説明

上皮間葉転換のバイオマーカーとしてAXLを使用する方法

本発明は、対象において上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するためのバイオマーカーとしてのAxlの使用に関する。さらに具体的には、本発明は、Axl発現及び/又は活性を測定することにより対象において上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するための様々な方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮間葉転換(EMT,epithelial-to-mesenchymal transition)の発生を検出するためのバイオマーカー及び診断/予後法に関する。さらに具体的には、本発明は、Axlの発現及び/又は活性に関連する診断法、予後法及び治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
Axlは受容体型チロシンキナーゼサブファミリーの一員である。他の受容体型チロシンキナーゼに類似しているが、Axlタンパク質は、IgLとFNIII反復を隣接させている細胞外領域という独特の構造を表し、その一部がキナーゼドメインである細胞内ドメインを含有する細胞内領域を有する。Axlは、ビタミンK依存性タンパク質Gas6(増殖停止特異的遺伝子6,growth-arrest-specific gene 6)のような増殖因子に結合することにより、細胞外マトリックスから細胞質にシグナルを伝達する。Axlの細胞外ドメインは切断されることが可能であり、65kDaの可溶性細胞外ドメインを放出することが可能である。切断により受容体の代謝回転が増強され、部分的に活性化されたキナーゼが生成される(O'Bryan JP, et al (1995) J Biol Chem. 270 (2): 551-557)。しかし、切断されたドメインの機能は分かっていない。
【0003】
ヒトAxl遺伝子及び遺伝子産物に関する構造的情報は、国際公開第03/068983号パンフレットに記載されている。以下の特許公表文献、米国特許第5,468,634号明細書、米国特許第6,087,144号明細書、米国特許第5,538,861号明細書、米国特許第5,968,508号明細書、米国特許第6,211,142号明細書、米国特許第6,235,769号明細書、国際公開第99/49894号パンフレット、国際公開第00/76309号パンフレット、国際公開第01/16181号パンフレット、及び国際公開第01/32926号パンフレットもAxl又は他のチロシンキナーゼ受容体に関する。
【0004】
Axlは細胞増殖の刺激作用に関与している。具体的には、Axlは慢性骨髄性白血病関連癌遺伝子であり、結腸癌及びメラノーマにも関連している。Axlは第19染色体q13.1−q13.2にあるbcl3癌遺伝子に近接近している。Axl遺伝子は脊椎動物種間で進化的に保存されており、間葉における発生中に発現される。
【0005】
Gas6リガンドと相互作用すると、Axlは自己リン酸化され、シグナル伝達事象のカスケードが起こる。Pl3K、AKT、src、Bad、14−3−3、PLC、ERK、S6K(マイトジェン調節キナーゼ)及びSTATは、それぞれこのカスケードに関与していることが知られている。Gas6は、膜リン脂質へのCa++依存性結合を可能にするy−カルボキシグルタミン酸が豊富な領域(GLAドメイン)を有する。Gas6は弱いマイトジェンであり、TNF誘導細胞障害性又は増殖因子離脱によるストレスにさらされたNIH3T3線維芽細胞において抗アポトーシス効果を及ぼす。NIH3T3において、Gas6のAxlへの結合により、Pl3K、AKT、src及びBadが活性化される。
【0006】
Axlは腫瘍形成においていくつかの異なる役割を果たしていることが研究により明らかにされている。Axlは、内皮細胞遊走、増殖及び管形成を含む血管新生行動のキーとなる調節因子である。Axlは、ヒト乳癌細胞がインビボにおいて腫瘍を形成するのにも必要とされ、Axlが血管新生と腫瘍形成の両方に極めて重要であるプロセスを調節していることを示している(Holland S. J., Friera A.M., Franci C, Chan E., Atchison R., McLaughlin J., Swift S. E., Pali E., Yam G., Wong S., Lasaga J., Shen M., Yu S., Xu W., Hitoshi Y., Payan D.G, Nor J. E., Powell M.J, and Lorens J. B. (2005) The Receptor Tyrosine Kinase AxI Regulates Angiogenesis and Tumor Growth. Cancer Research 65:9294-9303)。
【0007】
Axl受容体型チロシンキナーゼの活性は腫瘍転移と正の相関をしている。さらに具体的には、Axlは、Axl媒介浸潤に必要とされるMMP−9の発現を増強することが研究により明らかにされている。Axlは、NF−Bκ及びBrg−1の活性化を通じてMMP−9活性を誘導することにより細胞浸潤を促進する(Tai, K-Y et al, Oncogene (2008), 27, 4044-4055)。
【0008】
Axlはヒト神経膠腫細胞において過剰発現されており、Axlを使用して多形神経膠芽腫(GBM)を抱える患者における予後不良を予測することが可能である(Vajkoczy P, Knyazev P, Kunkel A, Capelle HH, Behrndt S, von Tengg-Kobligk H, Kiessling F, Eichelsbacher U, Essig M, Read TA, Erber R, Ullrich A Dominant-negative inhibition of the AxI receptor tyrosine kinase suppresses brain tumor cell growth and invasion and prolongs survival. Proc Natl Acad Sci U S A. (2006)103:5799-804; Hutterer M. et al, Clinical Cancer Res 2008; 14 (1) Jan 1, 2008)。Axlは、その最小侵襲性相当物と比べて高度に侵襲性の肺癌細胞系統においても比較的過剰発現されている(Shieh, Y-S et al, Neoplasia, vol 7, no. 12, Dec 2005, 1058-1064)。したがって、Axlは腫瘍浸潤及び腫瘍進行において重要な役割を果たしていると考えられる。
【0009】
同様に、Axlは、高度に侵襲性の乳癌細胞において発現されているが、低侵襲性の乳癌細胞においては発現されていない。さらに具体的には、Axlシグナル伝達を阻害すると(ドミナントネガティブAxl変異体、Axlの細胞外ドメインに対する抗体により又はAxlの低分子ヘアピン型RNAノックダウンにより)、高度に浸潤性の乳癌細胞の運動性及び浸潤性が減少した。低分子Axl阻害剤は乳癌細胞の運動性及び侵襲性を妨げた。したがって、Axlは、乳癌細胞の運動性/侵襲性を支配するシグナル伝達ネットワークにおける決定的に重要な要素であると理解されている(Zhang, Y-X et al, Cancer Res 2008; 68 (6), March 15, 2008)。
【0010】
メサンギウム細胞(mesangial cell)では、Gas6は分裂促進的効果を有していることが見出されており、糸球体硬化症の進行における役割があり得ることを示していた。Gas6/Axl経路は糸球体腎炎においても役割を果たしていることが証拠により示唆されている(Yanagita M. et al, The Journal of Clinical Investigation, 2002, 110 (2) 239-246)。さらに、Gas6は動脈損傷のモデルにおいて内皮細胞の生存を促進することが研究により明らかにされている。アンジオテンシンIIは、そのAT1受容体を介して、血管平滑筋細胞においてAxl mRNA及びタンパク質受容体を増加することが明らかにされた(Melaragno M. G. et al, Circ Res., 1998, 83 (7): 697-704)。
【0011】
Axlは、免疫系において細胞接着、細胞増殖及び恒常性の調節に関与していることも明らかにされている(Lu Q., 2001 Science 293 (5528): 306-311)。Axl活性化に続いて、以下の現象:アポトーシスの阻害、線維芽細胞及び内皮細胞の「正常」細胞(非形質転換の)生存の増加、血管平滑筋細胞(VSMC,Vascular Smooth Muscle Cell)の遊走(Axlキナーゼの不活化は遊走を遮断する)、血管壁における新生内膜形成の増強(Melaragno M.G. et al, Trends Cardiovasc Med., 1999, (Review) 9 (8): 250-253)並びに病変形成及びアテローム性動脈硬化症の進行への関与が観察されている。
【0012】
本発明は、Axlに関連する新しい診断的、予後的及び治療的適用の提供を意図している。特に、本発明は、上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するための方法を提供しようとしており、この方法は、癌、さらに具体的には、転移性及び薬物耐性癌の治療において治療的意義を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第03/068983号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,468,634号明細書
【特許文献3】米国特許第6,087,144号明細書
【特許文献4】米国特許第5,538,861号明細書
【特許文献5】米国特許第5,968,508号明細書
【特許文献6】米国特許第6,211,142号明細書
【特許文献7】米国特許第6,235,769号明細書
【特許文献8】国際公開第99/49894号パンフレット
【特許文献9】国際公開第00/76309号パンフレット
【特許文献10】国際公開第01/16181号パンフレット
【特許文献11】国際公開第01/32926号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】O'Bryan JP, et al (1995) J Biol Chem. 270 (2): 551-557
【非特許文献3】Tai, K-Y et al, Oncogene (2008), 27, 4044-4055
【非特許文献5】Hutterer M. et al, Clinical Cancer Res 2008; 14 (1) Jan 1, 2008
【非特許文献6】Shieh, Y-S et al, Neoplasia, vol 7, no. 12, Dec 2005, 1058-1064
【非特許文献7】Zhang, Y-X et al, Cancer Res 2008; 68 (6), March 15, 2008
【非特許文献8】Yanagita M. et al, The Journal of Clinical Investigation, 2002, 110 (2) 239-246
【非特許文献9】Melaragno M. G. et al, Circ Res., 1998, 83 (7): 697-704
【非特許文献10】Lu Q., 2001 Science 293 (5528): 306-311
【非特許文献11】Melaragno M.G. et al, Trends Cardiovasc Med., 1999, (Review) 9 (8): 250-253
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の態様は、対象における上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するためのバイオマーカーとしての、Axlの使用に関する。
【0016】
本発明は、Axl発現は上皮間葉転換(EMT)の発生と相関があるという所見に基づいている。本発明者らの知る限りでは、本発明は、そのような相関関係の最初の実証を表している。有利なことに、この所見は、癌、さらに具体的には、転移性及び薬物耐性癌の分野における診断法、予後法及び治療法を提供するための刺激的な新たな機会を開いている。
【0017】
本発明者らは、浸潤−転移カスケードにおける必須のEMT誘導エフェクターとしての受容体型チロシンキナーゼAxlのこれまで認識されていなかった役割を実証した。EMTプログラム活性化により、悪性乳癌細胞の侵襲性及び自然転移並びに薬物耐性表現型に不可欠であるAxl上方調節が生じることを結果は明らかにしている。Axl発現は、間隔マンモグラフィー検出腫瘍及び臨床的に同定された乳腺腫瘍による乳癌患者死亡率と強い相関があり、Axl活性化と転移性疾患の発生間の関連を示唆している。
【0018】
本発明の第二の態様は、
(i)試料を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトから単離するステップと、
(ii)前記試料中のAxlの発現を対照試料と比べて決定するステップであって、対照試料と比べてAxl発現の上方調節が上皮間葉転換(EMT)の発生を示すステップと、
を含む、試料中において上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するための方法に関する。
【0019】
有利なことに、Axlの発現を決定することは、天然ではそれ自体一過性であるEMT事象の発生を検出するための「永久的」マーカーを提供する。したがって、Axl発現の検出は、EMT事象が起きたのかどうかを示す独特の永久的指標を提供する。
【0020】
出願者による研究によれば、これは、EMT関連活性化は悪性細胞に有利である自己分泌Axl−Gas6シグナル伝達ループを確立するという事実によることが明らかになった。Axlはパラ分泌機構を介しても活性化され得る。
【0021】
EMTを起こした腫瘍細胞の検出は、現在のマーカー(例えば、ビメンチン、N−カドヘリン、E−カドヘリンの欠如)が正常ストローマ細胞に存在する間葉細胞骨格系及び接合部タンパク質に基づいているという事実により複雑化されている。腫瘍細胞と周囲のストローマ細胞を区別するのは困難である。Axl発現は、悪性腫瘍細胞に際立った特徴を与える固形腫瘍中の腫瘍細胞に限定される可能性が高い。
【0022】
EMTの可逆性は遠隔部位での転移形成に重要である。Axl発現を使用して転移を検出することが可能である。
【0023】
本発明の第三の態様は、対象由来の試料中のAxl受容体ポリペプチドのレベルを決定することを含み、転移性癌のない対象中のレベルと比べて該ポリペプチドのレベルがより高いことが上皮間葉転換(EMT)の発生を示す、上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することにより対象中の転移性癌を診断する方法に関する。
【0024】
本発明の第四の態様は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す(reversing)ことができる作用薬の活性をモニターする際のAxl又はAxlをコードする遺伝子の使用に関する。
【0025】
本発明の第五の態様は、作用薬を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与すること、及びAxlの活性及び/又は発現をモニターすることを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法に関する。
【0026】
本発明の第六の態様は、
(i)作用薬を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与するステップと、
(ii)処置された及び未処置の細胞、動物又はヒト由来の試料中においてAxl発現を測定するステップと、
(iii)上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す能力の指標として、未処置の試料と比べた場合の処置された試料中のAxlの発現又は活性の増加又は減少を検出するステップと、
を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を検出するための方法に関する。
【0027】
本発明の第七の態様は、
(i)Axl阻害剤を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与すること、
(ii)処置された及び未処置の細胞、動物又はヒト由来の試料中のAxl発現を測定すること、並びに
(iii)Axl阻害活性の指標として、未処置の試料中と比べた場合の処置された試料におけるAxlの発現又は活性の増加又は減少を検出すること、
により上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することを含む、Axl阻害剤の活性をモニターする方法に関する。
【0028】
本発明の第八の態様は、
(i)作用薬をAxl受容体又は前記Axl受容体を発現している細胞に接触させるステップと、
(ii)前記作用薬の存在下で前記Axl受容体活性を測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において測定される活性を対照条件下で測定される活性と比較するステップであって、減少によって、前記作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができると同定されるステップと、
を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法に関する。
【0029】
本発明の第九の態様は、
(i)複数の作用薬をAxl受容体又は前記Axl受容体を発現している細胞に接触させるステップと、
(ii)前記複数の作用薬の存在下で前記Axl受容体活性を測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において測定される前記活性を対照条件下で測定される活性と比較するステップであって、減少によって、前記複数の作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができると同定されるステップと、
(iv)前記複数中に存在するどの作用薬又はどの複数の作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すのかを個別に決定するステップと、
を含む、複数の作用薬をスクリーニングすることにより上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法に関する。
【0030】
第十の態様は、本発明の方法に従って同定される作用薬の、転移性癌の治療のための薬物の調製における使用に関する。
【0031】
第十一の態様は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合される、本発明の方法に従って同定される作用薬を含む医薬組成物に関する。
【0032】
第十二の態様は、
(i)本発明に従った方法を使用して上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定すること、及び
(ii)前記作用薬を薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤と混合させること、
を含む、組成物を調製する方法に関する。
【0033】
本発明の第十三の態様は、Axl阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すための方法に関する。
【0034】
本発明の第十四の態様は、対象にAxl阻害剤を投与することにより上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことを含む、それを必要とする対象において転移性癌を治療するための方法に関する。
【0035】
本発明の第十五の態様は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すための薬物の調製におけるAxl阻害剤の使用に関する。
【0036】
