを監視する。従って、運転評価システムやシミュレーション技術を活用した最適運転パラメータに対して実運転がその通り運用されているかをリアルタイムに確認することにより、確実に最適運用が実施できる。
【0081】
また、運用予定との差を可視化することにより、オペレータの省エネ運転への意識向上を計ることができる。
【0082】
さらに、近年ベテランオペレータが不足する中で、経験の浅いオペレータでも、状況を見ながら確実にプラントを最適に運用することができる。また、実績との差分状況を上述の運転評価システムやシミュレーションにフィードバックすることにより、差分の状況を解析し、オペレータの判断ミス、シミュレーションの精度不足などを判定し、シミュレーションの精度不足の場合は、精度改善を行うことができる。また、オペレータの判断ミスに対しては、運転パラメータの変更タイミングの良し悪しや改善点を報告することができる。
【0083】
(変形例)
本発明の実施の形態においては、上水道システムの浄水設備について説明したが、他のシステムに適用することもできる。例えば、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10を、雨水を貯留したり河川に放流する雨水のための下水道システムに適用する場合を説明する。
【0084】
雨水のための下水道システムでは、降雨の状況と予測に基づいて、オペレータは雨水ポンプの運転・停止を判断する。また、オペレータは、雨水貯留施設で貯留された雨水の量や濃度、さらに河川の水位などに応じて、貯留された雨水を河川に放流するか否かを判断する。
【0085】
変形例に係る運転監視制御システム10bにおいては、図4等を参照して説明した運転予定パラメータデータ11aの「監視対象識別子」は、例えば、雨水ポンプ1号〜3号の各識別子である。「監視対象データ種別」は、降水量、雨水流入量、ポンプ吐出量および河川水位となる。また、変形例に係る運転予定データ13bは、図20に示すように、予測降水量データ、予定雨水流入量データ、予定ポンプ吐出量および予測河川水位データである。また、運転制御装置1が下水道システムから取得する実績データは、実績降水量データ、実績雨水流入量データ、実績ポンプ吐出量および実績河川水位データである。
【0086】
このような変形例に係る運転制御システム10bにおいても、本発明の実施の形態と同様に、実績と予測の差分を表示したり、数値の乖離が大きい場合に警告を出力することができる。さらに、数値を蓄積して統計データとして表示したり、オペレータが、過去のデータを検索することもできる。
【0087】
また、変形例においては、雨水のための下水道システムに適用する場合を説明したが、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10を、汚水のための下水道システムに適用しても良い。この場合、運転状況監視システム10は、季節、日照などの条件により、予め予定されている注入率や注入量により、水質が制御されているか否かについて監視することができる。
【0088】
このように監視制御装置からプラントデータを収集できるプラント・設備であって、運用目標値が予め決定されているプラントであれば、運用パラメータデータや運転予定データを入力するとともに、プラントから実績データを取得することにより、あらゆるプラントに適用することができる。
【0089】
さらに、本発明の実施の形態に係る運転状況監視システム10を、設備保全システムやシミュレーションシステム等と連携することにより、さらなる運用支援が期待できる。
【0090】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態および変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0091】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 運転状況監視装置
2 監視制御装置
3 上水道プラント
4 通信ネットワーク
11 運用パラメータデータ記憶部
12 オペレータデータ記憶部
13 運転予定データ記憶部
14 実績データ記憶部
15 運転状況データ記憶部
16 運用管理データ記憶部
21 設定データ入力手段
22 実績データ収集手段
23 運転状況評価手段
24 警報通知手段
25 運転状況表示手段
26 統計処理手段
27 オペレータ支援検索手段
41 プラントデータ
101 中央処理制御装置
102 ROM
103 RAM
104 入力装置
105 表示装置
106 通信制御装置
107 記憶装置
108 リムーバブルディスク
109 入出力インタフェース
110 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下水道プラントの運用を監視する上下水道プラントの運転状況監視システムにおいて、
前記上下水道プラントから収集する監視対象データ種別と、データの収集の周期を含む運用パラメータデータと、前記上下水道プラントの前記監視対象データ種別に対応する運用予定データと、前記上下水道プラントの運用を担当するオペレータの識別子と、オペレータのシフト時間帯とを対応づけたオペレータデータと、を記憶装置に記憶する設定データ記憶手段と、
前記運用パラメータデータの前記周期で、前記上下水道プラントの前記監視対象データ種別の実績データを収集する実績データ収集手段と、
前記監視対象データ種別ごとに、前記運用予定データと前記実績データとを比較して、前記運転予定データと前記実績データとの差分に対応する評価値を算出し、前記監視対象データ種別、前記運転予定データ、前記実績データおよび前記評価値を対応づけて運転状況データに蓄積する運転状況評価手段と、
前記オペレータデータを読み出して、前記上下水道プラントの運用を担当したオペレータの識別子ごとに、当該オペレータが担当したシフト時間帯の前記運用状況データとを対応づけて統計処理した運用管理データを前記記憶装置に記憶する統計処理手段と、
前記運転状況データに基づいて、運転予定と実績との比較結果を表示装置に表示するとともに、前記運用管理データに基づいて、所定のオペレータの運用データを前記表示装置に表示する運転状況表示手段
とを備えることを特徴とする上下水道プラントの運転状況監視システム。
【請求項2】
前記上下水道プラントのうち、上水を配水する上水道プラントを監視する場合、前記監視対象データ種別は、配水量、取水量および配水池水位であって、
前記運転予定データは、予測配水量データ、予定取水量データおよび予測配水池水位データであって、
前記実績データは、実績配水量データ、実績取水量データおよび実績配水池水位データである
ことを特徴とする請求項1に記載の上下水道プラントの運転状況監視システム。
【請求項3】
前記上下水道プラントのうち、雨水を河川に流出する下水道プラントを監視する場合、前記監視対象データ種別は、降水量、雨水流入量、ポンプ吐出量および河川水位であって、
前記運転予定データは、予測降水量データ、予定雨水流入量データ、予定ポンプ吐出量および予測河川水位データであって、
前記実績データは、実績降水量データ、実績雨水流入量データ、実績ポンプ吐出量および実績河川水位データである
ことを特徴とする請求項1に記載の上下水道プラントの運転状況監視システム。
【請求項4】
前記運用パラメータデータに、警報を出力する閾値が含まれており、
前記運転状況評価手段において、前記差分が、前記閾値を越えた場合、警報を出力する警報通知手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の上下水道プラントの運転状況監視システム。
【請求項5】
前記運転状況評価手段は、さらに、直前の実績データも読み出し、前記実績収集手段によって新たに取得された実績データと、読み出された前記直前の実績データとを比較して、数値の傾向を算出し、前記運転状況データに蓄積する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の上下水道プラントの運転状況監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−192039(P2011−192039A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57862(P2010−57862)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】