説明

不可視情報印刷シート

【課題】
不可視情報の可視化が容易に行え、不可視情報を可視化する際に削りカスの発生を無くす事ができ、さらに不可視情報がスクラッチ前に目視で探査されないようなスクラッチ発色用インキ及び不可視情報印刷シートを提供する。
【解決手段】
支持体上に(1)無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキ、(2)減感剤及びワニスを含有する減感インキをそれぞれ同一面上に印刷し、両者が重なる印刷部分がある不可視情報印刷シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に印刷された不可視情報を外部からの摩擦により発色させることで可視化する不可視情報印刷シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、くじに用いられるシートとして、当落を示す文字、数字、図柄等の情報を紙等のシートに印刷し、さらに隠蔽層で覆うことで情報を不可視の状態とした不可視情報印刷シートが一般的に用いられている。具体的には、紙等のシートに可視情報等を印刷し、さらに不可視化すべき情報を印刷した後、不可視化すべき情報を覆うように剥離剤層を設け、その上に隠蔽性の銀色等のスクラッチインキを設けた状態であり、硬貨等によりスクラッチインキを削り取ることで不可視情報が現れるようにして用いられている。
しかし、上記のスクラッチインキを取り除く際に発生する削りカスがゴミとなってしまう欠点が有り、使用される用途や場所が限定される。また、隠蔽層とするためにスクラッチインキの層の厚さを大きくする必要から擦れや堅い尖ったものとの接触によりスクラッチインキが剥がれやすい欠点が有る。さらにスクラッチインキの色は暗色であり、暗い感じになりやすくデザイン上の問題となりやすい。
【0003】
そこで、支持体上に電子受容性化合物により不可視化すべき情報を印刷し、それを覆うように電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセルを分散したスクラッチ層を設けた印刷シートが提案されている。しかし、これはわずかな圧力や摩擦により使用前に不可視情報が発色してしまう欠点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の問題を解決するために、スクラッチインキを用いることなく不可視情報の発現が容易に行え、削りカスの発生が抑えられるとして、無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを含有するスクラッチ発色用電子供与性染料前駆体インキベースと電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用電子受容性化合物インキベースを別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とするスクラッチ発色用インキ及びそれらを用いた不可視情報印刷シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
この文献記載の方法では発色前の不可視情報は視認が極めて困難であるものの、不可視情報の印刷方法によっては、例えば不可視情報が比較的太い線から成る場合やインキ膜厚が厚い場合にはわずかながら視認できるため、なお改良すべき点がある。
【特許文献1】特許第2944861号公報
【特許文献2】特開2006−199187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不可視情報が視認されず、不可視情報印刷部分が通常取り扱い時の擦れでは発色しにくく、爪で擦ることでも不可視情報の可視化が容易に行え、不可視情報を可視化する際に削りカスの発生が無く、特に可視化する際に、鮮明な発色画像が得られ、発色前の状態での不可視性も改善された不可視情報印刷シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体上に、
(1)無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキと、
(2)減感剤及びワニスを含有する減感インキ
とをそれぞれ支持体の同一面上に印刷し、両者が重なる印刷部分がある不可視情報印刷シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の不可視情報印刷シートは、支持体上に、スクラッチ発色用インキ及び減感インキを用いて不可視情報を印刷することで、不可視情報が、爪で擦ることでも鮮明に可視化でき、通常取り扱い時に擦れによる発色汚れが発生しにくく、削りカスの発生がなく、さらに発色前の状態での不可視性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の不可視情報印刷シートを更に具体的に説明する。まず、本発明に用いるスクラッチ発色用インキから順に説明する。
【0009】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキは、少なくとも無色または淡色の電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物を含有し、更にワニスを含有し、より好ましくはドライヤーを含有するものである。
電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物が実質的に未発色の状態であるためには、それぞれ、固体粒子としてスクラッチ発色用インキ中に含有される事がより好ましい。
【0010】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキ中の含有成分について説明する。本発明に用いるスクラッチ発色用インキに含有される無色または淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録材料や感熱記録材料に用いられているものに代表されるが、特に限定されるものではない。
【0011】
具体的な電子供与性染料前駆体の例としては、
(1)トリアリールメタン系化合物またはインドリル基を持つ化合物:3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド等、
【0012】
(2)ジフェニルメタン系化合物:4,4′−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等、
【0013】
(3)キサンテン系化合物:ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等、
【0014】
(4)チアジン系化合物:ベンゾイルロイコメチレンブルー、4−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
