説明

不透明度を改善する方法

本発明は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する方法であって、得られる前記懸濁液のコーティングが、不透明特性を与えるまたは比光散乱係数Sを有する方法に関する。本発明はさらに、このような分散炭酸カルシウムの懸濁液の組成物ならびに塗料およびプラスチックコーティングのみならず、紙のコーティングおよび紙の大量充填の分野におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する方法であって、得られる前記懸濁液のコーティングが、不透明特性を与えるまたは比光散乱係数Sを有する方法に関する。本発明はさらに、このような炭酸カルシウムの懸濁液の組成物、ならびに塗料およびプラスチックコーティングのみならず、紙のコーティングおよび紙の大量充填の分野におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
実際に、紙および板紙製品、例えば、雑誌、パンフレット、ちらし、梱包材料などは、それらに有益な光学的特性、例えば、不透明度、白色度、用紙光沢および印刷光沢、ならびに印刷適性を与えるために、またはその物理的特性を変化させるためにコーティングされる。炭酸カルシウム材を含む配合物は、それらの光散乱特性によって紙に不透明度および白色度を付与することが特に知られており、したがって、炭酸カルシウム材は、コーティングとしてだけでなく、製紙ならびに水性ラッカーおよび塗料用の充填剤、増量剤および顔料としても大量に使用されている。
【0003】
当技術分野において、炭酸カルシウムの懸濁液から調製されるコーティングの光学的特性を改善するためのいくつかの手法が提案されてきた。例えば、GB1,073,943は、良好な印刷特性および制御されたインクホールドアウトを示す明るい透明なフィルムを形成する、基材への高速塗布に適したコーティング組成物に関する。前記組成物は、フィルム形成性結合剤−マトリックス材、デンプン、および粒子状添加剤、ならびに水の沸点を超える沸点を有する水不混和性有機液体の小球を含む非連続相の、水性分散液を含む。US5,449,402には、フロック化顔料がろ過ケーキ粒子の水性懸濁液である、カオリン粘土または炭酸カルシウムのフロック化顔料を、フロック化顔料の電荷部位の符号と反対の電荷部位を有する変性剤と混合することにより調製された機能的に変性された顔料が記載されている。
【0004】
特に、紙コーティング配合物中に炭酸カルシウム材を使用する製紙業者にとって、これらの材料を水性懸濁液の形態で入手することは有利である。しかし、炭酸カルシウムの懸濁液の輸送は、経済的に実行可能でなければならないので、懸濁液中の水の量または懸濁液の容量は、できるだけ少なくなければならない。同時に、懸濁液の粘度は、固体粒子の著しい沈殿を防止するために低すぎてはならない。さらに、懸濁液は、例えば、貨物車両から、例えば、貯蔵槽へ容易にポンプで送り込まれるように、十分に流動性でなければならない(すなわち、粘度が十分に低くなければならない)。
【0005】
輸送のために炭酸カルシウムの懸濁液の特性を改善するいくつかの手法が、当技術分野で提案されてきた。例えば、US3,989,195には、2ミクロン等価球径より小さい粒子を少なくとも60重量%含有する天然炭酸カルシウム材の容易にポンプで送り込み可能な水性懸濁液を製造する方法であって、該方法は、前記天然炭酸カルシウム材およびカルシウムイオンまたは炭酸イオンを含有し、25℃で水100ml当たり少なくとも0.05gの水中溶解度を有する少量の化合物の水性懸濁液を形成する工程;およびその後、分散剤で前記水性懸濁液中の天然炭酸カルシウム材を脱フロック化する工程を含む方法が記載されている。DE19820122には、炭酸カルシウム、水および湿潤剤を含有し、沈降抑制剤としてイオン性金属化合物(I)を添加することを含む、沈降抵抗性炭酸カルシウム懸濁液が記載されている。
【0006】
しかし、水に分散して、ポリカルボン酸塩および/またはポリリン酸塩などの分散剤によって安定な懸濁液を形成する、炭酸カルシウム材を含む懸濁液から作製されたコーティングの光学的特性に非常にしばしばかなりの影響を有する1つの具体的な問題がある。上に提示されたように、炭酸カルシウムの懸濁液は通常、輸送のためにさらに濃縮される。例えば、塗布において、濃縮およびその後の希釈の処理は、このような分散炭酸カルシウムの当初の懸濁液、すなわち、濃縮およびその後の希釈前の懸濁液と比べて、光学的特性の悪化をしばしばもたらす。より正確に言えば、光散乱係数によって反映される、得られたコーティングの不透明度は、分散炭酸カルシウムの懸濁液の濃縮の間に低下し、その不透明度の消失は、懸濁液中で所望のより低い固形分への分散炭酸カルシウムの濃縮懸濁液の希釈後に反転させることができない。このため、分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液の得られたコーティングは、かなり低下した不透明度だけを、および同じ固形分で当初の分散炭酸カルシウム懸濁液の得られたコーティングのものよりも非常に低い光散乱係数を与える。得られた不良な不透明度、または光散乱係数の低下は、塗料およびプラスチックのみならず、製紙、コーティングおよび大量充填の分野の用途に特に弊害をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許出願公開第1,073,943号明細書
【特許文献2】米国特許第5,449,402号明細書
【特許文献3】米国特許第3,989,195号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19820122号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記の不利点を回避し、特に、分散炭酸カルシウムの水性濃縮懸濁液の希釈に由来する、分散炭酸カルシウムの懸濁液の得られたコーティングの光散乱係数または不透明度を改善することを可能にする方法を提供することが当技術分野で求められている。言い換えれば、分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液をもたらす方法であって、前記懸濁液から調製される得られたコーティングが、従来技術の方法と比べてより高い不透明度またはより高い光散乱係数を有する方法を提供することが望ましい。
【0009】
したがって、本発明の目的は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する方法であって、前記懸濁液の得られたコーティングが、改善された光学的特性および特に増大した光散乱係数を有する方法を提供することである。さらなる目的は、以下の本発明の説明から集約され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のおよび他の目的は、請求項1において本明細書で定義されるとおりの主題によって解決される。
【0011】
本発明方法の有利な実施形態は、対応する下位の請求項で定義される。
【0012】
本利用の一態様によれば、以下の工程:
a)分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を提供する工程;
b)アルカリイオンがカリウムおよび/またはナトリウムから選択される、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を提供する工程;
c)前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を水で希釈する工程;および
d)工程c)の前および/または間および/または後に、前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる工程
を含む、それから作製されたコーティングに改善された光学的特性を与える分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する方法が提供される。
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による上述の方法が、分散炭酸カルシウムの懸濁液を前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させること(工程d))なしに同様に処理されている分散炭酸カルシウムの懸濁液から調製された対応するコーティングの光散乱係数Sよりも、それから作製されたコーティングに高い光散乱係数Sを与える分散炭酸カルシウムの懸濁液をもたらすことを見出した。より正確には、本発明者らは、所望の固形分レベルを調整するために対応する濃縮懸濁液を水で希釈することにより得られる分散炭酸カルシウムの懸濁液から調製されたコーティングの光学的特性が、規定されたアルカリ炭酸塩(単数または複数)および/またはアルカリ炭酸水素塩(単数または複数)の添加により改善され得ることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有することを理解されたい:
本発明によれば、「炭酸カルシウムの懸濁液」は、重質(または天然)炭酸カルシウム(GCC)および/または、合成炭酸カルシウムとしても知られている、沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む。
【0015】
本発明の意味における「重質炭酸カルシウム」(GCC)は、大理石、チョークまたは石灰石を含む天然源から得られ、例えば、粉砕、選別ならびに/または湿式および/もしくは乾式による、例えば、サイクロンによる細分などの処理によって処理された炭酸カルシウムである。
【0016】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境中での二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によって、または水中でのカルシウムと炭酸塩源との沈降によってもしくは溶液からの、カルシウムイオンと炭酸イオン、例えば、CaClとNaCOとの沈降によって得られる合成物質である。
【0017】
本発明の意味における「懸濁液」または「スラリー」は、不溶性固体および水、ならびに場合によってさらなる添加剤を含み、通常は大量の固体を含有し、したがって、それが形成される液体よりも粘性であり、一般により高い密度からなる。
【0018】
本発明の意味における「分散」炭酸カルシウムの懸濁液は、少なくとも1種の分散剤をさらに含み、したがって、分散剤(単数または複数)なしで調製される同じ炭酸カルシウムの懸濁液よりも、5cmの直径を有する歯状ディスク撹拌機を用いることにより2000rpmで5分間撹拌後により低い粘度を示す。
【0019】
