説明

不織布の製造方法及び製造装置

【課題】繊維ウエブに対する凹凸及び/又は開孔形状の賦形と不織布化とを同時に行うことができると共に、取り扱いの楽な空気を用いることや繊維の飛び散りを効果的に抑制することから、製造装置等の簡易化等を図ることもできる不織布の製造装置及び製造装置を提供すること。
【解決手段】凹凸形状と通気構造を有する支持体41に繊維ウエブを乗せて搬送しながら、支持体41上の繊維ウエブに、スリット状のノズル47から吐出させた高速の熱風をあてて、繊維ウエブを支持体41に沿わせ、繊維ウエブに凹凸及び/又は開孔形状を賦形する不織布の製造方法であり、ノズル47から吐出させる熱風を、繊維ウエブを構成する熱可塑性繊維の融点以上の温度にして賦形と同時に繊維同士を融着させると共に、該繊維ウエブ及び支持体41を通過した熱風を、ノズル47とは反対側に配したスリット状の吸い込み口48から吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造方法及び製造装置に関する。本発明に従い製造された不織布は、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつを始めとする各種の吸収性物品の構成材料として好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
凹凸形状を有する支持体上の繊維ウエブに熱風や水流を当てて、該繊維ウエブに凹凸形状を付与する不織布の製造方法が知られている。
例えば、特許文献1には、一対の通気性コンベア間に熱可塑性繊維を含有する繊維ウエブを通し、該繊維ウエブを挟持した状態で搬送する間に、該繊維ウエブの表面に空気を噴射して、コンベアの凹部に繊維ウエブを追随させて該繊維ウエブに凹凸を形成した後、該繊維ウエブを加熱し上記熱可塑性繊維を融着して、凹凸を有する不織布を形成する技術が記載されている。
また、特許文献2には、突起を有する支持体に繊維ウエブを置いて、該繊維ウエブに高速水流を噴射することにより、突起状の繊維を分配させて開口を付与する技術が記載されている。
また、特許文献3には、繊維が自由度を有する状態である繊維集合体に、主に気体からなる流体を噴きあてることで、繊維配向、繊維粗密又は繊維目付けの1又は2以上が調整された不織布を製造する不織布の製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−229255号公報
【特許文献2】特開昭62−69867号公報
【特許文献3】特開2008−2034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術においては、空気の噴射による凹凸形状を賦形した後に、繊維ウエブの加熱による熱可塑性繊維の融着を行っている。また、繊維ウエブ及び繊維ウエブを通過した空気を、繊維ウエブの広い面を吸引することにより回収している。また、特許文献1の技術においては、一対の通気性コンベア間に挟持した状態の熱可塑性繊維に空気を噴射することで、繊維ウエブの繊維が飛び散ることを防止している。
特許文献2の技術においては、水流により開口を付与しているため、開口の付与と熱処理による不織布化とを同時に行うことはできない。
特許文献3の技術においても、繊維ウエブの不織布化は、主に気体からなる流体を噴きあてた後に行っている。
【0005】
本発明は、繊維ウエブに対する凹凸及び/又は開孔形状の賦形と不織布化とを同時に行うことができ、製造時間の短縮等を図ることができると共に、取り扱いの楽な空気を用いることや繊維の飛び散りを効果的に抑制することから、製造装置等の簡易化等を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凹凸形状と通気構造を有する支持体に繊維ウエブを乗せて搬送しながら、該支持体上の該繊維ウエブに、スリット状のノズルから吐出させた高速の熱風をあてて、該繊維ウエブを該支持体に沿わせ、該繊維ウエブに凹凸及び/又は開孔形状を賦形する不織布の製造方法であって、前記ノズルから吐出させる熱風を、前記繊維ウエブを構成する熱可塑性繊維の融点以上の温度にして賦形と同時に繊維同士を融着させると共に、該繊維ウエブ及び前記支持体を通過した熱風を、前記ノズルとは反対側に配したスリット状の吸い込み口から吸引する不織布の製造方法を提供するものである。