【0015】
(5)スピロ系化合物:3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等を挙げることができる。またこれらの電子供与性染料前駆体は必要に応じて単独、もしくは2種以上混合して使用することができる。スクラッチ発色用インキの変色防止性や発色感度からは好ましくはキサンテン系化合物が用いられる。トリアリールメタン系化合物またはインドリル基を持つ化合物も発色色相が鮮やかなため、好ましく用いられる。
【0016】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキに用いられる電子受容性化合物としては、一般に感圧記録材料、または感熱記録材料に用いられる酸性物質に代表されるが、これらに制限されることはない。例えば、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、スルホンアミド誘導体、有機化合物の亜鉛塩等の多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体等を挙げることができる。
【0017】
具体的な例を挙げれば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4−ジ(フェニルスルホニル)フェノール等のジフェニルスルホン系化合物が挙げられる。
【0018】
その他の具体例としては、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシフェニルエーテル、
【0019】
3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、
【0020】
N−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−クロロベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−メトキシベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−アリルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−フェニルベンゼンスルホンアミド、4,4′−ビス(2−ヒドロキシフェニルアミノスルホニル)ジフェニルメタン、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−ベンジル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−アリル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルベンゼンスルホンアミド、
【0021】
4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、N,N′−ジフェニルチオ尿素、4,4′−ビス〔3−(4−メチルフェニルスルホニル)ウレイド〕ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4−〔2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド等が挙げられる。特にスクラッチ発色用インキの変色防止性や発色感度からはジフェニルスルホン系化合物が好ましい。
【0022】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキに含有されるワニスには、バインダー樹脂、更に必要に応じて、油、溶剤等が含まれている。
【0023】
スクラッチ発色用インキに含有されるワニスに含まれるバインダー樹脂の具体例としては、例えば、ロジン等の天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル等の天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0024】
スクラッチ発色用インキに含有されるワニスに必要に応じて含まれる油の具体例としては、例えば、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、桐油等の植物油、及びこれらを再生処理した植物油、スピンドル油、マシーン油、モビル油等の鉱物油が挙げられる。
なお、本発明においては、不揮発性有機液体を油、揮発性有機液体を溶剤と呼ぶ。
【0025】
スクラッチ発色用インキに含有されるワニスに必要に応じて含まれる溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤等が挙げられる。
また、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤は不揮発性であるが揮発性溶剤と同様に必要に応じて含有させてよい。
【0026】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキには、更に各種の補助剤を含有させてもよい。例えば、乾燥促進剤としてナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン等のドライヤー、一般的にアルミニウムキレートと呼ばれるキレート化剤、インキの粘度を調整する石油系溶剤やワニス等の調整剤、印刷後の滑りを調節するワックス、界面活性剤、有機や無機の微粒子類、感熱記録材料で公知の脂肪酸アミド類、脂肪族尿素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ビフェニル誘導体等の増感剤も発色濃度を上げるために含有させてもよい。
【0027】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキは、印刷部分の汚れ及び発色濃度から、電子供与性染料前駆体に対する電子受容性化合物の質量比(%)は、50〜1000%が好ましく、100〜500%が特に好ましい。また、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物を所定の割合で同時にビヒクル(ワニス)に添加し、混練りすると電子供与性染料前駆体が発色してインキの着色を招く恐れがあるため、別々に混練りしてインキ化した後に、撹拌機等により所定の割合で十分に混ぜ合わせる方が、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の接触等によるインキ着色を低減することができ、印刷部分の不可視化には好ましい。ビヒクル(ワニス)の種類やスクラッチ発色用インキ中のワニス含有量は印刷方法により異なるが、好ましくはスクラッチ発色用インキの10〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%、更に好ましくは65〜85質量%の範囲で適宜選択される。
