説明

両持ち式圧延機

【課題】 コンパクトであり、且つ剛性が高く、予圧をかけることも可能な両持ち式圧延機を提供する。
【解決手段】 圧延ロール用軸受を内蔵する上下のベアリングハウジング6〜9をタイロッド19が貫通し、このタイロッド19の上下のいずれかの端側に油圧シリンダ23が備えられ、前記上下のベアリングハウジング6と8、7と9間に圧延ロール4、5の隙間を調整するロール隙間調整手段18が配設され、更に、このロール隙間調整手段18を前記タイロッド19に係合させるとともに、タイロッド19を回転させる駆動手段31を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒鋼、帯鋼、線材などを圧延するための両持ち式圧延機に関し、詳細には、上下1対のワークロールの両端をベアリングハウジングでそれぞれ支持し、その両端それぞれの上下のベアリングハウジングを直接タイロッドで連結した構造の所謂ハウジングレス圧延機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の両持ち式圧延機は、ロール、ベアリングハウジング、ロールスタンド(ハウジング)、圧下装置、駆動装置で構成され、これは構造がシンプルであり、最も普及した圧延機である。これに対し、別タイプの圧延機として上下のベアリングチョックを直接タイロッドで連結した圧延機がある。この圧延機は前記のロールスタンドを省くことができ、コンパクトな圧延機である。この種のタイプをハウジングレス圧延機と呼ぶ。本発明は、このハウジングレス圧延機に係わるものであって、例えば、特開平11−169924号公報(特許文献1)などに開示されている。
【0003】
特許文献1に開示のものは、その特許請求の範囲に記載されているように、スタンド(14,15)に取り付けられた少なくとも一対の圧延シリンダ(12,13)を有し、圧延シリンダ(12,13)相互間の隙間(加工ギャップ)(17)がネジ(18)と親ネジ(21)から成るシステムによって調整され、圧延シリンダの油圧式予荷重システムが隙間(17)の調整後に作用するようになった形式の高温圧延棒鋼製造用圧延ケージにおいて、圧延シリンダ(12,13)の油圧式予荷重システムは、相対的な摺動動作が可能な状態でスタンド(14,15)を横切って延びる複数のロッド(27)を有し、各ロッド(27)は一端(28)が、スタンド(14)にしっかりと取り付けられ、他端は、スタンド(14)と反対側のスタンド(15)に取り付けられた油圧シリンダ(30)の内部に運動自在に設けられたピストン(29)を備え、ロッド(27)は、圧延トルクに対抗する機能を果たすように構成されたケージである。
【0004】
ところで、一般に圧延機は圧延により、圧延荷重が発生しワークロールのロール間隙が僅かながら変化する。このミル剛性が低いと、圧延温度のムラで圧延荷重が変動し、圧延後の材料寸法も変化する。圧延の最終パスで製品に仕上る場合、このミル剛性が低いと品質(製品の寸法精度)の良い製品を製造できない。
【0005】
一方、圧延機の剛性(ミル剛性)を高くするためには圧延時弾性変形する部位の剛性を高めていく必要があるが、部材をむやみに大きくすると経済性で劣るため、コンパクトにして剛性の高い圧延機が求められている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の圧延機では、スタンド(14,15)を横切って延びる複数のロッド(27)でスタンド(14)とスタンド(15)を連結し、これによりハウジングレス圧延機構造としたものであるが、ロッド(27)と油圧シリンダ(30)を具備する予圧装置と、ネジ(18)と親ネジ(21)を具備する圧下装置とを別々に備える構成としているため、コンパクト性に劣るとともに、設備コストアップや圧延ラインの短縮化を妨げるなど経済性も劣る。また、予圧をかけているが、ワークロールのロール中心から圧下ネジまでの距離が長く、上下のネジ間の距離も長いため、ミル剛性の向上効果は少ない。
【特許文献1】特開平11−169924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情を基になしたものであって、その目的は、コンパクトであり、且つ剛性が高く、予圧をかけることも可能な両持ち式圧延機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る両持ち式圧延機は、圧延ロール用軸受を内蔵する上下のベアリングハウジングをタイロッドが貫通し、このタイロッドの上下のいずれかの端側に油圧シリンダが備えられ、前記上下のベアリングハウジング間に圧延ロールの隙間を調整するロール隙間調整手段が配設され、更に、このロール隙間調整手段を前記タイロッドに係合させるとともに、タイロッドを回転させる駆動手段を設けてなるものである。
