説明

不純物としてクロロラクタムを含むラクタムの接触水素化による精製方法

【課題】不純物としてのクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムを、金属触媒、溶剤および残基−NH2、−NH−またはN<を有する化合物の存在下で、水素化反応で精製する方法。
【解決手段】上記残基−NH2、−NH−または−N<は水素化反応で生じるHClを捕獲するアミンの残基であり、上記溶剤はアミンによるHClの捕獲で形成されたアミンクロロハイドレートを可溶化できる有機溶剤であり、クロロラクタムの形での有機塩素元素のモル%に対するアミンのモル%のモル比は0.5以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物としてクロロラクタムを含む環式ラクタムの接触水素化反応による精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高品質のポリアミドを製造するには純度の高いラクタムを用いる必要がある。ほとんど検出不可能な極めて少量の不純物が存在してもポリアミドの品質は低下する。汚染したラクタムを用いて製造したポリアミドは黄変する傾向を示し、分子量分布が広くなる。
【0003】
不純物の種類は使用するラクタム製造プロセスに依存する。光−オキシム化で製造したラクタムはこの形式のプロセスに特有な塩素化不純物(クロロラクタム)を含む。こうした不純物が存在すると製造したポリマーの特性が低下する。従って、この塩素化不純物は除去する必要がある。
【0004】
当業者に周知の精製方法の一つは水素化触媒を用いて水素でラクタムを処理することである。この方法では塩素をHClの形にして除去する。従って、クロロラクタムはラクタムへ変換される。
しかし、下記文献に記載のように、ラネーニッケルのような従来の水素化触媒は直ぐに不活性する。
【特許文献1】特公昭47-37632号公報
【0005】
上記特許の発明者は、この不活性の原因は従来から使用している反応媒体(ラクタム/有機溶剤)中へのHCl副成物の溶解度が低く、触媒の活性サイトをブロックすることにあるとしている。
【0006】
マンガン変性ニッケルにHCl副成物を中和するためにアルカリ性水酸化物を加えたものをベースにした触媒を使用すると触媒系の寿命が改善するが、完全に満足にいくものではない。
下記文献はSiO2上にNiとBaF2を析出させたものをベースにした触媒を提案している。
【特許文献2】特公昭47-37633号公報
【0007】
この触媒の寿命は対照として引用した触媒よりは良いが、不活性化は観測される。
水素化による精製プロセスでは水素に対して不活性な溶媒が必要であり、特に芳香属化合物の使用は禁止される。しかし、この芳香属化合物は一般にラクタムの極めて優れた溶剤である。
下記文献には芳香族溶剤を用いた水素化方法が記載されている。
【特許文献3】特公昭46-23743号公報
【0008】
この特許では溶剤の水素化を避けるために芳香族溶剤の媒体に可溶なアミンを加えることを勧めている。アミンは溶剤の水素化を抑制するために用いるので、存在する塩素化不純物に対して少量だけ使用される。さらに、反応によって生じる酸性度を中和するために、少なくとも初期の有機塩素に対して化学量論量のアルカリ性の水酸化物を媒体に加える。
【0009】
従って、水素化によるラクタムの精製ではアルカリ性水酸化物溶液の添加が必要であり、ラクタムの溶剤が芳香族の場合にはアミンの添加も必要であると思われる。しかし、これらの添加物が存在すると使用する触媒の不活性化を防ぐことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
理論に拘束されるものではないが、本発明者は上記触媒の不活性化は触媒上に形成される塩素塩の結晶化によるものと考える。
本発明の目的は、クロロラクタムの水素化によるラクタムの精製方法を改良し、特に、使用する水素化触媒の不活性化を防ぐというニーズに答えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、金属触媒、溶剤および−NH2、−NH−またはN<の残基を有する化合物の存在下での水素化反応による、不純物としてのクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムの新規な精製方法を提供する。
本発明方法の特徴は下記にある:
(1)上記残基−NH2、−NH−または−N<が水素化反応で生じるHClを捕獲するアミンの残基であり、
(2)上記溶剤はアミンによるHClの捕獲で形成されたアミンクロロハイドレート(水和物)を可溶化することができる有機溶剤であり、
(3)クロロラクタムの形での有機塩素元素(chlore organique elementaire)のモル%に対するアミンのモル%のモル比は0.5以上にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一つの実施例では上記モル比は1〜100であり、好ましくは5〜40である。
本発明の一つの実施例では上記アミンは直鎖または分岐鎖を有する第一、第二および第三アルキルアミンR1NH2、R12NHおよびR123Nから成る群の中から選択される。ここで、R1=Cn2n+1、n=2〜12、R2=Cm2m+1、m=l〜3、R3=Cp2P+1、p=l〜3である。このアミンはtert-オクチルアミンであるのが好ましい。
本発明の一つの実施例では有機溶剤は非環式または環式の脂肪族飽和炭化水素溶剤、好ましくはシクロヘキサン、芳香族溶剤、イオン性液体から成る群の中から選択される。
【0013】
本発明はさらに、金属触媒、溶剤および−NH−残基を有する化合物の存在下で水素化反応によって不純物としてのクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムを精製する方法を提供する。
本発明のこの方法の特徴は上記残基−NH−が系中に存在するラクタムのものまたは水素化反応で生じたものであり、溶剤は生成したラクタムハイトレートを可溶化することができるイオン性有機液体である点にある。
【0014】
本発明の一つの実施例では上記有機溶剤が下記の式(I)または(II)のジアルキルイミダゾリウム誘導体を含むイオン性液体から成る群の中から選択される:
【0015】
【化2】

