説明

下肢吐水装置

【課題】一定時間以上継続使用しても、馴化や飽きが生じることなく、十分な足マッサージ効果を得ることができる下肢吐水装置を提供する。
【解決手段】使用者の下肢を収納する下肢収納空間を形成する本体と、収納された上記下肢を指向して湯水を吐出する複数の吐水ノズルと、該吐水ノズルから吐出された湯水を回収し該吐出手段へ送水する循環手段と、上記吐水ノズルの各々の吐水期間及び吐水圧をランダムに変更する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収納された下肢に向かって吐水し、足部をマッサージする下肢吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下肢を収容する容器と該容器内に収納された下肢に向かって吐水するノズルとを備え、このノズルから吐出された水の刺激によって足部をマッサージする下肢吐水装置或いは足マッサージ装置等と呼ばれるものが人気を集めている。これは、靴下等を脱ぐだけで手軽に足の汚れを落とせる、温水を使用することから血行増進が図られる等の効果の他に、マッサージ効果を有することによるものである。足部への吐水マッサージは、全身入浴に比べて、長時間に亘って抹消血管の血流量が増加し、皮膚表面温度が高く維持されるとともに、疲労回復が促進されると言われている。
【0003】
このような効果を有する下肢吐水装置として、足が入れられる浴槽と、入れられた足を支持する支持体と、該支持体に支持された足に向けて温湯を噴射するシャワーノズルとを備えた下肢浴装置において、上記シャワーノズルとして、上記支持体に支持された足の足裏に向けて温湯を噴射する足裏用シャワーノズルと、上記支持体に支持された足の甲に向けて温湯を噴射する甲用シャワーノズルとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
斯かる下肢吐水装置によれば、足を浴槽本体内に入れ足を支持体に支持する状態で、足裏用シャワーノズル及び甲用シャワーノズルから温湯を噴射すると、温湯は、足裏及び甲に当たり、シャワーであるので、足裏及び甲がよくマッサージされるとともに、シャワー粒子の運動エネルギーにより皮膚表面温度遷移層(境界層あるいは境界膜とも言う)が薄くなる為に、熱移動量(熱流束)も多くなり、末梢血管の血流量の増加が図られる。
【特許文献1】特開2004−298558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マッサージというものは、ある一定以上の強さで、一定の時間以上人体に作用させないと十分な効果・効用を期待できないが、このような吐水によるマッサージも、単調に同一箇所に同一の水量、水圧で吐水を続けると、感覚が徐々にそれに馴れてきて刺激を感じなくなり、次第に効果が減少してしまう馴化がおこる。また、変化がないと、意識の上でも飽きてくる。
【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、一定時間以上継続使用しても、馴化や飽きが生じることなく、十分な足マッサージ効果を得ることができる下肢吐水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る下肢吐水装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、使用者の下肢を収納する下肢収納空間を形成する本体と、収納された上記下肢を指向して湯水を吐出する複数の吐水ノズルと、該吐水ノズルから吐出された湯水を回収し該吐出手段へ送水する循環手段と、上記吐水ノズルの各々の吐水期間及び吐水圧をランダムに変更する制御部とを備えるものである。
【0008】
前記複数の吐水ノズルは、好適には、請求項2に記載したように、各々1又は2以上の足指及び足甲を指向して吐水する足部前方ノズルと、足裏を指向して吐水する足部下方ノズルと、下腿を指向して吐水する足部後方ノズルとを有することが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る下肢吐水装置によれば、一定時間以上継続使用しても、馴化や飽きが生じることなく、十分な足マッサージ効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る下肢吐水装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る下肢吐水装置1を、右足側と左足側とに切断して全体的な概要を示す斜視図である。
【0011】
同図に示すように、本実施形態に係る下肢吐水装置1は、外形が略直方体状の本体2内に、上部が開口して使用者の下肢を収納する下肢収納空間LSが形成されている。
【0012】
下肢収納空間LSの下端を画成する底面3には、図示しないメッシュ状の板が載置されて、使用者の足を支持する足置き台となり、底面3より下の部分には、使用者の足に向かって吐出された湯水を回収する貯水ピット4が形成される。