【0009】
上記構成では、タイロッドがロール隙間調整手段と係合するように設けられ、そのロール隙間調整手段が上下ワークロールの中間位置に配置されているので、ワークロールの中心から圧下手段までの距離が短くなり、ベアリングハウジングの剛性アップと共にコンパクトな圧延機に構成できる。また、タイロッドは駆動手段により回転するので、圧下手段(ロール隙間調整手段)の駆動源とすることができるとともに、複数対あるタイロッドを、動力伝達機構を介在させて1つの駆動手段で容易に操作できる。また、圧下手段(ロール隙間調整手段)は圧延機の中央に配設されるが、その駆動手段は設備環境の良い圧延機の上方に設置されることになる。また、タイロッドの上下のいずれかの端側に油圧シリンダを備えているので、この油圧シリンダで圧延荷重より大きな推力でタイロッド端部とベアリングハウジング間に予圧をかけることができる。
【0010】
また、本発明(請求項2)に係る両持ち式圧延機は、上記請求項1に記載の両持ち式圧延機において、ロール隙間調整手段が、スクリューネジ方式であって、スタンドに固定され上部と下部が逆ネジに形成されたナットと、そのナットに貫通させて設けられたタイロッドの上部側と下部側に設けられるとともに、前記ナットの上部と下部の逆ネジに対応して噛み合うように設けられた上部側と下部側とで逆ネジの各スクリューとを備えてなるものである。
【0011】
上記のように構成することにより、請求項1の発明の作用効果に加えて更に、タイロッドの上下のいずれかの端側に油圧シリンダを備えており、この油圧シリンダで圧延荷重より大きな推力でタイロッド端部とベアリングハウジング間に予圧をかけることができるので、スクリューネジのガタを圧延前になくし、圧延による隙間の広がり(ミルジャンプ)を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る両持ち式圧延機によれば、コンパクトな構成でもって、且つ剛性を高めることができる上に、予圧をかけることも可能な圧延機とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る両持ち式圧延機の左半分断面視側面図、図2は、図1のタイロッド駆動装置を除いて示す平面図である。なお、以下の説明において、駆動側とはワークロールを図示省略する駆動モータに連結する側を指し、作業側とは反駆動側を指す。
【0014】
圧延機は、スタンド架台1上に駆動側ガイドスタンド2及び作業側ガイドスタンド3が、圧延ラインに沿って一定間隔をおいて駆動側と作業側とで各2本ずつ立設されており、2本の駆動側ガイドスタンド2の間及び2本の作業側ガイドスタンド3の間のそれぞれには、上下のワークロール4、5がそれぞれの両側に取付けたベアリングハウジング6〜9を上下方向に摺動可能に収容して設けられる構成となっている。
【0015】
駆動側ガイドスタンド2は、断面略T字状のフレーム構造であって、上下方向の内側中央部に後記するナット27を固定するための受台10が固定されている。また、作業側ガイドスタンド3は、前記駆動側ガイドスタンド2と同構造のフレーム構造に加えて、断面略T字状のフレームの端部に、ワークロール4、5が軸方向に移動するのを規制するための押え板11を押えボルト12で押圧固定するためのフレーム板13が設けられている。
【0016】
駆動側ベアリングハウジング6、8と作業側ベアリングハウジング7、9は、何れも同様の構造のものであって、ハウジング本体14と、そのハウジング本体14の圧延方向の前後面に貫通孔15を有するフランジ部16、17とを備えて構成され、ワークロール4、5の両側の軸部に取付けた軸受(ベアリング)をハウジング本体14内に収容して、ワークロール4、5の両側の軸部に取付けられる。
【0017】
上記のようにして駆動側ベアリングハウジング6と作業側ベアリングハウジング7を取付けた上ワークロール4及び駆動側ベアリングハウジング8と作業側ベアリングハウジング9を取付けた下ワークロール5は、ハウジング本体14の前後に設けたフランジ部16、17の貫通孔15を、中央部にロール隙間調整手段18を備えるタイロッド19の上側と下側のそれぞれより挿入した後、下ワークロール5の前後のフランジ部16、17の下面側はワッシャ20とダブルナット21、22を設けて固定し、一方、上ワークロール4の前後のフランジ部16、17の上面側は、更に予圧用の中空式油圧シリンダ23を設けた後に同様にワッシャ20とダブルナット21、22を設けて固定する。これにより、上下のワークロール4、5のセッティングが行われる。
【0018】
