説明

不純物混入液の処理方法及び処理装置

【課題】簡易であるにも拘わらず高い処理能力を発揮することが可能な不純物混入液の処理方法、及び該処理方法に用いられる処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る処理方法は、液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液10を処理する方法であって、シリカゲル粉を堆積させることにより形成されたフィルタ2を用いて不純物混入液10に濾過処理を施す濾過工程を有する。本発明に係る処理装置は、液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液10を処理する装置であって、シリカゲル粉を堆積させることにより形成されたフィルタ2と、該フィルタ2に不純物混入液10を導入するための導入手段とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液を処理する方法、及び該方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体や金属等の加工対象物に切断、切削、又は研磨等の機械加工を施す場合、加工液が用いられる。加工液は、加工時の発熱を抑制する冷却剤、又は加工時に発生する摩擦を低減する潤滑剤として機能する。このため、加工液は、機械加工の精度や速度、更には加工能力を決定する重要な要素の一つである。
【0003】
しかしながら、加工対象物に機械加工を施すことにより、加工液には、加工対象物から生じる加工粉や、機械加工に用いられる装置や工具(例えば定盤或いはワイヤソー)の摩耗粉等の不純物粒子が混入することになる。そして、機械加工の進行に伴って、これらの不純物粒子が加工液中に蓄積され、次第に、加工液に不純物粒子が混入した不純物混入液の粘度が上昇し、これによって加工液の性能が劣化することになる。その結果、機械加工の精度や速度、更には加工能力が著しく減退することになる。
【0004】
従来は、定期的に不純物混入液の全て又は一部を除去して新しい加工液に入れ替えることによって、機械加工の精度や速度の減退、更には加工能力の減退を防止していた。一方、除去された不純物混入液は、産業廃棄物として処理されていた。
【0005】
加工対象物には貴重且つ高価な資源であるシリコン等が用いられており、該加工対象物から生じる加工粉も又、貴重且つ高価な資源である。又、機械加工に用いられる加工液は、高価である。
【0006】
更に、不純物混入液には、ダイヤモンド等の貴重な資源からなる砥粒や研磨粒子が含まれている。ここで、砥粒や研磨粒子は、加工液に懸濁させることによって機械加工に使用されたもの、或いは定盤やワイヤソー等の工具に固着されていて加工時に該工具から脱落したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−533325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記不純物混入液から加工液と加工粉等の不純物粒子とを分離することが出来れば、加工液の再利用が可能となる。更に、加工液から分離された不純物粒子を、その種類毎に選別することが出来れば、高価且つ貴重な資源からなる不純物粒子の再利用も可能となる。その結果、産業廃棄物の量が大幅に減少すると共に、加工液や不純物粒子の再利用に伴う経済的な効果も期待することが出来る。
【0009】
しかしながら、現状は、中空糸膜等を用いた膜フィルタを用いて不純物混合液に濾過処理を施す方法や、遠心分離法が提案されているに過ぎない。膜フィルタを用いて不純物混合液に濾過処理を施す方法には、その処理能力が低い問題がある。又、遠心分離法に用いる装置は非常に高価である。尚、本願と関連する技術として、特許文献1に、飲料物中に生じる濁りを抑制又は低減する方法が開示されている。
【0010】
そこで本発明の目的は、簡易であるにも拘わらず高い処理能力を発揮することが可能な不純物混入液の処理方法、及び該処理方法に用いられる処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1の処理方法は、液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液を処理する方法であって、シリカゲル粉を堆積させることにより形成されたフィルタを用いて前記不純物混入液に濾過処理を施す濾過工程を有する。
【0012】
ここで、シリカゲル粉は、多孔質であり、大きな表面積を有している。又、前記フィルタには、シリカゲル粉の堆積によって、フィルタの表面から裏面へシリカゲル粉間を通過する複数の孔が形成されている。
【0013】