本発明の第十六の態様は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことにより転移性癌を治療するための薬物の調製におけるAxl阻害剤の使用に関する。
【0037】
本発明の第十七の態様は、抗Axl抗体、Axlに対する核酸プローブ又はAxlに対するQPCRプライマーを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキットに関する。
【0038】
第十八の態様は、本発明に従った方法における上で定義されるキットの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
転移は大多数の癌関連死の根底にある。したがって、腫瘍細胞播種を可能にする分子機構の理解を促進することは、極めて重要な健康問題である。上皮間葉転換(EMT)は、癌細胞に悪性進行を促進する増強された遊走性及び生存属性を授ける。EMTエフェクターを特徴付ければ、転移についての新たな洞察及び治療のための新規の道を生み出す可能性がある。マンモグラフィー検出原発性乳癌における受容体型チロシンキナーゼAxlの存在はそれだけで、全体的患者の生存を強力に減少させることを予測し、適合する患者の転移病変は増強されたAxl発現を示していることを本出願者は明らかにした。Axlは、前悪性乳腺上皮細胞において、そのリガンド、Gas6と自己分泌シグナル伝達ループを確立する上皮間葉転換により強力に誘導されることも本出願者は実証した。転移性乳癌細胞におけるエピ対立形質(epi-allelic)RNA干渉解析を使用して、間葉様インビトロ細胞侵襲性に対する、並びに外来及び組織操作された微小環境においてインビボで腫瘍を形成するためのAxl発現の明確な閾値を本出願者は描いた。重要なことに、Axlノックダウンは、2つの異なる光学画像ベースの実験乳癌モデルにおいて、乳腺からリンパ節及びいくつかの主要臓器への高度に転移性の乳癌細胞の拡散を完全に妨げ、全体的生存を増加した。したがって、Axlは、乳癌転移に必要とされる腫瘍細胞EMTの新規の下流エフェクターを表している。Axl発現腫瘍の検出及び標的された治療は、乳癌に対する重要で新しい治療戦略を表す。
【0040】
EMT及び転移におけるAxlの役割
間葉細胞の特徴を獲得すると、上皮癌細胞は、転移に伴う単細胞侵襲性細胞運動性を与えられる(Theirry, 2002 Weinberg, 2007)。
【0041】
上で述べたように、本発明者らは、Axlが浸潤−転移カスケードにおいて必須のEMT誘導エフェクターであることを実証した。EMTプログラム活性化により、悪性乳癌細胞の侵襲性及び自然転移に不可欠であるAxl上方調節が生じることを結果は明らかにしている。Axl発現は、間隔マンモグラフィー検出腫瘍による乳癌患者死亡率と強い相関があり、Axl活性化と転移性疾患の発生間の関連を示唆している。
【0042】
Axlは、最初に、機能的遺伝子スクリーニングにおいて浸潤性細胞遊走のキーとなる調節因子として同定された(Holland S. J., Friera A.M., Franci C, Chan E., Atchison R., McLaughlin J., Swift S. E., Pali E., Yam G., Wong S., Lasaga J., Shen M., Yu S., Xu W., Hitoshi Y., Payan D.G, Nor J. E., Powell M.J, and Lorens J. B. (2005) The Receptor Tyrosine Kinase AxI Regulates Angiogenesis and Tumor Growth. Cancer Research 65:9294-9303)。悪性乳癌細胞におけるAxl発現は、様々な走化性誘導物質(血清、SDF−1)に応答した三次元マトリックスにおける侵襲性に必要であることを本発明者らはここで実証している。これとは対照的に、プレートベースの2Dアッセイ(増殖、スクラッチ)における又は細胞接着に対するAxlノックダウンの効果はごく僅かしか本発明者らは観察しなかった。Axl阻害は、増殖に影響を与えることなく、神経膠腫及び肺癌細胞遊走も阻害する(Angelillo-Scherrer et al., 2005; Shieh et al., 2005)。したがって、共通の主題は、Axlシグナル伝達は悪性腫瘍細胞における間葉遊走性表現型に不可欠であることである。
【0043】
これと一致して、Axlは、Twist、Snail、Slug及びZEP2を含むいくつかの転写因子により誘導されるEMTの新規マーカーを表すことを本発明者らは実証している。上皮細胞におけるこれらの転写因子の発現は、上皮細胞において間葉特徴を一過性に上方調節する正常な発生プログラムを誘発する。前悪性上皮細胞は、局所的ストローマ細胞により産生されるTGFベータなどのコンテクストシグナルを介してEMTを活性化すると考えられている(Weinberg, 2007)。E−カドヘリンなどのEMT関連マーカー発現が腫瘍中では大きく異なるために、このプロセスはインビボでは動的である。実際、Axlは本発明者らの研究では独立した予後判定?因子であり、E−カドヘリンとの変化とは相関していない。EMTに対する臨床的証拠のこのような欠如はよく文書に取り上げられ議論されている。Axl発現はもっと耐久性のあるEMT誘導変化を表していることを本出願者は明らかにしている。
【0044】
Axlが乳腺微小環境からの転移に不可欠かどうかを決定するために、本発明者らは高度に転移性の(インビボ継代された)乳癌細胞系統(MDA−231−DH2LN)を乳腺に移植し、ルシフェラーゼ生物発光のインビボ光学画像により拡散をモニターした。時間的全身光学画像により、全ての対照マウスにおいて移植の28日以内に、リンパ節、肺、卵巣及び腎臓への広範囲なMDA−231−DH2LN拡散が明らかになった。自然なリンパ節転移は全ての動物において4週間目にはじめて検出された。臓器転移は9週間の経過観察中ずっと検出された。屠殺時、切除された臓器は個別にスキャンされ、転移を含有することが明らかにされ、後に組織診断により確証された。これとは対照的に、Axlノックダウン細胞(MDA−231−DHLN−AxlshRNA)を坦持するマウス由来の臓器の生物発光によっても組織診断によっても転移は検出されなかった。同所性乳腺部位からの拡散のこの強力な阻害は、Axlが転移に不可欠であることを明らかにしている。
【0045】
総合すると、本発明者らの結果により、Axl発現乳腺腫瘍の検出及びかかる腫瘍を標的にした治療が乳癌治療開発のための重要な新戦略を表していることが示されている。
【0046】
診断ツール
本発明の一態様は、上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するための診断ツールに関する。
【0047】
したがって、第一の態様では、本発明は、対象における上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するためのバイオマーカーとしてのAxlの使用に関する。
【0048】
好ましい一実施形態では、Axlは上皮間葉転換(EMT)の誘導を検出するためのバイオマーカーである。
【0049】
遠隔部位への転移は固形癌による最も一般的な死亡原因である(Gupta 2006, Sporn 1996)。これを実現するために、腫瘍細胞は上皮拘束を捨て、結合複合体を再定義し、基底膜境界を突破するための侵襲的運動性を獲得する。次に、これらの転移細胞はリンパ及び血行循環に血管内侵入し、身体の遠隔部位へ播種する。少数のこれらの転移細胞は毛細血管壁を通って血管外遊出することに成功し、稀に、外来組織ストローマにコロニーを形成する(Weinberg et al)。この悪性過程は、上皮細胞が原腸陥入及び器官形成中に一過性に間葉表現型を帯び、上皮層から離れる単細胞侵襲的運動を可能にする発生プログラムである、上皮間葉転換(EMT)により促進される(Hall, 1985; Thierry, 2002)。EMTプログラムは、結合複合体タンパク質の発現を変化させる、Twist、Snail、Slug及びZeb2を含む転写調節因子の発現を誘導するモルフォゲンシグナル伝達経路のコンテクスト活性化により開始される(Thiery and SLeeman 2006)。EMT遺伝子発現プロファイルは、表現型シフト、ビメンチン及びN−カドヘリンの誘導に伴うE−カドヘリン及びサイトケラチンの抑制を反映している(Weinberg et al 2007)。
【0050】
本発明の別の態様は、悪性度を検出しモニターするためのバイオマーカーとしてのAxlの使用に関する。
【0051】
本発明の別の態様は、腫瘍転移を検出するためのバイオマーカーとしてのAxlの使用に関する。好ましくは、腫瘍は癌腫であり、さらに好ましくは乳癌である。
【0052】
一実施形態では、本発明は、対象が、Axl阻害剤を用いた治療を受けるに適した候補であるかどうかを決定するための診断法を提供する。例えば、Axl発現が上方調節されていることが示されている場合、これはAxl阻害剤を用いる治療に感受性である可能性がある対象を選択するための治療選択肢及び実行、すなわち、個別化医療適用における予後の指針として使用することが可能である。例えば、Axl発現が原発性腫瘍において上方調節されていることが示されている場合、これは転移の可能性が増加していると推測するのに使用することが可能である。この情報は、根治的乳房切除術などのより積極的な抗癌外科的、化学療法的又は放射線治療的処置を必要とする可能性がある対象を選択するための治療選択肢、すなわち、個別化医療適用における予後の指針として使用することが可能である。
【0053】
したがって、本発明の別の態様は、
(i)細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトから試料を単離するステップと、
(ii)前記試料中のAxlの発現を対照試料と比べて決定し、対照試料に対してAxl発現の上方調節がAxl阻害剤を用いる治療に感受性であることを示すステップと、
を含む、Axl阻害剤を用いる治療に対象が感受性であるかどうかを決定するための方法に関する。
【0054】
用語「マーカー」又は「バイオマーカー」とは、上皮間葉転換(EMT)が起こる場合、細胞又は哺乳動物由来の試料中のその発現が変化している又は調節されている、例えば、上方調節されている又は下方調節されている遺伝子又はタンパク質を指すのに本明細書では使用されている。バイオマーカーがタンパク質の場合、発現の調節又は変化は、異なる翻訳後修飾を通じた調節を包含する。
【0055】
翻訳後修飾は、タンパク質切断により又は1若しくは2以上のアミノ酸への修飾基の付加によりタンパク質の特性を変える共有結合プロセッシング事象である。一般的翻訳後修飾には、リン酸化、アセチル化、メチル化、アシル化、グリコシル化、GPIアンカー、ユビキチン化などが挙げられる。検出のためのそのような修飾及び方法の概説は、Mann et al. Nature Biotechnology March 2003, Vol. 21, pages 255-261において見出し得る。
【0056】
好ましい一実施形態では、Axlの上方調節は上皮間葉転換(EMT)の発生を示している。
【0057】
本発明の別の態様は、
(i)細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトから試料を単離し、
(ii)前記試料中のAxlの発現を対照試料と比べて決定し、対照試料に対してAxl発現の上方調節が上皮間葉転換(EMT)発生を示す、
ステップを含む、試料中の上皮間葉転換(EMT)発生を検出するための方法に関する。
【0058】
本発明の別の態様は、対象由来の試料におけるAxl受容体ポリペプチドのレベルを決定し、転移性癌のない対象におけるレベルと比べてポリペプチドのより高いレベルが上皮間葉転換(EMT)の発生を示すことを含む、上皮間葉転換(EMT)発生を検出することにより対象の転移性癌を診断する方法に関する。
【0059】
特に、所望の癌は、いかなる癌腫でも、さらに好ましくは乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、子宮内膜癌及び前立腺癌並びに白血病でも含む。さらに好ましくは、癌は転移性乳癌である。
【0060】
好ましくは、Axl遺伝子の発現又はAxl受容体ポリペプチドのレベルは、抗Axl抗体又は親和性作用薬を使用して測定される。
【0061】
新たな治療薬のための診断
本発明の別の態様は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができ、それによって癌などの増殖性障害の治療において潜在的治療適用を有する作用薬を同定するための診断アッセイに関する。
【0062】
したがって、本発明の一態様は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬の活性をモニターする際のAxl又はAxlをコードする遺伝子の使用に関する。
【0063】
好ましい一実施形態では、Axlの存在は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬の細胞、細胞集団、モデル動物又はヒトへの投与後にモニターされる。
【0064】
本発明の別の態様は、作用薬を細胞、細胞集団、モデル動物又はヒトに投与し、Axlの活性及び/又は発現をモニターすることを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法に関する。
【0065】
好ましい一実施形態では、方法は、作用薬を細胞、細胞集団、モデル動物又はヒトに投与し、未処置の対照試料と比べた場合の前記処置された試料においてAxlの変化した発現を検出することを含む。
【0066】
「変化した発現」とは、未処置の対照試料と比べた場合、処置された細胞由来の試料中における発現の増加、減少又はその他の方法では改変されたレベル又はパターンのことである。
【0067】
用語「発現」とは、対応するmRNAを産生する遺伝子DNA鋳型の転写及び対応する遺伝子産物(すなわち、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質)を産生するこのmRNAの翻訳の他にも翻訳後に修飾されている可能性のある1又は2以上の形でのタンパク質の「発現」のことである。
【0068】
遺伝子発現を含む変化した発現の検出は、当技術分野で公知の方法のうちのいずれか1つにより、特にマイクロアレイ解析、ウェスタンブロッティングにより又はQPCRなどのPCR技法により実施され得る。変化した発現は、本明細書に記載されるELISA、PET又はSELDI−TOF MSなどの方法を使用して及び2Dゲル電気泳動などの解析技法をさらに使用して試料のタンパク質含有量を解析することによっても検出され得る。このような技法は、タンパク質の別の翻訳後修飾された形態の形で変化した発現を検出するのに特に有用であることが可能である。
【0069】
本発明の別の態様は、
(i)作用薬を細胞、細胞集団、モデル動物又はヒトに投与すること、
(ii)処置された及び未処置の細胞、動物又はヒト由来の試料においてAxl発現を測定すること、並びに
(iii)上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す能力の指標として、未処置の試料と比較した場合の処置された試料におけるAxlの発現の増加又は減少を検出すること、
を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を検出するための方法に関する。
【0070】
阻害はいかなるレベルで(例えば、遺伝子発現レベル又はタンパク質レベルで)あってもよい。
【0071】
本発明のさらに別の態様は、
(i)Axl阻害剤を細胞、細胞集団、モデル動物又はヒトに投与すること、
(ii)処置された及び未処置の細胞、動物又はヒト由来の試料においてAxl発現を測定すること、並びに
(iii)Axl阻害活性の指標として、未処置の試料と比較した場合の処置された試料におけるAxlの発現又は活性の増加又は減少を検出すること、
により上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することを含む、Axl阻害剤の活性をモニターする方法に関する。
【0072】
この態様では、好ましくは、試料はタンパク質解析により、さらに好ましくはELISA、PET、フローサイトメトリー、SELDI−TOF MS又は2−D PAGEにより解析される。
【0073】
本明細書で使用されるように、処置された又は未処置の細胞由来の試料は、組織培養物又は動物又はヒト由来であることが可能である細胞の集団由来のライセート、抽出物又は核酸試料であることが可能である。タンパク質解析では、試料は組織培養物上清であることが可能である。細胞は個体から単離されることが可能である(例えば、血液、血清若しくは血漿試料由来の全細胞)又は生検などの組織試料の一部であることが可能である。
【0074】
好ましくは、細胞の集団は細胞培養物である。
【0075】
好ましい細胞型は、HT29などの結腸腫瘍細胞系統、A549などの肺腫瘍細胞系統、A498などの腎腫瘍細胞系統、HT13などの膀胱腫瘍細胞系統、MDA−MB−231などの乳腺腫瘍細胞系統、AN3CAなどの子宮内膜腫瘍細胞系統、MESSA DH6子宮肉腫細胞などの子宮腫瘍細胞系統、Hep2Gなどの肝腫瘍細胞系統、DU145などの前立腺腫瘍細胞系統、Cem T細胞などのT細胞腫瘍細胞系統、MiaPaCa2などの膵腫瘍細胞系統から選択される。代わりに、細胞は腫瘍生検の組織学的試料(例えば、レーザーキャプチャー顕微鏡手術により採取される試料)の形であり得る。生検試料中の遺伝子発現を検出するための適切な方法は、本明細書で同定される遺伝子を認識する抗体を使用するFISH又は免疫組織化学技法を使用することの他にも試料のタンパク質組成を解析するための方法を含む。
【0076】
別の代案では、細胞はPBMCなどの血液細胞培養物でもよい。本明細書で使用されるように、用語「PBMC」とは、末梢血単核球のことであり、PBL(末梢血リンパ球,peripheral blood lymphocyte)を誘導する。
【0077】
適切には、遺伝子発現の変化を含む発現の変化は哺乳動物又はヒトから採取される試料においてモニターされる。適切な試料には、生検、血液、尿、頬スクレープ、等などの組織試料が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、遺伝子発現は好ましくは腫瘍細胞、特に乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、子宮内膜癌及び前立腺癌並びに白血病などの腫瘍、又はリンパ球などの血液細胞及び好ましくはPBMCなどの末梢リンパ球由来の細胞において検出される。
【0078】
別の実施形態では、変化したタンパク質発現は、哺乳動物又はヒト由来の血清又は血漿又は組織培養上清試料において検出される。
【0079】
本明細書に記載されるように、血清中、及び特に患者の血漿試料中のタンパク質の検出では、試料は取り出され、フローサイトメトリー、ELISA、PET及びSELDI−TOF MSなどのタンパク質解析技法にかけられる。
【0080】
好ましい一実施形態では、方法は、前記試料からRNAを抽出し、QPCRにより遺伝子発現を検出することを含む。
【0081】
別の実施形態では、遺伝子発現は、例えば、ウェスタンブロットによるなどのタンパク質産物を検出することにより検出される。
【0082】
本発明の別の態様は、
(i)作用薬をAxl受容体又はAxl受容体を発現している細胞に接触させるステップと、
(ii)前記作用薬の存在下でAxl受容体活性を測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において測定される活性を対照条件下で測定される活性と比較するステップであって、減少によって、前記作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができると同定されるステップと、
を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法に関する。
【0083】
好ましくは、測定される活性は、Axl受容体の基質のチロシンリン酸化である。
【0084】
さらに好ましくは、測定される活性は、Axl受容体の自己リン酸化である。
【0085】
この特定の実施形態では、好ましくは接触ステップ(i)における細胞は既にAxl遺伝子によりトランスフェクトされている。
【0086】
さらに好ましくは、トランスフェクトされた細胞は、一過的又は安定的にトランスフェクトされている。
【0087】
