説明

両親媒性ブロック重合体によって安定化されたオルガノゾル

本発明は、親水性ブロック共重合体によって安定化された、有機分散媒体内に無機物粒子を分散してなる分散体(オルガノゾル)であって、該ブロック共重合体が
・粒子の表面との相互作用を生じさせることができる基RAを含有する親水性ブロックと、
・該親水性ブロックAに結合し且つ該有機分散媒質に対して親和性を有する少なくとも1種の疎水性ブロックBと
を含む分散体に関するものである。
また、本発明は、当該分散体の製造方法及び当該オルガノゾルの様々な用途に関するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散媒体が有機媒体、好ましくは疎水性有機媒体である無機物粒子の安定化分散体に関する。このような分散体は、一般に、オルガノゾル(又は有機ゾル)という用語で呼ばれている。
【背景技術】
【0002】
このようなオルガノゾルが直面する大きな問題は、性質が無機質である粒子と、有機物であり且つ多くの場合疎水性ではない分散媒体とが非相溶性であることである。実際に、非常にまれな例外は別にして、該分散媒体は、通常親水性である無機粒子の表面に対する親和性が非常に低い。
【0003】
この非相溶性の問題は、特に無機酸化物をベースとする粒子であってその表面が一般に陽イオン性又は陰イオン性の種を保持するものの場合と同様に、これらの粒子が表面電荷を有するときに特に顕著であることが分かっている。このような表面電荷が存在すると、これらの粒子は凝集しやすくなり、これにより、特に粒子の寸法が小さいとき、例えばオルガノゾルの粒子が1μm未満、例えば1nm〜500nmの平均寸法を有するときに、該オルガノゾルは一般に不安定化するが、このときに、該粒子の表面は有機媒体によりかなりの変換を生じている。
【0004】
上記の不利益を回避するために、該粒子を有機分散媒体と混和性にするための様々なタイプの粒子表面改質がオルガノゾルのために想定されてきた。
【0005】
この観点で提案された第1の解決法は、有機鎖を粒子の表面にグラフトさせてそれらの表面を改質させ且つ粒子間の凝集を防止することを含む。この目的のために、例えば、特に仏国特許第2721615号において、有機鎖を安定化すべき粒子の表面に共有的にグラフトさせるシラン型の薬剤によって粒子の表面を改質さることが提案されている。この解決法は概して有効であることが分かったが、しかしながら、多くの場合これは実施するのが複雑であり、しかも最も一般的に利用できるシランを考慮すると、これは、概して、分散媒体が非極性であるオルガノゾルの製造に限定されることが分かった。さらに、シランを使用すると、副産物としてアルコール(例えばエタノール又はメタノール)が生成されるが、これは使用目的によっては破壊的である場合が多い。
【0006】
アルコールの生成を防止するために、特にMeriguet外によって「Journal of Colloid and Interface Science」,267,pp.78−85(2003)に記載されているシランの使用に対する別の解決法は、分散体において表面活性型の薬剤を使用することを含む。
【0007】
この状況において、特に仏国特許第2716388号から、ラウリン酸又はイソステアリン酸のような両親媒性カルボン酸を、CeO2粒子を主体としたオルガノゾルの製造に使用することが知られている。オルガノゾルの安定化のために、ジメチル−ジドデシル−臭化アンモニウム型の陽イオン性界面活性剤も提供され、また、つい最近になって、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような陰イオン性界面活性剤も提案された。これは、Ramakrishna外によってTiO2粒子を主体とするオルガノゾルを安定化させるために使用されたものである(Langmuir,第19巻,pp.505−508(2003))。
【0008】
上記界面活性剤を使用することによって得られたゾルは、概して比較的安定である。しかしながら、特にオルガノゾルを貯蔵するときや、長期間にわたって使用するとき、例えばこのものを高温、例えばおよそ70〜80℃で使用するとき、さらにはこのものを大きな温度変動にさらすときに、この安定性は制限される。このような条件下で、程度の差はあるが長期的には該オルガノゾルの不安定化が観察され、該粒子の集合及び凝集が生じる(このような不安定化は、例えば、該オルガノゾルを−20℃〜90℃の温度上昇及び下降サイクルに付すことによって実証できる)。多くの用途について、イソステアリン酸型の界面活性剤で得られる安定性は満足のいくものであることが分かったが、それにもかかわらず、特に長期間の安定性が要求される特定の用途については、安定性をさらに改善させることが望ましい。
【0009】
さらに、界面活性剤によって安定化されたオルガノゾルの安定性は、多くの場合、所定の製剤補助剤であって、ゾルを脆化させやすく、このような補助剤の使用を妨げる可能性があり、そのため該オルガノゾルの適用分野を制限するものの導入によって影響を受ける。
【0010】
さらに、上記界面活性剤を使用しても、通常は、極性分散媒体を主体とするオルガノゾルを安定化させることはできない。
【特許文献1】仏国特許第2721615号明細書
【特許文献2】仏国特許第2716388号明細書
【非特許文献1】Meriguet外,Journal of Colloid and Interface Science,267,pp.78-85(2003)
【非特許文献2】Ramakrishna外,Langmuir,第19巻,pp.505-508(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
界面活性剤を主体とする上記オルガノゾルよりも安定なオルガノゾル、すなわち、長い貯蔵期間にわたって安定で、且つ、特に、該分散体の構造が実質的に影響を受けることなく、およそ70〜80℃の温度での熱処理と温度の大きな変動とに耐えることができるオルガノゾルを提供することが本発明の目的である。本発明は、粒子表面への有機鎖の共有的グラフトを実施する必要なく当該目的を達成しようとするものである。
【0012】
この状況にあって、本発明は、特に、極性分散媒体か非極性分散媒体かのいずれかを含有することができ、且つ、好ましくは、オルガノゾルが直面する現時点で知られている上記問題の全てを回避することを可能にする安定化オルガノゾルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は、有機分散媒体内に無機物粒子を分散してなる安定化分散体(すなわち、無機物粒子のオルガノゾル)であって、該分散体を安定化させるための薬剤として、特定の両親媒性ブロック重合体Pを含むものに関する。より正確に言えば、該両親媒性ブロック重合体Pは、
・粒子の表面との相互作用を生じさせることができる基RAを含有する親水性ブロックAと、
・ 該親水性ブロックAに結合し且つ該有機分散媒体に対して親和性を有する少なくとも1種の疎水性ブロックBと
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者は、鋭意検討の結果、上で定義したブロック重合体Pを使用することによって、オルガノゾル中の粒子の分散を特に効果的に安定化させることができることを実証することができた。
【0015】
本発明の範囲内において、用語「安定化分散体」とは、典型的には200センチポイズ以下の固有粘度を有する好ましくは低粘度の液体の分散媒体に粒子を分散させてなる分散体であって、該粒子が該分散媒体に均一に分布しており、該粒子の均一な分布が、20℃で1月間の貯蔵後、多くの場合、20℃で少なくとも6月間の貯蔵後、さらには12月間の貯蔵後に、実質的に粒子が沈降するという現象もなく実質的に保たれているものを意味するものとする。
【0016】
さらに、本発明の安定化分散体は、高温及び広範囲にわたって変化する温度条件の両方で良好な熱安定性を示す。
【0017】
従って、およそ70℃の温度で1月間又はさらに3月間の恒温熱処理後に、本発明に従うオルガノゾルの粒子は、実質的に粒子が沈降するという現象なしに、均一に分布したままであることが一般に指摘される。多くの場合、本発明に従うオルガノゾルを1月間80℃又はさらに90℃の温度で恒温熱処理しても、粒子が実質的に沈降するという現象を生じさせる不安定化には至らない。
【0018】
同様に、本発明に従うオルガノゾルを−20℃〜+90℃で少なくとも100時間、たいていは少なくとも200時間以上の温度サイクルに付した場合であっても、その安定性は、実質的に粒子が沈降するという現象なしに保たれる。
【0019】
本明細書において使用するときに、表現「実質的に粒子が沈降するという現象なしに」とは、視覚的に検出できる粒子の沈降が存在しないことを意味する。本発明のオルガノゾルで得られる貯蔵安定性と沈降現象の抑制は、初期のオルガノゾル中に分散状態で存在する粒子の量と、貯蔵後のオルガノゾル中に分散状態で存在する粒子の量とを比較することによってさらに正確に定量できる。
【0020】
たいていの場合、上記条件下でオルガノゾルを貯蔵した後に、初期の分散状態の粒子の少なくとも80%、たいていは少なくとも90%又はさらに少なくとも95%が、沈殿物を形成することなく、分散状態で保持されることが指摘される。
【0021】
本発明の安定化分散体中に存在する無機物粒子の性質は、相当に変更できる。しかしながら、該粒子は、酸化無機物を主体とした粒子であることが好都合である。従って、これらのものは、特に、シリカSiO2を主体とした粒子又は金属酸化物、例えば、酸化セリウムCeO2、酸化チタンTiO2、酸化ジルコニウムZrO2、アルミナAl23、Fe23のような鉄の酸化物若しくはこれらの酸化物の2種以上の混合物を主体とした粒子であることができる。
【0022】
ここで、表現「酸化無機物を主体とした粒子」とは、好ましくは上記酸化物又はそれらの混合物から選択される酸化無機物によって全体的に又は部分的に形成された粒子を意味する。一般に、本発明に従う分散体では、存在する粒子は、主として酸化無機物又は酸化無機物の混合物によって構成される。すなわち、これらは、1種以上の酸化無機物を、好ましくは少なくとも50質量%、さらに有利には少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%含む。特定の実施形態によれば、存在する粒子は、実質的に酸化無機物から構成される(すなわち、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも99質量%の範囲まで)。別の見込まれる実施形態によれば、該粒子は、第1酸化物を主体とするコアであって異なる酸化物を主体とする層で被覆されたものを有することができる。従って、これらのものは、例えば、シリカの層で被覆されたCeO2を主体とする粒子であることができる。
【0023】
特定の実施形態によれば、本発明のオルガノゾル粒子中に存在する酸化物には、1種以上の金属元素がドープできる。このようなドープ酸化物は、例えば、アルミニウム陽イオンがドープされたシリカ、或いは異なる金属の陽イオンがドープされた第1金属の酸化物であることができる。
【0024】
本発明に従う分散体内の粒子の含有量は、該分散体のために意図される用途に応じて、かなり広く変更できる。しかしながら、最も一般的な場合には、これは、該分散体の全質量に基づいて、たいてい0.1質量%〜15質量%である。この範囲は、良好な流動性を有し且つ取り扱いが容易な比較的低粘度のオルガノゾルを得ることを可能にする。この状況において、できるだけ低い粘度を得るために、この含有量は、該分散体の総質量に基づき、13質量%以下、より好ましくは10質量%以下、例えば8質量%以下であることが好ましい。しかしながら、一般には、該オルガノゾルを希釈させすぎないことが好ましく、また、多くの場合、粒子の含有量は、該分散体の総質量に基づき、少なくとも0.2質量%、例えば少なくとも0.4質量%を保持することが好ましいことが分かった。従って、本発明に従う分散体は、該分散体の総質量に基づき、およそ0.2質量%〜10質量%の粒子、例えば0.5〜5質量%の粒子から構成できる。
