説明

下肢用衣料

【課題】下肢用衣類において、大腿部の上げ下げに対して大腿部にかかる負荷を低減すること。
【解決手段】本発明の実施形態におけるパンツ1は、前身頃片(10L、10R)と、脇はぎ片(20L、20R)と、前身頃片(10L、10R)の端部(12L、12R)と、脇はぎ片(20L、20R)の端部(21L、21R)とを接続する接続部(60FL、60FB)と、前身頃片(10L、10R)および脇はぎ片(20L、20R)とは異なる伸縮性を有する後身頃片30とを具備し、接続部(60FL、60FB)の一端部(PL、PR)は、大腿部前方に位置し、前身頃片(10L、10R)における伸縮性が高い方向と脇はぎ片(20L、20R)における伸縮性が高い方向との接続部(60FL、60FB)の足口側においてなす角は180度未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿部を動かしたときの大腿部への負荷が少ない下着、スポーツウエアなどの下肢用衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な下肢用衣類のうち大腿部の一部を覆っているものは、歩行、膝を曲げた前屈など、直立した状態から大腿部を上半身側に近づけるような動作(以下、単に大腿部を持ち上げる動作という)が行われることにより、体前方側に位置する前身頃は圧縮され、体後方側に位置する後身頃は伸張されることになる。そのため、後身頃のウエスト部分がずり下がるなど、下肢用衣類を着用したときと状態が変化してしまい、着用者に違和感を与えることがあった。
このような着用状態のずれを抑える技術として、例えば、特許文献1、2には、一方向に伸縮性を有する生地を、伸縮方向が異なるように組み合わせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−107001号公報
【特許文献2】特開平7−138801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大腿部を持ち上げる動作をしたときに下肢用衣類の着用状態が変わってしまう部分としては他にもあり、図7に示すように、足口のうち大腿部前方(大腿部が持ち上がる方向)の生地がずり上がるという変化も生じる。
【0005】
図7は、従来の下肢用衣類であるパンツ2において、足口における生地がずり上がる様子を説明する図である。図7(a)は、下肢用衣類であるパンツ2を着用して直立状態であるときの体の右側方向から見た図である。図7(b)は、図7(a)の状態から、左大腿部1000Lを持ち上げる動作(AR2方向への動き)をした後の状態を、体の右側方向から見た図である。体の右側とは、体正面方向を向いて右側(右手、右足がある側)のことをいう。以下、体の左側とは体正面方向を向いて左側、体の前側とは体正面方向の側(腹側)、体の後側とは体正面方向とは逆側(背側)をいう。
【0006】
図7(a)に示すように、パンツ2は、これを着用した直立状態において、パンツ2の右側の足口(以下、右足口400Rという)が略水平になるように形成されている。左側の足口(以下、左足口400Lという)についても右足口400Rと同様である。
図7(b)に示すように、左大腿部1000Lを持ち上げる動作をすると、筋肉の伸縮関係から左大腿部1000Lの前方の皮膚が後方の皮膚に対して膝側に伸びた状態になる。左足口400Lが皮膚の伸びとともに移動することにより、左足口400L近傍の生地が伸びることになるため、その生地は収縮しようとする収縮力が生じる。また、左足口400Lが形成する開口部分の面積(以下、単に左足口40Lの開口面積という)が広くなり、開口面積を狭くするようにも生地の収縮力が生じる。その生地の収縮力は、左大腿部1000LをAR2方向に移動させることに対して負荷をかける。また、その収縮力が左足口400Lを膝から離れるAR3方向へ移動させる力にもなるため、生地は皮膚に対して摩擦により負荷をかける。
【0007】
このとき、皮膚への負荷となる収縮力が皮膚と生地との摩擦力を超えた場合には、左足口400Lは、AR3方向に移動して破線401Lで示す位置にずり上がることにもなる。一旦この状態になると、左大腿部1000Lを下ろして図7(a)の状態に戻しても、左足口400Lは、ずり上がった状態のままとなるか、重力により元の位置に戻ることになる。このパンツ2の着用者は、左足口400Lがずり上がった状態のままであれば、左大腿部1000Lに違和感を生じることになる。一方、重力により元の位置に戻ったとしても、このパンツ2の着用者は、大腿部の上げ下げをする度に、大腿部前方において足口が移動することにより皮膚と生地とが擦れあい、皮膚を傷つけることになってしまう。