【0013】
下肢収納空間LS内には、吐水手段としての上方ノズル5、下方ノズル6、後方ノズル7(以下、これらを総称する場合は、「吐水ノズル」という。)が配設される。
【0014】
上方ノズル5は、下肢収納空間LSの前方(使用者のつま先が位置する側、図1では紙面に対して左側)上部コーナー近傍において、本体2の左右の側面間に架設されたシャフト5aに、複数の吐水口が設けられて成る。シャフト5aは、その内部を湯水が流通し、本体2の側面に取設されたモータ8によって回転され、吐水口が使用者のつま先から踝近傍までを指向する間のみ吐水する。本実施形態では、上方ノズル5は、左右の足それぞれに対して2個の吐水口5b1〜5b4を備える。
【0015】
下方ノズル6は、貯水ピット4内において、本体2の左右の側面間に架設されたシャフト6aに、左右一対の吐水口が設けられて成る。シャフト6aは、その内部を湯水が流通し、本体2の側面に取設されたモータ9によって駆動され、吐水口が使用者の足裏のつま先から踵近傍までを往復運動しながら吐水する。本実施形態では、下方ノズル6は、左右の足それぞれに対して1個の吐水口6b1及び6b2を備える。
【0016】
後方ノズル7は、本体2の側面後方及び左右の足を分離する立上り部10に設けられ、使用者の下腿に対して左右から吐水する。本実施形態では、後方ノズル5は、左右の足それぞれに対して左右に1個ずつ、計4個の吐水口7b1〜7b4を備える。これらの吐水口の配置を図2に示す。
【0017】
本体2前方の外部最上部に、本体2に着脱自在に装着された給排水タンク30は、吐水される湯水を本体2に供給するとともに、使用された湯水を回収排水するものである。給排水タンク30は、上部が2段に形成され、キャップ33に閉蓋された給排水口は低い方の段に設けられる。また、給排水タンク30側面には水量観察窓31、32が設けられる。
【0018】
本体2外部の両側面には、給排水タンク30の湯水を本体内に取り込む取り込まない、又は排水するしないを操作するバルブ11,12が設けられる。
【0019】
本体2外部の前方下部には、キャスター13が設けられ、本体2外部の後方中段に設けられた把手14を持って引き上げることで、キャスター13近傍に設けられたストッパーゴム足が床から離れ、キャスターのみが接地することとなるため、下肢吐水装置1の移動を比較的容易に行うことができる。
【0020】
給排水タンク30により供給された湯水は、本体2の最低部に設置された循環ポンプ15により、本体2内を循環する。この循環の概要を図3を参照して説明する。
【0021】
給排水タンク30からポンプ流入管16を経由して循環ポンプ15へ、またピット流入管17を経由して貯水ピット4への送水が完了し、吐水開始のスイッチが入れられると、循環ポンプ15は流出管18へ湯水を圧送する。
【0022】
流出管18は、上方ノズル5に接続される上方流出管19、下方ノズル6に接続される下方流出管20、後方ノズル7に接続される後方流出管21に分岐して、湯水はそれぞれの吐水ノズルに送られ、下肢収納空間LS内に吐水される。
【0023】
吐出された湯水は貯水ピット4内に回収され、戻り管22を介して循環ポンプ15に戻され、再度循環ポンプ15から圧送され、これを繰り返して吐水が継続される。
【0024】
循環ポンプ15から各吐水口までの流路には、図4に示すように、電磁弁23及び流量調整弁24が設けられる。これらは、吐水口毎に設けられてもよいし、いくつかの吐水口毎にグループに分け、各グループに一つずつ設けてもよい。
【0025】
そして、電磁弁23は、制御部25による制御により、流路の開閉を行い、流量調整弁24は、制御部25による制御により、流量の調整を行う。
【0026】
制御部25は、図示しないマイコン(マイクロコンピュータ)を備え、このマイコンに電磁弁23や流量調整弁24の開閉等に関する処理を実行させる手順を記載したプログラムを与えることで、かかる処理を実現するための手段の一部が機能的に実現されるようになっている。このマイコンのメモリには、かかるプログラムが予め格納されている。
【0027】
また、制御部25には、マイコンの周辺回路及びインターフェースとして各種の回路が同一の制御部25上に実装されている。この各種の回路は、電磁弁23及び流量調整弁24と電気的に繋がっており、マイコンの処理により出力された制御信号CSを電磁弁23及び流量調整弁24に出力するようになっている。
【0028】
上述したプログラムは、1時間程の間、吐水する・しないや吐水圧(吐水量)をランダムに変更するものであり、各電磁弁23及び流量制御弁24のセット毎に設定される。そして、通常の使用時間を15分程度として、このプログラムのどの時点から制御の適用を開始するかは、乱数によりランダムに設定される。
【0029】
