説明

不織布の製造装置及び不織布の製造方法

【課題】簡単な機構と低い水圧とを利用して、繊維ウェブを不織布化することが可能な不織布の製造装置及び不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】ウェブ状繊維層を搬送するネットコンベアと、該ネットコンベア上に配置された受けプレートと、該受けプレート上に配置され、該受けプレートに流体を噴射するWJマニフォールドと、を有する不織布の製造装置であって、前記流体は、前記受けプレート上で、前記繊維ウェブを交絡して不織布を形成させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造装置及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高圧流体流を繊維ウェブに噴射して構成繊維同士を交絡させることにより不織布を製造する技術は、公知である。こうした高圧液体流の噴射による不織布の製造では、移動するネットコンベア上に繊維ウェブを配置して走行させながら、10MPa(100kg/cm)程度の圧力の高圧流体流を繊維ウェブに噴射するのが一般的である。
【0003】
このような方法であると、高い圧力を必要とするため、エネルギーの消費効率が悪化してしまう。また、このような方法を行う装置/施設には、高い圧力に耐え得る構造が必要となり、必然的に装置のコストが高くなる。
【0004】
また、ネットコンベア上を移動する繊維ウェブに水などの高圧の流体流を噴射するため、流体流により発生する繊維ウェブの断片等がネットコンベアに絡み、ネットコンベアを汚染してしまい、ネットコンベアの洗浄/管理が煩雑となる。さらに、製造工程中に繊維ウェブが切断して発生するスラッジ等により、大がかりな排水の処理が必要となる。
【0005】
このような不具合を解消するため、本願発明者らは、特許文献1、2等のように、不透過性支持体上で処理を行う技術を開発した。また、本願発明者らは、特許文献3乃至5のように、走行安定性を向上させるため、細孔と脱液機能とを内蔵した多孔プレートを有するサクションドラムを用いたウォータージェット処理(WJ処理)技術を開発した。さらに、現在では、この多孔プレートとロールとを組み合わせた技術や、ネットを組み合わせた技術が開発されている(特許文献6参照)。しかしながら、繊維ウェブを安定に処理する技術は格段に進歩したが、一方で、装置は、さらに複雑となり、コスト的にも不利となっている。
【0006】
さらに、繊維ウェブをネット上で処理する方法では、ネットコンベア上に配置された繊維ウェブに高圧の流体流を噴射するため、繊維ウェブや交絡された繊維ウェブは、ネットコンベアに押し付けられると同時に、ネットコンベアを通じて高圧の流体流が通過することにより、ネットコンベアの開口状態に応じた孔が形成される。その結果、不織布にネットコンベアの模様が転写されネットコンベアの凹凸が転写されると同時に孔あき模様が付されることとなり、不織布の品質が制限を受けることになる。ネットコンベアにより不織布に転写される模様の不連続性を避けるため継目のない、いわゆるエンドレスなネットコンベアを利用する方法も採用されているが、コスト的に不利であり、また、メンテナンスが面倒となるという問題もある。
【特許文献1】特開昭57−39268号公報
【特許文献2】特開昭58−132155号公報
【特許文献3】特開昭61−6355号公報
【特許文献4】特開昭62−125057号公報
【特許文献5】特開昭62−125058号公報
【特許文献6】特開昭62−149954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、簡単な機構と低い水圧とを利用して、繊維ウェブを不織布化することが可能な不織布の製造装置及び不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による不織布の製造装置は:
ウェブ状繊維層を搬送するネットコンベアと、
該ネットコンベア上に配置された受けプレートと、
該受けプレート上に配置され、該受けプレートに流体を噴射するWJマニフォールドと、
を有する不織布の製造装置であって、
前記流体は、前記受けプレート上で、前記繊維ウェブを交絡して不織布を形成させることを特徴とする。これにより、低圧でも効率よく不織布を製造させることが可能となり、従来の不織布の製造装置に必要とされていた高圧に耐え得る設備や水などの排流体を処理する施設を必要とすることなく、品質のよい不織布を製造することが可能となる。
【0009】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートは、前記流体を受け平滑な面を有する上部平滑部を有することを特徴とする。これにより、得られる不織布にしわなどの不均一な状態が生じにくくなり、品質がさらに向上する。
【0010】
本発明による不織布の製造装置において、前記の平滑な面の幅は、2mm以上50mm以下であることを特徴とする。これにより、流体流を確実に受けることができ、且つ受けプレート近傍における流体流の滞留を発生が軽減される。
【0011】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートの前記上部平滑部の厚みは、前記ウェブ状繊維層の搬送方向の前後に配置された部位の厚みよりも薄いことを特徴とする。これにより、流体流によるしわの発生等の不均一な状態がさらに軽減され、品質がさらに向上される。
【0012】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートの厚みの最大値は、2mm以上20mm以下であることを特徴とする。これにより、ウェブ状繊維層及び/又は不織布にしわ等の不均一な状態が発生しにくくなる。
【0013】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートと前記ネットコンベアとの距離は、0mm以上10mm以下であることを特徴とする。これにより、ネットコンベアの損傷が軽減されるとともに、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の走行安定性が向上する。
【0014】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートは、該受けプレートの下面部に追加の部材をさらに有することを特徴とする。これにより、受けプレートによるネットコンベアの損傷がさらに軽減される。
【0015】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートと前記WJマニフォールドとの組を複数組有することを特徴とする。これにより、製造の効率がさらに向上する。
【0016】
本発明による不織布の製造装置において、前記受けプレートの端部の厚みは、該端部以外の厚みよりも小さいことを特徴とする。これにより、受けプレート近傍における流体流の滞留がさらに軽減される。
【0017】
本発明による不織布の製造装置において、前記ネットコンベアは、エンドレスでなく、切れ目を継目によって結合されたプラスティック製ネットであることを特徴とする。これにより、製造コスト、ネット目付のコストも安価になると同時に、装置のメンテナンスにかかる費用も大幅に軽減される。