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、下肢用衣類において、大腿部の上げ下げに対して大腿部にかかる負荷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、生地外周の一部の端部がウエスト部に接続されるとともに当該端部とは異なる一部の端部が足口の一部を形成し、特定の方向における伸縮性が他の方向よりも高い前身頃片と、生地外周の一部の端部が前記ウエスト部に接続されるとともに当該端部とは異なる一部の端部が前記足口の一部を形成し、特定の方向における伸縮性が他の方向よりも高い脇はぎ片と、前記前身頃片における前記ウエスト部から前記足口に至る端部と、前記脇はぎ片における前記ウエスト部から前記足口に至る端部とを接続する前接続部と、端部の一部が前記ウエスト部に接続され、前記前身頃片および前記脇はぎ片とは異なる伸縮性を有する後身頃片と、前記脇はぎ片における生地外周の一部の端部と前記後身頃片における生地外周の一部の端部とを接続する後接続部とを具備し、着用されている状態において、前記前接続部の前記足口側の一端部は、大腿部前方に位置し、前記前身頃片における伸縮性が高い方向と前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向との前記前接続部の前記足口側においてなす角は180度未満であることを特徴とする下肢用衣料を提供する。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記前身頃片における伸縮性が高い方向は、前記前身頃片における足口を形成する端部に沿った方向であり、前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向は、前記脇はぎ片における足口を形成する端部に沿った方向であることを特徴とする。
【0011】
また、別の好ましい態様において、前記前身頃片における伸縮性が高い方向と前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向との前記接続部の前記足口側においてなす角は、着用されていない状態において、90度以上150度未満であることを特徴とする。
【0012】
また、別の好ましい態様において、前記前身頃片および前記脇はぎ片は、生地端により足口を形成することを特徴とする。
【0013】
また、別の好ましい態様において、前記前身頃片における足口の前記一端部とは異なる他端部と、前記脇はぎ片における足口の前記一端部とは異なる他端部とは、互いに接続され、前記前身頃片における伸縮性が高い方向と前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向との前記一端部においてなす角は、前記他端部においてなす角よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
また、別の好ましい態様において、前記後身頃片は、体の後側中心線に対して略直交方向における伸縮性が他の方向よりも高く、前記後接続部は、前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向と前記後身頃片における伸縮性が高い方向とが異なる方向になるように、当該脇はぎ片の端部の一部と当該後身頃片の端部の一部とを接続することを特徴とする。
【0015】
また、別の好ましい態様において、前記後身頃片は、直交する第1の方向および第2の方向に伸縮し、前記後接続部は、前記第1の方向が体の後側中心線に対して略直交方向または当該中心線に対して45度傾くように、前期脇はぎ片の端部の一部と当該後身頃片の端部の一部とを接続することを特徴とする。
【0016】
また、別の好ましい態様において、前記後接続部の少なくとも一部は、着用されている状態において臀溝に沿うように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下肢用衣類において、大腿部の上げ下げに対して大腿部にかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態におけるパンツの外観図である。
【図2】実施形態におけるパンツの生地パターンを示す図である。
【図3】着用者が直立した状態の実施形態におけるパンツの外観図である。
【図4】着用者が左大腿部を持ち上げた状態におけるパンツの外観図である。
【図5】変形例1におけるパンツの生地パターンを示す図である。
【図6】着用者が直立した状態の変形例1におけるパンツの外観図である。