【0007】
また本発明は、繊維ウエブを、凹凸形状と通気構造を有する支持体に乗せた状態で搬送する搬送機構と、支持体に乗って搬送される繊維ウエブにスリット状のノズルから吐出させた熱風を当てると共に、繊維ウエブ及び前記支持体を通過した熱風を、該ノズルとは反対側に配したスリット状の吸い込み口から吸引する熱風の供給及び回収装置とを備えた不織布の製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の不織布の製造方法及び製造装置によれば、繊維ウエブに対する凹凸及び/又は開孔形状の賦形と不織布化とを同時に行うことができ、製造時間の短縮等を図ることができると共に、取り扱いの楽な空気を用いることや繊維の飛び散りを効果的に抑制することから、製造装置等の簡易化等を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態の不織布の製造装置及びそれを用いた不織布の製造方法の概略を示す模式図である。
【図2】図1の装置の一部を拡大して示す模式断面図である。
【図3】(a)凹凸形状及び通気構造を有する支持体の一例の一部を拡大して示す平面図、(b)その支持体の側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の不織布の製造装置及びそれを用いた不織布の製造方法の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。まず第1の実施形態について説明する。
図1には、第1実施形態の製造方法及びその実施に好適に用い得る不織布の製造装置を示す図である。
図1に示す不織布の製造装置1は、繊維ウエブ11を、凹凸形状と通気構造を有する支持体41に乗せた状態で搬送する搬送機構と、支持体41に乗って搬送される繊維ウエブ11にスリット状のノズルから吐出させた熱風を当てると共に、繊維ウエブ及び前記支持体を通過した熱風を、該ノズルとは反対側に配したスリット状の吸い込み口から吸引する熱風の供給及び回収装置42とを備えている。
【0011】
製造装置1は、図1に示すように、ウエブ製造部20、予備加熱部30、賦形部40及び巻き取り部50を有している。
ウエブ製造部20としては、例えば、図示するようなカード機21を用いることができる。不織布10の具体的な用途に応じ、カード機21に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。カード機21によって製造された繊維ウエブ11は、その構成繊維どうしが緩く絡合した状態にあり、シートとしての保形性を獲得するにはいたっていない。また、繊維ウエブ11は、構成繊維として、熱可塑性繊維を含んでいる。
【0012】
賦形部40は、図1に示すように、繊維ウエブ11を、凹凸形状と通気構造を有するドラム状の支持体41に乗せた状態で搬送するドラム式の搬送機構と、繊維ウエブ11に対して熱風を高速で当てると共に、繊維ウエブ11及び支持体41を通過した熱風を回収する熱風の供給及び回収装置42を備えている。
【0013】
ドラム状の支持体41は、図示しないモータ等からの動力を受け、図示しない水平軸周りを図1中矢印43方向に連続して回転するようになされている。ドラム状の支持体41は、少なくとも、繊維ウエブ11が当接する外周面に凹凸形状を有しており且つ厚み方向に空気が貫通可能な構造を有している。凹凸形状と通気構造を有するドラム状の支持体41としては、例えば、特開平2−229255号公報に記載の通気性コンベアを構成する網状材を、図示しない円筒状の形状保持部材により筒状の形態に維持したもの等を用いることができる。同公報に記載の網状材は、図3に示すように、網目状に形成されており、且つ表面に凹凸が形成されている。凹凸の高低差hは、例えば、1〜10mmに設定することが好ましい。また、凸部の数は0.5〜25個/cm2に設定されていることが好ましい。網状材を筒状に維持する前記形状保持部材としては、例えば、周面に多数の通気用の開孔を有する剛直材からなる円筒体を挙げることができる。そのような円筒体は、例えば、円盤や放射状に配された棒状材等の任意の構成の連結材により回転軸に固定され、該回転軸周りを回転する。
