説明

不飽和脂肪族ヒドロキシ酸の新規な製造方法

本発明は、式(I)[式中、RおよびRは特にHを表し、nは4より大きい]の化合物の製造方法であって、ホスホン酸塩とラクトールとのWitting−Horner反応を行い、ヒドロキシエステルを得、必要に応じてこのヒドロキシエステルのケン化反応させることを含んでなるに関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、不飽和脂肪族ヒドロキシ酸の新規な製造方法に関する。本発明はまた、新規な不飽和脂肪族ヒドロキシ酸並びにそれらの用途、特に化粧品分野における用途にも関する。
【0002】
多数の不飽和脂肪族ヒドロキシ酸が知られており、それらの生物学的特性、更に詳細にはそれらの化粧用および薬理学的特性について文献に記載されている。例えば、ミツバチ由来のロイヤルゼリーの主要な脂質成分は、不飽和脂肪族ヒドロキシ酸、すなわちヒドロキシ−10−デセン−2(トランス)酸である(Edward E. Smissman et al., 1964, JOC, 29, 3517-3520)。
【0003】
当該技術の状況についての様々な文献には、不飽和脂肪族ヒドロキシ酸およびそのエステルの調製方法が記載されている(Lee et al., 1993, J. Org. Chem., 58, 2918-2919; Hurd et Saunders, 1952, J. Am. Chem. Soc, 74, 5324-5328; Krishnamurthy et al., 1989, Indian J. Chem. Sect. A, 28, 288-291; Plettner et al., 1995, J. Chem. Ecol., 21, 1017-1030)。
【0004】
当該技術分野で既に知られている方法は、クロムまたはマンガン塩の様な金属塩を用いる酸化段階を有している。しかしながら、金属塩の使用には、相当数の欠点がある。一方において、上記の方法によって得られた生成物に関しては、この生成物は金属塩によって汚染されていることがあるので、その化粧品および/または薬理学的応用はこの汚染によって限定される。他方において、金属塩の使用は、組成物の合成を行う産業の環境汚染を引き起こす。
【0005】
当該技術分野で既に知られている他の方法は、小型のラクトール(部分還元ラクトン)に対するDoebner−Knoevenagel反応またはWittig反応による2個の炭素のホモロゲーションによって小数が不飽和ヒドロキシ酸となり、大部分がテトラヒドロピラニル酢酸またはテトラヒドロフラニル酢酸となることを示している(Ragoussis et al., 1993, Synthesis, 1, 84-86)。従って、このような方法では、不飽和脂肪族ヒドロキシ酸を十分な量で得ることはできない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、不飽和脂肪族ヒドロキシ酸を、収率だけでなく品質に関しても優れた条件下で特に環化生成物による汚染を全くなしに得る新規方法であって、工業的レベルへ置き換えることができる方法を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、不飽和脂肪族ヒドロキシ酸をより速やかに合成しかつ現在用いられている方法よりも良好な収率を有する方法を提供することであって、本発明の方法の収率は、当該技術分野で用いられている方法と比較して100−200%だけ増加する。
【0008】
本発明の目的は、当該技術分野で用いられている方法と比較して、特に段階数が減少しているため、簡略化された方法を提供することでもある。
【0009】
本発明の目的は、酸化段階を含んでおらずかつ重金属塩による汚染を回避するためにこれらの重金属塩の使用を含まない方法を提供することでもある。
【0010】
最後に、本発明の目的は、市販されていないが、その合成は可能な中間体生成物から幾らかが得られる、全範囲の生成物を得ることができる方法を提供することである。
【0011】
本発明は、下式(I)
【化1】

(式中、
はHであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基Rであり、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは、4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化2】

(式中、nは、上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III)
【化3】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
=Hであるときには、前記ラクトールに対して、式ROOC−CH−COOR(式中、Rは、上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV)
【化4】

(式中、n、RおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
必要に応じて、Rが上記で定義した通りの基Rであるときには、上記式(IV)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1)
【化5】

