説明

不燃化粧板

【課題】 不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れる不燃化粧板を提供する。
【解決手段】 表面層と芯材層とが積層された構造を有する不燃化粧板であって、前記表面層は、意匠面となる熱可塑性フィルムもしくはシートまたは壁紙からなる表面層材料で構成され、表面層材料の坪量は、40〜400g/mであり、前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成される不燃化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不燃化粧板は、キッチンパネル材として普及する不燃性メラミン化粧板があり、ガラス繊維基材と水酸化アルミニウム微粉等を用いた化粧ボード仕様の不燃性メラミン化粧板が主流となっている。
一般的なメラミン樹脂を用いたメラミン化粧板は、表面硬度が硬く、曲げ加工等のポストフォーム(二次成形)加工用途には不向きである。しかし、近年では、曲げ用途にも対応するポストフォーム用メラミン樹脂が開発され、これを用いたポストフォーム用化粧板は加熱曲げができるようになり、扉等の用途に使用されてきた。さらに、フェノール樹脂を含浸させたクラフト紙やアルミニウム等をメラミン化粧板の裏貼りに使用することで、用途に合わせた様々な組み合わせのメラミン化粧板が製造されている。例えば、特許文献1には、ポストフォーム用メラミン樹脂を用いたメラミン樹脂含浸紙からなる表面層とアルミニウムを組み合わせたメラミン化粧板が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているメラミン化粧板では、メラミン化粧層とアルミニウムを接着させるためには、フェノール樹脂を含浸させたクラフト紙の層が必要であり、このフェノール樹脂層がある分、メラミン化粧板の厚みが厚くなるため、薄膜化が難しく、曲げ加工性も制限され、加熱しても4mmRの曲げ加工が限界であった。
また、化粧ボード仕様では、製品厚みが厚く、加熱下でも柔軟性を発現出来ず、高剛性であるため、不燃性と曲げ加工性を同時に要求される分野においては、容易に実用化されない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−96702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れる不燃化粧板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記発明(1)〜(4)により達成される。
(1)表面層と芯材層とが積層された構造を有する不燃化粧板であって、
前記表面層は、意匠面となる熱可塑性フィルムもしくはシートまたは壁紙からなる表面層材料で構成され、表面層材料の坪量は、40〜400g/mであり、
前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とする、不燃化粧板。
(2)全体厚みが0.5mm以下である、上記(1)に記載の不燃化粧板。
(3)前記ガラスクロスを基材とするプリプレグは、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有する樹脂組成物をガラスクロスに含浸してなる、上記(1)又は(2)に記載の不燃化粧板。
(4)25℃での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工性を有する、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の不燃化粧板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れる不燃化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の不燃化粧板の構成の一例を表す概念図である。
【図2】本発明の不燃化粧板の製造方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の不燃化粧板は、表面層と芯材層とが積層された構造を有する化粧板であって、前記表面層は、意匠面となる熱可塑性フィルムもしくはシートからなる化粧層または、壁紙からなる表面層材料で構成され、前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とする。
【0010】
以下、本発明の不燃化粧板について、図をもとに詳細に説明する。
本発明の不燃化粧板の構成の一例として、図1に、表面層15と芯材層16とから成る不燃化粧板12の構成を示す。また、不燃化粧板の製造方法の一例として、図2に、不燃化粧板12の製造方法の一例を示す。図2に示す例では、不燃化粧板12は、表面層材料15Aと芯材層材料16Aとを重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。
【0011】
<1.表面層>
表面層15は、表面層材料15Aで構成され、この表面層材料15Aは、本発明の不燃化粧板12の意匠面(露出される側の面)側に配置される。表面層材料15Aは、意匠面となる熱可塑性フィルムもしくはシートまたは壁紙からなるものである。
【0012】
前記表面層材料は、意匠面が形成されたシート状の基材である。前記表面層材料の材質は特に限定されないが、好ましくは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、アモルファスPET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、非結晶PETフィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系フィルムなどを用いることができ、必要に応じて、壁紙などを用いることができる。この壁紙とは、建築物の壁や天井の内装仕上材として用いられる布・紙や合成樹脂でできたシートであって、一般的に用いられているものを使用することができる。
前記表面層材料の坪量は、40〜400g/mである。坪量が前記下限値未満であると、意匠性が低下したり、しわの問題から、使用が困難である。一方、坪量が前記上限値を超えると、不燃性の低下や、生産性低下、コスト高の原因となるため好ましくない。
【0013】
本発明に用いる表面層材料15Aは、意匠面が形成されたシート状の基材である。これにより、意匠性と曲げ加工等の加工性を付与することができる。
【0014】
<2.芯材層>
不燃化粧板12は、表面層15に、芯材層16を積層してなる。
前記芯材層16は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料16Aで構成される。これにより、不燃化粧板に、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
【0015】
ガラスクロスとしては、特に限定されないが、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等が挙げられ、中でも不燃性、強度の点からガラス織布が好ましい。
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもTガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。
【0016】
前記ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量100g/m以上とする事が好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m以下が好ましい。
【0017】
前記プリプレグとしては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂等を含有する樹脂組成物を上述のガラスクロスに含浸してなるものを用いることができる。前記樹脂組成物としては、前記表面層15の第2の面側152と芯材層16との層間接着強度が、不燃化粧板12を形成するために十分であれば、特に限定されないが、中でも、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有することが好ましく、20〜35質量%含有することが特に好ましい。これにより、前記表面層15の第2の面側152と芯材層16との層間接着強度を向上させることができる。
【0018】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。中でもアクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、前記熱可塑性樹脂はアクリル樹脂及び/又はウレタン樹脂を含有することが好ましい。
【0019】
前記プリプレグは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、上述したガラスクロスと同様のガラスクロスに、前記樹脂組成物を溶剤に溶解させたワニスを含浸、乾燥させることにより得られる。
【0020】
また、前記芯材層材料16Aは、表面層材料15Aと接する面側に、さらに熱可塑性エマルジョン樹脂を担持させる事で、さらに接着強度を向上させ、高い常温曲げ加工性を達成出来る。なお、芯材層材料16Aの表面層材料15Aと接する面側に担持させる熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、柔軟性を付与し、燃焼時の発熱量、ガス有害性に支障なければ特に限定されず、当該熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が含むエマルジョン樹脂粒子の平均粒径は特に限定されず、水溶性でも非水溶性でもよい。
【0021】
芯材層16の厚みは、100μm以上とすることが好ましい。これにより、メラミン化粧板12に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほどメラミン化粧板12の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることが好ましい。
【0022】
<3.不燃化粧板>
不燃化粧板12は、上述した表面層材料15Aと芯材層材料16Aとを、所定の順序で重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。
不燃化粧板12を加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度130〜150℃、圧力2〜8MPa、時間10〜60分間で実施することができる。
また、不燃化粧板12の成形時に、表面層材料15Aの第1の面側に、鏡面仕上げ板を重ねることにより鏡面仕上げとすることができ、エンボス板又はエンボスフィルム等を重ねることにより、エンボス仕上げとすることができる。
【0023】
本発明の不燃化粧板は、常温(通常25℃)での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工が可能であるが、特に限定はされない。最小曲げ半径Rとは、半径Rの湾曲部を有する型に沿わせて、一方方向に行う常温曲げ加工を繰り返し実施しても、割れ等の不具合を生じず、100%の良品が得られる最小の型の半径Rを意味する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
表面層材料として坪量80g/mの意匠面が形成されたポリエチレンフィルム(大日本印刷(株)製)を用い、芯材層材料として厚み0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製「WEA7628」)を重ね合わせ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの化粧板(1)を得た。
【0026】
(実施例2)
厚さ0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製「WEA7628」)にウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で70g/mを塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて150秒乾燥し、樹脂比率が25%、揮発分率3%のプリプレグを作製し、これを芯材層材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ0.3mmの化粧板(2)を得た。
【0027】
(実施例3)
表面層材料として坪量80g/mの壁紙(大日本印刷(株)製)を用い、芯材層材料として厚み0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製「WEA7628」)にウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で70g/mを塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて150秒乾燥し、樹脂比率が25%、揮発分率3%のプリプレグを作製し、これを芯材層材料として重ね合わせ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの化粧板(3)を得た。
【0028】
(比較例1)
表面層材料として坪量500g/mの意匠面が形成されたポリエチレンフィルム(大日本印刷(株)製)を用い、芯材層材料として厚み0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製「WEA7628」)を重ね合わせ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、厚さ0.60.4mmの化粧板(4)を得た。
【0029】
(比較例2)
比較例1と同様の表面層材料を用い、芯材層材料として厚み0.2mmポリエステル不織布(旭化成工業社製、スパンボンド「アイエル」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ0.3mmの化粧板(5)を得た。
【0030】
以上の実施例1、2、3及び比較例1、2で得られた化粧板(1)〜(5)について特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0031】
(試験方法)
1.不燃性試験
日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」4.10 不燃性能試験・評価方法における、(2)ii)4.10.2 の発熱性試験・評価方法 及び 4.10.3 のガス有害性試験・評価方法、により実施した。
上記業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。
2.曲げ成形性試験
JIS K6902の曲げ成形性試験(A法)に準拠し、室温、10mmRにて外曲げ及び内曲げ成形を行い、化粧シート表面の割れの有無を確認した。
【0032】
【表1】