【0014】
熱風の供給及び回収装置42は、図2に示すように、ドラム状の支持体41の外周面に近接配置された熱風噴射ボックス44と、該支持体41の内側(回転軸側)に且つ支持体41に近接させて配置された熱風回収ボックス45とを備えている。熱風噴射ボックス44は、ダクト44aにより空気加熱送風部46に接続されており、空気加熱送風部46により供給された熱風をスリット状のノズル47から噴射する。熱風回収ボックス45は、ダクト45aにより空気加熱送風部46に接続されている。そして、スリット状のノズル47から噴射され、繊維ウエブ11及び支持体41を通過した熱風が、スリット状の吸い込み口48から吸引され、ダクト45aを経由して空気加熱送風部46に還流するようになされている。
スリット状のノズル47から噴射される熱風は、繊維ウエブ11に上方から垂直に吹き付けられる。この熱風の吹きつけにより、繊維ウエブ11は、支持体41の凹凸に追随した形状に変形し、該繊維ウエブ11に、支持体41の凹凸形状に沿った凹凸形状、又は支持体41の凸部に対応する部分に孔があいた開孔形状が形成される。凹凸形状に沿った凹凸形状は、不織布の凹凸形状の凸部部分に開孔を有するものであっても良い。
【0015】
スリット状のノズル47及びスリット状の吸い込み口48は、それぞれ、繊維ウエブの長手方向(流れ方向)と交差する方向、より詳細には繊維ウエブの長手方向(流れ方向)と直交する方向に延びている。スリット状のノズル47の幅W1(図2参照)は、2〜10mmであることが好ましく、スリット状の吸い込み口48の幅W2(図2参照)は、20〜60mmであることが好ましい。吸い込み口48の幅W2は、ノズル47の幅W1の2〜10倍、特に4〜8倍であることが好ましい。また、吸い込み口48の開口面積は、ノズル47の開口面積の2〜10倍、特に4〜8倍であることが好ましい。
空気加熱送風部46としては、公知のファン及び公知の加熱装置を用いることができ、例えば、ファンは耐熱型のターボファンやシロッコファン等、加熱装置は電気式のシーズヒーターや蒸気ヒーター等が使用できる。
【0016】
スリット状の吸い込み口48からの吸入を行うことで、吸引するエアー流速が速くなるため、吸引により支持体上の繊維を保持した状態でノズル47からの熱風を受けることができ、同時に吸い込み口48で熱風を吸引して熱風の跳ね返りを抑えるため繊維の飛び散りや舞い上がりを防ぐことができる。
また、吸引した熱風を空気加熱送風部46に還流する際に、ノズル47への供給の手前で分岐することが好ましい。分岐することにより、吸い込み口48の吸引風量よりノズル47からの噴出し風量を減らす条件とすることが可能となるからである。なお、分岐した熱風は、例えば、ノズル47の周囲を断熱壁で囲った空間を作り、そのエリア内に放出することで、ノズル47の温調精度を高め、吸い込み口48での温度低下を抑えることができる。このことにより、高いエネルギー効率で運転が可能である。
【0017】
本実施形態の製造装置1は、図1に示すように、賦形部40より上流側に、予備加熱部30を有している。予備加熱部30は、通気性のベルトコンベア31及び該ベルトコンベア31に載せた繊維ウエブに対してエアスルー方式で熱風を貫通させる熱風処理装置32を備えている。予備加熱部30は、賦形部40で噴射する熱風よりも低温で且つ低速の熱風を吹き付ける。また、賦形部40で凹凸形状及び/又は開孔形状を付与された不織布10は、公知の巻き取り機構によりロール状に巻き取られる。
【0018】
上述した不織布の製造装置1で、不織布10を製造するには、ウエブ製造部20で製造した繊維ウエブ11を、賦形部40に送り、賦形部40において繊維ウエブ11を、凹凸形状と通気構造を有するドラム状の支持体41に乗せた状態で搬送しながら、該支持体41上の該繊維ウエブ11に対して、熱風噴射ボックス44におけるスリット状のノズル47から噴射させた熱風を吹き付ける。
この際、ノズル47から噴射する熱風は、繊維ウエブ11を構成する熱可塑性繊維の融点以上の温度とし、また、ノズル47から噴射され、繊維ウエブ11及び支持体41を通過した熱風を、スリット状の吸い込み口48から吸引する。
これにより、繊維ウエブ11に対する凹凸又は開孔形状の賦形と同時に繊維ウエブ11を構成する熱可塑性繊維同士が融着し、繊維シート11に不織布としての強度が付与される。