【0018】
本発明による不織布の製造装置において、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送を安定化する搬送安定手段をさらに有することを特徴とする。これにより、ネットコンベア及び/又は受けプレート上でのウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送安定性がさらに向上され、不織布の品質が向上する。
【0019】
本発明による不織布の製造装置において、前記流体の噴射方向に対して前記ネットコンベアの下流に配置され、前記流体を吸引する脱流体装置をさらに有することを特徴とする。これにより、受けプレート近傍における流体流の滞留が軽減され、不織布の品質が向上する。
【0020】
また、本発明による不織布の製造方法は:
ウェブ状繊維層をネットコンベア上で搬送する工程と;
該ネットコンベア上を搬送されたウェブ状繊維層を受けプレート上に導入する工程と;
該受けプレート上に導入されたウェブ状繊維層に、流体を噴射して、該ウェブ状繊維層を構成する繊維間を交絡させる工程と;
該交絡されたウェブ状繊維層をネットコンベアに復帰させる工程と;
を有することを特徴とする。これにより、低圧でも効率よく、且つ品質のよい不織布を製造することが可能となる。
【0021】
本発明による不織布の製造方法において、前記の流体の噴射圧は、1MPa以上10MPa以下であることを特徴とする。これにより、適切な交絡力を得つつ、設備投資の面でも有利となる。
【0022】
本発明による不織布の製造方法において、前記ウェブ状繊維層に噴射された流体を吸引する脱流体工程をさらに有することを特徴とする。これにより、流体流の滞留の発生が軽減される。
【0023】
本発明による不織布の製造方法において、前記ウェブ状繊維層は、化合繊短繊維をカード法でウェブ化した未結合カードウェブであることを特徴とする。これにより、いろいろな繊維種、繊維長、繊維径の組み合わせができ、且つ嵩高な状態の不織布が形成され得る。
【0024】
本発明による不織布の製造方法において、前記ウェブ状繊維層は、前記未結合カードウェブとキャリアシートとからなる複層シートであることを特徴とする。これにより、ウェブ状繊維層の搬送安定性がさらに向上されるとともに、不織布の品質も向上する。
【0025】
本発明による不織布の製造方法において、前記キャリアシートは、目付5g/cm以上50g/m以下の、ティシュ、湿式不織布、スパンメルト不織布、エアレイド不織布、乾式サーマルボンド不織布及びセルロース系スパンボンド不織布からなる群から選択された少なくとも1つの不織布であることを特徴とする。これにより、コスト面でも有利で、入手が容易で、得られる不織布の品質も保持され得る。
【0026】
本発明による不織布の製造方法において、前記ウェブ状繊維層は、予備結合処理を施されたものであることを特徴とする。これにより、搬送安定性がさらに向上されるとともに、不織布の品質も向上する。
【発明の効果】
【0027】
低い流体圧で繊維ウェブの交絡を行うことが可能となり、エネルギーコスト及び装置/施設コストを削減できるとともに、ネットコンベアの模様の転写が軽減された品質の高い不織布を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明による不織布の製造装置は、ウェブ状繊維層を搬送するネットコンベアと、該ネットコンベア上に配置された受けプレートと、該受けプレート上に配置され、該受けプレートに流体を噴射するWJマニフォールドと、を有する不織布の製造装置であって、前記流体は、前記受けプレート上で、前記繊維ウェブを交絡して不織布を形成させることを特徴とする。
【0029】
図1は、本発明による不織布の製造装置を示す概略図である。本発明による不織布の製造装置は、繊維ウェブ11などからなるウェブ状繊維層を搬送するネットコンベア101と、ネットコンベア101上のウェブ状繊維層に流体流の一種である水流ジェット16を噴射してウェブ状繊維層から不織布12を形成させるWJマニフォールド102と、ネットコンベア101上に配置されWJマニフォールド102からの水流ジェット16の噴射をウェブ状繊維層を介して受ける受けプレート100とを有する。
【0030】
また、本発明による不織布の製造方法は、ウェブ状繊維層をネットコンベア上で搬送する工程と;該ネットコンベア上を搬送されたウェブ状繊維層を受けプレート上に導入する工程と;該受けプレート上に導入されたウェブ状繊維層に、流体を噴射して、該ウェブ状繊維層を構成する繊維間を交絡させる工程と;該交絡されたウェブ状繊維層をネットコンベアに復帰させる工程と;を有することを特徴とする。以下、「ウェブ状繊維層をネットコンベア上で搬送する工程」を搬送工程と、「該ネットコンベア上を搬送されたウェブ状繊維層を受けプレート上に導入する工程」を導入工程と、「該受けプレート上に導入されたウェブ状繊維層に、流体を噴射して、該ウェブ状繊維層を構成する繊維間を交絡させる工程」を交絡工程と、「該交絡されたウェブ状繊維層とネットコンベアに復帰させる工程」を復帰工程と、それぞれ称する。
【0031】
(ウェブ状繊維層)
本発明において、ウェブ状繊維層は、天然繊維や化合繊維など、種々の繊維をウェブ化してなる繊維ウェブを有する。この繊維ウェブとしては、例えば、PE系、PP系、PET系、ナイロン系、アクリル系の合成繊維ステープル、熱融着性を有するシース・コア型複合繊維ステープル、及び化合短繊維をウェブ化して得た未結合カードウェブ並びにこれらの複合体であってもよい。また、ウェブ状繊維層は、これらの繊維ウェブとともに、キャリアシートを積層した複層シートであってもよい(図2参照)。これにより、本発明による不織布の製造装置の動作中のウェブ状繊維層の破断の発生を最小限に抑え、動作安定性を向上させるとともに、不織布の品質が向上する。
【0032】
これらのキャリアシートとしては、たとえばいわゆる木材パルプを主原料とするティシュ類、レーヨンペーパー、化繊紙などの湿式不織布類、PPステープル、PETステープル、レーヨン繊維等の単独あるいは混合によって製造される乾式サーマルボンド不織布類、PPやPEのスパンボンドやSMS系のスパンメルト不織布類、TCF(二村科学)、ベンリーゼ(旭化成)の商号で知られるセルロース系スパンボンド類などが挙げられる。5g/m未満であると、工業的に得られにくいばかりか、複層シートに十分な強度を与えることができない。また、50g/mよりも大きい場合、コスト的にも不利となり、また交絡がしにくくなる。
【0033】
また、ウェブ状繊維層としては、ウェブ状繊維層を構成する繊維に、この繊維間の結合性を向上させる予備結合処理を施したものを用いてもよい。この予備結合処理としては、ウェブ状繊維層を構成する繊維間の物理的/化学的結合性を向上させる処理であれば、特に限定されないが、0.5MPa(5kg/cm)以上3MPa(30kg/m)以下程度の水圧で行うウォータージェット処理や、1〜5Needle/cm程度の強度で行うニードルパンチや、熱エンボスロールで結合されるスポットボンディングや、熱風によって溶着するサーマルボンドなどが挙げられる。