上記第1の処理方法においては、フィルタを構成するシリカゲル粉の作用により、フィルタを通過しようとする不純物混入液中の殆どの不純物粒子は、シリカゲル粉に吸着することによって凝集し、その結果、フィルタに形成されている孔の径(孔径)より大きな粒径を有する凝集物が形成されることになる。或いは、フィルタを構成するシリカゲル粉の作用により、フィルタを通過しようとする不純物混入液中の殆どの不純物粒子は、シリカゲル粉の表面に付着することになる。従って、不純物混入液中の殆どの不純物粒子がフィルタによって濾過されることになる。
【0014】
本発明に係る第2の処理方法は、上記第1の処理方法であって、前記濾過工程にて用いられるフィルタは、前記不純物混入液中の不純物粒子の粒径より大きな孔径を有している。
【0015】
上述した様に、シリカゲル粉の作用により、不純物混入液中の不純物粒子が凝集して、フィルタの孔径より大きな粒径を有する凝集物が形成される。或いは、シリカゲル粉の作用により、不純物混入液中の不純物粒子がシリカゲル粉の表面に付着する。従って、上記第2の処理方法の如くフィルタの孔径が不純物粒子の粒径より大きい場合であっても、不純物混入液中の不純物粒子は、その殆どがフィルタによって濾過されることになる。
【0016】
一方、上記第2の処理方法の如くフィルタの孔径を大きくすることにより、不純物混入液中の液状媒質はフィルタを通過し易くなる。従って、上記第2の処理方法によれば、処理能力が向上することになる。
【0017】
本発明に係る第3の処理方法は、上記第1又は第2の処理方法であって、前記フィルタによって濾過された残渣を除去する除去工程を更に有する。
【0018】
フィルタの処理性能が低下した場合、上記除去工程を実行する。これにより、フィルタによって濾過された残渣が除去され、その結果、フィルタの処理能力が回復することになる。
【0019】
本発明に係る第1の処理装置は、液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液を処理する装置であって、シリカゲル粉を堆積させることにより形成されたフィルタと、該フィルタに前記不純物混入液を導入するための導入手段とを具える。この処理装置を用いて、上述した処理方法を実施することが出来る。
【0020】
本発明に係る第2の処理装置は、上記第1の処理装置であって、前記フィルタは、前記不純物混入液中の不純物粒子の粒径より大きな孔径を有している。
【0021】
本発明に係る第3の処理装置は、上記第1又は第2の処理装置であって、前記フィルタによって濾過された残渣を除去する除去手段を更に具える。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る不純物混入液の処理方法及び処理装置は、簡易であるにも拘わらず高い処理能力を発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る処理方法に用いられる処理装置を示す図である。
【図2】図2は、加工液中にシリコン粒子が混入している不純物混入液に濾過処理を施した後のフィルタの外観の観察像を示した図である。
【図3】図3は、該フィルタの断面の観察像を示した図である。
【図4】図4は、該濾過処理によって抽出された処理液の観察像を示した図である。
【図5】図5は、加工液中にスズ粒子が混入している不純物混入液に濾過処理を施した後のフィルタの外観の観察像を示した図である。
【図6】図6は、上記処理装置の変形例を示した図である。
【図7】図7は、上記処理装置の他の変形例を示した図である。
【図8】図8は、上記処理方法に用いられるフィルタの変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態に係る処理方法は、液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液を処理する方法であり、例えば、以下に説明する不純物混入液に適用することが出来る。
【0025】
砥粒が固着されたワイヤソーを用いてシリコン結晶に切断加工を施す場合、加工液として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等、水溶性のグリコールを含んだ液状媒質が用いられる。この場合、切断加工の進行に伴って、加工液には、シリコン結晶から生じた加工粉(粒径が約百nmのシリコン粒子)が不純物粒子として混入し、これにより加工液にシリコン粒子が混入した不純物混入液が生成されることになる。
【0026】
又、サファイア基板に機械加工を施す場合、加工液として、灯油にオリーブ油を混ぜ込んだ液状媒質が用いられる。ここで、スズから形成された定盤がサファイア基板の機械加工に用いられた場合、機械加工の進行に伴って、加工液には、定盤の摩耗粉(粒径が約百nmのスズ粒子)が不純物粒子として混入し、これにより加工液にスズ粒子が混入した不純物混入液が生成されることになる。