【0019】
繊維ウエブ11に吹き付ける熱風の温度は、繊維ウエブ11を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0〜70℃高いことが好ましく、5〜50℃高いことがより好ましい。熱可塑性繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリアクリルニトリル系等、またはこれら2種類以上からなる芯鞘型、サイドバイサイド型の複合繊維等を挙げることができる。
【0020】
熱可塑性繊維として、低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、繊維ウエブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。繊維ウエブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点+0℃〜高融点成分の融点−10℃であることがより好ましく、低融点成分の融点+5℃〜高融点成分の融点−20℃であることが更に好ましい。
繊維ウエブ11及び不織布10は、熱可塑性繊維を、30〜100質量%含んでいることが好ましく、より好ましくは40〜80質量%である。繊維ウエブ11及び不織布10は、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)を含んでいてもよい。
【0021】
繊維ウエブ11に吹き付ける熱風の流速は、前述したようにスリット状の吸い込み口48からの吸入を行うことで、エアスルー方式の熱風処理を行う一般的な条件に比して高速とすることができる。例えば、繊維ウエブ11に吹き付ける熱風の流速を、10〜80m/秒と高速とすることができる。繊維ウエブ11を賦形する際の熱風の風速は、賦形性と風合いの観点から20〜50m/秒とすることがより好ましい。
スリット状の吸い込み口48を介した高速の吸引を行うことで、繊維ウエブ11に吹き付ける熱風の流速を高速としても、繊維ウエブ11の繊維が飛び散りにくい。本実施形態においては、このように繊維が飛び散りにくいため、支持体41で搬送中の繊維ウエブ11の熱風吹き付け面を他の通気性部材で抑えることなく、繊維ウエブ11に対して熱風を吹き付けている。
【0022】
本実施形態によれば、繊維ウエブに対する凹凸及び/又は開孔形状の賦形と熱可塑性繊維の融着による不織布化とを同時に行うため、不織布の製造時間の短縮等を図ることができる。また、水や水蒸気とは異なり取り扱いの楽な加熱空気(ドライエアー)を用いてその賦形や不織布化を行い、また、繊維ウエブ11の熱風吹き付け面を他の通気性部材で抑えることなく熱風で処理することも可能であるため、不織布10の製造設備の簡易化を図ることができる。なお、繊維ウエブ11の熱風吹き付け面を他の通気性部材で抑えることなく高速の熱風で処理することは、本発明において必須ではない。本発明においては、繊維ウエブ11の繊維が飛び散りにくいため、繊維ウエブ11の熱風吹き付け面を他の通気性部材で抑えた場合であっても、その抑えに必要な部材や機構が簡易化できるため、不織布の製造設備の簡易化を図ることができる。
【0023】
賦形部40のノズル47は、空気加熱送風部46における温調とは別に温調することが好ましい。空気加熱送風部46から熱風噴射ボックス44までの距離が長いと、空気加熱送風部46で所定の温度に加熱した空気がノズル47から噴射されるまでの間に、熱風の温度が変動が生じやすい。ノズル47がスリット状で、熱風噴射ボックス44内の体積に比して該ボックス44の表面積が大きいため、そのような変動も生じやすい。そこで、空気加熱送風部46における温調に加えて、ノズル47の温調を行うことが好ましい。図2に示す熱風噴射ボックス44においては、ノズル47を挟む2箇所を含む合計8箇所にカートリッジヒータ49を配置し、測温手段(熱電対等)により測定した温度が予め設定した所定の温度となるように、ノズル47及び熱風噴射ボックス44の温度が制御されるようになっている。
【0024】
