説明

下塗剤としての結合剤混合物含有水性被覆組成物

【課題】 耐ストーンチップサーフェーサーの特性だけでなく下塗剤の特性もそれ自体に合わせ持ち、それによって、プライマー、サーフェーサー、下塗剤およびクリアコートから成る4被膜塗装系の品質を少なくとも向上させる、結合剤組合せを提供する。
【解決手段】 A)第二級ヒドロキシ官能性ポリアクリレート分散体またはエマルジョン;脂肪族ポリウレタン分散体;ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体であって、分子量500〜2500g/molのポリエステルを少なくとも75wt%の程度まで含んで成る分散体を含んで成る水性結合剤混合物;およびB)架橋剤;を含んで成り、A1)〜A3)の3つ成分の少なくとも2つを必ず含有し、かつ、1つの成分A1)および/またはA3)を少なくとも35wt%の量で必ず含有する水性被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性結合剤および架橋剤の組合せに基づく水性被覆組成物、その製造法、並びに単一被膜または多重被膜塗装系、特に耐ストーンチップ特性(耐石きず性)を有する被覆剤におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車仕上げにおいて、プライマー、サーフェーサー、下塗剤およびクリアコートから成る塗装系を使用するのが一般的である。塗装系における種々の被膜のそれぞれは、果たすべき多くの特定機能を有する。
【0003】
そのような多層被覆剤、またはそのような多層被覆剤における各塗料の製造は、先行技術の多くの例において記載されている。
【0004】
サーフェーサー被膜の機能は、車体面の不均一さを均一にし、プライマーへの有効な付着を確実にし、同時に、被覆剤の弾性によって、例えばストーンチッピングによって生じる深い損傷の源からの保護を保証することを包含する。このサーフェーサーは、2被膜で適用され、1つの被膜は車体面の不均一さを均一にすることを目的とし、第2被膜は耐ストーンチップ特性を生じることを目的としている。しかし、先行技術において、1つのサーフェーサー被膜によって両方の要求を満たす水性サーフェーサー系が既に記載されている。
【0005】
下塗剤、特にメタリック下塗剤は、被覆剤系の優れたフィルム光学特性、高い光沢度および顕著なメタリック効果を与える作用をし、従って、塗装物の魅力的な外見を保証する。
【0006】
DE-A 19542626、DE-A 19618446およびDE-A 4421823には水性被覆組成物が記載されており、それは以下を含んで成る:成分(I):有機溶液中のアクリレートコポリマー(A1)、および/またはポリエステル樹脂(A2)、および/またはポリウレタン樹脂(A3)を含んで成る結合剤混合物;成分(II):非ブロックトポリイソシアネート架橋剤;および成分(III):成分(A1)および/または(A2)および/または(A3)および/または(A4)の水性分散体。それらに記載されている系は、上塗剤、サーフェーサーまたは自動車再仕上げ塗料として使用することができる。
【0007】
WO-A 98/12001には、水性下塗剤、および下塗剤に移行することができるポリアクリレート樹脂に基づく特別な粉末クリアコートから成る、向上した耐ストーンチップ特性を有する多層被覆剤が記載されている。この系の不利な点は、下塗剤の成分が特定のポリアクリレートに極めて高い適合性を有さなければならないことである。それに記載されている特性は、水性下塗剤と特定の粉末クリアコートとの組合せによって、および、特定の硬化法(90℃における下塗剤の予備乾燥、次に、下塗剤および粉末クリアコートの同時(ジョイント)焼付けを行う)によってのみ得られる。
【0008】
塗装作業をより効率的にし、かつ多被覆塗装仕上げの特性レベルを高めるための、好適な被覆系が現在も必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、耐ストーンチップサーフェーサーの特性だけでなく下塗剤の特性もそれ自体に合わせ持ち、それによって、プライマー、サーフェーサー、下塗剤およびクリアコートから成る4被膜塗装系の品質を向上させるか、または4被膜塗装系における被膜の1つを不要にすることさえ可能にする、結合剤組合せを提供することである。この場合に満たすべき重要な要件は、信頼できる加工特性だけでなく、非常に優れた下塗剤付着性、効果的な弾力性および耐ストーンチップ特性、および表面不均一の充分な均一化である。他の目的は、優れた上塗り適合性および再仕上げ可能性(refinishability)、非常に優れたフィルム光学特性、例えば、レベリング、メタリック効果およびDOI値(画像の鮮明度(distinction of image))、最適顔料湿潤、並びに水、溶剤、環境、光および天候の作用に対する高い耐性を包含する。結合剤組合せが、貯蔵において充分に安定性であることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、少なくとも2つ、好ましくは3つの水性分散体の組合せ(該分散体は、化学構造が異なり、そのうちの少なくとも1つ、好ましくは2つが、架橋し得る基を有する)を特徴とし、かつ架橋剤を含んで成る水性被覆組成物が、かなり優れた耐ストーンチップ特性を有することが見出された。
【0011】
本発明は、水性被覆組成物であって、下記の成分:
A)
A1) 25〜70wt%の、第二級ヒドロキシ官能性ポリアクリレート分散体またはポリアクリレートエマルジョン;
A2) 5〜50wt%の、脂肪族ポリウレタン分散体;
A3) 20〜70wt%の、ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体であって、分子量500〜2500g/molのポリエステルを少なくとも75wt%の程度まで含んで成る分散体を含んで成る水性結合剤混合物;および
B) 少なくとも1つの架橋剤;
を含んで成り、
A1)〜A3)の3つ成分の少なくとも2つを必ず含有し、かつ、1つの成分A1)および/またはA3)を少なくとも35wt%の量で必ず含有する水性被覆組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書および請求の範囲に使用され(実施例に使用されているものを含む)、かつ特に指定されなければ、全ての数値は、「約」という語が特に記載されていない場合でもその語が前置きされているごとく理解される。さらに、本明細書に記載されているあらゆる数値範囲は、その中に含まれる全ての部分範囲を包含することを意図している。
【0013】
本発明の被覆組成物は、2〜12wt%の有機溶剤含量を有する。
【0014】
好適な第二級ヒドロキシ官能性ポリアクリレート分散体A1)は、溶剤中で不飽和化合物(モノマー)を共重合させ、組み込まれた潜在的イオン基を中和し、水に分散させることによって得られる。
【0015】
第二級ポリアクリレート分散体A1)の製造に好適なモノマーの例は、カルボキシ官能性ラジカル重合性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、クトロン酸、フマル酸、マレイン酸(無水物)、イタコン酸、または二塩基酸および/もしくは無水物のモノアルキルエステル、例えば、モノアルキルマレエートである。アクリル酸またはメタクリル酸を使用するのが好ましい。
【0016】
好適な非官能性モノマーは、以下の化合物である:シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル基によって環上で置換されたシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコール成分のC1〜C18炭化水素基との(メタ)アクリル酸エステル、例えば、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ノルボルニルアクリレートおよび/またはノルボルニルメタクリレート。
【0017】
好適なヒドロキシ官能性モノマーの例は、アルコール成分のC1〜C18炭化水素基とのOH官能性(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートまたはヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0018】
アルキレンオキシド単位を含有するヒドロキシモノマー、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドと(メタ)アクリル酸との付加物も好適である。ヒドロキシエチルメタクリレートおよび/またはヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。
【0019】