【0016】
(ここで、
RはCH3、−(CH2n−CH3、−CH2−Cn2n+1、フェニルで、nは1〜10の整数、
AはAlCl3、SbCl32、TaCl5、TaF5、NbCl5、TiCl4で、
BはSbF6、BF4、PF6、CF3SO3を表す)
【0017】
本発明の一つの実施例では上記イオン性液体が上記定義のRを有する式(I)のジアルキルイミダゾリウムのカチオンと、ヘキサフルオロボレートBF6またはヘキサフルオロホスフェイトPF6のアニオンとの間の組合せ(会合)よって形成される。
本発明の一つの実施例では上記反応は100〜250℃の温度で実施される。
本発明の一つの実施例では被精製ラクタムがラウリルラクタムまたはカプロラクタムである。
本発明の一つの実施例では被精製ラクタムは5重量%以下のクロロラクタムを含む。
本発明の一つの実施例では上記の水素化段階を、水素を含み、必要に応じてアミンをさらに含む溶剤に溶かしたラクタムの流れを触媒上に連続的に流して実施する。
【0018】
本発明では不純物としてクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムの精製を、金属触媒、水素化反応で生じるHClを捕獲するアミンおよび形成されたアミンクロロハイドレートを可溶化することができる溶剤の存在下での水素化反応によって除去する。
【0019】
本発明方法を用いると収率が改善され、クロロラクタムのラクタムへの変換率が改善される。
精製すべきラクタム中の不純物としてのクロロラクタムの比率はラクタムの全重量の5重量%以下、好ましくは1重量%以下、さちに好ましくは0.1重量%以下である。
【0020】
上記アミンは塩化水素酸との塩が使用する反応溶剤中に完全または部分的に可溶なものを選択する。形成された塩の溶解度は除去すべきクロロラクタムの量に依存する。すなわち、精製を行なう場合には、形成されるアミン塩の溶解度を超えないようにし、選択した溶剤中の精製すべきラクタムの濃度を適切に選択する。
【0021】
こうしたアミンの存在で行うことで触媒の不活性化を避けることができる。すなわち、反応溶剤中のクロロハイドレートを上記溶解度にしたことと、触媒が不活性化されない、または、ほとんど不活性化されないことによって、形成されたアミンクロロハイドレートは触媒上に付着、析出することはない。
【0022】
使用するアミンの量はクロロラクタムの形で媒体中に存在する有機塩素元素の量に依存する。そのため、アミンのモル%と溶液中に最初に存在する有機塩素元素のモル%との間の比に対応するモル比を定義する。
本発明では上記定義の比は0.5以上でなければならず、好ましくは1〜100の間、さらに好ましくは5〜40の間である。
【0023】
本発明方法では、有機媒体中に可溶か一部可溶な任意のアミン、例えば直鎖または分岐鎖を有する第一、第二および第三アルキルアミンR1NH2、R12NHおよびR123Nが使用できる。ここで、R1=Cn2n+1、n=2〜12、R2=Cm2m+1、m=l〜3、R3=Cp2P+1、p=l〜3である。
【0024】
本発明の一つの実施例では、アミンは使用する有機溶剤中に完全または部分的に可溶である。第一アミンが好ましく、tert-オクチルアミン[(CH2)3C-CH2-C(CH3)2NH2]が特に好ましい。
【0025】
アミンのクロロハイドレートを可溶化する有機溶剤は一般に非環式または環式の脂肪族飽和炭化水素溶剤、芳香族溶剤、イオン性液体からなる群の中から選択される。
非環式または環式の脂肪族飽和炭化水素溶剤はヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、直鎖または分岐鎖を有するドデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、置換されていてもよいシクロドデカンおよびこれらの混合物の中から選択でき、好ましい有機溶剤はシクロヘキサンである。
芳香族溶剤はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クメンおよびこれらの混合物の中から選択できる。
本発明で使用できるイオン性液体は例えば下記文献に記載されている。
【特許文献4】国際特許第WO 01/83353号公報(第4頁および実施例)
【0026】
イオン性液体は下記式(I)または(II)のジアルキルイミダゾリウム誘導体を含むのが好ましい:
【0027】
【化3】