【0027】
尚、上述した2つの不純物混入液は、本発明に係る処理方法によって処理することが可能な不純物混入液の例であり、本発明に係る処理方法の適用がこれらの不純物混入液に限定されることを示唆するものではない。即ち、本発明に係る処理方法は、液状媒質中に不純物粒子が混入している種々の不純物混入液に適用することが可能である。
【0028】
本実施形態に係る処理方法は、図1に示す処理装置を用いて実施される。該処理装置は、不純物混入液(10)が注入される容器(1)を具え、該容器(1)には、不純物混入液(10)を注入するための注入口(11)と、不純物混入液(10)の処理液を抽出する抽出口(12)とが形成されている。該処理装置は更に、容器(1)内にシリカゲル粉を投入して該シリカゲル粉を容器(1)の底部に堆積させることにより形成されたフィルタ(2)と、容器(1)の抽出口(12)から抽出される処理液を溜めて回収するための回収容器(3)と、該回収容器(3)が収容される収容室(4)と、該収容室(4)内の気圧を低下させる減圧装置(5)とを具えている。
【0029】
シリカゲル粉は、多孔質であり、大きな表面積を有している。又、フィルタ(2)には、シリカゲル粉の堆積によって、フィルタ(2)の表面から裏面へシリカゲル粉間を通過する複数の孔が形成されている。ここで、上記処理装置においては、フィルタ(2)に形成されている孔の径(孔径)が不純物混入液(10)中の不純物粒子の粒径より大きくなる様に、シリカゲル粉の粒径が調整されている。
【0030】
上記処理装置を用いて不純物混入液(10)を処理する場合、先ず、容器(1)にその注入口(11)から不純物混入液(10)を注入する。その後、減圧装置(5)を動作させることにより、収容室(4)内の気圧を低下させる。これにより、容器(1)の注入口(11)と抽出口(12)との間に気圧差が生じ、該気圧差によって容器(1)内の不純物混入液(10)は抽出口(12)側へ移動する。その結果、フィルタ(2)に不純物混入液(10)が導入されることになる。斯くして、減圧装置(5)は、フィルタ(2)に不純物混入液(10)を導入するための導入手段として機能することになる。
【0031】
上記の如くフィルタ(2)に不純物混入液(10)が導入されることにより、不純物混入液(10)に濾過処理が施されることになる。
【0032】
上記処理方法によれば、不純物混入液(10)中の殆どの不純物粒子がフィルタ(2)によって濾過され、液状媒質が処理液として容器(1)の抽出口(12)から排出されることになる。抽出口(12)から排出された液状媒質は、回収容器(3)に溜められて回収されることになる。従って、上記処理方法及び処理装置は、簡易であるにも拘らず高い処理能力を発揮することが出来る。
【0033】
ここで、本願発明者は、シリカゲル粉のフィルタ(2)によって不純物混入液(10)中の不純物粒子が濾過される原理を、以下の様に考えている。
先ず、水溶性のグリコールを含んだ液状媒質中にシリコン粒子が混入した不純物混入液(10)に、フィルタ(2)を用いて濾過処理を施した場合について説明する。この場合、不純物混入液(10)中では、シリコン粒子にグリコールが結合すると共に、該グリコールの親水基とシリカゲル粉の親水基とが互いに結合し、これにより、シリコン粒子はグリコールを介してシリカゲル粉に吸着する。そして、シリカゲル粉に吸着したシリコン粒子どうしが、両シリコン粒子にそれぞれ結合しているグリコールが互いに絡み合うことによって凝集する。即ち、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉の親水性相互作用により、フィルタ(2)を通過しようとする不純物混入液(10)中のシリコン粒子が、シリカゲル粉に吸着することによって凝集する。
【0034】
その結果、不純物混入液(10)中の殆どのシリコン粒子が、シリカゲル粉に吸着することによって凝集し、これによりフィルタ(2)の孔径より大きな粒径を有する凝集物が形成される。従って、不純物混入液(10)中のシリコン粒子は、その殆どが凝集物としてフィルタ(2)によって濾過される。
【0035】
次に、灯油にオリーブ油を混ぜ込んだ液状媒質中にスズ粒子が混入した不純物混入液(10)に、フィルタ(2)を用いて濾過処理を施した場合について説明する。この場合、不純物混入液(10)中では、スズ粒子は正極に帯電する。一方、シリカゲル粉は負極に帯電する。従って、スズ粒子は、シリカゲル粉に電気的に吸引されて、シリカゲル粉と強く結合する。即ち、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉の電気的相互作用により、フィルタ(2)を通過しようとする不純物混入液(10)中のスズ粒子が、シリカゲル粉の表面に付着する。