本発明によれば、「光散乱係数」Sは、光を散乱させる能力が、Kubelka−Munk光散乱係数で表される、US2004/0250970に記載され、KubelkaおよびMunk(Zeitshrift fur Technische Phisik 12、539頁、(1931年))、ならびにKebelka(J.Optical Soc.Am.38(5)、448頁、(1948年)およびJ.Optical Soc.Am.44(4)、330頁、(1954年))の文献ならびにUS5,558,850にさらに記載された方法によって決定される。この係数を決定する測定方法の記載は、参照により本明細書に組み込まれる。分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の「不透明度」または「光散乱係数」は実際には、その分散炭酸カルシウムの懸濁液から作製されたコーティングまたはフィルムの「不透明度」または「光散乱係数」に相当することが理解されるべきである。言い換えれば、「不透明度」または「光散乱係数」は、懸濁液から作製されたコーティングまたはフィルムに基づいて測定または決定される。この点で、不透明度は、光散乱係数Sおよび光吸収係数Kのジョイント関数であり;すなわち、Kが低ければ低いほど、不透明度はSにより直接関連することに留意されたい。言い換えれば、高い白色度を有する物質の不透明度について観察される効果は主として、Sに対する変化の結果である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液であって、前記懸濁液が、それから作製されたコーティングに改善された光学的特性を与える分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する本発明方法によって得られる、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が提供される。別の態様によれば、本発明は、紙のコーティングのための、大量充填のためのまたは塗料およびプラスチックにおける成分としての前記水性懸濁液の使用を指す。
【0021】
本発明の別の態様は、光学的特性、特に、分散炭酸カルシウムの懸濁液から調製される得られたコーティングの光散乱係数Sを調節するための規定されたアルカリ炭酸塩(単数または複数)および/またはアルカリ炭酸水素塩(単数または複数)の少なくとも1種の使用に関する。懸濁液を水で希釈する前および/または間および/または後に少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触している分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液から調製されたコーティングの光散乱係数Sが、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の不存在下で以外は同様に希釈されている同じ懸濁液から調製されたコーティングの光散乱係数Sよりも高いことが特に好ましい。
【0022】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、35重量%から85重量%、より好ましくは65重量%から80重量%、最も好ましくは68重量%から78重量%の固形分を有する。本発明の1つの特に好ましい実施形態によれば、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、分散炭酸カルシウムの濃縮水性懸濁液であり、この濃縮水性懸濁液は好ましくは、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、70重量%から78重量%の固形分含有量を有する。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムまたはこれらの混合物からなる群から選択される。本発明によれば、前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、好ましくは炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムである。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、工程a)の懸濁液中の炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、0.001重量%から5重量%、好ましくは0.025重量%から2重量%、より好ましくは0.05重量%から1重量%、最も好ましくは0.1重量%から0.5重量%の量で添加される。
【0025】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を、アルカリ炭酸塩(単数または複数)および/またはアルカリ炭酸水素塩(単数または複数)と接触させる工程は、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈する直前、間および/または後に行われ得る。したがって、本発明方法の一実施形態によれば、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、最初に希釈され、次いで、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる。本発明方法の別の実施形態によれば、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、希釈されると同時に、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる。本発明方法のさらなる実施形態によれば、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、最初に少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させ、次いで、希釈されるが、希釈は、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触後の特定の期間内に行われなければならない。本発明方法の別の実施形態によれば、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、一度でまたは複数回に分けて希釈され、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、一度でまたは複数回に分けて添加される。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、少なくとも1種の分散剤をさらに含み、好ましくは、分散剤は、有機分散剤、無機分散剤およびこれらの混合物からなる群から選択される。本発明によれば、有機分散剤は、アクリルポリマー、ビニルポリマー、アクリルおよび/またはビニルコポリマーを含み、ならびに無機分散剤は、オルトリン酸一、二および/もしくは三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムならびに/またはポリリン酸ナトリウムを含む。本発明によれば、少なくとも1種の有機分散剤の酸性部位は、好ましくはナトリウムで部分的または全体的に中和される。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明によっておよび特に本発明方法によって得られる分散炭酸カルシウムの希釈水性懸濁液から作製されたコーティングは、20g/mのコーティング重量に対して、100m/kgから250m/kg、より好ましくは125m/kgを超える、最も好ましくは140m/kgを超える光散乱係数Sを有する。本発明の1つの特に好ましい実施形態によれば、本発明によっておよび特に本発明方法によって得られる分散炭酸カルシウムの希釈水性懸濁液から作製されたコーティングは、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の不存在で以外は同様に処理されている対応する分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の得られたコーティングの光散乱係数Sを超えて、少なくとも5m/kg、より好ましくは少なくとも10m/kg、さらにより好ましくは少なくとも15m/kg、なおより好ましくは少なくとも20m/kgの、20g/mのコーティング重量に対する光散乱係数Sを有する。
【0028】
上に示されるとおりに、改善された光学的特性を与える分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する本発明方法は、工程a)、工程b)、工程c)および工程d)を含む。以下において、それは、本発明のさらなる詳細、特に、それから作製されたコーティングに改善された光学的特性を与える分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する本発明方法の上記の工程に言及される。
【0029】
工程a):分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の提供
本発明の方法の工程a)によれば、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が提供される。懸濁液の炭酸カルシウム(CaCO)粒子は、2つのタイプからなり得る:重質(または天然)炭酸カルシウム(GCC)もしくは沈降炭酸カルシウム(PCC)またはこのようなものの混合物。
【0030】
GCCは、石灰石またはチョークなどの堆積岩から、または変成大理石岩から採鉱されて、粉砕、選別ならびに/または湿式および/もしくは乾燥形態での細分などの処理を介して、例えば、サイクロンまたは分級機によって処理された、炭酸カルシウムの天然起源の形態であると理解される。好ましくは、天然炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、方解石、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0031】
対照的に、PCCタイプの炭酸カルシウムは、水中の微粉化酸化カルシウム粒子からまたはイオン性塩溶液からの析出によって誘導される場合、一般に石灰または乳状石灰のスラリーと当技術分野で呼ばれる、水酸化カルシウムのスラリーの炭酸化によって得られる合成炭酸カルシウム生成物を包含する。PCCは、菱面体晶および/または偏三角面体および/またはアラゴナイトであり得;好ましい合成炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライトもしくはカルサイトの鉱物学的結晶形態またはこれらの混合物を含む。
【0032】
工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の粒子状炭酸カルシウムは、製造される製品の種類に関係する材料(単数または複数)について従来用いられるとおりの粒径分布を有し得る。一般に、炭酸カルシウム粒子の90重量%は、0.1μmから5μmの範囲、好ましくは0.2μmから2μmの範囲、最も好ましくは0.5μmから1.5μmの範囲のesd(Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を用いて沈降の周知の技術によって測定された等価球径)を有し得る。1つの好ましい実施形態において、炭酸カルシウム粒子の74重量%は、1μm未満の粒子esdを有し得、該粒子の12重量%は、0.2μm未満の粒子esdを有し得る。別の好ましい実施形態において、炭酸カルシウム粒子の60重量%は、1μm未満の粒子esdを有し得、該粒子の7重量%は0.2μm未満の粒子esdを有し得る。
【0033】
懸濁液中の炭酸カルシウム粒子は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を用いて測定して、0.005μmから2μm、好ましくは0.2μmから1μm、最も好ましくは0.4μmから0.8μm、例えば、0.6μmおよび0.8μmの中位径d50値を有することが好ましい。本明細書で用いられる場合および一般に当技術分野で定義される場合、d50値は、粒子体積または質量の50%(中央点)が、規定値に等しい直径を有する粒子によって占められている大きさと定義される。この方法および装置は、当業者に公知であり、一般に充填剤および顔料の粒径を決定するために用いられる。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行われる。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させる。