なお、スクラッチ発色用インキ製造時、個々の含有成分を別々に混練りした場合、それらをインキベースと呼ぶ。
【0028】
本発明に用いるスクラッチ発色用インキにおけるワニスの調製は、従来公知の方法で良く、例えばバインダー樹脂及び、必要に応じて含有させる油等の組成成分を加熱溶解させた後、必要に応じて溶剤、アルミキレート剤等を含有させて得られる。
【0029】
次に、本発明に用いる減感インキについて説明する。
本発明に用いる減感インキは、減感剤及びワニスを含有するものである。減感インキの印刷部分とその周辺部において、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物による感圧複写あるいは感熱記録による発色を不十分にするかまたは実質的に発色させなくする事が知られている。減感剤については、米国特許2777780号明細書、特公昭44−27255号公報、同45−21448号公報、同46−22651号公報、同46−29546号公報、特開昭47−32915号公報、特公昭47−38201号公報、特公昭48−4050号公報等の各公報に詳述されている。
【0030】
本発明に用いる減感インキに含有される減感剤については、例えば、次のごとき具体例を挙げることができる。ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタドデシルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ドデシルアミン等の分子量の大きいアミン:2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリン等の置換オキサゾリン:キシレンジアミン、N−アミノプロピルピペレジン等の分子中に環状構造を有するジアミンもしくはポリアミン誘導体とアルキレンオキサイドとの反応物:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、グルタミン酸−r−アルキルエステル残基を有する重合体、スピロアセタール系ジアミン、N−(アミノアルキル)−ラクタム類、アミン類のグリシジルエーテル付加物等がある。
【0031】
本発明には感圧複写紙の分野で用いられている公知の減感インキを用いても差し支えないが、減感インキ中に顔料を含有させる場合、顔料として酸化チタンは用いないか、インキ全体に対して10質量%以下である事が好ましい。硬度の高い酸化チタンをこれより多く含むと、硬貨で本発明の不可視情報印刷シートをスクラッチ発色させる時に、硬貨の金属が削られ、本来のあざやかな発色色相がにぶくなる恐れがある。(無彩色ならこの恐れは無い。)また、酸化チタンにより得られる白色度が高いためかえって不可視情報が周囲より白くなり目立ってしまい読まれる恐れもある。
【0032】
本発明に用いる減感インキに含有されるワニスには、バインダー樹脂、更に必要に応じて、油、溶剤等が含まれている。
【0033】
減感インキに含有されるワニスに含まれるバインダー樹脂の具体例としては、例えば、ロジン等の天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル等の天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0034】
減感インキに含有されるワニスに必要に応じて含まれる油の具体例としては、例えば、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、桐油等の植物油、及びこれらを再生処理した植物油、スピンドル油、マシーン油、モビル油等の鉱物油が挙げられる。
【0035】
減感インキに含有されるワニスに必要に応じて含まれる溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤等が挙げられる。
また、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤は不揮発性であるが揮発性溶剤と同様に必要に応じて含有させてよい。
【0036】
本発明に用いる減感インキには、更に各種の補助剤を含有させてもよい。補助剤の具体例としては、例えば、乾燥促進剤としてナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン等のドライヤー、一般的にアルミニウムキレートと呼ばれるキレート化剤、インキの粘度を調整する石油系溶剤やワニス等の調整剤、印刷後の滑りを調節するワックス、界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いる減感インキにおけるワニスの調製は、従来公知の方法で良く、例えばバインダー樹脂、油等の組成成分を加熱溶解させた後、溶剤、アルミキレート剤等を添加反応して得られる。減感インキにおけるワニスと、スクラッチ発色用インキにおけるワニスとが共通であっても特に支障無い。むしろ、共通の方がワニス製造の工程面で有利である。
【0038】
次に、本発明の不可視情報印刷シートに用いる支持体について説明する。
本発明の不可視情報印刷シートに用いる支持体は、紙が主として用いられるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、蒸着シート、或いはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。
【0039】
次に、不可視情報印刷シートを得る方法の説明に移る。本発明の不可視情報印刷シートのスクラッチ部及びその周辺に印刷を設ける場合には、各種印刷用インキが使用可能であるが、スクラッチ発色用インキの発色色相や、支持体面の色相と異なった色相のインキを使用することもできる。支持体面の色相が白色で、スクラッチ発色用インキの発色色相が黒や青色であれば、黄色、橙等の明度の高い色相のインキが好ましい。
【0040】
本発明の不可視情報印刷シートの不可視情報を印刷するには、本発明に用いるスクラッチ発色用インキ及び減感インキにより、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷方法を用いて作製されるが、印刷精度や印刷性からは特にオフセット印刷により作製することが好ましい。オフセット印刷による場合は、通常のオフセット印刷用インキを用いる印刷条件と同様でよく、吸湿液を用いても水無しでもよい。スクラッチ発色用インキ及び減感インキのそれぞれの印刷盛量は特に限定されないが、スクラッチ発色用インキ及び減感インキが重なる印刷部分での発色濃度及び、不可視情報の不可視性によりそれぞれ適宜選択される。