【0025】
別の見込まれる実施形態によれば、本発明に従うオルガノゾルは、15%を超える粒子含有量を有することができる。この場合には、該オルガノゾルは概して高い粘度を有するが、それにもかかわらずその良好な貯蔵安定特性を保持する。
【0026】
それらの正確な化学的性質に関わらず、本発明の安定化分散体中に含まれる無機物粒子は、概して、有機分散媒体中に分散された実質的に別個のl粒子及び/又は粒子の集合体の状態でオルガノゾル内に存在する。こうして分散されたこれらの物体のそれぞれは重合体Pによって取り囲まれているが、これは、概して、(i)1個以上の無機物粒子を主体とする無機物コア及び(ii)重合体Pを主体とする有機層を含むオルガノゾル無機/有機混合種中で生じる。これらの種の無機物コアは、一般に、それを取り囲む有機層を含まずに、1μm未満、典型的には200nm未満、たいていは100nm未満の平均寸法を有する。本発明のオルガノゾル中に分散された種のうち無機物コアの平均寸法は、特に、該オルガノゾルの試料(例えば、超低温切片技術によって製造された)の透過電子顕微鏡像を分析することによって決定できる。
【0027】
本発明の範囲内で安定化剤として使用される特定の両親媒性ブロック重合体Pによって、存在する粒子の寸法が非常に小さい場合、例えば、数ナノメートル又は数十ナノメートルである場合であっても、分散物が多くの場合別個の粒子の形態及び/又は一般に該別個の粒子とほぼ同程度の大きさを有する複数の粒子の集合体の形態にある安定な分散体を得ることが可能になる。重合体Pによって該寸法範囲の粒子を有するオルガノゾルに付与される安定特性は、例えばイソステアリン酸のような従来の界面活性剤型安定剤によって該ゾルを安定化させようとするときに得られる結果と比較して、驚くほど高いことが分かった。本発明者によって実証された重合体Pの安定化特性により、本発明の範囲内で、非常に小さい寸法の分散物を有するオルガノゾルを提供することが可能になる。従って、本発明に従うオルガノゾル中に分散される無機物(別個の粒子又は無機物集合体)は、通常、70nm以下又はさらに60nm以下の平均寸法を有することができる。従って、オルガノゾル中に分散される無機物の平均寸法は、通常、1〜70nm、典型的には2〜60nm、例えば3〜50nmである。ここで、基準となる無機物の平均寸法は、無機物を取り囲む有機種の層(重合体P及び随意に溶媒和層)を考慮せずに、無機物自体の平均寸法である。
【0028】
本発明の安定化分散体は、特に、有機媒体内で安定化した無機物の分散体である。特に、本発明の両親媒性重合体Pを使用すると、使用できる有機分散媒体に関して選択の自由が高まる。この状況において、有機媒体の大部分が実際に好適であると分かったが、ただし、使用される媒体に適した疎水性ブロックBを含む重合体Pを選択することを前提とする。
【0029】
本発明に従う重合体Pを使用すると、非極性有機分散媒体と極性有機分散媒体の両方を使用することが可能になることを特に強調したい。ここで、「極性媒体」とは、5を超える誘電率εrを有する媒体をいうものとし、ここで、当該誘電率εrは、特に文献「Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry」,C.Reichardt,VCH,1988に定義されるものである。この説明の範囲内で言及できる極性媒体の例としては、例えば、酢酸エチル、パルミチン酸イソプロピル又は酢酸メトキシプロピルのようなほとんどのエステル;ジクロルメタンのようなハロゲン化化合物;エタノール、ブタノール又はイソプロパノールのようなアルコール;プロパンジオール、ブタンジオール又はジエチレングリコールのようなポリオール;又はシクロヘキサノン又は1−メチルピロリジン−2−オンのようなケトンが挙げられる。
【0030】
より一般的には、本発明のオルガノゾルの有機分散媒体はかなり変更できる。情報として、該有機分散媒体は、例えば、
・脂肪族又は脂環式炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン及びシクロヘプタン;
・芳香族溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン;
・芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の混合物、例えば、ミネラルスピリット又はナフサ、液体ナフテン又はISOPAR若しくはSOLVESSO型(EXXONによって出願された商標)の石油留分、例えばSOLVESSO100(メチルエチルベンゼン及びトリメチルベンゼンを主体とする混合物)及びSOLVESSO150(特にジメチルエチルベンゼン及びテトラメチルベンゼンを含有するアルキルベンゼンの混合物);
・例えばクロルベンゼン若しくはジクロルベンゼン又はクロルトルエンのような塩素化炭化水素;
・脂肪族及び脂環式エーテル、例えば、ジイソプロピルエーテル又はジブチルエーテル;
・脂肪族及び脂環式ケトン、例えば、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酸化メシチル又はアセトン;
・アルデヒド;
・窒素含有溶媒、例えば、アセトニトリル;
・好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルコール、例えば、エタノール、プロパノール又はブタノール;
・フェノール;
・エステル、特に:
・好ましくは10〜40個の炭素原子を有するカルボン酸(例えば、トール油、ココナッツ油、大豆油、獣脂、亜麻仁油の脂肪酸、オレイン酸、リノレン酸、ステアリン酸及びその異性体、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、パルミチン酸又はヘキサン酸)と、例えば1〜8個の炭素原子を有するアルコール(当該アルコールは、通常、第一アルコール又は第二アルコール(例えばイソプロパノール)である)又はグリセリンのようなグリコールとの反応によって得られるエステル;及びこのようなエステルの混合物;
・好ましくは1〜8個の炭素原子を有利に有するアルコールと、好ましくはおよそ10〜40個の炭素原子を有する脂肪族スルホン酸、脂肪族ホスホン酸、アルキルアリールスルホン酸又はアルキルアリールホスホン酸、例えば、トルエンスルホン酸、トルエンホスホン酸、ラウリルスルホン酸、ラウリルホスホン酸、パルミチルスルホン酸及びパルミチルホスホン酸との反応によって得られるスルホン酸又はホスホン酸のエステル;
・重合性単量体、例えば、スチレン及びその誘導体、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル又はビニルエステル;並びにこのような単量体の混合物;
・シリコーンオイル;
・精油;
・有機油、例えば植物油;並びに
・上記化合物の混合物
から選択される1種以上の有機化合物を含むことができる。
【0031】
使用される粒子及び使用される分散媒体の性質に関わらず、本発明に従う懸濁液は、特徴として、安定化剤として作用する上で定義した両親媒性ブロック重合体Pを含む。該重合体Pは、懸濁液のために必要な安定性を与えるためにそれだけで十分であるため、これらのものは、例えば界面活性剤のような他の薬剤を除き、該分散体における唯一の安定剤として使用できる。しかし、本発明の可能な実施形態によれば、該重合体Pは、他の既知の安定化剤、例えばイソステアリン酸のような界面活性剤又は例えば、ジメチル・ジドデシル・臭化アンモニウム若しくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムといった陰イオン性若しくは陽イオン性界面活性剤と併用できる。場合によっては、このタイプの併用は、特に効果的な安定化を可能にすることができる。
【0032】
同様に、本発明によれば、共有結合基を粒子の表面にグラフトさせることによって粒子を改質させる必要はない。
【0033】
一般に、本発明に従う分散体に使用すべき重合体Pの選択は、特に、
・ブロックA中に存在することができる基RAを特に決める、使用される粒子の性質;及び
・重合体P中に存在する少なくとも1種の疎水性ブロックBが所定の親和性を示さなければならないことに関連して、分散媒体の性質
に依存する。
【0034】
従って、重合体Pは、特に、オルガノゾル粒子の表面との相互作用を生じさせることができる基RAであって、その少なくともいくつかが実際に粒子の表面との相互作用を生じさせるものを有する。
【0035】
本発明において、基RAは、粒子の表面とイオン性の錯化型又は静電結合型の相互作用を生じさせる又はこれを少なくとも生じさせることができる基であることが好都合である(ただし、一般的に要求されるわけではない)。この目的のために、帯電した種(陽イオン性又は陰イオン性の種)を表面に有する粒子と、基RAとして、粒子の表面に存在する種とは反対の符号の電荷を有する基(それぞれ、陰イオン性基又は陽イオン性基)を含む重合体Pとを使用することが好ましい。
【0036】
本発明の第1の変形例によれば、使用される無機物粒子は負に荷電した表面を有し、しかも重合体PのブロックAの基RAの全て又はいくらかは陽イオン性の性質の基である。これら陽イオン性基RAは、特に塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、弗化物イオン、硫酸イオン、硫酸メチルイオン、燐酸イオン、燐酸水素イオン、ホスホン酸イオン、炭酸イオン及び炭酸水素イオンから選択できる負に荷電した対イオンと会合する。該対イオンは、好ましくは燐酸水素イオン、硫酸メチルイオン及び/又は塩化物イオンである。
【0037】
本発明の特定の変形例によれば、 負に荷電した表面を有する粒子は、通常、シリカを主体とする粒子であり、しかも、重合体Pの親水性ブロックAの基RAは、たいてい、アンモニウム基又は第四アミンを含む。ここで、ブロックAは、通常、四級化されていてもされていなくてもよいポリアミン、ポリエチレンイミン若しくはポリアリルアミン型又はポリ(アクリル酸ジメチルアミノエチル)型のブロックであることができる。或いは、ブロックAは、その重合後に陽イオン性基によってグラフトされる重合体ブロックであることができる。例えば、ブロックAは、重合後に第三アミン(例えばトリメチルアミン)と反応するハロゲン化ブロック(例えば、ポリ−p−クロルメチルスチレンブロック)であることができる。
【0038】
使用される無機物粒子が負に荷電した表面を有する場合に興味のある実施形態によれば、重合体Pの親水性ブロックAは、単量体Mをベースとする単独重合体又は共重合体であってその少なくともいくつかがエチレン系不飽和と少なくとも1個の第四窒素原子又はプロトン化によって(すなわちpH調整)によって四級化できる窒素原子とを有するものである。ここで、親水性ブロックAは、例えば、次の単量体のうち1種以上をベースとすることができる:
・式(M1)の単量体:
【化1】

(式中、
n-は、陰イオンCl-、Br-、I-、SO42-、CO32- 、CH3−OSO3- 又はCH3−CH2−OSO3-を表し、
基R1〜R5は、同一でも異なっていてもよく、他のものとはそれぞれ無関係に、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、ベンジル基又は水素原子を表し;
