説明

両面印刷構造,該両面印刷構造を用いた文字板及び該両面印刷構造の印刷方法

【課題】 加熱転写印刷を行っても、母材が、反り返ったり撓んだりする虞が無く、外観品質を向上させることが出来る両面印刷構造を提供する。
【解決手段】文字板10には、透明のPCシート101の両側面に、印刷面として平坦な一側面101a及び他側面101bが設けられている。
両面熱転写印刷装置5の熱転写ローラ104a,104bによって一側面101a及び他側面101bには、各々熱転写印刷が施されて、異なる複数の色彩が与えられた印画層103a〜103h…,3aが、一部重複された状態で積層された印画103,3として設けられる。
熱転写印刷は、2本の熱転写ローラ104a,104bによって、両側面101a,101b同時に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、自動車等、車両に用いられるメータ装置等の表示装置に用いられる両面印刷構造で、主に、印刷後に、母材の寸法精度を良好なものとすることが出来る両面印刷構造,該両面印刷構造を用いた文字板及び該両面印刷構造の印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の表示装置に用いられる文字板及びこの文字板に用いられる印刷構造及び文字板への印刷方法としては、図7,図8に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、この従来の文字板100の印刷構造では、図7に示すように、母材としての透明のPCシート101の一側面101aに、印画103が、転写されるように構成されている。
【0004】
この印画103には、異なる又は近似した複数の色彩が与えられた印画層103a〜103e…が、一部重複された状態で、積層されている。
【0005】
そして、この文字板100のPCシート101の印画面である一側面101a若しくは、裏面側である他側面101b側から照光された照明光が、他側面101b若しくは、一側面101a側に透過又は反射されて、各印画層103a〜103e…によって、所望の色彩に調整され、この文字板100の透過照明光の色彩として、この表示装置の意匠面の少なくとも一部として、乗員室内の乗員に視認されるように構成されている。
【0006】
次に、この従来の印画103が施されてなる熱転写印刷構造を、前記PCシート101の一側面101aに熱転写する熱転写印刷装置105及び、この熱転写印刷装置105によって行われる片面印刷方法について、図8に示す印刷工程(a)〜(d)に沿って説明する。
【0007】
このように構成された従来の熱転写印刷構造では、まず、図8中(a)に示すように、一本の熱転写ローラ104が用いられる熱転写印刷装置105に、前記PCシート101が装填されて、前記複数の印画層103a〜103eからなる印画103が、逆の順番で積層されたPET製の中間転写フィルム102の転写面102aから、このPCシート101の一側面101aに転写される。
【0008】
この際、図8中(b)に示すように、前記中間転写フィルム102の外側面102b側から、前記熱転写ローラ104が、加熱された状態で押圧されながら、転動される。
【0009】
そして、軟化したPCシート101の一側面101aに、中間転写フィルム102の転写面102aが圧接される。
【0010】
このため、この転写面102aに積層された印画層103a〜103eからなる印画103が、前記PCシート101の一側面101a側に、圧着されて転写される。
【0011】
圧着後、図8中(c)に示すように、前記熱転写ローラ104が外されて、冷却工程で、中間転写フィルム102が剥がされると、前記熱転写ローラ104の熱により、軟化した転写面102aから、前記印画103が離型して、前記PCシート101の一側面101a側への転写が略完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−256996号公報
【特許文献2】特開2008−257054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように構成された従来の文字板の印刷構造では、前記PCシート101の一側面101a側に設けられた加熱された状態の一本の熱転写ローラ104によって、中間転写フィルム102が、PCシート101の一側面101aに押圧される。
【0014】
そして、この一側面101aに、中間転写フィルム102の印画103が、圧接転写されるように構成されている。