(式中、nおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法に関する。
【0012】
上式(I)の化合物は、式(IV)の化合物および式(1−1)の化合物を包含する。従って、上記で定義された式(IV)の化合物は、式(I)(上記式中、Rは水素原子であるかまたは上記で定義されたアルキル基Rである)の化合物に対応し、式(I−1)の化合物は、式(I)(上記式中、Rは水素原子である)の化合物に対応する。
【0013】
Wittig−Horner反応は、「最新合成反応(Modem Synthetic Reaction)」, 第2版, Herbet O. House, Wittig-Horner reaction p. 682-709という文献に記載されている反応であり、当該技術分野で報告されているあらゆる実験条件を本発明の範囲内で用いることができる。一例として、Witting−Horner反応は、水性媒質中でトリエチルホスホノアセテートと炭酸カリウムの存在下にて行うことができる。後者の場合には、この酸は、加水分解を更に行うことなしに直接得られる(文献: 炭素鎖または芳香族環の導入(Introduction of a carbon chain or an aromatic ring)第II巻, Jean Mathieu and Jean Weill-Raynal, Georg Thieme Publishers, 1975, 章「アルデヒドおよびケトンによるメチレン基のアルキリデン化(alkylidenation of methylene groups by means of aldehydes and ketones)」, p. 513-521)。
【0014】
本発明は、下式(I−bis)
【化6】

(式中、
はHであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基Rであり、
nは4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化7】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III−bis)
【化8】

(式中、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用することにより、
下式(IV−bis)
【化9】

(式中、nおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
必要に応じて、上記の式(IV−bis)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1−bis)
【化10】

(式中、nは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法に関する。
【0015】
本発明は、下式(I−bis)
【化11】

(式中、
はHであるかまたは1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基Rであり、
nは4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化12】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、式ROOC−CH−COOR(式中、Rは上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV−bis)
【化13】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
必要に応じて、Rが上記で定義した通りの基Rであるときには、上記の式(IV−bis)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1−bis)
【化14】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法に関する。
【0016】
本発明は、下式(I−ter)
【化15】

(式中、
はHであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基Rであり、
はF、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは、4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化16】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III−ter)
【化17】

(式中、Rは上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用することにより、
下式(IV−ter)
【化18】

(式中、n、RおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
必要に応じて、上記の式(IV−ter)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1−ter)
【化19】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法に関する。
【0017】
本発明は、下式(IV)
【化20】

(式中、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化21】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III)
【化22】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
=Hであるときには、式RSOOC−CH−COOR(式中、Rは上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV)
【化23】

(式中、n、RおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0018】
本発明は、下式(I−1)
【化24】

(式中、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい、
nは、4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化25】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III)
【化26】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、上記基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用すること、または
=Hであるときには、前記ラクトールに対して、式RSOOC−CH−COOR(式中、Rは上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV)
【化27】

(式中、n、RおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
上式(IV)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1)
【化28】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0019】
本発明は、下式(I−1)
【化29】

(式中、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは、4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化30】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
式HOOC−CH−COOH(式中、Rは、上記で定義した通りである)のマロン酸を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(I−1)
【化31】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0020】
本発明は、下式(I−1−bis)
【化32】

(式中、nは4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化33】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III−bis)
【化34】

(式中、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用することにより、
下式(IV−bis)
【化35】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
上式(IV)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1−bis)
【化36】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0021】
本発明は、下式(I−1−bis)
【化37】

(式中、nは4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化38】

(式中、nは、上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
式RSOOC−CH−COOR(式中、Rは上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV−bis)
【化39】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
上記の式(IV−bis)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1−bis)
【化40】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0022】
本発明は、下式(I−1−bis)
【化41】

(式中、nは4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化42】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
式HOOC−CH−COOHのマロン酸を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(I−1−bis)
【化43】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0023】
本発明は、下式(I−1−ter)
【化44】

(式中、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは、4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化45】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III−ter)
【化46】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用することにより、
下式(IV−ter)
【化47】