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルエステル、アルキレンオキシド単位含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸とオリゴアルキレンオキシドモノアルキルエーテルとの縮合生成物、並びに、適切であれば、付加的官能基、例えば、エポキシ基、アルコキシシリル基、尿素基、ウレタン基、アミド基またはニトリル基を含有するモノマーも好適である。2またはそれ以上の官能価を有するビニルモノマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマー、例えばヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートも、モノマーの総量を基準にして0〜3wt%の量で使用できる。
【0020】
場合により、付加的モノマーを使用することもできる。好適な例は、ホスフェートおよび/またはホスホネート基若しくはスルホン酸および/またはスルホネート基を有する不飽和ラジカル重合性化合物である。
【0021】
好ましいモノマーは、メチルメタクリレート、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートまたはヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0022】
第二級ポリアクリレート分散体A)において、カルボキシ官能性モノマーの量は、0.8〜5wt%、好ましくは1.2〜4wt%であり、ヒドロキシ官能性モノマーの量は1〜45wt%、好ましくは6〜30wt%である。
【0023】
好適な重合開始剤は、パーオキシ化合物、例えば、ジアシルパーオキシド、アルキルパーエステル、ジアルキルパーオキシド、パーオキシジカーボネート、無機パーオキシドまたはアゾ化合物である。
【0024】
基本的にあらゆる有機溶剤がポリアクリレートの製造に好適である。溶剤は、任意の所望量、好ましくは、分散体に低溶剤分を与えるためにモノマー総量を基準にして20wt%未満の量で使用することができる。疎水性溶剤、例えば、ソルベントナフサ、トルエン、キシレン、Kristalloel、および親水性溶剤、例えば、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含んで成る溶剤混合物が好ましい。
【0025】
第二級ポリアクリレート分散体は、基本的に、任意の先行技術法、例えば、供給法(feed processes)および回分法、またはカスケード法によって製造できる。
【0026】
好ましい第二級ヒドロキシ官能性ポリアクリレート分散体A1)は、下記の方法によって得られる:
a) 30〜85wt%の、アルコール成分にC1〜C18脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物;
b) 5〜35wt%の、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル;
の混合物を反応させて、疎水性ポリマーを得、a)およびb)の添加後に、
c) 4〜20wt%の、アルコール成分にC1〜C18脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物;
d) 4〜15wt%の、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル;および
e) 1〜5wt%の、酸官能性モノマー、例えばアクリル酸またはメタクリル酸;
の混合物を計量供給し、重合させて、親水性ポリマーを得、a)b)c)d)およびe)の添加と並行して、開始剤を0.5〜6.5wt%の量で計量供給する[a)b)c)d)およびe)のパーセントの合計は100wt%である]。
【0027】
親水性溶剤(例えばブチルグリコール)および疎水性溶剤(例えばソルベントナフサ)の混合物を、溶剤として使用するのが好ましい。
【0028】
重合反応の終了後に、ポリマー溶液を水に分散させるか、または水の添加によって分散させる。中和用アミンを分散用の水と共に添加するか、または分散用の水と並行して添加することによって、アミンおよび/または塩基による酸基の中和、それによる塩の基へのそれらの変換が、分散の前または分散に並行して起こり得る。中和の程度は、50%〜150%、好ましくは60%〜120%であり得る。
【0029】
分散が生じた後に、使用した溶剤の一部または全部を、蒸留によって除去することができる。
【0030】
好ましい中和用アミンは、ジメチルエタノールアミン、エチルジイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンおよび2-アミノメチル-2-メチルプロパノールである。
【0031】
第二級ポリアクリレート分散体のpHは、5〜11、好ましくは6〜10である。固形分は20〜60wt%、好ましくは35〜55wt%である。分散体の平均粒度は20〜400nmである。
【0032】
第二級ポリアクリレート分散体の製造において、溶剤の代わりにまたは溶剤と共に、いわゆる反応性希釈剤を使用することもできる。好適な反応性希釈剤は、例えば、室温で液体の2および/または3の官能価を有するポリエーテル、低粘度ポリエステル、例えば、1モルのジカルボン酸、例えばダイマー脂肪酸またはアジピン酸と、2モルのジオールまたはトリオールまたは2モルのCardura(登録商標)E10(Versatic acidのグリシジルエステル、Hexion Specialities USA)との反応生成物である。カプロラクトンと低分子量アルコールとの反応生成物も、反応性希釈剤として好適である。ヒマシ油および他のヒドロキシ官能性油も好適である。
【0033】
好適なヒドロキシ官能性ポリアクリレートエマルジョンA1)は、好適な界面活性剤の存在下における水性エマルジョン中での既知の共重合法によって生成される。ポリアクリレートエマルジョンおよびその製造は、例えば、R.O. Athey jr., Emulsion Polymer Technology, Dekker, New York, 1991に記載されている。
【0034】
第二級ポリアクリレート分散体の製造に関して記載したモノマーは、基本的に、ポリアクリレートエマルジョンの製造にも好適である。
【0035】
これに関連した開始剤は、初期装填物に含有され、かつ/または、並行して添加され、適切であれば、事前供給または遅延供給および/または延長供給によるそれらの添加が含まれる。好適な開始剤の例は、レドックス系、パーオキシド、パースルフェートおよび/またはアゾ化合物、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、ジクメンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、パーオキソ二硫酸カリウム、パーオキソ二硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルまたはジ-tert-ブチルパーオキシドである。添加されるレドックス開始剤は、例えば、鉄(II)イオンである。
【0036】
好ましいポリアクリレートエマルジョンA)は、開始剤および界面活性剤の存在下における水中での下記物質の乳化重合によって得られる:
a) 10〜40wt%の、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル;
b) 40〜90wt%の、アルコール成分に脂肪族C1〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物;
c) 0〜5wt%の、酸官能性モノマー、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸;
d) 0〜25wt%の、他のモノマー、例えば、アクリロニトリル、ビニルアセテートおよびビニルピロリドン。
【0037】
ハイブリッド形態のポリアクリレート分散体、例えばポリエステル−ポリアクリレート分散体も、成分A1)として好適である。これらの分散体は、ポリアクリレートセグメントおよびポリエステルセグメントの両方を含有し、例えば、第二級ポリアクリレート分散体の製造に関して記載したモノマーに対応するモノマーをポリエステルの存在下にラジカル重合させることによって製造される。
【0038】
この反応は、塊状で、または好ましくは有機溶液中で行われる。ポリエステルアクリレートは、10〜75%、好ましくは20〜60wt%のポリエステル部分を含有する。
【0039】
好ましいヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体は、
a) 20〜70wt%の、アルコール成分に脂肪族C1〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物;
b) 3〜35wt%の、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル;