【0015】
この際、PCシート101の他側面101bは、加熱されていないので、熱による膨張が起こらない。
【0016】
このため、この一側面101aに熱及び押圧力を与えていた前記加熱された状態であった熱転写ローラ104が離反すると、この一側面101aが、常温に戻るまで冷却されることにより、収縮してしまう。
【0017】
この際、他側面101bは、収縮しない為、常温状態では、両側面101a,101b間で寸法差が生じ、図8中(d)に示すように、前記PCシート101が、一側面101aを内向きとして、反り返ってしまう虞があった。
【0018】
このように反り返った印刷及び冷却工程終了後の文字板100は、内部応力を保有したまま、前記自動車の表示装置等内に装着されて、装着された取付部分から常時加圧されている状態となってしまう。
【0019】
従って、この文字板100と、この文字板100を取付けたり、支持する部分との間で低級音が発生したり、クラックの発生原因になると共に、この文字板100の意匠面が撓んで、外観品質を低下させてしまうといった問題があった。
【0020】
そこで、この発明は、加熱転写印刷を行っても、母材が、反り返ったり撓んだりする虞が無く、外観品質を向上させることが出来る両面印刷構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、母材の両側面に、印画を熱転写印刷によって施した印画層が形成されている両面印刷構造を特徴としている。 また、請求項2に記載されたものは、印画が行われた母材の少なくとも一部を意匠面とする請求項1記載の両面印刷構造を用いた文字板を特徴としている。
【0022】
更に、請求項3に記載されたものは、前記母材の両側面に、同時に熱転写印刷を施して、両側面に印画を行う請求項1記載の両面印刷構造の印刷方法を特徴としている。 そして、請求項4に記載されたものは、前記母材の両側面に、各々個別に熱転写印刷を施して、両側面に印画を行う請求項1記載の両面印刷構造の印刷方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
このように構成された請求項1記載のものは、母材の両側面に、印画を熱転写印刷によって施した印画層が形成されている。
【0024】
このため、前記母材の両側面に熱及び押圧力が与えられて、伸張されているので、冷却工程でも、該両側面は、同様に収縮する。
【0025】
従って、加熱転写印刷が行われても、母材が、反り返ったり撓んだりする虞が無い。
【0026】
また、請求項2に記載されたものは、意匠面が、印画を行なった母材の少なくとも一部に設けられていても、反り返り等の撓みが無いので、良好な外観品質を得られる。
【0027】
更に、請求項3に記載されたものは、前記母材の両側面に印画を行う熱転写工程が、前記母材の両側面で、同時に熱転写印刷によって施される。
【0028】
このため、熱及び押圧力が同時に与えられて、伸張される比率も両側面で揃い、更に、反り返りや撓みの発生を抑制出来る。
【0029】
また、請求項4に記載されたものは、両側面で、加熱温度、加圧圧力等を同一条件とすることにより、片面用の熱転写ローラを用いても、前記母材の両側面に、各々個別に熱転写印刷を施して、両側面に印画を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態の文字板の両面印刷構造で、印画の要部を構成する印画層の積層順序を説明した模式的な縦断面図である。
【図2】この発明の実施の形態の実施例1の両面印刷構造で、PCシート片面に印画を熱転写する際の要部を説明する模式的な斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態の実施例1の両面印刷構造で、PCシート片面に印画を熱転写した際の反り返りを説明する模式的な斜視図である。
【図4】この発明の両面印刷構造の比較例として示す片面印刷によって、PCシートに印画を熱転写した後の冷却工程で発生する反り返りのメカニズムを説明する拡大斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態の実施例1の両面印刷構造で、PCシートの両面に、同時に2本の熱転写ローラで、印画を熱転写する製造工程を説明し、(a)は、母材と、印画層を有する印画を設けた二枚の中間転写フィルムとを両面印刷装置に装着した様子を示す要部の縦断面図、(b)は、二本の熱転写ローラによって熱転写を行っている様子を示す要部の縦断面図、(c)は、冷却工程で、中間転写フィルムを離反させた様子を示す縦断面図である。