【図7】従来の下肢用衣類であるパンツにおいて、足口における生地がずり上がる様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態におけるパンツ1の外観図である。本発明における下肢用衣料は、本実施形態においては、男性用のパンツ1である。下肢用衣料としては、パンツ1、トランクスなどの下半身用下着の他、例えば、水着、スパッツなどスポーツウエアなどであってもよく、大腿部の一部を覆う生地を有する衣料であればよい。また、男性用に限らず、女性用であってもよい。
【0020】
パンツ1は、特定の方向(以下、伸縮方向という)における伸縮性が他の方向よりも高い生地を用いている。この例においては、パンツ1の生地は、伸縮性包帯生地である。伸縮性包帯生地は、経編で形成され、裁断前においては伸縮方向と生地端が形成される方向とは略平行の関係になっている。
【0021】
パンツ1は、左前身頃片10L、右前身頃片10R、左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20R、および後身頃片30の各生地、ならびにウエストゴム50を有する。各生地の伸縮方向は、矢印で示した方向である。まず、パンツ1を構成する各生地のパターン、および各パターンの接続関係について説明する。
【0022】
[生地パターン]
図2は、実施形態におけるパンツ1の生地パターンを示す図である。図2(a)に示すように、パンツ1は、左前身頃片10L、右前身頃片10R、左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20R、後身頃片30の各生地を縫い合わせて接続することにより形成される。以下、単に接続されるという場合には、縫い合わされて接続されることを示す。
【0023】
左前身頃片10Lは、生地外周に端部11L、12L、13L、14L、15Lを有する概ね5角形の形状であり、端部14Lに沿った方向S1Lを伸縮方向としている。この例においては、端部14Lは、伸縮性包帯生地の生地端になっている。端部11Lは、生地外側方向に僅かに突出した曲線形状である。端部12L、14Lは、直線形状である。端部13L、15Lは、生地内側方向に僅かに湾曲した曲線形状である。
【0024】
右前身頃片10Rは、外周に端部11R、12R、13R、14R、15Rを有する概ね5角形の形状であり、端部14Rに沿った方向S1Rを伸縮方向としている。この例においては、端部14Rは、伸縮性包帯生地の生地端になっている。端部11Rは、生地外側方向に僅かに突出した曲線形状である。端部12R、14Rは、直線形状である。端部13R、15Rは、生地内側方向に僅かに湾曲した曲線形状である。
左前身頃片10Lと右前身頃片10Rとは、鏡像関係になっている。
【0025】
左脇はぎ片20Lは、生地外周に端部21L、22L、23L、24L、25Lを有し、端部24Lに沿った方向S2Lを伸縮方向としている。この例においては、端部24Lは、生地端を用いている。端部21L、22L、24Lは、直線形状である。端部23Lは、生地内側方向に僅かに湾曲した曲線形状である。端部25Lは、生地内側方向に大きく湾曲した曲線形状である。
【0026】
右脇はぎ片20Rは、生地外周に端部21R、22R、23R、24R、25Rを有し、端部24Rに沿った方向S2Rを伸縮方向としている。この例においては、端部24Rは、生地端を用いている。端部21R、22R、24Rは、直線形状である。端部23Rは、生地内側方向に僅かに湾曲した曲線形状である。端部25Rは、生地内側方向に大きく湾曲した曲線形状である。
左脇はぎ片20Lと右脇はぎ片20Rとは、鏡像関係になっている。
【0027】
後身頃片30は、生地外周に端部31L、31R、32L、32R、35を有し、端部35に沿った方向S3を伸縮方向としている。端部31L、31Rは、生地内側方向に僅かに湾曲した曲線形状である。端部31Lと端部31Rとで後身頃片30の一部に凹部を形成している。端部32L、32Rは、生地外側方向に大きく湾曲した曲線形状である。端部35は、直線形状である。後身頃片30は、体の後側中心線BCに対して線対称に形成され、左前身頃片10L、右前身頃片10R、左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20Rの伸縮性とは異なる伸縮性を有する。
【0028】
左前身頃片10Lの端部15L、右前身頃片10Rの端部15R、左脇はぎ片20Lの端部25L、右脇はぎ片20Rの端部25R、および後身頃片30の端部35は、ウエスト部となるウエストゴム50に接続される。
【0029】
左前身頃片10Lの端部11Lと右前身頃片10Rの端部11Rとが接続されることにより、体の前側を覆う前身頃が形成される。この接続された部分は、図3(a)に示す接続部60Fに対応する。端部11Lの曲線部分と端部11Rの曲線部分とが接続されることにより、前身頃には男性の局部を覆う膨出部分が形成される。なお、女性用であれば、この膨出部分がなくてもよいため、端部11L、11Rは直線形状に形成されていてもよい。
