説明

不透明な延伸重合フィルム構造物とその製法

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は不透明度を高めた重合体フィルムと、その様なフィルムの製法とに関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明はフィルム構造物の様な二軸延伸複合材と、同時押出によるそれらの製法とに関するものである。
【0002】米国特許No.4,377,616には多数ボイド(その相当数は球状のボイド誘導粒子を一つ以上含む)がある一層の不透明な熱可塑性重合マトリックスフィルムコアー層と、そのコアー層に接着させた何層かの透明でボイドのない熱可塑性スキン層とを含む不透明な二軸延伸重合マトリックスフィルム構造物が報告されている。そのコアー層の独持な構造は、光の散乱効果により、不透明顔料のみを用いることで可能になる不透明度よりもはるかに高い不透明度を可能にする。米国特許No.4,377,616のフィルムコアー層表面に透明でボイドのない熱可塑性スキン層を接着させると、表面のむら或いはコアー材の突起がなくなり表面が滑らかになる。米国特許No.4,377,616には、その様なスキン層を接着させないと、梨地仕上の際の外観に著しく光沢がなくなるであろうと報告されている。
【0003】しかしながら、コアー層を封入する為に透明でボイドのない熱可塑性スキン層を用いると、何らかの望ましからぬ最終特性を持つフィルムができる可能性がある。例えば、あるラベルの加工操作においてこの様なフィルムを用いると、スキン層が摩擦接触によって過度にラベル加工装置に接着し、その結果、ラベルの品質低下及び/或いは装置の運転停止を招くことがある。装置はこの様な問題を最少限に抑える様調節することがしばしば可能であるが、もっと操作性に優れたフィルムが望ましいのは明らかなことである。不透明でボイドのない熱可塑性スキン層を用いる既知の不透明な多層フィルム構造物を最終用途加工する際、時折生じるもう一つの問題点とは、この様なフィルム構造物がしばしば切断しにくいということである。さらに外観の点からも、透明なスキン層を用いるよりも不透明度の高いスキン層を用いる方が望ましいこともある。
【0004】本発明は、高い強度と剛性とを維持しつつ、切断特性を改良し、さらに加工の際に操作可能な範囲を拡大した高い不透明度を有するフィルム構造物の提供を目的としている。
【0005】本発明の一面に従い、(a)表面と裏面とがあり、内部にはボイド層(そのボイドの相当数は、マトリックス材とは相の性質が異なりかつ不相溶性の球状ボイド誘導粒子を一つ以上含んでおり、さらにコアー中のボイド数は実質的な不透明度を生じる様な数である)がある熱可塑性重合体マトリックスからなる、コアー層;および(b)少なくともそのコアー層の表面に接着し、内部にボイド層(そのボイドの相当数は、マトリックス材とは相の性質が異なりかつ不相溶性の、粒形を問わないボイド誘導固体粒子を一つ以上含んでいる)がある熱可塑性重合体マトリックスからなる一層以上のスキン層;を含む不透明な二軸延伸重合体フィルム構造物が提供される。
【0006】本発明のもう一面に従い、(a)一次熱可塑性重合物質と、その一次熱可塑性重合物質よりも融点の高い、或いはより高いガラス転移温度を有する一次物質とを、前者が過半量となる様に混合し、コアー層混合物を作ること、(b)ステップ(a)で作ったコアー層混合物を、少なくとも一次熱可塑性重合物質の融点よりも高温で加熱すること、(c)溶融した一次熱可塑性重合物質全体に一次物質を均質に球状に分散させること、(d)二次熱可塑性重合物質と、その二次熱可塑性重合物質よりも融点の高い、或いはより高いガラス転移温度を有する二次物質とを、前者が過半量となる様に混合し、スキン層混合物を作ること、(e)ステップ(d)で作ったスキン層混合物を、少なくとも二次熱可塑性重合物質の融点よりも高温で加熱すること、(f)溶融した二次熱可塑性物質全体に二次物質を均質に分散すること、さらに(g)或る温度で、そしてコアー層とボイド含有スキン層の両層中に不透明なボイド層が形成される程度にまで同時押出を行なうステップを含む、コアー層混合物とスキン層混合物からの不透明二軸延伸重合フィルム構造物形成法を提供する。
