説明

下水道の水質監視装置

【課題】 下水の水質を定常的に監視できるようにし、しかも台風などの異常な降雨時における増水などにもほとんど影響を受けることなく正常な状態を維持でき、さらにその保守点検等の作業を容易にした、下水道の水質監視装置を提供する。
【解決手段】 管渠2内を流れる下水3の水質を検出して監視基地4に通信する、水質監視装置1である。管渠2に連通する人孔5の開口を覆う人孔蓋6と、管渠2内あるいは人孔5内に設けられて管渠2内を流れる下水3の水質を検出するセンサ7と、センサ7にケーブル8を介して接続された、監視基地4に通信するための通信手段9とを備えてなる。人孔蓋6が、内蓋6aと外蓋6bとの二重構造に形成され、センサ7に接続するケーブル8が、人孔蓋6の内蓋6aに形成された貫通孔内を移動可能に通って内蓋6aと外蓋6bとの間の空間部に引き出され、かつ空間部にて弛み部8aを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水の水質を検出して監視基地に通信することで、下水の水質を定常的に監視できるようにした、下水道の水質監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道は、河川等の公共用水域の水質保全や良好な水環境の創造に非常に大きな役割を担っている。しかし、その機能を十分に発揮するためには、下水道施設の適正な維持管理と、工場等からの悪質下水の流入を防ぐ排水規制が必要である。特に、悪質下水の流入を防ぐことは、下水道施設の損傷や下水処理場での有害物質等による処理阻害を未然に防止するという観点から、非常に重要である。
【0003】
ところが、従来では、下水道の管渠内を流れる下水について、その水質を定常的に測定(検出)することはほとんどなされていなかった。すなわち、従来では、例えば管渠内を流れる下水の水質を検出するセンサにメモリを内蔵しておき、検出後、センサを引き上げてメモリに記憶させた検出結果を読み出す方式や、サンプラーと組み合わせて異常時排水を保存しておき、その排水の水質を検査するなどの方式が一般的であり、いずれも水質を定常的に検出する方式は採られていなかった。
【0004】
このように、従来、水質の定常的な測定(検出)がなされていなかった理由としては、(1)下水道内に商用電源がないこと、(2)台風などの異常な降雨時に管渠内や人孔内が増水してしまい、定常的な測定を行うために必要な通信機器などを破損してしまうおそれがあること、(3)公共下水道の人工蓋は鋳鉄製であり、無線通信するには電波透過性が不足していること、などが挙げられる。
【0005】
このような背景のもとに、近年、マンホール蓋にアンテナ機能を持たせたマンホール蓋アンテナ装置と、これを備えた通信システムが提供されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、例えばその第1の実施の形態に示されるように、マンホール(人孔)内に設置された水質測定装置で測定した結果(信号)を、ケーブルを介してマンホール蓋に設けられた基板アンテナに送り、この基板アンテナを介して基地局に送信するようにしている。
【特許文献1】特開平11−66484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のマンホール蓋アンテナ装置とこれを備えた通信システムにあっても、以下に述べる解決すべき課題がある。
水質測定装置がマンホール内に設置されていることで、これに接続するケーブルも、特許文献1の図1に示されているように、マンホール内からマンホール蓋まで引き回されている。すなわち、このケーブルは、水質測定装置の上面側から引き出され、この水質測定装置の上面にてループ部を一周形成した後、マンホール蓋まで引き延ばされている。このようにすることで、マンホール蓋を持ち上げた際、ケーブルはそのループ部による余長が確保されていることにより、マンホール蓋の持ち上げに干渉することなく、したがって、ケーブルが引きちぎれるなどの破損が防止されているのである。
【0007】