nは1又は2の値を有する。)、
・式(M2)の単量体:
【化2】

(式中、
Xは−NH−基又は酸素原子−O−を表し;
4は、水素原子又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
5は1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基を表し;
基R1、R2及びR3は、同一でも異なっていてもよく、他のものとはそれぞれ無関係に、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
n-は、イオンCl-、Br-、I-、SO42-、CO32-、CH3−OSO3-又はCH3−CH2−OSO3-を表し;
nは1又は2の値を有する。)、
・式(M3)の単量体:
【化3】

(式中、
基R1〜R6の一つは−CH=CH2基を表し、他の基R1〜R6は、同一でも異なっていてもよく、他のものとはそれぞれ無関係に、水素原子又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
n-は、イオンCl-、Br-、I-、SO42-、CO32-、CH3−OSO3-又はCH3−CH2−OSO3-を表し;
nは1又は2の値を有する。)又は
・式(M4)の単量体:
【化4】

(式中、
n-は、イオンCl-、Br-、I-、SO42-、CO32-、CH3−OSO3-又はCH3−CH2−OSO3-を表し;
nは1又は2の値を有する。)。
【0039】
好ましくは、使用される無機物粒子が負に荷電した表面を有するときに、親水性ブロックAは、単量体Mとして、
・アクリル酸2−ジメチルアミノエチル(「ADAM」);
・メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル(「MADAM」);又は
・塩化ジアリルジメチルアンモニウム(「DADMAC」)
から選択される単量体を有する。
【0040】
本発明の別の変形例によれば、オルガノゾル中に存在する無機物粒子は正に荷電した表面を有し、しかも重合体PのブロックAの基RAの全て又はいくつかは、陰イオン性の性質の基である。この特定の実施形態の範囲内において、粒子は、特に、酸化セリウムCeO2、酸化チタンTiO2又は酸化ジルコニウムZrO2を主体とする粒子であることができ、しかも、重合体PのブロックAは、好都合には、カルボキシレート基(−COO-)、スルフェート基(−SO4-)、スルホネート基(−SO3-)、ホスホネート基(例えば−PO32-の形態の)又はホスフェート基(例えば−OPO32-の形態の)を有する。特に好都合には、この実施形態によれば、該無機物粒子は、酸化セリウムCeO2を主体とする粒子である。この場合には特に、ブロックAは、遊離の−COOH基であって、好ましくはその少なくともいくつかがカルボキシレートの状態(−COO-)にイオン化されたものを含むことが有利である。この場合、ブロックAは、有利には、ポリアクリレート又はポリ(アクリル酸)ブロック或いはポリ(スチレンスルホネート)ブロック、ポリ(ビニルホスホン酸)ブロック又はポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)ブロックである。
【0041】
最も一般的な場合には、無機粒子の性質及びそれらの表面電荷に関わらず、重合体Pの親水性ブロックAは、基RAの他に、親水性単量体をブロックAに取り入れることによって得られる親水性単位を含むことが有益であることが分かった。ここで、「親水性単量体」とは、水への溶解度が1barの圧力下に20℃で52g/Lよりも大きい単量体であるものとする。言及できるこのような親水性単量体の例としては、特に、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、或いはエチレンポリオキシド及び/又はプロピレンポリオキシドのアクリレート又はメタクリレートのようなマクロ単量体、或いはポリビニルアルコールが挙げられる。
【0042】
さらに、ブロックAと基RAの性質とは無関係に、重合体P中のブロックBは、有機分散媒体に対して親和性を有するブロックである。この記載の範囲内において、「分散媒体に対して親和性を有するブロックB」とは、分離された状態にある(すなわち、重合体Bが重合体PのブロックAから分離された状態にある)ときに、分散媒体に可溶のブロックであるものとする。
【0043】
特定の分散媒体に適したブロックBを選択するにあたっては、溶解度パラメーターが分散媒体のそれと適合するブロックを選択することが可能である。ここで、「溶解度パラメーター」とは、特に、Allan FM BARTONによる文献「Handbook of solubility parameters and other cohesion parameters」,CRC Press,Boca Raton(フロリダ),ISBN0−8493−3295−8に定義されるパラメーターであるものとする。また、溶解度パラメーターの算出及び所定の溶媒中における重合体のような溶質の相溶性を決定するためのそれらの使用法についても当該文献を参照することができる。
【0044】
以下の表1は、情報として、異なる極性の溶媒に対してブロックBとして使用できる重合体ブロックの例を示している。この表で与える例は、情報としてのみ与えており、勿論本発明をこれらの特定のペア(ブロックB/分散媒体)の例に限定するものではない。
【0045】
【表1】

【0046】
本発明のオルガノゾル中の安定化剤として使用される重合体Pは、それらのブロックA及びBの正確な化学的性質とは無関係に、異なる構造を有することができる。
【0047】
従って、第1の変形例によれば、分散体を安定化させるための薬剤として使用される重合体Pは、親水性ブロックAと疎水性ブロックBとの会合によって構成されるジブロック重合体、すなわち概略式A−Bの重合体を含む(又は実質的に含む)。
【0048】
別の変形例によれば、分散体を安定化させるための薬剤として使用される重合体Pは、親水性ブロックAに共有結合した複数の疎水性ブロック(B1、B2…BN(ここでNは2〜100の範囲にあることができる)を有する共重合体を含む(又は実質的に含む)。この変形例に従う、複数の疎水性ブロックを主体とする共重合体は、好都合には、
・式B1−A−B2(式中、B1及びB2基のそれぞれは、上記のB型の疎水性ブロックを表す。)のトリブロック型のブロック共重合体;及び/又は
・上記のB型の複数の疎水性ブロックが側鎖として親水性ブロックAに結合した櫛形重合体
を含む(また、このましくはこれらの重合体である。)。典型的には、このような櫛形重合体は、次の概略式:
【化5】

を有する。
【0049】
重合体Pの正確な構造に関わらず、たいてい、重合体Pは、統計上、ブロックA内に1を超える平均RA基数を有することが好都合であり、ブロックA内のRA基の平均数は、好ましくは少なくとも2に等しく、例えば2〜4であり、その平均数は、一般に、7未満、有利には5以下である。本発明者の研究によって、ブロックA中のRA基の数が多ければ多いほど、安定化効果が増大することが実際に示された。どのような仮説にも拘泥されることを望まないが、ブロックA中のRA基の数が増加すると、粒子と重合体Pとが結合する確率が高くなり、これによってこれら2つの種間の結合が増加すると思われるが、これは、オレイン酸又はイソステアリン酸型の従来の界面活性剤では観察されない。
【0050】
さらに、特に、ゾルの粘度を限定し、且つ、オルガノゾル中の重合体Pの質量含有量が高くなりすぎるのを避けるためには、使用する重合体Pが概して10000g/mol未満の分子量を有することが好ましく、該分子量は、好ましくは5000g/mol未満、有利には3000g/mol未満である。しかし、使用される重合体は、通常、オルガノゾルの安定化のために慣用されている界面活性剤の分子量よりも大きい分子量を有する。従って、本発明に従って使用される重合体Pの分子量は、好ましくは1000g/mol以上であり、有利には1000〜3000g/mol、例えば1500〜2500g/molである。
【0051】
さらに、該重合体Pにおいて、質量比(親水性ブロックA/ブロックB)は、好都合には0.02〜0.5である。この比は、一般に、重合体の「親水性・親油性バランス」として知られている比(「HLB」比)に相当する。採用される質量比(親水性ブロックA/ブロックB)は、基本的に分散体中の粒子濃度及び分散性に依存するため、その最適値を一方の場合から他方の場合に適合させるべきである。しかし、たいていの場合、良好な安定化特性は、重合体Pの質量比(親水性ブロックA/ブロックB)が0.02〜0.5の場合、特に当該比が0.05〜0.2の場合に得られる。
【0052】
さらに、本発明に従って使用される重合体Pにおいて、ブロックAの分子量は、好ましくは50〜5000g/mol、さらに有利には100〜1000g/molである。重合体P中に存在する疎水性基Bのそれぞれの分子量は、一般に、ブロックAの分子量よりも大きく、該分子量は、好都合には、500〜8000g/mol、例えば1000〜4000g/molである。
【0053】
最も一般的な場合には、存在する重合体P及び粒子の性質と構造に関わらず、本発明に従う分散体中の質量比(粒子/重合体)は、好ましくは0.1以上、好ましくは0.2以上である。典型的には、分散体中の質量比(粒子/重合体)は、0.2〜0.6、例えば0.2〜0.5である。
【0054】
さらに、モル比(親水性ブロックAのRA基/粒子の無機成分)が0.2以上、好ましくは0.3以上であることが一般に好ましく、該比は、好都合には0.3〜1、典型的には0.4〜0.8、有利には0.4〜0.6である。
【0055】
さらに、多くの場合、本発明に従う分散体中の質量比(重合体/溶媒)は、0.005以上、好ましくは少なくとも0.02であることが好都合であり、これによって著しい安定化効果を得ることが可能になる。しかしながら、特に懸濁液の粘度の増加が大きくなりすぎないようにするためには、該比を0.7未満、好ましくは0.5未満に維持することが好ましい。
【0056】
本発明の範囲内で特に好適な重合体Pとしては、例えば、国際公開WO98/58974号、WO00/75207号及びWO01/4231号に記載された制御(リビング)フリーラジカル重合方法に従って得られるようなブロック重合体を特に使用することができる。
【0057】
リビングフリーラジカル重合方法を実施することによって、構造と寸法が明確で、その官能性及びブロックのそれぞれの特性が非常に細かく制御及び調節できる重合体Pを得ることが可能である。他の利点として、該方法によって、反応性官能基(例えばOH基)を有する重合体Pを得ることが可能になるが、これは、該重合体を安定化剤として作用させることに限らず他の効果をも与えることができる本発明の安定化オルガノゾルを得ることを可能にする。さらに、このような状況において国際公開WO98/58974号、WO00/75207号及びWO01/4231号の方法を実施することによって、イオン性単量体と陰イオン性基又は陽イオン性基を有する単量体とを、当該イオン性基を保護する必要なく、穏やかな条件下で重合させることが可能になる。
【0058】
特に有用なブロック重合体Pは、次の連続工程:
(e1)鎖の末端で官能化された第1重合体ブロックを、
・少なくとも1種のエチレン系不飽和単量体と、
・少なくとも1種のフリーラジカル源と、
・少なくとも1種のキサンテート、ジチオエステル、チオエーテルチオン、ジチオカルバゼート又はジチオカルバメート、好ましくはキサンテート、好都合には国際公開WO01/4231号に記載されたタイプの化合物と
を接触させることによって形成させ;次いで