【0007】本発明の多層フィルム構造物に望みのフィルム強度、剛性及び不透明な外観を与える為には、コアー層の厚み、ボイド含有スキン層の厚み、及び透明にすることもさらに不透明に着色することも可能な任意でボイドのないスキン層の厚み、それら厚みの間に特定の関係があることが望ましい。コアー層の厚みは構造物全体の厚みの30%から95%であることが好ましい。これにより、厚みが0.5ミリ以上の構造物におけるボイドの数及び形状と共にその構造物全体の不透明度を決まることになる。ボイドの数及び形状とコアー層の厚みは、不透明度を著しく高めうる様に、例えば、光の透過率が50%未満、望ましくは70%未満となる様にする。同様に、スキン層の厚みはコアー層の厚みとの関係から特定の範囲に維持し、これら全ての組合わせによって不透明で光沢のある外観が可能になる。
【0008】上記三層構造物以外の他の構造物も本発明の範囲内にある。例えば、三層を越える層数を持ち、多層のボイド含有層を含む構造物は、特定の用途において独持の有用性を持っていると思われる。この様なフィルムは、その各ボイド含有層中に後記のタイプの別なボイド誘導剤を用いても良いし、そして/或いはその各ボイド含有層を、加工、ボイド誘導粒子のサイズ、及び/或いは用いる粒子の数により、異なる程度にボイドさせることも可能である。おわかりの様に、その結果得られる多層フィルムは、見た目と同様その物理的特性も、本発明のフィルムアプローチに関する本具体例を用いることにより変化させることができる。
【0009】本発明のフィルム構造物におけるコアー層を調整する為には、層中に用いるボイド誘導粒子の平均直径を0.1から10ミクロンにするのが望ましい。これらの粒子は構造物を二軸延伸した後、熱可塑性重合マトリックス材全体が層別(stratified)関係に並みはずれた規則性と配向性とを同つボイドを誘導しうる様、一般的に球状が良い。これは、全てのボイドが同じサイズであるという意味ではなく、むしろそれは、たとえボイドの寸法がそれぞれ違っていてもそのボイドは全て球状の粒子によって誘導されるのであるから、一般に各ボイドは似通った形になるということを意味している。理想的に言えば、そのボイドは二つの向かい合った、しかもその端が接着した凹ディスクとして定義された形をしている。不透明度とサテン様外観において最適特性が得られるのは、ボイドの主な二次元、すなわち長さと幅の平均が約30ミクロンをはるかに越える時である。熱可塑性重合マトリックスコアー層中で用いるボイド誘導粒子の材料は、最低でも二軸延伸温度において不相溶性であることが必要である。
【0010】コアー層は、内部にボイド層を持つ熱可塑性重合材を含むものとして上に記載してきた。ボイド層の“層”という言葉は、マトリックス内に多数のボイドがあり、そのボイド自体は、その主な二平面がポリマーフィルム構造物の延伸方向に配向する様に延伸されているということを意味している。その系の不透明度は、不透明顔料の含有、例えば重量にして1%から3%をコアー層全体に分散させることにより一層高められる。その顔料材は、少なくとも物質的意味合いからそれ自体がボイドを誘導することのない様な粒子サイズ及び形状でなければならない。不透明顔料を任意に入れると、その系の不透明度を3%から8%へと高めることが可能になる。
【0011】コアー層のマトリックスを含む熱可塑性重合材とボイド誘導粒子とは、二種の別個な層を形成することから、不相溶性でなければならない。球状のボイド誘導粒子は、より融点の低い熱可塑性重合マトリックス内の至る所で分散相を成し、これが延伸の際、そのボイド中のいずれかの場所に球状粒子を含むボイドの詰まったマトリックスになる。
【0012】ここに記載した本発明のフィルム構造物を作ろうとして二軸延伸を行なうと、それはコアー層を不透明にするだけでなく、耐屈曲亀裂性、エレメンドルフ引裂き強さ、伸び、引張り強さ、衝撃強さ及び低温強さ特性の様な多層構造物における他の物理的特性をも改善される。さらにこれに加え、並みはずれたしかも非常に魅力的な光沢ある外観をフィルムに与える。この外観は、一般にスキン層がない時、或いはそのスキン層の厚みがコアー層内に生じた表面上の欠陥をおおい隠すことができるほど十分に厚くない場合には見られない。得られたフィルムは透湿度及び酸素透過度を低くすることも可能であり、これにより、液体を含む食品の包装にこの上なく適したフィルムができる。そのフィルムは、装飾用包装材料としての用途も注目を浴びている。一般に、封じ込めるボイドの数をもっと多くすると、液体及び/或いは気体がそのコアー層を通り抜けることは本質的に不可能となる。