ところが、前記図1に示されるように単に水質測定装置の上面にループ部が置かれているだけでは、例えば台風などの異常な降雨時に増水し、その水面がマンホール内の水質測定装置を越えてしまうと、ケーブルが水流によって破損してしまったり、流されてしまうことがある。そして、ケーブルが水流によって流されてしまうと、水が引いた後、形成されていたループ部による余長部分が水質測定装置に引っかかってしまい、その後、マンホール蓋を持ち上げた際、この持ち上げに干渉することで、ケーブルや水質測定装置の破損を引き起こし、あるいはマンホール蓋の持ち上げを不能にしてしまうおそれがある。
【0008】
また、この特許文献1では、水質測定装置全体をマンホール内に設置していることから、その保守点検などの作業をマンホール蓋を開けた後、マンホール内にまで降りて行わなければならない。しかし、例えば水質測定装置の電源として用いられるバッテリーは重量物であり、これを携帯しての登り降りは困難な作業となってしまう。
さらに、マンホール蓋にアンテナ機能を持たせるためには、既存のマンホール蓋に対して加工を施さなくてはならず、したがってその分のコストがかかってしまう。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、下水の水質を定常的に監視できるようにし、しかも台風などの異常な降雨時における増水などにもほとんど影響を受けることなく正常な状態を維持でき、さらにその保守点検等の作業を容易にした、下水道の水質監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の下水道の水質監視装置は、管渠内を流れる下水の水質を検出して監視基地に通信することで、下水の水質を監視する水質監視装置であって、
前記管渠に連通する人孔の地上側の開口を覆う人孔蓋と、前記管渠内あるいは人孔内に設けられて前記管渠内を流れる下水の水質を検出するセンサと、該センサにケーブルを介して接続された、前記監視基地に通信するための通信手段と、を備えてなり、
前記人孔蓋が、内蓋と外蓋との二重構造に形成され、前記センサに接続するケーブルが、前記人孔蓋の内蓋に形成された貫通孔内を移動可能に通って該内蓋と前記外蓋との間の空間部に引き出され、かつ該空間部にて弛み部を形成してなることを特徴としている。
【0011】
この下水道の水質監視装置によれば、管渠内を流れる下水の水質を検出するセンサと、該センサにケーブルを介して接続された通信手段とを備えているので、センサで検出された水質についての検出値を、例えば変換器で変換した後に通信手段で監視基地に通信することで、管渠内の下水の水質を定常的に監視することが可能になる。
また、センサに接続するケーブルに弛み部を形成し、この弛み部を、内蓋と外蓋とからなる人孔蓋の空間部に配しているので、この弛み部は台風などの異常な降雨時における増水などにもほとんど影響を受けることがない。したがって、ケーブルはこの弛み部により、人孔蓋(マンホール蓋)の持ち上げに干渉してしまうことが防止されている。
【0012】
また、前記下水道の水質監視装置においては、前記通信手段が、前記ケーブルの弛み部に対して前記センサと反対の側に接続され、かつ、前記内蓋と前記外蓋との間の空間部に配設されているのが好ましい。
このようにすれば、特に通信手段の保守点検を行う場合に、人孔内にまで降りることなく、単に人孔蓋の外蓋のみを開くことで、その保守点検を行うことができる。
【0013】
また、前記下水道の水質監視装置においては、前記通信手段が、アンテナを備えていてもよい。
さらに、前記下水道の水質監視装置においては、前記通信手段が、光電変換器であり、かつ、前記管渠内に設けられて前記監視基地に接続する光ファイバに、光ケーブルを介して接続されていてもよい。
【0014】
また、前記下水道の水質監視装置においては、前記ケーブルに、前記弛み部の弛んだ状態を保持する、保持具が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、降雨などの不測の外力によってセンサ側のケーブルが引っ張られ、弛み部による余長部分が内蓋の貫通孔を通って人孔側に引き込まれてしまうのが防止される。
【0015】