c) 2〜8wt%の、酸官能性モノマー、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸;
から成る混合物を、
d) 75〜10wt%の、ヒドロキシ官能性ポリエステルであって、適切であれば、二重結合を含有する成分の組込みによって、グラフト重合できる基を有するヒドロキシ官能性ポリエステル;
の存在下に、ラジカル開始重合させることによって得られる。
【0040】
好ましい開始剤は、ジ-tert-パーオキシドおよびtert-ブチルパーオクトエートである。開始剤は0.5〜5wt%の量で使用される。反応は90〜180℃で行われる。
【0041】
組み込まれた酸基を、部分的にまたは完全に、中和用アミン、好ましくは、ジメチルエタノール、エチルジイソプロピルアミンまたは2-アミノメチル-2-メチルプロパノールと反応させる。次に、水中にまたは水で、分散させる。
【0042】
好適なポリウレタン分散体A2)は、水性形態における、従来の、一般に自己乳化性のポリウレタンまたはポリウレタン/ポリウレアである。
【0043】
ポリウレタンは、イオンおよび/または非イオン性親水基をポリマー鎖に組み込むことによって自己乳化性になる。親水基を組み込むことができる多くの方法があり、例えば、親水基をポリマー鎖に直接的に組み込んでよく、または、それらを側鎖または末端に結合させてよい。
【0044】
好適なポリウレタン分散体は、当業者に既知の製造法によって、メルトまたは有機溶液中で製造でき、次に、分散させ;適切であれば、分子量を増加させる目的で、連鎖延長と呼ばれる反応を、有機溶液中で、分散工程と並行してまたは分散工程の後に、行うことができる。
【0045】
好適なポリウレタン分散体A)を製造するために、典型的には、下記の原料を使用し、互いに反応させる。
1) 親水基をポリウレタンに組み込むための少なくとも1つのNCO反応性単位、例えば、ヒドロキシカルボン酸(例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチル酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ヒドロキシピバル酸)またはそのような酸の混合物、ヒドロキシスルホン酸、アミノカルボン酸(、例えばイソホロンジアミンまたはエチレンジアミンとアクリル酸とのマイケル付加物)、アミノスルホン酸(例えばアミノエチルエタンスルホン酸)、ヒドロキシ−またはアミノ-官能性ホスホン酸、および/または、分子量範囲350〜2500g/molの1、2または3官能性ポリエチレンオキシド単位(種々の親水化剤の混合物も使用できる)。成分1)は、安定な水性分散体が得られる量で使用される。
【0046】
親水基を組み込むための特に好適なNCO-反応性単位は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、分子量範囲350〜2500のモノ−またはジヒドロキシ官能性ポリエチレンオキシド単位、例えば、Polyether LB 25(登録商標)(エチレンオキシドに基づくモノヒドロキシ官能性ポリエーテル、Bayer MaterialScience AG, DE)、Carbowax(登録商標)750(エチレンオキシドに基づくモノヒドロキシ官能性ポリエーテル、Dow Chemical, USA)、Pluriol(登録商標)A 500(エチレンオキシドに基づくモノヒドロキシ官能性ポリエーテル、BASF AG, Ludwigshafen, Germany)、およびヒドロキシ-またはアミノ−官能性スルホン酸および/またはスルホネートである。
【0047】
2) 少なくとも1つの脂肪族および/または芳香族ジ−またはポリイソシアネート、例えば、2または3官能価を有する脂肪族イソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4(2,6)-ジイソシアナトシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ノナントリイソシアネート、および4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン。芳香族イソシアネート、例えば、2,4(2,6)-ジイソシアナトトルエンまたは4,4'-ジイソシアナトフェニルメタン、並びに前記の脂肪族イソシアネートに基づく分子量336〜1500のより高い分子量またはオリゴマーポリイソシアネートの付随使用も好適である。4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンおよび/またはイソホロンジイソシアネートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または1-メチル-2,4(2,6)-ジイソシアナトシクロヘキサンを使用するのが好ましい。特に好ましいのは、イソホロンジイソシアネートおよび/もしくはヘキサメチレンジイソシアネート、または4,4'-ジイソシナトジシクロヘキシルメタンとイソホロンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物の使用である。
【0048】
3) ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアセタール、ポリエーテルおよび/またはポリシロキサンおよび/またはポリカーボネートに基づく、官能価1〜5、好ましくは2〜2.5を有する分子量範囲500〜18000g/molの少なくとも1つのポリオール成分。
【0049】
ポリウレタン分散体A)の製造に好適なポリオール成分3)は、以下の化合物を包含し得る:
平均官能価1.5〜5を有するポリエステルポリオール。特に好適であるのは、直鎖ポリエステルジオールまたは低い分岐度を有するポリエステルポリオールであって、例えば、以下の化合物から既知の方法で生成し得るポリエステルポリオールである:脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸および/またはポリカルボン酸および/またはそれらの無水物、例えば、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ダイマー脂肪酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸もしくはトリメリット酸またはそれらの混合物、または前記の酸と他のジカルボン酸および/もしくはポリカルボン酸との混合物、および、多価アルコール、例えば、エタンジオール、ジ−、トリ−、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジ−、トリ−、テトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、オクタン-1,8-ジオール、デカン-1,10-ジオール、ドデカン-1,12-ジオールまたはそれらの混合物との混合物;適切であれば、より高い官能価のポリオール、例えば、トリメチロールプロパンまたはグリセロールを付随的に使用する。ポリエステルポリオールの生成のために、脂環式および/または芳香族ジヒドロキシルおよびポリヒドロキシル化合物も当然、多価アルコールとして好適である。ポリエステルの生成のために、遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物、または低級アルコールとの対応するポリカルボン酸エステル、またはそれらの混合物を使用することもできる。
【0050】
一官能性カルボン酸、例えば、安息香酸、エチルヘキサン酸、ダイズ油脂肪酸、ピーナツ油脂肪酸、オレイン酸、飽和C12〜C20脂肪酸および/またはそれらの混合物、並びにシクロヘキサノール、イソオクタノールおよび脂肪アルコールの部分的付随使用も可能である。
【0051】
もちろん、ポリエステルポリオールは、ラクトンまたはラクトン混合物、例えば、ブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよび/またはメチル-ε-カプロラクトンと、2および/またはそれ以上の官能価を有する好適な出発分子、例えば、ポリエステルポリオールの合成成分として先に記載した低分子量多価アルコールとの付加反応によって得るのが好ましいラクトンのホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。ε-カプロラクトンの対応するポリマーが特に好ましい。
【0052】
ヒドロキシル基を有するポリカーボネートも、ポリヒドロキシル成分として好適であり、その例は、ジオール、例えば、1,4-ブタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールおよび/またはペンタンジオールと、ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート、またはホスゲンとの反応によって得るのが好ましいポリカーボネートである。
【0053】
