説明

不活性ガス消火設備

【課題】不活性ガス消火設備の点検中に誤って起動用ガスが起動したとしても不活性ガスガスが防護区画に放射されないようにする。
【解決手段】不活性ガス貯蔵容器4a〜4lに貯蔵された不活性ガス消火剤が起動用ガス容器9a〜9cに貯蔵された起動用ガスによって開放されて防護区画1〜3に放出される不活性ガス消火設備100において、不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤消火剤開放器40a〜40lに流す配管に、通常時には不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器40a〜40lに流し、不活性ガス消火設備の点検時には不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器40a〜40lに流さないようにする弁42a〜42cを設け、点検時に誤って起動用ガス開放器90a〜90cを作動させて起動用ガスが配管に流れても、不活性ガス消火剤が誤って放出されることがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素ガスなどの不活性ガス消火剤を放出して火災の消火を行う不活性ガス消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
不活性ガス消火設備としては、例えば特許文献1に示された構成のものが知られている。この不活性ガス消火設備は、起動スイッチ及び非常停止スイッチを備えた操作箱からの信号を受け、起動用ガス容器に貯蔵された起動用ガスが不活性ガス貯蔵容器を開放して噴射ヘッドから消火剤を放出する構成となっている。
【0003】
そして、起動用ガス容器と不活性ガス貯蔵容器とを接続する配管の途中に、操作箱の扉を開いたという信号と、起動スイッチを押したという信号を受信した時のみ開弁する常閉型の電磁弁を設け、電気的ノイズの混入、機械的振動等に起因して開放器が誤動作しても、不活性ガス消火剤が放出されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−360726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された不活性ガス消火設備は、点検中の誤った操作による誤放射を防止する効果は低い。本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、点検中に誤って起動用ガスが起動したとしても、不活性ガスガスが防護区画に放射されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不活性ガス消火剤を貯蔵する不活性ガス貯蔵容器と、不活性ガス貯蔵容器に貯蔵した不活性ガス消火剤を開放する消火剤開放器と、不活性ガス貯蔵容器に貯蔵された不活性ガス消火剤を防護区画内へ放出する照射ヘッドと、消火剤開放器をガス圧力により作動させるための起動用ガスを貯蔵する起動用ガス容器と、起動用ガス容器に貯蔵された起動用ガスを開放するための起動用ガス開放器と、起動用ガス開放器を制御する制御盤とを少なくとも備える不活性ガス消火設備において、起動用ガスを流す配管に、通常時には不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器に流し、不活性ガス消火設備の点検時には不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器に流さないようにする弁を設けている。この弁は、3方弁であることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る不活性ガス消火設備は、不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器に流す配管に、通常時には不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器に流し、不活性ガス消火設備の点検時には不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを消火剤開放器に流さないようにする弁を設けているため、点検時に誤って起動用ガス開放器を作動させて起動用ガスが配管に流れたとしても、不活性ガス消火剤が誤って放出されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】不活性ガス消火設備の第一の例を示す構成図である。
【図2】操作箱を示す正面図である。
【図3】操作箱の内部を示す正面図である。
【図4】不活性ガス消火設備の第二の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 第一の実施形態
図1に示す不活性ガス消火設備100は、複数の防護区画(図1の例では防護区画1,2,3)に対してそれぞれ不活性ガス消火剤を放出する装置である。
【0010】
この不活性ガス消火設備100は、不活性ガス消火剤を貯蔵する不活性ガス貯蔵容器4a〜4lを備えている。不活性ガス貯蔵容器4a〜4lには、貯蔵した不活性ガス消火剤を開放する消火剤開放器40a〜40lをそれぞれ備えている。
【0011】
各不活性ガス貯蔵容器4a〜4lの出力側は、選択弁5a、5b、5cを介して、不活性ガス消火剤を各防護区画内へ放出する噴射ヘッド6に連通している。なお、噴射ヘッド6は、防護区画1に備えたもののみ図示しているが、防護区画2、3にも同様に備えている。
【0012】
