説明

不陸面又は曲面対応用合板及び合板取付方法

【課題】不陸や湾曲のある取付面に対応して取付けられる合板を提供する。
【解決手段】この発明は、平行な側辺を持つシート状又は薄板状に形成され、積層断面内で単板層2a,2´aを形成する複数枚の単板を、上下に隣接する単板層2a,2´aの繊維方向aが側辺c,c´に対して交互に30°〜60°の逆向きの傾斜角で交差するように重ね合わせて積層接着した合板2であって、不陸面又は曲面形成用取付面に沿って湾曲させて取付けるものである。
上記合板2の側辺c,c´には互に嵌合し又は重なり合って隣接する合板2を突合せ接合させる接合部5を形成する場合もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は主として壁板,フローリング材,コンクリート型枠合板等のように比較的不陸表面に取付け又は曲げ加工を施しながら曲面を形成して取付ける板材に適した不陸面又は曲面対応用合板及び合板取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6,図7に示すように一般的な木質の壁やフローリング製品6は、幅60cm以上の合板に突き板7を二次接着したものが多い(図6参照)。一方、高級品であるむく板の壁材やフローリング材の場合は、厚み10〜15mm、幅10〜20cmの小幅板に接合部5として本実加工5a,5b又は合じゃくり5c,5dしたものが多い(図7,図6参照)。前者は高級感に欠けること、後者は寸法安定性が悪いこと、壁面や床面のわずかな不陸及び隣接小幅板材のゆがみなどにより、実5bと小穴5aを嵌め込むのが容易でなく施工性に問題がある。
【0003】
寸法安定性を改善するため10cm程度に小割した合板を台板としてそれに突き板を貼り本実加工した商品もある。この台板となる合板に本実加工する場合、3プライの普通型合板の場合、単板の構成上実部または小穴部の繊維方向が0°又は90°となるためどちらかが欠け易い。
【0004】
例えば図7に示す本実加工した合板では、両側面の単板層の繊維方向が板の長手方向に対して0°であり、小穴(凹溝)5aの両側が加工や嵌め合せ作業中等に繊維方向に沿って欠け易い。また実部5bが同方向の場合はその突出端が同様に欠け易い。
【0005】
このため、合板を台板とする場合、5プライ以上のものを使うのが一般的である。しかし、壁材など強度を必要としない材料の台板には薄い方がコスト的にも有利であり3プライのほうが望まれる。また台板は、前記したように壁面や床面のわずかな不陸及び隣接小幅板材のゆがみなどの理由からなるべく柔軟性があるものが求められている。
【0006】
またコンクリートパネルとして合板がよく使われるが、曲率の大きい壁面のパネルを従来の合板で現場施工することは剛性率が高いため難しい。
【0007】
他方、本発明の提案に先立ち本発明者は特許文献1〜3に示すように、複数枚の単板を積層接着する際に、長手方向側辺に対する隣接単板層の繊維方向を、交互に30°〜60°逆方向に傾斜させて積層した斜行型単板積層材を提案している。
【0008】
上記斜行型単板積層材は、これを構造物の梁や桁等に使用する場合に、単板の木端側からの外力に対して傾斜45°をピークにして最も高い曲げ強度を発揮するが、板材の板面に加わる外力に対する特性については研究されていないし、触れられていない。
【特許文献1】特許第3729410号
【特許文献2】特許第3858177号
【特許文献3】特許第3859013号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は上記のように不陸な取付面や湾曲した取付面に板材を取付ける際に、現場作業でも不陸面や湾曲面に沿わせて取付けることのできる合板とその取付方法を提供することを第一の目的とするものである。
【0010】
また上記複数の合板の長手方向の側辺同士を接合して不陸面や湾曲面に沿わせて取付ける際に、本実加工や合じゃくり加工をした接合部が、繊維方向に沿って欠け落ちたり亀裂が生じたりすることを防止する板材やその取付方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の合板は、第1に、平行な側辺を持つシート状又は薄板状に形成され、積層断面内で単板層2a,2´aを形成する複数枚の単板を、上下に隣接する単板層2a,2´aの繊維方向aが側辺c,c´に対して交互に30°〜60°の逆向きの傾斜角で交差するように重ね合わせて積層接着した合板2であって、不陸面又は曲面形成用取付面に沿って湾曲させて取付けることを特徴としている。
【0012】
第2に、合板2の側辺c,c´に互に嵌合し又は重なり合って隣接する合板2を突合せ接合させる接合部5を形成したことを特徴としている。