ポリエーテルポリオールの例は、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンのポリ付加物、およびそれらの共付加物およびグラフト生成物、並びに多価アルコールまたはそれらの混合物の縮合によって得られるポリエーテルポリオール、および多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシル化によって得られるポリエーテルポリオールである。
【0054】
前記のポリオールに基づくブロックトコポリマー、例えば、ポリエーテル−ポリエステルまたはポリカーボネート−ポリエステルまたはポリカーボネート−ポリエーテルを使用することもできる。
【0055】
ポリエステルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールおよび/またはC3および/またはC4ポリエーテルポリオールを使用するのが好ましい。使用するのが特に好ましいのは、ポリエステルポリオールとポリカーボネートポリオールとの組合せ、またはポリカーボネートポリオールとC4ポリエーテルポリオールとの組合せである。
【0056】
4) 適切であれば、低分子量(分子量<500g/mol)ジオール、トリオールまたはテトラオール、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、グリセロール、ペンタエリトリトールおよび/またはアミノアルコール、例えば、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジイソプロパノールアミンまたはプロパノールアミン(適切であれば、エトキシル化および/またはプロポキシル化形態を包含する)。
【0057】
5) 適切であれば、連鎖延長剤と称される物質、例えば、ジアミンおよび/またはポリアミンおよび/またはアミノアルコール、例えば、ジエタノールアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(Dytek(登録商標)A, DuPont)、1,6-ジアミノヘキサン、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンまたはトリアミノノナン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、ヒドロキシエチレンジアミン、ビスヒドロキシエチルエチレンジアミン、アミノプロパノール、アミノアルコキシシランおよびそれらの混合物。1)、2)、3)および4)からのプレポリマーのNCO基と水との部分反応または完全反応によって連鎖延長を行うこともできる。
【0058】
好ましいポリウレタン分散体A2)は、下記の化合物を合成成分として含んでいる:
1) 0.5〜10wt%の、少なくとも1つの親水基を含有する少なくとも1つのNCO反応性単位;
2) 8〜60wt%の、脂肪族および/または脂環式ジ−またはポリイソシアネート;
3) 20〜90wt%の、平均官能価2〜3を有する分子量範囲500〜18000g/molの少なくとも1つのポリオール成分;
4) 0〜8wt%の、低分子量ジオールおよび/またはトリオール;および
5) 0〜6wt%の、連鎖延長剤としてのジアミンおよび/またはヒドラジンおよび/またはヒドラジドおよび/またはアミノアルコールおよび/または水。
【0059】
特に好ましいポリウレタン分散体A2)は、下記の化合物を合成成分として含んでいる:
1) 1.4〜6.5wt%の、少なくとも1つのカルボキシルおよび/またはカルボキシレートおよび/またはスルホネート基を含有する少なくとも1つのNCO反応性単位であって、適切であれば、分子量範囲350〜2500g/molのポリエチレンオキシド単位と組み合わせたNCO反応性単位;
2) 15〜50wt%の、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート;
3) 40〜83wt%の、ポリエステルおよび/またはポリカーボネートおよび/またはC3および/またはC4エーテルに基づいた分子量範囲800〜2400g/molの少なくとも1つのポリオール成分;
4) 0〜4wt%の、低分子量ジオールおよび/またはトリオール、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびそれらと1〜6モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの反応生成物;および
5) 0〜4wt%の、連鎖延長剤としてのジアミンおよび/またはヒドラジンおよび/またはヒドラジドおよび/またはアミノアルコールおよび/または水;
(カルボキシルおよび/またはスルホン酸基のための中和剤が50〜150当量で存在する)。
【0060】
典型的には、メルトまたは有機溶液中でのポリウレタン分散体の製造において、単位1)、2)、3)および適切であれば4)を反応させて、イソシアネート官能性プレポリマーを生成し、これは、1つの反応工程、または適切であれば2つまたはそれ以上の逐次反応工程で行うことができ、次に、イソシアネート官能性プレポリマーを、メルト中、有機溶液中または水性分散体中のいずれかで、連鎖延長剤5)と反応させて、高分子量の水分散または水分散性のポリウレタンを生成する。適切であれば、次に、使用した溶剤を蒸留によって全体的にまたは部分的に除去する。好適な中和用アミンは、例えば、第二級ポリアクリレート分散体の製造に関して記載したアミンであり、イソシアネート反応性中和剤は、連鎖延長反応およびイソシアネート基の反応後まで添加すべきでない。好適な溶剤は、例えば、蒸留によって典型的に除去されるアセトンまたはメチルエチルケトン、N-メチルピロリドンまたはN-エチルピロリドンである。
【0061】
反応を促進しかつ/または特定の効果を得るために、ポリウレタン化学において一般的な触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、二オクタン酸錫、塩化錫および第三級アミンを使用して、反応を行うこともできる。
【0062】
本発明の結合剤組合せに存在するポリウレタン分散体A2)は、典型的には、固形分25〜60wt%、pH値5.5〜11および平均粒度20〜500nmを有する。
【0063】
好適なヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体A3)は、下記化合物の反応生成物である:
1) 2〜7wt%、好ましくは2〜5wt%の、ジメチロールプロピオン酸および/またはヒドロキシピバル酸であって、適切であれば、1-または2官能性ポリエチレンオキシド単位、例えば、好ましくは、エチレンオキシドに基づくモノヒドロキシ官能性ポリエーテル、またはメトキシポリエチレングリコールと組み合わせた酸;
2) 7〜30wt%、好ましくは8〜22wt%の、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタンおよび/または1-メチル-2,4(2,6)-ジイソシアナトシクロヘキサンおよび/または1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンを含んで成る混合物;
3) 60〜91wt%、好ましくは70〜88wt%の、分子量範囲500〜8000g/molのポリオール成分であって、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリシロキサンおよび/またはポリカーボネートに基づいた、官能価1.8〜5、好ましくは2〜4を有し、ポリオール成分の50wt%、好ましくは75wt%、特に好ましくは100wt%が少なくとも1つのポリエステルから成るポリオール成分;および
4) 0〜5wt%の、低分子量(分子量<500g/mol)ジオール、トリオール、テトラオールおよび/またはアミノアルコール。
【0064】
成分を、有機溶液またはメルト中で、適切であれば、ポリウレタン化学で一般的な触媒を使用して、かつ/または中和剤として作用する非反応性アミン、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンおよびN-メチルモルホリンの存在下で反応させてヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタンを得るが、それは成分1)、2)、3)および4)の反応後にどのような遊離イソシアネート基も含有しない。
【0065】
次に、水中でまたは水を用いて分散を行い、適切であれば、過剰の溶剤を再び蒸留によって除去する。
【0066】
分散工程の前またはその間に添加することができる好適な中和剤は、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、アンモニア、または第二級ポリアクリレート分散体の製造に関して記載した中和剤である。
【0067】
ポリエステル−ポリウレタン分散体A3)は、固形分25〜55wt%、pH値6〜11、平均粒度10〜350nmを有する。