(e2)工程(e1)で得られた、鎖の末端で官能化された第1重合体ブロック上に、該得られた重合体と新たなエチレン系不飽和単量体及びフリーラジカル源とを反応させることによって第2ブロックを形成させること
を含む制御フリーラジカル重合の方法に従って得ることができるものである。
【0059】
該製造方法は、ジブロック型のブロック重合体Pの合成のために有利に使用できる。
【0060】
この場合、第1の実施形態によれば、工程(e1)においてジブロック重合体の親水性ブロック(例えばポリ(アクリル酸)ブロック)を形成させ、そして、工程(e2)において、得られた親水性ブロック上に、このときに疎水性である第2ブロックを成長させる。
【0061】
逆に、本発明の別の具体例によれば、ジブロック重合体の疎水性ブロック(例えばポリ(アクリル酸)ブロック)は工程(e1)で形成できる。この場合には、工程(e2)は、得られた疎水性ブロックA上で親水性の第2ブロックを成長させるような態様で実施される。
【0062】
所定の組成のジブロック重合体については、この2つの製造方法は同等でなく、実際には、特に親水性ブロックが非常に小さい寸法であるときに、異なるオルガノゾル安定化特性を示すことが多い重合体を生じさせることが強調される。多くの場合、第1工程(e1)において親水性ブロックの合成を実施し、その後、工程(e2)において疎水性ブロックを実施することが好ましいことが分かった。
【0063】
別の特定の実施形態によれば、工程(e2)は、トリブロック型の重合体(P)を合成するために、順を追って連続的に2回実施できる。この場合には、第1疎水性ブロックは、概して工程(e1)で合成され、そして該ブロック上で親水性ブロックが成長し、続いて、こうして得られた親水性ブロックの末端で新たな疎水性ブロックが成長する。
【0064】
本発明の範囲内において、通常、工程(e1)及び(e2)を、キサンテート型の化合物、好ましくはO−エチル又はO−トリフルオルエチル基を有するキサンテートを使用して実施することが好ましい。さらに、工程(e1)及び(e2)を溶液中で実施することが好都合である。
【0065】
本発明の分散体の粒子が負の表面電荷を有する場合(例えば、シリカを主体とした粒子)には、重合体Pとして、上記方法で得られ且つそれらの親水性ブロック上に陽イオン性基(第四アンモニウム)を有する重合体、例えば、ポリ(アクリル酸ブチル)−ポリ(四級化アクリル酸2−ジメチルアミノエチル);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(四級化アクリル酸2−ジメチルアミノエチル);又はポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(四級化p−クロルメチルスチレン)型のブロック共重合体を使用することが可能である。
【0066】
逆に言えば、本発明の分散体の粒子が正の表面電荷を有する場合(例えば、CeO2又はTiO2を主体とした粒子)には、重合体Pとして、特に、前記方法で得られ且つそれらの親水性ブロック上に陰イオン性基(例えばカルボキシレート、スルフェート又はスルホネート)を有する重合体、例えば、ポリ(アクリル酸ブチル)−ポリ(アクリル酸);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(アクリル酸);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(スチレンスルホネート);ポリ(アクリル酸ブチル)−ポリ(スチレンスルホネート);ポリ(アクリル酸イソオクチル)−ポリ(アクリル酸);又はポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(ビニルホスホン酸)型のブロック重合体を使用することが可能である。
【0067】
本発明の分散体の粒子が正の表面電荷を有する場合、具体的に言うと、これらものが酸化セリウムを主体とする粒子である場合には、重合体Pとして、ポリ(アクリル酸)−ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)重合体(PAA−P2EHAという)、有利には、1500〜4000g/molのモル質量を有し、質量比(PAA/P2EHA)が好ましくは0.02〜0.5(好都合には0.05〜0.2)である、このタイプの重合体を使用することが有益であることが分かった。
【0068】
本発明者は、この特定のPAA−P2EHA共重合体が、オルガノゾルの分野で使用される有機分散媒体の大部分において正の表面電荷を有する粒子(例えばCeO2粒子)の分散体を安定化させるのに好適であることを実際に実証した。換言すれば、上記PAA−P2EHA重合体は、分散媒体として使用できる有機溶媒の大部分において酸化セリウムを主体とする粒子型の粒子の分散体用のいわば「普遍的な安定剤」を構成する。
【0069】
好都合には、本願発明において使用されるPAA−P2EHA重合体は、およそ125〜150g/molの分子量を有するポリアクリル酸(PAA)親水性ブロックと、およそ1000〜9000g/mol(例えばおよそ2250g/mol)の分子量を有するポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)(P2EHA)疎水性ブロックとを含む。
【0070】
特定の態様によれば、上記PAA−P2EHA重合体は、本発明の特定の目的を構成する。
【0071】
別の態様によれば、本発明は、上記オルガノゾルの製造方法に関するものでもある。
【0072】
この場合、本発明は、まず、本発明の第1の特定の態様に従い、有機分散媒体が特に疎水性である上記タイプの分散体を製造するのを可能にする方法を提供する。該方法は、粒子の水性懸濁液と該有機媒体とを上で定義した両親媒性ブロック重合体Pの存在下で接触させ、その結果として、該粒子を、その水性相から、該重合体によって安定化された有機懸濁液状の疎水性溶媒に移動させることを含む工程(A)を含む。
【0073】
一般に、工程(A)後に、望ましい分散体(オルガノゾル)を構成する有機相を回収する。
【0074】
最も一般的な場合には、工程(A)は、実際には、界面活性剤、例えば、仏国特許第2721615号又はMeriguet外による論文「Journal of Colloid and Interface Science,267,pp.78−85(2003)」に記載されたようなオレイン酸又はイソステアリン酸型の界面活性剤によって安定化されたオルガノゾルを製造するために慣用されている相間移動方法と同様である。原則として、界面活性剤の使用のために定められる条件は、本発明に従って採用される重合体の使用に直接置き換えることができる。
【0075】
さらに具体的に言うと、本発明の範囲内において、工程(A)で使用される初期水性懸濁液は、1〜100g/Lの無機物粒子濃度を有することが好都合である。相間移動に関して、工程(A)は、たいてい、濃度が低ければ低いほど有効であることが分かった。従って、工程(A)の初期水性懸濁液において、75g/L以下、例えば50g/L以下、より好ましくは40g/L以下、さらに有利には20g/L未満の無機物粒子濃度を使用することが一般的に好ましい。しかしながら、特に経済的な観点及び廃水処理の観点から、該濃度は、たいてい、少なくとも2g/L、好ましくは少なくとも3g/L、より好ましくは少なくとも5g/Lであることが望ましい。従って、該濃度は、典型的には2〜75g/L、有利には3〜50g/L、典型的にはおよそ5〜30g/L、例えばおよそ20g/Lである。
【0076】
工程(A)で最初に使用される水性懸濁液は、工程(A)の後に、少なくとも大部分が有機相中で分散状態で見いだされる分散状態の粒子を含有する。本発明において使用される水性分散体は、好都合には、水性分散体内で低い流体力学直径、例えば1〜200nmの平均流体力学直径を有する粒子を含み、該流体力学直径は、好ましくは、70nm未満、さらに有利には50nm以下である。ここで使用するときに、粒子の「平均流体力学直径」とは、特に「Analytical Chemistry,第53巻,第8号,1007A,(1981)」に記載されるような準弾性光散乱法に従って決定されるものである。通常、工程(A)の初期水性分散体中における粒子の平均流体力学直径は、1〜70nm、例えば2〜60nm、特に3〜50nmである。
【0077】
本発明の方法は、非常に小さな寸法を有する粒子、例えば50nm以下又はさらに20nm以下又はさらに10nm以下、例えばおよそ数ナノメートルの平均流体力学直径を有する粒子の水性分散体からのオルガノゾルを与えることを可能にする。この場合、該方法の特殊性及び重合体Pの使用を考慮すると、本発明の方法は、たいてい、分散した無機物の寸法(無機物を取り囲む有機相を考慮せずに、電子顕微鏡で測定できるオルガノゾルの寸法)が、初期水性懸濁液中に分散した粒子の流体力学直径と同等の大きさであるオルガノゾルを生じさせる。従って、小さい寸法の粒子の水性ゾルから出発して、本発明の方法に従い、同様に小さい寸法の分散無機物を主体とするオルガノゾルが得られる。逆に言うと、所望ならば、粒子の平均流体力学直径がそれよりも大きい水性懸濁液を工程(A)で使用することによって、最終オルガノゾル中に大きな寸法の分散物を得ることが可能である。
【0078】
さらに、工程(A)において、粒子が5〜500m2/g、好ましくは少なくとも50m2/g、より好ましくは少なくとも100m2/g、例えば少なくとも200m2/g、特に少なくとも250m2/gのBET比表面積を有する水性懸濁液を使用することが好ましく、これにより、水性媒体から有機媒体への移動が効果的に得られる。ここで、「BET比表面積」とは、「The Journal of the American Society」,60,309(1938)に記載されたブルナウアー・エメット・テラー法に従って確立された基準法ASTMD3663−78に従い、窒素吸着によって決定される比表面積を意味するものとする。分散体の形態にあるときの本発明に従う粒子の比表面積を測定するために、その測定プロトコールは、分散体から液相を除去し、次いで該粒子を真空内で少なくとも4時間にわたり150℃の温度で乾燥させることを含む。
【0079】
本発明の方法は、水性媒体から有機媒体への粒子の移動を基礎とする。これに関して、無機物の良好な分散状態を維持しつつ最終オルガノゾルを安定化させるというそれらの特性の他に、本発明に従って使用されるようなブロック共重合体Pは、粒子の移動を非常に有効に且つ高収量で実施することも可能にすることに留意すべきである。従って、本発明の方法の範囲内で、水性媒体から有機媒体への粒子の移動で得られる収率は、少なくとも80%、たいていは少なくとも90%、さらに少なくとも95%である。
【0080】
この移動の有効性を最適にし且つ高い収率を得るために、特に、該方法の次の様々なパラメーターに影響を与えることも可能である:
重合体PのブロックA内の基RAの平均数
これに関して、本発明者の研究により、相間移動の収率が高ければ、ブロックA内のRA基の平均数も大きいことが示された。良好な収率を得るためには、該平均数は、好ましくは少なくとも2、有利には少なくとも3である。
重合体Pの分子量
移動の収率は、一般に、特に該重合体の寸法が増大するときに該重合体で観察される拡散の問題のため、質量が増加すると減少する傾向にある。価値のある移動収率を得るためには、多くの場合、10,000g/mol未満、好ましくは5000g/mol未満、好都合には3000g/mol以下、例えば1000〜3000g/mol、通常は1500〜2500g/molの分子量を有する重合体を使用することが好適である。
重合体Pにおける質量比(親水性ブロックA/ブロックB)