プログラムの設定に際しては、同時最大(適正)吐水量を考慮し、トータルで最大吐水量を厳守したプログラム(複数の吐水口が同時に最大吐水圧になる場合は、いくつかの吐水口におけるプログラムの進行をシフトさせる等)とすることも可能である。逆に、最大吐水量を無視して、必然的に水勢が弱くなりソフトな刺激となる期間が生じることを積極的に利用するプログラムとしてもよい。
【0030】
図5に、吐水パターンの一例を示す。この例では、上方ノズル5、下方ノズル6、後方ノズル7毎にグループを形成し、同一グループ内では同一の吐水パターンを実行している。
【0031】
このように、各々の吐水口からの吐水期間や吐水圧をランダムに変更することにより、馴化の発生が遅延され、また、意識の上で飽きてくることも遅くすることができる。
【0032】
次に、吐水口の他の配置例を図5に示す。この例では、上方ノズルとして吐水口5b1〜5B8の8個、下方ノズルとして6b1〜6b6の6個、後方ノズルとして7b1〜7b8の8個を備えている。
【0033】
これを吐水パターンで分類すると、吐水口5b1,5b3,5b6,5b8の4個で、同一吐水パターンの上方ノズルAを構成し、吐水口5b2,5b4,5b5,5b7の4個で、同一吐水パターンの上方ノズルBを構成する。
【0034】
下方ノズルでは、吐水口6b1と6b3とで、同一吐水パターンの下方ノズルAを構成し、吐水口6b4と6b6とで、下方ノズルBを、吐水口6b2と6b5とで、下方ノズルCを構成する。
【0035】
また、後方ノズルでは、左足を指向して吐水する吐水口7b1〜7b4が後方ノズルAを、右足を指向して吐水する吐水口7b5〜7b8が後方ノズルBを構成する。
【0036】
皮膚上で2点に同時に触れた場合、2点の間隔が遠ければ2点であることを感知し、2点の距離が近づくと、1点を刺激されたように感じる。その限界距離を2点識別閾といい、距離が短いほど、触覚に対して敏感であることを示す。
【0037】
したがって、各種ノズルの吐水パターンの適正な選択として、上方ノズル5/後方ノズル7は足部の感覚が比較的敏感で2点識別閾が小さいので、線の細い吐水口を多量に配置するのが望ましい。これに対して下方ノズル6は足部の感覚が比較的鈍感で2点識別閾が大きいので、線の太い(押し圧力の高い)吐水口を数個配置するのが望ましい。すなわち、各種ノズル群は、可能な限り細分化して配管し、2点識別閾以上離した着水点を実現することが望ましい。
【0038】
このように配設されたノズル群の吐水パターンの一例を図7に示す。
【0039】
このように、各々の吐水口からの吐水期間や吐水圧が更に細分化されてランダムに変更するので、馴化の発生が遅延され、また、意識の上で飽きてくることも遅くすることができる。
【0040】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る下肢吐水装置の実施形態の概要を示す縦断面を含む斜視図。
【図2】吐水口の配置を示す図。
【図3】本実施形態に係る下肢吐水装置における湯水の循環を模式的に示す図。
【図4】循環ポンプから吐水口までの流路の制御を示すブロック図。
【図5】吐水パターンの一例を示す図。
【図6】吐水口の他の配置例を示す図。
【図7】吐水パターンの他の一例を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 下肢吐水装置
2 本体
3 底面
4 貯水ピット
5 上方ノズル
6 下方ノズル
7 後方ノズル
8,9 モータ
10 立上り部
11,12 バルブ
13 キャスター
14 把手
15 循環ポンプ
16 ポンプ流入管
17 ピット流入管
18 流出管
19 上方流出管
20 下方流出管
21 後方流出管
22 戻り管
23 電磁弁
24 流量調整弁
25 制御部
30 給排水タンク
31,32 水量観察窓
33 キャップ
CS 制御信号
LS 下肢収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の下肢を収納する下肢収納空間を形成する本体と、
収納された上記下肢を指向して湯水を吐出する複数の吐水ノズルと、
該吐水ノズルから吐出された湯水を回収し該吐出手段へ送水する循環手段と、
上記吐水ノズルの各々の吐水期間及び吐水圧をランダムに変更する制御部と、
を備えることを特徴とする下肢吐水装置。
【請求項2】
前記複数の吐水ノズルは、各々1又は2以上の足指及び足甲を指向して吐水する足部前方ノズルと、足裏を指向して吐水する足部下方ノズルと、下腿を指向して吐水する足部後方ノズルとを有することを特徴とする請求項1記載の下肢吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−268067(P2007−268067A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99228(P2006−99228)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】