(式中、n、RおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
上記の式(IV−ter)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I−1−ter)
【化48】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0024】
好ましい態様によれば、上記で定義された通りの本発明の方法は、式(II)のラクトールが下式(V)
【化49】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトンの還元によって得られることを特徴としている。
【0025】
ラクトン(V)の式(II)のラクトールへの部分還元の段階は、水素化ジイソブチルアルミニウムのような還元剤の存在下で行われる。反応の終了時には、アルミニウム塩はロゼン塩またはロッセル塩の存在下にて水溶性錯体を形成することによって除去される(Reagents for organic synthesis, vol. I, Louis Fieser and Mary Fieser, p. 36)。
【0026】
好都合には、還元剤は、Dibal H(Posner Gary H et al., 1991, JOC, 56(25), 6981-6987)、Red A1、OMH1、水素化トリ(第三ブトキシ)アルミニウムリチウム(Mili Shokyo et al., 1990, J. Chem. Soc. Perkin Trans., 1(4), 1228-1229)または任意の他の水素化アルミニウムであって、様々な基を導入することによってその反応性が抑制されるものから選択される。
【0027】
もう一つの好ましい態様によれば、上記で定義された本発明の方法は、式(V)のラクトンは、Baeyer−Villiger反応を適用することによって下式(VI)のケトンから得られる:
【化50】

(式中、nは上記で定義した通りである)。
【0028】
Baeyer−Villiger反応は、特に下記の文献に記載されている:Friess SL, 1949, JOC, 71, 2571-2575; Kruizinga Wim H. et al., 1981, JACS, 103(17), 5183-5189。
【0029】
ケトン(VI)をラクトン(V)に酸化する多くの手法は当該技術分野で知られており、当業者であればこの段階で用いることができる。この酸化には、溶媒の使用が必要であり、特に塩化メチレン、ジクロロ−l,2−エタンまたは任意の他の不活性塩素化溶媒が挙げられる。Ishihara et al., 1996, J Org. Chem., 61, 4560-4567に記載されているように、3−クロロ過安息香酸を用いる実験的酸化条件を挙げることができる。
【0030】
本発明は、下式(I−1)
【化51】

(式中、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい、
nは、4より大きい)
の不飽和脂肪族ヒドロキシ酸の製造方法であって、
下式(V)
【化52】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトンを還元して、
下式(II)
【化53】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールを得、
上記の式(II)のラクトールに、
下式(III)
【化54】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
=Hであるときには、上記式(II)のラクトールに、式ROOC−CH−COOR(式中、Rは上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV)
【化55】

(式中、n、RおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
が上記で定義した通りの基Rであるときには、上式(IV)のヒドロキシエステルをケン化して、上式(I−1)のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0031】
本発明は、下式(I−2)
【化56】

(式中、nは4より大きい)
の不飽和脂肪族ヒドロキシ酸の製造方法であって、
下式(V)
【化57】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトンを還元して、
下式(II)
【化58】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールを得て、
上記の式(II)のラクトールに対して、
下式(III−2)
【化59】

(式中、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
式ROOC−CH−COOR(式中、Rは上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を上記の式(II)のラクトールに対して反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV−2)
【化60】

(式中、nおよびRは上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
が上記で定義した通りの基Rであるときには、上記の式(IV−2)のヒドロキシエステルをケン化して、上式(I−2)のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0032】
上記で定義した通りの式(1−2)の化合物は、式(I)(式中、Rは水素原子であり、Rは水素原子である)の化合物に対応する。
【0033】
上記で定義した通りの式(III−2)の化合物は、式(III)(式中、Rは水素原子である)の化合物に対応する。
【0034】
上記で定義した通りの式(IV−2)の化合物は、式(IV)(式中、Rは水素原子である)の化合物に対応する。
【0035】
本発明は、下式(1−2)
【化61】

(式中、nは4より大きい)
の不飽和脂肪族ヒドロキシ酸の製造方法であって、
下式(V)
【化62】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトンの還元によって、
下式(II)
【化63】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールを得、
上式(II)のラクトールに対して、
下式(III−2)
【化64】

(式中、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
式ROOC−CH−COOR(式中、Rは、上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を上記の式(II)のラクトールに対して反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV−2−bis)
【化65】

(式中、nおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
上記の式(IV−2−bis)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、上式(I−2)のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法に関する。
【0036】
本発明は、下式(1−3)
【化66】

(式中、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は場合によってはハロゲン原子で置換されており、
nは、4より大きい)
の化合物の製造方法であって、
下式(V)
【化67】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトンの還元により
下式(II)
【化68】

(式中、nは上記で定義した通りである)
のラクトールを得、
上記の式(II)のラクトールに対して、
下式(III−3)
【化69】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用することにより、
下式(IV−3)
【化70】

