説明

両眼視機能測定方法、両眼視機能測定プログラム、眼鏡レンズの設計方法、及び眼鏡レンズの製造方法

【課題】コスト面の負担を抑えつつ両眼視機能を高精度に測定するのに好適な両眼視機能測定方法を提供すること。
【解決手段】据置型3次元対応ビデオモニタを利用して両眼視機能を測定する方法であって、両眼視機能の測定項目が指定された場合に左右の視差画像を表示画面内の所定の測定開始位置に表示する視差画像表示ステップと、左の視差画像と右の視差画像を指定測定項目に応じて相対的に変化させる視差画像表示変化ステップと、表示画面から所定距離離れた位置で左右の視差画像を視る被測定者が該左右の視差画像を融像できなくなるタイミングを検知するタイミング検知ステップと、検知されたタイミングにおける左の視差画像と右の視差画像との差異及び所定距離に基づいて指定測定項目の測定値を計算する測定値計算ステップとを有する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視機能を測定する方法及びプログラムと、その測定結果を用いて眼鏡レンズの設計、製造を行う眼鏡レンズの設計方法、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視力検査項目の一つとして両眼視機能検査が知られている。両眼視機能検査には、例えば同時視検査、融像検査、立体視検査等がある。この種の視力検査の具体的方法例は特許文献1や2に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の立体視検査方法は、HMD(Head Mounted Display)を利用して行われる。具体的には、被測定者は、HMDを片方の眼に装用して対象物を虚像画像として視ると同時に、他方の眼で対象物を頭部を固定した状態で裸眼視する。被測定者は、虚像画像の対象物と裸眼の対象物の網膜像が対応点ではないがパナムの融像域圏内にあるときに対象物を立体として知覚する。検査では、立体視できる状態から虚像画像を移動させて両眼視差を変化させる。両眼視差を変化させると、ある時点で左右の網膜像がパナムの融像域から外れる。このとき被測定者は対象物の二重像を知覚する。このように、特許文献1に記載の立体視検査方法では、対象物を融像できる限界点を測定して立体視の検査を行う。
【0004】
特許文献2に記載の眼科検査方法では、眼科検査装置の浅底半球型スクリーンに投影された指標を用いて両眼視機能の検査を行う。例えば融像の検査では、左眼用画像と右眼用画像を単一の画像として認識できるように重ねて投影する。投影された2つの画像はその後離間される。特許文献2に記載の眼科検査方法では、離間された2つの画像を二重像と認識する限界点を測定して融像の検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−99335号公報
【特許文献2】特開2010−75755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、HMDはサイズや重量に関する制約が厳しい。そのため、HMDに大型の表示素子を搭載することは難しい。そこで、一般的なHMDは、限られたサイズの表示素子の画像を拡大投影するため、接眼レンズの焦点距離が短く広視野角に設計されている。しかし、接眼レンズを広視野角化した代償として、収差による画質劣化が大きい。特に、画面周辺では像の歪みが大きい。収差による画質劣化が大きい場合、虚像画像の対象物を裸眼の対象物と同一視できない虞がある。すなわち、特許文献1に記載の立体視検査方法は、本来融像できる範囲で複視が起こり得る。そのため、測定値の信頼性が低いという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載の眼科検査方法の実施には、専用の眼科検査装置の使用が必須である。しかし、この種の眼科検査装置は非常に高価であるため、簡単には導入することができない。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コスト面の負担を抑えつつ両眼視機能を高精度に測定するのに好適な両眼視機能測定方法、両眼視機能測定プログラム、眼鏡レンズの設計方法、及び眼鏡レンズの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る両眼視機能測定方法は、据置型3次元対応ビデオモニタを利用して両眼視機能を測定する方法である。据置型3次元対応ビデオモニタは、両眼視差を利用して被測定者に立体視させる画像を表示画面に表示する。被測定者は、測定中、表示画面から所定距離離れた位置で左右の視差画像を視る。本発明に係る両眼視機能測定方法は、両眼視機能の測定項目が指定された場合に左右の視差画像を表示画面内の所定の測定開始位置に表示する視差画像表示ステップと、左の視差画像と右の視差画像を指定測定項目に応じて相対的に変化させる視差画像表示変化ステップと、被測定者が左右の視差画像を融像できなくなるタイミングを検知するタイミング検知ステップと、検知されたタイミングにおける左の視差画像と右の視差画像との差異及び所定距離に基づいて指定測定項目の測定値を計算する測定値計算ステップとを有することを特徴としている。
【0010】
両眼視機能を測定するにあたり、例えば汎用的なPCとビデオモニタを一台ずつ準備して、両眼視機能を測定するためのプログラムをPCにインストールするだけで足りる。そのため、導入コストが大幅に抑えられる。また、両眼視機能の測定に利用するビデオモニタは、HMDに搭載されているようなパワーの強いレンズを必要としない構成である。そのため、像の歪みに起因する測定精度の低下が抑えられる。また、画像に与える変化(移動、回転、変倍など)を適宜設定することにより、両眼視機能に関する種々のパラメータを簡単に測定することができる。
【0011】
本発明に係る両眼視機能測定方法は、指定測定項目の測定値が計算されるごとに測定開始位置を変更する開始位置変更ステップを更に有し、変更後の測定開始位置に左右の視差画像を表示して、視差画像表示変化ステップ、タイミング検知ステップ、測定値計算ステップを順に実施する方法としてもよい。これにより、異なる測定開始位置ごとの指定測定項目の測定値が求まり、正面視や側方視など異なる視線方向ごとの測定結果が得られる。
【0012】
指定測定項目には、相対輻輳、左右眼上下開散許容値、第一の不等倍率許容値、第二の不等倍率許容値、左右眼回旋視差許容値が例として挙げられる。なお、左右眼上下開散許容値は、立体視可能な左右眼の上下開散の許容値である。第一の不等倍率許容値は、立体視可能な左右眼の不等倍率の許容値である。第二の不等倍率許容値は、立体視可能な左右眼の特定方向に限定した不等倍率の許容値である。左右眼回旋視差許容値は、立体視可能な左右眼の回旋視差の許容値である。
【0013】
指定測定項目が相対輻輳である場合、例えば、視差画像表示変化ステップにおいて左の視差画像と右の視差画像とが表示画面の水平方向に離間又は接近し、測定値計算ステップにおいて上記タイミングにおける左の視差画像と右の視差画像の水平方向の位置ずれ量及び所定距離に基づいて被測定者の相対輻輳が計算される。
【0014】
指定測定項目が左右眼上下開散許容値である場合、例えば、視差画像表示変化ステップにおいて左の視差画像と右の視差画像とが表示画面の垂直方向に離間又は接近し、測定値計算ステップにおいて上記タイミングにおける左の視差画像と右の視差画像の垂直方向の位置ずれ量及び所定距離に基づいて被測定者の左右眼上下開散許容値が計算される。
【0015】
指定測定項目が第一の不等倍率許容値である場合、例えば、視差画像表示変化ステップにおいて左の視差画像又は右の視差画像の少なくとも一方が縦横比固定で変倍して該左の視差画像と該右の視差画像の表示倍率が相対的に変化し、測定値計算ステップにおいて上記タイミングにおける表示倍率の比及び所定距離に基づいて被測定者の第一の不等倍率許容値が計算される。
【0016】
指定測定項目が第二の不等倍率許容値である場合、例えば、視差画像表示変化ステップにおいて左の視差画像又は右の視差画像の少なくとも一方が特定方向に限り変倍して該左の視差画像と該右の視差画像の該特定方向の表示倍率が相対的に変化し、測定値計算ステップにおいて上記タイミングにおける表示倍率の比及び所定距離に基づいて被測定者の第二の不等倍率許容値が計算される。