【0034】
好ましい実施形態において、懸濁液中の炭酸カルシウム粒子は、窒素およびISO9277に従うBET法を用いて測定して、1m/gから200m/g、より好ましくは3m/gから25m/g、最も好ましくは5m/gから15m/g、さらにより好ましくは6m/gから12m/gのBET比表面積を示す。
【0035】
本発明の炭酸カルシウム粒子は、水に懸濁しており、したがって、水性懸濁液またはスラリーを形成する。
【0036】
好ましくは、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、35重量%から85重量%、好ましくは65重量%から80重量%、より好ましくは68重量%から78重量%、最も好ましくは70重量%から78重量%の炭酸カルシウム含有量を有する。特に好ましい実施形態によれば、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、輸送に特に適した分散炭酸カルシウムの濃縮懸濁液である。一方で、懸濁液は、経済的に有利な輸送を可能にするために濃縮されなければならず、他方で、安定でなければならない(有意な沈降がない)。好ましくは、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、70重量%から78重量%の炭酸カルシウムの固形分を有する。したがって、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、好ましくは35重量%未満、より好ましくは30重量%未満の水含有量を有する。
【0037】
本発明によれば、粒子状炭酸カルシウムは、工程a)の水性懸濁液中に分散しており、したがって、懸濁液は、適切な分散剤をさらに含む。
【0038】
このような分散剤は、好ましくは少なくとも1種の無機分散剤および/または有機分散剤である。好ましくは、このような有機分散剤は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーおよび/またはコモノマーからできている。1つの好ましい実施形態において、少なくとも1種の有機分散剤は、アクリルポリマー、ビニルポリマー、アクリルおよびビニルコポリマーならびにこれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、特にポリアクリル酸と組み合わせた、無機分散剤、例えば、オルトリン酸一、二および/もしくは三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムならびに/またはポリリン酸ナトリウムが分散剤として使用される。
【0039】
多数の酸性部位を有するアクリルポリマー、ビニルポリマー、アクリルおよびビニルコポリマーまたはこれらの混合物などの有機分散剤は、部分的または全体的に中和され得る。1つの好ましい実施形態において、本発明によって使用され得る有機分散剤は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のイオンを含有する中和剤を用いて、部分的または全体的に、好ましくは5%から100%の程度に、より好ましくは25%から100%の程度に、最も好ましくは75%から100%の程度に中和される。特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の有機分散剤の酸性部位は、ナトリウムのみを含有する中和剤を用いて中和される。別の特に好ましい実施形態において、有機分散剤の酸性部位は、カリウムのみを含有する中和剤を用いて中和される。さらに特に好ましい実施形態において、有機分散剤の酸性部位は、ナトリウムおよびカリウムの混合物を含有する中和剤を用いて中和される。別の好ましい実施形態において、有機分散剤の酸性部位は、炭酸カルシウムの水性懸濁液中に含有されるアルカリ土類金属のイオンによって、例えば、有機分散剤と懸濁液中の粒子とのインサイチューでの反応によって部分的または全体的に中和され;すなわち、有機分散剤は、対応する未中和有機分散剤の形態で前記懸濁液中に添加され、炭酸カルシウムの水性懸濁液中へのその添加後に部分的または全体的に中和される。この場合、有機分散剤の酸性部位は、前記アルカリ土類金属のイオンによって、好ましくは5%から100%の程度、より好ましくは25%から100%の程度、最も好ましくは75%から100%の程度に、部分的または全体的に中和される。1つの好ましい実施形態において、有機分散剤の酸性部位は、カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンによって部分的または全体的に中和される。
【0040】
このような有機および/または無機分散剤は、好ましくは1000g/molから100000g/mol、好ましくは2000g/molから40000g/mol、より好ましくは3000g/molから35000g/molの分子量を有し得る。特に、有機分散剤の酸性部位が、アルカリ金属のイオンを含有する中和剤で部分的または全体的に中和される場合、このような分散剤は、好ましくは1000g/molから100000g/mol、より好ましくは2000g/molから40000g/mol、最も好ましくは3000g/molから35000g/molの分子量を有し得る。分散剤の酸性部位が、アルカリ土類金属のイオンを含有する中和剤で部分的または全体的に中和される場合、このような分散剤は、好ましくは3000g/molから20000g/molの分子量を有し得る。
【0041】
分散炭酸カルシウムの懸濁液中の分散剤の全量は、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、0.05重量%から2.0重量%、好ましくは0.1重量%から1.2重量%、最も好ましくは0.2重量%から0.8重量%の範囲であり得る。
【0042】
別の好ましい実施形態において、分散炭酸カルシウムの懸濁液中の分散剤の全量は、懸濁液中の炭酸カルシウム含有量に基づいて、0.075重量%から3.0重量%、好ましくは0.15重量%から1.8重量%、最も好ましくは0.3重量%から1.2重量%の範囲であり得る。
【0043】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは、前記希釈懸濁液を濃縮することによって、対応する炭酸カルシウムの希釈水性懸濁液から得られる。対応する炭酸カルシウムの懸濁液の濃度は、熱的処理によって、例えば、蒸発器において、または機械的処理によって、例えば、フィルタープレスおよび/もしくは遠心分離において達成され得る。
【0044】
分散剤は、好ましくは、対応する炭酸カルシウムの懸濁液の濃縮前または後に添加される。分散剤を添加する時点は、対応する炭酸カルシウムの懸濁液を濃縮するための選択された処理に依存し得;すなわち、分散剤の添加は、熱的または機械的処理が用いられるかどうかに依存し得る。
【0045】
炭酸カルシウムの懸濁液の濃縮が、熱的処理によって行われる場合、濃縮は、好ましくは分散剤の存在下で行われ、この分散剤は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を得るべく、炭酸カルシウム粒子を懸濁液中に細かく分散させて維持するために懸濁液に添加される。
【0046】
炭酸カルシウムの懸濁液の濃縮が、機械的処理によって行われる場合、濃縮は、好ましくは分散剤の不存在下で行われる。次いで、得られた炭酸カルシウムのろ過ケーキは、好ましくは、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を得るべく、炭酸カルシウム粒子を懸濁液中に細かく分散させて維持するために分散剤と一緒に水に分散させる。
【0047】
さらに、炭酸カルシウム粒子は、本発明の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する方法の前にさらに粉砕され得る。好ましくは、粉砕工程は、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を得るための前記対応する懸濁液の濃縮前に行われる。炭酸カルシウム粒子の粉砕は、好ましくは分散剤の不存在または存在下で行われる。炭酸カルシウム粒子の粉砕工程が分散剤の不存在下で行われる場合、対応する懸濁液は、対応する炭酸カルシウムの懸濁液の全重量に基づいて、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは20重量%未満の固形分を有する。炭酸カルシウム粒子の粉砕工程が、分散剤の存在下が行われる場合、対応する懸濁液は、対応する炭酸カルシウム懸濁液の全重量に基づいて、好ましくは30重量%を超える、より好ましくは60重量%を超える、最も好ましくは70重量%を超える、例えば、72重量%から82重量%の固形分を有する。粉砕工程は、当業者に知られた粉砕ミルなどの任意の従来の粉砕装置で行われ得る。
【0048】
通常、本発明による分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、7.5から12の範囲のpH値、好ましくは8から11のpH値、より好ましくは8.5から10.5のpH値、最も好ましくは9から10.5のpH値を有する。粘度は、5cmの直径を有する歯状ディスク撹拌機を用いることによって2000rpmで5分間撹拌後、LV−3スピンドルを備えたBrookfield DV−II粘度計によって100rpmの速度で測定して、50mPa・sから800mPa・sの範囲、より好ましくは150mPa・sから600mPa・sの範囲である。
【0049】
工程b)少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の提供
本発明の方法の工程b)によれば、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が提供される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩のアルカリイオンは、好ましくは、ナトリウム、カリウムおよびこれらの混合物を含む群から選択される。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよびこれらの混合物は、本発明の好ましいアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩である。
【0051】
1つの好ましい実施形態において、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、炭酸ナトリウムである。別の好ましい実施形態において、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、炭酸カリウムである。さらに好ましい実施形態において、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの混合物である。
【0052】
炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの混合物が、本発明によって用いられる場合、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムとのモル比は、99:1から1:99、より好ましくは50:1から1:50、さらにより好ましくは25:1から1:25、最も好ましくは10:1から1:10である。本発明の1つの特に好ましい実施形態において、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムとのモル比は、約1:1である。別の好ましい実施形態において、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、炭酸カリウムナトリウム(Na(CO)である。
【0053】
アルカリ炭酸塩およびアルカリ炭酸水素塩の混合物が、本発明によって用いられる場合、アルカリ炭酸塩とアルカリ炭酸水素塩とのモル比は、99:1から1:99、より好ましくは50:1から1:50、さらにより好ましくは25:1から1:25、最も好ましくは10:1から1:10である。本発明の1つの特に好ましい実施形態において、アルカリ炭酸とアルカリ炭酸水素塩とのモル比は、約1:1である。
【0054】
本発明の文脈において、「炭酸ナトリウム」という用語は、無水形態ならびに結晶水を含む形態(水和物)の炭酸ナトリウムを包含するものとする。したがって、「炭酸ナトリウム」という用語は、無水炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸ナトリウム一水和物(NaCO・HO)、炭酸ナトリウム二水和物(NaCO・2HO)、炭酸ナトリウム五水和物(NaCO・5HO)、炭酸ナトリウム七水和物(NaCO・7HO)、炭酸ナトリウム十水和物(NaCO・10HO)および二炭酸水素三ナトリウム・二水和物(NaHCOCO・2HO)、セスキ炭酸ナトリウム(NaH(CO)、および重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩ならびにこれらの混合物を含む。好ましくは、本発明の炭酸ナトリウムは、無水炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸ナトリウム一水和物(NaCO・HO)、炭酸ナトリウム七水和物(NaCO・7HO)、炭酸ナトリウム十水和物(NaCO・10HO)およびこれらの混合物からなる群から選択される。1つの特に好ましい実施形態において、本発明の炭酸ナトリウムは、無水炭酸ナトリウム(NaCO)または炭酸ナトリウム十水和物(NaCO・10HO)である。
【0055】
「炭酸カリウム」という用語はまた、無水形態ならびに結晶水を含む形態(水和物)の炭酸カリウムを指す。したがって、「炭酸カリウム」という用語は、無水炭酸カリウム(KCO)、炭酸カリウムセスキ水和物(KCO・1.5HO)、炭酸カリウム二水和物(KCO・2HO)、炭酸カリウム三水和物(2KCO・3HO)、炭酸カリウム六水和物(KCO・6HO)、炭酸カリウム八水和物(KCO・8HO)、炭酸カリウム十水和物(KCO・10HO)および重炭酸カリウムなどの重炭酸塩ならびにこれらの混合物を包含する。好ましくは、本発明の炭酸カリウムは、無水炭酸カリウム(KCO)である。
【0056】
本発明の文脈において、「炭酸水素ナトリウム」という用語は、無水形態ならびに結晶水を含む形態(水和物)の炭酸水素ナトリウムを包含するものとする。したがって、「炭酸水素ナトリウム」という用語は、無水炭酸水素ナトリウム(NaHCO)および炭酸水素ナトリウム一水和物(NaH(CO・HO)、炭酸水素ナトリウム二水和物(NaH(CO・HO)ならびにこれらの混合物を包含する。好ましくは、本発明の炭酸水素ナトリウムは、無水炭酸水素ナトリウム(NaHCO)である。
【0057】
本発明の文脈において、「炭酸水素カリウム」という用語はまた、無水形態ならびに結晶水を含む形態(水和物)を包含するものとする。好ましくは、本発明の炭酸水素カリウムは、無水炭酸水素カリウム(KHCO)である。
【0058】
少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を、前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液と接触させる場合、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、対応する個々のイオン基、すなわち、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンおよび/またはヒドロニウムイオンなどのカチオン性基ならびに炭酸塩および/または炭酸水素塩のアニオン性基に解離する。
【0059】
本発明のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、好ましくは、それが、工程a)の懸濁液中の炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、0.001重量%から5重量%、好ましくは0.025重量%から2重量%、より好ましくは0.05重量%から1重量%、最も好ましくは0.1重量%から0.5重量%の濃度で、得られた分散炭酸カルシウムの懸濁液中に含有されるような量で添加される。
【0060】
別の好ましい実施形態において、アルカリ炭酸塩および/アルカリ炭酸水素塩は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、約0.00075重量%から7.5重量%の範囲、より好ましくは約0.0075重量%から3.75重量%の範囲、さらにより好ましくは約0.075重量%から2.0重量%の範囲、最も好ましくは約0.2重量%から1.25重量%の範囲で添加される。
【0061】
本発明の意味におけるアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩のモル比、重量比および量は、それぞれ、無水形態のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩;すなわち、さらなる結晶水なしのアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を指すことが留意されるべきである。さらに、上記の比および量は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加されているアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の比および量を反映し、前記アルカリ炭酸塩の部分の対応するアルカリ炭酸水素塩への変換を考慮せず、逆もまた同様である。この文脈において、前記変換は、前記懸濁液のpH値に依存して、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液中で自然に起こることがさらに留意されるべきである。
【0062】
pH値に関して、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液のpH値は、前記懸濁液を少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触されることにより変化し得ることがさらに留意されるべきである。このようなpH値における変化が観察される場合、前記懸濁液を少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させた後の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液のpH値は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液について測定されたpH値を超えて、最大で4単位(1単位=1,0)、好ましくは最大で3単位、より好ましくは最大で2単位、さらにより好ましくは最大で1単位、最も好ましくは最大で0.5単位でなければならない。しかし、pH値の変化が観察される場合でさえも、得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、前記懸濁液を少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させた後に7.5から12の範囲のpH値、好ましくは8から11のpH値、より好ましくは8.5から10.5のpH値および最も好ましくは9から10.5のpH値を有する。
【0063】
少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、任意の適切な固体形態で、例えば、顆粒または粉末の形態で分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され得る。代替として、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、懸濁液または溶液の形態で分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され得る。
【0064】
好ましくは、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液中の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の濃度は、炭酸カルシウム:アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の重量比が、250:1から10:1、より好ましくは200:1から25:1、さらにより好ましくは175:1から60:1であるようなものである。少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、炭酸ナトリウムである場合、炭酸カルシウム懸濁液中の濃度は、好ましくは、炭酸カルシウム:炭酸ナトリウムとの重量比が、200:1から10:1、より好ましくは150:1から25:1、さらにより好ましくは100:1から50:1であるようなものである。
【0065】
少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、炭酸カリウムである場合、炭酸カルシウムの懸濁液中の濃度は、好ましくは、炭酸カルシウム:炭酸カリウムとの重量比が、250:1から50:1、より好ましくは200:1から100:1、さらにより好ましくは175:1から120:1であるようなものである。
【0066】
上記の数字は、本発明によって処理されていない分散炭酸カルシウムの懸濁液の対応するコーティングと比較して、分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液から作製されたコーティングの光学的特性、特に不透明度を改善するために、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加されているアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の量を反映することが留意されるべきである。したがって、数字は、水性懸濁液中に自然に存在し得るまたは本発明方法、特に希釈工程を行う前に添加され得た任意のアルカリ炭酸塩(単数または複数)および/またはアルカリ炭酸水素塩(単数または複数)に及ぶことが意図されない。炭酸カルシウムの懸濁液中の溶解した天然起源のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の量は、無視でき、懸濁液の炭酸カルシウム含有量に基づいて、100ppmより十分に少ない。
【0067】
工程c):工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の希釈:
本発明の方法の工程c)によれば、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、水で希釈される。
【0068】
本発明の一実施形態において、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、水で希釈されて、分散炭酸カルシウムの懸濁液の取扱い(例えば、ポンプによる送り込み)および使用または塗布を可能とさせる、固形分を有する分散炭酸カルシウムの懸濁液を生じる。言い換えれば、希釈工程c)は、分散炭酸カルシウムの濃縮(輸送可能な)懸濁液を、さらなる使用または取扱いがすぐできる分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液に変換するのに役立ち得る。好ましくは、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、希釈されて、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、最大で70重量%、好ましくは30重量%から70重量%、より好ましくは50重量%から68重量%、最も好ましくは55重量%から65重量%の炭酸カルシウムの含有量を生じる。
【0069】
好ましい実施形態において、分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液の水含有量は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の水含有量を超えて、1重量%から25重量%、より好ましくは5重量%から15重量%、最も好ましくは8重量%から13重量%であり、ここで、上記の重量%の数字は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の水含有量に基づく。
【0070】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈するために用いられる水は、水道水および/または脱イオン水であってもよい。好ましくは、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈するために用いられる水は、脱イオン水である。
【0071】
本発明の1つの好ましい実施形態において、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、懸濁液中の適当な炭酸カルシウム濃度に、一度でおよび/または1時間以下の期間にわたって、好ましくは45分以下の期間にわたって、より好ましくは30分以下の期間にわたって、最も好ましくは15分以下の期間にわたって連続的に希釈される。特に好ましい実施形態において、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、懸濁液中の適当な炭酸カルシウム濃度に、10分以下の期間にわたって希釈される。本発明の別の好ましい実施形態において、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、懸濁液中適当な炭酸カルシウム濃度に、数回に分けて、好ましくは2から5回に分けて、より好ましくは2から4回に分けて、さらにより好ましくは2から3回に分けて、最も好ましくは2回に分けて希釈される。
【0072】
工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、数回に分けて希釈される場合、水は、好ましくは、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液にほぼ等しい部分で添加される。代替として、水を、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に等しくない部分で、すなわち、より多い部分およびより少ない部分で添加することも可能であり、ここで、2回の部分を添加する場合、より多い部分のより少ない部分に対する重量比は、好ましくは60:40、より好ましくは70:30、さらにより好ましくは80:20、最も好ましくは90:10である。1つの好ましい実施形態において、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈するために、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に、より多い部分の水が、最初に添加され、続いてより少ない部分が添加される。別の好ましい実施形態において、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈するために、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に、より少ない部分の水が最初に添加され、続いて、より多い部分が添加される。
【0073】
好ましくはロータ・ステータミキサを用いることによって、撹拌の間に分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈することが特に好ましい。
【0074】
工程d):分散炭酸カルシウムの懸濁液と、前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩との接触
本発明の方法の工程d)によれば、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、工程c)の前および/または間および/または後に、水環境中で前記工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる。前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは、以下の経路の1つまたは複数を介して工程d)で処理される:
経路IA:同時に、前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を前記工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させ、および工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈する;
経路IIA:最初に、前記工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈し、次いで、分散炭酸カルシウムの希釈懸濁液を前記工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる;
経路IIIA:最初に、前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を前記工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させ、次いで、前記工程a)の分散炭酸カルシウムの懸濁液を希釈する。
【0075】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を、同時に、希釈し、および少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる場合(経路IA)、添加前の前記アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、好ましくは、分散炭酸カルシウムの懸濁液の希釈のために必要とされるまたは用いられる一部のまたは全部の量の水とブレンドまたは混合される。結果として、アルカル炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の懸濁液または溶液は、工程d)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され得る。
【0076】
アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の懸濁液または溶液は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に、一度でおよび/または1時間以下の期間にわたって、好ましくは45分以下の期間にわたって、より好ましくは30分以下の期間にわたって、最も好ましくは15分以下の期間にわたって、特に好ましい実施形態において、10分以下の期間にわたって連続的に添加される。別の好ましい実施形態において、水ならびにアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の混合物は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液にいくつかの回に分けて、例えば、2回に分けて等しい量で添加される。分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、数回に分けて希釈される場合、添加前に分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈し、次いで前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を含有する部分を分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加するために、わずかに一部の水の中で少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩をブレンドまたは混合することも可能である。前記部分をすべて添加後に、少なくとも一回のさらなる部分の水が、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され得る。
【0077】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、経路IIAを介して前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる前に希釈される場合、アルカリ炭酸塩およびアルカリ炭酸水素塩は、例えば、分散炭酸カルシウムの希釈水性懸濁液に、一度でおよび/または15分以下の期間にわたって、好ましくは10分以下の期間にわたって、より好ましくは5分以下の期間にわたって連続的に添加され得る。再度、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の懸濁液または溶液は、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を添加するために用いられ得る。代替として、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、固体形態で、例えば、粉末として添加され得る。
【0078】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは、工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の希釈後3日以内に、より好ましくは2日以内に、最も好ましくは24時間以内に接触させる。特に、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の希釈後12時間以内に、好ましくは6時間以内に、より好ましくは4時間以内に、さらにより好ましくは2時間以内に、最も好ましくは1時間以内に接触させる。