(式中、n、RおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
上式(IV−3)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、上記の式(I−3)のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、上記製造方法にも関する。
【0037】
上記で定義した通りの式(1−3)の化合物は、式(I)(式中、Rは水素原子であり、RはF、Cl、Br、CFまたはアルキル基である)の化合物に対応する。
【0038】
上記で定義した通りの式(III−3)の化合物は、式(III)(式中、RはF、Cl、Br、CFまたはアルキル基である)の化合物に対応する。
【0039】
上記で定義した通りの式(IV−3)の化合物は、式(IV)(式中、RはF、Cl、Br、CFまたはアルキル基である)の化合物に対応する。
【0040】
本発明による好都合な方法は、上記で定義した通りの方法であって、nが6以上である方法である。
【0041】
Wittig−Hornerについては、操作温度は40℃であり、この反応は大きなエネルギー供給を必要としない。Doebner−Knoevenagel反応については、操作温度は70℃であり、従ってこれはより一層のエネルギー供給を必要とする。これらの反応はいずれも、脱プロトン化剤を用いて塩基性媒質中で行われる。更に、Wittig−Horner反応では、脱カルボキシル化段階の第二アミンの存在が必要とされる。
【0042】
本発明による好都合な方法は、上記で定義した通りの方法であって、nが7、8、9、10、11、12、13または14である方法である。
【0043】
本発明は、上記で定義した通りの方法によって得られる化合物にも関する。
【0044】
本発明は、下式(I−1)
【化71】

(式中、
は、H、F、Cl5 Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は場合によってはハロゲン原子で置換されており、
nは7以上であり、特に8以上であり、好ましくは10、13または14である)
の化合物を適当なキャリヤーと共に含んでなる化粧用組成物にも関する。
【0045】
本発明は、下式(I−1)
【化72】

(式中、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は場合によってはハロゲン原子で置換されており、
nは7以上であり、特に8以上であり、好ましくは10、13または14である)
の化合物を用いる抗コラゲナーゼ活性を有する化粧用組成物の製造にも関する。
【0046】
本発明は、下式(1−2)
【化73】

(式中、nは10、13または14である)
の化合物にも関する。
【0047】
従って、本発明は、下記の好ましい化合物
【化74】

に関する。
【0048】
本発明は、上記で定義した通りの式(1−2)の化合物を適当なキャリヤーと共に含んでなる化粧用組成物にも関する。
【0049】
本発明は、下式
【化75】

の化合物を適当なキャリヤーと共に含んでなる化粧用組成物にも関する。
【0050】
本発明は、下式
【化76】

の化合物を適当なキャリヤーと共に含んでなる化粧用組成物にも関する。
【0051】
本発明は、下式
【化77】

の化合物を適当なキャリヤーと共に含んでなる化粧用組成物にも関する。
【0052】
本発明は、下式(1−3)
【化78】

(式中、
はF、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は場合によってはハロゲン原子で置換されており、
nは4より大きく、特に6、7、8、9、10、11、12、13または14である)
の化合物であって、ZまたはE立体異性体の形態、またはこれらの形態の混合物としての、化合物にも関する。
【0053】
式(1−3)の化合物は、式(1−2)の化合物より代謝性が低くかつ親油性が低い。
【0054】
本発明は、上記で定義した通りの式(1−3)に適合する上記で定義した通りの化合物を適当なキャリヤーと共に含んでなる化粧用組成物に関する。
【実施例】
【0055】
実施例1: DHA合成の操作手続
=Hおよびn=6である式(I−1)の化合物の入手
1.オキソナン−2−オンの調製
シクロオクタノン(n=6である式(VI)の化合物)(ACROS)43.5g(345ミリモル)を、ジクロロエタン430mlに溶解させる。次に、メタクロロ過安息香酸170g(985ミリモル)を加える。媒質を、80℃に48時間加熱する。室温にて、NaおよびNaHCO(1/1 v/v)の飽和溶液400mlを加える。媒質を、18時間激しく攪拌する。有機相を分離し、KIおよびHOと6時間混合する。有機相を分離し、Na飽和溶液、NaCl飽和溶液で洗浄した後、MgSO上で乾燥し、濾過し、真空濃縮し、粗生成物36gを得る。
【0056】
ラクトンをペンタン(60ml)で粉砕した後、低温で形成したメタクロロ安息香酸沈殿物を濾過することによって精製する、m=26.6g(54%)。
【0057】
得られたラクトンは、式(V)(式中、n=6である)の化合物である:
【化79】