【0017】
指定測定項目が左右眼回旋視差許容値である場合、例えば、視差画像表示変化ステップにおいて左の視差画像又は右の視差画像の少なくとも一方が各重心を中心に回転して該左の視差画像と該右の視差画像の回転角度が相対的に変わり、測定値計算ステップにおいて上記タイミングにおける回転角度の差及び所定距離に基づいて被測定者の左右眼回旋視差許容値が計算される。
【0018】
本発明に係る両眼視機能測定方法は、所定距離を変更する距離変更ステップを有し、所定距離を変更するごとに上述した各方法を使用する方法としてもよい。これにより、異なる所定距離ごとの指定測定項目の測定値が求まる。
【0019】
左の視差画像と右の視差画像の相対的変化は、例えば表示画面上に連続的変化又は段階的変化で描画される。
【0020】
測定値計算ステップにおいては、被測定者の年齢を因子として指定測定項目の測定値を計算してもよい。
【0021】
タイミング検知ステップにおいては、例えば被測定者による入力装置に対する所定の操作入力を監視して被測定者が左右の視差画像を融像できなくなるタイミングを検知する。
【0022】
左の視差画像と右の視差画像の相対的変化の速さは、設定変更自在としてもよい。また、その変化の速さは、等速的又は加速度的であってもよい。但し、相対的変化の速さは、所定の範囲内の速さに収めることが望ましい。相対的変化の速さの上限は、例えば被測定者が融像できなくなるタイミングと入力装置に対する上記操作を行うタイミングとのタイムラグによる誤差が所定の許容値に収まる程度の値に設定される。一方、下限は、例えば融像が強く働いて融像範囲が自然な眼球運動内で想定される範囲を超えて拡がる前に画像の表示が変化する程度の値に設定される。上下限の具体的設定値は、例えば実験等を重ねた上で決められる。
【0023】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る両眼視機能測定プログラムは、上記両眼視機能測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0024】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る眼鏡レンズの設計方法は、上記両眼視機能測定方法を使用して被測定者の両眼視機能を測定するステップと、両眼視機能の測定結果に基づいて眼鏡レンズの光学設計値を決定するステップとを有することを特徴としている。
【0025】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る眼鏡レンズの製造方法は、上記眼鏡レンズの設計方法を使用して眼鏡レンズを設計するステップと、眼鏡レンズの設計結果に従って眼鏡レンズを製造するステップとを有することを特徴としている。
【0026】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る両眼視機能測定システムは、両眼視差を利用して被測定者に立体視させる画像を表示画面に表示する据置型3次元対応ビデオモニタを利用して両眼視機能を測定するシステムである。本発明に係る両眼視機能測定システムを使用する被測定者は、測定中、表示画面から所定距離離れた位置で左右の視差画像を視る。本発明に係る両眼視機能測定システムは、両眼視機能の測定項目が指定された場合に左右の視差画像を表示画面内の所定の測定開始位置に表示する視差画像表示手段と、左の視差画像と右の視差画像を指定測定項目に応じて相対的に変化させる視差画像表示変化手段と、被測定者が左右の視差画像を融像できなくなるタイミングを検知するタイミング検知手段と、検知されたタイミングにおける左の視差画像と右の視差画像との差異及び所定距離に基づいて指定測定項目の測定値を計算する測定値計算手段とを有することを特徴としている。
【0027】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る眼鏡レンズ設計システムは、上記両眼視機能測定システムを使用して測定された被測定者の両眼視機能の測定データに基づいて眼鏡レンズの光学設計値を決定する。
【0028】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る眼鏡レンズ製造システムは、上記眼鏡レンズ設計システムを使用して設計された眼鏡レンズの設計データに基づいて眼鏡レンズを製造する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コスト面の負担を抑えつつ両眼視機能を高精度に測定するのに好適な両眼視機能測定方法、両眼視機能測定プログラム、眼鏡レンズの設計方法、及び眼鏡レンズの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の眼鏡レンズの製造方法を実現するための眼鏡レンズ製造システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の両眼視機能測定システムの概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の両眼視機能測定システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の両眼視機能測定プログラムによる相対輻輳測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。
【図5】本発明の実施形態の相対輻輳測定モードの実行中に表示画面に表示される画像の遷移図である。
【図6】本発明の実施形態の両眼視機能測定プログラムによる左右眼上下開散許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の実施形態の左右眼上下開散許容値測定モードの実行中に表示画面に表示される画像の遷移図である。
【図8】本発明の実施形態の両眼視機能測定プログラムによる第一の不等倍率許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。
【図9】本発明の実施形態の第一の不等倍率許容値測定モードの実行中に表示画面に表示される画像の遷移図である。
【図10】本発明の実施形態の両眼視機能測定プログラムによる第二の不等倍率許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の実施形態の第二の不等倍率許容値測定モードの実行中に表示画面に表示される画像の遷移図である。
【図12】リスティング法則に関する説明を行うための図である。
【図13】両眼視の場合の左右の眼の視線方向を説明するための図である。
【図14】本発明の実施形態の両眼視機能測定プログラムによる左右眼回旋視差許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。
【図15】本発明の実施形態の左右眼回旋視差許容値測定モードの実行中に表示画面に表示される画像の遷移図である。
【図16】第一の複合的な測定モードにおける画像の表示例である。
【図17】第二の複合的な測定モードにおける画像の表示例である。
【図18】第三の複合的な測定モードにおける画像の表示例である。
【図19】側方視を考慮した測定モードにおける画像の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0032】
図1は、本実施形態の眼鏡レンズの製造方法を実現するための眼鏡レンズ製造システム1の構成を示すブロック図である。眼鏡レンズ製造システム1は、例えば眼鏡レンズ製造工場に設置されており、図1に示されるように、両眼視機能測定システム10、入力装置20(キーボード、マウス、ゲームパッド等)、PC(Personal Computer)30、ディスプレイ40、加工機50を有している。PC30には、両眼視機能測定システム10を用いて測定された被測定者の両眼視機能の測定データと、入力装置20に入力された眼鏡レンズの仕様データが入力する。仕様データには、例えば眼鏡レンズの光学特性や製品種別が含まれる。眼鏡レンズの光学特性には、例えば頂点屈折力(球面屈折力、乱視屈折力、乱視軸方向、プリズム屈折力、プリズム基底方向)等が想定される。両眼視機能測定システム10及び入力装置20は、眼鏡レンズ製造工場から離れた眼鏡店に設置されてもよい。この場合、両眼視機能測定システム10による測定データや入力装置20に入力された仕様データは、コンピュータネットワークを介してPC30に伝送される。