【0030】
左前身頃片10Lの端部12Lと左脇はぎ片20Lの端部21Lとが接続され、また、左前身頃片10Lの端部13Lの一部132Lと左脇はぎ片20Lの端部22Lとが接続される。このように接続されることにより、端部14Lと端部24Lとにより左足口40Lが形成される。
【0031】
図2(b)に示すように、端部12Lと端部21Lとが縫い合わされた部分は、接続部60FL(前接続部)という。
以下、左前身頃片10Lの左足口40Lに対応する端部14Lと、左脇はぎ片20Lの左足口40Lに対応する端部24Lとが接続部60FLの足口側においてなす角、すなわち、伸縮方向S1Lと伸縮方向S2Lとが接続部60FLにおいてなす角を、角度αという。左前身頃片10Lおよび左脇はぎ片20Lをともに伸張させない状態(パンツ1が着用されていない状態)において、角度αは、180度未満であり、望ましくは、90度以上150度未満、さらに望ましくは、110度以上130度未満となるように、左前身頃片10Lおよび左脇はぎ片20Lが形成されている。
【0032】
右前身頃片10Rの端部12Rと右脇はぎ片20Rの端部21Rとが接続され、また、右前身頃片10Rの端部13Rの一部132Rと右脇はぎ片20Rの端部22Rとが接続される。このように接続されることにより、端部14Rと端部24Rとにより右足口40Rが形成される。
【0033】
図2(c)に示すように、端部13Lの一部132Lと端部22Lとが接続された部分は、接続部60Bの一部を構成する。以下、左前身頃片10Lの左足口40Lに対応する端部14Lと、左脇はぎ片20Lの左足口40Lに対応する端部24Lとが接続部60Bにおいてなす角、すなわち、伸縮方向S1Lと伸縮方向S2Lとが接続部60Bにおいてなす角を、角度βという。左前身頃片10Lおよび左脇はぎ片20Lをともに伸張させない状態において、角度βが、角度αより大きい角度となり、例えば150度以上180度以下、望ましくは170度以上180度以下となるように、左前身頃片10Lおよび左脇はぎ片20Lが形成されている。
ここで、接続部60Bとは、端部13Lの一部132Lと端部22Lとが接続された部分、端部13Lの一部133Lと後身頃片30の端部31Lとが接続された部分とを合わせた部分、端部13Rの一部132Rと端部22Rとが接続された部分、および端部13Rの一部133Rと後身頃片30の端部31Rとが接続された部分を合わせたものをいう(図3(a)参照)。
【0034】
左前身頃片10Lと左脇はぎ片20Lとの関係について説明したが、右前身頃片10Rと右脇はぎ片20Rとの関係については、上述したように左前身頃片10Lおよび左脇はぎ片20Lと鏡像関係になっているだけであるから、説明を省略する。なお、端部12Rと端部21Rとが縫い合わされた部分は、接続部60FRという。
【0035】
後身頃片30の端部32Lは、左脇はぎ片20Lの端部23Lと接続される。この接続された部分は、図3(b)に示す接続部60BL(後接続部)に対応する。後身頃片30の端部32Rは、右脇はぎ片20Rの端部23Rと接続される。この接続された部分は、図3(b)に示す接続部60BR(後接続部)に対応する。
後身頃片30の端部31Lは、左前身頃片10Lの端部13Lの一部133Lに接続される。後身頃片30の端部31Rは、右前身頃片10Rの端部13Rの一部133Rに接続される。
以上が、生地のパターンおよび各パターンの接続関係についての説明である。続いて、着用された状態におけるパンツ1の説明をする。
【0036】
[外観]
図3は、着用者が直立した状態の実施形態におけるパンツ1の外観図である。図3(a)、(b)、(c)は、それぞれ、体の前側、後側、右側からパンツ1を見た場合の図である。
まず、図3(a)を用いて説明する。接続部60FLの左足口40L側の一端部PLは、左大腿部1000Lの前方に位置している。接続部60FRの右足口40R側の一端部PRは、右大腿部1000Rの前方に位置している。体左側の鼠径部GL、体右側の鼠径部GRは、それぞれ、左大腿部1000L、右大腿部1000Rの付け根部分である。左足口40L、右足口40Rは、それぞれ、鼠径部GL、GRより膝側、すなわち左大腿部1000L、右大腿部1000Rに位置する。
【0037】
左足口40Lのうち接続部60FLの部分(一端部PL)は、他の部分に比べてウエストゴム50に近く、膝側から離れた位置となる。右足口40Rのうち接続部60FRの部分(一端部PR)は、他の部分に比べてウエストゴム50に近く、膝側から離れた位置となる。
左足口40Lのうち接続部60BLの部分は、左大腿部1000Lにおける右大腿部1000Rの側に位置する。右足口40Rのうち接続部60BRの部分は、右大腿部1000Rにおける左大腿部1000Lの側に位置する。
【0038】
