説明

下水管洗浄装置

【課題】下水管の内壁を効率的に洗浄すること
【解決手段】下水管23の内壁23aを洗浄する下水管洗浄装置1であって、回転可能のボデー3とボデー3の周面に設けられる複数の曲管ノズル5とボデー3を支持するための脚部31a,31bとからなり、ボデー3は中空の筒状に形成され一端部にホース13が接続され、曲管ノズル5はボデー3の周面に螺旋状に設けられる。曲管ノズル5から圧水を噴出させると、その反作用により、ボデー3は回転の推進力を得る。連続的に噴出される圧水は、ボデー3の回転中、洗浄水として下水管23の内壁全面に常に略直角に噴射されるから、下水管23の内壁洗浄を効率的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、下水管の内壁を洗浄するための下水管洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管は、使用期間の経過に伴い土砂等の堆積やラード等の付着が起こるため、適宜に保守作業をする必要があり、これを怠ると下水が流れにくくなり悪臭等の原因となる。この保守作業としてはまず内壁の洗浄があり、内壁に損傷がある場合にはライニングを施す必要がある。また、ライニングを施す場合には事前に内壁を洗浄する必要がある。
【0003】
従来の下水管の洗浄方法は、人手によるものや、高圧洗浄車、吸引車等によるものが主流であるが、なかには洗浄装置を下水管内に挿通するものもあった。
【0004】
この洗浄装置は、ノズルの回転軸を洗浄対象となる管の長軸に一致させ、噴射の方向を洗浄対象となる管の長さ方向に略一致させるものであり、ノズル回転の動力としてモータを利用するものであった。
【0005】
しかし、噴射の方向を洗浄対象となる管の長さ方向に略一致させるため、水流が内壁に対して略並行にぶつかるので、水流が内壁に対して直角にぶつかるのに比しムダが多くなり、効率的であるとはいえなかった。また、ノズル回転の動力としてモータを利用するためエネルギー的にも効率的であるとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表昭58−500619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は上記従来の欠点を解消し、下水管の内壁を効率的に洗浄する装置を供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本願発明による下水管洗浄装置は、下水管の内壁を洗浄する下水管洗浄装置であって、
回転可能のボデーと、上記ボデーの周面に螺旋状に立設される複数の曲管と、上記ボデーを支持するための脚部とからなり、
上記ボデーは中空の筒状に形成され一端部に圧水が注入されるホースが接続され、
上記圧水が上記曲管のノズルから噴出され、この噴出の力により上記ボデーが圧水の噴出方向とは反対方向に回転することを特徴とする。
また、請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーに複数のパイプが螺旋状に立設され、該パイプの全部に曲管が取り付けられることを特徴とする。
また、請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーに複数のパイプが螺旋状に立設され、該パイプの一部に曲管が取り付けられることを特徴とする。
また、請求項3記載の下水管洗浄装置において、上記曲管は上記ボデーの進行方向後部に設けられたパイプに取り付けられることを特徴とする。
また、請求項1乃至請求項4いずれか一記載の下水管洗浄装置において、上記脚部が伸縮自在に設けられることを特徴とする。
また、請求項5記載の下水管洗浄装置において、上記脚部が適宜数のジョイントからなることを特徴とする。
また、請求項1乃至請求項6いずれか一記載の下水管洗浄装置において、上記脚部は上記ボデーの周面に所定角に拡開されて設けられることを特徴とする。
また、請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記脚部の先端にはそりが設けられることを特徴とする。
また、請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーが円筒体状であることを特徴とする。
また、請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーが八角柱体状であることを特徴とする。
また、請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーの両端部にベアリングを取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように、本願発明にかかる下水管洗浄装置によれば、曲管のノズルから圧水を噴出させ、その反作用によりボデー回転の推進力を得る。そして連続的に噴出される圧水は、ボデーの回転中、洗浄水として下水管の内壁全面に常に略直角に噴射されるから、洗浄が効率的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明による下水管洗浄装置の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1の脚部の分解図である。
【図5】本願発明による下水管洗浄装置の他の実施の形態を示す正面図である。
【図6】本願発明による下水管洗浄装置のさらに他の実施の形態を示す正面図である。
【図7】図6の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明による下水管洗浄装置をさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0012】