【0068】
成分B)は、架橋剤樹脂、例えば、アミド−およびアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂およびケトン樹脂、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、ウレア樹脂、カルバミン酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂、アニリン樹脂、水希釈性および水分散性メラミン−およびウレア−ホルムアルデヒド縮合生成物を含んで成る。
【0069】
さらに、かなり好適な架橋剤樹脂B)は、ブロックトポリイソシアネートであって、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、テトラメチレンジイソシアネート、メチルペンタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、1-メチル-2,4(2,6)-ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4'-ジイソシアナトフェニルメタン、2,2'-および2,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン、p-キシリレンジイソシアネート、p-イソプロピリデンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネートおよびα,α,α’,α’−テトラメチル-m-または-p-キシリレンジイソシアネートに基づくブロックトポリイソシアネート、並びにこれらの混合物である。
【0070】
理解されるように、例示したポリイソシアネートに基づいて、より高い官能価を有し、ウレトジオン基および/またはカルボジイミド基および/またはアロファネート基および/またはイソシアヌレート基および/またはウレタン基および/またはイミノオキサジアジンジオン基および/またはオキサジアジントリオン基および/またはビウレット基を有するポリウレタン化学においてそれ自体で既知のポリイソシアネートを、ブロックト架橋剤樹脂として使用することもできる。
【0071】
種々のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの混合物を使用することもできる。
【0072】
ポリイソシアネート架橋剤用の可能な好適ブロッキング剤は以下の通りである:モノアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノールおよびベンジルアルコール、オキシム、例えばアセトキシムおよびメチルエチルケトキシム、ラクタム、例えばカプロラクタム、フェノール、CH-酸性化合物、例えばアセト酢酸エステル、またはマロン酸エステル、例えばマロン酸ジエチル、ジメチルピラゾール、およびアミン、例えば、tert-ブチルベンジルアミン、トリアゾール、ジメチルトリアゾール、ジシクロヘキシルアミンまたはジイソプロピルアミン。
【0073】
アミノ架橋剤樹脂を使用するのが好ましく、それをブロックトポリイソシアネートと組み合わせるのも好ましい。
【0074】
本発明の別の態様において、本発明の水性被覆組成物は、
C) ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)、およびポリウレタン-ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体
を含んで成る。
【0075】
好ましい結合剤組合せは、20℃の温度および75%までの大気湿度において30分未満で物理的に乾燥する分散体を、成分C)として使用することを特徴とする。これに関して特に好ましいのは、非ヒドロキシ官能性ポリウレタン分散体C1)であり、C1)はA2)と同じである。ポリウレタン分散体は、A2)に関して記載したように脂肪族ポリイソシアネートに基づいて製造するのが好ましい。前記の分散体C1)、C2)およびC3)の混合物をC)として使用することもできる。
【0076】
フィルムの延伸後に揮発性成分が蒸発して非粘着性フィルムを生じる場合に、分散体は室温で物理的に乾燥されると考えられる。これに関して、1時間以内、より好ましくは30分以内に、室温で物理的に乾燥する分散体C)が好ましい。
【0077】
好適なポリアクリレートエマルジョンC2)は、A1)で記載した物質である。
【0078】
ポリウレタン-ポリアクリレート分散体C3)は、例えばポリウレタン分散体の存在下で、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレンおよび所望であれば他のモノマーのラジカル開始乳化重合を行うことによって得られる。重合の過程で、ポリウレタンへのグラフト反応が生じてもよい。例えばポリウレタンへの不飽和化合物の組み込みによって、ポリウレタンとポリアクリレートとの特異的グラフト反応および共重合を行うこともできる。不飽和モノマー、例えば、スチレン、ブチルアクリレートおよび/またはメチルメタクリレートの存在下で、ポリウレタンを生成することもでき、分散操作後にモノマーの重合を行うこともできる。
【0079】
特に好ましいポリウレタン分散体C1)は、下記化合物の反応生成物を含んでいる:
1) 1.4〜6.5wt%の、ジメチロールプロピオン酸であって、適切であれば、分子量範囲750〜2500g/molのポリエチレンオキシド単位と組み合わせた酸;
2) 15〜35wt%の、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートおよび/またはビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタンおよび/または1-メチル-2,4(2,6)-ジイソシアナトシクロヘキサン;
3) 45〜80wt%の、ポリエステルおよび/またはポリカーボネートおよび/またはC3またはC4エーテルに基づいた分子量範囲840〜2400の少なくとも1つのポリオール成分;
4) 0〜3wt%の、ヘキサンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロールおよび/またはトリメチロールプロパン;
5) 0〜2.5wt%の、連鎖延長剤としてのジアミンおよび/またはアミノアルコールおよび/または水;
(カルボキシルおよびスルホン酸基の量を基準にして50〜125当量の中和剤を含有し、有機溶剤は存在しない)。
【0080】
本発明の被覆組成物は、
A) 15〜90wt%、好ましくは25〜85wt%の、水性結合剤混合物;
B) 5〜40wt%、好ましくは9〜32wt%の、少なくとも1つの架橋剤;および
C) 5〜65wt%、好ましくは20〜55wt%の、ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)およびポリウレタン-ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体
を含んで成る
[A)、B)およびC)のパーセントは合計100wt%である]。
【0081】
さらに、本発明の態様は、下記物質を含んで成る本発明の水性被覆組成物である:
C) ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)およびポリウレタン-ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体;および
D) 水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂。
【0082】
本発明の他の態様は、下記物質を含んで成る本発明の水性被覆組成物である:
D) 水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂。
【0083】
成分D)として好適な水希釈性ポリエステルは、かなり優れた顔料湿潤または顔料親和性を有する分散樹脂である。成分D)は、酸価25〜75mg KOH/g固形分、および/またはヒドロキシル基含量2.5〜10wt%、および/または分子量750〜5000g/mol、および/または脂肪酸成分15〜50wt%を有する。
【0084】
好ましい分散樹脂D)は、
1) 30〜62wt%の、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオールおよび/または1-ブタンジオールの群から選択されるジオール;
2) 5〜20wt%の、トリメチロールプロパン、グリセロールおよび/またはペンタエリトリトールの群から選択されるトリオールおよび/またはテトラオール;
3) 30〜62wt%の、無水フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸および/またはアジピン酸の群から選択されるジカルボン酸;
を反応させ、次に、そのポリエステルを、