【0033】
比較例1では、熱可塑性フィルムの重量が重く有機成分が多くなったため、化粧板(4)は不燃性に劣った。
また、比較例2ではポリエステル不織布を用いたため、化粧板(5)は不燃性に劣った。
一方、実施例1〜3で得られた化粧板(1)、(2)及び(3)は、表面層は、熱可塑性フィルムまたは、壁紙からなる表面層材料で構成され、芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されているため、不燃性に優れ、薄膜化に対応でき、常温での曲げ加工性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の化粧板は、良好な曲げ加工性及び不燃性を有し、薄膜化に対応可能なものである。そして、表面層には、従来の熱可塑性フィルムや壁紙と同様の表面層基材が使用できるため、豊富な色柄から自由に選択でき、且つ、公共施設等における不燃性を有する材料の規制を受ける壁等の用途に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0035】
12 不燃化粧板
15 表面層
15A 表面層材料
16 芯材層
16A 芯材層材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と芯材層とが積層された構造を有する不燃化粧板であって、
前記表面層は、意匠面となる熱可塑性フィルムもしくはシートまたは壁紙からなる表面層材料で構成され、表面層材料の坪量は、40〜400g/mであり、
前記芯材層は、ガラスクロス又はガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されることを特徴とする、不燃化粧板。
【請求項2】
全体厚みが0.5mm以下である、請求項1に記載の不燃化粧板。
【請求項3】
前記ガラスクロスを基材とするプリプレグは、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有する樹脂組成物をガラスクロスに含浸してなる、請求項1又は2に記載の不燃化粧板。
【請求項4】
25℃での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工性を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の不燃化粧板。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−183780(P2012−183780A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49792(P2011−49792)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】