タイロッド19の中央部に設けたロール隙間調整手段18は、本例では、タイロッド19の中央部に設けたスプライン軸24と、内周面にこのスプライン軸24に噛み合うスプラインが形成され、外周面に左ネジが形成された上スクリュー25と、内周面に前記スプライン軸24に噛み合うスプラインが形成され、外周面に右ネジが形成された下スクリュー26と、上下のスクリュー25と26とを上、下のそれぞれに螺合して有するナット27とで構成されている。そして、ナット27の外周に突出して形成したフランジ部28を、駆動側ガイドスタンド2と作業側ガイドスタンド3のそれぞれの内側中央部に設けた受台10に固定金具29とコッタ30を介在させて固定可能なように構成されている。
【0019】
圧延機の組付けは、以下のようにして行われる。まず、上述のようにして上下のワークロール4、5をタイロッド19によりセッティングしたロール組立体を、スタンド架台1上に立設した2本の駆動側ガイドスタンド2と2本の作業側ガイドスタンド3の内空間に上方より装入する。次いで、作業側ガイドスタンド3のフレーム板13に設けられている押え板11と押えボルト12によりワークロール4、5が軸方向に移動するのを規制するとともに、ナット27の外周に突出して形成したフランジ部28を、駆動側ガイドスタンド2と作業側ガイドスタンド3のそれぞれの内側中央部に設けた受台10に固定金具29とコッタ30を介在させて固定し、更に、タイロッド19の上端部にタイロッド駆動装置31を連結して組付ける。なお、このタイロッド駆動装置31は、4本のタイロッド19のそれぞれに駆動モータを設けて駆動するようにしてもよいし、あるいは動力伝達機構を介在させて1台の駆動モータで駆動するようにしてもよい。
【0020】
上記構成の圧延機では、タイロッド19の中央部(上ワークロール4と下ワークロール5の間の高さ位置)に圧下手段(ロール隙間調整手段)18を設けているので、ワークロール4、5の中心から圧下手段18までの距離が短く、ベアリングハウジング8、9の剛性アップと共に圧延機自体がコンパクトな構成となっている。また、圧下手段(ロール隙間調整手段)18は、タイロッド19の中央部に配設されるが、その駆動装置31は設備環境の良い圧延機の上方に設置されメンテナンス作業などが行いやすい。また、タイロッド19の上端側に予圧用の油圧シリンダ23を備えているので、この油圧シリンダ23で圧延荷重より大きな推力でタイロッド19端部とベアリングハウジング8、9間に予圧をかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る両持ち式圧延機の左半分断面視側面図である。
【図2】図1のタイロッド駆動装置を除いて示す平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1:スタンド架台 2:駆動側ガイドスタンド
3:作業側ガイドスタンド 4:上ワークロール
5:下ワークロール 6、8:駆動側ベアリングハウジング
7、9:作業側ベアリングハウジング 10:受台
11:押え板 12:押えボルト 13:フレーム板
14:ハウジング本体 15:貫通孔 16、17:フランジ部
18:ロール隙間調整手段 19:タイロッド
20:ワッシャ 21、22:ナット 23:油圧シリンダ
24:スプライン軸 25:上スクリュー 26:下スクリュー
27:ナット 28:フランジ部 29:固定金具
30:コッタ 31:タイロッド駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両持ち式圧延機において、圧延ロール用軸受を内蔵する上下のベアリングハウジングをタイロッドが貫通し、このタイロッドの上下のいずれかの端側に油圧シリンダが備えられ、前記上下のベアリングハウジング間に圧延ロールの隙間を調整するロール隙間調整手段が配設され、更に、このロール隙間調整手段を前記タイロッドに係合させるとともに、タイロッドを回転させる駆動手段を設けてなることを特徴とする両持ち式圧延機。
【請求項2】
ロール隙間調整手段が、スクリューネジ方式であって、スタンドに固定され上部と下部が逆ネジに形成されたナットと、そのナットに貫通させて設けられたタイロッドの上部側と下部側に設けられるとともに、前記ナットの上部と下部の逆ネジに対応して噛み合うように設けられた上部側と下部側とで逆ネジの各スクリューとを備えてなる請求項1に記載の両持ち式圧延機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−136919(P2006−136919A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328167(P2004−328167)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)