好ましい一実施形態では、ステップ(iii)における対照条件は、作用薬を活性なAxl遺伝子を欠く細胞に接触させることを含む。さらに好ましくは、前記細胞は変異不活性化型のAxl遺伝子を有する。
【0088】
別の好ましい実施形態では、ステップ(iii)における対照条件は、前記活性を前記作用薬の不在下で測定される活性と比較することを含む。
【0089】
特に好ましい一実施形態では、Axl受容体は、細胞内ドメインの生物学的に活性な部分を含む。
【0090】
好ましい一実施形態では、Axl受容体は、例えば、固相への付着により固定化される。
【0091】
本発明の別の態様は、
(i)複数の作用薬をAxl受容体又はAxl受容体を発現している細胞に接触させるステップと、
(ii)前記複数の作用薬の存在下でAxl受容体活性を測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において測定される活性を対照条件下で測定される活性と比較し、減少によって、前記複数の作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができると同定されるステップと、
(v)前記複数のうちのどの作用薬又はどの複数の作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すかを個別に決定するステップと、
を含む、複数の作用薬をスクリーニングすることにより上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法に関する。
【0092】
好ましくは、上記の本発明の方法において、作用薬は転移性癌を治療することを目的とする。
【0093】
前記方法により同定される作用薬
別の態様は、転移性癌の治療のための薬物を調製する際に上記方法のうちのいずれかに従って同定される作用薬の使用に関する。
【0094】
好ましくは、癌は、乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、子宮内膜癌及び前立腺癌並びに白血病から選択される。さらに好ましくは、癌は乳癌である。
【0095】
遺伝子/タンパク質マーカーの変化した発現を測定する
遺伝子及びタンパク質発現のレベルは、いくつかの異なる技法を使用して決定し得る。
【0096】
(a)RNAレベルで
遺伝子発現はそのRNAレベルで検出することが可能である。RNAは、例えば、酸性フェノール/グアニジン イソチオシアン酸抽出(RNAzol B; Biogenesis社製)、RNeasy RNA調製キット(Qiagen社製)又はPAXgene(PreAnalytix社製、Switzerland)を使用することを含むRNA抽出技法を使用して細胞から抽出し得る。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイフォーマットは、核ランオンアッセイ(nuclear run-on assay)、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(Melton et al., Nuc. Acids Res. 12:7035)、ノーザンブロッティング法及びインサイチュハイブリダイゼーション法を含む。遺伝子発現は、下に記載されるマイクロアレイ解析により検出することも可能である。
【0097】
ノーザンブロッティング法では、RNA試料は、先ず変性条件下のアガロースゲル中での電気泳動を介してサイズにより分離される。次に、前記RNAは膜に移され、架橋され、標識プローブとハイブリダイズされる。ランダムプライムド(random-primed)、ニックトランスレイティッド(nick-translated)又はPCR作製DNAプローブ、インビトロ転写RNAプローブ、及びオリゴヌクレオチドを含む非同位体又は高度に特異的な活性放射性標識プローブを使用することが可能である。さらに、部分的にのみ相同性を有する配列(例えば、異なる種由来のcDNA又はエキソンを含有する可能性のあるゲノムDNA断片)をプローブとして使用し得る。
【0098】
ヌクレアーゼ保護アッセイ(Nuclease Protection Assays)(例えば、リボヌクレアーゼ保護アッセイとS1ヌクレアーゼアッセイの両方)は、特定のmRNAの検出及び定量化に極めて感受性の方法を提供する。NPAの基礎はRNA試料へのアンチセンスプローブ(放射性標識又は非同位体の)の溶液ハイブリダイゼーションである。ハイブリダイゼーション後、一本鎖、非ハイブリダイズドプローブ及びRNAはヌクレアーゼにより分解される。残りの保護された断片はアクリルアミドゲル上で分離される。NPAは、いくつかのRNA種の同時検出を可能にする。
【0099】
インサイチュハイブリダイゼーション(ISH,in situ hybridization)法は、細胞又は組織における特定のmRNAの局在化のための強力で多用途のツールである。プローブのハイブリダイゼーションは細胞又は組織内で起こる。細胞構造は前記手順の間ずっと維持されるために、ISHは組織試料内のmRNAの位置についての情報を提供する。
【0100】
手順は、中性緩衝ホルマリンに試料を固定し、パラフィン内に組織を包埋することから始める。次に、前記試料は薄片にスライスされ、顕微鏡スライド上にのせられる。代わりに、組織は凍結したまま薄片にされ、パラホルムアルデヒドにポスト固定されることが可能である。前記切片を脱脂して再水和するための一連の洗浄後、プローブ接近性を増加させるためのプロテイナーゼK消化が実施され、次に、標識プローブが試料切片にハイブリダイズされる。放射性標識プローブは液体フィルムがスライド上で乾燥されて視覚化され、非同位体標識プローブは比色分析又は蛍光試薬を用いて都合よく検出される。検出のこの後者の方法は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH,Fluorescent In Situ Hybridisation)法の基礎である。
【0101】
用いることが可能な検出のための方法は、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識及び他の適切な標識を含む。
【0102】
典型的には、RT−PCRを使用してRNA標的を増幅する。このプロセスでは、逆転写酵素を使用してRNAを、その後検出を促進するために増幅することが可能な相補的DNA(cDNA)に変換する。相対定量的RT−PCRは、所望の遺伝子と同時に内部標準を増幅することを含む。内部標準を使用して、前記試料を規準化する。規準化された後は、前記試料にわたって特定のmRNAの相対的存在量の直接比較を行うことが可能である。一般的に使用されている内部標準には、例えば、GAPDH、HPRT、アクチン及びシクロフィリンが挙げられる。
【0103】
多くのDNA増幅法が公知であり、その大半が酵素的連鎖反応に頼っている(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、若しくは自家持続配列複製)、又はDNAがクローニングされているベクターの全て若しくは一部の複製からである。
【0104】
多くの標的及びシグナル増幅(TAS)法が文献、例えば、Landegren, U. et al., Science 242:229-237 (1988)及び Lewis, R., Genetic Engineering News 10:1, 54-55 (1990)におけるこれらの方法の概論に記載されている。
【0105】
PCRは、特に米国特許第4,683,195号及び米国特許第4,683,202号に記載されている核酸増幅法である。PCRを使用すれば診断状況においていかなる既知の核酸でも増幅することが可能である(Mok et al., 1994, Gynaecologic Oncology 52:247-252)。自家持続配列複製(3SR,self-sustained sequence replication)はTASの変異形であり、これは、酵素カクテル及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーにより媒介される逆転写酵素(RT,reverse transcriptase)、ポリメラーゼ及びヌクレアーゼ活性の順続的ラウンドを介した核酸鋳型の等温増幅を含む(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)。ライゲーション増幅反応又はライゲーション増幅システムは、DNAリガーゼ及び標的鎖あたり2種で4種のオリゴヌクレオチドを使用する。この技法はWu, D. Y. and Wallace, R. B., 1989, Genomics 4:560により記載されている。Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197により記載されるように、Qβレプリカーゼ技法では、一本鎖RNAを複製するバクテリオファージQβのRNAレプリカーゼを使用して標的DNAを増幅する。
【0106】
定量的PCR(Q−PCR,Quantitative PCR)は、試料内の転写物の相対量を決定することを可能にする技法である。QPCRを実施するための適切な方法は本明細書に記載されている。
【0107】
代替の増幅技術は本発明において利用することが可能である。例えば、ローリングサークル増幅(Lizardi et al., 1998, Nat Genet 19:225)は、DNAポリメラーゼにより推進される市販の増幅技術(RCAT(商標))であり、等温条件下で線形動力学又は幾何学的動力学のいずれかにより環状オリゴヌクレオチドプローブを複製することが可能である。追加の技法、すなわち鎖置換増幅(SDA,strand displacement amplification; Walker et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:392)は、特定の標的に特有の明確に定義された配列から始める。
【0108】
本明細書で同定されるAxlの発現を検出するのに適したプローブは、適切な容器に試験キットの形態で都合よくパッケージし得る。そのようなキットでは、プローブは、キットがそれ向けに設計されているアッセイフォーマットがそのような結合を必要とする固形支持体に結合され得る。前記キットは、プローブを試料中の核酸にハイブリダイズさせて、探索される試料を処理するのに適した試薬、コントロール試薬、使用説明書、などを含有していてもよい。適切なキットは、例えば、QPCR反応のためのプライマー又はFISHを実施するための標識プローブを含み得る。
【0109】
(b)ポリペプチドレベル
変化した遺伝子又はタンパク質発現は、Axl遺伝子によりコードされるポリペプチドを測定することによっても検出し得る。これは、Axl遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する分子を使用することにより実現され得る。前記タンパク質の存在を検出するために前記ポリペプチドに直接的に又は間接的に結合する適切な分子/作用薬には、ペプチド若しくはタンパク質、例えば、抗体などの天然に存在する分子が挙げられ、又は前記適切な分子/作用薬は合成分子でもよい。
【0110】
Axl遺伝子又はタンパク質に対する抗体は、商業的供給源に由来していても又は当業者によく知られている技法を通じて得られてもよい。一実施形態では、及び変化した発現が、タンパク質バイオマーカーの翻訳後修飾された形態の変化の発現を通じて現れる場合、それらの異なる形態に特異的な抗体を使用し得る。
【0111】
抗体の作製のための方法は当業者には公知である。ポリクローナル抗体が望まれる場合、選択される哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)は、ポリペプチド由来のエピトープ(複数可)を坦持する免疫原性ポリペプチドで免疫される。前記免疫される動物由来の血清は、公知の手順に従って収集され処理される。ポリペプチド由来にエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する血清が他の抗原に対する抗体を含有する場合、前記ポリクローナル抗体は免疫アフィニティークロマトグラフィーにより精製することが可能である。ポリクローナル抗血清を作製し処理するための技法は当技術分野では公知である。より大きな免疫原性応答を生み出すためには、ポリペプチド又はその断片を、動物又はヒトにおける免疫原として使用するために別のポリペプチドにハプテン化し得る。
【0112】
ポリペプチド中のエピトープに対して向けられるモノクローナル抗体も当業者により容易に作製することが可能である。ハイブリドーマによるモノクローナル抗体を作製するための一般的方法論は周知である。不死化抗体産生細胞株は、細胞融合により、及び発癌性DNAを用いたBリンパ球の直接形質転換、又はエプスタイン・バーウイルスを用いたトランスフェクションなどの他の技法によっても作製することが可能である。本発明のポリペプチド中のエピトープに対して産生されるモノクローナル抗体のパネルは、様々な特性について、すなわち、アイソトープ及びエピトープ親和性についてスクリーニングすることが可能である。
【0113】
代替の技法は、例えば、ファージが多種類の相補性決定領域(CDR,complementarity determing region)を有するその被膜表面上にscFv断片を発現するファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。この技法は当技術分野で周知である。
【0114】
本発明の目的のために、用語「抗体」は、それとは反対に特定されていなければ、全抗体、又は標的抗原に対するその結合活性を保持している全抗体の断片を含む。そのような断片には、Fv、F(ab’)及びF(ab’)断片の他にも一本鎖抗体(scFv)が挙げられる。さらに、抗体及びその断片は、例えば、欧州特許出願公開第239400A号明細書に記載されているヒト化抗体でもよい。本明細書で使用される用語「抗体」は、抗体様アフィニティー試薬も包含する。例えば、モノクローナル及びポリクローナル抗体、組換え抗体、抗体のタンパク質分解性及び組換え断片(Fab、Fv、scFv、ダイアボディー)、単一ドメイン抗体(VHH、sdAb、ナノボディー、IgNAR、VNAR)並びに抗体に無関係なタンパク質、これらは、以下の
名称 基盤
アフィボディー(Affibodies) プロテインA、Zドメイン 6kDa
アフィチン(Affitins) Sac7d(スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来)7kDa
アンチカリン(Anticalins) リポカリン 20kDa
DARPins アンキリンリピートモチーフ 14kDa
ファイノマー(Fynomers) Fyn、SH3ドメイン 7kDa
クニッツドメインペプチド 多様なプロテアーゼ阻害剤 6kDa
モノボディー(Monobodies) フィブロネクチン
などの抗体様特異的結合を有するように操作されている。
【0115】
上記のイムノブロッティング法などの標準実験技法を使用して、同一細胞集団中の未処理の細胞と比べた場合のAxl活性の変化したレベルを検出することが可能である。
【0116】
遺伝子発現は、ポリペプチドの翻訳後プロセッシング又は核酸の転写後修飾の変化を検出することによっても決定し得る。例えば、ポリペプチドの差次的リン酸化、ポリペプチドの切断又はRNAの選択的スプライシング、などを測定し得る。ポリペプチドなどの遺伝子産物の発現のレベルの他にもその翻訳後修飾は、特許で保護されたタンパク質アッセイ又は2Dポリアクリルアミドゲル電気泳動などの技法を使用して検出し得る。
【0117】
(a)本発明の抗体を提供する;(b)抗体抗原複合体の形成を可能にする条件下で前記抗体と一緒に生体試料をインキュベートする;及び(c)前記抗体を含む抗体抗原複合体が形成されているかどうかを決定することを含む方法により、Axl発現を検出するための抗体を使用し得る。
【0118】
適切な試料には、脳、乳房、卵巣、肺、結腸、膵臓、精巣、肝臓、筋肉及び骨組織などの組織又はそのような組織由来の腫瘍性増殖物由来の抽出物が挙げられる。他の適切な例には血液又は尿試料が挙げられる。
【0119】
Axlタンパク質に特異的に結合する抗体は、体液又は組織におけるAxlタンパク質の発現を検出する又は定量するために、当業者に周知である診断法又は予後法及びキットにおいて使用することが可能である。これらの試験の結果を使用して、癌の発生若しくは再発及び他の細胞運動性若しくは細胞生存媒介疾患を診断する若しくは予想する、又は薬物用量及び治療の有効性を評価することが可能である。
【0120】
当技術分野で公知のいかなる方法によっても免疫特異的結合について抗体をアッセイすることが可能である。使用することが可能な免疫アッセイには、ウェスタンブロット、免疫組織学、放射性免疫アッセイ、ELISA、サンドイッチ免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光免疫アッセイ及びプロテインA免疫アッセイなどの技法を使用する競合的及び非競合的アッセイシステムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
そのようなアッセイは当技術分野では常用である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照。この文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれている)。
【0122】
本発明において使用するための抗体は、好ましくは固形支持体に結合されている及び/又は適切な試薬、対照、使用説明書などと一緒に適切な容器中のキットにパッケージされている。
【0123】
他の方法には、2D−PAGEが挙げられるが、これに限定されない。しかし、この2D−PAGEは大規模スクリーニングには比較的適切ではない。もっと新しい技法には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS,matrix-assisted laser desorption ionization time of flight mass spectrometry)が挙げられる。MALDI−TOF解析では、複合混合物中のタンパク質は固形金属マトリックスに貼り付けられ、パルスレーザービームで脱離されて、フィールドフリー飛行管を横断する気相イオンを生成し、次にその質量依存性速度に応じて分離される。個々のタンパク質及びペプチドは、タンパク質及びペプチド配列データベースを検索する情報学ツールの使用を通じて同定することが可能である。表面エンハンス型レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SELDI−TOF MS,surface-enhanced laser desorption/ionisation time of flight MS)は、タンパク質が化学的修飾された固体表面に選択的に吸着され、不純物質は洗浄により除去され、エネルギー吸収マトリックスが適用され、前記タンパク質がレーザー脱離質量分析により同定される親和性ベースのMS法である。
【0124】
SELDI−TOF−MSは無傷のタンパク質又は特定のタンパク質の断片のいずれかの出現/消失の検出のために使用することが可能である。さらに、SELDI−TOF−MSは、化学基の付加/除去により引き起こされる質量の差のせいによるタンパク質の翻訳後修飾の検出のためにも使用することが可能である。したがって、単一残基がリン酸化されると、前記リン酸基のせいで80Daの質量変化が起きる。翻訳後修飾のせいだと考えることが可能な分子量のデータベースは、インターネット上において無料でアクセス可能である(http://www.abrf.org/index.cfm/dm.home?avgmass=all)。さらに、タンパク質の翻訳後修飾形態を特異的に認識する、又はタンパク質のあらゆる形態を同等によく認識することができる抗体を用いることにより、SELDI−TOF−MSを使用する親和性ベースのアプローチにより特定のポリペプチドを捕捉することが可能である。
【0125】
アレイ