本願発明による下水管洗浄装置1は、両端が閉塞された例えば直径100mmのアルミニウム製の中空の円筒からなるボデー3を有し、該ボデー3の円周面に等間隔(本実施例では曲管ノズル5が8個なので角度45°刻み)にかつ螺旋状に8本のパイプ6が突設される。該各パイプ6の先端には、曲管からなり、口の窄まったソケットを取付けてなるノズル5a乃至ノズル5h(総称するときは「曲管ノズル5」という)が設けられる。上記曲管ノズル5は、「エルボ管」と称され、先端部が例えば45°に傾斜されてなる。上記曲管ノズル5は、上記ボデー3内に設けられた散水分配機4に連通される。
【0013】
上記ボデー3の両端部には首部25a、25bが突設され、該首部25a、25bにユニットピロー型のベアリング27a、27bを取付け、ボデー3を回転可能に軸支する。29は脚部31a、31bと首部25a、25bを連結する支承板である。一方の首部25aはホース13に接続されるため開口される。
【0014】
上記脚部31a、31bは、図4に示すように、複数のジョイント33a乃至33eからなり、下水管23の口径に応じて適宜数のジョイント33a乃至33eを連設して長さを調節する。なお、図示例の場合、ジョイント33aの長さは100mm、ジョイント33b乃至ジョイント33eは50mmである。33fはそり21に固着され上記脚部31a、31bを回動可能に軸支するナックルジョイント、33gは上記脚部31a、31bを上記支承板29に固着する止めボルトである。上記脚部31a、31b間の角度βは本例の場合45°となっている。
【0015】
次に、正円形の下水管23を例に、本願発明による下水管洗浄装置1の設置及び洗浄方法について説明する。まず、ボデー3の回転軸と下水管23の中心軸とが一致するように、つまりボデー3の回転軸からそり21,21までの距離が下水管23の半径と等しくなるように、脚部31a,31bの長さを調節する。この調節は洗浄作業の前に予めジョイント33a乃至33eの個数を適宜数にすることにより行なう。
【0016】
次に、ホース13をボデー3の一端部に装着し他端部を塞いだ下水管洗浄装置1を図示しないマンホールより下水管23内に挿入し、脚部31a,31bを内壁面23aに当接させ、さらにそり21を内壁面23aの傾斜に合わせて角度調節する。
【0017】
ホース13からボデー3内に圧水を注入すると、曲管ノズル5から圧水が噴出する。よって噴出水の方向が回転軸の中心からずれるため、その反作用により、ボデー3は回転の推進力を得るので、ボデー3は圧水の噴出方向とは反対方向の矢印A方向に回転する。
【0018】
下水管洗浄装置1の移動は、図示しないロープにより、ボデー3を矢印B方向に人力で牽引したり、ボデー3を押したりして行ない、前進又は後進する。
【0019】
洗浄終了後、必要な次作業例えば内壁のライニング作業をすることができる。
【0020】
上記実施の形態によれば、連続的に噴出される圧水は、ボデー3の回転中、洗浄水として下水管23の内壁全面に常に略直角に噴射されるから、下水管23の内壁洗浄を効率的に行うことができる。
【0021】
また、各曲管ノズル5はボデー3に螺旋状に設置されているから、曲管ノズル5a乃至5hから圧水が連続的に噴出するので、ボデー3の回転が円滑であり、強力な推進力を得ることができる。
【0022】
さらに、ベアリング27a、27bを取付けてあるからボデー3の回転が一層円滑となる効果がある。
【0023】
さらにまた、下水管23の口径より脚部31a、31bの長さ調節を作業前に予めなすことができるので、作業が一層効率化する効果がある。
【0024】
本願発明は上記実施の形態に限定されない。図5は本願発明による下水管洗浄装置1の他の実施の形態を示す。この場合、曲管ノズル5はボデー3の進行方向後部に設けられたパイプ6aに2個取り付けられ、他のパイプ6bには直管からなるノズル15が取り付けられる。
【0025】
この実施の形態によれば、後部2本の曲管ノズル5によりボデー3の回転推進力を得るとともに、他の6本の直管ノズル15により、下水管23の内壁面に直行する洗浄水を得る。よって、下水管23内に廃棄され内壁面に付着されたモルタルや内壁面にこびり付いたラード等からなる汚れといった、従来除去が困難であった固着性汚物の除去に一層効果的である。なお、進行方向最後部のボデー3に1個の曲管ノズル5を設置する場合であっても、圧水の圧力等の条件によってはボデー3の回転推進力を得ることができる。
【0026】
ボデー3の周面形状は任意であり、図6及び図7に示すように多角形とすることができる。図6及び図7の場合、ボデー3は中空の正八角柱体に形成されたアルミニウムからなる。上記ボデー3は、両端部にねじ蓋9a,9bが着脱自在に螺着され、該ねじ蓋9aの中央部には上記ボデー3内に設けられた散水分配機4に連通する孔11が設けられており、該孔11に回転可能にホース13が接続される。上記ねじ蓋9a,9bと上記ボデー3の連結部には溝10,10が設けられ、該溝10,10がステンレス製のブラケット17,17によって軸支される。これにより、上記ボデー3はこれらのブラケット17,17間において回転可能となる。
【0027】
また脚部の長さ調節の方法は任意である。図6及び図7に示すように、ターンバックル19により脚部7、8の長さ調節をすることができる。図6及び図7の場合、上記ブラケット17,17には、それぞれ脚部7,7及び脚部8,8が固着される。該脚部7,7及び脚部8,8は所定の角度α(本例ではα=90°)をもって開脚される。上記脚部7,7及び上記脚部8,8には、夫々、伸縮自在のターンバックル19,19が取り付けられ、これにより該脚部7,7及び脚部8,8は伸縮自在となっている。上記脚部7,7及び上記脚部8,8の先端部には、夫々、回動自在に一対のステンレス製のそり21,21が枢着される。これにより、ボデー3の高さは自在に変更できる。またこれにより、下水管の形に拘らず、例えば図2に示すような正円形の下水管23であっても、図示を省略する底部が平面の下水管であっても、そり21の角度を調整することにより下水管洗浄装置1を下水管内に安定して設置することができる。