【0013】ボイド誘導粒子は形がほぼ球形で、その粒子サイズがボイドの形成を誘導するのに望ましい範囲内にあるものであれば有機でも無機でも良く、それらは非常に多くの場合レンズ様の形、すなわち両凸型レンズの形をしている。ボイド誘導粒子として重合材を用いる場合、その重合材はコアー層の重合体と共に溶融するポリマーでも良い。この様な場合、そのボイド誘導粒子はコアー重合体よりも十分に高い融点を持ち、溶融温度を低くすると分散相が小さな球状粒子の形を取りうることが必要である。そのボイド誘導粒子は予備成形後、コアー層の重合体の溶融物、例えばポリプロピレンのそれへの均一な分散可能で、それによってコアーの熱可塑性重合マトリックス材の熱的崩壊を最少限に抑えうるものが望ましい。
【0014】コアー層中のボイドの数、形、及び延伸層の幅により、光の散乱効果は著しく高められると考えられる。さらにこの効果は、コアー層にボイドのない透明な、或いは着色したスキン層を同延に(coextensively)存在させることによっても高められる。
【0015】予備成形したボイド誘導粒子を用いる場合、その粒子は化学的性質よりもむしろその形とサイズが重要となる。従って、どの様な種類の固体或いは中空有機又は無機粒子を用いてもかまわない。異なる色の球を用いると興味深い効果が得られる。統計的に見て各ボイドはその内部のどこかにだいたい一つの粒子を有しているので、異なる色を吸収或いは反射する粒子を用いれば、層構造物全体に興味深く、そして美的満足のいく色彩及び/或いは反射率効果を与えることができる。さらに、各ボイド中の散乱光はボイド誘導粒子によって吸収或いは反射され、各ボイド内の散乱光は分離色彩調整が行なわれる。
【0016】このボイド誘導粒子は、コアー層の残りの部分を構成している樹脂と相の性質が異なり、不相溶性であればどの様な種類の熱可塑性樹脂を基材としていても良く、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートアセタール類、ポリアミド類、或いはアクリル樹脂類が可能である。ポリテトラメチレンテレフタレート(PTMT)としても知られているポリブチレンテレフタレート(PBT)が、通常232〜260℃(450゜〜500゜F)の加工を含む本発明に用いるボイド誘導粒子の材料として本質的に望ましい。
【0017】コアーマトリックス層に用いるボイド誘導粒子として有用な無機物質には、ガラス球、金属のビーズ或いは球、さらにセラミック球がある。実際には、本質的に球状か、或いはコアー重合体を熱崩壊させることなく球に成形しうるものであればどの様な物質もここでは十分用いることができる。
【0018】本発明のフィルム構造物のコアー層にボイドを入れると、それによって光の透過率を16%位に、そしてさらに低くすることが可能になる。これは、そのフィルム全体の厚みが1.5ミリ以上で、その際コアー部分の厚みが60%以上、残り40%はスキン層の厚みによる様なフィルムの場合に可能である。
【0019】ボイド誘導粒子のサイズは0.1から10ミクロンが好ましいが、0.75から2ミクロンが特に好ましい。このボイド誘導粒子は、延伸前にコアー層の重量の20%まで入れることが可能であり、その範囲は2−7重量パーセントが望ましい。
【0020】本発明のフィルム構造物は、コアー層の裏面に接着したボイドのない熱可塑性スキン層をさらに含むことが好ましく、このボイドのないスキン層は、コアー層のでこぼこを少なくとも実質的に少なくする様な厚みを持っている。この様なボイドのないスキン層は、不透明剤、着色剤或いは粘着防止剤を含んでいても良い。