【図6】この発明の実施の形態の実施例2の両面印刷構造で、(a)は、母材と、印画層を有する印画を設けた中間転写フィルムとを両面印刷装置に装着した様子を示す要部の縦断面図、(b)は、熱転写ローラによって熱転写を行っている様子を示す要部の縦断面図、(c)は、反転させた母材と、印画層を有する印画を設けた中間転写フィルムとを両面印刷装置に装着した様子を示す要部の縦断面図、(d)は、熱転写ローラによって熱転写を行っている様子を示す要部の縦断面図、(e)は、冷却工程で、中間転写フィルムを離反させた様子を示す縦断面図である。
【図7】一従来例の文字板の印刷構造で、印画の要部を構成する印画層の積層順序を説明した模式的な縦断面図である。
【図8】一従来例の文字板の印刷構造で、片面印刷によって、PCシートに印画を熱転写する製造工程を説明した模式的な図で、(a)は、母材と、印画層を有する印画を設けた中間転写フィルムとを片面印刷装置に装着した様子を示す要部の縦断面図、(b)は、熱転写ローラによって熱転写を行っている様子を示す要部の縦断面図、(c)は、冷却工程で、母材が反り返る様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための実施の形態の両面印刷構造,該両面印刷構造を施した文字板及び該両面印刷構造の印刷方法について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0032】
なお、前記従来と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0033】
まず、構成から説明すると、この実施の形態の両面印刷構造では、車両の運転席近傍に配置される図示省略のスピードメータ、タコメータ等の車両用計器の文字板等、バックライト透過型の文字板に用いられるものである。
【実施例1】
【0034】
このうち、図1乃至図5は、この実施の形態の実施例1の両面印刷構造を施した文字板10及び、この両面印刷構造の印刷方法を示している。
【0035】
まず、構成から説明すると、この実施例1の文字板10では、図1に示すように、母材としての透明のPCシート101の両側面に、印刷面として平坦な一側面101a及び他側面101bが設けられている。
【0036】
このうち、一側面101aには、各々熱転写印刷が施されて、異なる複数の色彩が与えられた印画層103a〜103h…が、一部重複された状態で積層された印画103として、設けられている。
【0037】
また、他側面101bには、単層の印画層3aを有して構成される他側面の印画3が、設けられている。
【0038】
そして、この文字板10のPCシート101の裏面側である他側面101b側から照光された照明光が、表示面側である一側面101a側に透過される際に、前記印画層3a,各印画層103a〜103h…内を通過若しくは反射される。
【0039】
この実施例1では、若しくは、この文字板10のPCシート101表面側である一側面101a側から照光された照明光が、裏面側である他側面101b側に透過される際に、前記各印画層103a〜103h…及び印画層3a内を通過する。
【0040】
この際、前記印画層3aと、前記何れかの印画層103a〜103hとが重複する部分では、色彩が混合して所望の色彩に調整され、この文字板10の透過照明光の色彩として、この表示装置が設けられた乗員室内の乗員に視認されるように構成されている。
【0041】
この実施例1では、前記PCシート101の各側面101a,101bに、各々印画103及び、他側面の印画3が行われるので、予め2枚の独立したPET製の中間転写フィルム102,102が用いられる。
【0042】
そして、一方の中間転写フィルム102の転写面102aには、前記複数の印画層103a〜103hからなる印画103が、逆の順番で積層されて予め用意されると共に、他方の中間転写フィルム102の転写面102aには、単相の印画層3aが添着されて予め用意される。
【0043】
次に、この実施の形態の実施例1の両面印刷構造の印刷方法を、両面に同時に熱転写可能な両面熱転写印刷装置5を用いた印刷方法として、主に、図5に示す印刷工程(a)〜(c)に沿って説明する。
【0044】
まず、この両面印刷に用いられる両面熱転写印刷装置5の構成について説明すると、この両面熱転写印刷装置5では、図2乃至図4に示すように、前記PCシート101の各側面101a,101bに、2枚の独立したPET製の中間転写フィルム102,102を加熱しながら押圧して、転動されることにより、転写印刷が行われるように、上,下一対の熱転写ローラ104a,104bが、前記PCシート101の各側面101a,101b側に、配置されている。