【0033】
PC30は、CPU(Central Processing Unit)32、HDD(Hard Disk Drive)34、RAM(Random Access Memory)36を有している。HDD34には、加工機50を制御するための加工制御プログラムがインストールされている。CPU32は、加工制御プログラムをRAM36にロードして起動する。加工制御プログラムが起動すると、眼鏡レンズの設計及び製造を指示するためのGUI(Graphical User Interface)がディスプレイ40の表示画面に表示される。加工制御プログラムは、仕様データ及び測定データに基づいてセミフィニッシュレンズを選定した上で面形状の最適化計算を行い、光学設計値を決定する。
【0034】
オペレータは、選定されたセミフィニッシュレンズを加工機50にセットしてGUIを操作し、加工開始の指示入力を行う。加工制御プログラムは、決定した光学設計値を読み込んで加工機50を駆動制御する。加工機50は、加工制御プログラムの実行に従ってセミフィニッシュレンズの表面を研削して眼鏡レンズを製造する。なお、両眼視機能に関する測定データを用いた眼鏡レンズの具体的設計方法は、例えば本出願人がした国際公開第2010/090144号パンフレット等に例示がある。
【0035】
図2は、両眼視機能測定システム10の概略を示す図である。図3は、両眼視機能測定システム10の構成を示すブロック図である。両眼視機能測定システム10を用いた両眼視機能測定方法では、片眼だけに着目した処方では得られない眼鏡レンズの設計データ(又は評価データ)を得るべく、被測定者2の両眼視機能を複数種類測定することができる。
【0036】
両眼視機能測定システム10は、図2又は図3に示されるように、ビデオモニタ102を有している。ビデオモニタ102は、両眼視差を利用して被測定者2に立体視させる3次元画像表示対応の据置型ビデオモニタ(据置型のいわゆる液晶テレビやプラズマテレビ等)である。ビデオモニタ102は、フレームシーケンシャル方式を採用する。ビデオモニタ102は、画像処理エンジン104に入力した画像データを処理して右眼用画像と左目用画像を生成し、各画像を交互に高速で表示画面106に表示する。
【0037】
被測定者2は、液晶シャッタめがね112を装用して基準位置に立ち、測定中、頭(顎)を固定した状態で表示画面106を視る。液晶シャッタめがね112には、ビデオモニタ102に搭載されたトランスミッタ108から同期信号が送信される。液晶シャッタめがね112は、受信した同期信号に従い、表示画面106に表示された視差画像と同期して液晶の配向をコントロールして左右の視界を交互に遮断する。ビデオモニタ102と液晶シャッタめがね112とが同期する期間中、被測定者2の右眼には右眼用画像だけが見え、被測定者2の左眼には左眼用画像だけが見える。被測定者2は、パナムの融像域圏内であって網膜上の非対応点に結像するビデオモニタ102の視差画像を立体として知覚する。
【0038】
両眼視機能測定システム10で利用されるビデオモニタ102の3次元画像の表示形式は、フレームシーケンシャル方式を採用したものに限らない。フレームシーケンシャル方式に代わり、視差画像を赤と青のカラーフィルタめがねを通じて立体視させるアナグリフ方式や、偏光状態が直交する視差画像を偏光めがねを通じて立体視させる偏光方式が採用されてもよい。パララックスバリア方式やレンチキュラーレンズ方式等のいわゆる裸眼式が採用されてもよい。
【0039】
ビデオモニタ102は、台座122上に設置されている。台座122は、レール124をスライド自在に構成されている。台座122をスライドさせると、被測定者2の眼と表示画面106との距離(以下、説明の便宜上、「観察距離D」と記す。)が変化する。オペレータは、両眼視機能測定を行うにあたり、レール124の脇に付された目盛り(不図示)を見て観察距離Dを把握する。観察距離Dは、センサ(不図示)を用いて台座122のスライド距離を検知し、データとして採取してもよい。
【0040】
ビデオモニタ102には、PC130が接続されている。PC130は、CPU132、HDD134、RAM136、入力装置138(キーボード、マウス、ゲームパッド等)を有している。HDD134には、両眼視機能測定を行うための両眼視機能測定プログラムがインストールされている。CPU132は、両眼視機能測定プログラムをRAM136にロードして起動する。両眼視機能測定プログラムが起動すると、両眼視機能測定の各種指示を行うためのGUIがディスプレイ140の表示画面に表示される。両眼視機能測定プログラムは、オペレータによるGUI操作に従って測定用データを生成してビデオモニタ102に出力する。ビデオモニタ102に出力された測定用データは、画像処理エンジン104が処理する。画像処理エンジン104は、入力した測定用データを処理して両眼視機能を測定するための測定用画像を生成して表示画面106に表示させる。なお、眼鏡レンズ製造システム1の構成要素が全て同じ場所に設置されている場合、図1に示すPC30と図2又は図3に示すPC130とが単一のPCであってもよい。また、図1に示す入力装置20と図2又は図3に示す入力装置138とが単一の入力装置であってもよい。また、図1に示すディスプレイ40と図2又は図3に示すディスプレイ140とが単一のディスプレイであってもよい。
【0041】
両眼視機能測定プログラムは、両眼視機能に関する各種測定項目をサポートしている。サポートする測定項目として、例えば相対輻輳、左右眼上下開散許容値、第一の不等倍率許容値、第二の不等倍率許容値、左右眼回旋視差許容値などが挙げられる。オペレータは、両眼視機能測定を行うにあたり、GUI上の何れかの測定項目を選択する。また、オペレータは、測定条件として、年齢や観察距離D等を入力する。入力された測定条件は、HDD134に記憶される。なお、観察距離Dは、センサ出力を定期的にチェックして演算し、HDD134に自動的に格納してもよい。以下、上記に列挙した各測定項目が選択されたときの両眼視機能測定プログラムの処理の実行について説明する。
【0042】
<「相対輻輳」が選択された場合>
両眼視機能測定プログラムは、被測定者2の相対輻輳を測定する相対輻輳測定モードに移行する。相対輻輳は、調節を伴わない輻輳である。ここで、眼球の輻輳(又は開散)と調節は、公知のドンダース図に示されるように本来的には連携して働く。そのため、輻輳を調節から分離して測定することは簡単ではない。なお、ドンダース図については、「石原忍著、鹿野信一改訂「小眼科学」改訂第17版、金原出版、(1925)p50」、「畑田豊彦著「奥行き情報と視覚の特性」視覚情報研究会、昭和49年4月23日、p12」、本出願人がした国際公開第2010/090144号パンフレット等に記載がある。ドンダース図中、原点を通る傾き1(角度45度)の直線は、ドンダース線である。ドンダース線は、斜視や斜位のない裸眼の被測定者が対象を見ているときの輻輳と調節との連携を表している。ドンダース線の左右には、輻輳(又は開散)限界値を示すドンダース曲線がプロットされている。ドンダース線の一点から左右のドンダース曲線までの値であって右側(輻輳角が大となる側)が虚性相対輻輳に分類され、左側(輻輳角が小となる側)が実性相対輻輳に分類される。
【0043】
図4は、両眼視機能測定プログラムによる相対輻輳測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。図5は、相対輻輳測定モードの実行中に表示画面106に表示される画像の遷移図である。以降の本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0044】