【0028】
各部材の素材は適宜に変更可能である。また、各部位の大きさは任意であるが、例えば下水管の内径を600mm乃至1500mm程度であると想定すると、そりを含めた下水管洗浄装置の全長は1000mm程度が望ましく、この場合、ボデーの長さが300mm程度、ノズルの長さが100mm程度となる。
【0029】
本願発明による下水管洗浄装置は直径500mm乃至1000mm程度の大口径下水管の洗浄に威力を発揮するが、適宜の大きさに縮小することにより直径250mm乃至400mm程度の小口径下水管の洗浄にも使用することができる。
【0030】
本願発明による下水管洗浄装置が適用される下水管の形状は任意であり、例えば底部が平面の下水管にも適用することができる。
【0031】
曲管ノズル5の先端部の傾斜の角度は適宜に変更可能である。
【0032】
曲管又は直管からなるノズルを接続するパイプは下水管の径によって長さを変更することができる。また、例えば内管及び外管からなる伸縮自在のノズルを用いても構わない。また、ノズルの数は適宜変更可能である。また、ボデーの形状は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明は、下水管を洗浄する下水管洗浄装置として活用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 下水管洗浄装置
3 ボデー
4 散水分配機
5 曲管ノズル
6 パイプ
6a パイプ
6b パイプ
7 脚部
8 脚部
9a ねじ蓋
9b ねじ蓋
10 溝
11 孔
13 ホース
15 直管ノズル
17 ブラケット
19 ターンバックル
21 そり
23 下水管
23a 内壁面
25a 首部
25b 首部
27a ベアリング
27b ベアリング
29 支承板
31a 脚部
31b 脚部
33a ジョイント
33b ジョイント
33c ジョイント
33d ジョイント
33e ジョイント
33f ナックルジョイント
33g 止めボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水管の内壁を洗浄する下水管洗浄装置であって、
回転可能のボデーと、上記ボデーの周面に螺旋状に立設される複数の曲管と、上記ボデーを支持するための脚部とからなり、
上記ボデーは中空の筒状に形成され一端部に圧水が注入されるホースが接続され、
上記圧水が上記曲管のノズルから噴出され、この噴出の力により上記ボデーが圧水の噴出方向とは反対方向に回転することを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーに複数のパイプが螺旋状に立設され、該パイプの全部に曲管が取り付けられることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項3】
請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーに複数のパイプが螺旋状に立設され、該パイプの一部に曲管が取り付けられることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項4】
請求項3記載の下水管洗浄装置において、上記曲管は上記ボデーの進行方向後部に設けられたパイプに取り付けられることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4いずれか一記載の下水管洗浄装置において、上記脚部が伸縮自在に設けられることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項6】
請求項5記載の下水管洗浄装置において、上記脚部が適宜数のジョイントからなることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6いずれか一記載の下水管洗浄装置において、上記脚部は上記ボデーの周面に所定角に拡開されて設けられることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項8】
請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記脚部の先端にはそりが設けられることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項9】
請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーが円筒体状であることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項10】
請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーが八角柱体状であることを特徴とする下水管洗浄装置。
【請求項11】
請求項1記載の下水管洗浄装置において、上記ボデーの両端部にベアリングを取り付けることを特徴とする下水管洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91920(P2013−91920A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233005(P2011−233005)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(395006904)動栄工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】