【0021】しかしながら、今や無機のボイド誘導粒子を用いてスキン層(b)の一層以上にボイドを取込むことにより、そのスキン層表面の摩擦係数を著しく減少させ、それによってフィルム加工装置におけるその様なフィルムの使用範囲を拡大させうることが見出されてきた。スキン層(b)をもう一層コアー層の表面に接着させても良い。さらに本発明を実施する際、使用に適した種類のボイド誘導粒子を用れば、粒子の移動に関する問題を回避することができる。この利点から、封入されていない単層構造に、特定の好ましい無機のボイド誘導粒子を用いれば良いのではと考えられるが、コアー層に対し、使用に適した有機のボイド誘導粒子を用いて得られると同程度の不透明度を得る為には、もっと高濃度の無機物質が必要となる。この様な濃度の高さは、重合マトリックス材それ自体が持っている強度及び剛性の様な望ましい特性の多くを犠性にすることになる。
【0022】本発明の多層フィルム構造物に一層以上のボイド誘導スキン層を用いることによってもたらされるもう一つの利点は、フィルム切断の改良に関するものである。驚くべきことに、本発明に従って作ったフィルムは、より簡単な紙様切断方法で(in a more paper−like manner)切断されることわかった。この事は、この様なフィルムを、壜のラベルの如き多様な包装用途に用いるラベル素材として使用する際に好都合である。最終的に切断されるフィルム面にボイド含有スキン層を用いると、フィルム全体の保全性はそのままに、切断される面にフィルムの弱い部分が生じる。フィルムのこの弱い部分が、本発明に従って作ったフィルムのより簡単な紙様切断特性の原因となっている。この様な紙様切断特性は、可剥性の裏材料の付いた同時押出感圧ラベル素材の製造に特に好都合であることがわかった。
【0023】本発明の多層構造物におけるスキン層の一層以上に用いるのに好ましいボイド誘導粒子には、無機物質も有機物質も含まれる。ボイド誘導粒子として有機物質を用いる場合、その物質は上記のマトリックス構造物からの除去が起こり易い物質であることが重要である。好ましい無機物質には粉砕した炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、シリカ及びアルミナがあり、炭酸カルシウムが特に好ましい。コアー層に好んで用いられるボイド誘導粒子の場合と同様、そのボイド誘導粒子のサイズは1から5ミクロンの範囲内にあるのが特に望ましいが、0.1から10ミクロンであるのが望ましい。このボイド誘導粒子は、延伸前にスキン層の重量にして70%まで入れうるが、5から20重量パーセントであるのが望ましい。これらの粒子、特に無機の粒子は、コアー層に好んで用いられる粒子と比較すると一般に形が球形というよりはむしろランダムで、すなわちスキン層に用いる粒子の形は得られる多層構造物の外観にとってあまり意味を持たない。コアー層に用いるボイド誘導粒子と同じく、スキン層の一層以上に用いるべく選択する粒子は重合マトリックススキン層物質と不相溶性でなければならない。
【0024】本発明の実施に当たって用いる重合体としては、アイソタクチックプロピレンホモポリマー、プロピレンとエチレンのランダムコポリマーと遂次(sequential)コポリマー、さらに主としてプロピレンユニットと、コアー層にとってもスキン層にとっても好ましいアイソタタチックポリプロピレンとから成る他のコポリマーが好ましい。この様な重合物質は一般にその融点が140℃(285゜F)以上で、149℃(300゜F)以上であることが望ましい。メルトインデックスは230℃(446゜F)で0.5g/10分から約8g/10分の範囲内が望ましい。
【0025】充填剤、抗酸化剤、顔料、帯電防止剤、スリップ剤、及び粘着防止剤の様な添加剤は、多層フィルム層を構成している層の一層以上に通常量添加することができる。
【0026】米国特許No.4,701,370に記載されている様に、スキン層を構成している重合物質に二酸化チタンを被覆した雲母を比較的少量加えると、多層フィルムの剛性が著しく高められる。本発明の実施に当たって用いる二酸化チタン被覆雲母の有効量は、スキン層物質の0.1から10重量パーセントであることが望ましい。二酸化チタン被覆雲母は、ペンシルバニア州、ウックランドのイーグル クォリティ プロダクツ コーポレーション市販のイーグル雲母Mシリージが適当である。