【0058】
特性決定:
TLC:Rf=0.3(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.42−1.49(m,4H);1.65−1.75(m,6H);2.30(t,J=5.4Hz,2H);4.30(t,J=5.7Hz,2H).
【0059】
2.ラクトールへの部分還元工程
前段階で得られたラクトン26.6g(187.2ミリモル)を、窒素雰囲気下でトルエン210mlで希釈する。媒質を−78℃に冷却し、Dibal−H(ACROS)の20%トルエン溶液156.4ml(189.1ミリモル)を温度を−78℃に保持しながら滴加する。混合物を、−78℃で2時間攪拌する。ロゼン塩(酒石酸の複塩;ACROS)200mlを、−78℃で加える。室温にて18時間激しく攪拌した後、二相混合物をセライト上で濾過し、次いで酢酸エチルで抽出する。有機相をNaCl飽和溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濾過して真空濃縮し、粗生成物(ジオール誘導体25%を含む、すなわち理論収率の72%)26gを得る。従って、開環/環状形態の平衡のラクトールを、更に精製することなく用いる。
【0060】
得られるラクトールは、式(II)(式中、n=6である)の化合物である。
【化80】

【0061】
特性決定:
TLC:Rf=0.4(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.34−1.68(m,10H);2.45(t,J=5.4Hz,2H);3.66(t,J=6.6Hz,2H);9.78(t,J=1.8Hz,1H).
【0062】
3.Wittig−Horner反応
前段階で得られたラクトール19g(131.8ミリモル)を、エタノール250mlで希釈する。トリエチルホスホノアセテート(式(III)の化合物、R=R=EtおよびR=H)31.4ml(158.1ミリモル)を、炭酸カリウム27.3g(197.5ミリモル)の存在下にて媒質に加える。反応媒質を、40℃に18時間加熱する。室温にて、媒質を蒸留水200mlで加水分解し、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaCl飽和溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濾過して真空濃縮し、粗生成物20gを得る。
【0063】
得られたエステルを、(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)溶出によるクロマトグラフィーによって精製し、生成物15gを得る(収率53%)。
【0064】
得られたエステルは、式(IV)(式中、n=6であり、R=HおよびR=Etである)の化合物である。
【化81】

【0065】
特性決定:
TLC:Rf=0.4(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.24−1.38(m,9H);1.43−1.50(m,2H);1.51−1.57(m,2H);2.15−2.21(q,2H);3.60−3.64(t,2H);4.14−4.20(t,2H);5.77−5.82(d,J=15,6Hz,1H);6.91−6.98(dt,J=15.6Hz,1H).
【0066】
4.ケン化反応
前段階で得られたヒドロキシエステル0.60g(2.81ミリモル)を、テトラヒドロフラン10容に可溶化する。2Mソーダ溶液3.4ml(6.75ミリモル)を、徐々に加える。媒質を、65℃に3時間加熱する。反応が終了したならば、媒質に3M塩酸溶液をpH=2になるまで加えて加水分解する。混合物を乾燥濃縮した後、水相を酢酸エチルで抽出する。有機相をNaCl飽和溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濾過して真空濃縮し、粗生成物0.6gを得る。
【0067】
予想される不飽和ヒドロキシ酸が、冷アセトニトリルから再結晶することによって白色固形物として得られる,m=0.37g(71%)。
【0068】
得られたヒドロキシ酸は、式(1−2)(式中、n=6である)の化合物である:
【化82】

【0069】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.33−1.37(m,6H);1.45−1.49(m,2H);1.55−1.58(m,2H);2.20−2.25(q,2H);3.62−3.66(t,2H);5.79−5.84(d,J=15.6Hz,1H);7.03−7.10(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]209(計算値186).
融点:62.5℃±1℃.
【0070】
実施例2: 10−ヒドロキシ−デク−2−フルオロ−2−エン酸の合成の操作手続
式(1−3)(上記式中、R=Fおよびn=6)の化合物の入手
段階3のみを変更し(Wittig−Horner反応):ラクトール(実施例1の段階2で得られた)(0.89g;7.7ミリモル)から出発し、Wittig−Horner反応を、エタノール(9ml)中メチルジエチルホスホノフルオロアセテート(式(III)の化合物;R=Et、R=FおよびR=Me)(2.1g;9.2ミリモル)および炭酸カリウム(1.6g;11.5ミリモル)の存在下にて40℃で行う。段階4(ケン化)は、上記処理に準じて行う。再結晶後に得られる生成物は、シス/トランス混合物の形態である。
【0071】
得られるヒドロキシ酸は、式(1−3)(式中、R=Fおよびn=6)の化合物である:
【化83】