【0013】
また同様に合板の取付方法は、第1に、平行な側辺c,c´を持つシート状又は薄板状に形成され、積層断面内で単板層2a,2´aを形成する複数枚の単板を、上下に隣接する単板層2a,2´aの繊維方向aが側辺c,c´に対して交互に30°〜60°の逆向きの傾斜角で交差するように重ね合わせて積層接着した合板2を、取付対象となる対象物の不陸又は湾曲面を形成する骨組材3又はフレーム材4その他の取付面に沿わせて合板2の長手方向に沿って順次変形させて上記対象物に対して取付固定することを特徴としている。
【0014】
第2に、合板2の側辺c,c´に互に嵌合し又は重なり合って隣接する合板2と突合せ接合させる接合部5を形成したことを特徴としている。
【0015】
第3に、単板層2a,2´aを同一厚みの単板により形成し、接合部5を本実加工5a,5bによって形成したことを特徴としている。
【0016】
第4に、合板2が表面に突き板を二次接着した壁材又はフローリング材であり、取付対象物が建物の壁内又は床内の間柱,桟又は根太その他の下地側部材3であることを特徴としている。
【0017】
第5に、合板2が表面にコンクリート剥離用の塗装を施したコンクリート型枠用合板であり、取付対象物が型枠面を円弧状に形成すべく湾曲配置された型枠のフレーム材4であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように構成される本発明によれば、斜行型合板の曲げ剛性率が従来使用されている繊維方向の傾斜角が0°,90°のものに比して最大約1/4になるため、非常に曲げ易く、現場での曲げ加工(即ち不陸面や湾曲面に沿わせて取付け)も容易である。
【0019】
また合板の側端に接合部加工を施して隣接板材同士を接合する場合も、接合部の嵌め込みや重ね合せを正確に無理なく行うことができ、繊維方向に沿った接合部の破損等も防止できる。
特に取付面に不陸がある壁材やフローリング又は湾曲面形成用のコンクリート型枠製造時の型枠合板としての使用に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図示する実施形態につき先ず斜行型単板積層合板の製造方法から説明する。図1(A)は例えばロータリーレースによってシート状に切削形成した単板1の分割切断方法とその積層接着方法を示している。
【0021】
ロータリー単板1は通常その繊維方向aが長手方向の側端bに対して略直交している。この側端bに対し左右いずれかに傾斜して交差する方向(本例では左に約45°傾斜して交差)の切断線cに沿って分割切断し、略平行四辺形(菱形)の単板小片1aを形成する。
【0022】
上記単板の板厚は最終製品の用途や材質等に応じ、例えば板厚5〜20mmでの合板を得る場合、1.5〜5mm位の厚みでよく、木材や合板や積層材に使用できる範囲内のものであればその材質は問わない。その切断は一般に使用される単板切断機(図示しない)によって行われるが、特に限定されるものではない。
【0023】
図1(B)は上記のように形成された単板小片1aを再度帯状又は短冊状に接合連接させて斜行型の合板2を造る方法を示している。
【0024】
図示する例では、各平行四辺形の単板小片1aにおける切断線(辺)b同士を互いの繊維方向が同方向に揃えられるように連接又は接合させることにより帯状又は短冊状の単板層2aとし、各単板層2aの長手方向の側端(辺)に対し、それぞれの繊維方向aを、斜め方向に傾斜(この例では最も曲げ易い角度として傾斜角を約45°とした)して交差させている。但し、各単板小片1aは必ずしも隣接切断線b同士で接合する必要はなく、図1(B)の積層工程で単純に隣接配置されるだけでも良い。また上記傾斜角は45°が最も望ましいが、これを30°〜60°の範囲にしても十分実用可能である。
【0025】
そしてこの例では上下に隣接する単板層2aの繊維方向aが互いに逆向きに傾斜し合っており、その結果隣接単板層2a同士の繊維方向aの交差角は約90°になっている。
【0026】
上記のように交互に逆向きに傾斜した単板層2aを積層し、在来公知の方法で接着剤塗布下で加圧(必要に応じて加熱を伴って)接着することにより、各単板層2a毎に積層材2の長手方向側辺に対してそれぞれの繊維方向が交互に左右方向に約45°傾斜し、且つ隣接単板層2a同士では90°の交差角をもつ積層材2が形成される。
【0027】
なお図1(B)では各単板層2aの左右両端は、説明上、上辺又は下辺においてそれぞれ45°の鋭角の端部が残されているが、積層材2が完成した後に上下コーナー共に90°になるように端部処理し、又は積層前の単板層2aの段階で端部処理することは容易に可能である(この点に関しては図2に示す場合も同様である)。