噴射ヘッド6からの消火剤の放出は、手動式起動装置7における制御の下で手動で行うことができる。手動式起動装置7は、操作箱8から発せられる指令により作動する。具体的には、操作箱8には、図2に示すように、手動式起動装置7に対して起動を指令する起動スイッチ80及び起動指令を解除する非常停止スイッチ81を内部に備えている。
【0013】
操作箱8は、防護区画内またはその近傍に設置され、図3に示すように、開閉扉82を備えている。開閉扉82を閉めた状態でも、電源表示灯83、起動表示灯84及び点検中表示灯15を視認できる状態となっている。一方、図2に示すように、開閉扉82を開けた状態では、電源表示灯83、起動表示灯84及び点検中表示灯85を視認できるほか、起動スイッチ80及び非常停止スイッチ81を操作することができる。さらに、操作箱8の内部には、扉スイッチ86も備えている。
【0014】
図1に示す消火剤開放器40a〜40lは、起動用ガス容器9a、9b、9cに貯蔵されたガスの圧力によって作動する。起動用ガス容器9a、9b、9cは、起動用ガスを開放するために起動用ガス容器弁を作動させる起動用ガス開放器90a、90b、90cをそれぞれ備えている。
【0015】
起動用開放器90a〜90cは、制御盤10による制御の下で作動する。制御盤10には図示しないタイマーを備えており、このタイマーは、起動スイッチ80の操作時から一定時間経過後に起動用ガス開放器90a〜90cを作動させる機能を有している。また、制御盤10は、防護区画内に設けられた音響警報装置11及び充満表示灯12に接続されており、音響警報装置11を鳴らしたり、充満(放出)表示灯12を点灯及び消灯させたりすることができる。
【0016】
選択弁5a〜5cは、防護区画と同数設けられており、各選択弁は、それぞれが起動用ガス配管50a、50b、50cを介して起動用ガス容器9a、9b、9cにそれぞれ連通している。制御盤10による制御の下で起動用ガス開放器90a〜90cが起動用ガス容器9a〜9cを開放することにより、選択弁5a〜5cが開放され、その選択弁5a〜5cと連通した噴射ヘッド6から不活性ガス消火剤が放出される構成となっている。
【0017】
選択弁5a〜5cの下流には、圧力スイッチ51a、51b、51cが設けられており、各防護区画内への不活性ガス消火剤の放出による圧力を検出して充満表示灯12を点灯させることができる。
【0018】
起動用ガス容器9a〜9cと消火剤開放器40a〜40cとの間は配管41a、41b、41cによってそれぞれ接続されている。配管41a、41b、41cには、それぞれ誤放射防止弁42a、42b、42cが設けられている。この誤放射防止弁42a、42b、42cは、図1の例では3つ設けられており、それぞれの誤放射防止弁42a、42b、42cの切替によって、不活性ガス貯蔵容器4a〜4lの開閉を行うための起動用ガスを消火剤開放器40a〜40lに流す状態と流さない状態とをとることができる構成となっている。誤放射防止弁42a、42b、42cの切替は、制御盤10に設けたメンテナンススイッチ(図示せず)によって制御することができる。
【0019】
不活性ガス貯蔵容器4a〜4lの出力側は、点検用閉止弁43を介して各選択弁5a〜5cと接続されており、不活性ガス貯蔵容器4a〜4lからの不活性ガスが開状態の選択弁5a〜5cを通って噴射ヘッド6に流れて放出される構成となっている。
【0020】
誤放射防止弁42a〜42cは、三方弁であり、通常時(火災監視時)は、起動用ガス容器9a〜9cから放出された起動用ガスを消火剤開放器40a〜40lに流す状態としておく。一方、点検時は、誤放射防止弁42a〜42cは、起動用ガスを消火剤開放器40a〜40lに流さず、大気に開放する。
【0021】
消火剤開放器40a〜40lは、配管44により接続されており、その途中には逆止弁45a、45b、45cが設けられている。図1の例では、消火剤開放器40eと40fとの間にガスを消火剤開放器40e側に流す逆止弁42aが配設され、消火剤開放器40bと40cとの間にガスを消火剤開放器40b側に流す逆止弁42bが配設され、消火剤開放器40jと40kとの間にガスを消火剤開放器40j側に流す逆止弁42cが配設されている。
【0022】
(1)通常時(火災監視時)
通常時は、誤放射防止弁42a〜42cを、起動用ガス容器9a〜9cからのガスが消火剤開放器40a〜40lに流れるように設定する。この状態における不活性ガス消火設備100は、以下のように動作する。
【0023】
例えば、防護区画1内において火災が確認されると、発見者が操作箱8の開閉扉82を開ける。これによって、音響警報装置11が警報を発する。次に、防護区画1内の人員の非難が確認されると、起動スイッチ80を押圧する。そうすると、これに連動して防護区画1内の換気扇等機器を停止する。
【0024】
起動スイッチ80の押圧と同時に、制御盤10のタイマーが計時を開始し、タイムアップまでの間に火災が鎮火したり消火されなかった場合は、防護区画1に対応する起動用ガス開放器90aを作動させて起動用ガス容器9aから起動用ガスを選択弁5aに供給して選択弁5aを開状態とする。また、起動用ガス開放器90aを作動させることにより、誤放射防止弁42aを介して消火剤開放器40a〜40jに起動用ガスが流れる。そうすると、不活性ガス貯蔵容器4a〜4j内の不活性ガス消火剤が点検用閉止弁43及び選択弁5aを経て噴射ヘッド6から防護区画1内に放射される。このとき、圧力スイッチ51aが作動して防護区画1の近傍外部に設けられた充満表示灯12が点灯し、不活性ガス消火剤の充満状態を外部に知らせる。
【0025】
(2)点検時
点検時は、誤放射防止弁42a〜42cを、起動用ガス容器9a〜9cからのガスが消火剤開放器40a〜40lに流れずに大気に開放されるように設定する。そして、その状態では、以下のように動作する。