【0072】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.36−1.62(m,20H);2.27−2.30(m,2H、シス型);2.50−2.58(m,2H、トランス型);3.69(m,4H);6.05(dt,J=21.6Hz,1H、トランス型)および6.25(dt,J=40.8Hz,1H、シス型).
質量分析法:[M−Na]227(計算値204).
【0073】
実施例3: 9−ヒドロキシ−ノナ−2t−エン酸の合成の操作手続
実施例1の合成手続をシクロヘプタノン(Aldrich)(式(VI)の化合物;n=5)に応用して、9−ヒドロキシ−ノナ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=5)の化合物である:
【化84】

【0074】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.36−1.61(m,8H);2.22−2.27(m,2H);3.67(t,J=6.3Hz,2H);5.84(dt,J=15.6Hz,1H);7.09(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]195(計算値172).
【0075】
実施例4: 11−ヒドロキシ−ウンデカ−2t−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の合成手続をシクロノナノン(Aldrich)(式(VI)の化合物;n=7)に応用して、11−ヒドロキシ−ウンデカ−2t−エン酸を生じ、これは式(1−2)(式中、n=7)の化合物である:
【化85】

【0076】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.33−1.61(m,12H);2.20−2.28(m,2H);3.66(t,J=6,0Hz,2H);5.84(dt,J=15.9Hz,1H);7.09(dt,J=15.9Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]223(計算値200).
【0077】
実施例5: 12−ヒドロキシ−ドデカ−2t−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の合成手続きをシクロデカノン(Aldrich)(式(VI)の化合物;n=8)に応用して、12−ヒドロキシ−ドデカ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=8)の化合物である:
【化86】

【0078】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.35−1.56(m,14H);2.20−2.27(m,2H);3.55(t,J=6.6Hz,2H);5.80(dt,J=15.6Hz,1H);6.96(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]237(計算値214).
【0079】
実施例6: 12−ヒドロキシ−ドデカ−2−フルオロ−2t−エン酸(R=F、n=8)の合成の操作手続き
実施例2の合成手続きをシクロデカノン(Aldrich)(式(VI)の化合物;n=8)に応用して、12−ヒドロキシ−ドデカ−2−フルオロ−2t−エン酸をシス/トランス混合物として生じ、これは、式(1−3)(式中、R=Fおよびn=8)の化合物である:
【化87】

【0080】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.34−1.56(m,14H);2.24−2.27(m,2Hシス型)または2.49−2.54(m,2Hトランス構造);3.55(t,J=6.6Hz,2H);5.97(dt,J=21.9Hz,1Hトランス構造)または6.10(dt,J=55.2Hz,1H、シス型).
質量分析法:[M−Na]255(計算値232).
【0081】
実施例7: 13−ヒドロキシ−トリデカ− 2t−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の合成手続きをオキサシクロドデカン−2−オン(Aldrich)(式(V)の化合物;n=9)に応用して、13−ヒドロキシ−トリデカ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=9)の化合物である:
【化88】

【0082】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.27−1.63(m,16H);2.21−2.28(m,2H);3.64(t,J=3.6Hz,2H);5.84(dt,J=15.6Hz,1H);7.09(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]251(計算値228).
【0083】
実施例8: 4−ヒドロキシ−テトラデカ−2t−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の合成手続きをオキサシクロトリデカン−2−オン(Aldrich)(式(V)の化合物;n=10)に応用して、14−ヒドロキシ−テトラデカ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=10)の化合物である。
【化89】