アレイ技術及びそれに関連する様々な技法及び適用は、一般に数多くの教科書及び文書に記載されている。これらには、Lemieux et al., 1998, Molecular Breeding 4:277-289; Schena and Davis. Parallel Analysis with Biological Chips. in PCR Methods Manual (eds. M. Innis, D. Gelfand, J. Sninsky); Schena and Davis, 1999, Genes, Genomes and Chips. In DNA Microarrays: A Practical Approach (ed. M. Schena), Oxford University Press, Oxford, UK, 1999); The Chipping Forecast (Nature Genetics special issue; January 1999 Supplement); Mark Schena (Ed.), Microarray Biochip Technology, (Eaton Publishing Company); Cortes, 2000, The Scientist 14(17):25; Gwynne and Page, Microarray analysis: the next revolution in molecular biology, Science, 1999, August 6; Eakins and Chu, 1999, Trends in Biotechnology, 17:217-218、及び様々なワールドワイドウェブサイトも挙げられる。
【0126】
アレイ技術は、一般に「一実験一遺伝子」ベースで機能し、低処理量であり遺伝子機能の「全体像」を正しく認識できない分子生物学の従来の方法に関する不利な点を克服する。現在、アレイ技術の主要な応用には、配列(遺伝子/遺伝子変異)の同定及び遺伝子の発現レベル(量)の決定が挙げられる。遺伝子発現プロファイリングは、随意にプロテオミクス技法と組み合わせてアレイ技術を利用し得る(Celis et al., 2000, FEBS Lett, 480(1):2-16; Lockhart and Winzeler, 2000, Nature 405(6788):827-836; Khan et al., 1999, 20(2):223-9)。アレイ技術の他の応用、例えば、遺伝子発見、癌研究(Marx, 2000, Science 289: 1670-1672; Scherf et al., 2000, Nat Genet 24(3):236-44; Ross et al., 2000, Nat Genet 2000, 24(3):227-35)、SNP解析(Wang et al., 1998, Science 280(5366):1077-82)、創薬、薬理ゲノミクス、病気診断(例えば、マイクロフルイディクスデバイスを利用する:Chemical & Engineering News, February 22, 1999, 77(8):27-36)、毒性学(Rockett and Dix (2000), Xenobiotica 30(2):155-77; Afshari et al., 1999, Cancer Res 59(19):4759-60)、及びトキシコゲノミクス(機能的ゲノミクスと分子毒性学の複合型)も当技術分野では公知である。トキシコゲノミクスの目標は、毒物に対する毒性応答とそのような毒物に曝露される対象の遺伝子プロファイルの変化間の相関関係を見つけることである(Nuwaysir et al., 1999, Molecular Carcinogenesis 24:153-159)。
【0127】
本発明の関連では、アレイ技術は、例えば、Axlタンパク質の発現の解析において使用することが可能である。一実施形態では、アレイ技術を使用して、Axl活性に対する候補化合物の効果をアッセイすることが可能である。
【0128】
一般に、試料のいかなるライブラリー又は集団も、前記ライブラリー又は集団のメンバーを空間的に分離することにより、アレイに規則正しく配置し得る。整列させるのに適したライブラリーには、核酸ライブラリー(DNA、cDNA、オリゴヌクレオチドなどのライブラリーを含む)、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質ライブラリーの他にもとりわけリガンドライブラリー等の、任意の分子を含むライブラリーが挙げられる。したがって、本文書において「ライブラリー」に言及する場合、文脈が他の方法で指示しなければ、そのような言及はアレイの形態でのライブラリーへの言及を含むと解釈すべきである。
【0129】
試料(例えば、ライブラリーのメンバー)は、通常、前記試料の拡散及び混合を制限するために、固相、好ましくは固形基板に固定又は固定化される。好ましい実施形態では、DNA結合リガンドのライブラリーを調製し得る。特に、前記ライブラリーは、プラスチック及びガラスなどの膜及び非多孔性基板を含む実質的に平面の固相に固定化し得る。さらに、試料は好ましくは、インデクシング(indexing)(すなわち、特定の試料への参照又は接近)が促進されるように配置される。典型的には、試料は格子構造中のスポットとして貼り付けられる。一般的アッセイシステムは、この目的のために適合させ得る。例えば、アレイは、ウェル中複数の試料で又は各ウェル中単一試料のどちらかでマイクロプレートの表面に固定化し得る。さらに、固形基板は、ニトロセルロースなどの膜でもナイロン膜でもよい(例えば、ブロッティング実験において使用される膜)。代わりの基材には、ガラス又はシリカベースの基板が挙げられる。したがって、試料は、当技術分野で公知のいかなる適切な方法によっても、例えば、電荷相互作用により、又はウェルの壁若しくは底又は膜の表面への化学結合により固定化される。配置し固定する他の手段、例えば、ピペット操作、ドロップタッチ、圧電気法、インクジェットとバブルジェット技術、静電気応用などを使用し得る。シリコンベースチップの場合は、フォトリソグラフィーを利用して試料をチップ上に配置し固定し得る。
【0130】
試料は固体基板上に「スポット」されることにより配置され得、これは手動により、又は試料を付着させるロボット工学の利用により行い得る。一般に、アレイはマクロアレイ又はマイクロアレイと記載される場合があり、その違いは試料スポットのサイズである。マクロアレイは典型的には約300ミクロン又はそれ以上の試料スポットサイズを含有し、既存のゲル及びブロットスキャナーにより容易に撮像し得る。マイクロアレイ中の試料スポットサイズは典型的には直径200ミクロン未満であり、これらのアレイは通常数千のスポットを含有する。したがって、マイクロアレイは、特殊なロボット工学及び撮像装置を必要とする場合があり、これは特別注文製である必要があり得る。計測手段は、Cortese, 2000, The Scientist 14(11):26による概説に広く記載されている。
【0131】
DNA分子の固定化されたライブラリーを作製するための技法は当技術分野では既に記載されている。一般的には、大半の先行技術の方法が、例えば、固形基材上の様々な別々の位置で配列の様々な並べ替えを構築するマスキング技法を使用して、一本鎖核酸分子ライブラリーを合成する方法を記載していた。米国特許第5,837,832号明細書は、大規模組込み技術に基づいてシリコン基材に固定化されるDNAアレイを作製するための改良された方法を記載しており、この特許文献の内容は参照により本明細書に組み込まれている。特に、米国特許第5,837,832号明細書は、本発明の固定化DNAライブラリーを作製するために使用し得る基材上の空間的に定義された位置で特定の組のプローブを合成する「タイリング(tiling)」と呼ばれる戦略を記載している。米国特許第5,837,832号明細書は、以前の技法についての参考文献を提供しており、これらの技法も使用し得る。
【0132】
ペプチド(又はペプチド模倣剤)のアレイも、各異なるライブラリーメンバー(例えば、独特のペプチド配列)をアレイ中の別々の前定義された位置に置くような形で表面上で合成され得る。各ライブラリーメンバーの識別はアレイ中のその空間的位置により決定される。予定された分子(例えば、標的又はプローブ)と反応性ライブラリーメンバー間の結合相互作用が起こるアレイ中の位置が決定され、それによって空間的位置に基づいて反応性ライブラリーメンバーの配列を同定する。これらの方法は、米国特許第5,143,854号明細書、国際公開第90/15070号パンフレット及び国際公開第92/10092号パンフレット;Fodor et al., 1991, Science 251:767; Dower and Fodor, 1991, Ann. Rep. Med. Chem. 26:271に記載されている。
【0133】
検出を支援するため、標的及びプローブは、容易に検出可能な任意のレポーター、例えば、蛍光、生物発光、リン光、放射性などのレポーターで標識され得る。そのようなレポーター、その検出、標的/プローブへのカップリング、などは本文書の別の場所で考察されている。プローブ及び標的の標識化は、Shalon et al., 1996, Genome Res 6(7):639-45でも開示されている。
【0134】
DNAアレイの特定の例には以下の:
フォーマットI:プローブcDNA(約500〜約5000塩基長)は、ロボットスポッティングを使用してガラスなどの固体表面に固定化され、別々に又は混合物のどちらかで一組の標的に曝露される。この方法は、スタンフォード大学で開発されたと広くみなされてきた(Ekins and Chu, 1999, Trends in Biotechnology, 17:217-218)、
フォーマットII:オリゴヌクレオチド(約20〜約25merオリゴ)又はペプチド核酸(PNA,peptide nucleic acid)プローブのアレイは、インサイチュ(チップ上)で又は従来の合成に続いてチップ上での固定化により合成される。前記アレイは、標識試料DNAに曝露され、ハイブリダイズされ、相補的配列の識別/量が決定される。そのようなDNAチップは、GeneChip(登録商標)登録商標下でAffymetrix, inc.より販売されている、
が挙げられる。
【0135】
いくつかの市販されているマイクロアレイフォーマットの例は、例えば、Marshall and Hodgson, 1998, Nature Biotechnology 16(1):27-31に記載されている。
【0136】
データ解析は、アレイを含む実験の重要な部分でもある。マイクロアレイ実験の生データは典型的には画像であり、この画像は、列が例えば遺伝子を表し、カラムが例えば組織などの様々な試料又は実験条件を表し、各セル中の数が例えば特定の試料中の特定の遺伝子の発現レベルを特徴付ける遺伝子発現行列表に変換される必要がある。これらの行列は、根底にある生物学的過程についてのなにか知識を引き出すためには、さらに解析されなければならない。データ解析の方法(目的変数あり及び目的変数なしのデータ解析の他にも生物情報学アプローチを含む)は、Brazma and Vilo J, 2000, FEBS Lett 480(1):17-24に開示されている。
【0137】
上に開示されるように、タンパク質、ポリペプチド、などもアレイに固定化され得る。例えば、抗体は、タンパク質チップを使用するプロテオームのマイクロアレイ解析において使用されてきた(Borrebaeck CA, 2000, Immunol Today 21(8):379-82)。ポリペプチドアレイは、例えば、MacBeath and Schreiber, 2000, Science, 289(5485):1760-1763において概説されている。
【0138】
医薬組成物
追加の態様は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合される上記の方法のいずれかに従って同定される作用薬を含む医薬組成物に関する。
【0139】
別の態様は、
(i)上記の方法のいずれかを使用して上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定すること、及び
(ii)前記作用薬を薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤と混合すること、
を含む組成物を調製する方法に関する。
【0140】
本発明のさらに別の態様は、増殖性障害、さらに好ましくは癌を治療するための薬物の調製における本発明の方法により同定される作用薬の使用に関する。
【0141】
本発明に従った使用のために、上の方法により同定される作用薬は、化合物又は生理的に許容される塩、エステル又は他の生理的に機能的なその誘導体を、1又は2以上の薬学的に許容される担体並びに随意に他の治療及び/若しくは予防成分と一緒に含む、医薬製剤として提示され得る。担体(複数可)は、前記製剤中のその他の成分と適合するという意味で許容されなければならず、そのレシピエントに有害であってはならない。前記医薬組成物は、ヒト及び獣医学においてヒト又は動物使用を目的とし得る。
【0142】
本明細書に記載される医薬組成物の様々な異なる形態に適したそのような賦形剤の例は、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見出され得る。
【0143】
治療用途に許容される担体又は希釈剤は医薬分野では周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985) に記載されている。
【0144】
適切な担体の例には、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ゾルビトールなどが挙げられる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0145】
医薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択肢は、意図される投与経路及び標準薬務に関して選択することが可能である。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はこれらに加えて、いかなる適切な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)、緩衝剤(複数可)、香味剤(複数可)、表面活性剤(複数可)、増粘剤(複数可)、保存剤(複数可)(抗酸化剤を含む)などでも、及び製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする目的で含まれる物質を含み得る。
【0146】
適切な結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、グルコースなどの天然の糖類、無水ラクトース、フリーフローラクトース、ベータラクトース、コーン甘味料、アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ガム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0147】
適切な潤滑剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0148】
保存剤、安定化剤、染料及び香味剤でさえも医薬組成物中に提供され得る。保存剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁剤も使用し得る。
【0149】
医薬製剤は、経口、局所的(経皮、頬側及び舌下を含む)、直腸又は非経口(皮下、皮内、筋肉内及び静脈内を含む)、経鼻並びに肺投与、例えば、吸入による、に適した製剤を含む。製剤は、必要に応じて、個別の投与量単位で都合よく提示され得、薬学の分野で周知の方法のうちのいずれによっても調製され得る。全ての方法が、活性化合物を液体担体又は微粉化固形担体又は両方と結合させ、次に必要ならば前記産物を所望の製剤に成形するステップを含む。
【0150】
担体が固体である経口投与に適した医薬製剤は、最も好ましくは、それぞれが予定量の活性薬剤を含有するボーラス、カプセル又は錠剤などの単位用量製剤として提示される。錠剤は圧縮又は成形により作製され得、1又は2以上の副成分と一緒でもよい。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒などの流動性の形態で適切な機械で活性薬剤を圧縮することにより作製され得、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、平滑剤、表面活性剤又は分散剤と混合してもよい。成形錠剤は、活性薬剤を不活性液体希釈剤と成形することにより作製され得る。錠剤は被膜されてもよく、被膜されない場合は、刻み目を入れてもよい。カプセルは、活性薬剤を単独で又は1若しくは2以上の副成分と混合してカプセル殻に充填し、次に通常の方法でカプセル殻を密封することにより調製され得る。カシェー(cachets)は、活性薬剤がいかなる副成分(複数可)とでも一緒にライスペーパー包膜に密封されるカプセルに類似している。活性薬剤は分散性顆粒としても処方され得、この顆粒は例えば投与前に水に懸濁されても、食物に振りかけられてもよい。前記顆粒は、例えば、サシェー(sachet)に包装し得る。担体が液体である経口投与に適した製剤は、溶液又は水性若しくは非水性液体の懸濁液として、又は水中油型乳濁液として提示されてもよい。
【0151】
経口投与のための製剤には、活性薬剤が適当な放出制御マトリックスに処方される、又は適切な放出制御フィルムで被膜される徐放剤形、例えば、錠剤が挙げられる。そのような製剤は特に予防的使用に都合よくなり得る。
【0152】
担体が固体である直腸内投与に適した医薬製剤は、最も好ましくは単位用量坐薬として提示される。適切な担体には、ココアバター及び当技術分野で一般的に使用されている他の物質が挙げられる。坐薬は、活性薬剤と軟化又は溶融担体(複数可)を混合し、続いて冷却して型で成形することにより都合よく形成され得る。
【0153】
非経口投与に適した医薬製剤には、水性又は油性媒体中の活性薬剤の減菌溶液又は懸濁液が挙げられる。
【0154】
注射用調製物は、ボーラス注入又は持続点滴に適合させ得る。そのような調製物は、使用のために必要となるまで製剤の導入後密封される単位用量又は複数用量容器で都合よく提示される。代わりに、活性薬剤は、使用前は減菌無発熱物質水などの適切な媒体で構成されている粉末形状でよい。
【0155】
活性化合物は、長時間作用型デポー製剤としても処方され得、この製剤は筋肉内注射により、又は移植により、例えば、皮下に又は筋肉内に投与され得る。デポー製剤は、例えば、適切な重合体若しくは疎水性物質、又はイオン交換樹脂を含み得る。そのような長時間作用型製剤は、特に予防的使用に都合がよい。
【0156】
頬側口腔を介した肺投与に適した製剤は、活性化合物を含有し望ましくは0.5〜7ミクロンの範囲の直径を有する粒子がレシピエントの気管支樹に送達されるように提示される。
【0157】
1つの可能性として、そのような製剤は、適切には、例えば吸入装置で使用するためのゼラチンの貫通性カプセルで、又は代わりに、活性薬剤、適切な液状若しくは気体状推進剤並びに随意に界面活性剤及び/若しくは固形希釈剤などの他の成分を含む自己推進製剤として都合よく提示され得る細かく砕かれた粉末の形状である。適切な液状推進剤には、プロパン及びクロロフルオロカーボンが挙げられ、適切な気体状推進剤には二酸化炭素が挙げられる。活性薬剤が溶液又は懸濁液の液滴の形状で分散している自己推進製剤を用いてもよい。
【0158】
そのような自己推進製剤は当技術分野で公知の自己推進製剤と類似しており、確立した手順により調製し得る。適切には、自己推進製剤は、望ましいスプレー特徴を有する手動操作可能な又は自動的に機能するバルブ付きで提供される容器で提示され、有利には前記バルブは、その操作ごとに一定の容量、例えば、25〜100マイクロリットルを送達する定量型である。
【0159】
追加の可能性として、活性薬剤は、加速気流又は超音波攪拌を用いて吸入のための細かい液滴のミストを作製するのに用いられる噴霧器又はネブライザーにおける使用のための溶液又は懸濁液の形状でよい。
【0160】
鼻腔投与に適した製剤には、肺投与のための上記の調製物に一般に類似する調製物が挙げられる。そのような製剤は、調剤されると、望ましくは鼻腔における保持を可能にする10〜200ミクロンの範囲の粒子径を有するはずであり、これは、必要に応じて、適切な粒子サイズの粉末の使用又は適当なバルブの選択により実現し得る。他の適切な製剤には、鼻端のすぐ近くまで持ち上げられる容器から鼻道を通じた急速吸入による投与のための20〜500ミクロンの範囲の粒子径を有する粗粒子、及び水性若しくは油性溶液又は懸濁液中の活性薬剤の0.2〜5%w/vを含む点鼻薬が挙げられる。
【0161】