【0079】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、数回に分けて希釈される場合、その添加前に分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈するために一部の水中で少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩をブレンドまたは混合することも可能である。さらなるアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩をまったく含有しない、少なくとも一回分の水を添加後に、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を含有する部分は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができ、逆もまた同様である。
【0080】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を、経路IIIAを介して接触させる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液と接触させた後に希釈される場合、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、例えば、一度でおよび/または20分以下の期間にわたって、好ましくは15分以下の期間にわたって、より好ましくは10分以下の期間にわたって、最も好ましくは5分の期間にわたって連続的に、特に好ましい実施形態において一度で添加され得る。本発明のこの実施形態によれば、希釈(工程c))は、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の全部の添加直後に行われるべきである。本発明の意味における「直ちに」という用語は、工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の全部の添加後45分未満、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満、さらにより好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満の時間の期間に関する。
【0081】
前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、上記の経路の2以上を介して処理される場合、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の希釈前、間および後に、工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる。
【0082】
アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、例えば、工程a)の分散炭酸カルシウムの懸濁液に、数回に分けておよび/または15分以下の期間にわたって、好ましくは10分以下の期間にわたって、より好ましくは5分以下の期間にわたって連続的に添加され得る。前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の連続的添加の間に、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは、1回分でおよび/または一定期間にわたって連続的に希釈され、ここで、前記期間は、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の添加に必要とされる期間よりも短い。したがって、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる間に希釈されるが、前記接触は、その添加が完了する前に終了させる。再度、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の懸濁液または溶液は、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を添加するために使用され得る。
【0083】
代替として、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、固体形態で、例えば、粉末として添加され得る。
【0084】
少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、工程a)の分散炭酸カルシウムの懸濁液に数回に分けて添加される場合、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、好ましくは、少なくとも3回にかけて等しいおよび/または等しくない量で添加される。本発明のこの実施形態において、少なくとも一回分の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、前記水性懸濁液が希釈される前に工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され、少なくとも1回分の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、前記水性懸濁液が希釈される間に工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加され、ならびに少なくとも一回分の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、前記水性懸濁液が希釈された後に工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加される。この実施形態によれば、希釈(工程c))は、最初の部分の工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の添加後45分未満、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満、さらにより好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満の期間内に行われるべきである。好ましくは、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、固体形態で、例えば、粉末として、または代わりに、懸濁液もしくは溶液の形態で添加され得る。一実施形態において、少なくとも一回分の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の希釈のために用いられる水に溶解させ得る。
【0085】
1つの好ましい実施形態において、工程d)は、好ましくは70℃未満、より好ましくは50℃未満、最も好ましくは30℃未満の温度で行われる。しかし、工程d)は、好ましくは10℃を超える、より好ましくは15℃を超える温度で行われる。特に、工程d)は、室温、好ましくは18℃から25℃で行われる。本発明の別の好ましい実施形態において、工程d)は、50℃から70℃、より好ましくは55℃から65℃の温度で行われる。
【0086】
さらなる好ましい実施形態では、工程d)は、工程a)の分散炭酸カルシウムの懸濁液を工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と水環境中で接触させるために、連続撹拌下で行われる。
【0087】
工程d)が行われた後で、このように得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは5℃から90℃、より好ましくは10℃から60℃、最も好ましくはほぼ室温、例えば、18℃から25℃の温度で保存される。
【0088】
工程d)が、50℃から70℃の温度で行われる場合、このように得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、好ましくは、約18℃から25℃の室温にゆっくりと冷却される。特に、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、数週間の期間にわたって、好ましくは2から4週間の期間にわたって、最も好ましくは約3週間の期間にわたって室温に冷却される。得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の冷却は、好ましくは、室温に1日当たり1℃から3℃の一定速度で行われる。1つの好ましい実施形態において、得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の冷却は、室温に1日当たり1.5℃から2℃の一定速度で行われる。
【0089】
本発明の方法によって、分散炭酸カルシウムの濃縮水性懸濁液から得られる分散炭酸カルシウムの希釈水性懸濁液から作製されたコーティングは、高度に不透明であり、したがって、分散炭酸カルシウムの濃縮水性懸濁液の容易で、経済的な輸送を可能にする。本発明によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の得られたコーティングは、従来の方法で、すなわち、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の不存在下で、水のみで希釈されている懸濁液から調製された対応するコーティングと比較して、改善された光学的特性を有する。本発明の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から作製されたコーティングは、単に水で希釈することにより得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の対応するコーティングと比較してより高い光散乱係数Sを与える。前記光散乱係数Sおよび本発明に関係する光散乱係数Sのすべては、本明細書で規定さる測定方法によって決定され、以下の実施例の項で示される。
【0090】
好ましい実施形態において、得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から作製されたコーティングは、20g/mのコーティング重量について100m/kgから250m/kg、より好ましくは125m/kgを超える、最も好ましくは140m/kgを超える光散乱係数Sを有する。
【0091】
1つの好ましい実施形態において、得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から作製されたコーティングの光散乱係数Sは、20g/mのコーティング重量について、工程d)を行わない以外は同様に処理されている対応する分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の得られたコーティングの光散乱係数Sを超えて、少なくとも5m/kg、より好ましくは少なくとも10m/kg、さらにより好ましくは少なくとも15m/kg、なおより好ましくは少なくとも20m/kgである。
【0092】
好ましくは、得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の光散乱係数Sは、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が工程d)によって処理された後、数時間から数週間以内で、好ましくは4週間以内で、より好ましくは1週間以内で、最も好ましくは24時間以内で調整される(すなわち、最終または安定値が得られる)。
【0093】