また、前記下水道の水質監視装置においては、前記内蓋の底面側に、前記センサに接続するケーブルの外径より大となる高さの脚体が、前記センサに接続するケーブルを内蓋より外側に引き出し可能とする状態に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、例えばセンサの保守点検を行う場合などにおいて、人孔蓋を外蓋、内蓋ともに人孔から外し、地面に置いた際、前記脚体を避けてケーブルを内蓋よりその外側に引き出すことにより、内蓋がケーブル上に載ってしまい、人孔蓋の重量によってケーブルが破損してしまうのが防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前述したように管渠内の下水の水質を定常的に監視することができることから、河川等の公共用水域の水質保全や良好な水環境の創造に大きく貢献するものとなる。また、内蓋には圧力緩和機構と雨水落下機構が設けられ、台風などの異常な降雨時における増水などにもほとんど影響を受けることがなく、したがって人孔蓋の持ち上げによる破損も防止されていることから、常に正常な状態を維持することができ、これにより前述したように下水の水質を定常的に監視することができる。
また、前記通信手段を内蓋と外蓋との間の空間部に配設するようにすれば、この通信手段の保守点検を、人孔内にまで降りることなく、単に人孔蓋の外蓋のみを開くことで行うことができ、したがって、その作業性を格段に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の下水道の水質監視装置を詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の下水道の水質監視装置の第1の実施形態を示す図であり、図1中符号1は下水道の水質監視装置(以下、水質監視装置と記す)である。この水質監視装置1は、地中に設けられた管渠2内を流れる下水3の水質を検出し、検出結果を監視基地4に通信することで、下水3の水質を監視するものであり、前記管渠2に連通する人孔(マンホール)5の地上側の開口を覆う人孔蓋(マンホール蓋)6と、前記管渠2内を流れる下水3の水質を検出するセンサ7と、該センサ7にケーブル8を介して接続された通信手段9とを備えて構成されたものである。
【0018】
センサ7としては、特に限定されることなく、下水の水質検査として要求される全てのものを用いることができる。例えば、pH、COD(化学的酸素要求量)、TOC(全有機態炭素)、TOD(理論酸素要求量)、T−N(総窒素)、T−P(総リン)、濁度、さらには水温や電気伝導度等の中から、この水質監視装置1が設置される場所の立地条件等を基に、一種あるいは複数種のものが適宜に選択され、用いられる。
【0019】
なお、このセンサ7は、通常は管渠2内に設けられて使用される。すなわち、検査対象となる下水3に対し、検査方式が接触式である場合には、センサ7は管渠2の底部側に配設される。一方、非接触式である場合には、例えば管渠2の上側、あるいは人孔5側に配設されて用いられる。また、センサ7を覆う箱を用い、この箱内に納めて管渠2の底部側に配設するようにしてもよい。また、このセンサ7については、下水3の流れによって流され、または破損したりしないよう、適宜な固定手段によって管渠2内に固定しておくのが好ましく、さらには、センサ7の周辺部に防護ネット等を設けておくことなどにより、固形物が衝突することなどでの破損を防止しておくのが好ましい。
【0020】
このセンサ7には、下水3の水質について検出した信号を伝送するケーブル8が接続されている。このケーブル8は、例えば人孔5の内壁面に移動可能に保持された状態で、前記センサ7と反対の側が人孔蓋6にまで引き出されたものである。
【0021】
人孔蓋6は、図2に示すように人孔5の地上側の開口部5aに着脱可能に取り付けられたもので、前記開口部5aを覆う鍋状の内蓋6aと、この内蓋6aを覆う外蓋6bとからなる二重構造のものである。これら内蓋6aと外蓋6bとの間は空間部6cとなっており、この空間部6cは、後述するようにケーブル8の弛み部8aと通信手段9を収容するための収容部となっている。
人孔蓋6の内蓋6aは、その上端部が人孔5の開口部5aに引っ掛けられた状態で置かれたことにより、開口部5aに着脱可能に取り付けられ、保持されたものである。この内蓋6aには、その底部に貫通孔10が形成されており、この貫通孔10には、前記センサ7に接続するケーブル8の一端側(センサ7と反対の側)が移動可能に通り、前記空間部6c側に引き出されている。
【0022】