【0084】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.29−1.35(m,14H);1.46−1.61(m,4H);2.21−2.29(m,2H);3.66(t,J=6.6Hz,2H);5.84(dt,J=15.6Hz,1H);7.09(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]265(計算値242).
【0085】
実施例9: 14−ヒドロキシ−テトラデカ−2−フルオロ−2−エン酸の合成の操作手続き
実施例2の合成手続きをオキサシクロトリデカン−2−オン(Aldrich)(式(V)の化合物;n=10)に応用して、14−ヒドロキシ−テトラデカ−2−フルオロ−2−エン酸をシス/トランス混合物として生じ、これは、式(1−3)(式中、R=Fおよびn=10)の化合物である:
【化90】

【0086】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz 5CDCl3):δ1.29(m,28H);1.42−1.62(m,8H);2.27−2.31(m,2H、シス型);2.51−2.56(m,2H、トランス型);3.68(t,J=6.6Hz,2H);3.70(t,J=6.6Hz,2H);6.04(dt,J=21.3Hz,1H、トランス型);6.27(dt,J=33.0Hz,1H、シス型).
質量分析法:[M−Na]283(計算値260).
【0087】
実施例10: 17−ヒドロキシ−ヘプタデカ−2t−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の合成手続きをシクロペンタデカノリド(Lancaster)(式(V)の化合物;n=13)に応用して、17−ヒドロキシ−ヘプタデカ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=13)の化合物である:
【化91】

【0088】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.27−1.32(m,20H);1.46−1.61(m,4H);2.20−2.29(m,2H);3.67(t,J=6.6Hz,2H);5.84(dt,J=15.6Hz,1H);7.08(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]307(計算値284).
【0089】
実施例11: 17−ヒドロキシ−ヘプタデカ−2−フルオロ−2−エン酸の合成の操作手続き
実施例2の合成手続きをシクロペンタデカノリド(Lancaster)(式(V)の化合物;n=13)に応用して、17−ヒドロキシ−ヘプタデカ−2−フルオロ−2−エン酸をシス/トランス混合物として生じ、これは、式(1−3)(式中、R=Fおよびn=13)の化合物である。
【化92】

【0090】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz 5CDCl3):δ1.27(m,40H);1.45−1.62(m,8H);2.24−2.32(m,2H、シス型);2.50−2.58(m,2H、トランス型);3.69(t,J=6.6Hz,4H);6.05(dt,J=21.6Hz,1H、トランス型)および6.26(dt,J=40.8Hz,1H、シス型).
質量分析法:[M−H]<”>301(計算値302).
融点:77℃+−1℃.
【0091】
実施例12: 18−ヒドロキシ−オクタデカ−2t−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の操作手続きをシクロヘキサデカノリド(Lancaster)(式(V)の化合物;n=14)に応用して、18−ヒドロキシ−オクタデカ−2t−エン酸(収率=72%)を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=14)の化合物である:
【化93】

【0092】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H RMN(300MHz,CDCl3):δ1.27−1.65(m,26H);2.19−2.39(m,2H);3.67(t,J=6.6Hz,2H);5.83(dt,J=15.6Hz,1H);7.09(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]321(計算値298).
【0093】
実施例13: オキサシクロトリデカノールからのDoebner−Knovenagel反応
【化94】

【0094】
ラクトール(式(II)のラクトール;n=13)への部分還元の手続きに従って得たオキサシクロトリデカノール1.4g(7.0ミリモル)を、マロン酸1.09g(10.5ミリモル)およびピペリジン0.11mlの存在下にて窒素気流下でピリジン4容に溶解させる。反応媒質を80℃に1時間30分加熱した後、2時間還流する。室温にて、溶液を3M HCl(50ml)に空ける。濾過した固形物を水で洗浄した後、アセトニトリルから再結晶させる(1.2gが得られ、すなわち収率70%)。
【0095】
実施例14: 18−ヒドロキシ−オクタデカ−2−フルオロ−2−エン酸の合成の操作手続き
実施例1の合成手続きをシクロヘキサデカノリド(Lancaster)(式(V)の化合物;n=14)に応用し、18−ヒドロキシ−オクタデカ−2−フルオロ−2−エン酸(収率=73%)を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=14)の化合物である:
【化95】

【0096】
特性決定:
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.28−1.62(m,52H);2.28−2.31(m,2H、シス型);2.54−2.56(m,2H、トランス型);3.69(t,J=6,6Hz,4H);6.07(dt,J=21.6Hz,1H、トランス型);6.30(dt,J=33.0Hz,1H、シス型).
質量分析法:[M−Na]339(計算値316).
【0097】
実施例15: 15−ヒドロキシ−ペンタデカ−2t−エン酸の特性決定
実施例1の合成手続きを式(V)(上記式中、n=11)の化合物に応用し、15−ヒドロキシ−ペンタデカ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=11)の化合物である:
【化96】