【0045】
これらの熱転写ローラ104a,104bは、転動自在に支持されていると共に、前記中間転写フィルム102,102の転写面102a,102a側を、前記PCシート101の各側面101a,101bに向けて押圧する方向へ駆動可能とする図示省略のシリンダ装置が各々設けられている。
【0046】
そして、この実施例1のシリンダ装置は、図2及び図3に示すように、上,下方向に各々押圧力F1,F2(F1=0.5MPa,F2=0.5MPa)を出力可能として、駆動方向を対向方向へ近接離反可能とすることにより、上下両側から押圧力F1,F2を、前記中間転写フィルム102,102間に介装された前記PCシート101の各側面101a,101b側に、面内,外方向に向けて加えられるように構成されている。
【0047】
また、これらの上,下一対の熱転写ローラ104a,104bの間に挿通される前記PCシート101は、図示省略のトラバース装置によって、図2中矢印方向へ一定速度で、相対移動されると共に、前記熱転写ローラ104a,104bによって加熱される。
【0048】
この熱転写ローラ104a,104bの外周面の温度は、内部ヒータの通電により、摂氏約190℃程度に保持されるように構成されている。
【0049】
すなわち、前記熱転写ローラ104a,104bの外側面が当接する中間転写フィルム102,102の表面温度は、150℃以上160℃未満となり、前記PCシート101のガラス転位点である141℃〜149℃を上廻るように調整されている。
【0050】
この際、薄く設定されている中間転写フィルム102と同様に、前記PCシート101の表面側の被転写面の表面温度も150℃以上160℃未満となる。
【0051】
しかも、この熱転写加圧時の前記PCシート101の裏面側の温度は、前記PCシート101の厚さが調整されることにより、ガラス転位点である141℃〜149℃よりも低い約120℃未満となる。
【0052】
このため、図2に示すように、熱転写ローラ104a,104bによって、PCシート101の両側面側から押圧されながら熱転写が施されても、前記熱転写ローラ104aのみが加熱されている場合は、図3に示すように、押圧力F1,F2が等しくても、表面側近傍の素材が、四方B1〜B4…に向けて裏面側近傍の素材に比して大きく膨張する。
【0053】
従って、熱転写ローラ104aの離反により、冷却工程が開始されると、PCシート101の表面側近傍の素材が、図4に示すように、収縮して張力F3…,F4…が作用することにより、このPCシート101の表面側が、側縁に加わる張力F3…,F4…で凹状に反り返る虞がある。
【0054】
このように、反り返り量を決める要素は、熱量(温度と時間)、外部からの応力(シリンダ圧力)、材料(材質と厚さ)の主に、3つであることがわかる。
【0055】
従って、反り返り量を減少させる為には、PCシート101の表,裏両側面に発生する反対向きの反り返り量を同一反り返り量となるようにすればよいことが分かる。
【0056】
このため、この実施の形態の実施例1の両面印刷構造では、図5中(a)に示すように、母材としてのPCシート101の両側面に、各印画103及び印画3を、上,下一対の二本の熱転写ローラ104a,104bによって、熱転写印刷することによって、両側面101a,101bに、印画層103a〜103d…及び印画層3aを形成して、PCシート101の少なくとも一部が、文字板10の意匠面として機能させるように構成されている。
【0057】
図5中(b)では、上,下一対の熱転写ローラ104a,104bの間に挿通される前記PCシート101の上,下両側面101a,101bに、転写される印画層103a〜103d…及び印画層3aが設けられた中間転写フィルム102の転写面102aを、対向させた状態で、同時に、加熱転写する。
【0058】
この際、この実施例1では、上,下一対の熱転写ローラ104a,104bの間では、対向方向へ押圧力が作用しているので、表,裏面側に加わる圧力が均等となる。
【0059】
そして、図示省略のトラバース装置によって、図5(b)中矢印方向へ向けて一定速度で移動されると共に、前記熱転写ローラ104a,104bによって、前記中間転写フィルム102,102が、前記PCシート101の上,下両側面101a,101bに、加熱押圧される。
【0060】