4) 3〜15wt%の酸無水物、好ましくは無水トリメリット酸;
と反応させることによって生成される水希釈性ポリエステルである(パーセントは合計で100wt%であり、酸基のいくつかまたは全てが、中和用アミンとの反応によって塩形態に変換される)。
【0085】
本発明の被覆組成物は、
A) 15〜89.5wt%、好ましくは25〜85wt%の、水性結合剤混合物;
B) 5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%の、少なくとも1つの架橋剤;
C) 5〜65wt%、好ましくは20〜50wt%の、ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)およびポリウレタン−ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体;および
D) 0.5〜30wt%、好ましくは0.5〜15wt%の、水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂
を含んで成る
[A)、B)、C)およびD)のパーセントは合計で100wt%である]。
【0086】
他の実施態様において、本発明の被覆組成物は、
A) 30〜94.5wt%、好ましくは55〜90wt%の、水性結合剤混合物;
B) 5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%の、少なくとも1つの架橋剤;および
D) 0.5〜30wt%、好ましくは0.5〜15wt%の、水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂
を含んで成る
[A)、B)およびD)のパーセントは合計で100wt%である]。
【0087】
好適なポリエステル分散体および溶液D)は、以下のようにして得られる:1、2および/またはそれ以上の官能価を有するアルコール並びにカルボン酸および/またはそれらの無水物を反応させることによって生成されるヒドロキシ官能性ポリエステルと、酸無水物、例えば、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸および無水ピロメリット酸とを、60〜200℃、好ましくは120〜180℃において、酸無水物がヒドロキシル基の一部と反応する仕方で、酸無水物の開環およびポリエステルへの組み込みを伴って、水を除去しながら反応させる。これによってヒドロキシ官能性およびカルボキシ官能性ポリエステルを得、該ポリエステルを、カルボキシル基の部分的または完全な中和後に、水に分散させるかまたは溶解させることができる。水性ポリエステル溶液は、平均粒度10〜200nm、好ましくは25〜100nmを有する。
【0088】
ヒドロキシ官能性ポリエステルの生成に好適な原料の例は、ジオール、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、およびプロパンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートであり、最後の3つの化合物が好ましい。適切な場合に同様に使用し得るポリオールの例は、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートである。好適なジカルボン酸およびポリカルボン酸の例は、以下の化合物:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、トリメリット酸またはピロメリット酸である。これらの酸の無水物が存在する場合、それらも使用し得る。従って、本発明のためには、酸無水物は表現「酸」に含まれる。加えて、モノカルボン酸も使用し得る。好適なモノカルボン酸は、例えば、ヤシ油脂肪酸、ダイズ油脂肪酸、ベニバナ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、リシネン(ricinene)酸、ラッカセイ油脂肪酸、トール油脂肪酸またはコンジュエン(共役エン)脂肪酸、安息香酸、tert-ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、デカン酸またはオクタデカン酸である。
【0089】
加えて、ポリエステルを生成する場合、ε-カプロラクトンを使用することもできる。
【0090】
ヒドロキシ官能性ポリエステルは、適切な場合に好適なエステル化触媒を使用して、前記の原料の重縮合によって生成され、次に、酸無水物と反応させる。このようにして生成されたポリエステルを、溶剤または溶剤混合物に溶解させ、中和剤と混合する。
【0091】
水への分散または溶解は、ポリエステルの生成および酸無水物との反応後すぐに、または後に、行ってよい。
【0092】
ポリエステル分散体またはポリエステル溶液D)用の1つの好ましいポリエステル組成物は、下記の化合物から合成される:
a) 30〜62wt%、好ましくは30〜50wt%の、ヘキサンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび/またはネオペンチルグリコールの群から選択されるジオール;
b) 5〜20wt%、好ましくは6〜15wt%の、トリオールおよび/またはテトラオール、好ましくはトリメチロールプロパンおよび/またはグリセロール;
c) 30〜62wt%、好ましくは33〜58wt%の、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸および/またはアジピン酸の群から選択されるジカルボン酸および/またはそれらの無水物;
d) 0〜30wt%、好ましくは0〜20wt%の、モノカルボン酸および/またはカプロラクトン;および
e) 3〜15wt%、好ましくは5〜12wt%の、無水トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸および/または無水フタル酸の群から選択される酸無水物。
【0093】
ポリウレタン分散体A2)/C1)は典型的には、ゲルクロマトグラフィーによって測定して、平均分子量Mn>10,000g/mol、好ましくは>30,000g/molを有する。ポリウレタン分散体は、部分的に、かなり高い分子量部分を含有する場合が多く、該部分は、有機溶剤に完全溶解性でなく、その場合、分子量測定にかからない。
【0094】
ポリエステル-ポリウレタン分散体A3)は、例えばゲルクロマトグラフィーによって測定して、平均分子量Mn1500〜8000g/molを典型的には有する。
【0095】
ポリエステル分散体または溶液D)は、典型的には、ゲルクロマトグラフィーによって測定して、例えば平均分子量Mn7500〜5000g/mol、好ましくは1000〜3500g/molを有する。
【0096】
本発明の被覆組成物は、耐チップ下塗剤を形成するのに特に好適である。または、それらは、単一被膜または多重被膜用途のための、任意の所望される透明、着色または艶消し被覆材料を製造するのに使用できる。
【0097】
本発明の被覆組成物は、例えば、自動車仕上げ、または軟感触被覆に好適である。これらの用途における好適な支持体は、プラスチック、木材、金属、無機物質、織物、革および/またはガラスである。
【0098】
本発明の被覆組成物は、種々の用途のいずれかに関して、任意の所望される透明、着色または艶消し被覆材料を製造するのに使用することもでき、これらの被覆材料は、単一被膜または多重被膜用途を意図している。
【0099】
従って、本発明は、支持体、および本発明の水性被覆組成物から成る少なくとも1つの被膜を有して成る塗装系も提供する。
【0100】
本発明の被覆組成物から製造される塗料および被覆剤は、適切であれば、以下の添加剤を更に含んでいてよい:付加的結合剤、紫外線によって硬化させることができる不飽和基を有する反応性希釈剤およびポリマー、有機および/または無機顔料、カーボンブラック、充填剤、付加的溶剤、増粘剤、レオロジー添加剤、有機または無機ナノ粒子(例えば、珪素、亜鉛、チタン、バリウム、カルシウム、マグネシウムなどに基づく)、顔料湿潤を向上させる添加剤、消泡用添加剤、流動、光沢または付着性を向上させる添加剤、黄変または紫外線の有害作用を防止または減少させる添加剤。
【0101】
適用は、吹き付け、流し込み、浸漬、ロール塗り、はけ塗りおよびローラー塗りによって行うことができる。
【実施例】
【0102】
使用成分:
原料A1)Bayhydrol(登録商標)A 145:
水性、ヒドロキシ官能性、第二級ポリアクリレート分散体。固形分45%、23℃における粘度1000mPas、pH8.0、酸価10mg KOH/g固形分、OH含量1.5%、各4%のブチルグリコールおよびソルベントナフサ100を含有、Bayer MaterialScience AG, DE。
【0103】
原料A2)Bayhydrol(登録商標)XP 621:
水性、脂肪族、無溶剤ポリウレタン分散体。固形分40%、23℃における粘度20秒(DIN 4カップ、流出時間)、pH7.5、平均粒度(レーザー相関分光法)100nm、カルボキシレート基含有、Bayer MaterialScience AG, DE。
【0104】
原料A3)Bayhydrol(登録商標)PT 241:
水性、ヒドロキシ官能性、ポリエステル−ポリウレタン分散体。固形分41%、粘度1000mPas、pH8.3、酸価7.5mg KOH/g固形分、OH含量1%、5%のN-メチルピロリドン含有、Bayer MaterialScience AG, DE。
【0105】
分散体A):
50部の原料A1)、15部の原料A2)、および35部の原料A3)の混合物(それぞれ、各原料の固形分を基準とする)。固形分42.7%。
【0106】
架橋剤B):
原料B1)Cymel(登録商標)328:
メチル化メラミン-ホルムアルデヒド架橋剤樹脂、水溶液、Cytec Industries, Inc., USA。
【0107】
原料B2)Cymel(登録商標)327:
メチル化メラミン−ホルムアルデヒド架橋剤樹脂、イソブタノール中溶液、Cytec Industries, Inc., USA。
【0108】
原料C)Bayhydrol(登録商標)XP 2621:
水性、脂肪族、無溶剤ポリウレタン分散体。固形分40%、23℃における粘度20秒(DIN 4カップ、流出時間)、pH7.5、平均粒度(レーザー相関分光法)100nm、カルボキシレート基含有、Bayer MaterialScience AG, DE。
【0109】
原料D)Bayhydrol(登録商標)D 270:
水希釈性、ヒドロキシ官能性ポリエステル。水11.5%、ブチルグリコール13.3%、ジメチルエタノールアミン5.2%中の固形分70%;23℃における粘度12000mPas、pH8.0、OH含量2.0、酸価35mg KOH/g固形分、平均粒度15nm、Bayer MaterialScience AG, DE。
【0110】
BYK(登録商標)347:ポリエーテル改質シロキサン、Byk Chemie, Wesel, Germany;
Viscalex(登録商標)HV 30、30%供給形態:コポリマー系増粘剤、Allied Colloids LTD, United Kingdom;
Disperbyk(登録商標)190:顔料安定用ブロックトコポリマー、Byk Ghemie, Wesel, Germany;
Byk(登録商標)011:消泡剤、Byk Chemie, Wesel, Germany;
Gasruβ FW 200カーボンブラック:(Degussa AG, Frankfurt, Germany;
Additol(登録商標)XL250:顔料湿潤添加剤、Cytec Surface Specialities, USA;
Bayhytherm(登録商標)3146:ブロックトイソシアネート基含有ポリウレタン分散体、Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, Germany;
Maprenal(登録商標)MF 904メラミン樹脂:Ineos Melamins GmbH, Frankfurt, Germany;
Marpenal(登録商標)MF 915メラミン樹脂:Ineos Melamins GmbH, Frankfurt, Germay;
Bayhytherm(登録商標)VP LS 2153:自己架橋ポリウレタン分散体、Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, Germany
【0111】
実施例1:本発明
本発明の単色ブラック耐チップ下塗剤結合剤組合せ1)の調製および試験;その結合剤成分は、(それぞれ固形分を基準にして)48.5%の分散体A)、30%の原料C)、20%の原料B2)および1.5%の原料D)から成る。
【0112】
37部の分散体A)、24部の原料C)、7部の原料B2)、4.7部のブチルグリコール、0.5部のBYK(登録商標)347、0.9部のViscalex(登録商標)HV 30、12部の蒸留水、および3.3部のジメチルエタノールアミン(水中10%の形態)を、初期装入物として導入し、プロペラ攪拌子付の溶解機によって2000rpmで混合し、次に、10.5部の顔料ペーストを添加し、混合物を4000rpmで30分間攪拌し、次に、pHを8.0〜8.5に調節する。顔料ペーストは、4.5部の原料D)、14.8部のジメチルエタノールアミン(水中10%の形態)、30部のDisperbyk(登録商標)190、0.9部のByk(登録商標)011、17部のGasruβ FW 200および32部の水を含有し、成分を溶解機で分散させることによって調製し、次に、ビードミル(bead mill)での分散を30分間行う。
【0113】
このように調製された水性単色ブラック耐チップ下塗剤1)はpH8〜8.5を有し、粘度25秒(23℃におけるDIN 4カップ流出時間)において、2種類のサーフェーサー(タイプ1およびタイプ2)で被覆された金属パネルに適用し、80℃で10分間乾燥させ、次に、2成分ポリウレタン上塗剤を適用し、140℃で30分間硬化させる。比較のために、OEM自動車系列品質(automotive line quality)の単色下塗剤を、同じ試験に付す。
【表1】

被覆剤の耐ストーンチップ性のVDA[German Carmakers Association]試験:パート1:DIN 55996-1による多衝撃試験:1=非常に良好、5=かなり不良
** 過酷暴露における層間剥離の発生:耐チップ下塗剤は、種々のタイプのサーフェーサーにかなりよく付着し、層間剥離はサーフェーサーとエレクトロコートとの間(主分離面)でのみ生じる
*** DOI(画像の鮮明度)の測定は、上塗剤の状態(holdout)を示す反射角に近い光沢測定であり、いわゆるグローボックス(glow box)で行う。得られる数値は相対値(0〜100)である。DOIが高いほど、塗料品質がより高く、かつ、塗面での反射によるハイコントラストオブジェクトの画像鮮明度がより高い。80またはそれ以上の数値がかなり優れた数値である。
【0114】
耐チップ下塗剤1)は、自動車仕上げの全ての要求を満たす。品質は、主として、支持体またはサーフェーサーのタイプに依存し、フィルム光学特性および耐ストーンチップ特性が優れており、付着性は、比較のために試験した自動車系列品質の付着性より優れている。
【0115】
実施例2:本発明
本発明の単色ブラック耐チップ下塗剤結合剤組合せ2)の調製および試験;その結合剤成分は、それぞれ固形分を基準にして、84%の分散体A)、15%の原料B2)、および1%の原料D)から成る。
【0116】
60.7部の分散体A)、7.2部の架橋剤原料B2)、4.8部のブチルグリコール、0.5部のByk(登録商標)347、1部のViscalex(登録商標)HV 30、12部の蒸留水、および3部の10%濃度ジメチルエタノールアミン水溶液を、溶解機において2000rpmで10分間攪拌し、次に、4.6部の原料D)、14.9部の10%濃度ジメチルエタノールアミン水溶液、30部のDisperbyk(登録商標)190、17部のGasruβ FW 200および32.42部の蒸留水から成る10.7部の顔料ペーストを添加し、混合物を4000rpmで約30分間攪拌する。
【0117】
単色ブラック耐チップ下塗剤2)は、適用粘度25秒(DIN 4粘度カップ/23℃)、pH約8、固形分30.6%を有する。それを、ポリウレタンサーフェーサーで被覆された金属パネルに適用し、次に、80℃で10分間乾燥させ、次に、自動車工業において一般的な2成分ポリウレタン上塗剤で上塗りし、140℃で30分間硬化させる。
【0118】
実施例3:本発明
実施例2と同様であるが、比率は69.5%の分散体A)、29.5%の原料B2)、および1%の原料D)である。
【0119】
水性単色ブラック耐チップ下塗剤3)は、固形分32.5%を有し、粘度25秒(23℃におけるDIN 4カップ流出時間)において、ポリウレタンサーフェーサーで被覆された金属パネルに適用し、80℃で10分間乾燥させ、次に、2成分ポリウレタン上塗剤を適用し、140℃で30分間硬化させる。
【0120】
得られた結果は以下の通りであった。
【表2】

【0121】
実施例4:本発明
結合剤を基準に、49部の分散体A)、29部の原料C)、19部の原料B1)および2部の原料D)から成る本発明の銀メタリック調耐チップ下塗剤の調製。
【0122】
17.5部の分散体A)、11.2部の原料C)、19部の蒸留水、3.3部のブチルグリコール、4.5部のジメチルエタノールアミン(水中10%の形態)を、溶解機によって2000rpmで10分間攪拌し、2.8部のViscalex(登録商標)HV30および19部の蒸留水を添加し、混合物を再び溶解機によって2000rpmで10分間攪拌し、次に、3.5部の原料B1)、3.3部のブチルグリコールおよび4.2部の蒸留水を添加し、攪拌を溶解機によってさらに10分間継続し、次に、11.7部の金属ペーストを添加し、組成物を4000rpmで30分間攪拌する。次に、pHを8〜8.5に調節する。