【0028】
(ここで、
RはCH3、−(CH2n−CH3、−CH2−Cn2n+1、フェニルで、nは1〜10の整数、
AはAlCl3、SbCl32、TaCl5、TaF5、NbCl5、TiCl4
BはSbF6、BF4、PF6、CF3SO3を表す)
【0029】
また、上記の定義のRを有する式(I)のジアルキルイミダゾリウムのカチオンと、ヘキサフルオロ硼酸塩BF6またはヘキサフルオロホスフェイトPF6のアニオンとの間の会合(association)で形成されるイオン性液体も好ましい。
本発明の一つの実施例では、非環式または環式の脂肪族飽和炭化水素溶剤または上記のイオン性液体からなる群の中から選択される溶剤が好ましく使用される。
【0030】
本発明方法では支持体(担体)または固体上に析出した金属をベースにした任意の水素化触媒が使用できるが、アルミナ、シリカ、シリカアルミナまたは石炭上に析出させたNiまたはPdをベースにした触媒を使用するのが好ましい。
【0031】
反応温度は一般にアミン塩の分解温度以下、好ましくは100〜250℃にする。圧力は1〜100バール、好ましくは5〜50バール、さらに好ましくは10〜40バールである。
【0032】
本発明の精製方法は、不純物のクロロラクタムを含む環式のラクタム、特にポリアミド合成の基礎的なモノマーであるC6ラクタム(カプロラクタム)またはC12ラクタム(ラウリルラクタム)の精製に使用できる。すなわち、これらのラクタムの精製に本発明方法を用いることによってクロロラクタムが除去され、それをラクタムに変えることができ、しかも、アミンの存在によって、ラクタム自体の水素化時に生じるHClの捕獲を防ぐことができる。従って、本発明方法は、その塩が反応媒体中に不溶な場合、触媒上にラクタムのクロロハイドレートが析出するのを避けることができる。すなわち、アミンの存在によって触媒の不活性化が避けられ、クロロラクタムのラクタムへの変換収率が向上する。
【0033】
本発明の他の実施例では、金属触媒と、溶剤と、−NH−残基を有する化合物との存在下で水素化反応によって、不純物としてのクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムを精製する方法において、上記残基−NH−が系中に存在するラクタムの残基または水素化反応で生じた残基であり、上記溶剤が生成したラクタムハイトレートを可溶化することができるイオン性液体であることを特徴とする方法が提供される。上記のイオン性液体は、形成されたラクタムのクロロハイドレートを可溶化することができる。
【0034】
イオン性液体を存在させることによって触媒の不活性化を避けることができ、クロロラクタムのラクタムへの変換収率が改善する。
【0035】
本発明の好ましい実施例で使用される金属触媒はPd/CまたはNi/SiO2である。
好ましいイオン性液体はbmimPF6で、ラクタムとHClと間の水素化反応中に形成されるラクタムのクロロハイドレートは25℃で3%、100℃で35%可溶化される。そのため、可溶化したラクタムのクロロハイドレートが触媒上に析出することはない。従って、触媒の寿命、クロロラクタムのラクタムへの変換収率が改善される。
【0036】
本発明の一つの実施例では、本発明のラクタム精製方法が連続法で行われる。この場合には必要に応じてアミンを含んだ溶剤中の精製すべきラクタムの流れを水素と一緒に触媒上に連続的に供給する。
単位時間当たりの容積速度は0.1〜10 hr-1にすることができるが、1〜5 hr-1にするのが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。比較例はアミンを含まないテストに対応する。
比較例1c
クロロラウリルラクタムの形で塩素を0.085重量%(有機塩素元素のモル数で0.024モル%)含むラウリルラクタム(PM 197)の10重量%シクロヘキサン溶液を調製した。
この溶液を水素(0.5 リットル/時)と一緒に20バールの圧力下に反応装置に連続的に供給した(86グラム/時)。反応装置は温度Tが150℃で、商業的水素化触媒のNi-NiO-SiO2-Al2O3を収容している(Qc量=40ml)。
反応装置から出た混合物は先ず最初に沈降分離で液相と気相とを分離し、溶剤を蒸発した後にラウリルラクタムを回収した。得られた結晶を水で洗浄して生じた塩を除去した。
【0038】
水素処理後に、最初にラウリルラクタムの炭素原子に固定していた有機塩素はHCl形でラクタム自体に結合している。水で清浄することでHClを回収でき、このHClは塩化物の形で定量できる。
ラクタム中にクロロラウリルラクタムの形で存在する初期の有機塩素の量、ラクタムに固定されて残留する残留有機塩素元素の量および洗浄水中に回収された塩化物の量を測定する。これらの量は全て重量%で表す。
クロロラクタムの変換率は下記の比で求めた:
【0039】
【数1】