【0034】
なお、以下、繊維ウェブは、ウェブ状繊維層の一例として称するものであって、ウェブ状繊維層を繊維ウェブのみに限定することを意図するものではない。
【0035】
(ネットコンベア)
本発明において、ネットコンベアは、本技術分野公知のものを用いればよく、例えば、銅製、ステンレス製等のメタルワイヤーを有するもの、プラスティック製のものなどが挙げられる。なかでも、動作的に安定で保守も容易なプラスティック製が好ましい。このプラスティック材料としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン610、カイノール(Kynol)、ケブラー(Kevler)、ポリフェニレンサルファイト等が挙げられ、処理する化学的環境や温度によって適宜選択すればよい。特にコストの面で、ポリエステル製が好ましい。
【0036】
本発明において、ネットコンベアのネット組織としては、平織(plain weave)、繻子織(satin weave)、綾織(twill weave)などが挙げられる。ネット組織としては、強度や通気性等を考慮して選択すればよい。なかでも、継ぎ手構造の作製が容易な平織が好ましい。
【0037】
本発明において、ネットコンベアのメッシュ(mesh;本数/2.54cmで表記)や空間率は、特に制約はない。従来のWJ法においては、ネットパターンの転写を抑えるためにメッシュ60〜100メッシュと細かく、空間率(opening area)も30%以下のものが使用されるが、本発明による不織布の製造装置では、このような制限はなく、保守しやすい15〜50メッシュで空間率も30%以上のもので充分使用が可能である。
【0038】
本発明において、ネットコンベアは、継ぎ手を有してもよく、その継ぎ手方法は、特に制約はなく、例えば、織継(woven lacing)とループ継(loop lacing)のいずれでもよい。従来技術では、通常のスパンレース向けには継ぎ手のないエンドレスタイプが選択されている。しかしながら、エンドレスタイプを使用すると、ネット交換には多大の時間がかかるため、交換が容易にできるような複雑な片持ち構造の高価な設備が必要になり、また一度損傷すると長時間の休転と多工数の工事が必要となり大きな保守コストがかかる。一方、本発明による不織布の製造装置では、このような制約はなく、エンドレスであっても、継ぎ手を有するものであってもよい。なかでも、取扱が楽でコストが安い点で、ループ継であることが好ましい。
【0039】
(繊維ウェブ)
繊維ウェブ11は、ネットコンベア101上に配置され、ネットコンベア101の動きに応じて、ネットコンベア101により、搬送される(搬送工程)。受けプレート100近傍まで搬送された繊維ウェブ11は、ネットコンベアから連続的に剥離され、ネットコンベアと非接触の状態となってネットコンベア101上に配置された受けプレート100の上部辺(図1において受けプレート100の上方)に押し上げられ、ネットコンベア101上に配置された受けプレート100の上部に搬送される(導入工程(P))。受けプレート100上に搬送された繊維ウェブ11は、この繊維ウェブ上でWJマニフォールド102からの水流ジェット16の噴射を受けて交絡され、不織布12となる(交絡工程(Q))。繊維ウェブ11から形成された不織布12は、受けプレート100の上部辺上を、ネットコンベア101の搬送力に従って受けプレート100上からネットコンベア101へと再び復帰する(復帰工程(R))。このようにして、繊維ウェブ11から形成された不織布12には、不織布12を構成する繊維間が交絡して結合し強度を有するようになる。一方、WJマニフォールド102から噴射された水流ジェット16は、ネットコンベア101を介して排出される。なお、このようにして得た水流ジェット16の水は、廃棄されてもよく、又は再度利用されてもよい。
【0040】
(受けプレート)
本発明において、受けプレートは、WJマニフォールドからの水流ジェットなどの流体流を受け得るものであれば、その形状、材質等は、特に限定されるものではない。受けプレートの基本構造について、図4A乃至図4Eを参照して、説明する。なお、本発明において、受けプレートは、「プレート」の一種のように表現しているが、それは全体形状を示しているのではなく上部平滑部位の重要性からそのような表現をしているのであって、全体形状はパイプ状やロッド上の円形断面形態をもつものも含まれる。
【0041】
本発明において、受けプレートは、以下の3つの部位から構成される。つまり、受けプレートは、水流ジェットなどの高圧の流体流を受ける上部平滑部431と、その高圧の流体流による変形・たわみが大きくならないようにするための支持部と、ネットコンベアと近接又は接触する底辺部432とを有する。
【0042】
上部平滑部431は、高圧の流体流を受け得る材質である必要があり、特に、磨耗に強い金属製であることが好ましい。上部平滑部431の形状は、平面をなし、且つ平滑であることが好ましい。これにより、WJマニフォールドから噴射された高圧の流体流の跳ね返り(リバウンド)が均一となり、また、ウェブ状繊維層/不織布が通過接触しても引っかかりが生じなくなる。
【0043】
上部平滑部431は、錆を生じないようにステンレス製であってもよく、また、上部平滑部431の表面をバフ研磨仕上げしたり、鋼鉄製の場合には表面にクロムメッキを施したり、さらに耐磨耗性の高いチタン鋼製であってもよく、上部平滑部431の表面をセラミック加工してもよい。
【0044】
本発明において、受けプレートの上部平滑部431の幅W1は、WJマニフォールドから噴射された流体流が受けプレート近傍で滞留しない寸法であれば、特に制約はない。これを満たすため、例えば、幅W1は、少なくとも50mm以下である必要がある。また、幅W1は、原理的には幅は狭いほどよいが、高圧ノズルが幅方向にずれる恐れもあるため、少なくとも2mm以上は必要である。さらに幅W1は、好ましくは約5mm以上約20mm以下である。これにより、WJマニフォールドからの流体流を確実に受けることができ、且つ流体流の滞留を生じることが軽減される。
【0045】
また、本発明において、受けプレートの底辺部432の形状は、本発明による不織布の製造装置の動作中、ネットコンベアと近接又は接触して配置されることを考慮して、ネットコンベアを損傷しない形状/材質であることが好ましい。例えば、ネットコンベアに接触する恐れがあるため、摩擦抵抗の小さな材質であることが望ましく、金属製支持部の下にPE樹脂板、テフロン(登録商標)樹脂板等を貼り付けたり、樹脂の焼き付け加工等を施してもよい。
【0046】
さらに、本発明において、受けプレートの支持部の形状としては、図4A乃至図4Eに示したように直方体、パイプやロッドの表面を研磨して上部平滑部としたもの、台形断面を持ったもの、台形の中央に細幅の突起をもつものなどが挙げられる。なかでも、この支持部の形状は、製作の容易性及び固定も簡便性の点で、台形の断面を有する形状であることが好ましい。以下、図4D及び図4Eを参照して、本発明における受けプレートの支持部の形状について説明する。
【0047】