また、スクラッチ発色用インキと減感インキの印刷順序については、いずれが先であってもよい。また、スクラッチ発色用インキと減感インキの印刷位置については、重なっている印刷部分及びその近傍において、不可視性が特に良い。また、スクラッチ発色用インキ及び減感インキは支持体の同一面上に印刷されるが、更に支持体の異なる面にもいずれか又は両者のインキを印刷して差し支えない。
なお、支持体には通常の印刷用インキによる印刷等の加工がなされていてもよい。不可視情報の印刷部分を含む、スクラッチすべき領域を使用者にすぐ分かってもらう必要がある場合等に有効である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(作製例1)
作製例1は、ワニス、各インキベース、各インキの調製例である。
(ワニスの調製)
植物油としてアマニ油20質量部、ロジン変性フェノール樹脂(質量平均分子量60000、酸価20mgKOH/g)50質量部、スピンドル油20質量部を配合して約200℃で約1時間加熱して樹脂を溶解させた後、スピンドル油10質量部、アルミニウムキレート剤1質量部を添加して約180℃で約1時間加熱し、ワニスを得た。
(スクラッチ発色用電子供与性染料前駆体インキベースの調製)
上記ワニス50質量部、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってスクラッチ発色用電子供与性染料前駆体インキベース(a)を調製した。
(スクラッチ発色用電子受容性化合物インキベースの調製)
上記ワニス50質量部、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってスクラッチ発色用電子受容性化合物インキベース(b)を調製した。
(スクラッチ発色用インキの調製)
上記2種のインキベース(a)、(b)をそれぞれ1:2の質量比率で混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を該インキベース合計の0.2質量%添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。
(減感インキの調製)
上記ワニス50質量部に減感剤としてポリオキシアルキレンプロピレンジアミン50質量部を添加し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を該インキベース合計の0.2質量%添加し、十分撹拌して均質化することによって減感インキを得た。
【0043】
(作製例2)
作製例2は印刷条件の例である。次の様に、不可視情報印刷シートを得る条件を定めた。
(印刷速度)
150m/min
(印刷に使用した用紙)
三菱IJフォーム用紙 135g/m2(三菱製紙株式会社製)
(給湿液)
5%IPA−0.2%SEVENSTAR(大日精化社製)の混合液
(使用刷版)
HPF 0.24mm(富士フイルム社製)
(印刷機)
MVF−18D(株式会社ミヤコシ製)
【0044】
(実施例1)
作製例1で得た各インキを作製例2の条件で印刷し、不可視情報印刷シートを得た。
(スクラッチ発色用インキの絵柄)
20mm角の正方形、ベタ、インキ膜厚1.4μm
(減感インキの絵柄)
スクラッチインキの絵柄上にゴシック体太字全角で「1」、24ポイント、インキ膜厚0.6μm
(印刷順序)
最初にスクラッチ発色用インキを印刷、次いで減感インキを印刷。
減感インキによる印刷部分は、スクラッチ発色用インキによるベタ印刷部分の上にある。
【0045】
(実施例2)
作製例1で得た各インキを作製例2の条件で印刷し、不可視情報印刷シートを得た。
(減感インキの絵柄)
ゴシック体太字全角で「1」、24ポイント、インキ膜厚0.6μm
(スクラッチ発色用インキの絵柄)
減感インキの絵柄上に20mm角の正方形、ベタ、インキ膜厚1.4μm
(印刷順序)
最初に減感インキを印刷、次いでスクラッチ発色用インキを印刷。
減感インキによる印刷部分は、スクラッチ発色用インキによるベタ印刷部分の下にある。
【0046】
(比較例1)
作製例1で得たスクラッチ発色用インキのみを作製例2の条件で印刷し、不可視情報印刷シートを得た。
(スクラッチ発色用インキの絵柄)
ゴシック体太字全角で「1」、24ポイント、インキ膜厚1.4μm
(印刷順序)
スクラッチ発色用インキのみを印刷。
【0047】
(印刷部分の不可視性評価)
実施例1〜2及び比較例1で得られた不可視情報印刷シートの支持体表面を目視観察により、不可視性を以下の3段階で評価した。○は情報が全く視認されない。△は情報が視認されにくいが不可視情報があることが分かる。×は情報が視認される。
【0048】
(印刷部分の発色濃度評価)
実施例1〜2及び比較例1(但し、不可視情報印刷シート作製の各実施例、比較例)で得られた不可視情報印刷シートの印刷部分を爪で擦り、発色濃度を以下の3段階で評価した。○は良好な発色が得られ、情報の読み取りも良好である。△は情報の読み取りが可能であるがやや不鮮明である。×は情報の読み取りが不可能である。
評価結果を次に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から明らかなように、スクラッチ後の情報の読み取りは各実施例、比較例とも良好であるが、比較例1のようにスクラッチ発色用インキのみで情報を印刷した場合は、スクラッチ前において比較的大きく、単純な図柄の文字であるため、わずかながら不可視情報が読み取れる。しかしながら、実施例1及び実施例2では、スクラッチ発色用インキと減感インキを併用して情報を印刷すると、スクラッチ前において情報が全く視認されない不可視情報が形成できた。
しかも、実施例1及び実施例2で、発色濃度は良好であった。なお、各実施例、比較例とも削りカスは発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の不可視情報印刷シートは、特別の用具(コイン等)を用いることなく、不可視情報の可視化が可能であり、活用例として、子供の手を汚すことがなく、削りカスの発生も無いので特に乗り物内での使用にも有効である。またスクラッチ前に優れた不可視性を有するため、高額なくじ類にも有効である。もちろん、コイン等を用いても削りカスは発生しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、
(1)無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキと、
(2)減感剤及びワニスを含有する減感インキ
とをそれぞれ支持体の同一面上に印刷し、両者が重なる印刷部分がある不可視情報印刷シート。



【公開番号】特開2009−878(P2009−878A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163239(P2007−163239)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】