薬学的に許容される担体は当業者には周知であり、0.1M及び好ましくは0.05Mリン酸緩衝液又は0.8%生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、そのような薬学的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液及び乳濁液でよい。非水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、乳濁液又は懸濁液が挙げられる。非経口媒体には、塩化ナトリウム水溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定油が挙げられる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等などの保存剤及び他の添加剤も存在し得る。
【0162】
局所製剤に適した製剤は、例えば、ゲル、クリーム又は軟膏として提供され得る。そのような調製物は、例えば、創傷若しくは潰瘍の表面に直接広げられて、又は治療される領域に及び全体に適用され得る包帯、ガーゼ、メッシュ若しくは同様のものなどの適切な支持物上に保持されて、創傷又は潰瘍に適用され得る。
【0163】
治療される部位、例えば、創傷又は潰瘍上に直接噴霧する又は振りかけることが可能な液体又は粉末製剤も提供され得る。代わりに、包帯、ガーゼ、メッシュ若しくは同様のものなどの担体は製剤を噴霧される又は振りかけられ、次に治療される部位に適用されることが可能である。
【0164】
本発明の追加の態様に従って、活性化合物(複数可)を例えば混合により担体と併せることを含む、上記の医薬又は獣医学組成物の調製のための方法が提供される。
【0165】
一般に、製剤は、活性薬剤を液体担体又は微粉化された固体担体又は両方と均一に及び密に併せ、次に必要であれば製品を成形することにより調製される。本発明は、作用薬を薬学的に又は獣医学的に許容される担体又は媒体と併せることを含む、医薬組成物を調製するための方法にまで及ぶ。
【0166】
治療的適応
別の態様では、本発明は、Axl阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において上皮間葉転換(EMT)を起こした癌細胞及び他の細胞の増殖及び拡散を阻害する方法に関する。
【0167】
本明細書で使用される「上皮間葉転換を阻害する」とは、対象において上皮間葉転換(EMT)を起こしている及び既に起こした細胞の数の減少のことである。
【0168】
好ましい一実施形態では、それを必要とする対象は癌に罹っている。
【0169】
好ましくは、対象が癌に罹っている場合、本発明の方法は、上皮間葉転換(EMT)を起こしている腫瘍細胞を、前記癌細胞が転移することができないような程度にまで阻害する、すなわち、前記阻害は、前記癌が転移性癌に成長しない、又は既に転移した細胞が身体内の遠隔部位で増殖することができない程度のものである。
【0170】
極めて好ましい一実施形態では、本発明の方法は、上皮間葉転換(EMT)を完了している細胞が身体の遠隔部位まで拡散するのを妨げる、すなわち、前記阻害は、上皮間葉転換(EMT)に依存している転移性細胞の拡散が排除されている程度のものである。
【0171】
本発明の別の態様は、対象にAxl阻害剤を投与することにより、腫瘍細胞が上皮間葉転換(EMT)を起こすのを阻害することを含む、それを必要とする対象において転移性癌を治療するための方法に関する。
【0172】
本明細書で使用されるように、用語「Axl阻害剤」とは、Axl、Axlシグナル伝達経路又はAxlシグナル伝達経路のいずれか1若しくは2以上の成分を阻害することができる分子のことである。一実施形態では、前記分子はAxl又はAxlタンパク質発現を減少する又は妨げることができることになる。
【0173】
特に好ましい一実施形態では、Axl阻害剤は抗Axl抗体である。
【0174】
特に好ましい一実施形態では、Axl阻害剤は小分子キナーゼ阻害剤である。そのような小分子阻害剤の例は、Holland et al. R428, a selective small molecule inhibitor of AxI kinase, blocks tumour spread and prolongs survival in models of metastatic cancer. Cancer Research; 70(4), February 15, 2010に記載されているR428である。
【0175】
特に好ましい一実施形態では、対象は哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。
【0176】
好ましくは、癌は乳癌、前立腺癌、グリオーマ、肺癌、膵臓癌である。
【0177】
転移は癌関連死亡率の90%を占める。腫瘍細胞転移を可能にする分子機構を理解することは主要な健康問題である。本発明者らは、受容体型チロシンキナーゼAxlが原発性乳癌のマンモグラフィー検出後の、患者の全生存率が低いことの強力な予想因子であることを実証した。
【0178】
転移性乳癌細胞は、侵襲性悪性表現型を維持し異なる微小環境において乳腺腫瘍を形成するためにはAxl発現を必要とする。乳房上皮細胞において上皮間葉転換(EMT)が誘導されると、Axl発現が上方調節されてそのリガンドであるGas6との自己分泌シグナル伝達ループを生成する。Axl発現を阻害すれば、乳腺の同所性部位からリンパ節及び主要臓器への転移性拡散が妨げられる。したがって、初期の悪性移行中のAxlの不適切なEMT依存性活性化は、転移を促進し全体的患者生存に悪影響を与え得る。したがって、確立した治療戦略を介してAxlシグナル伝達を崩壊させることは、乳癌などの細胞増殖性障害並びに細胞運動性及び細胞生存媒介障害に対する処置の治療的開発への胸躍らせる道筋を表す。
【0179】
本発明の別の態様は、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すための薬物の調製におけるAxl阻害剤の使用に関する。
【0180】
本発明のさらに別の態様は、上皮間葉転換(EMT)に依存している腫瘍細胞を阻害することにより転移性癌を治療するための薬物の調製におけるAxl阻害剤の使用に関する。
【0181】
別の態様では、本発明は、対象にAxl阻害剤を投与することを含む、それを必要とする対象における転移性癌又は末期癌を治療する方法に関する。
【0182】
別の態様では、本発明は、転移性癌又は末期癌を治療するための薬物の調製におけるAxl阻害剤の使用に関する。
【0183】
別の態様では、本発明は、対象にAxl阻害剤を投与することを含む、それを必要とする対象において転移を阻害する方法に関する。
【0184】
別の態様は、対象にAxl阻害剤を投与することを含む、癌に罹っている対象においてEMT誘導侵襲性を阻害する方法に関する。
【0185】
さらに別の態様は、癌に罹っている対象においてEMT誘導侵襲性を阻害するための薬物の調製におけるAxl阻害剤の使用に関する。
【0186】
好ましくは、Axl阻害剤は抗Axl抗体又は小分子阻害剤である。
【0187】
投与
本発明の医薬組成物は、直腸、鼻腔、気管支内、局所的(頬側及び舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内及び皮内を含む)、腹腔内又はクモ膜下腔内投与に適合され得る。好ましくは、製剤は経口投与製剤である。製剤は、単位投与量の形態で、すなわち、単位用量又は複数の単位用量若しくは単位用量のサブユニットを含有する別々の部分の形態で都合よく提示され得る。例として、製剤は、錠剤及び徐放カプセルの形状であり得るし、薬学の分野で周知のいかなる方法によっても調製し得る。
【0188】
本発明における経口投与のための製剤は、それぞれが予定量の活性薬剤を含有するカプセル、ゲルーレ(gellules)、ドロップ、カシェー、ピル若しくは錠剤として;粉剤若しくは顆粒として;水溶液若しくは非水性溶液中の活性薬剤の溶液、乳濁液若しくは懸濁液として;又は水中油型の液体乳濁液若しくは油中水滴型液体乳濁液として;又はボーラスとして、等などの個別単位として提示し得る。好ましくは、これらの組成物は用量当たり1〜250mg、さらに好ましくは10〜100mgの活性成分を含有する。
【0189】
経口投与(例えば、錠剤及びカプセル)のための組成物では、用語「許容される担体」には、一般的賦形剤、例えば、結合剤、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖及びデンプンなどの媒体;充填剤及び担体、例えば、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、ショ糖、結晶セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸;並びにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム及び他のステアリン酸金属塩、ステアリン酸グリセロールステアリン酸、シリコン油、タルクワックス、油及びコロイドシリカなどの潤滑剤が挙げられる。ペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー香料及び同類のものなどの香味剤も使用することが可能である。着色剤を添加して剤形を容易に識別できるようにすることが望ましい場合がある。錠剤は、当技術分野で周知の方法によって被膜されてもよい。
【0190】
錠剤は、1又は2以上の副成分と一緒に圧縮又は成形により作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、粉末又は顆粒などの流動性の形状の活性薬物を適切な機械で圧縮することにより調製してもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤に浸した粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することにより作製し得る。錠剤は、被膜される又は刻み目を入れてもよいし、活性成分の徐放又は制御放出を提供するように処方されてもよい。
【0191】
経口投与に適した他の製剤には、通常はショ糖とアカシア又はトラガントである香り付けされた基剤に活性薬剤を含むトローチ;ゼラチンとグリセリン、又はショ糖とアカシアなどの不活性基剤に活性薬剤を含むパステル剤;及び適切な液体担体に活性薬剤を含む口腔洗浄薬が挙げられる。
【0192】
他の投与形態は、静脈内に、動脈内に、クモ膜下腔内に、皮下に、皮内に、腹腔内に又は筋肉内に注射され得る、及び減菌又は減菌可能溶液から調製される溶液又は乳濁液を含む。注射剤型は典型的には、用量あたり10〜1000mg、好ましくは10〜250mgの活性成分を含有する。
【0193】
本発明の医薬組成物は、坐薬、ペッサリー、懸濁液、乳濁液、ローション、軟膏、クリーム、ジェル、スプレー、溶液又は散布剤の形状でもよい。
【0194】
経皮投与の代わりの手段は、皮膚パッチの使用による。例えば、活性成分は、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性乳濁液からなるクリームに組み込むことが可能である。活性成分は、白蝋又は白色ワセリン基剤と、必要とされ得るような安定化剤及び保存剤とからなる軟膏に、1〜10重量%の濃度で組み込むことも可能である。
【0195】
投与量
当業者であれば、過度の実験なしで対象に投与する即席組成物のうちの1つの適切な用量を容易に決定することができる。典型的には、医者が個々の患者に最も適していることになる実際の投与量を決定することになり、前記投与量は、用いられる特定の作用薬の活性、その作用薬の代謝的安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、合剤、特定の病状の重症度並びに個々の受けている治療を含む様々な要因によって決まることになる。本明細書に開示される投与量は平均的症例の例である。当然のことながら、もっと高い又はもっと低い投与量のほうがふさわしい個々の例が存在することがあり、そのような例は本発明の範囲内である。
【0196】
本発明に従えば、有効量の作用薬がAxlを阻害するために投与され得る。当然のことながら、この投与量は作用薬の投与の種類に応じてさらに修正されることになる。例えば、救急治療のための「有効量」を実現するためには、非経口投与が好ましい。5%ブドウ糖の水又は生理食塩水中の化合物、又は適切な賦形剤を有する類似の製剤の静脈内注射が最も有効であるが、筋肉内ボーラス注射も有用である。典型的には、キナーゼを阻害するのに有効な濃度で血漿中の薬物の濃度を維持するように、非経口投与量は約0.01〜約100mg/kg、好ましくは0.1〜20mg/kgになる。前記作用薬は、約0.4〜約400mg/kg/日の日総投与量を実現するレベルで毎日1〜4回投与され得る。治療的に有効である活性薬剤の正確な量、及びそのような作用薬が最もうまく投与される経路は、前記作用薬の血液レベルと治療効果があるために必要とされる濃度を比較することにより、当業者により容易に決定される。
【0197】
本発明の作用薬は、薬物の濃度が本明細書に開示される治療指標のうちの1又は2以上を達成するのに十分であるような形でも患者に経口投与され得る。典型的には、前記作用薬を含有する医薬組成物は、患者の病状と合致するように約0.1〜約50mg/kgの経口量で投与される。好ましくは、経口量は約0.5〜約20mg/kgになると考えられる。
【0198】
本発明の作用薬は、所与の薬理学的効果を有するのに必要とされる作用薬の濃度を決定するためにいくつかの生物学的アッセイのうちの1つにおいて試験され得る。
【0199】
パーツのキット
本発明の別の態様は、抗Axl抗体を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキットに関する。
【0200】
本発明のさらに別の態様は、Axlに対する核酸プローブを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキットに関する。
【0201】
本発明のさらに別の態様は、Axlに対する少なくとも1つのQPCRプライマーを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキットに関する。
【0202】
本発明の追加の態様は、上記の方法のいずれかにおける上に定義されるキットの使用に関する。
【0203】
診断及び予後
本発明は、特にAxl阻害剤を用いて治療されている個人において、増殖活性により特徴付けられる疾患の診断又は予後におけるバイオマーカーとしてのAxlの使用に関する。
【0204】
本明細書で使用されるように、用語「予後法」は、疾患、特に癌と診断されたヒト又は動物の疾患の進行に関する予測を可能にする方法を意味する。さらに具体的には、所望の癌には、乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、子宮内膜癌及び前立腺癌並びに白血病が挙げられる。
【0205】
本明細書で使用される用語「診断法」は、ヒト又は動物の中又は表面における癌の存在又は種類の決定を可能にする方法を意味する。適切には、マーカーがあれば、Axl阻害剤を用いた治療の成功を評価することが可能になる。上で考察したように、適切な診断法は、例えば、QPCRプライマー、FISHプローブその他などの本明細書で同定される遺伝子のいずれかに向けられるプローブを含む。
【0206】
本明細書で使用される用語「予後法」は、対象が特定の作用薬/投薬計画を用いた治療に対して感受性である又は応答性である可能性の決定を可能にする方法を意味する。そのような予後法は、特定の治療計画の可能性のある結果、例えば、対象が前記治療に応答する可能性に関する情報、並びに/又は個人が特定の治療計画内でどれほど積極的な治療を受けたらよいのか及び/若しくは個人が放射線/化学療法などの従来の治療法を用いてどれほど積極的な治療を受けたらよいのかに関する情報を提供する。したがって、本明細書に記載される予後法は、個別化医療の分野で重要な適用を有する。
【0207】
したがって、好ましい一実施形態は、個別化医療適用における上記のバイオマーカーの使用に関する。
【0208】
好ましい一実施形態では、個別化医療適用は、Axl阻害剤を用いる治療に対象が感受性である又は応答性であるのかどうかを決定することを目的とする。
【0209】
好ましい一実施形態では、個別化医療適用は、対象が特に転移性癌にかかりやすいかどうかを決定することを目的とする。
【0210】
本発明の別の態様は、対象における上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することを含む、Axl阻害剤を用いる治療に対象が感受性かどうかを決定するための予後法に関する。
【0211】
本発明の別の態様は、Axl阻害剤を用いる治療に対象が感受性である又は応答性であるのかどうかを決定するための予後薬剤中のバイオマーカーとしてのAxlの使用に関する。
【0212】
本発明の別の態様は、対象における上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することを含む、対象が特に転移性癌にかかりやすいかどうかを決定するための予後法に関する。
【0213】
好ましくは、上記の予後法は、
(i)前記対象から試料を得るステップと、
(ii)前記試料におけるAxlの発現を対照試料と比べて決定するステップであって、対照試料に対するAxl発現の上方調節が、Axl阻害剤を用いる治療に対する感受性及び転移性癌に罹る増加した可能性を示すステップと、
を含む。
【0214】
明細書全体を通じて、好ましくは本明細書に記載される方法はエクスビボで実施される。
【0215】
好ましくは、試料はタンパク質解析により、さらに好ましくは、ELISA、PET、フローサイトメトリー、SELDI−TOF MS又は2−D PAGEにより解析される。
【0216】
本発明は、以下の非限定的実施例により、及び以下の図の参照によりさらに例証される。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】Axl発現が乳癌生存率に対する負の予後因子であることを示す図である。(A)免疫化学的に弱い発現(60%)及び強いAxl発現。(B)8年間の臨床的追跡のカプランマイヤー分析。(C)多変量解析。(D)原発性及び転移性ヒト乳癌のマッチドペア(n=16)におけるAxl発現:原発性腫瘍は左側(上.Axl陰性、下.Axl陽性)、転移は右側(上.肝臓、下.骨)。Axl発現は、対応する原発性腫瘍と比べた場合転移のほうが強い傾向であった(p=0.11、マクニマーの検定)。
【図2】Axlが乳癌細胞侵襲性に必要であることを示す図である。エピ対立形質MB−MDA−231乳癌細胞系列におけるAxl発現の(A)FACS及び(B)ウェスタンブロット解析。(C)Axlはリン酸化されている。血清(D)又はSDF−1(E)により誘導されるマトリゲル浸潤アッセイのエピ対立形質解析。MB−MDA−231/shLuc(上パネル)及びMB−MDA−231/shAxl2(下パネル)の3Dマトリゲル解析(F、G)。
【図3】乳房上皮細胞においてAxl活性がEMT誘導因子により上方調節されていることを示す図である。(A)Twistを安定的に発現するMCF10a細胞株でのAxlの表面レベルのフローサイトメトリー解析。(B)対照(wt)及びTwist発現MCF10a細胞からの抽出物は、上皮(E−カドヘリン、β−カテニン)及び間葉(N−カドヘリン)マーカーの変化について解析された。条件培地は、SDS−PAGE及びGas6に対する抗体を使用するイムノブロッティング法により解析された。(C)Twist、Zeb2、Slug、Snailをコードするレトロウイルスベクター又はベクター対照(GFP)で形質導入されたMCF10a細胞は、Axl表面発現(左)及び幾何平均蛍光(右)についてフローサイトメトリーにより解析された。(D)Twist、Zeb2、Slug又はSnailレトロウイルスベクターで形質導入されたMCF10a細胞からの抽出物は、上皮(E−カドヘリン、β−カテニン)及び間葉(N−カドヘリン、ビメンチン)マーカーの変化についてイムノブロッティング法により解析された。(E)播種後72時間目のTwist、Zeb2、Slug又はSnailレトロウイルスベクターで形質導入されたMCF10a細胞の形態。