本発明において、受けプレートの支持部の形状は、図4D及び図4Eに示すように、台形断面を持ったものや台形の中央にさらに突起のあるものでは、上述した上部平滑部431の幅はW1となり、ネットコンベアに接する幅はW2となる。W2はネットに接する幅であると同時にウェブ状繊維層/不織布がネットコンベアから離れている距離に相当する。従って、前述したように幅W1が重要であると同時に、幅W2も、あまり大きくすることはできない。受けプレートの幅W1は、好ましくは100mm以下、さらに好ましくは70mm以下である。
【0048】
本発明において、受けプレートの支持部に相当する厚さTは、受けプレートの剛性及びたわみやすさを考慮して選択すればよく、例えば、2mm以上20mm以下であることが好ましい。厚さTは、厚ければ厚いほど安定となるが、その反面ウェブ状繊維層を受けプレートに導く距離(ギャップ)が大きくなるため、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送上は好ましくない。またTが特に薄い場合では、2mm未満であると、たわみが生じやすくなり、その結果、受けプレートが特に中央部で懸垂してネットコンベアと接触してネットコンベアを損傷することとなる。また、たわみにより、ウェブ状繊維層及び/又は不織布にしわを発生させることともなる。一方、20mmより大きい場合、ウェブ状繊維層を受けプレート上に導く距離が大きくなり、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の走行安定性が低下してしまうこととなる。
【0049】
なお、受けプレートのたわみを少なくするには、受けプレートの重量が少なく容積を大きい受けプレートを用いることが挙げられ、例えばパイプ状又は中空状の受けプレートを用いることが挙げられる。また、受けプレートのたわみを少なくする他の方法としては、高圧電線を鉄塔に張る場合と同様、受けプレートの幅方向に引っ張り荷重を常にかけておくことが挙げられる。
【0050】
次に、図7乃至図10を参照して、受けプレートの形状例について説明する。
【0051】
図7は、受けプレートの一態様を示す横断面図である。図7に示した例は、受けプレートを薄くし、しかも剛性を保つ工夫を施した実施態様である。(a)は、2mm厚の2枚のステンレスプレートを3カ所で1mm幅のリブを入れて結合し5mmの厚さの受けプレートを作ったものである。(b)は、外径12mm、内径9mmの肉厚1.5mmのステンレス引抜管を5mm厚までプレスして、上辺を研磨して受けプレートとしたものである。(c)は、2mm厚のステンレスプレートに外径3mmのステンレスチューブ又はステンレスロッドを2本溶接してレール上の構造として受けプレートとしたものである。
【0052】
図8のグループの受けプレートは、中央に厚み部分を持ち、前後に薄い部分からなる構成を有する。厚み部分は、水平平滑になり、WJマニフォールドからの高圧の流体流を受ける部分となる。前後の部分は薄くなり、流体流が前後に排出されやすい構造となっている。幅30mm、厚さ5mmの寸法を持った受けプレートを例に説明する。
【0053】
図8の(a)は、10mm幅で厚さ2mmのプレートと、30mm幅で厚さ3mmのプレートとを上下に2枚重ね合わせたような構造を有する受けプレートである。この受けプレートの中央の10mmの部分は、高圧の流体流を受ける部分であり、この中央部分の前後の部分で、流体を排出させる。(b)は、中央部が5mmの厚さTを持ち、全体の幅は30mmで中央部が10mm幅、傾斜を持った前後10mmの断面が台形状をした受けプレートである。この中央部は、高圧の流体流を受け、前後の傾斜を利用して水流を排出させる。(c)は、前方の傾斜がなだらかで、後方の傾斜が急になっている。これは、原料であるウェブ状繊維層をスムーズに持ち上げると共に、後部から流体流が効率よく排出するのに適する形状である。
【0054】
受けプレートとネットコンベアとは、製造中、ネットコンベアの磨耗等の点で、互いに接触しないことが好ましいが、受けプレートとネットコンベアとの接触に備えて、受けプレートの下面部に種々の部材を設けてもよい。その例を示したのが、図9である。
【0055】
図9は、受けプレートの一態様を示す横断面図である。受けプレートの下面部には、テフロン(登録商標)などネットコンベアとの磨耗を防止する部材や、円柱など円周部分を有する部材など、受けプレートがネットコンベアに接触した場合であっても、ネットコンベアの磨耗を最小限に抑える部材を設けてもよい。図9(a)は、部材901として、下面部に厚さ1mm、幅15mmのテフロン(登録商標)シートを貼合した受けプレートである。図9(b)は、部材903として、下面部に直径5mmのステンレス管2本をレール状にはめ込んだ形状の受けプレートである。図9(c)は、部材906として、下面部に径7mmのステンレス管をはめ込んだ受けプレートである。いずれの受けプレートも、製造中、ネットコンベアと接触することがあっても、ネットコンベアの磨耗が最小限となる。なお、これら受けプレートに設ける部材901、903、906は、上述の目的を達成し得るものであれば、材質/形状/寸法には制限はない。
【0056】
受けプレートの長さは、装置の幅や構成に合わせて、種々選択すればよい。特に、受けプレートの長さは、不織布化するウェブ状繊維層のネットコンベア上での搬送方向に直交した幅方向の長さよりも長いことが好ましい。これにより、ウェブ状繊維層の幅方向に蛇行が起こることがあっても受けプレートから左右にはみ出すことはない。
【0057】
受けプレートは、長手方向の端部に、上述の流体流を排出し易くする構造を有していてもよい。図10は、受けプレートの一態様を示す図であって、(a)は、上面図を示し、(b)乃至(d)は、縦断面図を示す。図10において、(b)では、受けプレートの長手方向の全長で同じ厚さを有する例を示す。また、(c)及び(d)では、端部の厚みが中央部の厚みよりも小さい形状を有する例を示す。このような構造を設けることにより、受けプレートに噴射された流体をより効率よく流動させることが可能となる。
【0058】
本発明による不織布の製造装置は、複数の受けプレートを有してもよい。その例を示したのが、図11である。図11に示す不織布の製造装置は、ネットコンベア1101上に複数の受けプレート1100と、複数のWJマニフォールド1102とを有する。これにより、ウェブ状繊維層(繊維ウェブ)から不織布を製造する工程、特に交絡工程を、多段的に行うことが可能となり、製造の効率が向上する。
【0059】
次に、受けプレートの配置について、図5を参照して説明する。図5は、本発明による不織布の製造装置の配置を示す概略図である。図5によると、本発明による不織布の製造装置を構成する受けプレート500は、ネットコンベア501とWJマニフォールド502との間に配置される。受けプレート500とWJマニフォールド502との間では、ネットコンベア501上に配置されたウェブ状繊維層(図示せず)がネットコンベア501の搬送力に従って、通過する。
【0060】