相対輻輳測定モードに移行すると、図5(a)に示されるように、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが表示画面106の中央に重ねられた状態で表示される(図4のS1)。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rはサイズや色、形状等を含め、同一の画像である。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rは、被測定者2が測定に集中できるように単純な幾何学形状であることが望ましい。被測定者2には、画像が二重に見えた時点で入力装置138の所定の操作キーを押すように指示が出される。指示は、例えば表示画面106に表示される。また、オペレータが被測定者2に直接指示を出してもよい。相対輻輳以外の他の測定項目を測定する場合にも同じ指示が出される。
【0045】
図4のS2の処理では、図5(b)に示されるように、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが表示画面106の水平方向(図5(b)の矢印A方向)に移動して離間する。離間する画像の動きは、連続的変化で又は段階的変化で描画される。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの離間は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する(図4のS2、S3:NO)。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図4のS3:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量(以下、説明の便宜上、「第一の相対輻輳測定位置」と記す。)がHDD134に記憶される(図4のS4)。なお、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置は相対的に離れればよい。そのため、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの一方は、測定中、位置が固定されていてもよい。後述の左右眼上下開散許容値測定モードにおいても同様である。
【0046】
離間する画像の提示時間は、被測定者2の負担を考慮して最大で例えば1秒ほどである。なお、提示時間は、オペレータが必要に応じて変更することができる。
【0047】
図4のS5の処理では、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが第一の相対輻輳測定位置から表示画面106の水平方向(矢印A方向と逆方向であって図5(c)の矢印B方向)に移動して接近する。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rは接近して一旦重なった後、図5(c)に示されるように、矢印B方向に引き続き移動して今度は離間する。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの接近又は離間は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する(図4のS5、S6:NO)。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図4のS6:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量(以下、説明の便宜上、「第二の相対輻輳測定位置」と記す。)がHDD134に記憶される(図4のS7)。
【0048】
図4のS8の処理では、第一の相対輻輳測定位置と観察距離Dを用いて第一の輻輳角(開散限界)が計算され、第二の相対輻輳測定位置と観察距離Dを用いて第二の輻輳角(輻輳限界)が計算される。第一の輻輳角は、観察距離Dにおける調節力に対応する実性相対輻輳を表す。第二の輻輳角は、観察距離Dにおける調節力に対応する虚性相対輻輳を表す。観察距離Dは測定中不変である。従って、被測定者2の調節力は測定中実質的に変化しない。そのため、実性相対輻輳及び虚性相対輻輳が調節から分離して簡易かつ高精度に測定される。
【0049】
図4のS8の処理で求められた実性相対輻輳及び虚性相対輻輳をドンダース図に適用すると、左右のドンダース曲線が推定される。すなわち、被測定者2の輻輳と調節との連携関係が求まる。ドンダース曲線は、年齢に依存して変化する。そのため、ドンダース曲線を推定する際、測定条件として入力した年齢を考慮すると尚よい。
【0050】
観察距離Dを変更して相対輻輳測定モードによる測定を行うと、異なる調節力が働いたときの実性相対輻輳及び虚性相対輻輳が測定される。異なる観察距離Dにおける相対輻輳の測定を繰り返すほどドンダース曲線を推定するためのサンプルデータがより一層多く採取される。そのため、被測定者2の輻輳と調節との連携関係がより一層精度良く求められる。
【0051】
左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの離間速度が遅い場合、被測定者2が眼球の周りの筋肉を日常生活時と比べて強く動かして融像を無理に働かせることが想定される。このとき、融像範囲が自然な眼球運動内で想定される範囲を超えて拡がるため、測定精度が低下する。そこで、離間速度は、被測定者2が左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを日常生活と変わらないリラックスした状態で視るように比較的速めに設定されている。相対輻輳以外の他の測定項目を測定する場合も、同様の観点から、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの相対的変化(移動、回転、変倍など)が比較的速めに設定されている。
【0052】
オペレータは、相対的変化の速さを適宜設定変更することができる。但し、設定変更可能な相対的変化の速さは、所定の範囲内の速さに収めることが望ましい。相対的変化の速さの上限は、例えば被測定者が融像できなくなるタイミングと入力装置138の所定の操作キーを押すタイミングとのタイムラグによる誤差が所定の許容値に収まる程度の値に設定される。一方、下限は、例えば融像が強く働いて融像範囲が自然な眼球運動内で想定される範囲を超えて拡がる前に画像の表示が変化する程度の値に設定される。上下限の具体的設定値は、例えば実験等を重ねた上で決められる。
【0053】
左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの離間は、相対輻輳の測定を迅速かつ高精度に行うため複数回行ってもよい。例えば一回目の測定(以下、説明の便宜上、「事前測定」と記す。)では、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを高速に離間させて融像限界の大凡の位置を特定する。二回目の測定(以下、説明の便宜上、「本測定」と記す。)では、事前測定で特定された大凡の位置周辺で左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを遅い速度(但し、融像が強く働かない程度の速度)で離間させる。本測定では、離間速度が遅いため、被測定者2が融像できなくなるタイミングと入力装置138の所定の操作キーを押すタイミングとのタイムラグによる誤差が抑えられて測定精度が向上する。また、本測定の測定区間は、事前測定で特定された融像限界の大凡の位置周辺に限定される。そのため、相対輻輳の測定は、事前測定と本測定を両方行う場合であっても速やかに行われる。相対輻輳以外の他の測定項目についても迅速かつ高精度な測定を行うため、事前測定と本測定の両方を行ってもよい。
【0054】
相対輻輳測定モードで測定された実性相対輻輳と虚性相対輻輳から被測定者2の融像範囲の中央値が求まる。かかる中央値に基づいて例えば被測定者2が持つ潜在的なズレ(内斜視や外斜視)が推定される。相対輻輳以外の他の測定項目についても同様に中央値の推定が可能である。
【0055】
<「左右眼上下開散許容値」が選択された場合>
両眼視機能測定プログラムは、被測定者2の左右眼上下開散許容値を測定する左右眼上下開散許容値測定モードに移行する。左右眼上下開散許容値は、立体視可能な左右眼の上下開散の許容値である。図6は、両眼視機能測定プログラムによる左右眼上下開散許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。図7は、左右眼上下開散許容値測定モードの実行中に表示画面106に表示される画像の遷移図である。以降の本明細書中の説明並びに図面において、同一の又は同様の処理には同一の又は同様の符号を付して説明を簡略又は省略する。