角度αは、着用されていない状態の大きさに比べて、着用された状態の大きさの方が大きくなっている。これは、着用された状態になることにより、生地が伸張された状態となるためである。ただし、この状態に合っても、着用者が直立状態である場合には、角度αが180度に達することはない。そのため、左前身頃片10Lの伸縮方向S1Lと左脇はぎ片20Lとの伸縮方向S2Lとの関係は、着用されていない状態とは、なす角αの大きさは変化するものの、180度未満であるという関係は変わっていない。右前身頃片10Rの伸縮方向S1Rと右脇はぎ片20Rとの伸縮方向S2Rとの関係についても、同様の関係である。角度βについても、着用されていない状態の大きさに比べて、着用された状態の大きさの方が大きくなり、180度に近づく。
【0039】
続いて、図3(b)を用いて説明する。後身頃片30の体の後側中心線BCにおけるウエストゴム50側の一部には、ダーツ縫いがなされたダーツ縫い部70が形成されている。なお、このダーツ縫い部70はなくてもよい。
体左側の臀溝HL、体右側の臀溝HRは、それぞれ、臀部と左大腿部1000Lとの境界、臀部と右大腿部1000Rとの境界である。接続部60BL、60BRは、それぞれ、臀溝HL、臀溝HRに概ね沿った部分を有する。そのため、後身頃片30は、臀部の大部分を覆う。また、体後側において、左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20Rが覆う大部分は、それぞれ、左大腿部1000L、右大腿部1000Rとなる。
また、後身頃片30における伸縮方向S3は、左脇はぎ片20Lおよび右脇はぎ片20Rにおける伸縮方向S2L、S2Rとは異なる方向になっている。
【0040】
続いて、図3(c)を用いて説明する。右足口40Rに対応する右脇はぎ部20Rの端部24Rは、右大腿部1000Rの後側より前側が、より上部に位置するようになっている。右足口40Rに対応する前身頃片10Rの端部14Rについても端部24Rと同様に右大腿部1000Rの後側より前側が、より上部(ウエストゴム50側)に位置する(不図示)。この結果、右足口40Rの開口面積は、パンツ1に覆われた部分の右大腿部1000Rにおける断面のうち最小の断面積より大きくなる。左足口40Lについても右足口40Rと同様である。
以上が、着用者が直立した状態における説明である。続いて、着用者が左大腿部1000Lを持ち上げた状態におけるパンツ1の外観の変化について説明する。
【0041】
[外観変化]
図4は、着用者が左大腿部1000Lを持ち上げた状態におけるパンツの外観図である。着用者が左大腿部1000LをAR1方向に持ち上げ、左大腿部1000Lの前方が上方を向くように移動させると、筋肉の伸縮関係から左大腿部1000Lの前方の皮膚が後方の皮膚に対して膝側に伸びた状態になる。このような状態になると、左足口40Lの端部14L、24Lは、左大腿部1000Lの前方が後方に比べて左膝1000LKの側に移動するため、角度αが、着用者が直立した状態(図3)における角度よりも大きくなる。
【0042】
角度αが180度に近づいていくと、左前身頃片10Lの伸縮方向S1Lと左脇はぎ片20Lの伸縮方向S2Lとは、平行の関係に近づいていく。角度αが180度以下を維持している状態においては、伸縮方向S1L、S2Lの関係からもわかるように、一端部PLがずり上がる方向への負荷がかかりにくい。また、角度αが180度を超えた場合であっても、図7に示す従来の場合に比べて、左足口40Lにおいて左大腿部1000Lの後方に対する前方の部分の位置が左膝1000LKの側へ移動していない状態となることから、一端部PLがずり上がる方向への負荷がかかりにくい。
【0043】
また、パンツ1に覆われた部分の左大腿部1000Lにおける断面のうち最小の断面積に対する左足口40Lの開口面積の比率は、着用者が直立した状態よりも、左大腿部1000Lを持ち上げた状態の方が小さくなる。このことによっても、左足口40Lにおける接続部60FLの部分がずり上がる方向への負荷がかかりにくくなる。
したがって、左大腿部1000Lの上げ下げに対して、左大腿部1000Lにかかる負荷を低減することができる。
【0044】
また、後身頃片30の伸縮方向S3が、左脇はぎ片20Lの伸縮方向S2Lと異なる方向であり、左大腿部1000Lの上げ下げによって伸縮する左脇はぎ片20Lの影響を受けにため、臀部に対する負荷を少なくすることができる。ここで、伸縮方向S3が概ね水平方向(ウエストゴム50と平行方向)にすることにより、左大腿部1000Lを持ち上げたときに、後身頃片30が臀裂部分へ食い込みにくくすることもできる。
また、後身頃片30は、左大腿部1000Lをほとんど覆わないようにすることにより、左大腿部1000Lの上げ下げによる影響を受けにくくすることもできる。
以上、左大腿部1000Lの上げ下げについて説明したが、右大腿部1000Rにおいても同様のことがいえる。