本実施形態の製造装置1は、上述したように、賦形部40より上流側に、予備加熱部30を有している。製造装置1を用いた不織布10の製造においては、高速の熱風により繊維ウエブ11を賦形する前に、該熱風より低速低温度の熱風を当てる予備加熱を行うことが好ましい。高速高温の熱風の吹き付けにより繊維ウエブ11に凹凸及び/又は開孔形状を付与する前に、繊維ウエブ11を予備加熱し、好ましくは若干の繊維融着を生じさせておくことで、賦形部40における繊維の飛び散りを一層確実に防止することができる。予備加熱は、熱風処理装置32のように、熱風を貫通させるものが好ましい。
【0025】
予備加熱の際の熱風の温度は、繊維ウエブ11を構成する熱可塑性繊維の融点−0℃から熱可塑性繊維の融点+50℃の範囲であることが好ましく、熱可塑性繊維の融点+5℃から熱可塑性繊維の融点+30℃の範囲であることがより好ましい。なお、熱可塑性繊維が、低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、低融点成分の融点を熱可塑性繊維の融点と考える。
また、予備加熱の際の熱風を吹き付ける流速は、3m/秒以下であることが好ましく、0.5〜2m/秒であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態の製造装置1は、前述したように、ノズル47及び吸い込み口48を備えた熱風の供給及び回収装置42を、繊維ウエブ11の流れ方向に複数有しており、これにより順次処理を行う。これにより、高速運転の場合に起こりがちな融着不足にも容易に対応することができる。繊維ウエブの搬送速度は、特に制限されるものではないが、例えば、50〜200m/秒と高速とすることもできる。
また、繊維ウエブ11に対して吹き付ける熱風の温度は、複数の装置42,42・・で総て同じであっても良し、総てが相互に異なっていても良い。例えば、上流側に配置された装置42から下流側に配置された装置42に向かって、吹き付ける熱風の温度を次第に高くしても良いし、上流側に配置された装置42から下流側に配置された装置42に向かって、吹き付ける熱風の温度を次第に低くしても良い。また、5個の装置中、一部の装置と他の残りの装置とで温度を異ならせても良い。
このように、熱風の供給及び回収装置42を複数用いることで、高速運転時においても繊維の舞い上がりを防ぐことができ、製造する不織布の形状、厚み、風合い、吸液性能等を制御することができる。
【0027】
賦形部40で凹凸形状及び/又は開孔形状を付与された不織布10は、前述した巻き取り部50で、ロール状に巻き取られ、その状態で保管される。また、それに代えて、賦形部40で凹凸形状及び/又は開孔形状を付与された不織布10を、巻き取ることなく、そのまま使い捨て衛生用品の製造ラインに導入しても良い。
【0028】
図4は、本発明の第2の実施形態の不織布の製造装置及びそれを用いた不織布の製造方法の概略を示す模式図である。第2の実施形態については、第1の実施形態と相違する点について主として説明し、同様の点には同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施形態においては、図4に示すように、凹凸形状と通気構造を有する支持体が、4本のロールに架け渡された無端状の通気性コンベア41’となっており、賦形部40においては、該支持体41’に乗せて搬送される繊維ウエブ11に対して、高速及び高温の熱風が吹き付けられる。この通気性コンベア41’は、図3に示す網状材と同一の構造を有している。
また、第1実施形態におけるのと同様の構成を有する熱風噴射ボックス44及び熱風回収ボックス45が、支持体41’及び繊維ウエブ11を挟んでその上下に配されている。
【0029】
第2実施形態の装置及び方法においても、熱風噴射ボックス44のスリット状のノズル47から繊維ウエブ11の構成繊維の融点以上の温度の熱風を吹き付ると共に、繊維ウエブ11及び支持体41’を通過した熱風を、熱風回収ボックス45のスリット状の吸い込み口48から吸引する。これにより、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果が奏し得られる。
【0030】
本発明で得られる不織布10は、その凹凸及び/又は開孔形状等を生かした種々の分野に適用できる。例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン、大人用おむつ、パッドなどの使い捨て衛生物品の分野における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、更には対物用のワイパーなどとして好適に用いられる。