【0027】本発明の多層フィルムの製造には、コアー層とスキン層を同時押出するのが望ましい。さらに、同時押出或いは何か別な方法で作ったフィルムを、ある大きさまで、計算した温度で二軸延伸或いは延伸し、フィルムの外観を含めた物理的特性を何ら損なうことなく不透明度を最大にする。わかり切ったことだが、フィルムを構成するのに用いる物質が異なれば、その違いを反映して二軸延伸の条件も変えることになる。コアー重合体として立体規則ポリプロピレンを、そしてボイド誘導物質としてPBTを用いる場合を例に取ると、全体の厚みが0.5から2ミリの不透明な二軸延伸フィルムを供給する為には、延伸温度を100℃(212゜F)から160℃(320゜F)とし、縦方向に4から8倍、横方向へも4から8倍延伸すれば良い。
【0028】可剥性の裏材料を持つ同時押出感圧ラベル素材を作る際には、ラベルを切断するという見地から、ボイド含有スキン層は可剥性裏材料とは反対側に位置しているのが好都合である。感圧接着剤は、各用途の要求に応じて連続的、或いは非連続的な方法で、ボイド含有スキン層に塗布することができる。この接着剤は、ボイド含有スキン層の露出表面に接着剤を“プリント”する技術を含め、その様な作業を遂行する為の数多い既知法のいずれを用いても塗布することができる。
【0029】感圧接着剤の成分は、接着剤の成分となるに有用であることが知られている物質、そのいずれから選んでも良い。一般に、非溶剤感圧接着剤材料としては溶媒と基剤とする感圧接着剤材料が好ましい。使用可能な材料としては、天然及び/或いは合成ゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリイソブタジエンゴム、ポリビニルエーテルゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ブタジエン−スチレン−アクリロニトリルゴム、或いはブチルゴムをエステルゴム、水素化エステルゴム、水素化ロジンのグリセロールエステル、ポリテルペン樹脂、生ゴム、ポリイソブチレン又は他の不飽和炭化水素樹脂、フェノラートテルペン、或いは石油樹脂の様な粘着剤又は粘着付与剤と組み合せたものがある。又、感圧接着剤には抗酸化剤或いは充填剤の様な添加物を含んでいても良い。
【0030】重合剥離層は、多層で不透明な延伸フィルム構造物の接着面に次に接着させようとするフィルムの表面に剥離剤を塗布したものを用いる。その剥離剤は、感圧接着剤に対するその剥離性の利用が既知であるどの物質を選択しても良い。一般的な種類にはシリコンと改良シリコンとがあり、その改良には剥離性のない他の化学剤とシリコンとの共重合、及び剥離層に剥離剤を表面塗布するのに先立ちシリコン塗料にシリコン以外の物質を加えることが含まれる。ポリプロピレン、フルオロカーボン、ワーナー型クロム錯体、及びポリビニリデンオクタデシルカーバメイトの様な他の剥離剤も用いられる。どの剥離塗料を選ぶかは、技術熟練者ならお分かりの様に、隣りの層に含まれている接着剤の粘着度及び接着度により決まる。ここでの剥離剤の塗布は、良く知られたどの方法を用いても良い。
【0031】望むのであれば、火炎処理或いはコロナ放電の様な既知の常法でスキン層の一つの露出面を処理し、その様な表面処理によってもたらされることが期待される、インキ受理性の改善の様な利益を実際に手に入れることも可能である。
【0032】次の実施例は本発明を説明するものである。
【0033】
【実施例1】コアー層のボイド誘導物質として、94重量パーセントのアイソタクチックポリプロピレン(融点=160℃:320゜F、メルトインデックス=4.5)と6重量パーセントのPBT(融点=227℃:440゜F)との混合物をL/D比が20/1のスクリューを持つ押出機中で溶融し、コアー層混合物を作った。一次押出機と連結した二次押出機へは一次押出機の時と同じアイソタクチックポリプロピレンと4重量パーセントの二酸化チタン粒子、さらに2重量パーセントのタルク(シプラス ミストロン(Cyprus Mistron)ZSC)を入れた。タルクは粘着防止剤として働き、一方二酸化チタン粒子はこのスキン層混合物の為の白色体質顔料として用いた。