たいていの場合、良好な移動は0.02〜0.5という質量比(親水性ブロックA/ブロックB)で得られ、特に該比が0.05〜2のときに得られる。
【0081】
さらに、本発明者は、本発明の分散体が、それらの安定性に加えて、予期されない特定の特性を有することを実証した。より正確に言えば、重合体Pの具体的な用途を考慮し、分散媒体を本発明に従う分散体から、特に蒸発によって除去する場合に、粒子と重合体とによって実質的に構成され且つ分散媒体に再分散されて再度オルガノゾル型の安定化分散体を形成することができるという驚くべき能力を有する混合物が得られる(ただし、この新たな分散媒体が、使用される重合体PのブロックBと相溶性であることを条件とする。)。本発明のオルガノゾルのこの特性は、これとは対照的に分散媒体の蒸発によって粒子が不可逆的に凝集する界面活性剤型の安定化剤(特にオレイン酸又はイソステアリン酸)で得られる結果を考慮すると、全く意外である。
【0082】
また、本発明は、本発明に従うオルガノゾル中に存在する有機媒体の除去によって得られる組成物であって、無機物粒子及び上記のタイプの重合体Pを含み、且つ、有機媒体中に分散されて無機物粒子の新たな安定化分散体を形成することができるものに関するものでもある。このような再分散できる組成物は、たいてい油性組成物の形態にある。多くの場合、このような組成物は、有機粒子と両親媒性ブロック重合体との混合物から実質的に構成される。
【0083】
本発明に従う無機物粒子の分散体中に存在する有機媒体を、特に有機媒体の蒸発によって除去することで上記再分散性組成物を製造するための方法は、本発明の別の特定の目的を構成する。
【0084】
粒子と重合体Pとを主体とする上記タイプの再分散性分散体を製造するにあたっては、有利に、分散媒体として例えばトルエンのような低い沸点を有する疎水性有機溶媒を特に使用することによって、上記工程(A)に従いオルガノゾルを形成させることが可能である。このような揮発性分散媒体を使用すると、このものをその後に除去することが容易になるが、この除去は、該揮発性溶媒を単に蒸発させることによって達成でき、所望の再分散性組成物を与えることができる。
【0085】
これらを得るために使用される方法に関わらず、本発明の再分散性組成物は、工程(A)の実施とは相容れない有機媒体を含めて、親水性有機媒体のような任意の有機媒体への粒子の分散体を製造する際に使用できる。
【0086】
この場合、本発明は、さらなる態様によれば、有機媒体が疎水性又は親水性のいずれかであることができる無機粒子分散体の製造方法であって、上記タイプの再分散性組成物を該疎水性又は親水性有機媒体中に分散させる工程(B)を含むものを提供する。
【0087】
特定の実施形態によれば、本発明は、特に、親水性有機分散媒体への無機物粒子の分散体の製造方法であって、
・上記の工程(A)を、好ましくは低い沸点を有する第1分散媒体を使用して実施し、次いで、
・該第1分散媒体を除去(例えば蒸発によって)して上記タイプの再分散性組成物を生じさせ;次いで、
・上記工程(B)を分散媒体として該親水性有機分散媒体を使用して実施すること
を含む前記製造方法を提供する。
【0088】
これらのものを製造する方法に関わりなく、本発明のオルガノゾルは、多数の技術分野で使用できる。
【0089】
特に、該オルガノゾルは、溶媒含有組成物、例えば、特に塗料の製造に特に好適であることが分かった。
【0090】
また、本発明のオルガノゾルのいくつかは、化粧品の分野において組成物を処方する際にも使用できるが、ただし、化粧品として許容できる粒子を使用するものとする。このタイプの用途では、該オルガノゾルの有機分散媒体は、好ましくは、植物油、シリコーン油及び/又は鉱油型のものである。
【0091】
特定の実施形態によれば、本発明のオルガノゾルを使用して溶剤中で触媒反応を実施することもできる(この場合には、使用される粒子は、触媒特性を有する粒子、一般的には粒子上に付着した又は該粒子の構造の一部分をなす触媒活性種をその表面に有する粒子である)。
【0092】
別の態様によれば、これらの様々な用途は、本発明の別の特定の目的を構成する。
【0093】
本発明の様々な利点及び有益な特徴は、以下に説明する例示からさらに明らかになるであろう。
【実施例】
【0094】

A−本発明に従う両親媒性ブロック重合体の製造
例A1
PEHA−PAA型のブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ブロックの理論分子量:2250
ポリ(アクリル酸 )ブロックの理論分子量:125)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPEHAブロックの合成
237.8gのエタノール、37.03gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び400gのアクリル酸2−エチルヘキシルを、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた2リットルガラス製反応器に導入した。
得られた混合物を75℃に加熱し、そして4.52gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を該反応混合物に添加し、次いで、反応を75℃で9時間にわたって続行させた。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該アクリレート単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量(ポリスチレンで検量線作成)は、2350g/molである。
【0095】
・工程2:ジブロック重合体PAA−PEHAの合成
1gのエタノールで希釈された0.11gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。その直後に、22.2gのアクリル酸の15gエタノール溶液を該混合物に少しずつ導入した。こうして得られた混合物を75℃で2時間反応させ、次いで、1gのエタノールで希釈された0.11gのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で8時間維持した。
この反応によってジブロック重合体PAA−PEHAが生じた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。HPLC分析は、導入された全てのアクリル酸が消費されたことを示す。
【0096】
例A2
PAA−PEHA型のブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ブロックの理論分子量:2250
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:125)。
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPAAブロックの合成
28.8gのエタノール、33.32gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び20gのアクリル酸を、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた2リットルガラス製反応器に導入した。該溶液を75℃に加熱し、そして0.3gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を反応混合物に添加した。得られた反応混合物を次いで75℃で9時間維持した。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量(ポリエチレンオキシドで検量線作成)は、400g/molである。
【0097】
・工程2:ジブロック重合体PAA−PEHAの合成
1gのエタノールで希釈された1.8gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。その直後に、360gのアクリル酸2−エチルヘキシルの242.4gエタノール溶液を少しずつ該混合物に導入し、次いで、アクリレート溶液の導入後に、該混合物を2時間反応させた。
【0098】
次いで、1gのエタノールで希釈された1.8gのAMBNを導入した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で8時間維持した。
この反応によって、所望のジブロック重合体PAA−PEHAが生じた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。ガスクロマトグラフィーによる分析は、全てのアクリル酸2−エチルヘキシルが消費されたことを示す。
【0099】
例A3
PAA−PEHA型のブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ブロックの理論分子量:1125
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:250)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPAAブロックの合成
20.4gのエタノール、16.66gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び20gのアクリル酸を、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた2リットルガラス製反応器に導入した。
得られた混合物を75℃に加熱し、そして1.17gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を該反応混合物に添加し、次いで、反応を75℃で9時間にわたって続行させた。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、アクリル酸単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は、550g/molである。
【0100】
・工程2:ジブロック重合体PAA−PEHAの合成
1gのエタノールで希釈された0.45gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。その直後に、60gのアクリル酸2−エチルヘキシルの60.6gエタノール溶液を該混合物に少しずつ導入した。こうして得られた混合物を75℃で2時間反応させ、次いで、1gのエタノールで希釈された0.45gのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で8時間維持した。
この反応は、ジブロック重合体PAA−PEHAを生じさせた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。ガスクロマトグラフィーによる分析は、全てのアクリル酸2−エチルヘキシルが消費されたことを示す。
【0101】
例A4
PEHA−PAA型のブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:250
ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ブロックの理論分子量:4500)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPEHAブロックの合成
227.7gのエタノール、18.51gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び400gのアクリル酸2−エチルヘキシルを、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた2リットルガラス製反応器に導入した。