受けプレート500の上部辺とWJマニフォールド502の下端との間の間隔Aは、繊維ウェブの通過を妨げず、液の集束性がよければ、特に制約はない。間隔Aは、20mm以上100mm以下であることが好ましく、30mm以上60mm以下であることがより好ましい。20mm未満であると、ウェブ状繊維層が厚さを持つ場合はWJマニフォールド502と接触してしまい、WJマニフォールド502からの水流ジェット(図示せず)の噴射を適切に受けることができない。また、100mmよりも大きい場合、高圧の流体流の直線性が失われると同時にエネルギーの低下が起こるため、ウェブ状繊維層を交絡する力(以下、交絡力とも称する。)が低下する。
【0061】
受けプレート500とネットコンベア501との間の間隔Bは、ネットコンベア501上を搬送されるウェブ状繊維層が受けプレート500の下部に巻き込まれることなく受けプレート500上に効率よく持ち上げられる距離であれば、特に制約はない。また、ネットコンベア501の摩耗等の点から、受けプレート500は、ネットコンベア501と接触しないことが好ましい。つまり、ウェブ状繊維層が受けプレート500上に効率よく持ち上げられるためには、間隔Bは出来るだけ小さいことが好ましい。しかしながら、WJマニフォールド502からの水流ジェットなど流体流の圧力に起因した受けプレート500のたわみの発生した場合、間隔Bが小さ過ぎると、ネットコンベア201に接触してしまうことになる。従って、間隔Bは、WJマニフォールド502から噴射される水流ジェットなどの流体流の圧力と、受けプレート500の剛性とに制約される。このようなことから、間隔Bの範囲は、0mm以上(軽い接触状態)10mm以下であることが好ましく、0mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。5mmを超えると、ウェブ状繊維層の受けプレート500下部への巻き込み・咬む込み等の走行トラブルが発生しやすくなる。10mmを越えると、さらに咬み込みの発生頻度が高くなる。受けプレート下部への咬み込みが発生すると、ウェブ状繊維層を適切に受けプレート500上に搬送することができなくなる。
【0062】
次に、本発明におけるウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送について、説明する。図1を参照すると、本発明において、繊維ウェブ11は、受けプレート100上を搬送される領域(以下、領域Pとも称する。)と、受けプレート100上に導入されてWJマニフォールド102により水流ジェット16などの流体流を噴射される領域(以下、領域Qとも称する。)とを経て不織布12となり、さらに、不織布12は、領域Qから受けプレート100上に復帰する領域(以下、領域Rとも称する。)を経て、さらに搬送される。
【0063】
本発明による不織布の製造装置及び/又は不織布の製造方法において、この技術の根幹をなす受けプレートを利用する方法を達成するには、ウェブ状繊維層の搬送時の微妙なスピードと、ウェブ状繊維層にかかる張力とを制御することが重要である。すなわち:
(1)ネットコンベアから広幅でしかも交絡前のウェブ状繊維層を剥離し、受けプレート上へ導入する際の領域Pにおけるスピードの変化と張力の制御;
(2)受けプレート上で交絡する場合におけるウェブに当然大きなブレーキがかかる領域Qにおけるスピードの変化と張力の制御;及び
(3)(2)で減速された交絡後のウェブ状繊維層(つまり、不織布)を元のネットコンベアのスピードに復帰させる際の領域Rにおけるスピードの変化と張力の制御;
を行うことが重要である。
【0064】
もし、ウェブ状繊維層がたるむようなことがあると、受けプレートの下にウェブ状繊維層が咬み込む頻度が多くなる。また、張力がかかりすぎるとウェブ状繊維層が切断されてしまうことになる。
【0065】
さらに、領域P、領域Q及び領域Rにおいて、張力がかからないようにすると、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の前後左右のバランスが崩れて、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送方向がネットコンベアに対して斜めになることがあり、又大きなしわが発生してしまうこともある。これらの事情を考慮した上で、搬送工程、導入工程、交絡工程及び/又は復帰工程を制御することが重要であり、この点、既に上述した通りである。また、上述に加えて、以下のような手段を採用してもよい。
【0066】
つまり、本発明による不織布の製造装置において、ウェブ状繊維層の受けプレートへの導入を安定して行うことを目的として、領域P近傍に搬送安定手段を設けてもよい。このような搬送安定手段の例を示したのが、図3A乃至図3Dである。
【0067】
図3A乃至図3Dは、本発明による不織布の製造装置において、ネットコンベアから繊維ウェブを剥離する位置を一定にする一態様である。図3Aは、ネットコンベア301とウェブ状繊維層とを挟むようにプレスロール311を設けた例を示す。プレスロール311は、ウェブ状繊維層の搬送速度に同期して、回転する。また、プレスロール311によるネットコンベア301とウェブ状繊維層とを挟む力は、ウェブ状繊維層に損傷を与えず、ネットコンベア上のウェブ状繊維層の搬送を妨害しない程度であれば、特に限定されることはない。これにより、ウェブ状繊維層とネットコンベアとは、プレスロールにより、より安定して搬送されることとなる。
【0068】
図3Bは、図3Aの例に加え、液体サチュレーター312を用いて、例えば水などの液体をウェブ状繊維層に噴霧する例を示す。ウェブ状繊維層に噴霧する液体としては、ウェブ状繊維層の材質に影響を与えない液状媒体であれば、特に制約はなく、例えば、水、水とエタノールとの混合溶媒などが挙げられる。これにより、ウェブ状繊維層が液体で飽和された後にプレスロールによりウェブ状繊維層に存在する空気を追い出し、ウェブ状繊維層がネットコンベアにより一層均一に抑えられる。その結果、ウェブ状繊維層のネットコンベア上での搬送安定性がさらに向上する。
【0069】
図3Cは、ネットコンベア301の下方にサクションボックス313を設けて、サクションボックス313を用いてウェブ状繊維層を吸引する例を示す。吸引圧は、特に限定されるものではない。これにより、ウェブ状繊維層への物理的な接触を伴わず、ウェブ状繊維層の搬送安定性をさらに向上することが可能となる。
【0070】
図3Dは、図3Cの例に加え、液体サチュレーター312を用いて、例えば水などの液体をウェブ状繊維層に噴霧しながらウェブ状繊維層を吸引する例を示す。この液体としては、上述の図3Bに示したものを用いればよい。これにより、ウェブ状繊維層の搬送安定性は、さらに向上する。
【0071】
これらのいずれにおいても、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送が安定して行える点で、好ましいが、プレスロール311を用いた図3A及び図3Bの場合、プレスロールへのウェブ状繊維層の巻き付きが発生する場合があり、不織布の製造装置の動作に支障を来すおそれがある。その点で、プレスロールを用いない図3C及び図3Dの例がより好ましい。
【0072】