【0056】
左右眼上下開散許容値測定モードに移行して画像表示が行われると(図6のS1、図7(a))、図7(b)に示されるように、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが表示画面106の垂直方向(図7(b)の矢印C方向)に移動して離間する(図6のS12)。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図6のS3:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量(以下、説明の便宜上、「第一の左右眼上下開散許容値測定位置」と記す。)がHDD134に記憶される(図6のS14)。
【0057】
図6のS15の処理では、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが第一の左右眼上下開散許容値測定位置から表示画面106の垂直方向(矢印C方向と逆方向であって図7(c)の矢印D方向)に移動して接近し、更に、図7(c)に示されるように離間する。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図6のS6:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量(以下、説明の便宜上、「第二の左右眼上下開散許容値測定位置」と記す。)がHDD134に記憶される(図6のS17)。
【0058】
図6のS18の処理では、第一及び第二の左右眼上下開散許容値測定位置と観察距離Dに基づいて左右眼上下開散許容値、及び当該観察距離Dにおいて対象物を融像できる上下方向の範囲が計算される。観察距離Dを変更して左右眼上下開散許容値測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の左右眼上下開散許容値が測定される。
【0059】
<「第一の不等倍率許容値」が選択された場合>
第一の不等倍率許容値は、立体視可能な左右眼の不等倍率の許容値である。不等倍率に対して眼鏡レンズの処方を行うか否かは、一般に左右の視力差が2ディオプター以上あるかどうかを判断基準として杓子定規に決められている。ところが、患者には個人差があるため、左右の視力差が2ディオプター未満であっても融像することが困難な場合がある。またこれとは逆に、左右の視力差が2ディオプター以上あっても融像が困難でない場合もある。以下に説明する第一の不等倍率許容値測定モードでは、左右の視力差を加味した融像の可否が実測される。そのため、第一の不等倍率許容値測定モードによる測定の結果を利用すると、個人差を考慮した不等倍率に対する最適な処方が可能になる。
【0060】
両眼視機能測定プログラムは、被測定者2の第一の不等倍率許容値を測定する第一の不等倍率許容値測定モードに移行する。図8は、両眼視機能測定プログラムによる第一の不等倍率許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。図9は、第一の不等倍率許容値測定モードの実行中に表示画面106に表示される画像の遷移図である。
【0061】
第一の不等倍率許容値測定モードに移行すると、図9(a)に示されるように、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが被測定者2の融像範囲であって僅かにずれた位置に表示される(図8のS21)。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの表示位置は、相対輻輳や左右眼上下開散許容値の測定結果を参照して決められる。相対輻輳や左右眼上下開散許容値の測定が行われていない場合は、オペレータが左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置を被測定者2の融像範囲に収まるように微調節する。
【0062】
図8のS22の処理では、図9(b)に示されるように、左眼用画像200Lが右眼用画像200Rに対して拡大表示される。左眼用画像200Lの拡大率は、縦横比固定であり、連続的変化で又は段階的変化で描画される。左眼用画像200Lの表示の拡大は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する(図8のS22、S3:NO)。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図8のS3:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rとの表示倍率比(以下、説明の便宜上、「第一の表示倍率比」と記す。)がHDD134に記憶される(図8のS24)。なお、第一の不等倍率許容値測定モードにおいて、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの表示倍率比は相対的に変化すればよい。そのため、画像に与えられる変化は、拡大に代えて縮小であってもよい。また、測定中、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを異なる変倍率で同時に拡大又は縮小させてもよい。後述の第二の不等倍率許容値測定モードにおいても同様である。
【0063】
図8のS25の処理では、図9(c)に示されるように、右眼用画像200Rが左眼用画像200Lに対して拡大表示される。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図8のS6:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rとの表示倍率比(以下、説明の便宜上、「第二の表示倍率比」と記す。)がHDD134に記憶される(図8のS27)。
【0064】
図8のS28の処理では、第一及び第二の表示倍率比と観察距離Dに基づいて当該観察距離Dにおける第一の不等倍率許容値が計算される。観察距離Dを変更して第一の不等倍率許容値測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の第一の不等倍率許容値が測定される。
【0065】
<「第二の不等倍率許容値」が選択された場合>
両眼視機能測定プログラムは、被測定者2の第二の不等倍率許容値を測定する第二の不等倍率許容値測定モードに移行する。第二の不等倍率許容値は、立体視可能な左右眼の特定方向に限定した不等倍率の許容値である。図10は、両眼視機能測定プログラムによる第二の不等倍率許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。図11は、第二の不等倍率許容値測定モードの実行中に表示画面106に表示される画像の遷移図である。
【0066】
第二の不等倍率許容値測定モードに移行して画像表示が行われると(図10のS21、図11(a))、左眼用画像200Lの特定方向の表示が右眼用画像200Rに対して拡大される(図10のS32)。図11(b)の画像例では、左眼用画像200Lの画面垂直方向の表示倍率のみ拡大する。左眼用画像200Lの拡大は、連続的変化で又は段階的変化で描画される。左眼用画像200Lの表示の拡大は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する(図10のS32、S3:NO)。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図10のS3:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの画面垂直方向の表示倍率比(以下、説明の便宜上、「第一の特定方向の表示倍率比」と記す。)がHDD134に記憶される(図10のS34)。
【0067】