得られた混合物を75℃に加熱し、そして4.52gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を該反応混合物に添加し、次いで、反応を75℃で9時間にわたって続行させた
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該アクリレート単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は、4300g/molである。
【0102】
・工程2:ジブロック重合体PAA−PEHAの合成
1gのエタノールで希釈された0.11gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。22.2gのアクリル酸の15gエタノール溶液を該混合物に少しずつ導入した。こうして得られた混合物を75℃で2時間反応させ、次いで、1gのエタノールで希釈された0.11gのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で8時間維持した。
この反応は、ジブロック重合体PAA−PEHAを生じさせた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。ガスクロマトグラフィーによる分析は、全てのアクリル酸が消費されたことを示す。
【0103】
例A5
PAA−PEHA型のブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ブロックの理論分子量:1125
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:250)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPEHAブロックの合成
135.5gのエタノール、38.9gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び210gのアクリル酸2−エチルヘキシルを、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた2リットルガラス製反応器に導入した。
得られた混合物を75℃に加熱し、そして2.75gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を反応混合物に添加し、次いで、反応を75℃で9時間にわたって続行させた。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は、1300g/molである。
【0104】
・工程2:ジブロック重合体PAA−PEHAの合成
1gのエタノールで希釈された0.23gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。その直後に、46.67gのアクリル酸の31.4gエタノール溶液を該混合物に少しずつ導入した。こうして得られた混合物を75℃で2時間反応させ、次いで、1gのエタノールで希釈された0.23gのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で8時間維持した。
この反応は、ジブロック重合体PAA−PEHAを生じさせた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。HPLC分析は、導入された全てのアクリル酸が消費されたことを示す。
【0105】
例A6:
PIO−PAA型のジブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸イソオクチル )−ポリ(アクリル酸))
(ポリ(アクリル酸イソオクチル)ブロックの理論分子量:2250
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:125)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPAIブロックの合成
18.7gのエタノール、4.7gのテトラヒドロフラン、3.34gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び36gのアクリル酸イソオクチルを、アルゴン雰囲気下で維持され、磁気撹拌器及び冷却装置を備えた100mLの2口ガラスフラスコに導入した。
得られた混合物を75℃の温度に加熱し、そして3.3gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を反応混合物に添加し、次いで、反応混合物を75℃で9時間維持した。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は、2400g/molである。
【0106】
・工程2:ジブロック重合体PAI−PAAの合成
1gのエタノールで希釈された0.8gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。その直後に、4gのアクリル酸の3.3gエタノール溶液を該混合物に少しずつ導入した。続いて、該混合物を3時間反応させ、次いで1gのエタノールで希釈された、0.8gのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で6時間維持した。
この反応によってジブロック重合体PAI−PAAが生じた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。HPLCクロマトグラフィーによる分析は、全てのアクリル酸が消費されたことを示す。
【0107】
例A7:
PAB−PAA型のジブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸ブチル )−ポリ(アクリル酸))
(ポリ(アクリル酸ブチル)ブロックの理論分子量:2250
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:125)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPABブロックの合成
83gのエタノール、12.94gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び140gのアクリル酸ブチルを、アルゴン雰囲気下で維持され、磁気撹拌器及び冷却装置を備えた500mLの2口ガラスフラスコに導入した。
こうして得られた混合物を75℃に加熱し、そして1.5gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を該反応混合物に添加し、次いで、得られた混合物を75℃で9時間維持した。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は、2150g/molである。
・工程2:ジブロック重合体PAB−PAAの合成
第1工程で得られた重合体の36gをエタノール29.4gに溶解してなる溶液を、75℃で維持された100mLのガラス製反応器に置き、次いで、5mgのAMBNを該混合物に導入する。その直後に、2gのアクリル酸の1.95gエタノール溶液を少しずつ反応混合物に導入する。
アクリル酸溶液の導入後に、得られた混合物を3時間反応させ、次いで、5mgのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、反応混合物を75℃で6時間維持した。
この反応によってジブロック重合体PAB−PAAが生じた。1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。HPLCクロマトグラフィーによる分析は、全てのアクリル酸が消費されたことを示す。
【0108】
例A8:
ランダム共重合体型のジブロック共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル)−ポリ(アクリル酸)の合成
(ランダム共重合体ブロックの理論分子量:2250
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:125)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するランダム共重合体ブロック(アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル)の合成
38.7gのエタノール、6.26gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt、47.8gのアクリル酸2−エチルヘキシル及び17.16gのアクリル酸2−ヒドロキシエチルを、アルゴン雰囲気下で維持され、磁気撹拌器及び冷却装置を備えた100mLのガラスフラスコに導入した。
得られた混合物を75℃に加熱し、0.7gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を該反応混合物に添加し、次いで、該混合物を75℃で9時間反応させた。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、導入された単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は2350g/molである(Mw/Mn比は1.60である)。
【0109】
・工程2:ジブロック重合体の合成
1gのエタノールで希釈された0.015gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた混合物に添加した。その直後に、3gのアクリル酸及び2.92gのエタノールを含有する混合物を少しずつ該混合物に添加した。
続いて、アクリル酸溶液の導入後に、反応混合物を3時間反応させ、次いで、1gのエタノールで希釈された0.015gのAMBNを添加した。このAMBNのさらなる添加の後に、その反応を75℃で8時間維持した。
この反応により所望のジブロック重合体が生じた。
【0110】
例A9
PAA−PEHA型のブロック共重合体の合成
(ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)ブロックの理論分子量:1125
ポリ(アクリル酸)ブロックの理論分子量:125)
・工程1:反応性末端基(キサンテート)を有するPEHAブロックの合成
135.5gのエタノール、38.9gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt及び210gのアクリル酸2−エチルヘキシルを、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた2リットルガラス製反応器に導入した。
得られた混合物を75℃に加熱し、そして2.50gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を反応混合物に添加する。反応混合物を次いで75℃で9時間維持した。
1H NMR及びガスクロマトグラフィーによる分析は、該単量体が完全に重合されたことを示す。立体排除クロマトグラフィーによって測定される、得られた重合体のモル質量は、1200g/molである。
【0111】
・工程2:ジブロック重合体の合成PEHA−PAA