このようにして空間部6cに引き出されたケーブル8は、この空間部6cにおいて、すなわち内蓋6a上において、例えばその2〜5m程度の長さ分が、とぐろを巻くようにループ部を複数周有して弛み部8aを形成している。この弛み部8aは、後述するように人孔蓋6を持ち上げた際にこれに干渉するのを防止するための、余長部を構成するものである。なお、前記の貫通孔10においては、例えばケーブル8がその自重で、あるいは不測の外力でこの貫通孔10をすり抜け、人孔5側に落下してしてしまい、前記の弛み部8aがその弛んだ状態、すなわちとぐろを巻いた状態が保持できなくなるのを防止するため、保持具11が設けられている。
【0023】
この保持具11は、本実施形態においては水防栓によって構成されている。この水防栓(保持具11)は、略円筒状のもので、前記貫通孔10内に挿通され、その側壁部にて前記内蓋6aの底板を挟持することにより、貫通孔10内に固定されたものである。そして、その内部の貫通孔に前記ケーブル8を通し、該貫通孔内に設けられたパッキンによってケーブル8をその摩擦力で保持し、これにより、前述したようなケーブル8のすり抜けを防止し、前記弛み部8aの弛んだ状態を保持するようにしたものである。このような保持具11にあっては、弛み部8aの弛んだ状態を保持するのに加え、臭気が拡散するのを防止することができる。
【0024】
また、ケーブル8には、空間部6cにおいて、前記弛み部8aに対して前記センサ7と反対の側に、通信手段9が接続されている。通信手段9は、本実施形態では、センサ7からの検出信号を通信信号に変換する変換器12と、この変換器12に接続されて前記通信信号を監視基地4に通信するためのアンテナ13と、変換器12、さらにはアンテナ13の電源となるバッテリー14とを備えて構成されたもので、これらが防水ケース15に収納され、その状態で内蓋6a上に固定されたものである。ここで、アンテナ13としては、特に限定されることなく各種のものが使用可能であるが、例えば車載用のルーフトップアンテナや、ルーフサイドアンテナ、オングラスアンテナなどが好適に用いられる。また、アンテナ13に代えて、携帯電話を利用することもできる。アンテナ13は、防水ケースに入っていなくてもかまわない。また、バッテリー14を、別の防水ケースに格納することも可能である。
【0025】
なお、内蓋6aには、その底板部に、空気抜き機構16と水抜き機構17とが設けられている。空気抜き機構16は、下水3の水位が急上昇して人孔5内の内圧が設定値以上に高まった場合に、図2中に二点鎖線で示したように開閉蓋が上側に開き、人孔5内の空気を逃がすようにした公知の機構である。同様に水抜き機構17は、雨水が内蓋6a上(空間部6c内)に溜まった際、その水圧が設定値以上に高まった場合に、図2中に二点鎖線で示したように開閉蓋が下側に開き、内蓋6a上の水を落下させるようにした公知の機構である。ここで、これら各機構では、例えば錘を用いた付勢機構により、各設定値が調節できるようになっている。
また、内蓋6aの内周面には、この内蓋6aを地面側から引き上げるための取っ手(図示せず)が設けられている。
【0026】
また、内蓋6aには、その底面の周縁部に、突起状の脚体18が適切な間隔で3個以上形成されている。これら脚体18は、後述するように人孔蓋6を開いて(持ち上げて)地面に置いた際、内蓋6aの底面を地面から持ち上げておくためのスペーサとして機能するものである。すなわち、これら脚体18は、少なくとも前記ケーブル8の外径より高く(長く)形成されたもので、本実施形態では、特に前記保持具11が内蓋6aの底面より突出している高さ(長さ)と、ケーブル8の外径とを加えた高さより高くなるように形成されている。
【0027】
人孔蓋6の外蓋6bは、内蓋6aを覆い、その状態で前記人孔5の開口部5aに対し、クランプ(図示せず)等によって固定されたもので、本実施形態では、特にその裏面側から表面側にかけて貫通する、複数の開口19を形成したものである。このように開口19を形成したことにより、外蓋6bの下側(裏面側)に配置された前記アンテナ13からの電波が、外蓋6bによって遮断されることなく、良好に透過し、監視基地4に通信されるようになっている。
【0028】
次に、このような構成からなる水質監視装置1の使用形態を説明する。