【0040】
総括塩素(総括Cl、bilan chlore)は下記の比で求めた:
【数2】

【0041】
この総括塩素に不足(100%に対する差)がある場合には、その不足分は触媒上への製品の蓄積を表し、従って、触媒寿命の低下を意味する。
tert−オクチルアミン(PM=129)のアミンのモル%と溶液中に存在する初期有機塩素元素のモル%で表されるクロロラウリルラクタムの%との比に対応する比率を求めた。
下記の[表1]には各種パラメータ(温度T、モル比、アミンの重量%、触媒の種類と量、反応装置の連続運転時間)を関数にしたクロロラクタムのラクタムへの変換率と総括塩素の比率をまとめて示してある。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1
比較例1cと同じ反応条件下で、0.2重量%のtert-オクチルアミン(0.155モル%)と、10重量%のラウリルラクタムとを含むシクロヘキサン溶液を供給した。
ラクタム中の最初の有機塩素の量は0.09重量%(従って、溶液中の塩素元素は0.025モル%)で、精製後の残留塩素の含有量は0.026重量%であった。洗浄水中の塩化物の量は0.01重量%であった。
従って、クロロラクタムの変換率は71%であり、総括塩素は40%である。
【0044】
実施例2
上記と同じ反応条件下で、1重量%(0.775モル%)のtert-オクチルアミンと、10重量%のラウリルラクタムとを含むシクロヘキサン溶液を供給した。
ラクタム中の最初の有機塩素の量は0.077重量%(従って、溶液中の塩素元素は0.022モル%)で、精製後の残留塩素の含有量は0.036重量%であった。洗浄水中の塩化物の量は0.025重量%であった。
従って、クロロラクタムの変換率は53%であり、総括塩素は80%である。
【0045】
比較例3c
塩素を0.0565重量%含むラウリルラクタムの10重量%シクロヘキサン溶液を調製した。
この溶液を水素(0.5 リットル/時)と一緒に20バールの圧力下に反応装置に連続的に供給した(82グラム/時)。反応装置の温度Tは180℃で、商業的水素化触媒の40ml の0.5%Pd/Cを収容している。
反応装置から出た混合物は先ず最初に沈降分離で液相と気相とを分離し、溶剤を蒸発した後にラウリルラクタムを回収した。得られた結晶を水で洗浄して生じた塩を除去した。
ラクタム中の残留有機塩素量は0.0337重量%である(ガスクロマトグラフィCPGで測定)。洗浄水中の塩化物の量は0.01重量%である。
【0046】
実施例3
上記と同じ反応条件下で、1重量%(0.775モル%)のtert-オクチルアミンと、10重量%のラウリルラクタムとを含むシクロヘキサン溶液を供給した。
ラクタム中の最初の有機塩素の量は0.073重量%(従って、溶液中の塩素元素は0.020モル%)で、精製後の残留塩素の含有量は0.011重量%であった。洗浄水中の塩化物の量は0.063重量%であった。
クロロラクタムの変換率は85%で、総括塩素は100%である。
【0047】
比較例4c
塩素を0.103重量%含むラウリルラクタムの10重量%シクロヘキサン溶液を調製した。
この溶液を水素(0.5 リットル/時)と一緒に20バールの圧力下に反応装置に連続的に供給した(82グラム/時)。反応装置の温度Tは180℃で、80mlの商業的水素化触媒のNi-NiO-SiO2-Al2O3を収容している。
反応装置から出た混合物を複数の時間後にサンプリングした。各混合物は先ず最初に沈降分離で液相と気相とを分離し、溶剤を蒸発した後にラウリルラクタムを回収した。得られた結晶を水で洗浄して生じた塩を除去した。
反応性能を反応剤との接触時間の関数で評価した。結果は下記の通り。
【0048】