【図4】組織操作された乳腺腫瘍はAxl発現を必要とすることを示す図である。(A)NODSCIDマウスにおけるMDA−MB−231/GFP−Luc腫瘍組織操作移植片のインビボ画像。時間的腫瘍増殖は、MDA−MB−231/GFP−Luc細胞からルシフェラーゼ生物発光のインビボ光学画像によりモニターされた(i)。腫瘍細胞数(総光粒子)及び放射状浸潤(シグナル径)測定の程度は対照移植片(実線)からであり、MDA−MB−231/GFP−Luc−shAxl2を発現する細胞移植片(破線)は、ポリ乳酸組織操作スキャフォールド内の腫瘍増殖及びコロニー形成のAxl依存性を示している(ii)。切除時の両側スキャフォールドの外観(iii)。移植後28日目の抗ヒトAxlを用いた組織操作腫瘍の免疫組織化学解析(左パネル、ベクター対照;右パネル、shAxl2)(iv)。野生型対照(左パネル)及びshAxl2発現細胞(右パネル)を用いた腫瘍組織操作移植片は、抗ヒトAxlを用いた免疫組織化学により解析された(V)。黒色四角形はコロニー形成及びMDA−MB−231/GFP−Luc細胞の放射状拡散の境界を画定している。対照と比べて、*p<0.05、**p<0.005(ペアードt検定)。N=6マウス/群。(B)初代ヒト微小血管細胞(EC)、血管平滑筋細胞(SMC)及びMDA−MB−231/GFP Luc細胞を含む三細胞移植片の時間的インビボ画像(i)。組織操作脈管構造の存在下で解析された対照(実線)及びshAxl2発現MDA−MB−231細胞移植片(破線)における腫瘍増殖(総光粒子)及び放射状拡散(直径)測定(ii)。切除された腫瘍(28日目)は操作されたヒト微小血管により高度に血管新生化されている(iii)。免疫組織化学解析は、操作された抗ヒトCD31染色血管が開存性及び灌流を示す内腔赤血球(挿入図)を含有することを示している(iv:左パネル.ベクター対照;右パネル.shAxl−2)。対照と比べて*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005(ペアードt検定)。N=7マウス/群。スキャフォールド内血管径(左)は影響を受けておらず、微小血管密度(右)はshAxl2発現により阻害される組織操作MDA−MB−231腫瘍においてわずかに増強されている。
【図5】インビボエピ対立形質解析が乳腺腫瘍形成に必要とされる明確なAxl発現閾値を明らかにしていることを示す図である。(A)無効なAxlターゲティングshRNA(shAxl279)対照と比べたAxlターゲティングshRNA shAxl278(i)、shAxl280(ii)及びshAxl2(iii)による段階的Axl発現を含むNOD/SCID !2mnullマウスにおける皮下エピ対立形質MDA−MB−231/GFP−Luc異種移植片からの生物発光の時間的インビボ画像。(C)棒グラフは、腫瘍の光学画像解析に基づく光粒子及び腫瘍径の平均変化を示している。エピ対立形質MDA−MB−231/GFP−Luc腫瘍増殖(総光粒子)及び放射状浸潤(シグナル径)測定はshAxl279(無効なshRNA)に合わせて正規化されていた(ii)。(D)Axlノックダウンに対してプロットされた腫瘍増殖(28日測定)は治療閾値(80%減少発現)を明らかにしている。対照と比べた*p<0.05、**p<0.005(ペアードt検定)。N=6マウス/群。
【図6】Axlが乳癌細胞の転移に必要であることを示す図である。(A)インビボモニターされた原発性腫瘍及び転移、I、同所性増殖(上パネル)及び時間をかけたリンパ節への転移(下パネル)。II、野生型(実線)及びAxl RNAi移植片(破線)のインビボ光学画像(GE Explore Optix)によりモニターされた原発性腫瘍増殖。(B)異なる臓器における転移の検出。(C)乳癌細胞のエクスビボ検出。I、切除された臓器の画像が示されている。II、同一組織の組織学的解析は、異なる臓器への転移を確証した(矢印)。(D)対照(ベクター)とshAxl2同所的に注射されたマウス間のマンホイットニー(ログランク)検定は、MDA−MB−231−D3H2LN/GFP−Luc−shAxl2坦腫瘍マウスにおける生存の増加を示している(P=0.013)。
【図7】AxlがBALB/cマウスにおける同系乳癌細胞の免疫後応答再発及び転移に不可欠であることを示す図である。(A)マウスAxlターゲティングshRNA(shmAxl2)又はヒトAxlターゲティングshRNA(shAxl279)を発現している4T1−GFP−Lucマウス乳癌細胞は、マウスAxl表面発現又はアイソタイプ対照についてフローサイトメトリーにより解析された。(B)BALB/cマウスにおいて、マウスAxlターゲティングshRNA(4T1−GFP−LucshmAxl2)又は陰性対照ヒト特異的shRNA(4T1−GFP−Luc−shAxl279)のどちらかを発現している同所的(乳腺脂肪体)注入4T1−GFP−Luc細胞からの生物発光の時間的インビボ画像(i)。8週間にわたる対照(4T1−GFP−Luc−shAxl279、実線)及びAxlノックダウン(4T1−GFP−Luc−shmAxl2、灰色線)注入BALB/cマウスにおける全身生物発光(総光粒子)の定量化(ii)。*p<0.05(t−検定)、N=7マウス/群。(C)対照又はAxlノックダウン坦腫瘍BALB/cマウス由来の切除臓器における4T1−GFP−Luc細胞のエクスビボ生物発光検出によりモニターされた異なる臓器への自然転移(同所的移植8週間後)の調査。
【図8】ベクターL383 pCSI Puro2AGFP2ALuc2の配列を示す図である。
【図9A】GFPの同時発現を使用して解析された、Slug又はHa−Ras(pBABE puro H−Ras V12、Addgene製)構築物で形質導入されたMCF10a細胞のフローサイトメトリー解析を示す図である。Ha−Ras発現は48時間のピューロマイシン処置により選択された。MCF10a細胞におけるSlug及びHa−Ras発現により、癌幹細胞マーカーCD44の表面発現が激しく増加した。
【図9B】Lsug、RasをコードするMCF10a細胞におけるAxl表面発現を示す図である。Axl表面発現は、Slug及びHa−Ras誘導EMTの両方におけるCD44及び間葉形質の存在と相関している。
【図9C】CD44高(CD44)及び低(CD44)CD44発現亜集団についてFACSにより分類される播種72時間後のSlug又はHa−Ras発現MCF10a細胞の間葉形態を示す図である。CD44細胞は、上皮形態を示しており、CD44MCF10細胞は細長い間葉形態を示している。
【図9D】Slug、Rasをコードするレトロウイルスベクターで形質導入されたCD44及びCD44MCF10a細胞のウェスタンブロット解析を示す図である。CD44MCF10a細胞は上皮接合部及び細胞骨格タンパク質発現を保持していた。これとは対照的に、CD44細胞は強い間葉マーカー発現(ビメンチン、N−カドヘリン)及びE−カドヘリンの消失を示しており、EMTを実証していた。
【図9E】3−DマトリゲルにおけるCD44及びCD44Slug及びHa−Ras発現MCF10a細胞の増殖を示す図である。CD44、Axl発現MCF10a細胞は侵襲性であり、間葉表現型と一致している。
【図10】MCF10a細胞が、Slug−及びSnail−誘導Axl発現時に細胞関連になる(下、抗Gas6、フローサイトメトリー解析)Gas6を構成的に発現し(上、ウェスタンブロット、全ライセート)、分泌する(中、ウェスタンブロット、条件培地)ことを示す図である。
【図11】MDA−MB−231細胞がAxlリガンドのGas6を構成的に発現することを示す図である(上、ウェスタンブロット、優勢的に細胞関連である全ライセート;中、ウェスタンブロット、条件培地;下、抗Gas6フローサイトメトリー解析)。Axlノックダウンは細胞関連Gas6を減少させ、全発現に影響を与えることなく条件培地(Gas6)においてレベルが増加する。[実施例]
【0218】
材料及び方法
プラスミド及び抗体
shRNAは全て、レトロウイルス感染を介してMDA−MB−231細胞を形質転換するために使用されるレトロウイルスベクターRRI−Red/L087(Genbank: EU424173)のLTRにおいて改変ヒトU6プロモーターから発現された。RRI−RedはPuro2AmRed1も発現し、首尾よく形質転換された細胞においてピューロマイシン耐性及び赤色蛍光を生じる。全てのAxl cDNAヌクレオチドは、Genbank: BC032229のように付番される。
【0219】
以下の配列が使用された:Axl2;(ヘアピンは小文字)
GACATCCTCTTTCTCCTGCGAAGCCCATctggtcATGGGCTTCGCAGGAGAAAGAGGATGTC、shAxl278;
ACGGGTCTCCTTCTTTCGCCGttggatccctggtcggatccaaCGGCGAAAGAAGGAGACCCG、shAxl279;
GCTTCAGGCGATTTCCCCGGCGttggatccctggtcggatccaaCGCCGGGGAAATCGCCTGAAGC、shAxl280;
ATGCACGCCCAGCCGCACAGCGttggatccctggtcggatccaaCGCTGTGCGGCTGGGCGTGCAT shLuc;
GATTATGTCCGGTTATGTAAACAATCCGGctggtcCCGGATTGTTTACATAACCGGACATAATC。
【0220】
レトロウイルス発現ベクターL383 pCSI Puro2AGFP2ALuc2(図8参照)は、ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ、EGFP及びホタルルシフェラーゼのコード配列をCRU5−レトロウイルス発現ベクターにクローニングすることにより数段階で作製された(Blo et al., 2007)。各オープンリーディングフレームは、口蹄疫ウイルス由来の2A領域(XXSGLRSGQLLNFDLLKLAGDVESNPGP)をコードするリンカーにより隣から分離された。この配列は同時翻訳的に切断され、およそ化学量論的量の各タンパク質が産生される(Lorens 2004)。hSnail、hSlug及びhZEB2を発現するプラスミドは、それぞれ構築物BC012910、BC015895及びBC060819(Open Biosystems社製)由来の適切な断片をCRU5−IRES−GFPレトロウイルスベクターにクローニングすることにより構築された(Lorens et al 2000)。ヒトAxlに対する2つの抗体;マウスモノクローナル抗ヒトAxl(MAB154, R&D Systems社製)及びヤギ抗ヒトAxl(M-20, Santa Cruz社製)が使用された。さらに、以下の抗体;ウサギ抗ヒトpAxl(Y779, R&D社製)、ラット抗ヒトSnail(SN9H2, Cell Signaling社製)、マウス抗ヒトSlug(L40Cb, Cell Signaling社製)、ウサギ抗ヒトE−カドヘリン(24E10, Cell Signaling社製)、ウサギ抗ヒトN−カドヘリン(ab18203, Abcam社製)、アクチン、マウス抗ヒトb−カテニン(L54E2, Cell Signaling社製)、マウス抗ヒトGas6(R&D Systems社製)、ウサギ抗ヒトTwist(Twist2C1a, Abcam社製)が用いられた。
【0221】
細胞培養、レトロウイルス形質導入及び細胞増殖アッセイ
全細胞は37℃、5%COで培養された。Phoenix A細胞(Dr. Gary Nolan, Stanford)、MDA−MB−231ヒト乳房上皮癌細胞(米国細胞培養保存機関(American Type Culture Collection), Rockville, MD)、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC,human dermal microvascular endothelial cell)及び肺動脈平滑筋細胞(PASMC,pulmonary artery smooth muscle cell)(Cambrex社製, Walkersville, MD, USA)は、既に記載された通りに維持された(Holland S. J., Friera A.M., Franci C, Chan E., Atchison R., McLaughlin J., Swift S. E., Pali E., Yam G., Wong S., Lasaga J., Shen M., Yu S., Xu W., Hitoshi Y., Payan D.G, Nor J. E., Powell M.J, and Lorens J. B. (2005) The Receptor Tyrosine Kinase AxI Regulates Angiogenesis and Tumor Growth. Cancer Research 65:9294-9303)。クローン細胞株MDA−MB−231−DH3L2N(Xenogen Corporation社製, Alameda, CA, USA)は、10%FBS、1%非必須アミノ酸、1%L−グルタミン及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充されたEBSS(アールズ平衡塩溶液)MEM/EBSS培地を有する最小必須培地において培養された。Phoenix A細胞は、リン酸カルシウム法を使用してトランスフェクトされた(Swift, 1999)。トランスフェクションの約30時間後、培地は細胞が感染されるように、10%FBSを補充された増殖培地に変えられた。感染上清はトランスフェクションの約48時間後に収集された。標的細胞は、一晩5mg/ml硫酸プロタミンを含有する上清に曝露された。感染された細胞は、1μg/mlピューロマイシンを用いて選択された。細胞増殖アッセイは、Promega社製のMTSアッセイを使用して対照細胞株と比べた異なるAxlノックダウン細胞の増殖能を解析するために実施された。細胞は、未処理の又は20μlコラーゲン(ラットテイル由来、Roche社製)、フィブロネクチン(Sigma社製)若しくはマトリゲル(BD Biosciences社製)のいずれかで被膜された96ウェル組織培養プレートに播種された。100μl培地中2000細胞が96ウェルプレートに三通り播種され、Promega社製のMTSアッセイを製造業者の使用説明書に従って使用して24時間ごとにアッセイされた。
【0222】
免疫染色、フローサイトメトリー及び細胞選別
MDA−MB−231細胞は標準手順を使用してトリプシン処理され、室温で40分間、最終濃度PBS−0.2%BSA中5mg/mlの抗Axl(#MAB154, R&D Systems社製)で染色する前に、PBS−0.2%BSA中で洗浄された。細胞はPBS−0.2%BSA中で2回洗浄され、暗所中室温で30分間、最終濃度0.2mg/mlの二次抗体(ヤギ抗マウスAPC(アロフィコシアニン,Allophycocyanin(Allophyocyanin))、架橋されている、Molecular Probes))と一緒にインキュベートされた。細胞はPBS−2%BSAで2回洗浄され、FacsCalibur Flow Cytometer(BD Biosciences社製)上での解析前に300mlのPBS−0.2%BSA中に再懸濁された。データ解析は、FlowJo software(Tree Star, Inc.社製, Ashland, OR, USA)を使用して実施された。高レベルのGFP、RFP及び低Axl(shRNA)を発現している細胞は、安定した均一な細胞集団を樹立するためにFACS Aria SORPによりレーザー488nm、532nm、638nm及び407nmを用いて単離された。
【0223】
タンパク質抽出物、SDS−PAGE、イムノブロッティング法及び免疫沈降法
細胞は、プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini, EDTA-free, Roche社製 #13457200)及び0.2mM PMSFで補充されたRIPA緩衝液(1%(v/v)ノニデットP−40(NP−40)を有するPBS、0.5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、0.1%(w/v)SDS)に溶解された。SDS−PAGE及びイムノブロッティング法は、標準手順に従って実施された。免疫沈降法では、細胞は、プロテアーゼ阻害剤及びPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche社製)で補充されたNP−40緩衝液(10%グリセロール、1%NP−40、50mM Tris pH7.4、0.2M NaCl、2.5mM MgCl)に溶解された。抽出物は40℃で1時間、protA/Gビーズに結合された抗体と一緒にインキュベートされ、前記ビーズは溶出前にNP−40緩衝液で4回洗浄された。
【0224】
浸潤アッセイ及び3Dマトリゲルアッセイ
ボイデンチャンバー化学浸潤アッセイ(Albini et al 2004)は、Becton Dickinson(BDFalcon細胞培養インサート(8μm))、FalconマルチウェルTM 24ウェルプレート及びBDからの増殖因子減少マトリゲルを使用して実施された。インサートは、インサートごとに最終濃度30μgマトリゲルまで無血清培地希釈されたマトリゲルを用いて内部に被膜された。マトリゲル作業は、37℃で30分間の凝固まで4℃で操作される。5×10細胞が0.1%BSAを有する無血清細胞培地に再懸濁され、各インサート上に添加された。FBS濃縮細胞培地は走化性因子として機能する。37℃、5%COでの20時間インキュベーション後、チャンバー内部の細胞は綿棒により取り除かれた。膜の反対側の細胞は固定され、次に、DAPIで染色された。写真は蛍光顕微鏡を使用して撮影され、細胞はImageJ(http://rsb.info.nih.gov/nih-imageJ, Wayne Rasband,National)を使用して計数された。
【0225】
3DアッセイはSandal et al 2007から改変され、30000細胞がゲル上に播種され、培養物は解析されるまで10〜12日間増殖させた。
【0226】
臨床試料
一連の本乳癌は、2ビューマンモグラフィーが24カ月ごとに行われる1996年に始まった集団ベースのノルウェー乳癌スクリーニング計画(Norwegian Breast Cancer Screening Program)(Hordaland County)から選択された。手短に言えば、95浸潤性中間期癌が最初の2回のスクリーニング中間期(1996〜2001)中に発生し、これらは最初の2ラウンド中、総数317浸潤性腫瘍由来の95スクリーニング検出された腫瘍とサイズによりマッチされた(中位径はそれぞれ15.6及び15.7mm)。マッチング後、スクリーニング検出された場合と中間期の場合の平均腫瘍サイズはそれぞれ25.1と23.1mmであり、これらの群中の対応する平均年齢は62歳と59歳であった。年齢と腫瘍径(病理検査による)に加えて、診断時の乳房密度、組織型、組織学的悪性度、リンパ節転移、及び遠隔転移などの基本的特徴が記録された。最後のマンモグラフから中間期癌の診断までの平均時間は17.1カ月であった。経過観察の最後の日付は2004年11月31日であり、追跡期間中央値(生存者の)は72カ月であった。追跡期間中、31患者が乳癌で亡くなった。
【0227】
免疫組織化学
組織マイクロアレイスライドが本研究において使用された。組織マイクロアレイ法は組織保存的であり、いくつかの研究において検証された。免疫組織化学は、ホルマリン固定、パラフィン包埋組織の5μm厚切片上で実施された。抗原回復は、電子レンジでTRS(抗原賦活用溶液,Target Retrieval Solution;DakoCytomation社製, Denmark, AS)緩衝液、pH6.0中750Wで10分間及び350Wで20分間煮沸することにより実施された。DakoCytomation Autostainerは染色のために使用された。
【0228】
スライドは、Axl(H−124;カタログ番号20741)、希釈1対200(Santa Cruz社製, USA)に対するポリクローナル抗体と一緒に室温で一晩インキュベートされた。免疫ペルオキシダーゼ染色は、メイヤーズヘマトキシリン(DakoCytomation社製, Denmark AS)を用いた対比染色に先立って基質としてジアミノベンジジン四塩化ペルオキシダーゼを用いるDakoCytomation Envision Kit(DakoCytomation社製, Denmark AS)を使用して実施された。
【0229】
染色法の評価
染色は大部分が細胞質であるが、細胞質膜において染色のある程度の集中が存在した。染色は、染色の強度及び陽性反応を示す腫瘍細胞の割合を考慮して、半定量的及び主観的類別方式により記録された。各症例からの3つのコア全てが評価された。強度は、0(無染色)〜3(強染色)として記録され;膜染色面積の割合は0(無陽性腫瘍細胞)、1(10%未満)、2(10%〜50%)及び3(50%を超える腫瘍細胞)として記録された。染色指標(SI)は、染色強度と面積の積として計算された。免疫組織化学登録は、患者の特徴及び予後について盲検で行われた。