なお、図3A乃至図3Dの例では、領域Pに上述の搬送安定手段を設ける例を示したが、領域Rにおいても、上述と同様の搬送安定手段を設けてもよい。領域Qを通過した交絡後のウェブ状繊維層は、領域Rでネットコンベアに復帰する。この領域Rでの交絡後のウェブ状繊維層は、物理的強度が与えられ、強固となっているので、比較的大きな張力をかけても差し支えない。このため、ネットコンベア上に接触させ、ネットコンベアの走行速度と同期させてやればよい。従って、領域Rにおいて上述と同様の搬送安定手段を設けることにより、ウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送安定性がさらに向上する。
【0073】
次に、領域QにおけるWJマニフォールドによる水流ジェットなどの流体流の噴射について、説明する。領域Qにおいて、ウェブ状繊維層は、図1及び図2等に示すように、受けプレート上に導入されると共に、受けプレート上でWJマニフォールドから高圧水など大量の流体流の噴射を受ける。
【0074】
WJマニフォールドによる水流ジェットなどの流体流の噴射圧は、1MPa(10kg/cm)以上10MPa(100kg/cm)以下であることが好ましく、2MPa以上8MPa以下であることがより好ましい。1MPa未満であると、ウェブ状繊維層に十分な交絡力を与えることができない。10MPaを越えると、受けプレートや装置の他の部材への衝撃が激しく、またウェブ状繊維層の損傷が発生することとなる。
【0075】
この大量の流体流は、ウェブ状繊維層の上面から衝突して、ウェブ状繊維層に繊維間の交絡エネルギーを与える。さらに、この流体流は、ウェブ状繊維層を通過し受けプレートの上部平滑部に衝突して跳ね返り、ウェブ状繊維層の裏面(つまり、ウェブ状繊維層のネットコンベア側の面)からさらに繊維間の交絡エネルギーを与える。このように交絡エネルギーを与えた流体流は、エネルギーを失って溢流水となって受けプレートの前後から流れ落ち、排出される。
【0076】
(脱流体装置)
本発明による不織布の製造装置は、ネットコンベアの下部で且つ受けプレートの下部とその前後に亘って、吸引機能を有する脱流体装置をさらに有してもよい。図1及び図2は、その例を示す。この脱流体装置の機能を要約すると、以下の通りである。
【0077】
(1)受けプレートに対してウェブ状繊維層の搬送方向の上流にある脱流体装置は、ウェブ状繊維層をネットコンベアに空気流と共に密着させることにより、ネットコンベアからの剥離位置である上述の領域Pを規定する役割を有する。
【0078】
(2)受けプレートの下部にある脱流体装置は、受けプレートの前後から溢流してネットコンベアに流れ落ちてくる流体流を吸引除去する役割を有する。
【0079】
(3)受けプレートに対してウェブ状繊維層の搬送方向の下流にある脱流体装置は、交絡終のウェブ状繊維層を吸引することにより、ネットコンベアに密着させ、ネットコンベアの速度と同期させて搬送する役割を有する。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
<複層シートの作製>
以下の通り、複層シートを作製した。
【0081】
原料のステープル繊維としてのポリエステル繊維(テイジン(株)製、6d×51mm、500kg/1ベール)を、開綿装置(大鳥機工(株)製)で開綿秤量して、フィード装置(FBK−536)に貯留した。これを、パラレルカード(商品名:JB Card)2台(鳥越紡機(株))を用いて、1.5m幅のカードウェブ(目付20g/m)を30m/分で調製した。このカードウェブをアンリーラー(大昌鉄工(株)製)から供給された13g/mのポリプロピレンスパンボンド(PPSB(Toray Saehan社製)、1.5m幅)上に積層して、複層シートを得た。
【0082】
<不織布の製造>
次に、図2に示す装置を以下の構成で使用して、この複層シートを不織布化した。
【0083】
(装置の構成)
(1)ネットコンベア:ポリエステル製の1/1平織のFOP−EKタイプ(日本フィルコン製)のプラスティックワイヤを使用した。なお、このワイヤのメッシュ(縦/横)は、26/28であり、空間率は、33%であり、通気度は、440cm/cm/秒であった。また、このネットコンベアの継ぎ手は、ループ継である。
【0084】
(2)高圧ポンプ:本田機工製Roto Jet Pump(最高圧力7MPa(70kg/cm))を使用した。
【0085】
(3)WJマニフォールド:WJマニフォールドとして、以下のWJノズルおよびノズルホルダーを有するものを用いた。つまり、ノズルホルダーとして、フィルター内装式でノズルプレート差し込み方式のノズルホルダー(化繊ノズル製作所製)を使用した。また、ノズルプレートは、図12のように、1600mm幅のステンレス鋼で中央部に2列で0.15φのノズルを10mm間隔で1420mmに亘って配置し、その両サイドに0.1mmφのノズルを4mm間隔でそれぞれ30mmに亘って配置したものを使用した。
【0086】
(4)受けプレート:図4Dで示した構造を持つ台形状の受けプレート(幅W1:10mm、厚さT:3mm、幅W2:30mm)を使用した。
【0087】
(5)脱流体装置と受けプレートとの配置:図2のような状態で、受けプレートをネットコンベアから約2mm浮いた状態で固定し、搬送方向に対し受けプレートの前側に約40mm、後方に60mm、全体で130mmの幅で吸引できるよう脱流体装置(サクションボックス)を配置した。なお、サクションボックスの天井には10mmφの孔をランダムに配置した厚さ15mmのナイロン樹脂製板を配置した。脱流体装置には、−10kPa Gauge以下の吸引圧で吸引するターボブロワーを接続した。
【0088】
上述の通り得た複層シートを、以下の様式で、上記ネットコンベア上に30m/分で供給した。つまり、吸引ゾーン(ネットコンベア下部に配置された脱流体装置に対応するネットコンベア上の領域)を通過しながら受けプレート上に搬送され、さらに再度ネットコンベア上に復帰させる様式で、複層シートを供給した。この状態で、上述のノズルから受けプレート上に6MPaの高圧水を噴射し、熱風乾燥機により乾燥・巻取りを行って不織布を得た。
【0089】
その結果、高圧水の噴射により、複層シートを構成する繊維が交絡結合され、高圧水処理がなされた部分はミシンで縫ったような状態になり、高圧水処理がなされなかった部分は厚みをもったまま畝状となった嵩高の不織布状を呈し、PPSBとカードウェブが強固に結合し、層間剥離現象は全く観察されなかった。また、風合いの点で、極めて柔らかくクッション性を持つ不織布が得られた。なお、これらの工程中、トラブルはなく、特にネットコンベア上への繊維の付着は全く観察されなかった。
【0090】
また脱流体装置から脱水された液を1Lのフラスコに受けて観察したが、若干気泡を含むほぼ透明状態でSS(Suspended solid)や浮遊繊維の存在は観察されなかった。1時間放置後に再び観察したところ全く透明状態となったが、フラスコの下部に沈殿分の存在は観察できなかった。
【0091】
(実施例2)
実施例1において脱流体装置に用いられているターボブロワーを休止させて、吸引効果をなくしたところ、吸引中止後5分程度経過すると、受けプレート上での複層シートの位置が不安定となり、左右2か所に縦ジワが発生しだした。さらに続行していくと、両側部が時々カールする現象が発生しだした。シワをとろうと試みたが、完全になくすことはできなかった。ターボブロワーを再稼働させると、ただちにシワもカールも消失し、安定状態に復帰した。乾燥巻取り後の不織布を観察したところシワの発生部分には流体流による交絡のない箇所が発見された。