図10のS35の処理では、変倍対象の全ての特定方向について左眼用画像200Lの拡大が行われたか否かが判定される。本実施形態では、変倍対象の方向は画面垂直方向と画面水平方向の2方向である。そのため、変倍対象の方向が画面水平方向に変更される(図10のS35:NO、S36)。次いで、図11(c)に示されるように、左眼用画像200Lの画面水平方向の表示が右眼用画像200Rに対して拡大される。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図10のS3:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの画面水平方向の表示倍率比(以下、説明の便宜上、「第二の特定方向の表示倍率比」と記す。)がHDD134に記憶される(図10のS34)。
【0068】
図108のS38の処理では、第一及び第二の特定方向の表示倍率比と観察距離Dに基づいて当該観察距離Dにおける第二の不等倍率許容値が計算される。観察距離Dを変更して第二の不等倍率許容値測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の第二の不等倍率許容値が測定される。変倍対象の方向は、画面水平方向又は画面垂直方向の2方向に限らず、他の方向を含んでもよい。
【0069】
<「左右眼回旋視差許容値」が選択された場合>
融像回旋は、輻輳等の視線方向が平行でないときに発生することがある。遠方視の場合の眼球の回旋は、リスティング法則(Listing’s Law)に基づく。リスティング法則は、眼球が空間上のある方向に向いたときの姿勢を定める法則である。眼球の姿勢とは、眼球の横方向と縦方向の向きを指す。眼球の姿勢が定まらなければ、網膜像の上下左右が定まらない。眼球の姿勢は、視線方向、すなわち眼球の光軸方向だけでは一義的に決まらない。眼球の姿勢は、視線方向が確定しただけでは依然として視線を軸に回転する全ての方向を取りうる。
【0070】
リスティング法則は、無限遠方の任意の視線方向に向けた眼球の姿勢を定める。リスティング法則については、例えば「視覚情報処理ハンドブック」p.405に、「片眼のどんな回転も1つの平面(リスティング平面)内の軸を中心にして起こるとみなしうる」と記載されている。
【0071】
リスティング法則の上記記載について、図12に示す座標系を用いて説明する。図12に示される座標系は、眼球の回旋中心である点Rを原点とした座標系であり、正面(水平前方)から眼に入る方向がX軸方向と定義され、X軸方向と直交する垂直方向がY軸方向と定義され、X軸方向と直交する水平方向がZ軸方向と定義される。Y−Z平面は、リスティング平面である。
【0072】
任意方向への眼球回旋後の姿勢は、点Rを含むリスティング平面内の直線を軸にした回転と同じである。図12においては、この回転軸となる直線の一例をY軸とZ軸との間(Y−Z平面上)に示している。回転軸は、第1眼位(X軸方向)、回転後の視線方向の何れに対しても直交する。ここで、図示しない方向ベクトル(L,M,N)へ眼球回旋する場合を考える。この場合、回旋後の眼球座標系のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれのベクトルは、次式(1)で計算される。
【0073】
【数1】

【0074】
リスティング法則は、片眼が無限遠方の物体に対して眼球の姿勢を定めるものとしては正しい。また、例えば無限遠方の物体を視ていて体を傾けた場合には、左眼と右眼とで眼球の姿勢が同じで、眼球の回旋も同様である。これに対して、無限遠方でない物体を両眼で視る場合には、左眼と右眼とで眼球の姿勢が異なることがある。
【0075】
図13A、13Bは、両眼視の場合の左右の眼の視線方向を説明するための図である。図13A、13Bの各図中、破線は、左眼の眼球51Lと右眼の眼球51Rとの中間位置に配された仮想的な眼球55を示している。無限遠方物体を両眼視する場合、図13Aに示されるように、眼球51Lと眼球51Rとが同じ視方向に向く。左右の眼球が共にリスティング法則に従うため、回旋した後の姿勢も同じである。このとき、左右眼それぞれの網膜像に差異は生じない。
【0076】
一方、有限距離の物体(点A)を視る場合は、図13Bに示されるように、輻輳が必要である。この場合、眼球51Lと眼球51Rの視方向が異なるため、眼球の回旋量が左右で異なる。図13Bでは、点Aが左前方にある。そのため。眼球51Rの回旋量が眼球51Lの回旋量よりも多い。
【0077】
リスティング法則に基づく眼球回旋では、回旋後の眼球姿勢、つまり、回旋後のY軸とZ軸の各方向ベクトルは、式(1)に示される視方向ベクトルに依存する。左眼と右眼の視方向ベクトルが異なる場合、回旋後のY軸とZ軸の各方向ベクトルは、左右の眼で一致しない。そのため、網膜像の回転ずれが起こる。網膜像の回転ずれを解消するためには、左右の眼において視線周りの回旋がそれぞれ必要である。この視線周りの回旋が融像回旋である。
【0078】
融像回旋が発生すると、左右眼に回旋視差が生じる。両眼視機能測定プログラムでは、立体視可能な左右眼の回旋視差の許容値である左右眼回旋視差許容値を測定することができる。両眼視機能測定プログラムは、測定項目「左右眼回旋視差許容値」が選択されると、被測定者2の左右眼回旋視差許容値を測定する左右眼回旋視差許容値測定モードに移行する。図14は、両眼視機能測定プログラムによる左右眼回旋視差許容値測定モードで実行される処理のフローチャートを示す図である。図15は、左右眼回旋視差許容値測定モードの実行中に表示画面106に表示される画像の遷移図である。
【0079】
左右眼回旋視差許容値測定モードに移行して画像表示が行われると(図14のS21、図15(a))、図15(b)に示されるように、左眼用画像200Lが反時計回りに回転する(図14のS42)。左眼用画像200Lの回転は、連続的変化で又は段階的変化で描画される。左眼用画像200Lの回転は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する(図14のS42、S3:NO)。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図14のS3:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rとの回転角度差(以下、説明の便宜上、「第一の回転角度差」と記す。)がHDD134に記憶される(図14のS44)。なお、画像の回転中心は、当該画像の重心とする。左右眼回旋視差許容値測定モードにおいて、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの回転角度差は相対的に変化すればよい。そのため、測定中、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを異なる速度で又は異なる方向に同時に回転させてもよい。
【0080】
図14のS45の処理では、図15(c)に示されるように、左眼用画像200Lが時計回りに回転する。被測定者2により所定の操作キーが押されると(図14のS6:YES)、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rとの回転角度差(以下、説明の便宜上、「第二の回転角度差」と記す。)がHDD134に記憶される(図14のS47)。
【0081】
図14のS48の処理では、第一及び第二の回転角度差と観察距離Dに基づいて当該観察距離Dにおける左右眼回旋視差許容値が計算される。観察距離Dを変更して左右眼回旋視差許容値測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の左右眼回旋視差許容値が測定される。異なる観察距離Dごとの左右眼回旋視差許容値を測定することにより、例えば累進屈折眼鏡レンズを処方する場合に遠用部と近用部で異なる乱視軸を処方して乱視を最適に矯正することができる。
【0082】
<他の測定について>
両眼視機能測定システム10を用いて立体視を測定することもできる。立体視の測定では、例えば形状の異なる二種類の視差画像が表示画面106に表示される。視差画像は、被測定者2が測定に集中できるように○や△等の単純な幾何学形状であることが望ましい。本実施形態では、二種類の視差画像は、○画像と△画像とする。○画像は、△画像よりも視差が大きい。そのため、被測定者2には、○画像が手前に視え、△画像が奥に視える。次いで、○画像と△画像の少なくとも一方の視差が連続的に又は段階的に変えられる。被測定者2は、○画像と△画像の奥行きが感じられなくなった時点や二重像が見えた時点等で入力装置138の所定の操作キーを押す。HDD134には、所定の操作キーが押された時点の画像の視差が記憶される。CPU132は、記憶された画像の視差及び観察距離Dに基づいて被測定者2が立体視できる限界を計算する。