本発明の方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、7.5から12の範囲のpH値、好ましくは8から11のpH値、より好ましくは8.5から10.5のpH値、最も好ましくは9から10.5のpH値を有する。粘度は、直径5cmを有する歯状ディスク撹拌機を用いることによって2000rpmで5分間撹拌後、LV−3スピンドルを備えたBrookfield DV−II粘度計によって100rpmの速度で測定して、50mPa・sから800mPa・sの範囲、より好ましくは150mPa・sから600mPa・sの範囲である。1つの好ましい実施形態において、本発明の方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の粘度は、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液について測定されたものと、;すなわち、工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の粘度とほぼ同じである。
【0094】
工程b)の少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩は、好ましくは、濃度比が、目下の不透明度の問題に依存して個別に調整され得るように、別個に計量した添加剤の形態で(例えば、単独のバッチまたは部分の形態で)提供され得る。
【0095】
このように得られた分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、紙、ティッシュペーパー、プラスチックまたは塗料で使用され得る。特に、前記水性懸濁液は、紙の大量充填および/またはコーティングの分野で使用され得る。特に、本発明によるコーティング組成物および/または大量充填剤組成物は、これらが、本発明の方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を含有すること、およびそれらが、20g/mのコーティング重量について、100m/kgから250m/kg、より好ましくは125m/kgを超える、最も好ましくは140m/kgを超える光散乱係数Sの値によって測定された、可視光を散乱させる能力を有することを特徴とする。製造されたおよび/またはコーティングされた紙は、これらが、前記本発明の方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を含有することを特徴とする。別の利点として、本発明の方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液は、例えば、鉄塩または着色化合物を除くことなしに製紙用途で直接に使用され得る。
【0096】
以下の実施例は、本発明をさらに説明し得るが、本発明を例示された実施形態に限定することを意味しない。以下の実施例により、本発明による分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の得られたコーティングの不透明度などの良好な光学的特性が示される。
【実施例】
【0097】
測定方法
以下の測定方法を用いて、実施例および特許請求の範囲で示されるパラメータを評価する。
【0098】
光散乱係数
光散乱係数「S」は、12部(乾燥基準で)のAcronal(商標)S 360D、BASFの紙のコーティング結合剤および88部(乾燥基準で)の炭酸カルシウム懸濁液を用いて紙のコーティングカラーを調製し、実験室用コータTyp Model 624(Ericksen、58675Hemer、独国製)を用いて一連の異なるコート重量でプラスチック支持材(Synteape、Argo Wiggins)上にコーティングすることによって測定した。
【0099】
光散乱係数Sは、US2004/0250970に記載された方法に従って測定し、ここで、光を散乱させる能力は、専門家に周知であって、KubelkaおよびMunk(Zeitshrift fur Technische Physik 12、539頁、(1931年))およびKubelka(J.Optical Soc.Am.38(5)、448頁、(1948年)およびJ.Optical Soc.Am.44(4)、330頁、(1954年))の文献に記載された方法によって決定して、Kubelka−Munk光散乱係数で表す。光散乱係数Sは、20g/mで内挿された値として引用する。
【0100】
Brookfield粘度
懸濁液のBrookfield粘度は、5cmの直径を有する歯状ディスク撹拌機を用いることにより2000rpmで5分間撹拌後、LV−3スピンドルを備えたBrookfield粘度計タイプRVTによって100rpmの速度および室温(20±3℃)で決定した。
【0101】
原料の分子量
ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および対応する多分散性のすべては、参照記号PSS−PAA 18K、PSS−PAA 8K、PSS−PAA 5K、PSS−PAA 4KおよびPSS−PAA 3KとともにPolymr Standard Serviceより供給される一連の5つのポリアクリル酸ナトリウム標準で較正した、水系ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法に従って、pH8で100モル%ナトリウム塩として測定する。
【0102】
原料のBET比表面積
BET比表面積は、250℃で30分間加熱することにより試料を調整後に、窒素を用いてISO9277に従うBET法によって測定する。このような測定前に、試料をろ過し、すすぎ洗いし、オーブン中110℃で少なくとも12時間乾燥させる。
【0103】
粒子状原料の粒径分布(直径<Xをもつ粒子の質量%)および重量中位径(d50
粒子状原料の重量中央粒径および粒径質量分布は、沈降法、すなわち、重力場における沈降挙動の分析によって決定する。測定は、Sedigraph(商標)5120によって行う。
【0104】
方法および機器は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行う。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させる。
【0105】
水性懸濁液のpH
水性懸濁液のpHは、標準pH計を用いて約22℃で測定する。
【0106】
水性懸濁液の固形分
懸濁液の固形分(「乾燥重量」としても知られる)は、Mettler−Toledo、スイス国により市販されているMoisture Analyzer HR73を用いて、以下の設定:120℃の温度、自動スイッチオフ3、標準乾燥、5−20gの懸濁液で決定する。
【0107】
高分子電解質滴定(PET)手順
水性懸濁液中の高分子電解質含有量は、Mettler−Toledo、スイス国により市販されている、Phototrode DP660を備えたMemotitrator Mettler DL55を用いて決定する。高分子電解質含有量の測定は、炭酸カルシウム懸濁液の試料を滴定容器中に秤量し、前記試料を脱イオン水で約40mlの容量まで希釈することにより行った。その後、10mlの0.01Mカチオン性ポリ(N,N−ジメチル−3,5−ジメチレン−ピペリジニウムクロリド)(PDDPC;ACROS Organics、ベルギー国から得た)を滴定容器中に撹拌下で、5分以内でゆっくり添加し、次いで、容器の内容物をさらに20分間撹拌する。その後、懸濁液を0.2μmのミックスエステルメンブレンフィルター(mix−ester membrane filter)(直径47mm)を通してろ過し、5mlの脱イオン水で洗浄する。このようにして得たろ液を5mlのリン酸緩衝液pH7(Riedel−de Haen、独国)で希釈し、次いで、0.01Mのポリビニル硫酸カリウム(KPVS;SERVA Feinbiochemica、ハイデルベルグから得た)溶液をろ液にゆっくりと添加し、過剰のカチオン性試薬を滴定する。滴定の終点は、このような測定前に、脱イオン水中で1200から1400mVに調整する、Phototrode DP660により検出する。電荷計算は、以下の評価:
【0108】
【数1】

によって行う。
【0109】
最適試料重量の計算:
【0110】
【数2】

【0111】
4ml消費に適合した試料重量の計算:
【0112】
【数3】

【0113】
略語
=試料重量[g]
DM=分散剤含有量([%])
DM=分散剤定数[μVal/0.1mg分散剤]
Fk=固形分[%]
PDDPC=容量PDDPC[ml]
KPVS=容量KPVS[ml]
PDDPC=力価PDDPC
DM=分散剤重量[mg]
Q=電荷[μVal/g]
atro=分散剤含有量atro(絶対乾燥)[%]
=最適化される実験の試料重量[g]
KPVS,1=最適化される実験の実験に基づく消費KPVS[ml]
【0114】
[実施例1]
以下の本発明の例証となる実施例は、まったくアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を添加することなしに同じ分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈すること(従来技術)と比較して、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を炭酸ナトリウムと接触させ、前記懸濁液を希釈することによる、0.8μmのd50を有するノルウェー原産の天然重質炭酸カルシウムの調製を含む。
【0115】
炭酸カルシウムの水性懸濁液1A
10−300mmの直径を有する、Molde、Norway地方のノルウェー産大理石の岩を、42−48μmの範囲のd50の微粉度に自生乾燥粉砕(すなわち、粉砕媒体の不存在下で)させる。
【0116】
この鉱物を、74重量%の粒子が<1μmの直径を有し、12重量%の粒子が<0.2μmの直径を有するまで、微粉度に、分散助剤および/または粉砕助剤などの添加剤を添加することなしに、再循環モードの垂直摩砕機ミル(Dynomill)において水道水中10−15重量%固形分で湿式粉砕する。粉砕後、生成物は、0.61μmの中位径d50および10.2m/gの比表面積を有する。
【0117】
得られた鉱物を、75重量%の最終の炭酸カルシウム含有量まで蒸発器中でさらに熱的に濃縮し(up−concentrated)、分散剤として0.45重量%のポリアクリル酸ナトリウム(Mw6000)および0.25重量%のリン酸水素ナトリウムをさらに用いる。
【0118】
熱的濃縮の間に、試料を採取し、これらの試料の光散乱係数Sを測定する。
【0119】
以下の表1は、前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から採取した試料の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム含有量ならびにその光散乱係数を示す:
【0120】
【表1】

コーティングカラーは、上記測定方法で概略されたとおりに、対応する分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から調製され、結合剤をさらに含む。
【0121】
炭酸カルシウムの水性懸濁液IB(従来技術)
試料5の懸濁液を、蒸留水を用いて62.0重量%の炭酸カルシウム固形分に希釈して戻し、保存した。3週間後、光散乱係数Sを決定した。以下の表2は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム固形分ならびにその光散乱係数を示す:
【0122】
【表2】

【0123】
炭酸カルシウムの水性懸濁液IC(本発明)