【0230】
統計
群の比較はピアソンのカイ二乗検定(Pearson χ test)により実施された。全統計的解析では、染色指数(SI)カテゴリーのカットオフ値は中央値に基づいていた。単変量生存解析(終了点として子宮内膜癌による死亡を使用する;他の原因による死亡は打ち切られた)は、入力日として初回手術の時間を用いる積極限推定値法(カプランマイヤー法)を使用して実施された。
【0231】
ログランク(Mantel-Cox)検定を使用して各変数の異なるカテゴリーについて生存曲線を比較した。単変量解析における生存への影響を有する変数(P≦.15)はlog−logプロットにより試験して、これらの変数をコックスの比例ハザード回帰モデル(Cox' proportional hazards regression model)にどのようにして組み込むことができるかどうかを決定した。
【0232】
マウス系統及び動物飼育
本研究では、生後8〜10週間、体重20〜25gのPrkdcSCID/B2mnull(NOD/SCID/B2mnullと略記される)重症複合免疫不全マウス(GADES Institute製, Norway)のメスマウスを使用した。マウスは12時間明/暗サイクルの標準条件下で飼われ、実験の開始に先立って新しい環境条件に順応するのに少なくとも7日間与えられた。この調査は、動物の数と苦痛を最小限にするように設計されているが、ノルウェー動物実験に関する規制(Norwegian Regulation on Animal Experimentation)、科学的目的のために使用される脊椎動物の保護についての欧州協定(European Convention for the Protection of Vertebrate Animals)、及びノルウェー動物研究局(Norwegian Animal Research Authority)の指針に従って実施された。
【0233】
生物発光画像(BLI)
BLIは、標本箱に搭載されたeXplore Optix(GE Healtcare社製)カメラを使用して実施された。撮像及びシグナルの定量化は、eXplore Optixソフトウェアを使用して行われた。インビボ撮像では、動物は腹腔内注射(i.p)を介して基質D−ルシフェリン(Biosynth社製)をPBS(リン酸緩衝食塩水,Phosphate Buffered Saline)中150mg/kg受け、イソフルランを用いて麻酔された。マウスはカメラボックス内部の温めた台に置かれ、1〜2%イソフルランに連続曝露され、腫瘍モデルに応じて異なるビューについて撮像された。所望の領域が同定され、eXplore Optixソフトウェア(GE eXplore Optix)を使用して全光粒子/秒−1として定量された。インビボ背景生物発光は2〜3×10光粒子カウントの範囲であった。エクスビボ画像では、150mg/kg D−ルシフェリンが部検の直前にマウスに注射された。所望の組織は切除され、プレート内に置かれて撮像された。
【0234】
インビボ腫瘍モデル
組織操作
GFP−Lucバイオマーカー及びAxl発現を調節する異なるRNA干渉を発現する1×10 MDA−MB 231細胞は、F−12 Kaighn’s(Invitrogen社製)対マトリゲル(BD Biosciences社製)の1対1混合物に懸濁され、6×6mmポリ乳酸(PLLA)スキャフォールドに播種された。
【0235】
メスNOD/SCID/B2mnullは、移植手順の間及びその後の撮像の日は1〜2%イソフルラン(Isoba vet.-Schering-Plough社製 A/S)への曝露により麻酔された。2つのスキャフォールドは、Nor et al. Lab Invest.; 81 (4) 453; 2001に従って各マウスにおいて皮下(s.c)に移植された。Axlを発現する細胞を有するスキャフォールドは各マウスの左側に移植され、Axlがノックダウンされている細胞を有するスキャフォールドは右側に移植された。外科的処置後、麻酔されたマウスは撮像システムに置かれ、150mg/kgのD−ルシフェリン(Biosynth社製)の腹腔内注射の10〜15分後、左側と右側の両方を撮像された。腫瘍発生は4週間、撮像により週1回インビボでモニターされた。
【0236】
異種移植片アッセイ
shRNAベクター及びGFP−Lucを感染させた1×10MDA−MB−231細胞は、100μlのF12K培地+10%FBS/マトリゲル(1対1比、BD Biosciences社製)に懸濁され、29ゲージインスリン針を用いてメスNOD/SCID/B2mの両側腹部の皮下に注入された。左側腹部にAxl発現に関して陽性細胞が注入され、右側腹部にはAxl発現に陰性の細胞が注入された。
【0237】
三細胞移植では、shRNAベクター及びGFP−Lucを感染させたMDA−MB−231細胞は、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)及び肺動脈平滑筋細胞(PASMC)と1対2対2の割合で混合された。腫瘍増殖は4連続週間、撮像によりインビボで毎週モニターされた。
【0238】
乳腺脂肪体自然転移モデル
GFP−Lucバイオマーカー及びAxl発現を調節する異なるRNA干渉を発現するヒトMDA−MB 231細胞(MDA−MB 231 DH3L2Nと呼ばれる−Xenogen社製)の亜系統は、マウスの乳腺パッドに注入された。NOD/SCID/B2mnullマウスは、1〜3%イソフルランへの曝露により麻酔にかけられ、MEM/EBSS培地/マトリゲル(1対1)に懸濁された50μlの2×10MDA−MB−231 DH3L2N細胞を腹腔乳腺脂肪体に注入された。D−ルシフェリン(Biosynth社製)注射の10〜15分後、マウスはeXplore Optix撮像システムに置かれ腹側面から撮像された。腫瘍増殖及び転移拡散は、最長9週間生物発光画像により隔週でモニターされた。転移性領域からのシグナルをインビボで観察することができるように原発性腫瘍からの生物発光を最小限にするために再撮像前に各動物の下半身は覆われた。
【0239】
組織収集
各実験の終了時、腫瘍組織移植片及び異なる臓器はマウスから回収され、さらに解析するために10%パラホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich社製)中で保存された。組織は病理組織診断のために調製され(パラフィン包埋、セクショニング及び染色)、顕微鏡評価により解析された。
【0240】
モデル動物の結果の統計的解析
平均生物発光(光粒子/秒−1)、腫瘍径及び対応する標準誤差は、実験ごとに決定された。回帰プロットを使用して、生物発光、細胞数と腫瘍径の関係を記述した。統計的解析はペアードt−検定に基づいていた。
【0241】
結果
Axl発現は乳癌患者の全生存に対する強力な予後因子である
乳癌病因におけるAxlの役割を評価するために、年2回の2ビューマンモグラフィーを必要とする1996年に始まったノルウェー乳癌スクリーニング計画中に同定された一連の乳癌患者由来の腫瘍におけるAxl発現を調査した(Wang, H., et al., Mammography screening in Norway: results from the first screening round in four counties and cost-effectiveness of a modeled nationwide screening. Cancer Causes Control, 2001. 12(1): p. 39-45)。手短に言えば、95浸潤性中間期癌が最初の2つのスクリーニング中間期(1996〜2001)中に発生し、これらは最初の2ラウンド中、総数317浸潤性腫瘍由来の95スクリーニング検出された腫瘍とサイズによりマッチされた(中位径はそれぞれ15.6及び15.7mm(Collett, K., et al., A basal epithelial phenotype is more frequent in interval breast cancers compared with screen detected tumors. Cancer Epidemiol Biomarkers))。マッチング後、スクリーニング検出された場合と中間期の場合の平均腫瘍サイズはそれぞれ25.1と23.1mmであり、これらの群中の対応する平均年齢は62歳と59歳であった。年齢と腫瘍径(病理検査による)に加えて、診断時の乳房密度、組織型、組織学的悪性度、リンパ節転移、及び遠隔転移などの基本的特徴が記録された。最後のマンモグラフから中間期癌の診断までの平均時間は17.1カ月であった。臨床パラメータがモニターされ、経過観察の最後の日付は2004年11月31日であり、追跡期間中央値(生存者の)は72カ月であった。追跡期間中、31患者が乳癌で亡くなった。
【0242】
Axl発現(中央値染色指標により2群に分けられた;図1A)と組織学的悪性度、腫瘍径、エストロゲン及びプロゲステロン受容体の発現並びに腋窩リンパ節状態などの重要な臨床病理学的特徴間に顕著な関連性はなかった。その上、Axl発現はHER2、E−カドヘリン、基底分化のマーカー(サイトケラチン5/6、P−カドヘリン)、EZH2又はKi−67発現による腫瘍細胞増殖と関連はなかった。
【0243】
しかし、単変量生存解析(カプランマイヤー法、ログランク検定)Axl発現は患者生存の減少と顕著な関連があった(p=0.035;図1B)。Axl発現(第一ステップ)に加えて、腫瘍径、組織学的悪性度及びリンパ節状態のような基本的予後因子を含む多変量解析(比例ハザード法)では、Axl発現状態は、組織学的悪性度及びリンパ節状態に加えて最終モデルにおける独立した負の予後因子として残った(p=0.021)(図1C参照)。したがって、Axl発現は乳癌患者における臨床転帰不良の強力な予後因子である。
【0244】
次に、原発性及び転移乳癌のマッチドペア(n=16)の患者生検におけるAxl発現を調べた。Axl発現は、対応する原発性ヒト乳癌と比べた場合、転移においてさらに高められている傾向があり(p=0.11、マクニマーの検定;図1d;転移は右側、肝臓(上)及び骨(下))、Axl発現は乳癌患者における臨床転帰不良の強力な予後因子であり、転移拡散と関連していることを示唆していた。
【0245】
Axlは乳癌細胞侵襲性に必要とされる
悪い生存率と初期乳癌におけるAxl発現の強い相関は、全疾患病因におけるAxlの重要な役割を示している。乳癌関連死亡率は常に転移性疾患の合併症の結果であるために、Axl発現が悪性乳癌細胞侵襲性に必要とされるかどうかを評価した。Axlは、MB−MDA−231を含むいくつかの高度に転移性のヒト乳癌細胞株において発現されている。AxlリガンドのGas6は同時発現されることが多く、自己分泌活性化をもたらす(Holland S. J., Friera A.M., Franci C, Chan E., Atchison R., McLaughlin J., Swift S. E., Pali E., Yam G., Wong S., Lasaga J., Shen M., Yu S., Xu W., Hitoshi Y., Payan D.G, Nor J. E., Powell M.J, and Lorens J. B. (2005) The Receptor Tyrosine Kinase AxI Regulates Angiogenesis and Tumor Growth. Cancer Research 65:9294-9303)。MB−MDA−231細胞におけるAxl発現レベルを特定の細胞挙動と効果的に相関させるために、本発明者らは、最近開発されたFACSベースのRNAiアプローチ、CellSelectRNAiを使用して用量依存性の形でAxl発現を減少させるAxlターゲティングshRNAのエピ対立形質系列を開発した(図2A;Micklem et al.、発表準備中)。このAxl shRNAコレクションを使用して、段階的全体(図2B)及びリン酸化(図2C)Axlタンパク質レベルを有するエピ対立形質Axl MB−MDA−231細胞系列を作製した。
【0246】
悪性癌細胞は、インビボ転移能と相関する間葉細胞侵襲性を三次元細胞外マトリックスタンパク質ゲル(マトリゲル)において示す(Bissell)。エピ対立形質解析は、血清(図2D)又は乳癌転移における重要な因子であるSDF−1ケモカイン(図2E)に対する応答におけるMB−MDA−231細胞浸潤のためのAxl発現の用量依存的必要量を実証した。これとは対照的に、AxlノックダウンはMB−MDA−231細胞増殖に対してはまったく効果はなく、二次元(側面上皮創傷治癒)遊走には中程度の効果しかなかった。これは、三次元増殖及び侵襲性におけるAxlの特定の必要量を示した。したがって、本発明者らは、3DマトリゲルアッセイにおけるMB−MDA−231細胞に対するAxlノックダウンの効果を評価した。正常な乳房表皮細胞は3Dマトリゲルにおいて極性球状腺房構造体に自己組織化するが、悪性MB−MDA−231細胞は増殖して高悪性度の腫瘍を反映する浸潤性星状増殖を有する大きな組織の乱れたコロニーを形成する(Bissell)。Axl発現のノックダウンは、3D−マトリゲルにおけるMB−MDA−231細胞の悪性表現型を強く回復させ、悪性増殖のない小さな丸いコロニーを生み出した(図2F,G)。合わせると、これらのデータは、Axlシグナル伝達は、転移性乳癌細胞の間葉様侵襲性を維持するのに必要とされることを示唆している。
【0247】
Axlは乳房上皮細胞におけるEMT誘導転写因子により上方調節される
間葉侵襲性、すなわちECMを遊走し侵入する能力の獲得は、EMTの機能的特徴である。EMT誘導転写因子Twistは乳癌細胞の転移に必要とされる(Yang J, Mani SA, Donaher JL1 Ramaswamy S, Itzykson RA, Come C, Savagner P, Gitelman I, Richardson A, Weinberg RA.Twist, a master regulator of morphogenesis, plays an essential role in tumor metastasis. Cell. 2004 117:927-39)。したがって、Twist発現が乳房上皮細胞においてAxlを上方調節するかどうかを調べた。正常な乳房上皮細胞(MCF10A)におけるTwist発現はEMTを誘導する(図3A;Glackin et al.、発表準備中)。驚くことに、AxlはTwist発現MCF10A細胞においても強く上方調節されている(図3A−B)。さらに、Gas6は正常な乳房上皮細胞により構成的に発現されているので、このTwist誘導Axl発現は自己分泌活性化ループを確立しており、細胞関連Gas6及びチロシンリン酸化Axlの増加により証拠だてられている(図3A、C)。他のEMT誘導転写因子がAxl発現を同様に上方調節するのかどうかを決定するために、ZEB2、Snail及びSlugを発現しているMCF10A細胞を解析した。これらのEMT転写因子のそれぞれが、MCF10A細胞において間葉転換を誘導し、Axl発現を上方調節した。これらの結果は、EMT誘導がAxl発現をもたらし自己分泌シグナル伝達を確立することができることを示唆している。
【0248】
Axl発現は実験組織操作乳腺腫瘍における腫瘍形成に必要である
インビボでの悪性増殖のためのAxlの必要量を評価するために、効率的なインビボ光学撮像のためのGFP−ルシフェラーゼ構築物を発現するMB−MDA−231細胞を含む組織操作アプローチを使用し(CSI;Tiron et al.、結果未公表)、ポリ乳酸組織操作スキャフォールドにマトリゲルと一緒に播種し、免疫無防備状態のNOD−SCIDマウスの皮下に移植した。腫瘍細胞はスキャフォールドにコロニー形成するので、操作された腫瘍微小環境内の増殖は腫瘍細胞間葉特徴と関連している(Mooney)。MB−MDA−231細胞は容易に腫瘍、この生物模倣型の微小環境を形成し、スキャフォールドの侵襲性コロニー形成を示す(図4A)。Axlノックダウンは、腫瘍形成、側面拡散及び悪性形態を強く阻害した(図4A)。
【0249】
Axlが血管を引き付け吸収する乳癌細胞の能力に影響するかどうかを確かめるために、MB−MDA−231細胞が原発性ヒト微小血管内皮(HuMVEC,human microvascular endothelial)及び血管平滑筋細胞(vSMC)と一緒に播種されて腫瘍血管構造を作り出すことを含む三細胞移植片アプローチを開発した。ヒトEC−vSMC細胞の移植片は、2週間以内にNOD−SCIDマウスにおいて灌流スキャフォールド内ヒト微小血管系を容易に形成する(Hegen et al.、発表準備中)。図4Bにおいて示されるように、MB−MDA−231細胞は、この三細胞移植片モデルにおいて侵襲性の高度に血管新生化している腫瘍を形成する。操作されたヒト腫瘍血管構造は、管腔内赤血球と共に均等に分布しており灌流している。これとは対照的に、Axlノックダウンは、灌流ヒト微小血管系の成長に影響することなく腫瘍形成を妨げた。これは、誘導された血管新生の必要性をおそらく除去する微小血管系の存在下でさえAxlは腫瘍形成に必要とされることを示している。
【0250】
明確なAxl発現閾値は乳腺腫瘍形成に必要とされる
腫瘍を形成するのに必要なAxl発現のレベルを評価するために、皮下MDA−MB−231腫瘍においてAxlのインビボエピ対立形質解析を行った。Axlエピ対立形質MDA−MB−231細胞系列(図1)は皮下に注射され、生物発光スキャニングにより腫瘍形成について時間的にモニターされた。このアプローチにより、腫瘍増殖に対するAxl用量応答が明らかにされた(図5)。表面Axlレベルとの相関は、腫瘍形成に必要とされるAxl発現の閾値を明らかにした(図5B、C)。この用量応答は、侵襲性に対するAxl阻害の用量依存的効果と一致している(図2)。
【0251】
Axlは乳癌細胞の転移に不可欠である
乳癌転移に対するAxlの必要量を評価するために、急速増殖及び高度に転移性のインビボMDA−231分離株であるMDA−MB−231−D3H2LNを乳腺脂肪体に同所的に注射した。全身生物発光撮像を使用して、9週間にわたり自然転移発症を時間的にモニターした。対照MDA−MB−231−D3H2LN細胞は、5〜6週間以内に壊死性になる大きな同所性乳腺腫瘍を生じた(図6A)。MDA−MB−231−D3H2LNにおけるAxlノックダウンは、原発性乳腺腫瘍形成の速度を下げたが、実質的な原発性乳腺腫瘍も生じた(図6A)。自然転移は、4週間目に対照MDA−MB−231−D3H2LN注射マウスの胸部センチネルリンパ節において最初に検出された(図6A)。これとは対照的に、MDA−231DHLN−AxlshRNA移植マウスにおいて転移は検出されなかった。9週間目に屠殺されると、切除された臓器は、転移細胞の存在による生物発光について個別にスキャンされた。MDA−MB−231−D3H2LN注射マウスは、リンパ節、肺、卵巣及び腎臓を含む、全てのマウスで広範な自然転移を形成していた。これとは対照的に、MDA−MB−231DHLN−AxlshRNA細胞は検出可能な転移を形成しなかった(1匹のマウスの腎臓での単一病変は別として)。MDA−MB−231−D3H2LN注射マウスの臓器由来の組織生検の組織学的解析により、生物発光総光粒子測定により予想されたように、全ての臓器における複数の微小転移及びマクロ転移の存在が確証された(図6C)。MDA−MB−231DHLN−AxlshRNA注射マウス由来の組織生検においては微小転移もマクロ転移も観察されず、観察される生物発光の欠如は、転移形成が阻害されたせいであることを確証した。これらの結果は、Axlが乳癌転移に不可欠であることを示している。
【0252】
同所的に注射されたMDA−MB−231−D3H2LN/GFP−Luc対照又はAxlノックダウン細胞を用いて、NOD−SCIDマウスの全生存に対するAxlの機能的貢献を評価した。MDA−MB−231−D3H2LN/GFP−Luc−shAxl2坦腫瘍マウスにおいては、全体生存は著しく増加していた(P=0.013、ログランク検定;図6d)。これらの結果は本発明者らの臨床観察と合わせて、Axlが転移性疾患の発生及び全患者生存にとり重要であるという結論を支持している。
【0253】
異なる転移モデルにおいて本発明者らの結果を検証するために、CSI構築物を用いて高度に転移性のマウス乳癌4T1細胞株に形質導入し、FACSによりGFPルシフェラーゼ発現について選択した(4T1−GFP−Luc)。4T1細胞は転移をTwist発現に依存しており、高レベルのAxl発現を示す(図7a)。
【0254】