まず、通常時には、センサ7によって管渠2を流れる下水3の水質を、定常的、例えば10分間隔で検出する。すると、得られた検出値(検出信号)はケーブル8を介して変換器12に送られ、ここで通信信号に変換される。そして、この通信信号はアンテナ13から監視基地4に送られる。したがって、監視基地4では、下水3の水質の定常的な監視を行うことができるようになっているのである。
【0029】
また、アンテナ13や変換器12の保守点検、さらにはバッテリー14の交換の際には、人孔蓋6の外蓋6bのみを人孔5の開口部5aから取り外し、内蓋6a上に置かれた防水ケース15を開いて保守点検等を行う。したがって、従来のように作業員が人孔5内にまで降りる必要がなく、容易にかつ安全に保守点検等の作業を行うことができる。
【0030】
また、特にセンサ7の保守点検や交換を行う場合には、外蓋6b、内蓋6aをともに開口部5aから外し、これらを地面に置く。その際、内蓋6aを持ち上げるに先だち、外蓋6bのみを開いた状態で、前記保持具11によるケーブル8の保持力を緩めておき、ケーブル8が保持具11の貫通孔内のパッキンによる摩擦力によって干渉されることなく、容易にする抜けることができるようにしておく。そして、ケーブル8の弛み部8aによる余長部を貫通孔10(保持具11)から送り出し、内蓋6aより下側の人孔5内に余長部を形成しておく。このようにすることで、内蓋6aはケーブル8に干渉されることなく、すなわち、ケーブル8全体を引っ張ってしまってセンサ7ごと持ち上げてしまうようなことなく、前記の余長部の範囲内で持ち上げによる移動が可能となる。
【0031】
したがって、このような作業を行った後、内蓋6aを持ち上げ、そのまま地面に置くことで人孔5を開く。このとき、内蓋6aにはその上側に防水ケース15が固定され、この防水ケース15からケーブル8が引き出され、このケーブル8が保持具11を介して人孔5側に延びていることから、この内蓋6aと一体にケーブル8も持ち上げられ、地面側に引き出される。しかし、前述したように前記の余長部の範囲内であることから特に支障はない。また、内蓋6aを地面に置いた際、前記脚体18を避けてケーブル8をこれらの間から外側に引き出すことにより、内蓋6aがケーブル8上に載ってしまい、その重量によってケーブル8が破損してしまうのを防止することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の水質監視装置1にあっては、管渠2内の下水3の水質を定常的に監視することができることから、河川等の公共用水域の水質保全や良好な水環境の創造に大きく貢献することができる。また、台風などの異常な降雨時における増水などにもほとんど影響を受けることがなく、したがって人孔蓋6の持ち上げによる破損も防止されていることから、常に正常な状態を維持することができ、これにより前述したように下水3の水質を定常的に監視することができる。
また、アンテナ13等からなる通信手段9を内蓋6aと外蓋6bとの間の空間部6cに配設しているので、この通信手段9の保守点検を、人孔5内にまで降りることなく、単に人孔蓋6の外蓋6bのみを開くことで行うことができる。したがって、その作業性を従来に比べ格段に改善することができる。
【0033】
なお、本発明は前記第1の実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態では、通信手段9を構成する変換器12、アンテナ13、バッテリー14の全てを空間部6cに配置したが、これらのうちの一つあるいは複数を、例えば人孔5内や管渠2内に配するようにしてもよい。具体的には、センサ7が変換器12を内蔵しているような場合には、必然的に変換器12が管渠2内(あるいは人孔5内)に配置されることになる。また、バッテリー14についても、センサ7の電源を兼ねる必要がある場合などでは、例えば人孔5内に配置するようにしてもよい。なお、このバッテリー14については、これに代えて例えば発電機を用いるようにしてもよい。
【0034】
また、ケーブル8の弛み部8aを、その弛んだ状態、すなわちとぐろを巻いた状態に保持するための保持具11についても、前記の水防栓に限定されることなく、種々の形態のものが使用可能である。例えば、とぐろを巻いた状態にてこの弛み部8aを紐や針金などで縛るようにしてもよく、その場合に、これら紐や針金を本発明における保持具とすることができる。このような紐や針金にあっても、外蓋6bのみを開いた状態でこれらを容易に処理することができることから、作業性を損なうことなく保持具としての機能を良好に発揮するものとなる。