【0045】
<変形例>
以上、本発明の実施形態およびその実施例について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態において、パンツ1は、後身頃片30と、左前身頃片10Lおよび右前身頃片10Rとは、接続部60Bにおいて直接接続されていたが、必ずしも直接接続されていなくてもよい。この場合の生地のパターンを外観構成について、図5、図6を用いて説明する。
【0046】
図5は、変形例1におけるパンツ1Aの生地パターンを示す図である。図6は、着用者が直立した状態の変形例1におけるパンツ1Aの外観図である。図6(a)、(b)は、それぞれ、体の前側、後側からパンツ1Aを見た場合の図であり、図3(a)、(b)と対応している。
左脇はぎ片20AL、右脇はぎ片20AR、後身頃片30Aは、実施形態における左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20R、後身頃片30とは、一部形状が異なっている。また、股部片80が新たに加わっている。左前身頃片10Lの形状と右前身頃片10Rは、実施形態における形状と同じである。
【0047】
股部片80は、概ね長方形であり、2つの長辺の端部81、82が同じ方向に僅かに湾曲している。股部片80は、股部片80の短辺である端部84L、84Rに沿った方向が伸縮方向S4である。なお、伸縮方向S4は、端部81、82に沿った方向であってもよい。その場合には、後身頃片30Aの伸縮方向S3と同じ方向であるから、後身頃片30と股部片80とが分離せず、1枚生地として形成されていてもよい。
【0048】
股部片80の端部84L、84Rは、それぞれ、左足口40AL、右足口40ARの一部を形成する。すなわち、実施形態における場合と異なり、左足口40ALは、端部14L、24AL、84Lにより形成され、右足口40ARは、端部14R、24AR、84Rにより形成される。
左脇はぎ片20ALは、実施形態における左脇はぎ片20Lに比べ、端部23AL、24ALが短く、端部22ALが長くなっている。右脇はぎ片20ARは、実施形態における左脇はぎ片20Rに比べ、端部23AR、24ARが短く、端部22ARが長くなっている。後身頃片30Aは、端部32AL、32ARが短く、端部31AL、31ARが長くなっている。
【0049】
股部片80の端部81の一部81Lは、左前身頃片10Lの端部13Lと接続され、股部片80の端部81の一部81Rは、右前身頃片10Rの端部13Rと接続される。これらの接続された部分は、接続部60FBという(図6(a)参照)。
股部片80の端部82の一部82Lは、左脇はぎ片20ALの端部22ALと接続され、端部82の一部82Rは、右脇はぎ片20ARの端部22ARと接続され、端部82の一部83Lは、後身頃片30Aの端部31ALと接続され、端部82の一部83Rは、後身頃片30Aの端部31ARと接続される。これらの接続された部分は、接続部60BBという(図6(b)参照)。
【0050】
このように、実施形態におけるパンツ1に股部片80が加わったパンツ1Aとしても、伸縮方向S1L、S1Rと、伸縮方向S2L、S2Rとの関係が実施形態における関係と同じであるから、実施形態と同様な効果を奏する。
【0051】
[変形例2]
上述した実施形態において、左前身頃片10L、右前身頃片10R、左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20R、後身頃片30は、それぞれ1枚生地であるものとして説明したが、複数枚の生地を接続して形成されたものであってもよい。
また、端部15L、15R、25L、25R、35は、ウエストゴム50と直接接続されていなくてもよく、これらの間に他の生地が入っていてもよい。この場合には、他の生地およびウエストゴム50を含めてウエスト部となる。このように、ウエスト部とは、左前身頃片10L、右前身頃片10R、左脇はぎ片20L、右脇はぎ片20R、および後身頃片30の各生地よりも体上部側に位置する部材を総称したものである。
【0052】
[変形例3]
上述した実施形態においては、後身頃片30の伸縮方向S3は、端部35に沿った方向になっていたが、体の後側中心線BCに沿った方向であってもよい。また、一方向に大きく伸縮する伸縮性包帯生地を用いるのではなく、二方向に大きく伸縮する伸縮性生地を用いてもよい。この場合は、2つの伸縮方向が体の後側中心線BCに対して対称になっていることが望ましい。
【符号の説明】
【0053】