また、同時に、同じ温度の上,下一対の熱転写ローラ104a,104bが、前記PCシート101の上,下両側面101a,101bに当接するので、前記中間転写フィルム102,102からの転写に必要とされる熱量が、上,下両側面101a,101bに同時に与えられる。
【0061】
しかも、図5中(c)に示すように、前記上,下一対の熱転写ローラ104a,104bと共に、前記中間転写フィルム102,102も同時に、両側面101a,101bに転写された印画3,103から離型出来て、冷却も上,下両側面101a,101bで、同時に開始することが出来る。
【0062】
次に、この実施例1の両面印刷構造,該両面印刷構造を施した文字板及び該両面印刷構造の印刷方法の作用効果について説明する。
【0063】
この実施例1の両面印刷構造では、PCシート101の両側面101a,101bに、印画3,103を熱転写印刷によって施した印画層3a,103a〜103dが形成されている。
【0064】
このため、前記PCシート101の両側面101a,101bに、同時に、前記上,下一対の熱転写ローラ104a,104bによって、熱及び押圧力が与えられて、伸張されているので、冷却工程は、これらの両側面101a,101bが、同様に収縮する。
【0065】
従って、加熱転写印刷が行われても、PCシート101が、反り返ったり撓んだりする虞が無い。
【0066】
また、PCシート101に、意匠面が形成される文字板10等では、印画3,103が行なわれたPCシート101に、反り返り等の撓みが無いので、所望の形状で、内部応力が残存していない意匠面が得られ、良好な外観品質を得られる。
【0067】
更に、この実施例1では、前記PCシート101の両側面101a,101bに印画3,103を行う熱転写工程が、前記PCシート101の両側面101a,101bに同時に上,下一対の熱転写ローラ104a,104bを当接させる熱転写印刷によって施される。
【0068】
このため、熱及び押圧力が同時に与えられて、伸張及び収縮される比率も両側面101a,101bで揃い、更に、この文字板10を取付けたり、支持する部分との間で低級音が発生したり、クラックの発生原因になる虞も無くなり、取付後もこの文字板10の意匠面が撓んで、外観品質を低下させてしまうような反り返りや撓みの発生を抑制出来る。
【実施例2】
【0069】
図6は、この発明の実施の形態の実施例2の両面印刷構造,該両面印刷構造を施した文字板及び該両面印刷構造の印刷方法を示すものである。
【0070】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0071】
まず、構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例2の両面印刷構造を有する文字板20,該両面印刷構造を施した文字板及び該両面印刷構造の印刷方法では、前記PCシート101の両側面101a,101bに、各々個別に熱転写印刷を施して、両側面101a,101bに印画を行う為、片面用の熱転写ローラ104が、一本設けられた熱転写印刷装置15が用いられる。
【0072】
また、図示省略のトラバース装置には、前記PCシート101を何れかの側面101a,101bが、上,下何れかに向けることが可能な反転機構106が設けられている。
【0073】
更に、前記シリンダ装置の押圧力も、前記PCシート101の各側面101a,101bに向けて押圧する方向へ駆動される際に、前記中間転写フィルム102,102に設けられた各印画103及び印画3の厚みが異なっても、同じ圧力で押圧駆動出来るように構成されている。
【0074】
次に、この実施の形態の実施例2の文字板の両面印刷構造の作用効果について説明する。
【0075】
このように構成された実施例2の両面印刷構造では、まず、図6中(a)に示す様に、一本の熱転写ローラ104が用いられる熱転写印刷装置15に、前記PCシート101が装填されて、前記複数の印画層103a〜103dからなる印画103が、逆の順番で積層されたPET製の中間転写フィルム102の転写面102aから、このPCシート101の一側面101aに当接される。
【0076】
次に、図6中(b)に示すように、前記中間転写フィルム102の外側面102b側から、前記熱転写ローラ104が、加熱された状態で押圧されながら、転動される。
【0077】
そして、軟化したPCシート101の一側面101bに、中間転写フィルム102の転写面102aが圧接される。
【0078】
このため、この転写面102aに積層された印画層103a〜103eからなる印画103が、前記PCシート101の一側面101a側に、圧着される。