【0036】
その結果、不純物混入液(10)中の殆どのスズ粒子が、シリカゲル粉の表面に付着してフィルタ(2)により濾過される。
【0037】
つまり、上記処理方法は、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉と、不純物混入液(10)中の不純物粒子(シリコン粒子やスズ粒子等)との間に相互作用を生じさせることにより、シリカゲル粉に不純物粒子を吸着させて、該不純物粒子をフィルタ(2)によって濾過する方法と考えることが出来る。
【0038】
上記原理に鑑みれば、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉の粒径を小さくして、該シリカゲル粉の総表面積を大きくすることにより、シリカゲル粉の作用が不純物粒子に働き易くなる。しかし、シリカゲル粉の粒径を小さくし過ぎると、フィルタ(2)の孔径が小さくなる。特に、フィルタ(2)の孔径が不純物粒子の粒径より小さくなると、従来の膜フィルタと同様、処理能力が低くなる。よって、本発明の濾過工程にて用いられるフィルタ(2)は、上述した様に、不純物混入液(10)中の不純物粒子の粒径より大きな孔径を有している。
【0039】
上述した様に、シリカゲル粉の作用により、不純物混入液(10)中の不純物粒子が凝集して、フィルタ(2)の孔径より大きな粒径を有する凝集物が形成される。或いは、シリカゲル粉の作用により、不純物混入液(10)中の不純物粒子がシリカゲル粉の表面に付着する。従って、フィルタ(2)の孔径が不純物粒子の粒径より大きい場合であっても、不純物混入液(10)中の不純物粒子は、その殆どがフィルタ(2)によって濾過されることになる。
【0040】
一方、フィルタ(2)の孔径を大きくすることにより、不純物混入液(10)中の液状媒質はフィルタ(2)を通過し易くなる。従って、上記処理方法によれば、処理能力が向上することになる。
【0041】
この様に、本発明に係る処理方法及び処理装置においては、フィルタ(2)の孔径を不純物混入液(10)中の不純物粒子の粒径より大きくすることが出来る。従って、粘度の高い液状媒質中に約百nm〜数十μmの不純物粒子が高濃度(例えば10〜15wt%)で混入した不純物混入液にも、本発明に係る処理方法及び処理装置を適用することが可能である。
【0042】
本願発明者は、上記処理方法及び処理装置を用いて不純物混入液(10)を処理する実験を行い、不純物混入液(10)中の殆どの不純物粒子がフィルタ(2)によって濾過されることを、2種類の不純物混合液(10)について確かめた。
【0043】
[実験1]
処理対象として、ジエチレングリコールを含んだ加工液中に、粒径が約百nmのシリコン粒子が混入している不純物混入液(10)を用いた。又、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉として、粒径が約78μmのものを用いた。
【0044】
本実験では、シリコン粒子が混入する前の加工液、シリコン粒子が混入している不純物混入液(10)、及び濾過処理によって得られる処理液のそれぞれについて、光透過度を測定した。又、比較例として、目開きが2.5μmの濾紙を用いて不純物混入液(10)に濾過処理を施すことによって得られる処理液について、光透過度を測定した。尚、光透過度の測定には、ハック・カンパニー(HACH COMPANY)社製の分光光度計DR2500を用いた。ここで、使用する光の波長を500nmとした。
【0045】
又、フィルタ(2)を用いて不純物混入液(10)に濾過処理を施した後のフィルタの状態、及び濾過処理によって得られる処理液の状態を観察した。図2及び図3に処理後のフィルタの観察像が示され、図4に処理液の観察像が示されている。
【0046】
実験の結果、シリコン粒子が混入する前の加工液の光透過度が99.8%、シリコン粒子が混入している不純物混入液(10)の光透過度が0%、及び処理後の処理液の光透過度が95%であった。一方、比較例において得られた処理液の光透過度は、5.5%であった。
【0047】
実験の結果から、フィルタ(2)を用いて不純物混入液(10)に濾過処理を施すことにより、シリコン粒子が混入する前の加工液と同等の光透過度を有する処理液が得られることがわかった。従って、フィルタ(2)によって不純物混入液(10)中の殆どのシリコン粒子が濾過され、その結果、シリコン粒子を殆ど含まない加工液が処理液として抽出されることが確かめられた。
【0048】
観察像からも、図2及び図3に示す様にフィルタ(2)によって不純物混入液(10)中のシリコン粒子が濾過され、図4に示す様に光透過度の高い加工液が処理液として抽出されることがわかる。