1,1A…パンツ、2…従来のパンツ、10L…左前身頃片、10R…右前身頃片、20L,20AL…左脇はぎ片、20R,20AR…右脇はぎ片、30,30A…後身頃片、40L,400L…左足口、40R,400R…右足口、50…ウエストゴム、60FL,60FR,60FB,60BL,60BR,60B,60BB,60F…接続部、70…ダーツ縫い部、80…、股部片、1000L…左大腿部、1000R…右大腿部、1000LK…左膝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地外周の一部の端部がウエスト部に接続されるとともに当該端部とは異なる一部の端部が足口の一部を形成し、特定の方向における伸縮性が他の方向よりも高い前身頃片と、
生地外周の一部の端部が前記ウエスト部に接続されるとともに当該端部とは異なる一部の端部が前記足口の一部を形成し、特定の方向における伸縮性が他の方向よりも高い脇はぎ片と、
前記前身頃片における前記ウエスト部から前記足口に至る端部と、前記脇はぎ片における前記ウエスト部から前記足口に至る端部とを接続する前接続部と、
端部の一部が前記ウエスト部に接続され、前記前身頃片および前記脇はぎ片とは異なる伸縮性を有する後身頃片と、
前記脇はぎ片における生地外周の一部の端部と前記後身頃片における生地外周の一部の端部とを接続する後接続部と
を具備し、
着用されている状態において、前記前接続部の前記足口側の一端部は、大腿部前方に位置し、
前記前身頃片における伸縮性が高い方向と前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向との前記前接続部の前記足口側においてなす角は180度未満である
ことを特徴とする下肢用衣料。
【請求項2】
前記前身頃片における伸縮性が高い方向は、前記前身頃片における足口を形成する端部に沿った方向であり、
前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向は、前記脇はぎ片における足口を形成する端部に沿った方向である
ことを特徴とする請求項1に記載の下肢用衣料。
【請求項3】
前記前身頃片における伸縮性が高い方向と前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向との前記接続部の前記足口側においてなす角は、着用されていない状態において、90度以上150度未満である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の下肢用衣料。
【請求項4】
前記前身頃片および前記脇はぎ片は、生地端により足口を形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の下肢用衣料。
【請求項5】
前記前身頃片における足口の前記一端部とは異なる他端部と、前記脇はぎ片における足口の前記一端部とは異なる他端部とは、互いに接続され、
前記前身頃片における伸縮性が高い方向と前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向との前記一端部においてなす角は、前記他端部においてなす角よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の下肢用衣料。
【請求項6】
前記後身頃片は、体の後側中心線に対して略直交方向における伸縮性が他の方向よりも高く、
前記後接続部は、前記脇はぎ片における伸縮性が高い方向と前記後身頃片における伸縮性が高い方向とが異なる方向になるように、当該脇はぎ片の端部の一部と当該後身頃片の端部の一部とを接続する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の下肢用衣料。
【請求項7】
前記後身頃片は、直交する第1の方向および第2の方向に伸縮し、
前記後接続部は、前記第1の方向が体の後側中心線に対して略直交方向または当該中心線に対して45度傾くように、前記脇はぎ片の端部の一部と当該後身頃片の端部の一部とを接続する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の下肢用衣料。
【請求項8】
前記後接続部の少なくとも一部は、着用されている状態において臀溝に沿うように形成される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の下肢用衣料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−36509(P2012−36509A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174573(P2010−174573)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(507147079)ログイン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】