【0028】
図2(A)〜(C)は斜行型合板のもう一つの実施形態を示し、この例では先ず同図(A)に示すようにロータリー単板1をその繊維方向aと略同方向(即ち長手方向の側端(辺)bと直交方向)の切断線cに沿って、略正方形或いは長方形に切断分割して一次的な単板小片1aを形成する。次いでこのように切断された多数の単板小片1aを同図(B)に示すように非切断側の側辺b同士を順次連接接合することにより、帯状又は短冊状の接合単板1´を形成し、全体の繊維方向を長手方向の側端(同図(A)の切断線)cに沿わせたものにする。
【0029】
次に同図(B)に示すように上記接合単板1´を、その長手方向の側端cに対して斜め方向に約45°傾斜させた(従って繊維方向aに対しても約45°傾斜している)切断線c´に沿って再度切断して分割し、分割小片1´aを形成する。
【0030】
続いて同図(C)に示すように上記分割小片1´aの非切断側の側端として再形成された同図(A)の切断線(側端)c同士を順次接合して、多数の帯状又は短冊状の単板層2´aを形成し、これらを図1(B)に示した場合と同様に順次重ね合わせて積層接着し、積層材2を形成する。この時上記切断線c´は図2(C)に示すように分割小片1´aの平行な両側端となり且つ積層断面内では、上下に隣接する単板層2´a同士で互いに揃えられた積層材2の側端にもなる。
【0031】
また上記分割小片1´aも必ずしも図2(C)のように隣接端を接合して全体を1枚の単板層2´aにする必要はなく、積層時に順次隣接させて配置するだけでもよい。さらに異なる方向の単板積層厚みは互に同一の厚みにする必要があり、これが異なると合板のねじれの発生又は曲げ方向により曲げの難易度が異なるという欠点が生じる。
【0032】
上記斜行型合板の製法は、いずれもロータリー単板から製造できる利点があり、図2の方法によれば分割小片1´aのコーナー部を単板の繊維がカット方向に横切ることがなく、コーナー部が取扱い中に繊維方向に沿って裂損したり欠落したりする欠点が解消される。
【0033】
図3は例えば建物の壁内で高さΔhの誤差(不陸)を有する複数の桟木3に、前述のように積層した合板2を壁材として張設固定した場合の模式的な断面を、図4は同じく内面を半径Rの円弧状の湾曲面に形成するために配設された枠材4に合板2を型枠用合板として図面上左右方向に向けて張設固定した場合の模式的断面をそれぞれ示す。
【0034】
上記合板2の板材表面から又は桟木3若しくは枠材4側からビス止めその他の固定具で、又は接着剤によって接着固定しても良い。また図4の湾曲面はコンクリート等を山形に湾曲成形するための型枠であるが、型枠面を山形に湾曲形成してコンクリート等の表面を谷形の凹面に形成することも可能である。
【0035】
上記の板材の張込みに際し、どの程度の板厚のものがどの程度の不陸や湾曲に対して可能かは、板の材質やサイズその他の条件によって異なるが、繊維方向の傾斜角が45°の斜行型合板は、従来の板材の長手方向に対して0°又は90°の繊維方向で積層した合板に比して約1/4程度の剛性率であることが確認されているから、この場合板材を不陸面や湾曲面に沿わせるための力も約1/4で足り、従来不可能であった現場施工も可能となる。
【0036】
また上記傾斜角は発明者等の実験では同一の条件下では45°の時が最も曲り易く4周辺固定後の合板の曲げ強度も高いことが確認されている。そして45°以下では漸次繊維方向と板方向が一致するため曲げ難くなり、45°を越えると曲げ易くなるが強度が低下する。曲げ易さと強度を考慮すると既述のように傾斜角は30°〜60°が実用可能な範囲である。
【0037】
図5は斜行型合板の側辺に対する繊維方向が約45°の合板2の長手方向の側端に、隣接時に互に嵌合し合って接合される接合部5として本実加工を施したものを示している。即ち、この本実接手は断面内の一側辺の中央に凹型の溝からなる小穴部5aと、他の側辺の中央に上記小穴部5aと嵌合する実部5bとが形成されている。
【0038】
上記合板2は例えば壁材としては板厚6〜9mm,幅75〜150mm,長さ900mm,1800mm、床材では同じく板厚12〜28mm(幅、長さは壁材と同様)、コンクリート型枠材としては12×900×1800(mm)程度の寸法が採用される。また複数の合板を側辺で接合しながら張り付けることにより、合板2の長さ方向での不陸のほか、合板2の幅方向の不陸にも一定の対応が可能となる。
【0039】
また図5に示すように小穴部5aの両側も実部5bも繊維方向は側端に対して平行にならず所定傾斜角(図示する場合は45°)を有しているため、小穴部5aの両側や実部5bが加工時や取扱い時及び嵌合接合時に、繊維方向(即ち合板側辺)に沿って亀裂を生じたり、亀裂によって部分的に欠落することもない。