最初の二つの押出機と連結した三次押出機へは、最初の二つの押出機の時と同じアイソタクチックポリプロピレンを入れたが、これには15重量パーセントの粉砕したランダムな粒子形の炭酸カルシウムが含まれており、これはこのスキン層の為のボイド誘導粒子として働く。溶融同時押出は、コアー重合材のシリンダーをその重合混合物が十分に溶融する温度、すなわち約232℃(450゜F)から約288℃(550゜F)、或いはそれよりも高温に保ちながら行なった。スキン層として押出すポリプロピレン混合物は、コアー層を加工する際に用いたポリプロピレンとほぼ同じ温度に保った。多層フィルム積層物はコアー層の厚みが全押出物の厚みの約70%となる様に、そしてフィルムの残りの厚みがスキン層の厚みとなる様に同時押出した。延伸されていないフィルムの厚みは約40ミリであった。続いて、この得られたフィルムシートを市販の遂次二軸延伸装置を用いて8倍と5.5倍に延伸し、多層フィルム構造物を作った。縦方向(MD)延伸は約141℃(285゜F)で、横方向(TD)延伸は約149℃(300゜F)で行った。得られた1.5ミリの多層フィルムは、ボイド含有スキン層側から見ると表面仕上が比較的ざらざらしていて不透明度が高く、ボイドを含有していないスキン層の側から見るとなめらかで光沢がある。
【0034】この様にして作ったフィルムを、米国特許No.4,560,614に従ってその含有量を参考文献に書かれていると全く同じにして作ったフィルム積層物と比較した。実施例1で作ったフィルムは、、米国特許No.4,560,614に従って作ったフィルムよりも飲料容器のラベ製造機において使用可能な範囲が広がった。これはボイド含有スキン層表面の摩擦係数が低いことに起因すると思われる。さらに外観の点からも、実施例1で作ったフィルムは、ボイド含有スキン層を用いたことでより高い不透明度を示した。
【0035】
【実施例2】本実施例は感圧ラベル素材を作るのに適している。もう一度コアー層のボイド誘導物質として、94重量パーセントのアイソタクチックポリプロピレン(融点=160℃(320゜F)、メルトインデックス=4.5)と6重量パーセントのPBT(融点=227℃:440゜F)との混合物をL/D比が20/1のスクリューを持つ押出機中で溶融した。一次押出機と連結した二次押出機に、一次押出機の時と同じアイソタクチックポリプロピレンと4重量パーセントの二酸化チタン粒子、さらに2重量パーセントのタルク(シプラス ミストロン ZSC)を入れた。最初の二つの押出機に連結した三次押出機に最初の二つの押出機の時と同じアイソタクチックポリプロピレンと15重量パーセントの粉砕炭酸カルシウムを入れたが、これはこの層の為のボイド誘導粒子として働く。溶融同時押出は、コアー重合材のシリンダーをその重合混合物が十分に溶融する温度、すなわち約232℃(450゜F)から約288℃(550゜F)、或いはそれよりも高温に保ちながら行なった。前記の様に、スキン層として同時押出するポリプロピレン混合物は、コアー層加工の際に用いたとほぼ同じ温度に保った。多層フィルム積層物はコアー層の厚みが全押出物の厚みの約70%となる様に、そしてフィルムの残りの厚みがスキン層の厚みとなる様に同時押出した。延伸されていないフィルムの厚みは約40ミリであった。得られたフィルムを実施例1と同様にして二軸延伸した。重量部が2:1の水素化ロジン誘導体とスチレン−ブタジエンゴムの混合物である感圧接着剤をボイド含有スキン層の表面にプリントした。又、多層同時押出フィルム構造物中に用いたのと同じポリプロピレンを用いた剥離層も別に押出した。市販のシリコン剥離剤をその剥離層の一面に塗布した。多層の不透明なフィルムを別に押出した透明な剥離層に接着した。