【0035】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の下水道の水質監視装置の第2の実施形態を示す図であり、図3中符号20は下水道の水質監視装置である。この水質監視装置20が図1に示した水質監視装置1と異なるところは、監視基地4への通信方式として、アンテナ13を介して無線で行うのに代えて、光ファイバを介して行う点にある。
【0036】
すなわち、本実施形態の水質監視装置20は、図3に示すように、管渠2内に設けられた光ファイバ21を介して、センサ7で検出した検出結果を監視基地4に通信するように構成されている。光ファイバ21は、監視基地4に接続するよう敷設されたもので、その一端側が光ファイバ接続箱22に引き込まれ、該光ファイバ接続箱22内にてコネクタ(図示せず)に接続され、さらにそこから引き出されたものである。
【0037】
一方、水質監視装置20は、図4に示すように人孔蓋6の空間部6cにケーブル8の弛み部8aを配し、さらにこれに接続する通信手段23についても空間部6cに配している。通信手段23は、本実施形態では、センサ7からの検出信号を電気信号(通信信号)に変換する変換器12と、この変換器12に接続されて前記電気信号を光信号に変換する光電変換器24と、これら変換器12、光電変換器24の電源となるバッテリー14とを備えて構成されたものである。なお、これら変換器12、光電変換器24、バッテリー14からなる通信手段23も、図1に示した水質監視装置1と同様に、防水ケース15に収納され、その状態で内蓋6a上に固定されている。
【0038】
また、光電変換器24には光ケーブル25が接続されており、この光ケーブル25は、防水ケース15から引き出され、内蓋6aを通って前記光ファイバ接続箱22内に引き込まれて、前記コネクタに接続されている。このような構成のもとに、通信手段23を構成する光電変換器24は、光ケーブル25、光ファイバ接続箱22内のコネクタ、光ファイバ21を介して、前記監視基地4に通信可能に接続されたものとなっている。なお、光ケーブル25には、前記ケーブル8の弛み部8aと同様に機能する弛み部(図示せず)が形成されており、この弛み部が空間部6cに配されている。また、この光ケーブル25は、内蓋6aに形成された貫通孔26を通って人孔5内に引き出されている。または、この光ケーブル25も、前記ケーブル8と共に、貫通孔10に設けられた保持具11(水防栓)を通って人孔5内に引き出されていてもよい。
【0039】
このような水質監視装置20にあっても、通常時には、センサ7によって管渠2を流れる下水の水質を定常的に検出し、得られた検出値(検出信号)をケーブル8を介して変換器12に送り、さらに光電変換器24を介して前述したように監視基地4に送ることができる。したがって、監視基地4では、下水3の水質の定常的な監視を行うことができる。
【0040】
また、光電変換器24や変換器12の保守点検、さらにはバッテリー14の交換の際には、人孔蓋6の外蓋6bのみを人孔5の開口部5aから取り外し、内蓋6a上に置かれた防水ケース15を開いて保守点検等を行う。したがって、従来のように作業員が人孔5内にまで降りる必要がなく、容易にかつ安全に保守点検等の作業を行うことができる。
また、特にセンサ7の保守点検や交換を行う場合にも、図1に示した水質監視装置1と同様に、ケーブル8と光ケーブル25に干渉されることなく内蓋6aを持ち上げ、地面に置くことで、人孔5を開くことができる。
【0041】
よって、本実施形態の水質監視装置20にあっても、管渠2内の下水3の水質を定常的に監視することができることから、河川等の公共用水域の水質保全や良好な水環境の創造に大きく貢献することができ、また、人孔蓋6の持ち上げによる破損も防止されていることから、常に正常な状態を維持することができる。
また、光電変換器24等からなる通信手段23を内蓋6aと外蓋6bとの間の空間部6cに配設しているので、この通信手段9の保守点検を、人孔5内にまで降りることなく、単に人孔蓋6の外蓋6bのみを開くことで行うことができる。したがって、その作業性を従来に比べ格段に改善することができる。