【0049】
反応装置の出口で回収した塩化物の量は、有機塩素の形で初期ラクタム中に存在していた塩素の一部のみ(<10%)で構成される。形成された塩化物は触媒上に蓄積し、触媒性能を劣化させる。
【0050】
実施例4
上記反応条件下で、1.2重量%(0.930モル%)のtert-オクチルアミンと、10重量%のラウリルラクタムとを含むシクロヘキサン溶液を供給した。ラクタム中の初期有機塩素量は0.1重量%である(すなわち溶液中に0.028モル%)。
20時間運転後の精製後の残留有機塩素含有量は0.003重量%である。洗浄水中の塩化物の量は0.095重量%である。
クロロラクタムの変換率は97%で、総括塩素は98%である。
250時間運転後の変換率は96%、総括塩素は97%である。
【0051】
実施例5(イオン性液体)(アミンは含まない実施例)
湿気を除去するためにアルゴン雰囲気下に置いたステンレス鋼製オートクレーブ中に50gのbmimPF6と、2.64gのPd/C触媒と、5gの塩素化されたラクタム(全塩素量=0.17%)とを導入した。
オートクレーブに20バールの水素を入れて加圧し、反応媒体を20バールの水素圧下で攪拌下に100℃で6時間加熱した。
反応後、50gメタノールを加えて反応媒体を流動させ、濾過して触媒を分離した。
メタノールは減圧蒸発させ、結晶化したラクタムを濾過し、少量のアセトニトリルおよび水で洗浄し後、80℃の乾燥器中で乾燥した。
その全塩素含有量は0.005重量%である(処理前の初期の比率は0.17重量%)。従って、クロロラクタムのラクタムへの変換率は97%である。
【0052】
比較例5c
実施例5の操作を繰り返したが、上記イオン性液体を50gのシクロヘキサンに代えた。
処理後かつ洗浄後の全塩素含有率は0.13%である(処理前の初期の比率は0.17重量%)。従って、クロロラクタムのラクタムへの変換率は23.5%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物としてのクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムを、金属触媒と、溶剤と、−NH2、−NH−またはN<の残基を有する化合物との存在下で、水素化反応によって精製する方法において、
(1)上記−NH2、−NH−または−N<の残基が水素化反応で生じるHClを捕獲するアミンの残基であり、
(2)上記溶剤は上記アミンによるHClの捕獲で形成されたアミンクロロハイドレートを可溶化することができる有機溶剤であり、
(3)クロロラクタムの形での有機塩素元素のモル%に対する上記アミンのモル%のモル比を0.5以上にする、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記モル比を1〜100、好ましくは5〜40にする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記アミンが直鎖または分岐鎖を有する第一、第二および第三アルキルアミンR1NH2、R12NH、R123N(ここで、R1=Cn2n+1、n=2〜12、R2=Cm2m+1、m=l〜3、R3=Cp2P+1、p=l〜3)から成る群の中から選択する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記アミンがtert-オクチルアミンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記有機溶剤が非環式または環式の脂肪族飽和炭化水素溶剤、芳香族溶剤、イオン性液体から成る群の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記有機溶剤がシクロヘキサンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不純物としてのクロロラクタムを含む6〜12の炭素原子を有する環式ラクタムを、金属触媒と、溶剤と、残基−NH−を有する化合物との存在下で、水素化反応によって精製する方法において、
上記残基−NH−が系中に存在するラクタムの残基または水素化反応で生じた残基であり、上記溶剤が生成したラクタムハイトレートを可溶化することができるイオン性液体であることを特徴とする方法。
【請求項8】
上記溶剤が下記の式(I)または(II)のジアルキルイミダゾリウム誘導体を含むイオン性液体から成る群の中から選択されるイオン性液体である請求項5または7に記載の方法:
【化1】

(ここで、
RはCH3、−(CH2n−CH3、−CH2−Cn2n+1、フェニルで、nは1〜10の整数、
AはAlCl3、SbCl32、TaCl5、TaF5、NbCl5、TiCl4
BはSbF6、BF4、PF6、CF3SO3を表す)
【請求項9】
イオン性液体が請求項8で定義のRを有する式(I)のジアルキルイミダゾリウムのカチオンと、ヘキサフルオロボレートBF6またはヘキサフルオロホスフェイトPF6のアニオンとの間の組合せによって形成される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
反応温度を100〜250℃にする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ラクタムがラウリルラクタムまたはカプロラクタムである請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
精製すべきラクタムのクロロラクタム含有量が5重量%以下である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記の水素化段階を水素を含む溶剤(アミンを含む場合もある)中に溶かしたラクタム流を触媒上に連続的に流すことで実施する請求項1〜12のいずれか一項に記載の精製方法。

【公表番号】特表2008−505165(P2008−505165A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519846(P2007−519846)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001794
【国際公開番号】WO2006/016060
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】