【0079】
圧着後、図6中(c)に示すように、前記熱転写ローラ104を外して、前記トラバース装置の反転機構106を用いて、PCシート101の上,下側面101a,101bを180度反転させて、他側面101bが、上向きとなるように前記熱転写ローラ104側に位置させる。
【0080】
そして、、他側面101b側に転写される印画103を設けた中間転写フィルム102が装填されて、図6中(d)に示すように、前記転動される熱転写ローラ104の熱により、加熱された状態で押圧される。
【0081】
この際の前記トラバース装置による熱転写ローラ104とPCシート101との相対移動速度は、前記一側面101a側に、圧着する際と同一速度である。
【0082】
また、前記熱転写ローラ104の外側面が当接する中間転写フィルム102の表面温度は、150℃以上160℃未満となり、前記PCシート101のガラス転位点である141℃〜149℃を、上廻るように前記一側面101a側の転写時と同じ温度となるように調整されている。
【0083】
そして、図6中(e)に示すように、軟化したPCシート101の上,下両側面101a,101bから、中間転写フィルム102,102を剥離して離型させることにより、各印画103,103が転写される。
【0084】
この実施例2の文字板20では、両側面101a,101bで、加熱温度、加圧圧力等を同一条件とすることにより、片面用の熱転写ローラ104を用いても、前記PCシート101の両側面101a,101bに、各々個別に熱転写印刷が施されて、両側面101a,101bに印画を行うことが出来、意匠面の造形の自由度を向上させることが出来る。
【0085】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0086】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1,2の両面印刷構造を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1,2の両面印刷構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0087】
例えば、前記実施の形態及び実施例1,2では、スピードメータ等の車両用計器の文字板に、両面印刷を施した両面印刷構造を示して説明してきたが、適用分野は、特にこれに限らず、例えば、タコメータ、補助表示メータ等の各種メータ装置単体若しくはこれらを組み合わせたコンビネーションメータ装置の文字板や、センタディスプレイ装置、サイドモニタ装置、バックモニタ装置の表示面に用いられて、少なくとも一部に意匠面を有する被印刷部材であれば、形状、数量及び材質や或いは、印画内容が特に限定されるものではない。
【0088】
また、この実施の形態では、シリンダ装置によって加えられる押圧力F1,F2(F1=0.5MPa,F2=0.5MPa)を、上,下で同じ設定としていたが、特にこの圧力に限らず、印画が、熱転写可能であれば、ヒータによる加熱温度、ローラの数量、形状、大きさ及び材質が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
3,103 印画
3a,103a〜103h
印画層
10,20 文字板(意匠面)
101 PCシート(母材)
101a 一側面
101b 他側面
104,104a,104b
熱転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の両側面に、印画を熱転写印刷によって施した印画層が形成されていることを特徴とする両面印刷構造。
【請求項2】
印画が行われた母材の少なくとも一部を意匠面とすることを特徴とする請求項1記載の両面印刷構造を用いた文字板。
【請求項3】
前記母材の両側面に、同時に熱転写印刷を施して、両側面に印画を行うことを特徴とする請求項1記載の両面印刷構造の印刷方法。
【請求項4】
前記母材の両側面に、各々個別に熱転写印刷を施して、両側面に印画を行うことを特徴とする請求項1記載の両面印刷構造の印刷方法。




【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−177910(P2011−177910A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41683(P2010−41683)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】