【0036】この様にして作った感圧ラベル素材を打抜装置にかけ、連続した剥離層に付いた別々に分離することのできるラベルを持つラベル素材を作った。本発明に従って作ったフィルムは、米国特許No.4,582,736に従い、その含有量を参考文献に書かれていると全く同じにして作ったフィルムと比較して、米国特許No.4,582,736に従って作った感圧ラベル素材よりも優れた切断特性を示した。これはボイド含有層表面に起因していると考えられる。さらに外観の点からも、実施例2で作ったフィルムはボイド含有スキン層を用いたことでより高い不透明度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)表面と裏面とがあり、内部にはボイド層(そのボイドの相当数は、マトリックス材とは相の性質が異なりかつ不相溶性の球状ボイド誘導粒子を一つ以上含んでおり、さらにコアー中のボイド数は実質的な不透明度を生じる様な数である)がある熱可塑性重合体マトリックスからなる、コアー層;および(b)少なくともそのコアー層の表面に接着し、内部にボイド層(そのボイドの相当数は、マトリックス材とは相の性質が異なりかつ不相溶性の、粒形を問わないボイド誘導固体粒子を一つ以上含んでいる)がある熱可塑性重合体マトリックスからなる一層以上のスキン層;を含む不透明な二軸延伸重合体フィルム構造物。
【請求項2】そのコアー層の裏面に、ボイドのない熱可塑性スキン層がさらに接着しており、そのボイドのない熱可塑性スキン層がコアー層のでこぼこを少なくとも実質的に減少させうる厚みを持っている請求項1のフィルム構造物。
【請求項3】そのボイドのないスキン層が不透明剤、着色剤或いは粘着防止剤を含んでいる請求項2のフィルム構造物。
【請求項4】もう一つのスキン層(b)がコアー層の裏面と接着している請求項1のフィルム構造物。
【請求項5】裏面上のスキン層(b)が、表面上のスキン層(b)とは異なった不透明度を有するように、異なる度合いでボイドを有する請求項4のフィルム構造物。
【請求項6】裏面上のスキン層(b)のボイド誘導固体粒子が、表面上のスキン層(b)のボイド誘導固体粒子とは異なる物質からなる請求項4或いは5のフィルム構造物。
【請求項7】コアー層がアイソタクチックポリプロピレンからなる請求項1〜6のいずれかのフィルム構造物。
【請求項8】スキン層がアイソタクチックポリプロピレンからなる請求項1〜7のいずれかのフィルム構造物。
【請求項9】(a)主要割合の一次熱可塑性重合体物質と、その一次熱可塑性重合体物質よりも融点が高いか、或いはより高いガラス転移温度を有する小量の一次物質とを混合してコアー層混合物を作ること、(b)工程(a)で作ったコアー層混合物を、少なくとも一次熱可塑性重合体物質の融点よりも高温で加熱すること、(c)溶融した一次熱可塑性重合体物質全体に一次物質を均質に球状に分散させること、(d)主要割合の二次熱可塑性重合体物質と、その二次熱可塑性重合体物質よりも融点の高い、或いはより高いガラス転移温度を有する少量の二次物質とを混合してスキン層混合物を作ること、(e)工程(d)で作ったスキン層混合物を、少なくとも二次熱可塑性重合体物質の融点よりも高温で加熱すること、(f)溶融した二次熱可塑性重合体物質全体に二次物質を均一に分散すること、そして(g)所定の温度で、そしてコアー層とボイド含有スキン層の両層中に不透明なボイド層が形成される程度にまで同時押出を行なう工程を含む、コアー層混合物とスキン層混合物からの不透明二軸延伸重合体フィルム構造物を形成すること、からなる不透明二軸延伸重合体フィルム構造物の製造方法。
【請求項10】コアー層表面にボイドのない熱可塑性スキン層を接着させる工程をさらに含み、そのボイドのないスキン層がコアー層のでこぼこを少なくとも実質的に減少させうる厚みを持っている請求項9の方法。

【特許番号】特許第3108473号(P3108473)
【登録日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【発行日】平成12年11月13日(2000.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−188433
【出願日】平成3年1月4日(1991.1.4)
【公開番号】特開平5−78512
【公開日】平成5年3月30日(1993.3.30)
【審査請求日】平成9年12月1日(1997.12.1)
【出願人】(590001854)モービル・オイル・コーポレイション (8)
【氏名又は名称原語表記】MOBIL OIL CORPORATION
【参考文献】
【文献】特開 昭48−25778(JP,A)
【文献】特開 昭63−22641(JP,A)