【0049】
一方、目開きが2.5μmの濾紙では、処理液の光透過度が著しく低く、従ってシリコン粒子を殆ど濾過することが出来ていないことがわかる。よって、濾紙の濾過性能に比べて、シリカゲル粉のフィルタ(2)の濾過性能が著しく高いことがわかる。
【0050】
[実験2]
処理対象として、灯油にオリーブ油を混ぜ込んだ加工液中に、粒径が約百nmのスズ粒子が混入している不純物混入液(10)を用いた。又、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉として、粒径が約78μmのものを用いた。尚、実験に使用した不純物混入液(10)は、粘度が36.7mPa・s、水素イオン指数(pH)が4.3であった。
【0051】
実験の結果、図5に示す様にフィルタ(2)によって不純物混入液(10)中のスズ粒子が濾過されることが確かめられた。図示していないがこの実験においも、図4に示すのと同様、光透過度の高い加工液、即ちスズ粒子を殆ど含まない加工液が処理液として抽出されることが確かめられた。
【0052】
図6は、上記処理装置の変形例を示す図である。図6に示す様に、本変形例に係る処理装置は、図1に示す処理装置と同様、不純物混入液(10)が注入される容器(1)と、容器(1)内にシリカゲル粉を投入して該シリカゲル粉を容器(1)の底部に堆積させることにより形成されたフィルタ(2)とを具えている。本変形例に係る処理装置の容器(1)には、注入口(11)と抽出口(12)の他に、シリカゲル粉を投入するための投入口(13)が形成されている。
【0053】
本変形例に係る処理装置は更に、不純物混入液(10)によって満たされたタンク(61)と、該タンク(61)内の不純物混入液(10)を容器(1)の注入口(11)から容器(1)内へ流し込むポンプ(62)と、フィルタ(2)によって濾過された残渣を除去する除去装置(63)と、シリカゲル粉を容器(1)の投入口(13)から投入する投入装置(64)と、容器(1)の抽出口(12)から抽出された処理液が導入される第2のフィルタ(65)とを具えている。
【0054】
ここで、ポンプ(62)は、容器(1)内に流し込んだ不純物混入液(10)を加圧することが出来る。除去装置(63)は、回転と昇降とが可能な軸部(631)と、該軸部(631)の先端に設けられた掻き取り羽根(632)とから構成されている。投入装置(64)は、その内部にシリカゲル粉が充填されており、必要に応じて該シリカゲル粉を容器(1)内に投入することが出来る。又、第2のフィルタ(65)には、例えば膜フィルタが用いられる。
【0055】
上記処理装置を用いて不純物混入液(10)を処理する場合、先ず、ポンプ(62)を動作させることにより、タンク(61)内の不純物混入液(10)を容器(1)の注入口(11)から容器(1)内へ流し込むと共に、容器(1)内の不純物混入液(10)を加圧する。これにより、容器(1)内の不純物混入液(10)は、注入口(11)側から加圧されて抽出口(12)側へ移動する。その結果、フィルタ(2)に不純物混入液(10)が導入されることになる。斯くして、本変形例に係る処理装置においては、ポンプ(62)が、フィルタ(2)に不純物混入液(10)を導入するための導入手段として機能することになる。
【0056】
上記の如くフィルタ(2)に不純物混入液(10)が導入されることにより、不純物混入液(10)に濾過処理が施されることになる。不純物混入液(10)に濾過処理が施されることにより、図1に示す処理装置と同様、不純物混入液(10)中の殆どの不純物粒子がフィルタ(2)によって濾過され、液状媒質が処理液として容器(1)の抽出口(12)から排出されることになる。
【0057】
ここで、不純物混入液(10)中の不純物粒子の内、粒径が非常に小さいものはフィルタ(2)を通過して、抽出口(12)から排出される処理液に混入する虞がある。そこで、本変形例に係る処理装置の如く処理液を第2のフィルタ(65)に導入することにより、処理液に含まれている不純物粒子が第2のフィルタ(65)によって濾過され、その結果、不純物粒子を殆ど含まない液状媒質が得られることになる。
【0058】
不純物混入液(10)に濾過処理が施されることにより、フィルタ(2)の表面には、不純物混入液(10)中の不純物粒子が残渣として蓄積されることになる。残渣が蓄積されると、フィルタ(2)の孔が塞がってフィルタ(2)の処理能力が低下することになる。
【0059】