試料5の懸濁液を蒸留水を用いることにより62重量%の炭酸カルシウム固形分に希釈した。次いで、懸濁液中の炭酸カルシウム固形分に対して1.0重量%の炭酸ナトリウムを添加し、保存した。3週間後、S値を決定した。以下の表3は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム固形分ならびにその光散乱係数を示す:
【0124】
【表3】

【0125】
[実施例2]
以下の本発明の例証となる実施例は、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩をまったく添加することなしに同じ分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を希釈すること(従来技術)と比較して、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を炭酸カリウムと接触させ、前記懸濁液を希釈することによる、0.8μmのd50を有するノルウェー原産の天然重質炭酸カルシウムの調製を含む。
【0126】
炭酸カルシウムの水性懸濁液2A
最初の工程で、10mmから300mmの直径を有する、Molde、ノルウェー地方のノルウェー産大理石の岩を、42μmから48μmの範囲のd50の微粉度に自己乾燥粉砕(すなわち、粉砕媒体の不存在下で)させる。
【0127】
得られた炭酸カルシウムを、60重量%の粒子が<1μmの直径を有し、7重量%の粒子が<0.2μmの直径を有するまで、微粉度に、分散助剤および/または粉砕助剤などの添加剤を添加することなしに、再循環モードの垂直摩砕機ミル(Dynomill)において、10−15重量%の炭酸カルシウム含有量で水道水中湿式粉砕する。粉砕後、生成物は、0.81μmの中位径d50および6.1m/gの比表面積を有する。
【0128】
炭酸カルシウムの水性懸濁液2B(従来技術)
炭酸カルシウムの水性懸濁液2Aを、72.8重量%固形物の最終炭酸カルシウム含有量にフィルタープレスにより機械的に濃縮し、分散剤としてモル1:1のポリアクリル酸/マレイン酸コポリマー(Mw12000)のナトリウム塩0.38重量%を添加することにより撹拌下で分散させる。6時間後、S値を決定した。以下の表4は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム含有量ならびにその光散乱係数を示す:
【0129】
【表4】

【0130】
炭酸カルシウムの水性懸濁液2C(従来技術)
炭酸カルシウムの水性懸濁液2Aを、65.0重量%固形物の最終炭酸カルシウム含有量にフィルタープレスにより機械的に濃縮し、分散剤としてモル1:1のポリアクリル酸/マレイン酸コポリマー(Mw12000)のナトリウム塩0.38重量%を添加することにより撹拌下で分散させる。6時間後、S値を決定した。以下の表5は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム含有量ならびにその光散乱係数を示す:
【0131】
【表5】

【0132】
炭酸カルシウムの水性懸濁液2D(本発明)
炭酸カルシウムの水性懸濁液2Aを、72.8重量%固形物の最終炭酸カルシウム含有量にフィルタープレスにより機械的に濃縮し、分散剤としてモル1:1のポリアクリル酸/マレイン酸コポリマー(Mw12000)のナトリウム塩0.38重量%を添加することにより撹拌下で分散させる。さらに、炭酸カルシウムの濃縮水性懸濁液を、65.6重量%固形物の最終炭酸カルシウム含有量に蒸留水を用いることにより希釈し、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、0.5重量%の炭酸カリウムと接触させる。6時間後、S値を決定した。以下の表6は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム含有量ならびにその光散乱係数を示す:
【0133】
【表6】

【0134】
炭酸カルシウムの水性懸濁液2E(本発明)
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液2Dを、さらに9日間さらに保存し、この期間後にS値を決定した。以下の表7は、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の特性ならびに対応する懸濁液およびコーティングカラーの炭酸カルシウム含有量ならびにその光散乱係数を示す:
【0135】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作製されるコーティングに改善された光学的特性を与える、分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製する方法であって、
a)分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を提供する工程;
b)アルカリイオンが、カリウムおよび/またはナトリウムから選択される、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩を提供する工程;
c)前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を水で希釈する工程;ならびに
d)工程c)の前および/または間および/または後に、前記分散炭酸カルシウムの水性懸濁液を前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)で提供される分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の全重量に基づいて、35重量%から85重量%、好ましくは65重量%から80重量%、より好ましくは68重量%から78重量%、最も好ましくは70重量%から78重量%の固形分を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムまたはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、工程a)の懸濁液の炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、0.001重量%から5重量%、好ましくは0.025重量%から2重量%、より好ましくは0.05重量%から1重量%、最も好ましくは0.1重量%から0.5重量%の量で添加されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、最初に希釈され(工程c))、次いで、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させられる(工程d))ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、同時に、希釈され(工程c))および少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させられる(工程d))ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させた(工程d))直後に、好ましくは少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の全部の添加後45分未満以内に、希釈される(工程c))ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、一度でまたは複数回に分けて希釈され、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩が、一度でまたは複数回に分けて添加されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、少なくとも1種の分散剤、好ましくは、有機分散剤、無機分散剤およびこれらの混合物からなる群から選択される分散剤を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
有機分散剤が、アクリルポリマー、ビニルポリマー、アクリルおよび/またはビニルコポリマーを含み、ならびに無機分散剤が、オルトリン酸一、二および/もしくは三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムならびに/またはポリリン酸ナトリウムを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の有機分散剤の酸性部位が、ナトリウムによって部分的または全体的に中和されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)の分散炭酸カルシウムの水性懸濁液が、炭酸カルシウムの水性懸濁液の濃縮により得られることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
分散剤が、濃縮工程前に添加されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
分散剤が、濃縮工程後に添加されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
水性懸濁液中の炭酸カルシウムが、濃縮工程前に粉砕されることを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から作製されたコーティングが、20g/mのコーティング重量について、100m/kgから250m/kg、より好ましくは125m/kgを超える、最も好ましくは140m/kgを超える光散乱係数Sを有することを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法によって得られる分散炭酸カルシウムの水性懸濁液から作製されたコーティングが、20g/mのコーティング重量について、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の不存在下で以外は同様に処理されている対応する分散炭酸カルシウムの水性懸濁液の得られたコーティングの光散乱係数Sを超えて、少なくとも5m/kg、より好ましくは少なくとも10m/kg、さらにより好ましくは少なくとも15m/kg、なおより好ましくは少なくとも20m/kgの光散乱係数Sを有することを特徴とする、方法。
【請求項19】
得られる分散炭酸カルシウムの懸濁液のコーティングの光散乱係数Sを調節するための少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の使用。
【請求項20】
懸濁液を水で希釈する前および/または間および/または後に、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩と接触させている分散炭酸カルシウムの懸濁液から作製されたコーティングの光散乱係数Sが、少なくとも1種のアルカリ炭酸塩および/またはアルカリ炭酸水素塩の不存在下で以外は同様に希釈されている懸濁液の光散乱係数よりも高い、請求項19に記載の使用。

【公表番号】特表2012−532084(P2012−532084A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518143(P2012−518143)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052963
【国際公開番号】WO2011/001374
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】