【0083】
<測定項目の複合的な測定について>
上述した各種測定モードでは、一つの測定項目が測定される。別の測定モードでは、複数(例えば相対輻輳、左右眼上下開散許容値、第一の不等倍率許容値、第二の不等倍率許容値、左右眼回旋視差許容値のうち少なくとも二つ)の測定項目を同時に測定する複合的な測定を行ってもよい。特に、密接不可分な複数の測定項目を同時に測定した場合、各測定項目単独の測定結果だけでは把握できない測定結果が得られる可能性がある。オペレータは、同時に測定する測定項目を任意に選択することができる。測定項目の幾つかの組み合わせは、予め用意されていてもよい。以下に、複合的な測定例を3例説明する。
【0084】
<相対輻輳−左右眼上下開散許容値の複合的測定について>
例えば相対輻輳と上下開散は相互作用が強い。そこで、第一の複合的な測定モードでは、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの少なくとも一方を画面斜め方向に連続的に又は段階的に移動させて相対輻輳と左右眼上下開散許容値の同時測定を行う。ここで、画面斜め方向は、画面水平方向又は画面垂直方向以外のあらゆる方向であり、画面水平方向成分と画面垂直方向成分の両成分を含む。すなわち、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rには、相対輻輳測定モード時と左右眼上下開散許容値測定モード時の各変化パターン(画面水平方向、画面垂直方向の移動)を合成した表示の変化(以下、説明の便宜上、「複合的変化」と記す。)が与えられる。画面斜め方向の角度は、オペレータが設定してもよく又は両眼視機能測定プログラムで予め定められていてもよい。
【0085】
図16は、第一の複合的な測定モードにおける画像の表示例である。第一の複合的な測定モードのフローチャートは、相対輻輳測定モード等のフローチャートと同様であるため省略する。図16の例によれば、左眼用画像200Lが図中破線位置から画面斜め方向に移動する。画面斜め方向の移動は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する。被測定者2により所定の操作キーが押されると、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量がHDD134に記憶される。一連の測定において、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rを異なる画面斜め方向に移動させて位置ずれ量データを複数採取してもよい。HDD134に記憶された各位置ずれ量と観察距離Dに基づいて当該観察距離Dにおける相対輻輳と左右眼上下開散許容値の複合的な測定結果が計算される。観察距離Dを変更して第一の複合的な測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の複合的な測定結果が得られる。
【0086】
<相対輻輳−左右眼上下開散許容値−第二の不等倍率許容値(又は第一の不等倍率許容値)の複合的測定について>
例えば相対輻輳、上下開散、左右眼の不等倍率は相互作用が強い。そこで、第二の複合的な測定モードでは、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの少なくとも一方を連続的に又は段階的に画面斜め方向に移動させると共に拡大又は縮小表示する。画像の拡大又は縮小が特定方向に限定されている場合は第二の不等倍率許容値の測定となり、縦横比固定である場合は第一の不等倍率許容値の測定となる。左眼用画像200L又は右眼用画像200Rには、相対輻輳測定モード時、左右眼上下開散許容値測定モード時、第二の不等倍率許容値(又は第一の不等倍率許容値)測定モード時の各変化パターン(画面水平方向、画面垂直方向の移動、表示倍率の変更)を合成した複合的変化が与えられる。各変化パターンをどのような割合で与えるかは、オペレータが設定してもよく又は両眼視機能測定プログラムで予め定められていてもよい。
【0087】
図17は、第二の複合的な測定モードにおける画像の表示例である。第二の複合的な測定モードのフローチャートは、相対輻輳測定モード等のフローチャートと同様であるため省略する。図17の例によれば、左眼用画像200Lが図中破線位置から画面斜め方向に移動すると共に画面垂直方向にのみ拡大する。左眼用画像200Lの移動及び拡大は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する。被測定者2により所定の操作キーが押されると、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量及び画面垂直方向の表示倍率比(以下、説明の便宜上、「画像変更状態」と記す。)がHDD134に記憶される。一連の測定において、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの移動及び拡大を異なるパターンで繰り返し行って画像変更状態データを複数採取してもよい。HDD134に記憶された各画像変更状態と観察距離Dに基づいて当該観察距離Dにおける相対輻輳、左右眼上下開散許容値、第二の不等倍率許容値(又は第一の不等倍率許容値)の複合的な測定結果が計算される。観察距離Dを変更して第二の複合的な測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の複合的な測定結果が得られる。
【0088】
<相対輻輳−左右眼回旋視差許容値の複合的測定について>
融像回旋は、上述したように、輻輳に伴って発生する。そこで、第三の複合的な測定モードでは、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの少なくとも一方を連続的に又は段階的に画面水平方向に移動させると共に時計回り又は反時計回りに回転させる。すなわち、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rには、相対輻輳測定モード時と左右眼回旋視差許容値測定モード時の各変化パターン(画面水平方向の移動、画像重心を中心とした回転)を合成した複合的変化が与えられる。各変化パターンをどのような割合で与えるかは、オペレータが設定してもよく又は両眼視機能測定プログラムで予め定められていてもよい。
【0089】
図18は、第三の複合的な測定モードにおける画像の表示例である。第三の複合的な測定モードのフローチャートは、相対輻輳測定モード等のフローチャートと同様であるため省略する。図18の例によれば、左眼用画像200L、右眼用画像200Rはそれぞれ、画面水平方向に移動して離間しながら反時計回り、時計回りに回転する。左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの移動及び回転は、入力装置138の所定の操作キーが押されるまで継続する。被測定者2により所定の操作キーが押されると、その時点の左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの位置ずれ量及び回転角度差がHDD134に記憶される。一連の測定において、左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの移動及び回転を異なるパターンで繰り返し行って位置ずれ量及び回転角度差データを複数採取してもよい。HDD134に記憶された各位置ずれ量及び回転角度差と観察距離Dに基づいて当該観察距離Dにおける相対輻輳と左右眼回旋視差許容値の複合的な測定結果が計算される。観察距離Dを変更して第三の複合的な測定モードによる測定を行うと、異なる調節力を働かせたとき(例えば近方視や遠方視したとき)の複合的な測定結果が得られる。
【0090】
<側方視を考慮した測定について>