そこで、除去装置(63)の軸部(631)を降下させた後、該軸部(631)を回転させることによって掻き取り羽根(632)を回転させる。これにより、フィルタ(2)の表面に蓄積した残渣が、掻き取り羽根(632)によって掻き取られる。その後、軸部(632)の回転を停止させてから、該軸部(632)を上昇させることによって掻き取り羽根(632)を容器(1)から取り出す。これにより、フィルタ(2)の表面に蓄積した残渣が除去されることになる。その結果、フィルタ(2)の処理能力が回復することになる。
【0060】
一方、除去装置(63)によって残渣を除去する際に、フィルタ(2)を構成するシリカゲル粉の一部が残渣とともに除去される虞がある。シリカゲル粉の一部が除去されることによってフィルタ(2)を構成するシリカゲル粉の量が少なくなると、フィルタ(2)の濾過性能が低下する虞がある。そこで、残渣の除去に伴ってフィルタ(2)を構成するシリカゲル粉の量が少なくなった場合、投入装置(64)を動作させることにより、容器(1)内にシリカゲル粉を投入して補充する。これにより、フィルタ(2)の濾過性能の低下が防止されることになる。
【0061】
図7は、上記処理装置の他の変形例を示す図である。ここで、図7に示す処理装置は、図6に示す処理装置を改良したものである。図7に示す様に、容器(1)内にシリカゲル粉を投入して堆積させたフィルタ(2)(図6)に代えて、シリカゲル粉が充填されたカートリッジタイプのフィルタ(20)を採用してもよい。
【0062】
カートリッジタイプのフィルタ(20)を採用することにより、図7に示す様にフィルタ(20)を容器(1)の側面に沿って配置することが可能である。この様な配置によれば、容器(1)の底面に、残渣を排出するための排出口(14)を設けることが出来る。よって、除去装置(63)の掻き取り羽根(632)を回転させるだけで、フィルタ(20)の表面に蓄積した残渣を排出口(14)から排出することが出来る。よって、掻き取り羽根(632)を容器(1)から取り出す必要がなく、従って、残渣の除去が容易である。
【0063】
尚、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。上記実施形態においては、フィルタ(2)を形成する粉体としてシリカゲル粉を用いたが、本発明はこれに限られるものではない。具体的には、液状媒質の種類及び性質、並びに液状媒質中に混入している不純物粒子の種類及び性質等に応じて、フィルタ(2)を形成する粉体の種類を変更することが可能である。該粉体には、シリカゲル粉の他に、活性炭粉、ゼオライト粉、モレキュラーシーブス粉等を採用することが出来る。
【0064】
上記実施形態においては、シリカゲル粉を容器(1)内に堆積させることによりフィルタ(2)を形成していたが、本発明はこれに限られるものでない。例えば、フィルタ(2)は、シリカゲル粉を固着させた繊維から構成されていてもよいし、該繊維を布状に織ったものから構成されていてもよい。又、図8に示す様に、カラム(21)にシリカゲル粉等の粉体を充填したものを、フィルタ(2)として用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
(10) 不純物混入液
(2) フィルタ
(5) 減圧装置(導入手段)
(62) ポンプ(導入手段)
(63) 除去装置(除去手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液を処理する方法であって、シリカゲル粉を堆積させることにより形成されたフィルタを用いて前記不純物混入液に濾過処理を施す濾過工程を有する、不純物混入液の処理方法。
【請求項2】
前記濾過工程にて用いられるフィルタは、前記不純物混入液中の不純物粒子の粒径より大きな孔径を有している請求項1に記載の不純物混入液の処理方法。
【請求項3】
前記フィルタによって濾過された残渣を除去する除去工程を更に有する請求項1又は請求項2に記載の不純物混入液の処理方法。
【請求項4】
液状媒質中に不純物粒子が混入している不純物混入液を処理する装置であって、シリカゲル粉を堆積させることにより形成されたフィルタと、該フィルタに前記不純物混入液を導入するための導入手段とを具える、不純物混入液の処理装置。
【請求項5】
前記フィルタは、前記不純物混入液中の不純物粒子の粒径より大きな孔径を有している請求項4に記載の不純物混入液の処理装置。
【請求項6】
前記フィルタによって濾過された残渣を除去する除去手段を更に具える請求項4又は請求項5に記載の不純物混入液の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−115678(P2011−115678A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273013(P2009−273013)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】