1gのエタノールで希釈された0.12gのAMBNを、75℃で維持された、第1工程で得られた重合体に添加する。その直後に、23.33gのアクリル酸及び15.71gのエタノールを含有する混合物を少しずつ添加する。アクリル酸溶液の導入の2時間後に、1gのエタノールで希釈された0.12gのAMBNを添加する。このさらなる添加後に、反応を75℃で8時間維持する。
1H NMR分析は、最終共重合体の組成が予想組成に相当することを示す。HPLCクロマトグラフィーによる分析は、全てのアクリル酸が消費されたことを示す。
【0112】
B−上で合成された重合体を使用した本発明に従うオルガノゾルの製造
例B1
例A1のブロック重合体PAA−PEHAを使用してCeO2粒子を酢酸ブチルに分散してなるオルガノゾル(オルガノゾルO1)
オルガノゾルO1の製造
冷却装置とアンカー型機械的撹拌器とを備えた2リットル反応器に、5nmの流体力学直径を有する20g/リットルCeO2水性ゾル200mLを撹拌しながら導入し、次いで、例A1のブロック共重合体PEHA−PAAの33.47gの溶液を導入し、最後に200mLの酢酸ブチルを導入した。
こうして製造された混合物で使用した重合体とCeO2の相対量は、1のモル比(該重合体が有するCOOH/全CeO2)に相当する。
製造した混合物を60℃で6時間撹拌して水性ゾルから有機相への粒子の移動を生じさせた。
撹拌を止め、そして該混合物を周囲温度(ほぼ25℃)に冷却させた後に、得られた混合物を一晩(およそ12時間)にわたって沈降させた。
沈降後に、水性相を、有機相から該水性相(有機相よりも濃厚)を反応器の底部にある弁を介して引き出すことによって分離した。このようにしてオルガノゾルO1が得られた(分離された有機相)。
オルガノゾルO1は、10.6%の溶解損失(完全に乾燥したオルガノゾルで計算)を有しているが、これは、およそ94.8%の初期水性ゾルから有機媒体への移動率に相当する。
オルガノゾルO1の安定性
得られたオルガノゾルは、良好な安定性を有する。従って、該オルガノゾルを6月間周囲温度で保存した後に、粒子の沈降は視覚的には全く認められない。
【0113】
オルガノゾルO1を「乾燥」させ、そして得られた乾燥組成物を有機媒体に再分散させる可能性
本発明のオルガノゾルの特定の性質、すなわち無機物粒子の分散体に影響を及ぼすことなくそれらの分散媒体を除去する可能性を例示するために、上で得られたオルガノゾルO1を乾燥させた。
この場合、該オルガノゾルを、一定の質量が達成されるまで酢酸ブチルを真空内で蒸発させることによって完全に乾燥させた。このようにして、実質的にCeO2粒子と例A1の共重合体とから構成される淡黄色の透明で粘稠なオイルを得た。
こうして得られたオイルの構造を小角X線散乱法によって分析した。得られたスペクトルは170Åの波数ベクトル値qで非常に強いピークを示すが、これは、生成物中で無機物が良好に分散している特徴である。これらの結果は、得られた組成物が、それらの粒子を重合体内に規則正しく間隔をあけて配置させる濃縮され且つ規則的な媒体であることを示している。概略的にいうと、該粒子は、媒体の濃度にかかわらず、該組成物中に実質的に別個の粒子の形態で存在するが、これは、重合体が保持するアクリル酸官能基によって該粒子に該重合体が固定されることに起因するものと思われる。
比較として、初期水性ゾルの乾燥を、ブロック重合体を存在させずに実施し、そして得られた乾燥粉末を同一の小角X線散乱分析に付したところ、完全に異なるスペクトルが生じた。従って、オーダーが明確なピークの代わりに、およそ粒子の平均直径(約74Å)である特徴的な間隔に相当するさほど顕著ではない最大値を有し、その曲線が小さな角度で上昇したプラトーが観察されるが、これは、乾燥オルガノゾルの場合には観察されない凝集の現象を反映するものである。
さらに、酢酸ブチルの除去後に得られた乾燥オルガノゾルを、2つの異なる濃度(0.5質量%及び1.6質量%)の酢酸ブチルに再度分散させた。オルガノゾル中に分散された物体の平均流体力学直径を準弾性光散乱によって測定した。その結果を以下の表2に示している。
【0114】
【表2】

【0115】
測定された流体力学直径は、該ゾルに施した全乾燥工程にかかわらず、CeO2が溶媒に良好に再分散したことを示している。情報として、ゾルO1中に分散された物体の乾燥前の平均流体力学直径はおよそ15nmである。
【0116】
例B2
例A2のブロック重合体PAA−PEHAを使用した、CeO2粒子の酢酸ブチルオルガノゾル(オルガノゾルO2)
冷却装置とアンカー型機械的撹拌器とを備えた2リットル反応器に、20g/リットルのCeO2水性ゾル150mLを例B1で使用した通りに導入し、次いで、例A2のブロック共重合体PAA−PEHA9.55gを酢酸ブチル150mLに溶解してなる溶液を撹拌しながら反応器に導入した。
こうして製造された混合物で使用した重合体とCeO2の相対量は、0.4のモル比(該重合体が有するCOOH/全CeO2)に相当する。
製造した混合物を60℃で6時間撹拌した。撹拌を止め、そして温度を周囲温度(およそ25℃)に低下させた後に、この混合物を一晩にわたって沈降させた(およそ12時間)。沈降後に、水性相を、例B1と同様に、反応器の底部にある弁を介して水性相を引き出すことによって有機相から分離した。
このようにして、完全に乾燥した状態で、98.6%の移動率に相当する22.9%の溶解損失を有するオルガノゾルO2(分離した有機相)が得られた。
例1と同様に、得られたオルガノゾルは、保存中に沈降現象を生じさせることなく、良好な安定性を有している。
【0117】
例B3
例A2のブロック共重合体PAA−PEHAを使用した、CeO2粒子のIsopar Lオルガノゾル(オルガノゾルO3)
例B2を繰り返したが、ただし、使用した150mLの酢酸ブチルを150mLのIsopar Lで置き換えた。
このようにして、CeO2粒子のIsopar LオルガノゾルO3が96.1%の移動率で得られた。
ここでも、得られたオルガノゾルは、良好な貯蔵安定性を有する。
【0118】
例B4
例A2のブロック共重合体PAA−PEHAを使用した、CeO2粒子のExxsolD40オルガノゾル(オルガノゾルO4)
例B2とB3のプロトコールを使用したが、この場合には150mLのExxsolD40を使用した。
このようにして、CeO2粒子のExxsolD40オルガノゾルO4を97.4%の移動率で得た。
上記例B2、B3及びB4の結果は、多くのタイプの異なる極性を有する溶媒中でCeO2粒子を主体とするオルガノゾルを製造するにあたって、PAA−PEHA型のブロック重合体が好適であることを示す。
【0119】
例B5
例A8のブロック重合体を使用した、CeO2粒子の酢酸ブチルオルガノゾル(オルガノゾルO5)
冷却装置とアンカー型機械的撹拌器とを備えた2リットル反応器に、例B1で使用した通りの20g/リットルのCeO2水性ゾル150mLを撹拌しながら導入し、次いで、例A8の共重合体の9.55gを酢酸ブチル150mLに溶解してなる溶液を導入した。
こうして製造された混合物で使用した重合体とCeO2の相対量は、0.4のモル比(該重合体が有するCOOH/全CeO2)に相当する。
この混合物を60℃で6時間撹拌した。撹拌を止め、そして温度を周囲温度(およそ25℃)に低下させた後に、この混合物を一晩にわたって沈降させた(およそ12時間). 沈降後に、その水性相を、反応器の底部にある弁を介して該水性相を引き出すことによって有機相から分離した。
完全に乾燥したオルガノゾルについて測定した溶解損失により、94.1%の移動率と推定された。
先の例と同様に、得られたオルガノゾルは貯蔵に対して安定であった。
【0120】
比較例
比較例1
本発明に従うブロック共重合体を使用して得られたオルガノゾルの安定性と従来の界面活性剤を使用して得られたオルガノゾルの安定性との比較
本発明の共重合体で達成されるオルガノゾルの安定性が従来の界面活性剤と比較して有意に改善することを実証するために、これら2タイプの安定化剤を使用した異なるオルガノゾルを比較した。
より正確に言えば、CeO2粒子をExxsolD40に分散させた複数のオルガノゾルを、安定剤として、例A1のブロック共重合体及び/又はイソステアリン酸を、以下の表3に示した様々な共重合体及びイソステアリン酸の割合で含む混合物Mを使用して製造した。特定の場合(対照)には、使用した混合物Mは100%のイソステアリン酸を含有し、重合体を有しない。その他の場合には、該混合物Mは、本発明に従う重合体を10〜100mol%の範囲の割合で含む。
それぞれの場合において、オルガノゾルを次のプロトコールに従って製造した。
5.77g/リットルの水性CeO2ゾル18mLを、冷却装置と磁気撹拌器とを備えた75mL反応器に導入した。次いで、該混合物Mを含有してなる18mLのExxsolD40の溶液を反応器に導入する。それぞれの場合において、重合体の導入量(mP)とイソステアリン酸の導入量(mISA)とを合わせて、該混合物中で0.8に等しい一定のモル比(該重合体が有するCOOH/全CeO2)を維持した。対応する質量mP及びmISAを以下の表3に示す。
得られた混合物を60℃で1時間撹拌する。撹拌を止め、そして温度を周囲温度(25℃)に低下させた後に、該混合物を12時間にわたり沈降させた。沈降後に、その水性相を、ピペットで有機相を除去することにより有機相から分離した。
こうして取り出した有機相のそれぞれはオルガノゾルを構成しており、その安定性を温/冷サイクル(−20℃;+90℃)で試験した。
この目的のために、得られたオルガノゾルの様々な試料をオーブン内に置き、そして一連の温度サイクルに付した。これらのサイクルは次のように定義される:
・温度を90℃で1時間維持する;
・温度を1時間にわたって90℃から−20℃に低下させる;
・温度を直ちに−20℃から+90℃に1時間にわたって上昇させる(次のサイクルの開始前に:1時間の新たなプラトー;−20℃に下げ、+90℃に上げる)。
それぞれの試料について、有機ゾルが曇り始め、そして、安定性の喪失の特徴である白色沈殿物の形成が観察される時間を記録する。それぞれの場合において観察された、曇りと白色沈殿の出現前の安定期間を以下の表3に示している。
【0121】
【表3】

【0122】
この例は、安定性の期間が、対照のイソステアリン酸を25mol%例A1の重合体で置き換えると、2倍になることを示している。これは、イソステアリン酸を100%該重合体で置き換えると5倍になる。
【0123】
比較例2
本発明に従うブロック共重合体の特性と同一の組成を有するランダム共重合体の特性との比較
・例A1及びA2のブロック共重合体とおおむね同一の組成を有するアクリル酸2−エチルヘキシル単位及びアクリル酸単位を主体とするランダム共重合体PRANDの製造
比較する目的で、アクリル酸単位及びアクリル酸2−エチルヘキシル単位を主体とするランダム重合体を次の条件下で合成した。
99.4gのエタノール、18.51gのO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチル)キサンテート(CH3CHCO2CH3)S(C=S)OEt、200gのアクリル酸2−エチルヘキシル及び11.11gのアクリル酸を、アルゴン雰囲気下で維持され、羽型撹拌器と冷却装置とを備えた500mLガラス製反応器に導入した。
この溶液を75℃の温度にし、2.26gのアゾビス(メチルイソブチロニトリル)(AMBN)を反応混合物に添加する。3時間の反応後に、さらに0.056gのAMBNを反応媒体に添加する。この反応を、AMBNの最後の添加後の温度でさらに5時間にわたり維持する。
反応の終了時に、1H NMR分析から、単量体が全て転化したことが示される。THF溶液での立体排除クロマトグラフィー(ポリスチレンで検量線作成)によって測定されるときの、得られた重合体の数平均モル質量Mnは、2300g/molである。