【0031】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、ドラム状の支持体41は、剛直材からなり、形状保持部材を用いなくても筒状の形態を維持するものであっても良い。また、繊維ウエブを乗せる支持体としては、平面状の基盤の片面に、凸部が散点状に分散配置されたもの等であっても良い。また、その場合の凸部の平面視形状は、円形、楕円形、四角形、五角形等、任意の形状とすることができる。また、平面内の一方向及びその直交方向それぞれに凸部と凹部とが連続的に形成された凹凸プレート等を支持体として用いることもできる。
【0032】
また、熱風の供給及び回収装置42は、一つのみ配置しても良いし、繊維ウエブ11の流れ方向に2〜4個あるいは6個以上並べて配置することもできる。また、前記実施形態においては、熱風噴射ボックス44に熱風を送る空気加熱送風部46が、同時に、熱風回収ボックス45に吸引力を発生させる手段となっていたが、熱風回収ボックス45に吸引力を発生させる手段が、熱風噴射ボックス44に熱風を送る空気加熱送風部46とは別に設けられていても良い。また、不織布10は単層の構造のものに限られず、多層構造であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 不織布の製造装置
10 不織布
11 繊維ウエブ
20 ウエブ製造部
30 予備加熱部
40 賦形部
41,41’ 支持体
42 熱風の供給及び回収装置
44 熱風噴射ボックス
45 熱風回収ボックス
46 空気加熱送風部
47 スリット状のノズル
48 スリット状の吸い込み口
50 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状と通気構造を有する支持体に繊維ウエブを乗せて搬送しながら、該支持体上の該繊維ウエブに、スリット状のノズルから吐出させた高速の熱風をあてて、該繊維ウエブを該支持体に沿わせ、該繊維ウエブに凹凸及び/又は開孔形状を賦形する不織布の製造方法であって、
前記ノズルから吐出させる熱風を、前記繊維ウエブを構成する熱可塑性繊維の融点以上の温度にして賦形と同時に繊維同士を融着させると共に、該繊維ウエブ及び前記支持体を通過した熱風を、前記ノズルとは反対側に配したスリット状の吸い込み口から吸引する不織布の製造方法。
【請求項2】
前記ノズル自体を温調する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記高速の熱風により賦形する前に、該熱風より低速低温度の熱風を当てる請求項1又は2記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記支持体がドラム状である、請求項1〜3の何れかに記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記熱風の風速が、20〜50m/秒であり、ウェブの搬送速度が、50〜200m/秒である請求項1〜4の何れかに記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記ノズル及び前記吸い込み口を備えた熱風の供給及び回収装置を、繊維ウエブの流れ方向に複数配置した、請求項1〜5の何れかに記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の不織布の製造方法により製造された不織布。
【請求項8】
繊維ウエブを、凹凸形状と通気構造を有する支持体に乗せた状態で搬送する搬送機構と、支持体に乗って搬送される繊維ウエブにスリット状のノズルから吐出させた熱風を当てると共に、繊維ウエブ及び前記支持体を通過した熱風を、該ノズルとは反対側に配したスリット状の吸い込み口から吸引する熱風の供給及び回収装置とを備えた不織布の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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