【0123】
金属ペーストは、41.9部のブチルグリコール、2.9部の原料D)、4.3部のAdditol(登録商標)XL250、50.6部のStapa Hydrolan(登録商標)2156 No.55900/Gアルミニウム、および0.23部のジメチルエタノールアミンを溶解機によって4000rpmで30分間混合することによって調製する。
【0124】
耐チップ下塗剤4)は、固形分18.7%、適用粘度約40秒(DIN 4 粘度カップ)を有する。それを、エレクトロコートおよびサーフェーサー(タイプa)で被覆された金属パネルに吹き付けることによって適用し、80℃で10分間乾燥させ、次に、ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレートおよび低粘度のHDI系ポリイソシアネートを基剤とする60%の2成分PUクリアコートで上塗りし、140℃で30分間硬化させる。下塗剤についての乾燥塗膜厚は約15μmであり、クリアコートについては約40μmである。
【0125】
タイプa)サーフェーサーは、その結合剤成分として、水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル(Bayhydrol(登録商標)D270)、ブロックトイソシアネート基含有ポリウレタン分散体(Bayhytherm(登録商標)3146)並びにアミノ架橋剤樹脂Maprenal(登録商標)MF904およびMarpenal(登録商標)MF915を、30:55:7.5:7.5の比率で含有する。
【0126】
実施例5:本発明
銀メタリック調耐チップ下塗剤を、実施例4に記載したように、29部の分散体A)、49部の原料C)、20部の原料B1)および2部の原料D)から調製する。
【0127】
耐チップ下塗剤5)は、固形分15.9%、適用粘度約40秒(DIN 4 粘度カップ)を有する。それを、エレクトロコートおよびサーフェーサー(タイプa)で被覆された金属パネルに吹き付けることによって適用し、80℃で10分間乾燥させ、次に、ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリアクリレートおよび低粘度HDI系ポリイソシアネートを基剤とする60%の2成分PUクリアコートで上塗りし、140℃で30分間硬化させる。下塗剤についての乾燥塗膜厚は約15μmであり、クリアコートについては約40μmである。
【0128】
得られた試験結果は以下の通りであった。
【表3】

【0129】
実施例4)および5)を、20:32.5:32.5:15の比率のBayhydrol(登録商標)D270、Bayhytherm(登録商標)3146、Bayhytherm(登録商標)VP LS 2153およびCymel(登録商標)327に基づく異なるサーフェーサー(タイプb)を使用して調製する。
【0130】
得られた試験結果は以下の通りである。
【表4】

【0131】
支持体の種類とは無関係に、優れたフィルム光学値およびメタリック効果だけでなく、優れた耐ストーンチップ性および付着性も示す耐チップ下塗剤が得られる。全ての被覆剤は、水暴露にかなり優れた耐性を示し、かつ、全般的に、優れたフィルム光学品質を示す。対応する塗料配合物は貯蔵安定性である。
【0132】
本発明の結合剤組合せは、耐チップ下塗剤の製造に特に好適であり、プライマー、耐ストーンチップサーフェーサー、下塗剤および上塗剤から成る自動車仕上げに一般に使用される4塗料被膜系を、プライマー、耐チップ下塗剤およびクリアコートから成る3層系にすることができる。これは、仕上げコストの実質的な低減を可能にする。
【0133】
本発明を例示目的で前記に詳しく説明したが、そのような説明は例示目的に過ぎず、請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図および範囲を逸脱せずに当業者によってそれに変更を加え得るものと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)
A1) 25〜70wt%の、第二級ヒドロキシ官能性ポリアクリレート分散体またはポリアクリレートエマルジョン;
A2) 5〜50wt%の、脂肪族ポリウレタン分散体;
A3) 20〜70wt%の、ヒドロキシ官能性ポリエステル−ポリウレタン分散体であって、分子量500〜2500g/molのポリエステルを少なくとも75wt%の程度まで含んで成る分散体
を含んで成る水性結合剤混合物;および
B) 少なくとも1つの架橋剤;
を含んで成り、
A1)〜A3)の3つ成分の少なくとも2つを必ず含有し、かつ、1つの成分A1)および/またはA3)を少なくとも35wt%の量で必ず含有する水性被覆組成物。
【請求項2】
2〜12wt%の有機溶剤含量を有する、請求項1に記載の水性被覆組成物。
【請求項3】
成分B)が、アミノ架橋剤樹脂である、請求項1に記載の水性被覆組成物。
【請求項4】
成分B)が、アミノ架橋剤樹脂およびポリイソシアネートの組合せである、請求項1に記載の水性被覆組成物。
【請求項5】
C) ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)、およびポリウレタン−ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体
を含んで成る、請求項1に記載の水性被覆組成物。
【請求項6】
A) 15〜90wt%の、水性結合剤混合物;
B) 5〜40wt%の、少なくとも1つの架橋剤;および
C) 5〜65wt%の、ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)、およびポリウレタン−ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体
[A)、B)およびC)のパーセントは合計100wt%である]
を含んで成る、請求項1または5に記載の水性被覆組成物。
【請求項7】
C) ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)、およびポリウレタン−ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体;および
D) 水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂
を含んで成る、請求項1に記載の水性被覆組成物。
【請求項8】
A) 15〜89.5wt%の、水性結合剤混合物;
B) 5〜40wt%の、少なくとも1つの架橋剤;
C) 5〜65wt%の、ポリウレタン分散体C1)、ポリアクリレートエマルジョンC2)、およびポリウレタン-ポリアクリレート分散体C3)から成る群から選択される1つまたはそれ以上の分散体;および
D) 0.5〜30wt%の、水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂
[A)、B)、C)およびD)のパーセントは合計で100wt%である]
を含んで成る、請求項1または7に記載の水性被覆組成物。
【請求項9】
成分C)が、物理的乾燥分散体である、請求項5に記載の水性被覆組成物。
【請求項10】
D) 水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂
を含んで成る、請求項1に記載の水性被覆組成物。
【請求項11】
A) 30〜94.5wt%の、水性結合剤混合物;
B) 5〜40wt%の、少なくとも1つの架橋剤;および
D) 0.5〜30wt%の、水希釈性ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂;
[A)、B)およびD)のパーセントは合計で100wt%である]
を含んで成る、請求項1または10に記載の水性被覆組成物。
【請求項12】
成分D)が、酸価25〜75mg KOH/g固形分、および/またはヒドロキシル基含量2.5〜10wt%、および/または分子量750〜5000g/mol、および/または脂肪酸成分15〜50wt%を有する、請求項7に記載の水性被覆組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の水性被覆組成物を含んで成る耐チップ下塗剤。
【請求項14】
支持体および請求項1に記載の水性被覆組成物から成る少なくとも1つの被膜を有して成る塗装系。
【請求項15】
プラスチック、木材、金属、無機物質、織物、革、ガラスおよびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項14に記載の支持体。

【公開番号】特開2008−115385(P2008−115385A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−270145(P2007−270145)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】