4T1細胞においてマウスAxl表面レベルを効果的に抑制するマウスAxlターゲティングshRNA(shmAxl2)を発現するレトロウイルスベクターを開発した(図7a)。ミスマッチドヒトAxlターゲティングshRNA(shAxl279)はマウスAxl発現にはまったく効果はなかった。4T1細胞におけるTwistノックダウン及びMDA−MB−231細胞を用いた結果に類似して、Axlノックダウン4T1細胞の組織培養拡大は著しい影響を受けなかった(データは示されていない)。
【0255】
メス正常BALB/cマウスの乳腺に導入されると、同質遺伝子的4T1腫瘍細胞は、白血球浸潤及び壊死に伴う腫瘍退縮と、それに続く複数の臓器への広範な転移と同時に起こる原発部位での再増殖をもたらす厳密な免疫応答のせいで二相性増殖パターンを示す。4T1−GFPLuc細胞は、免疫無防備状態のNOD−SCIDマウスにおいては単相性増殖のみを示す(データは示されていない)。マウスAxlターゲティングshRNA(4T1−GFP−Luc−shmAxl2)又は陰性対照ヒト特異的shRNA(4T1−GFP−LucshAxl279)のいずれかを発現している4T1−GFP−Luc細胞をメスBALB/cマウスの乳腺脂肪体に注射し、時間的全身インビボ光学画像により腫瘍増殖及び転移を定量化した(図7b)。対照4T1−GFP−Luc−shmAxl2細胞は、急速な原発増殖を示し1週間後に最大に達した。これに続いて、5週間持続される急峻な退縮が起きた(図7b)。6週目、原発部位での再発及び続いて急速に増殖する複数の遠隔転移が観察され、8週目までに全てのマウスが瀕死と致死に至った。マウスAxlターゲティングshRNA(4T1−GFP−Luc−shmAxl2)を発現している4T1−GFP−Luc細胞は最初、急速な原発腫瘍増殖、Axl抑制によりわずかに減弱し、続いて退縮するという類似の経過をたどった(図7b)。しかし、それに続く原発腫瘍の再発及び急速な増殖遠隔転移の出現はまったくなかった(図7b)。実際、4T1−GFP−Luc−shmAxl2細胞を注射されたマウスは全て、屠殺時(8週目)には健康なままであった。4T1モデルに特徴的な白血病反応に伴う脾腫も、Axlノックダウン腫瘍を坦持するマウスにおいては減少していた(データは示されていない)。8週目に屠殺されると、個々の切除された臓器は撮像され全光発光は定量化され、4T1−GFP−Luc−shAxl279腫瘍を坦持する全マウスにおける一般的播種部位での転移の存在が確証された(図7c−d)。これとは対照的に、4T1−GFP−Luc−shmAxl2腫瘍を有するマウス由来の臓器において生物発光腫瘍細胞は検出されなかった(図7d−e)。これらの結果は、Axlが乳腺腫瘍転移の不可欠な調節因子であるという結論を支持している。
【0256】
Gas6による自己分泌調節
AxlリガンドであるGas6はAxlと同時発現されることが多く、自己分泌活性化と一致している。自己分泌シグナル伝達を示す細胞関連Gas6及びリン酸化Axlレベルは、MDA−MB−231細胞におけるAxlノックダウンにより減少する(図11)。MCF10A細胞において、Gas6は構成的に発現されており、EMT誘導Axl発現により細胞関連になった(図11)。これらの結果は、EMTプログラム誘導がAxl発現をもたらし、胸部上皮細胞において自己分泌シグナル伝達を確立することができることを示唆している。Axlは、Gas6と同時発現されることが多いが、多くの転移性癌において検出されるので、自己分泌Axlシグナル伝達は多くの腫瘍型においてEMTの頻繁な結果であり得る。Snail、Slug及びTwisなどのEMT誘導転写因子はAxl発現を強く誘導し、Axlが腫瘍細胞の悪性間葉表現型を持続するポジティブフィードバックループに関与する可能性があることを示唆している。この考えは、転移性病変においてAxl発現が上昇していることを観察したことと一致している。
【0257】
CD44+表現型はAxl発現と関連している
MCF10a細胞はSlug又はHa−Ras(pBABE puro H−Ras V12、Addgene製)構築物を用いて形質導入された。Slug形質導入された細胞は、GFPの同時発現を使用するフローサイトメトリーにより解析され、Ha−Ras発現は48時間のピューロマイシン処置により選択された。フローサイトメトリーにより示されるように(図9、パネルA)、MCF10a細胞におけるSlug及びHa−Ras発現は、癌幹細胞マーカーCD44の発現表面発現の強い増加をもたらした。Slug又はHa−Rasを用いて形質導入されたMCF10a細胞のフローサイトメトリー解析により、表面Axl発現の強い増加がさらに示された。Slug又はHa−Ras発現MCF10a細胞は、CD44高(CD44)及び低(CD44)CD44発現亜集団についてFACSにより識別された。CD44細胞は上皮形態を示し、CD44MCF10細胞は伸長した間葉形態を示した(図9、パネルC)。これらの細胞のウェスタンブロット解析により(図9、パネルD)、CD44MCF10a細胞が上皮結合部及び細胞骨格タンパク質発現を保持することが実証された。これとは対照的に、CD44細胞は、強い間葉マーカー発現(ビメンチン、N−カドヘリン)及びE−カドヘリンの消失を示し、ETMを示していた。Axl発現はSlugとHa−Ras誘導EMTの両方におけるCD44及び間葉形質の存在と相関していた(図9、パネルB、D)。3DマトリゲルにおけるCD44及びCD44Slug及びHa−Ras発現MCF10a細胞の増殖(図9、パネルE)は、CD44、Axl発現MCF10a細胞が侵襲性であり、間葉表現型と一致していることを実証した。これらの結果により、AxlがMCF10a細胞においてはSlug及びHa−Ras発現により上方調節されており、間葉及び癌幹細胞形質と相関していることが実証された。
【0258】
本発明の記載された態様の様々な修正及び変動は、本発明の範囲と精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求の範囲に記載される本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、当業者には明白である本発明を実施する記載されている様式の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内であることが意図されている。
(参考文献)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するためのバイオマーカーとしての、Axlの使用。
【請求項2】
Axlが上皮間葉転換(EMT)の誘導を検出するためのバイオマーカーである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Axlの上方調節が上皮間葉転換(EMT)の発生を示す、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
(i)試料を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトから単離するステップと、
(ii)前記試料中のAxlの発現を対照試料と比べて決定するステップであって、前記対照試料と比べたAxl発現の上方調節が上皮間葉転換(EMT)の発生を示すステップと、
を含む、試料中において上皮間葉転換(EMT)の発生を検出するための方法。
【請求項5】
対象由来の試料中でAxl受容体ポリペプチドのレベルを決定することを含み、転移性癌のない対象中のレベルと比べて前記ポリペプチドのより高いレベルが上皮間葉転換(EMT)の発生を示す、上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することにより対象中の転移性癌を診断する方法。
【請求項6】
癌が乳癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬の活性をモニターする際の、Axl又はAxlをコードする遺伝子の使用。
【請求項8】
上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与した後に、Axlの存在がモニターされる、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
作用薬を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与すること、及びAxlの活性及び/又は発現をモニターすることを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法。
【請求項10】
作用薬を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与すること、及び未処置の対照試料と比べた場合の処置された試料におけるAxlの発現の変化を検出することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)作用薬を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与するステップと、
(ii)処置された及び未処置の細胞、動物又はヒト由来の試料中のAxl発現を測定するステップと、
(iii)上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す能力の指標として、未処置の試料中と比べた場合の処置された試料中のAxlの発現の増加若しくは減少を検出するステップと、
を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を検出するための方法。
【請求項12】
(i)Axl阻害剤を細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトに投与するステップ、
(ii)処置された及び未処置の細胞、動物又はヒト由来の試料中のAxl発現を測定するステップ、並びに
(iii)Axl阻害活性の指標として、前記未処置の試料中と比べた場合の前記処置された試料におけるAxlの発現又は活性の増加若しくは減少を検出するステップ、
により上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することを含む、Axl阻害剤の活性をモニターする方法。
【請求項13】
試料がタンパク質解析により解析される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
タンパク質解析がELISA、PET、フローサイトメトリー、SELDI−TOF MS又は2−D PAGEにより行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞の集団が細胞培養物である、請求項4若しくは9〜14のいずれかに記載の方法、又は請求項8に記載の使用。
【請求項16】
細胞が腫瘍細胞、PBMC又はリンパ球である、請求項4若しくは9〜15のいずれかに記載の方法、又は請求項8に記載の使用。
【請求項17】
試料が血液である、請求項4〜6又は10〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
試料が血清、血漿又は組織培養上清である、請求項4〜6又は10〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
(i)作用薬をAxl受容体又は前記Axl受容体を発現している細胞に接触させるステップと、
(ii)前記作用薬の存在下で前記Axl受容体活性を測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において測定される前記活性を対照条件下で測定される活性と比較するステップであって、減少によって、前記作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができると同定されるステップと、
を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法。
【請求項20】
測定される活性がAxl受容体の基質のチロシンリン酸化である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
測定される活性がAxl受容体の自己リン酸化である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
接触ステップ(i)における細胞が、既にAxl遺伝子によりトランスフェクトされている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
トランスフェクトされた細胞が、一過的又は安定的にトランスフェクトされている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(iii)における対照条件が、活性Axl遺伝子を欠く細胞に作用薬を接触させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
細胞がAxl遺伝子の変異不活性型を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
Axl受容体が細胞内ドメインの生物学的に活性な部分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
Axl受容体が固定化されている、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
(i)複数の作用薬をAxl受容体又は前記Axl受容体を発現している細胞に接触させるステップと、
(ii)前記複数の作用薬の存在下で前記Axl受容体活性を測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において測定される前記活性を対照条件下で測定される活性と比較するステップであって、減少によって、前記複数の作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができると同定されるステップと、
(v)前記複数中に存在するどの作用薬若しくはどの複数の作用薬が上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すのかを個別に決定するステップと、
を含む、複数の作用薬をスクリーニングすることにより、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するための方法。
【請求項29】
作用薬が転移性癌を治療するためのものである、請求項9〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
転移性癌の治療のための薬物の調製における、請求項9〜28のいずれかに記載の方法に従って同定される作用薬の使用。
【請求項31】
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合される、請求項9〜28のいずれかに記載の方法に従って同定される作用薬を含む医薬組成物。
【請求項32】
(i)請求項9〜28のいずれかに記載の方法を使用して上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻すことができる作用薬を同定するステップ、及び
(ii)前記作用薬を薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤と混合させるステップ、
を含む、組成物を調製する方法。
【請求項33】
Axl阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において上皮間葉転換(EMT)を起こした癌細胞の増殖及び拡散を阻害するための方法。
【請求項34】
対象にAxl阻害剤を投与することにより上皮間葉転換(EMT)を起こした癌細胞の増殖及び拡散を阻害することを含む、それを必要とする対象において転移性癌を治療するための方法。
【請求項35】
Axl阻害剤が抗Axl抗体又は小分子阻害剤である、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
対象が哺乳動物である、請求項33〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
対象がヒトである、請求項33〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
上皮間葉転換(EMT)を起こした癌細胞の増殖及び拡散を阻害するための薬物の調製における、Axl阻害剤の使用。
【請求項39】
上皮間葉転換(EMT)を起こした癌細胞の増殖及び拡散を阻害することにより転移性癌を治療するための薬物の調製における、Axl阻害剤の使用。
【請求項40】
抗Axl抗体を含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキット。
【請求項41】
Axlに対する核酸プローブを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキット。
【請求項42】
Axlに対する少なくとも1つのQPCRプライマーを含む、上皮間葉転換(EMT)を阻害する又は正常に戻す作用薬の能力を評価するためのキット。
【請求項43】
請求項1又は9〜28のいずれかにおいて定義される方法における、請求項40〜42のいずれかにおいて定義されるキットの使用。
【請求項44】
(i)細胞、細胞の集団、モデル動物又はヒトから試料を単離するステップと、
(ii)前記試料中のAxlの発現を対照試料と比べて決定するステップであって、前記対照試料と比べたAxl発現の上方調節が、Axl阻害剤を用いる治療に感受性であることを示すステップと、
を含む、Axl阻害剤を用いる治療に対象が感受性であるかどうかを決定するための方法。
【請求項45】
Axl阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において転移性癌又は末期癌を治療する方法。
【請求項46】
転移性癌又は末期癌を治療するための薬物の調製における、Axl阻害剤の使用。
【請求項47】
Axl阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において転移を阻害する方法。
【請求項48】
転移を阻害するための薬物の調製における、Axl阻害剤の使用。
【請求項49】
Axl阻害剤を対象に投与することを含む、癌に罹っている前記対象においてEMT誘導侵襲性を阻害する方法。
【請求項50】
癌に罹っている対象においてEMT誘導侵襲性を阻害するための薬物の調製における、Axl阻害剤の使用。
【請求項51】
実質的に本明細書に記載される方法、使用、医薬組成物又はキット。
【請求項52】
個別化医療適用における、請求項1に記載のバイオマーカーの使用。
【請求項53】
個別化医療適用が、Axl阻害剤を用いた治療に対象が感受性である又は応答性であるかどうかを決定するためである、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
個別化医療適用が、対象が転移性癌に特に罹患している可能性が高いかどうかを決定するためである、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
対象において上皮間葉転換(EMT)の発生を検出することを含む、Axl阻害剤を用いた治療に対象が感受性であるかどうかを決定するための予後法。
【請求項56】
(i)対象から試料を得るステップと、
(ii)前記試料中のAxlの発現を対照試料と比べて決定するステップであって、前記対照試料と比べたAxl発現の上方調節が、Axl阻害剤を用いた治療に感受性であることを示すステップと、
を含む、請求項55に記載の予後法。
【請求項57】
Axl阻害剤を用いた治療に対象が感受性である又は応答性であるかどうかを決定するための予後薬剤におけるバイオマーカーとしてのAxlの使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−520958(P2013−520958A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553547(P2011−553547)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000516
【国際公開番号】WO2010/103388
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(511222168)ベルゲン テクノロジオヴェルフォリング エイエス (1)
【氏名又は名称原語表記】BERGEN TEKNOLOGIOVERFORING AS
【Fターム(参考)】