【0098】
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz 5CDCl3):δ1.28−1.60(m,20H);2.21−2.28(m,2H);3.66(t,J=6.6Hz,2H);5.83(dt,J=15.6Hz,1H);7.09(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]279(計算値256).
【0099】
実施例16: 16−ヒドロキシ−ヘキサデカ−2t−エン酸の特性決定
実施例1の合成手続きを式(V)(上記式中、n=12)の化合物に応用して、15−ヒドロキシ−ヘキサデカ−2t−エン酸を生じ、これは、式(1−2)(式中、n=12)の化合物である:
【化97】

【0100】
TLC:Rf=0.1(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.28−1.61(m,22H);2.21−2.28(m,2H);3.66(t,J=6.6Hz,2H);5.85(dt,J=15.0Hz,1H);7.09(dt,J=15.6Hz,1H).
質量分析法:[M−Na]293(計算値270).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)
【化1】

[式中、
は、Hであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基Rであり、
は、H、F、Cl、Br、CFであるか、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは、4より大きい]、
の化合物の製造方法であって、
下式(II)
【化2】

(式中、nは、上記で定義した通りである)
のラクトールに対して、
下式(III)
【化3】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
=Hであるときには、前記ラクトールに対して、式ROOC−CH−COOR(式中、Rは、上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV)
【化4】

(式中、n、RおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
必要に応じて、Rが上記で定義した通りの基Rであるときには、上記式(IV)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、下式(I)
【化5】

(式中、nおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、製造方法。
【請求項2】
式(II)のラクトールが、下式(V)
【化6】

(式中、nは請求項1で定義した通りである)
のラクトンの還元によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(V)のラクトンが、Baeyer−Villiger反応を適用することによって、下式(VI)
【化7】

(式中、nは請求項1で定義した通りである)
のケトンから得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下式(I−1)
【化8】

[式中、
は、H、F、Cl、Br、CF、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは4より大きい)]
の不飽和脂肪族ヒドロキシ酸の製造方法であって、
下式(V)
【化9】

(式中、nは、上記で定義した通りである)
のラクトンの還元によって、
下式(II)
【化10】

(式中、nは、上記で定義した通りである)
のラクトールを得、
下式(III)
【化11】

(式中、
は、上記で定義した通りであり、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチルまたはメチル基であり、この基Rは基ORの酸素原子および基P=Oのリン原子と環を形成することができ、
は、1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、好ましくはエチル基である)
のホスホン酸塩を、上記の式(II)のラクトールに対して反応させることによってWittig−Horner反応を適用するか、または
=Hであるときには、式RSOOC−CH−COOR(式中、Rは、上記で定義した通りである)のマロン酸誘導体を、上記の式(II)のラクトールに対して反応させることによってDoebner−Knoevenagel反応を適用することにより、
下式(IV)
【化12】

(式中、n、RおよびRは、上記で定義した通りである)
のヒドロキシエステルを得、
が上記で定義した通りの基Rであるときには、上記の式(IV)のヒドロキシエステルをケン化して反応させ、上記の式(I−1)のヒドロキシ酸を得る
ことを含んでなる、製造方法。
【請求項5】
nが6以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
がF、Cl、Br、CF、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって得られる式(I)の化合物。
【請求項7】
がHであり、nが8以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって得られる、式(I)の化合物。
【請求項8】
下式(1−3)
【化13】

[式中、
はF、Cl、Br、CF、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよく、
nは4より大きく、特に6、7、8、9、10、11、12、13または14である]
の化合物であって、ZまたはE立体異性体の形態、またはこれらの形態の混合物としての、化合物。
【請求項9】
がF、Cl、Br、CF、または1−6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基であり、このアルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい、請求項8に記載の式(I−3)の化合物。
【請求項10】
がHであり、かつ、nが8以上である、請求項8に記載の式(I−3)の化合物。

【公表番号】特表2009−512665(P2009−512665A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536075(P2008−536075)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002268
【国際公開番号】WO2007/045741
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500166231)ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク (30)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
【Fターム(参考)】