【0124】
・ランダム重合体PRANDを使用した、水性ゾルから酢酸ブチルへのCeO2粒子の移動試験
冷却装置とアンカー型機械的撹拌器とを備えた500mL反応器に、例B1で使用した20g/リットルのCeO2水性ゾル100mLを導入し、次いで、6.47gの共重合体A9の100mL酢酸ブチル溶液を該反応器に導入した。
こうして製造された混合物で使用した重合体とCeO2の相対量は、0.4のモル比(該重合体が有するCOOH/全CeO2)に相当する。
この混合物を60℃で6時間撹拌した。撹拌を止め、そしてその温度を周囲温度にまで低下させた後に、該混合物を一晩沈降させた。沈降後に、その水性相を、反応器の底部にある弁を介して該水性相を引き出すことによって有機相から分離した。
完全に乾燥したオルガノゾルについて測定した溶解損失によって、移動率が11.1%であることを立証できた。
同一のプロトコールを実施したが、ただし、この場合、6.47gの代わりに12.73gの重合体を使用して0.8のモル比(該重合体が有するCOOH/全CeO2)を得た。このようにして、25.7%の移動収率(完全に乾燥したオルガノゾルの溶解損失の測定に基づいて決定)が得られた。
重合体PRANDを使用したときに得られた非常に低い移動率は、このランダム重合体が、例A1及びA2の重合体を使用するよりも移動収率が非常に低い、可もなく不可もない相間移動剤であることを明らかに示している(上記例B1〜B4を参照されたい。この場合、収率は90%よりも大きい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機分散媒体内に無機物粒子を分散してなる安定化分散体であって、該分散体を安定化させるための薬剤として両親媒性ブロック重合体Pを含み、ここで、該両親媒性ブロック重合体Pは、
・該粒子の表面との相互作用を生じさせることができる基RAを含有する親水性ブロックAと、
・該親水性ブロックAに結合し且つ該有機分散媒体に対して親和性を有する少なくとも1種の疎水性ブロックBと
を含む、前記安定化分散体。
【請求項2】
前記無機物粒子が酸化無機物、好ましくは、SiO2、CeO2、TiO2、ZrO2、Al23、Fe23又はこれらの酸化物の2種以上の混合物を主体とした粒子である、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記無機物粒子の含有量が、前記分散体の全質量に基づいて、1質量%〜15質量%である、請求項1又は2に記載の分散体。
【請求項4】
前記分散体中に分散される無機物の寸法が、該無機物を取り囲む有機種層を考慮せずに、1〜70nmである、請求項1〜3のいずれかに記載の分散体。
【請求項5】
前記有機分散媒体が極性媒体である、請求項1〜4のいずれかに記載の分散体。
【請求項6】
前記無機物粒子が負に荷電した表面を有し、しかも、前記重合体PのブロックAのRA基の全て又はいくつかが陽イオン性の性質の基、例えば、アンモニウム基又は第四アミンである、請求項1〜5のいずれかに記載の分散体。
【請求項7】
前記無機物粒子がシリカを主体とした粒子であり、前記RA基がアンモニウム基又は第四アミンである、請求項6に記載の分散体。
【請求項8】
前記無機物粒子が正に荷電した表面を有し、しかも、前記重合体PのブロックAのRA基の全て又はいくつかが陰イオンの性質の基である、請求項1〜5のいずれかに記載の分散体。
【請求項9】
前記重合体PのブロックAがカルボキシレート基、スルフェート基、スルホネート基、ホスホネート基又はホスフェート基を有する、請求項8に記載の分散体。
【請求項10】
前記無機物粒子が酸化セリウムCeO2を主体とする粒子である、請求項8又は9に記載の分散体。
【請求項11】
ブロックAが−COOH基であって、好ましくはそのいくつかがカルボキシレートの状態(−COO-)にイオン化されたものを有する、請求項10に記載の分散体。
【請求項12】
ブロックAが、ポリアクリレートブロック若しくはポリアクリル酸ブロック、ポリ(スチレンスルホネート)ブロック、ポリ(ビニルホスホン酸)ブロック又はポリ(アクリルアミド・メチルプロパンスルホン酸)ブロックである、請求項11に記載の分散体。
【請求項13】
前記分散体を安定化させるための薬剤として使用される重合体Pが、親水性ブロックAと疎水性ブロックBとの会合によって構成されるジブロック重合体、すなわち、式A−Bを有する重合体を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の分散体。
【請求項14】
前記重合体Pが、前記親水性ブロックAに共有結合した複数の疎水性ブロックを有する共重合体を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の分散体。
【請求項15】
前記親水性ブロックAに共有結合した複数の疎水性ブロックを有する共重合体が、
・式B1−A−B2(式中、B1及びB2基のそれぞれは、請求項1に記載のB型の疎水性ブロックを表す。)のトリブロック型のブロック共重合体;及び/又は
・請求項1に記載のB型の複数の疎水性ブロックが側鎖として親水性ブロックAに結合した櫛形重合体
を含む、請求項14に記載の分散体。
【請求項16】
前記重合体Pが、統計上、ブロックA内に1を超える平均RA基数を有し、ここで、ブロックA内の平均RA基数は、好ましくは少なくとも2に等しく、例えば2〜4である、請求項1〜15のいずれかに記載の分散体。
【請求項17】
前記重合体が10000g/mol未満、有利には1000〜3000g/molの分子量を有する、請求項1〜16のいずれかに記載の分散体。
【請求項18】
前記重合体Pにおいて、質量比(親水性ブロックA/ブロックB)が0.02〜0.5である、請求項1〜17のいずれかに記載の分散体。
【請求項19】
ブロックAの分子量が50〜5000g/molであり、疎水性基Bのそれぞれの分子量が500〜8000g/molである、請求項1〜18のいずれかに記載の分散体。
【請求項20】
質量比(粒子/重合体)が0.2以上である、請求項1〜19のいずれかに記載の分散体。
【請求項21】
質量比(前記親水性ブロックA中のRA基/前記粒子の無機成分)が0.2以上である、請求項1〜20のいずれかに記載の分散体。
【請求項22】
質量比(重合体/溶媒)が0.005以上である、請求項1〜21のいずれかに記載の分散体。
【請求項23】
使用されるブロック重合体Pが、次の連続工程:
(e1)鎖の末端で官能化された第1重合体ブロックを、
・少なくとも1種のエチレン系不飽和単量体と、
・少なくとも1種のフリーラジカル源と、
・少なくとも1種のキサンテート、ジチオエステル、チオエーテルチオン又はジチオカルバメート、好ましくはキサンテートと
を接触させることによって形成させ;次いで
(e2)工程(e1)で得られた、鎖の末端で官能化された第1重合体ブロック上に、該得られた重合体と新たなエチレン系不飽和単量体及びフリーラジカル源とを反応させることによって第2ブロックを形成させること
を含む制御フリーラジカル重合方法に従って得ることができる、請求項1〜22のいずれかに記載の分散体。
【請求項24】
使用される重合体Pが、工程(e1)及び(e2)を使用し、且つ、O−エチル基又はO−トリフルオルエチル基を有するキサンテートを使用することによって得られた、請求項23に記載の分散体。
【請求項25】
存在する粒子が負の表面電荷を有し、しかも、前記重合体Pがポリ(アクリル酸ブチル)−ポリ(四級化アクリル酸2−ジメチルアミノエチル);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(四級化アクリル酸2−ジメチルアミノエチル);又はポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(四級化p−クロルメチルスチレン)型のブロック重合体である、請求項23又は24に記載の分散体。
【請求項26】
前記粒子が正の表面電荷を有し、しかも、前記重合体Pがポリ(アクリル酸ブチル)−ポリ(アクリル酸);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(アクリル酸);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(スチレンスルホネート);ポリ(アクリル酸ブチル)−ポリ(スチレンスルホネート);ポリ(アクリル酸イソオクチル)−ポリ(アクリル酸);又はポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)−ポリ(ビニルホスホン酸)型のブロック重合体である、請求項23又は24に記載の分散体。
【請求項27】
使用される重合体Pがジブロック重合体のポリアクリル酸−ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)(PAA−P2EHA)である、請求項26に記載の分散体。
【請求項28】
請求項27に記載の分散体中の安定化剤として使用するための、ポリアクリル酸−ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)(PAA−P2EHA)ジブロック共重合体。
【請求項29】
有機分散媒体が疎水性である、請求項1〜27のいずれかに記載の分散体の製造方法であって、粒子の水性懸濁液と該疎水性有機媒体とを請求項1に記載の両親媒性ブロック重合体Pの存在下で接触させ、それにより、該粒子を、その水性相から、該重合体によって安定化された有機懸濁液状の疎水性媒体に移動させることを含む工程(A)を含む、請求項1〜27のいずれかに記載の分散体の製造方法。
【請求項30】
工程(A)で使用する初期水性懸濁液が1〜100g/Lの粒子濃度を有し、ここで、該濃度は、好ましくは75g/L以下である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程(A)で使用する初期水性懸濁液が1〜200nmの平均流体力学直径を有する、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
有機媒体に分散して、無機物粒子と請求項1に記載の両親媒性ブロック重合体Pとを含む請求項1〜27のいずれかに記載の無機物粒子の分散体を形成することができる組成物であって、請求項1〜27のいずれかに記載の無機物粒子の分散体中に存在する有機媒体を、特に蒸発によって除去することによって得られる、前記組成物。
【請求項33】
請求項1〜27のいずれかに記載の無機物粒子の分散体から有機媒体を蒸発させることによって請求項31に記載の組成物を製造するための方法。
【請求項34】
請求項1〜27のいずれかに記載の無機物粒子の分散体を疎水性又は非疎水性有機媒体で製造するための方法であって、請求項32に記載の組成物を該有機媒体に分散させる工程(B)を含む、前記方法。
【請求項35】
溶媒含有組成物、特に塗料又は化粧品組成物の製造の際の、請求項1〜27のいずれかに記載の分散体の使用。
【請求項36】
前記粒子が触媒特性を有する請求項1〜27のいずれかに記載の分散体の、溶媒媒体中で触媒反応を実施するための使用。

【公表番号】特表2008−540722(P2008−540722A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509470(P2008−509470)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000984
【国際公開番号】WO2006/117476
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】