【0092】
(実施例3)
図14に示したようなフローシートに従って不織布を製造した。
【0093】
[複層シートの作製]
原料のステープル繊維として、ポリエステル繊維(テイジン(株)製)を1.5d×41mmに変更した以外は、実施例1と同じ装置を用いて、25g/mのカードウェブを調製した。このカードウェブをアンリーラーから供給された15g/mのティシュ(王子ネピア(株)製、1.5m幅)上に積層して2層積層シートを得た。さらにこの2層積層シートの下に、ネットコンベア下に配置したアンリーラーから13g/mのPP−SMS(アブゴール社製)を供給し、3層積層シートの状態でネットコンベア上に供給した。
【0094】
[不織布の製造]
装置構成は、ネットコンベア、高圧ポンプ、サクションブロワーは実施例1と同一のものを用いたが、下記の点は実施例1と条件を変更した。
【0095】
1)WJマニフォールド
WJマニフォールドとしては、予備ジェット、第1交絡ジェット、第2交絡ジェットと3基の組み合わせを用いた。
【0096】
・予備ジェット
予備ジェット用マニフォールドとしては、内径1inchのステンレスパイプに、0.2mmφの孔を5mm間隔で配置したものを用意した。
【0097】
・第1交絡ジェット
第1のマニフォールドとしては、図12のノズルプレートを組み込んだ実施例1と同じ構造のものを用いた。
【0098】
・第2交絡ジェット
第2のマニフォールドとしては、孔径0.1mmφを2mm間隔に配置したノズルプレートを組み込んだもの(図13参照)を用いた。
【0099】
2)受けプレートは、第1、第2交絡ジェットに対してそれぞれ設けた。
【0100】
・第1の受けプレートには、実施例1と同じW1=10mm、W2=30mm、T=3mmの仕様のものを用意した。
【0101】
・第2の受けプレートとしては下記(A)、(B)、(C)の3種類のものを用意した。
【0102】
(A):第1受けプレートと同じ仕様のもの
(B):W1=2mm、W2=7mm、T=3mmのエッジ形状のもの
(C):W=100mm、T=3mmの広幅、板状のもの
【0103】
3)脱流体装置と受けプレートとの配置
予備ジェットには受けプレートを用いず、ネットの下に10mm幅のスリットを持つ100mm幅のサクションボックスを設けた。第1受けプレート、第2受けプレートともに実施例1と同様な配置状態にした。3つのサクションボックスは全てターボブロワーと接続し、脱液した。
【0104】
4)高圧水の噴射圧を下記のように設定した。
【0105】
・予備ジェット圧:0.6MPa
・第1ジェット圧:4.0MPa
・第2ジェット圧:8.0MPa
【0106】
上述の通り得た3層複層シートをネットコンベア上に30m/分で供給し、不織布化処理を行った。得られたシートは下記の通りであった。
【0107】
<第2の受けプレートとして(A)を用いた場合>
1)予備ジェットでは、交絡状態は見えず、従って受けプレートがなくても繊維のネット上への突き抜けもなかった。この予備ジェットは空気を多量に含んだバルキーな3層積層シートを圧縮するためであって、その効果としては0.6MPaで充分であった。
【0108】
2)第1ジェットでは、10mm間隔でミシン目のような交絡が行われた。走行状態も安定していた。
【0109】
3)第2ジェットでは、さらに強く細かい交絡が行われ、複層シートの全体に亘って均一な交絡結合が行われていた。
【0110】
4)交絡後のシートは熱風乾燥機により連続的に乾燥・巻取りを行って不織布を得た。この不織布は均一の厚みを持ち、2層間が強固に結合され、層間剥離現象は全く観察されなかった。
【0111】
<第2受けプレートとして上記(B)のエッジ形状を用いた場合>
平面部が2mmと狭いためノズルの直下になるように微調節して左右を固定して走行させ、不織布化実験を行った。
【0112】
左右端部のジェット流は、ほぼ受けプレートに当たっていたが、中央部に近いジェット流は、前後にずれた。また、高圧水が前後、さらに上方にも飛び散り、複層シートは波立った状態となっていた。液の前後からの排水には問題はなかった。乾燥後の不織布を観察すると、第1交絡ジェットで交絡された10mm間隔の交絡ラインは、規則正しく配列されていたが、第2交絡ジェットで交絡された10mmの間にあるウェブは乱れ、5mm程度の穴があいた部分が散見され、繊維がノット状に固まった部分も観察された。
【0113】
<第2受けプレートとして上記(C)の広幅プレートを用いた場合>
走行性には問題がなかったが、受けプレートは、ジェット流れを受けて、受けプレートの中央部がたわむため、中央部に池のように水が溜まり水しぶきを上げながら走行していた。前後からの水の排水状態は極めて悪くなった。
【0114】
乾燥後の不織布を観察すると、第1交絡ジェットに基づく10mm間隔のラインは残っていたが、両端を除いて水の溜まっていた中央部に対応する箇所ほど殆ど交絡されず、特に中央の500mm幅前後は繊維が流れて塊のように付着している状態となっていた。
【0115】
<第2受けプレートを使用せずネット上で、直接第2交絡ジェットで複層シートを処理した場合>
第1交絡ジェットで受けプレートが存在しない場合には、比較例で示してあるように繊維はネットに絡みついて剥離不能になったが、第1交絡ジェットで処理した複層シートを、受けプレートを省略した第2交絡ジェットによりネット上で直接処理しても、ネットからの剥離不良などの大きなトラブルは生じず安定走行が可能であった。乾燥後の不織布を観察すると、3層シートの裏面に繊維の貫通箇所が形成されていたが、不織布化は充分行われていた。コンベアネット上への脱離繊維の付着は少量観察されたが、走行に大きな影響を与えるには至らなかった。
【0116】
(比較例1)
受けプレートを使用しなかった以外は、実施例1と同様に、複層シートを処理した。
【0117】
その結果、(1)ポリエステル繊維はPPSBを貫通してネットコンベアに絡みついてしまい、複層シートをネットコンベアから離すのが難しかった。むりやりに離すとネットコンベア上には繊維が全面に付着し、ネットコンベア全体が起毛したような状態となり2〜3分で走行不能となった。
【0118】
(2)ネットコンベアから分離して得られた複層シートもPPSBとカードウェブとの層間剥離が起こり、不織布化状態には至らなかった。
【0119】
(3)ネットコンベアの継目に相当する箇所では、搬送中にカードウェブとPPSBとが剥離し、カードウェブが塊状になった。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明による不織布の製造装置を示す概略図である。
【図2】本発明による不織布の製造装置を示す概略図である。
【図3A】本発明による不織布の製造装置において、ネットコンベアから繊維ウェブを剥離する位置を一定にする一態様である。
【図3B】本発明による不織布の製造装置において、ネットコンベアから繊維ウェブを剥離する位置を一定にする一態様である。
【図3C】本発明による不織布の製造装置において、ネットコンベアから繊維ウェブを剥離する位置を一定にする一態様である。
【図3D】本発明による不織布の製造装置において、ネットコンベアから繊維ウェブを剥離する位置を一定にする一態様である。