【0040】
そしてこれらの事情は斜行型合板を図4に示すようにコンクリート型枠材として用いる場合にも共通である。さらに図5に示すように各層同一厚みの三層型の合板にすることにより、本実加工による接合部5の形成が容易となり且つ正確で強度も高いという利点があるほか、既述のように五層合板等に比して安価にできるという利点がある。
【0041】
また一般にフローリング材等に合板を用いる場合、図6に示すような合じゃくり加工5c,5dを施す例は少ないが、合板の材質等によっては斜行型合板を同図に示すような合じゃくり加工を施して用いることも可能であり、この場合も段状に切欠いた切残し部分が繊維方向に沿って亀裂を生じ又は欠損することがないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に用いる斜行型合板の製造方法を示し、(A),(B)はロータリー単板の切断方法と、積層材の製造方法をそれぞれ示す平面図である。
【図2】同じく合板の他の製造方法を示し、(A),(B),(C)はそれぞれシート状単板の切断方法、切断された単板小片の接合方法及び単板の積層方法の例を示す平面図である。
【図3】不陸な取付面に対して合板を取付けた例の断面図である。
【図4】凹形に湾曲した面を形成するために合板を張り付けた断面図である。
【図5】本発明の用途に用いられる本実加工により接合部を形成した合板の斜視図である。
【図6】フローリング材に合じゃくり加工を施した例を示す断面図である。
【図7】繊維方向が縦横に交差する従来の合板に本実加工を施した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ロータリー単板
2 合板
2a,2´a 単板層
3 骨組材
4 フレーム材
5 接合部
5a 小穴部(本実加工)
5b 実部(本実加工)
a 繊維方向
c,c´ 側辺(切断線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な側辺を持つシート状又は薄板状に形成され、積層断面内で単板層(2a),(2´a)を形成する複数枚の単板を、上下に隣接する単板層(2a),(2´a)の繊維方向(a)が側辺(c),(c´)に対して交互に30°〜60°の逆向きの傾斜角で交差するように重ね合わせて積層接着した合板(2)であって、不陸面又は曲面形成用取付面に沿って湾曲させて取付ける不陸面又は曲面対応用合板。
【請求項2】
合板(2)の側辺(c),(c´)に互に嵌合し又は重なり合って隣接する合板(2)を突合せ接合させる接合部(5)を形成した請求項1の不陸面又は曲面対応用合板。
【請求項3】
平行な側辺(c),(c´)を持つシート状又は薄板状に形成され、積層断面内で単板層(2a),(2´a)を形成する複数枚の単板を、上下に隣接する単板層(2a),(2´a)の繊維方向(a)が側辺(c),(c´)に対して交互に30°〜60°の逆向きの傾斜角で交差するように重ね合わせて積層接着した合板(2)を、取付対象となる対象物の不陸又は湾曲面を形成する骨組材(3)又はフレーム材(4)その他の取付面に沿わせて合板(2)の長手方向に沿って順次変形させて上記対象物に対して取付固定する不陸面又は曲面への合板取付方法。
【請求項4】
合板(2)の側辺(c),(c´)に互に嵌合し又は重なり合って隣接する合板(2)と突合せ接合させる接合部(5)を形成した請求項3の不陸面又は曲面への合板取付方法。
【請求項5】
単板層(2a),(2´a)を同一厚みの単板により形成し、接合部(5)を本実加工(5a),(5b)によって形成した請求項3又は4の不陸面又は曲面への合板取付方法。
【請求項6】
合板(2)が表面に突き板を二次接着した壁材又はフローリング材であり、取付対象物が建物の壁内又は床内の間柱,桟又は根太その他の下地側部材(3)である請求項3,4又は5の不陸面又は曲面への合板取付方法。
【請求項7】
合板(2)が表面にコンクリート剥離用の塗装を施したコンクリート型枠用合板であり、取付対象物が型枠面を円弧状に形成すべく湾曲配置された型枠のフレーム材(4)である請求項3,4又は5の不陸面又は曲面への合板取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101526(P2009−101526A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272827(P2007−272827)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】