【0026】
例えば、誤って起動用ガス開放器90bを作動させて起動用ガス容器9bから起動用ガスを選択弁5bに供給された場合は、誤放射防止弁42bが、起動用ガスが消火剤開放器40bに流れないように設定されているため、起動用ガス容器9bから起動用ガスは、大気に開放され、消火剤開放器40a〜40lには流れない。
【0027】
したがって、誤放射防止弁42a〜42cを、起動用ガス容器9a〜9cからのガスを消火剤開放器40a〜40lに流さないように設定しておくことにおり、不活性ガス貯蔵容器4a〜4lの不活性ガス消火剤が噴射ヘッド6から誤って放出されることがない。
【0028】
2 第二の実施形態
図4に示す不活性ガス消火設備200は、図1に示した不活性ガス消火設備100と同様に、防護区画1,2,3に対してそれぞれ不活性ガス消火剤を放出する装置である。以下では、不活性ガス消火設備100と同様に構成される部分については共通の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0029】
不活性ガス消火設備200では、消火剤開放器40a〜40lを開放するための配管44の末端に、リリーフ弁46を設け、リリーフ弁46と末端の消火剤開放器40aとの間に誤放射防止弁47を設けている。誤放射防止弁47は、三方弁により構成され、通常時(火災監視時)は、起動用ガス容器9a〜9cから放出された起動用ガスをリリーフ弁46に流すように設定される。一方、点検時は、誤放射防止弁47を、起動用ガスがリリーフ弁46に流れず大気へ放出するように設定する。
【0030】
通常時は、誤放射防止弁47がリリーフ弁46の方へ起動用ガスを流すため、例えば、起動用ガス開放器90cを作動させて起動用ガス容器9cから起動用ガスを放出すると、選択弁5cが開くとともに、すべての消火剤開放器40a〜40lが作動し、不活性ガス貯蔵容器4a〜4lから消火剤が放出される。そうすると、その消火剤は、選択弁5cを介して防護区画3の噴射ヘッドから放射される。
【0031】
一方、点検時は、起動用ガス開放器90a〜90bのいずれかが作動して起動用ガスが配管44を流れても、誤放射防止弁47において起動用ガスが大気に開放されることにより、配管44の内部は、消火剤開放器40a〜40lが作動するための十分な圧力にならない。そのため、起動用ガスにより消火剤開放器40a〜40lは起動せず、不活性ガス貯蔵容器4a〜4lから不活性ガス消火剤が放出されることはない。したがって、点検時は、誤放射防止弁47を、起動用ガスがリリーフ弁46へ流れず大気へ放出されるように設定しておくことにより、各防護区画内において噴射ヘッド6から誤って不活性ガス消火剤が放出されるのを防止することができる。
【0032】
なお、本発明の実施に際しては、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することができる。
【0033】
たとえば、上記においては、誤放射防止弁47は三方弁として記載したが、二方弁であっても良い。
【符号の説明】
【0034】
100、200:不活性ガス消火設備
1,2,3:防護区画
4a〜4l:不活性ガス貯蔵容器
40a〜40l:開放器 41a,41b,41c:配管
42a,42b,42c:誤放射防止弁 43:点検用閉止弁
44:配管 45a,45b,45c:逆止弁 46:リリーフ弁 47:誤放射防止弁
5a,5b,5c:選択弁 50a,50b,50c:起動用ガス配管
51a,51b,51c:圧力スイッチ
6:噴射ヘッド
7:手動式起動装置
8:操作箱
80:起動スイッチ 81:非常停止スイッチ 82:開閉扉 83:電源表示灯
84:起動表示灯 85:点検中表示灯 86:扉スイッチ
9a,9b,9c:起動用ガス容器 90a,90b,90c:起動用ガス開放器
10:制御盤 11:音響警報装置 12:充満(放出)表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス消火剤を貯蔵する不活性ガス貯蔵容器と、
該不活性ガス貯蔵容器に貯蔵した不活性ガス消火剤を開放する消火剤開放器と、
該不活性ガス貯蔵容器に貯蔵された不活性ガス消火剤を防護区画内へ放出する照射ヘッドと、
該消火剤開放器をガス圧力により作動させるための起動用ガスを貯蔵する起動用ガス容器と、
該起動用ガス容器に貯蔵された起動用ガスを開放するための起動用ガス開放器と、
該起動用ガス開放器を制御する制御盤と、
を少なくとも備える不活性ガス消火設備において、
前記起動用ガスを流す配管に、通常時には前記不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを前記消火剤開放器に流し、前記不活性ガス消火設備の点検時には前記不活性ガス消火剤を開放するための起動用ガスを前記消火剤開放器に流さないようにする弁を設けている不活性ガス消火設備。
【請求項2】
前記弁は3方弁である請求項1に記載の不活性ガス消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81174(P2012−81174A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231481(P2010−231481)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000114905)ヤマトプロテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】