【図4A】本発明による不織布の製造装置における受けプレートの形状を示す一態様である。
【図4B】本発明による不織布の製造装置における受けプレートの形状を示す一態様である。
【図4C】本発明による不織布の製造装置における受けプレートの形状を示す一態様である。
【図4D】本発明による不織布の製造装置における受けプレートの形状を示す一態様である。
【図4E】本発明による不織布の製造装置における受けプレートの形状を示す一態様である。
【図5】本発明による不織布の製造装置の配置を示す概略図である。
【図6】本発明における受けプレートの一例を示す概略図であって、(a)は、受けプレートの上面図を示し、(b)は、A−A’の縦断面図を示し、(c)は、B−B’の横断面図を示す。
【図7】受けプレートの一態様を示す横断面図である。
【図8】受けプレートの一態様を示す横断面図である。
【図9】受けプレートの一態様を示す横断面図である。
【図10】受けプレートの一態様を示す図であって、(a)は、上面図を示し、(b)乃至(d)は、縦断面図を示す。
【図11】本発明による不織布の製造装置の他の態様を示す概略図である。
【図12】WJマニフォールドに装着するノズルプレートの一態様である。
【図13】第2のマニフォールドの一態様である。
【図14】実施例3で使用した製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0121】
11 繊維ウェブ
12 不織布
13 キャリアシート
14 複層シート
16 水流ジェット
100 受けプレート
101 ネットコンベア
102 WJマニフォールド
103 脱流体装置
200 受けプレート
201 ネットコンベア
202 WJマニフォールド
203 脱流体装置
300 受けプレート
301 ネットコンベア
302 WJマニフォールド
311 プレスロール
312 液体サチュレーター
313 サクションボックス
431 上部平滑部
432 底辺部
500 受けプレート
501 ネットコンベア
502 WJマニフォールド
600 受けプレート
601 上面部
602 傾斜部
603 傾斜部
606 下面部
611 固定具
612 固定具
901 部材
903 部材
906 部材
1000 受けプレート
1011 固定具
1012 固定具
1051 隆起部
1100 受けプレート
1101 ネットコンベア
1102 WJマニフォールド
1103 脱流体装置
A 間隔
B 間隔
L 長さ
L1 長さ
L2 長さ
P 領域
Q 領域
R 領域
T 厚さ
Tc 厚さ
W1 幅
W2 幅
X 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状繊維層を搬送するネットコンベアと、
該ネットコンベア上に配置された受けプレートと、
該受けプレート上に配置され、該受けプレートに流体を噴射するWJマニフォールドと、
を有する不織布の製造装置であって、
前記流体は、前記受けプレート上で、前記繊維ウェブを交絡して不織布を形成させることを特徴とする不織布の製造装置。
【請求項2】
前記受けプレートは、前記流体を受け平滑な面を有する上部平滑部を有することを特徴とする請求項1に記載の不織布の製造装置。
【請求項3】
前記の平滑な面の幅は、2mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布の製造装置。
【請求項4】
前記受けプレートの前記上部平滑部の厚みは、前記ウェブ状繊維層の搬送方向の前後に配置された部位の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項5】
前記受けプレートの厚みの最大値は、2mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項6】
前記受けプレートと前記ネットコンベアとの距離は、0mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項7】
前記受けプレートは、該受けプレートの下面部に追加の部材をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項8】
前記受けプレートと前記WJマニフォールドとの組を複数組有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項9】
前記受けプレートの端部の厚みは、該端部以外の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項10】
前記ネットコンベアは、エンドレスでなく、切れ目を継目によって結合されたプラスティック製ネットであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項11】
ウェブ状繊維層及び/又は不織布の搬送を安定化する搬送安定手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項12】
前記流体の噴射方向に対して前記ネットコンベアの下流に配置され、前記流体を吸引する脱流体装置をさらに有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の不織布の製造装置。
【請求項13】
ウェブ状繊維層をネットコンベア上で搬送する工程と;
該ネットコンベア上を搬送されたウェブ状繊維層を受けプレート上に導入する工程と;
該受けプレート上に導入されたウェブ状繊維層に、流体を噴射して、該ウェブ状繊維層を構成する繊維間を交絡させる工程と;
該交絡されたウェブ状繊維層をネットコンベアに復帰させる工程と;
を有することを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項14】
前記の流体の噴射圧は、1MPa以上10MPa以下であることを特徴とする請求項13に記載の不織布の製造方法。
【請求項15】
前記ウェブ状繊維層に噴射された流体を吸引する脱流体工程をさらに有することを特徴とする請求項13又は14に記載の不織布の製造方法。
【請求項16】
前記ウェブ状繊維層は、化合繊短繊維をカード法でウェブ化した未結合カードウェブであることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項17】
前記ウェブ状繊維層は、前記未結合カードウェブとキャリアシートとからなる複層シートであることを特徴とする請求項16に記載の不織布の製造方法。
【請求項18】
前記キャリアシートは、目付5g/cm以上50g/m以下の、ティシュ、湿式不織布、スパンメルト不織布、エアレイド不織布、乾式サーマルボンド不織布及びセルロース系スパンボンド不織布からなる群から選択された少なくとも1つの不織布であることを特徴とする請求項17に記載の不織布の製造方法。
【請求項19】
前記ウェブ状繊維層は、予備結合処理を施されたものであることを特徴とする請求項13乃至18のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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