【0042】
なお、本発明は前記第2の実施形態にも限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態では、通信手段23の主要構成として、前記第1の実施形態におけるアンテナ13に代えて光電変換器24を用いているので、人孔蓋6の外蓋6bについては、開口19が小さい鋳鉄製のものを用いるようにしてもよい。また、本実施形態では、通信手段23を構成する変換器12、光電変換器24、バッテリー14の全てを空間部6cに配置したが、第1の実施形態と同様に、これらのうちの一つあるいは複数を、例えば人孔5内や管渠2内に配するようにしてもよい。更に、バッテリー14を別の防水ケースに格納することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る下水道の水質監視装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した水質監視装置の要部側断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る下水道の水質監視装置の概略構成図である。
【図4】図3に示した水質監視装置の要部側断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1、20・・・下水道の水質監視装置、2・・・管渠、3・・・下水、4・・・監視基地、5・・・人孔、6・・・人孔蓋、6a・・・内蓋、6b・・・外蓋、6c・・・空間部、7・・・センサ、8・・・ケーブル、8a・・・弛み部、9、23・・・通信手段、10・・・貫通孔、11・・・保持具、12・・・変換器、13・・・アンテナ、14・・・バッテリー、18・・・脚体、21・・・光ファイバ、24・・・光電変換器、25・・・光ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管渠内を流れる下水の水質を検出して監視基地に通信することで、下水の水質を監視する水質監視装置であって、
前記管渠に連通する人孔の地上側の開口を覆う人孔蓋と、前記管渠内あるいは人孔内に設けられて前記管渠内を流れる下水の水質を検出するセンサと、該センサにケーブルを介して接続された、前記監視基地に通信するための通信手段と、を備えてなり、
前記人孔蓋が、内蓋と外蓋との二重構造に形成され、前記センサに接続するケーブルが、前記人孔蓋の内蓋に形成された貫通孔内を移動可能に通って該内蓋と前記外蓋との間の空間部に引き出され、かつ該空間部にて弛み部を形成してなることを特徴とする下水道の水質監視装置。
【請求項2】
前記通信手段が、前記ケーブルの弛み部に対して前記センサと反対の側に接続され、かつ、前記内蓋と前記外蓋との間の空間部に配設されていることを特徴とする請求項1記載の下水道の水質監視装置。
【請求項3】
前記通信手段が、アンテナを備えてなることを特徴とする請求項1又は2記載の下水道の水質監視装置。
【請求項4】
前記通信手段が、光電変換器であり、かつ、前記管渠内に設けられて前記監視基地に接続する光ファイバに、光ケーブルを介して接続されていることを特徴とする請求項1記載の下水道の水質監視装置。
【請求項5】
前記ケーブルには、前記弛み部の弛んだ状態を保持する、保持具が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の下水道の水質監視装置。
【請求項6】
前記内蓋には、その底面側に、前記センサに接続するケーブルの外径より大となる高さの脚体が、前記センサに接続するケーブルを内蓋より外側に引き出し可能とする状態に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の下水道の水質監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−167665(P2006−167665A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366651(P2004−366651)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】