上述した各測定モードでは、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rが表示画面106の中央に表示される。そのため、被測定者2が正面視した状態での測定結果しか得られない。そこで、各測定モードにおいて正面視状態での測定を行った後、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rの表示位置を例えば図19に示されるように表示画面106の周辺(画面左上隅)に移す。被測定者2は頭を固定するように指示されているため、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを自ずと側方視する。この状態で測定を行うと、被測定者2が側方視した状態での測定結果が得られる。更に、左眼用画像200Lと右眼用画像200Rを画面周辺の別の位置(画面上端中央、画面右上隅、画面右端中央、画面右下隅・・・)に順に移して測定を行うと、様々な方向の側方視状態での測定結果が得られる。側方視は、例えば融像回旋を必ず伴うなど正面視と条件が異なる。そのため、正面視の場合と異なる測定結果が得られる。かかる測定結果も考慮して眼鏡レンズの設計を行うと、より一層好適な処方が可能になる。
【0091】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明に係る両眼視機能測定方法を使用して両眼視機能を測定する場合、少なくとも汎用的なPCとビデオモニタを一台ずつ準備して、両眼視機能測定プログラムをPCにインストールするだけで足りる。そのため、導入コストが大幅に抑えられる。また、両眼視機能の測定に利用するビデオモニタは、HMDに搭載されているようなパワーの強いレンズを必要としない構成である。そのため、像の歪みに起因する測定精度の低下が抑えられる。また、画像に与える変化(移動、回転、変倍など)を適宜設定することにより、両眼視機能に関する種々のパラメータを簡単に測定することができる。
【0092】
本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば本実施形態において左眼用画像200L又は右眼用画像200Rの移動速度、回転速度、変倍速度は何れも等速を前提に説明している。別の実施形態では左眼用画像200L又は右眼用画像200Rを加速度をつけて移動、回転、変倍させてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 眼鏡レンズ製造システム
10 両眼視機能測定システム
20 入力装置
30、130 PC
40、140 ディスプレイ
50 加工機
102 ビデオモニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両眼視差を利用して被測定者に立体視させる画像を表示画面に表示する据置型3次元対応ビデオモニタを利用して両眼視機能を測定する両眼視機能測定方法であって、
両眼視機能の測定項目が指定された場合に左右の視差画像を前記表示画面内の所定の測定開始位置に表示する視差画像表示ステップと、
前記左の視差画像と前記右の視差画像を前記指定された指定測定項目に応じて相対的に変化させる視差画像表示変化ステップと、
前記表示画面から所定距離離れた位置で前記左右の視差画像を視る被測定者が該左右の視差画像を融像できなくなるタイミングを検知するタイミング検知ステップと、
前記検知されたタイミングにおける前記左の視差画像と前記右の視差画像との差異及び前記所定距離に基づいて前記指定測定項目の測定値を計算する測定値計算ステップと、
を有することを特徴とする両眼視機能測定方法。
【請求項2】
前記指定測定項目の測定値が計算されるごとに前記測定開始位置を変更する開始位置変更ステップを有し、
前記変更された測定開始位置に前記左右の視差画像を表示して、前記視差画像表示変化ステップ、前記タイミング検知ステップ、前記測定値計算ステップを順に実施して、異なる前記測定開始位置ごとの前記指定測定項目の測定値を求めることを特徴とする、請求項1に記載の両眼視機能測定方法。
【請求項3】
前記指定測定項目が相対輻輳である場合、
前記視差画像表示変化ステップにおいて前記左の視差画像と前記右の視差画像とを前記表示画面の水平方向に離間又は接近させ、
前記測定値計算ステップにおいて前記検知されたタイミングにおける前記左の視差画像と前記右の視差画像の水平方向の位置ずれ量及び前記所定距離に基づいて前記被測定者の相対輻輳を計算することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の両眼視機能測定方法。
【請求項4】
前記指定測定項目が立体視可能な左右眼の上下開散の許容値である左右眼上下開散許容値の場合、
前記視差画像表示変化ステップにおいて前記左の視差画像と前記右の視差画像とを前記表示画面の垂直方向に離間又は接近させ、
前記測定値計算ステップにおいて前記検知されたタイミングにおける前記左の視差画像と前記右の視差画像の垂直方向の位置ずれ量及び前記所定距離に基づいて前記被測定者の左右眼上下開散許容値を計算することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の両眼視機能測定方法。
【請求項5】
前記指定測定項目が立体視可能な左右眼の不等倍率の許容値である第一の不等倍率許容値の場合、
前記視差画像表示変化ステップにおいて前記左の視差画像又は前記右の視差画像の少なくとも一方を縦横比固定で変倍して該左の視差画像と該右の視差画像の表示倍率を相対的に変化させ、
前記測定値計算ステップにおいて前記検知されたタイミングにおける前記表示倍率の比及び前記所定距離に基づいて前記被測定者の第一の不等倍率許容値を計算することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の両眼視機能測定方法。
【請求項6】
前記指定測定項目が立体視可能な左右眼の特定方向に限定した不等倍率の許容値である第二の不等倍率許容値の場合、
前記視差画像表示変化ステップにおいて前記左の視差画像又は前記右の視差画像の少なくとも一方を前記特定方向に限り変倍して該左の視差画像と該右の視差画像の該特定方向の表示倍率を相対的に変化させ、
前記測定値計算ステップにおいて前記検知されたタイミングにおける前記表示倍率の比及び前記所定距離に基づいて前記被測定者の第二の不等倍率許容値を計算することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の両眼視機能測定方法。
【請求項7】
前記指定測定項目が立体視可能な左右眼の回旋視差の許容値である左右眼回旋視差許容値の場合、
前記視差画像表示変化ステップにおいて前記左の視差画像又は前記右の視差画像の少なくとも一方を各重心を中心に回転させて該左の視差画像と該右の視差画像の回転角度を相対的に変え、
前記測定値計算ステップにおいて前記検知されたタイミングにおける前記回転角度の差及び前記所定距離に基づいて前記被測定者の左右眼回旋視差許容値を計算することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の両眼視機能測定方法。
【請求項8】
前記所定距離を変更する距離変更ステップを有し、
前記所定距離を変更するごとに請求項1から請求項7の何れか一項に記載の両眼視機能測定方法を使用して、異なる該所定距離ごとの前記指定測定項目の測定値を求めることを特徴とする両眼視機能測定方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の両眼視機能測定方法をコンピュータに実行させるための両眼視機能測定プログラム。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の両眼視機能測定方法を使用して被測定者の両眼視機能を測定するステップと、
前記両眼視機能の測定結果に基づいて眼鏡レンズの光学設計値を決定するステップと、
を有することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
【請求項11】
請求項10に記載の眼鏡レンズの設計方法を使用して眼鏡レンズを設計するステップと、
前記眼鏡レンズの設計結果に従って眼鏡レンズを製造するステップと、
を有することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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